(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092846
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】車両ホイール用の空気圧タイヤを製造するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B29D 30/24 20060101AFI20170227BHJP
B29D 30/32 20060101ALI20170227BHJP
B29D 30/36 20060101ALI20170227BHJP
B29D 30/34 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
B29D30/24
B29D30/32
B29D30/36
B29D30/34
【請求項の数】26
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-506959(P2014-506959)
(86)(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公表番号】特表2014-514978(P2014-514978A)
(43)【公表日】2014年6月26日
(86)【国際出願番号】IB2012051932
(87)【国際公開番号】WO2012147012
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2015年4月3日
(31)【優先権主張番号】MI2011A000721
(32)【優先日】2011年4月29日
(33)【優先権主張国】IT
(31)【優先権主張番号】61/484,419
(32)【優先日】2011年5月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598164186
【氏名又は名称】ピレリ・タイヤ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】ポルティナーリ,ジャンニ
(72)【発明者】
【氏名】ビゴニョ,マウロ
(72)【発明者】
【氏名】デール,ピエトロ
【審査官】
岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−154471(JP,A)
【文献】
特開2009−034856(JP,A)
【文献】
特開2010−260220(JP,A)
【文献】
特表2011−520662(JP,A)
【文献】
特表2011−504429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ホイール用のタイヤを作製するための方法であって、
2つのハーフドラム(15)と2つの支持体(16)とを含む成形ドラム(1)に、少なくとも1つのカーカスプライを含むカーカススリーブ(3)を配置するステップであって、各支持体(16)が、前記ハーフドラム(15)の1つに動作可能に関連付けられ、それぞれのハーフドラム(15)の近くに位置決めされた自由端(28b)を有する複数のターンアップレバー(28)を担持し、前記ハーフドラム(15)に配設された前記カーカススリーブ(3)が、少なくとも前記自由端(28b)を覆う、ステップと、
2つの環状固定構造(4)を、前記カーカススリーブ(3)の周りに配置するステップと、
前記支持体(16)と前記それぞれのハーフドラム(15)との間に堅い機械的要素のみを相互接触させて挿間することによって、前記2つの支持体(16)それぞれを、前記それぞれのハーフドラム(15)に係止するステップと、
前記カーカススリーブ(3)に円環形態を与えるためにねじ切りシャフト(27)を回転させるステップと、
前記2つの支持体(16)それぞれを、前記それぞれのハーフドラム(15)から係止解除するステップと、
前記環状固定構造(4)の周りに前記カーカススリーブ(3)の前記端部フラップがターンアップされるまで、前記ターンアップレバー(28)の前記自由端(28b)を上昇させるために前記ねじ切りシャフト(27)を回転させるステップと
を含み、
前記2つの支持体(16)それぞれを、前記それぞれのハーフドラム(15)に係止するステップが、
ガイドロッド(32)の第2の端部(32b)を前記支持体(16)に係止するステップを含み、各ガイドロッドが、前記ハーフドラム(15)と一体の第1の端部(32a)を有する、方法。
【請求項2】
前記ガイドロッド(32)の前記第2の端部(32b)を前記支持体(16)に係止するステップが、
前記支持体(16)に取り付けられたフランジ(34)を係合位置に移動させるステップを含み、前記係合位置で、前記ガイドロッド(32)の前記第2の端部(32b)が、前記フランジ(34)の開口(35)内に係止される
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つの支持体(16)それぞれを、前記それぞれのハーフドラム(15)に対して係止解除するステップが、
前記支持体(16)を通して前記ガイドロッド(32)を摺動自在とするステップ
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記2つの支持体(16)それぞれを、前記それぞれのハーフドラム(15)に対して係止解除するステップが、
前記支持体(16)に取り付けられたフランジ(34)を係合解除位置に移動させるステップを含み、前記係合解除位置で、前記ロッド(32)の前記第2の端部(32b)が、前記フランジ(34)の開口(35)を通過自在である
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記それぞれのハーフドラム(15)の近くに各支持体(16)を移動させるために前記ねじ切りシャフト(27)を回転させる前に、前記ハーフドラム(15)がスペーサー(50)に掛止され、前記スペーサー(50)が、前記ハーフドラム(15)の間に置かれ、前記ハーフドラム(15)を担持するシャフト(14)に取り付けられる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記スペーサー(50)を、別のタイヤを作製するための別の異なるスペーサーと交換するステップを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各前記環状固定構造(4)を、それぞれのハーフドラム(15)の環状保持シート(23)に対応して位置決めするステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
各前記環状固定構造の前記位置決めが、
前記環状保持シート(23)内に前記それぞれの環状固定構造(4)を受け取るまで、前記環状保持シート(23)を画定するために、各ハーフドラム(15)の複数の軸方向内側セクター(18)及び複数の軸方向外側セクター(19)を半径方向に展開するステップ
を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記軸方向外側セクター(19)の半径方向展開中、前記ターンアップレバー(28)の前記自由端(28b)が、前記軸方向外側セクター(19)のテールピース(37)に載置し、前記軸方向外側セクター(19)の半径方向展開移動に従う請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記それぞれのハーフドラム(15)の近くに各支持体(16)を移動させる開始アクションにおいて、前記ターンアップレバー(28)の前記自由端(28b)が、前記軸方向外側セクター(19)によって担持される傾斜面(40)の上を摺動する請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
第1のステージのドラム上にカーカススリーブ(3)を提供するステップと、
クラウン構造(8)を提供するステップと、
前記成形ドラム(1)に配設された前記カーカススリーブ(3)の周りに前記クラウン構造(8)を配置するステップとを含み、
前記円環形成中に、前記カーカススリーブ(3)の半径方向外側部分が、前記クラウン構造(8)に当接する
請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ねじ切りシャフト(27)が、2つのリードねじナット(26)を担持し、各前記リードねじナット(26)が、前記カーカススリーブ(3)の前記円環形成中に、軸方向(X−X)に沿って前記2つのハーフドラム(15)を相互に近付けるために、前記支持体(16)の1つに固定接続される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ターンアップレバー(28)の前記自由端(28b)を上昇させるための前記ねじ切りシャフト(27)の前記回転が、各支持体(16)を軸方向(X−X)に沿って前記それぞれのハーフドラム(15)の近くに移動させる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
車両ホイール用のタイヤを作製するための装置であって、
成形ドラムを含み、前記成形ドラムが、
2つのハーフドラム(15)と、
2つの支持体(16)とを設けられ、各支持体(16)が、前記ハーフドラム(15)の1つに動作可能に関連付けられ、前記それぞれのハーフドラム(15)の近くに位置決めされた自由端(28b)を有する複数のターンアップレバー(28)を担持し、
成形ドラムが更に、ねじ切りシャフト(27)自体の回転により、前記支持体(16)と前記ハーフドラム(15)を、相互に近付けられた関係又は相互に離隔された関係に軸方向で移動させるためのねじ切りシャフト(27)と、
機械的係止及び係止解除デバイス(32、34、34a)とを設けられ、前記機械的係止及び係止解除デバイス(32、34、34a)が、各ハーフドラム(15)と前記それぞれの支持体(16)との間に挿間され、前記支持体(16)が前記ハーフドラム(15)に対して移動可能である係止解除位置、又は前記支持体(16)が前記ハーフドラム(15)に対して固定される係止位置の何れかにあるように構成され、
前記機械的係止及び係止解除デバイス(32、34、34a)が、複数のガイドロッド(32)を含み、各前記ガイドロッド(32)が、前記ハーフドラム(15)と一体の第1の端部(32a)と、前記支持体(16)に摺動可能に結合された第2の端部(32b)とを有する、装置。
【請求項15】
前記機械的係止及び係止解除デバイス(32、34、34a)が、保持ユニット(34、34a)を含み、前記保持ユニット(34、34a)が、前記ガイドロッド(32)の前記第2の端部(32b)と前記支持体(16)との間で動作可能に作用し、係合位置と係合解除位置との間で移動可能であり、前記係止構成において、前記保持ユニット(34、34a)が前記係合位置にあり、前記ロッド(32)の前記第2の端部(32b)が前記支持体(16)上に係止される請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記保持ユニット(34、34a)が、
前記支持体(16)に取り付けられ、前記ロッド(32)のための開口(35)を有するフランジ(34)を含み、前記各開口(35)が、第1の部分(35a)と第2の部分(35b)を有し、
前記保持ユニット(34、34a)が更に、前記ロッド(32)が前記第1の部分(35a)に係止される係合位置と、前記ロッド(32)が前記第2の部分(35b)を通って摺動する係合解除位置との間で前記フランジ(34)を移動させるためのアクチュエーター(34a)を含む請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記フランジ(34)が、前記係合位置と前記係合解除位置との間で前記支持体(16)上で回転移動可能である請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記成形ドラム(1)が、
前記ハーフドラム(15)及び前記支持体(16)を摺動可能に担持するシャフト(14)と、
前記シャフト(14)に取り付けられ、前記ハーフドラム(15)の間に挿間されたスペーサー(50)とを含み、
前記スペーサー(50)を前記シャフト(14)に係止するために、各前記ハーフドラム(15)を前記スペーサー(50)に掛止することができる
請求項14〜17の何れか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記スペーサー(50)が交換可能である請求項18に記載の装置。
【請求項20】
各ハーフドラム(15)が、加工対象の前記タイヤ(2)のそれぞれのビード(7)を収容するための環状保持シート(23)を有する請求項14に記載の装置。
【請求項21】
各ハーフドラム(15)が、それぞれの環状保持シート(23)を画定するために半径方向で移動可能な複数の軸方向内側セクター(18)と複数の軸方向外側セクター(19)とを含む請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記ガイドロッド(32)の少なくとも1つが、前記セクター(18、19)の半径方向移動を制御するように適合された作業流体を通すために、それぞれの軸方向内側セクター(18)及び/又はそれぞれの軸方向外側セクター(19)と流体連絡する内部チャネル(41)を有する請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記軸方向外側セクター(19)が、前記ターンアップレバー(28)の前記自由端(28b)のための受止テールピース(37)を含む請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記軸方向外側セクター(19)が、前記ターンアップレバー(28)の前記自由端(28b)の摺動のための傾斜面(40)を含む請求項21に記載の装置。
【請求項25】
前記成形ドラム(1)が、第2のステージのドラムであり、前記装置が、
前記カーカススリーブ(3)を作製するための第1のステージのドラムと、
前記第1のステージのドラムから前記第2のステージのドラム(1)に前記カーカススリーブ(3)を搬送するために、前記第1のステージのドラムと前記第2のステージのドラム(1)の間で動作可能に作用する輸送デバイス(42)と
を含む請求項14〜24の何れか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記ねじ切りシャフト(27)が、2つのリードねじナット(26)に結合され、各リードねじナット(26)が、前記支持体(16)の1つに固定接続される請求項14〜25の何れか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、車両ホイール用のタイヤを作製するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両ホイール用のタイヤはカーカス構造を含み、カーカス構造は少なくとも1つのカーカスプライを含み、カーカスプライは、通常は「ビードコア」と呼ばれるそれぞれの環状固定構造と係合する両側の端部フラップをそれぞれ有する。環状固定構造は、通常は「ビード」と呼ばれる領域内に組み込まれており、それぞれの取付けリムにおけるタイヤのいわゆる「取付径」に実質的に対応する内径を有する。
【0003】
より特定的には、本発明は、第1のステージのドラム上でカーカススリーブを組み立て、その後、そのカーカススリーブを第2のステージのドラムに移送することによって行われる、好ましくはトラック用のタイヤを作製するための方法及び装置に関する。ビードコアが付与される上記の第2のステージのドラムでは、カーカススリーブは、好適に成形されて、最終的には半径方向外側のベルトパッケージに付着され、カーカススリーブの端部フラップが、ビードコアの周りにターンアップされる。
【0004】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、用語「機械的係止及び係止解除デバイス」によって、係止構成で、機械的要素(好ましくはリードねじナット)と、ハーフドラムとの間に、機械的な要素のみを相互接触させて挿間して結合及び干渉を行うことによって、前記リードねじネットとハーフドラムとの間の相対移動を防止するデバイスが意図される。そのような係止作用は、圧縮不能であって相対運動を打ち消して妨げる圧力下のガス又は液体に依拠しない。
【0005】
即ち、相対運動を防止することが可能な前記ハーフドラムと機械的要素との間の力の交換は、堅い機械的要素のみによって行われ、油圧力及び/又は空気圧力によっては行われず、対照的に、係止構成と係止解除構成の間の移動を可能にするアクチュエーターは、(油圧、空気圧、電磁式アクチュエーターなど)任意の性質のものでよい。
【0006】
背景技術
国際公開第2009/142482号は、中心シャフトと、中心シャフトに配設されたねじ切りシャフトと、2つのハーフドラムとを含むタイヤを作製するための第2のステージドラムを開示する。2つのハーフドラムによって画定されるアセンブリの両側で、リードねじナットが、ねじ切りシャフトに結合される。各リードねじナットは、接続要素によって、それぞれのハーフドラムに接続される。各ハーフドラムは、ターンアップレバーを含むターンアップユニットと、ビードコアのためのクランプユニットとを設けられる。クランプユニットは、上述した接続要素を受け取るスロットを有するハーフドラムの円筒形部分に配設される。更に、円筒形部分は、チャンバーを含み、チャンバー内部で、ターンアップレバーに接続された空気圧ピストンが移動することができる。円筒形部分は、係止メカニズムを設けられ、係止メカニズムは、中心シャフトと係合又は係合解除することができる。前記係止メカニズムが中心シャフトから係合解除され、所定の圧力がピストンチャンバー内に加えられるとき、クランプユニットはターンアップレバーと一体になり、ねじ切りシャフトの回転は、ハーフドラム全体の軸方向移動を伴う。2つのハーフドラムは、タイヤに円環形状を与えるために、互いに近付くように移動される。係止メカニズムが中心シャフトに係合され、逆圧がピストンチャンバー内に加えられるとき、ねじ切りシャフトの回転が、逆圧に対するターンアップレバーの移動を引き起こし、前記ターンアップレバーが、作製ドラムの中心に向けて上方向に移動して、成形されたタイヤの構成要素をビードコアの周りで側壁に当ててターンアップする。
【発明の概要】
【0007】
発明の開示
本出願人は、(例えば、ビードコアの位置決め、成形、及びターンアップ中に)第2のステージのドラムのメカニズムによってタイヤ構成要素に及ぼされる全ての移動の精度が、製造されるタイヤの品質に重要な影響を有すると認識している。
【0008】
より特定的には、本出願人は、形成対象のタイヤの構成要素を第2のステージのドラムに完全な対称性で位置決めし、タイヤの回転軸に対して対称的に前記構成要素を移動させる重要性を認識している。実際、この対称性により、回転軸の周りでの延在部に沿って構造的に均一なタイヤ、即ち最適な半径方向対称性を与えられたタイヤを得ることができ、従って、寿命、快適性、及びロードホールディングの面でより高い品質及びより良い性能のタイヤを得ることができる。
【0009】
本出願人は、国際公開第2009/142482号に記載されているタイヤの第2のステージのドラムがそのような結果を実現できないことを見出した。なぜなら、移動部分の相対変位が、完全には対称的でなく、互いに同期されないからである。
【0010】
特に、前述の国際公開第2009/142482号を参照して、本出願人は、円筒形部分に配設されたクランプユニットとターンアップレバーとの複合移動中、これら2つの要素は、前記ターンアップレバーに接続された空気圧ピストンチャンバー内に及ぼされる圧力のみによって、互いに一体に、外れることがないように維持されていることに気付いた。ねじ切りシャフトの回転によって得られるリードねじナットの軸方向移動が、(ビードコアを保持する)それぞれのクランプユニットに空気圧ピストンのみによって伝達されるので、タイヤの成形中にチャンバー内の圧力値が変動を受けることがあり、一時的にすぎないにせよ、成形対象の前記タイヤの弾性反応を打ち消すのに十分ではないことがある。その結果、成形中、2つのクランプユニット、及びそれらによって担持されるタイヤ構成要素の軸方向変位は、完全には対称及び同時でなく、タイヤ自体の望ましくない危険な非対称性を生じることがある。
【0011】
従って、上述したことに鑑みて、本出願人は、製造されるタイヤの品質を改良できるようにし、特に、回転軸の周りでそれらの延出部に沿って構造的に均一であり、即ち最適な半径方向対称性を与えられたタイヤを得ることができるようにする、車両ホイール用のタイヤを作製するための方法及び装置を提供することを狙いとする。
【0012】
特に、本出願人は、第2のステージのドラムで行われる操作、とりわけ、ビードコアの位置決め、カーカススリーブの成形、及びそのようなカーカススリーブの端部フラップのターンアップにおいて、加工対象のタイヤの構成要素の同期及び対称移動を保証することができる方法及び装置を提供することを狙いとする。
【0013】
最終的に、本出願人は、ターンアップレバー又はアームを担持するリードねじナットと、形成対象のタイヤのビードコア及びビードを支持して保持するように適合されたそれぞれのハーフドラムとの間に動作可能に挿間させた、機械的な係止及び係止解除デバイスのみを使用することによって、上述した要件が満たされることを見出した。
【0014】
より具体的には、第1の態様では、本発明は、車両ホイール用のタイヤを作製するための方法であって、
−2つのハーフドラムと2つの支持体とを含む成形ドラムに、少なくとも1つのカーカスプライを含むカーカススリーブを配置するステップであって、各支持体が、ハーフドラムの1つに動作可能に関連付けられ、それぞれのハーフドラムの近くに位置決めされた自由端を有する複数のターンアップレバーを担持し、ハーフドラムに配設されたカーカススリーブが、少なくとも前記自由端を覆うステップと、
−2つの環状固定構造を、カーカススリーブの周りに配置するステップと、
−前記支持体とそれぞれのハーフドラムとの間に堅い機械的要素(stiff mechanical elements)のみを相互接触させて挿間することによって、2つの支持体それぞれを、それぞれのハーフドラムに係止するステップと、
−カーカススリーブに円環形態を与えるためにねじ切りシャフトを回転させるステップと、
−前記2つの支持体それぞれを、それぞれのハーフドラムから係止解除するステップと、
−環状固定構造の周りにカーカススリーブの端部フラップがターンアップされるまで、前記ターンアップレバーの自由端を上昇させるために前記ねじ切りシャフトを回転させるステップと
を含む方法に関する。
【0015】
第2の態様によれば、本発明は、車両ホイール用のタイヤを作製するための装置であって、
−成形ドラムを含み、前記成形ドラムが、
−2つのハーフドラムと、
−2つの支持体とを設けられ、各支持体が、ハーフドラムの1つに動作可能に関連付けられ、それぞれのハーフドラムの近くに位置決めされた自由端を有する複数のターンアップレバーを担持し、
−成形ドラムが更に、ねじ切りシャフト自体の回転により、支持体とハーフドラムを、相互に近付けられた関係又は相互に離隔された関係に軸方向で移動させるためのねじ切りシャフトと、
−機械的係止又は係止解除デバイスとを設けられ、機械的係止又は係止解除デバイスが、各ハーフドラムとそれぞれの支持体との間に挿間され、支持体がハーフドラムに対して移動可能である係止解除位置、又は支持体がハーフドラムに対して固定される係止位置の何れかで構成するのに適している
装置に関する。
【0016】
本出願人の見解では、各支持体とそれぞれのハーフドラムとの間の機械的な拘束が、これら2つの要素(支持体とハーフドラム)からなるアセンブリに対する所要の剛性を保証し、それにより、それら2つの要素が単体のように移動し、カーカススリーブの円環成形中にカーカススリーブのビードに所要の推力を及ぼす。この構成では、システムは、1自由度しか有さず、これは、所定の角度にわたるねじ切りシャフトの回転時に、ビードに対して圧力を及ぼす2つの前述したハーフドラムの(同じ量であるが反対向きの)一軸方向のみの変位が生じることを意味する。支持体とそれぞれのハーフドラムとの間で相対移動が生じる可能性がないので、ハーフドラムの完全に同期した対称的な移動を実現することができ、その結果、形成対象のタイヤの中心線平面に対する(成形中の)時間にわたるカーカススリーブの対称的な変形が行われる。この対称的な変形は、ハーフドラムを近付けるステップの最後に、優れた半径方向対称性を備える円環形状を実現する。
【0017】
本発明は、上の態様の少なくとも1つにおいて、更に、本明細書で以下に述べる好ましい特徴の1つ又は複数を有することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、2つの支持体それぞれを、それぞれのハーフドラムに係止するステップは、ガイドロッドの第2の端部を支持体に係止するステップを含み、各ガイドロッドが、ハーフドラムと一体の第1の端部を有する。
【0019】
好ましくは、ガイドロッドの第2の端部を支持体に係止するステップは、支持体に取り付けられたフランジを係合位置に移動させるステップを含み、係合位置で、ガイドロッドの前記第2の端部が、前記フランジの開口内に係止される。
【0020】
好ましくは、2つの支持体それぞれを、それぞれのハーフドラムに対して係止解除するステップは、支持体を通して前記ガイドロッドを摺動自在にするステップを含む。
【0021】
好ましくは、2つの支持体それぞれを、それぞれのハーフドラムに対して係止解除するステップは、支持体に取り付けられたフランジを係合解除位置に移動させるステップを含み、係合解除位置で、ロッドの第2の端部が、前記フランジの開口を通過自在である。
【0022】
上に列挙した方法ステップは、線形であり、即時に達成されるものであり、前記ステップを可能にする構造は、頑強であり、単純であり、かつ安価である。
【0023】
好ましい実施形態によれば、それぞれのハーフドラムの近くに各支持体を移動させるために前記ねじ切りシャフトを回転させる前に、ハーフドラムがスペーサーに掛止され、スペーサーが、ハーフドラムの間に置かれ、前記ハーフドラムを担持するシャフトに取り付けられる。
【0024】
カーカススリーブの端部フラップのターンアップ中、ハーフドラムは、中心線平面に向かう/中心線平面から離れるハーフドラム自体の移動を防止することが可能な頑強な拘束体を構成するスペーサーに当接する。
【0025】
好ましくは、方法は、スペーサーを、別のタイヤを作製するための別の異なるスペーサーと交換するステップを含む。
【0026】
本発明による方法は、適切な幾何形状/サイズを有するスペーサーを選択することのみによって、ハーフドラムを任意の相互距離に位置決め及び係止することができるので、異なるタイプのタイヤを作製できるようにする。
【0027】
好ましい実施形態によれば、方法は、各前記環状固定構造を、それぞれのハーフドラムの環状保持シートに位置決めするステップを含む。
【0028】
環状シートは、プロセス中にハーフドラムに対して環状構造が移動するのを防止し、従って、成形及びターンアップ中の時間にわたるカーカススリーブの変形の対称性を保証する助けとなり、また、トレッドバンド及び側壁の転動など他のステップ中に、位置及び形状を保つ助けとなる。
【0029】
好ましくは、各環状固定構造を位置決めする前記ステップは、前記環状保持シート内にそれぞれの環状固定構造を受け取るまで、環状保持シートを画定するために、各ハーフドラムの複数の軸方向内側セクター及び複数の軸方向外側セクターを半径方向に展開するステップを含む。
【0030】
前記セクターの半径方向展開中、各前記環状構造の円周方向表面における全ての点が、それぞれの環状シートに同時に接触し、それにより、環状構造を互いに同軸に、かつタイヤの回転軸に対して中心を合わせて保つ。
【0031】
好ましい実施形態によれば、軸方向外側セクターの半径方向展開中、ターンアップレバーの自由端が、前記軸方向外側セクターのテールピースに載置し、軸方向外側セクターの半径方向展開移動に従う。
【0032】
既にこのステップ中、ターンアップレバーは傾き始め、前記自由端をハーフドラムから半径方向に移動させ、それによりその後のレバー自体の移動、及びカーカススリーブの端部フラップのターンアップを容易にする。
【0033】
好ましい実施形態によれば、それぞれのハーフドラムの近くに各支持体を移動させる開始アクションにおいて、ターンアップレバーの自由端が、軸方向外側セクターよって担持される傾斜面の上を摺動する。
【0034】
傾斜面は、レバーが動かなくなるのを防止し、初期ターンアップ移動をより滑らかにする。
【0035】
好ましい実施形態によれば、方法は、
−第1のステージのドラム上にカーカススリーブを提供するステップと、
−クラウン構造を提供するステップと、
−成形ドラムに配設されたカーカススリーブの周りにクラウン構造を配置するステップとを含み、
円環形成中に、カーカススリーブの半径方向外側部分が、クラウン構造に当接する。
【0036】
このタイプの2段階プロセスは、好ましくは、トラック用のタイヤを作製するために使用される。
【0037】
好ましくは、前記ねじ切りシャフトが、2つのリードねじナットを担持し、各リードねじナットが、カーカススリーブの前記円環形成中に、軸方向に沿って2つのハーフドラムを相互に近付けるために、支持体の1つに固定接続される。
【0038】
好ましくは、ターンアップレバーの自由端を上昇させるための前記ねじ切りシャフトの前記回転が、各支持体を軸方向に沿ってそれぞれのハーフドラムの近くに移動させる。
【0039】
リードねじナットを介してただ1つのねじ切りシャフトを支持体と接続することにより、移動の同期性が保証され、スリーブの成形と端部フラップのターンアップとの両方を行うためにねじ切りシャフトの回転を引き起こすただ1つのモータを使用できるようになる。
【0040】
好ましい実施形態によれば、機械的係止及び係止解除デバイスが、複数のガイドロッドを含み、各ガイドロッドが、ハーフドラムと一体の第1の端部と、支持体に摺動可能に結合された第2の端部とを有する。
【0041】
好ましくは、機械的係止及び係止解除デバイスが、保持ユニットを含み、保持ユニットが、ガイドロッドの第2の端部と支持体との間で動作可能に作用し、係合位置と係合解除位置との間で移動可能であり、係止構成において、保持ユニットが係合位置にあり、ロッドの第2の端部が支持体上に係止される。
【0042】
ロッドは、係止及び係止解除デバイスが係止位置にあるとき、支持体とハーフドラムを一体にする。
【0043】
単純で軽量の構造であり、かつ小型であるが、係止位置でのロッドは、支持体がハーフドラムに対して動かないことを保証する。
【0044】
好ましくは、保持ユニットは、
−支持体に取り付けられ、ロッドのための開口を有するフランジを含み、各開口が、第1の部分と第2の部分を有し、
−保持ユニットが更に、ロッドが第1の部分に係止される係合位置と、ロッドが第2の部分を通って摺動する係合解除位置との間でフランジを移動させるためのアクチュエーターを含む。
【0045】
(並進又は回転移動する)フランジの移動だけで、ハーフドラムと支持体を連係することができ、この移動は、任意の(電気、油圧、空気圧)タイプのモータを用いて行うことができる。更に、そのようにして構成された保持ユニットは、頑強であり、信頼性が高い。
【0046】
好ましくは、フランジは、係合位置と係合解除位置との間で、支持体上で回転移動可能である。
【0047】
好ましい実施形態によれば、成形ドラムは、
−ハーフドラム及び支持体を摺動可能に担持するシャフトと、
−シャフトに取り付けられ、ハーフドラムの間に挿間されたスペーサーとを含み、
スペーサーをシャフトに係止するために、各ハーフドラムをスペーサーに掛止することができる。
【0048】
好ましくは、ねじ切りシャフトはシャフト内に同軸に収容され、シャフトと、ねじ切りシャフトと、スペーサーとからなるアセンブリは、支持体のための頑強なフレーム、及びハーフドラムと支持体の拘束体を構成する。
【0049】
好ましくは、スペーサーは交換可能である。
【0050】
好ましくは、各ハーフドラムは、加工対象のタイヤのそれぞれのビードを収容するための環状保持シートを有する。
【0051】
好ましい実施形態では、各ハーフドラムは、それぞれの環状保持シートを画定するために移動可能な複数の軸方向内側セクターと複数の軸方向外側セクターを含む。
【0052】
好ましくは、軸方向内側セクターは、軸方向外側セクターとは別個に半径方向に移動可能であり、環状固定構造の輸送デバイスからハーフドラムへ、環状固定構造を最適に係止できるようにする。
【0053】
好ましい実施形態では、ガイドロッドの少なくとも1つが、前記セクターの半径方向移動を制御するように適合された作業流体を通すために、それぞれの軸方向内側セクター及び/又はそれぞれの軸方向外側セクターと流体連絡する内部チャネルを有する。
【0054】
従って、障害物となり、装置要素及びタイヤ構成要素の移動によって損壊される危険がある更なるチャネル又は外側パイプは必要ない。
【0055】
好ましくは、軸方向外側セクターが、ターンアップレバーの自由端のための受止テールピースを含む。
【0056】
好ましくは、軸方向外側セクターが、ターンアップレバーの自由端の摺動のための傾斜面を含む。
【0057】
好ましい実施形態によれば、成形ドラムは、第2のステージのドラムであり、装置が、
−カーカススリーブを作製するための第1のステージのドラムと、
−第1のステージのドラムから第2のステージのドラムにカーカススリーブを搬送するために、第1のステージのドラムと第2のステージのドラムの間で動作可能に作用する輸送デバイスと
を含む。
【0058】
好ましくは、前記ねじ切りシャフトが、2つのリードねじナットに結合され、各リードねじナットが、支持体の1つに固定接続される。
【0059】
更なる特徴及び利点は、本発明による車両ホイール用のタイヤを作製するための方法及び装置の、好ましいが排他的でない実施形態の詳細な説明から明らかになろう。
【0060】
本明細書では以後、非限定的な例として与えられる添付図面を参照しながら説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】本発明による装置に属する成形ドラムの軸方向平面で断面を取った半分を示す図である。
【
図2a】それぞれの動作構成での
図1の成形ドラムの要素の前面図である。
【
図2b】それぞれの動作構成での
図1の成形ドラムの要素の前面図である。
【
図3】本発明の対象である方法に相関された一連の動作位置での
図1の半分を示す図である。
【
図4】本発明の対象である方法に相関された一連の動作位置での
図1の半分を示す図である。
【
図5】本発明の対象である方法に相関された一連の動作位置での
図1の半分を示す図である。
【
図6】本発明の対象である方法に相関された一連の動作位置での
図1の半分を示す図である。
【
図7】本発明の対象である方法に相関された一連の動作位置での
図1の半分を示す図である。
【
図8】本発明の対象である方法に相関された一連の動作位置での
図1の半分を示す図である。
【
図9】本発明の対象である方法に相関された一連の動作位置での
図1の半分を示す図である。
【
図10】本発明の対象である方法に相関された一連の動作位置での
図1の半分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
発明の好ましい実施形態の詳細な説明
図面を参照すると、車両用のタイヤを作製するための装置の一部である成形ドラムが、全体を参照番号1で識別されている。
【0063】
本発明の装置を使用して作製されるタイヤ2の概略的な非限定的な例が
図10に示されている。図示されるタイヤ2は、好ましくは、重量運搬車両で使用することを意図されたタイプのものである。用語「重量運搬車両」によって、一般に、ローリー車、トラック、トラクター、バス、バン、及びこの種の他の車両など、”Consolidated resolution of the Construction of Vehicles (R.E.3) (1997)”, Annex 7, pages 52-59, ”Classification and definition of power-driven vehicles and trailers”で定義されているカテゴリーM2〜M3、N1〜N3、及びO2〜O4に属する車両が意図される。
【0064】
タイヤ2は、少なくとも1つのカーカスプライを含むカーカス構造3’を含む。気密エラストマー材料の層又はいわゆるライナーを、カーカスプライの内側に付与することができる。2つの環状固定構造4が、カーカスプライのそれぞれの端部フラップと係合し、各環状固定構造4が、エラストマーフィラー6を半径方向外側の位置に担持するいわゆるビードコア5を含む。環状固定構造4は、通常は「ビード」7と呼ばれる領域の近傍に組み込まれ、ビード7で、通常は、タイヤ2とそれぞれの取付けリムとの係合が行われる。クラウン構造8が、円周状にカーカスプライの周りに付与される。クラウン構造8は、1つ又は複数のベルト層を有するベルト構造9と、ベルト構造9に円周状に重畳されたトレッドバンド10とを含む。側壁3aが、対応するビード7から、トレッドバンド10の対応する側縁部まで延在する。インサート11が、ショルダー部分、即ちトレッドバンド10の側端部が側壁に接続される部分の実質的に近くに配設される。特に、インサート11は、半径方向でカーカス構造3’とベルト構造9の間に実質的に挿間された部分と、軸方向でカーカス構造3’と側壁3aの間に実質的に挿間された部分とを有する。
【0065】
重車両用のタイヤのベルト構造9は、典型的には、「砂礫侵入防止ベルト(gravel-guard belt)」として通常知られているベルト層12を含み、ベルト層12は、ベルト構造の半径方向で最も外側の層であり、タイヤ構造の最も内側の層に向かう石及び/又は砂利の侵入に対する保護層として働く。重車両用のタイヤのベルト構造9は、更に補強側部ストリップ13を含むことがあり、補強側部ストリップ13は、第2のベルト層の軸方向端部で、第2のベルト層に半径方向で重畳することができる。側部ストリップは、複数の補強要素、好ましくは高伸度の金属コードを組み込む。
【0066】
上述したタイヤ2は、好ましくは、まず、カーカスプライと、ライナーと、側壁3aと、可能な他の要素とを含む管状のカーカススリーブ3を第1のステージのドラム(図示せず)に提供し、その後、環状固定構造4を嵌合することによって製造され、ここで、前記カーカスプライは、前記環状固定構造4の周りにまだターンアップされていない。次いで、カーカススリーブ3は、前記成形ドラム1に移送される。従って、成形ドラム1を第2のステージのドラムとも呼ぶ。
【0067】
本明細書では説明しない方法変形形態によれば、開示するタイプあるいはまた他のタイプ(例えばオートバイもしくは自動車用)のタイヤ2は、成形ドラム1の本明細書で以下に説明する特徴を備える形成ドラム上で独特の様式で作製される。
【0068】
成形ドラム1は中空シャフト14を含み、中空シャフト14には、2つのアセンブリが、シャフト14自体の上を摺動することができるように取り付けられ、各アセンブリが、ハーフドラム15と、支持体16とを含む。成形ドラム1は、形成対象のタイヤ2の赤道面に対応する中心線平面「Y」を有し、2つのアセンブリは、構造的に対称であり、前記中心線平面「Y」に対して同期して対称に移動する。従って、本明細書における詳細な説明では、2つのアセンブリの一方のみを述べる。
【0069】
ハーフドラム15は管体17を含み、管体17は、シャフト14に摺動可能に嵌合されるが、例えば、シャフト14に形成されたスロット14aにキー17aが入ることにより、シャフト14の回転運動の際にシャフト14と一体である。管体17は、半径方向外側の位置で、複数の軸方向内側セクター18、即ち中心線平面「Y」により近いセクターと、複数の軸方向外側セクター19、即ち中心線平面「Y」からより離れたセクターとを担持する。
【0070】
軸方向内側セクター18は、シャフト14の周りにリングを形成するように連続的に配設され、油圧操作又は空気圧操作によって、半径方向で収縮された位置と、半径方向に展開された位置との間で移動可能である。少なくとも半径方向に展開された位置で、相互に隣接する軸方向内側セクター18は、中心線平面「Y」から離れる方に面する好ましくは傾斜した第1の受止面20を画する。
【0071】
軸方向外側セクター19も、シャフト14の周りにリングを形成するように連続的に配設され、油圧操作又は空気圧操作によって、半径方向で収縮された位置と、半径方向に展開された位置との間で移動可能である。少なくとも半径方向に展開された位置で、相互に隣接する軸方向外側セクター19は、図示される実施形態では、中心線平面「Y」に面し、即ち第1の受止面20に向けられた好ましくは傾斜した第1の部分21aと、実質的に円筒形であり、シャフト14に平行な第2の部分21bとを有する第2の受止面21を画する。
【0072】
図示されるように、第2の受止面21は、軸方向外側セクター19に取り付けられたばねリング22を含む。
【0073】
軸方向内側セクター18は、軸方向外側セクター19とは別個に移動され、このために、管体17は、圧力下の液体又は気体の外部供給源と流体接続するチャネル及び/又はチャンバー(詳細には図示せず)を有する。
【0074】
第1の静止表面20と第2の静止表面21は、環状保持シート23を画定し、半径方向断面での環状保持シート23の形状は、以下に説明するように、軸方向内側セクター18と軸方向外側セクター19の相対位置に応じて変化する。
【0075】
軸方向内側セクター18のいくつかは、更に、中心線平面「Y」に向かって延在する支持面24を片持ち式に担持する。各支持面24は、それぞれの半径方向外面を有し、これらの表面が全て合わさって、シャフト14と同軸の円周方向表面を画定する。
【0076】
支持体16は、シャフト14に摺動可能に嵌合され、好ましくはシャフト14に形成されたスロット14aにキー25が入ることによって、シャフト14自体の内部に取り付けられたリードねじナット26に接続される。
【0077】
ねじ切りされた、又は少なくとも部分的にねじ切りされたシャフト27が、シャフト14内に、シャフト14と同軸に設置され、反対向きにねじ切りされた両側の端部27aを有する。各リードねじナット26の雌ねじは、ねじ切りシャフト27のそれぞれのねじ山27aと係合し、それにより、(例えば電動機による)ねじ切りシャフト27の回転が、リードねじナット26及び支持体16の並進を引き起こし、互いに近付くように、又は互いから離れるように支持体16を移動させる。
【0078】
支持体16は、複数(例えば36個)のターンアップレバー28を担持する。各ターンアップレバー28は、回転軸「Z−Z」の周りで支持体16に接続された一端28aを有し、回転軸「Z−Z」の方向は、シャフト14とねじ切りシャフト27の共通の長手方向軸「X−X」に垂直である。レバー28は、中心線平面「Y」に向かって延在し、前記レバー28の一方の自由端28bが、アイドラーローラー29を担持し、アイドラーローラー29は、ハーフドラム15又は形成対象のタイヤ2に対して係合されるようになっている。更に、ターンアップレバー28は、その半径方向外側部分に配設された複数の小さなアイドラーローラー30を含む。更に、ばねリング31(添付図面では一部のみ見える)が、各支持体16の全てのレバー28の周りに巻かれる。
【0079】
ハーフドラム15は、複数(図示される例では4つ)のガイドロッド32によって支持体16に接続される。各ガイドロッド32は、シャフト14の長手方向軸「X−X」に平行に延在し、ハーフドラム15に一体に固定された第1の端部32aを有し、前記ハーフドラム15及び中心線平面「Y」から離れる方向に延在する。更に、各ガイドロッド32は、支持体16に形成された穴33を通過し、各ロッド32の第2の端部32bは、ハーフドラム15に面する側とは逆の支持体16の一側面に面する。
【0080】
支持体16は、ハーフドラム15に面する側とは逆側で、長手方向軸「X−X」と同軸の環状フランジ34を担持する。環状フランジ34は、ガイドロッド32と同数の開口35を有する(
図2a及び
図2b)。各開口35は、支持体16の貫通穴33の1つに配置される。
図2a及び
図2bに示される各開口35は、第1の細長い部分35aと、第2の円形部分35bとを含む。第2の円形部分35bは、それぞれの貫通穴33よりもサイズが大きい。各ガイドロッド32は、その第2の端部32bに環状リッジ36を有し、環状リッジ36は、フランジ34の第2の円形部分35bを通過することができるが、第1の細長い部分35a及び貫通穴33を通過することはできないサイズにされる。従って、環状リッジ36は、ガイドロッド32が支持体16から外れるのを防止し、また支持体16がハーフドラム15から分離されるのを防止する。
【0081】
フランジ34は、長手方向軸「X−X」の周りで回転移動可能であり、開口35の第1の細長い部分35aが貫通穴33に面して、環状リッジ36がフランジ34と支持体16との間にクランプされる係合位置(
図2a)と、開口35の第2の円形部分35bが貫通穴33に面して、環状リッジ36がフランジ34を通過することができる係合解除位置(
図2b)との間でアクチュエーター34aによって回転させることができる。
【0082】
図示されるアクチュエーター34aは、好ましくは支持体16に固定された一端、即ちシリンダー本体側の端部と、好ましくはフランジ34に固定された反対側の端部、即ちロッド側の端部とを有する油圧又は空気圧シリンダーである。
【0083】
フランジ34が係合位置にあるとき(
図2a)、支持体16は、ハーフドラム15と一体になり、(
図1のように)前記ハーフドラム15から最大距離の位置にある。
【0084】
支持体16とそれぞれのハーフドラム15との間には、堅い機械的要素、即ちロッド32とフランジ34のみが相互接触して挿間され、支持体16とハーフドラム15を単一の剛体にする。フランジ34は、ロッド32の自由端32bを支持体16に固定することが可能な保持ユニットの一部である。
【0085】
ハーフドラム15と支持体16とが最大距離となる位置で、各レバー28の自由端28bが、軸方向外側セクター19の1つの近くに位置する。より詳細には、ターンアップレバー28の近くに配置された軸方向外側セクター19は、中心線平面「Y」から離れる方向に延在する受止テールピース37を担持する。更に、各受止テールピース37は、ターンアップレバー28に固定されたペグ39と係合するように意図されたフック38で終端する。各ターンアップレバー28のアイドラーローラー29は、それぞれの受止テールピース37に当接し、傾斜面40に面する位置にあり、傾斜面40は、受止テールピース37から半径方向に、中心線平面「Y」に向けて延在する。傾斜面40は、軸方向外側セクター19の一部である。
【0086】
フランジ34が係合解除位置にあるとき(
図2b)、支持体16は、ガイドロッド32上で摺動自在であり、(
図8及び
図9に示されるように)ハーフドラム15に近付くように移動することができる。
【0087】
従って、ロッド32とフランジ34は、機械的係止及び係止解除デバイスを画定し、機械的係止及び係止解除デバイスは、支持体16がハーフドラム15に対して移動可能である係止解除位置、又は支持体16がハーフドラム15に対して固定される係止位置の何れかで構成することができる。
【0088】
各ガイドロッド32は、内部にチャネル41を有し、チャネル41は、管体17のチャネル及び/又はチャンバーと流体連絡して、外部供給源の液体又は気体を搬送し、軸方向内側セクター18及び/又は軸方向外側セクター19、及び/又は以下に述べるアクチュエーター53の移動を引き起こす。
【0089】
更に、本発明による装置は、第1のステージのドラムから成形ドラム1にカーカススリーブ3を搬送するために、前記第1のステージのドラムと成形ドラム1との間で動作可能に作用する輸送デバイス42を含む。輸送デバイス42は、2組のクランプ43(
図3〜
図5)を含む。各組の(例えば4個の)クランプ43が、輸送構造44(部分的にのみ示す)に取り付けられ、全てのクランプ43が一緒に環状固定構造4を保持することができるように円形軌道上に配設される。従って、上述した2組のクランプ43はそれぞれ、それぞれの環状固定構造4を担持し、環状固定構造4を成形ドラム1の周りに同軸に配置することができる。
【0090】
各クランプ43は、(少なくとも、クランプ43が成形ドラム1の周りに配設されるときに)長手方向軸「X−X」に平行な第1の連節軸「V−V」の周りで輸送構造44に連係されたフレーム45を含む。
【0091】
フレーム45には第1のブレード46が取り付けられ、第1のブレード46は、フレーム45のガイド45a上で並進することができ、ばね47によって最大引き出し位置で維持される。第2のブレード48が、第1のブレード45に面する一端と、アクチュエーター49(例えば空気圧シリンダー)に接続された他端と、第1の連節軸「V−V」に垂直な第2の連節軸「K−K」の周りでフレーム45に枢動可能に取り付けられた中間部分とを有する。アクチュエーター49は、第2のブレード48を第2の連節軸「K−K」の周りで移動させて、クランプ43を開閉することができるようにする。作動デバイス(図示せず)は、1組の全てのクランプ43が、それらのそれぞれの第1の連節軸「V−V」の周りで回転できるようにして、クランプ43を、ブレード45、48の端部が半径方向で成形ドラム1に向けられる第1の位置と、ブレード45、48の端部が成形ドラム1から離隔される第2の位置との間で移動させる。
【0092】
シャフト14には、成形ドラム1の中心線平面「Y」に配設されたスペーサー50が着脱可能及び交換可能に取り付けられる。スペーサー50は、それらの半径方向周縁部に形成されたハウジング51を設けられ、好ましくは環形状を有する。ハウジング51内に、アクチュエーター53(例えば、図示される例では空気圧シリンダー)の係合端部52を受け取ることができ、前記アクチュエーターは、ハーフドラム15に一体に取り付けられて、前記ハーフドラム15をシャフト14に係止する。
【0093】
使用時、本発明の方法によれば、輸送デバイス42は、クランプ43によって、適切なマガジンから2つの環状固定構造4を受け取り、たった今形成されたカーカススリーブ3を担持する第1のステージのドラム上で前記環状固定構造4を嵌合して、例えば複数の吸引カップ(図示せず)によって第1のステージのドラムからカーカススリーブ3を取り上げる。
【0094】
輸送デバイス42は、カーカススリーブ3と、カーカススリーブ3を取り囲み、カーカススリーブ3から半径方向に離隔されていることがある環状固定構造4とを成形ドラム1に移送し、成形ドラム1(
図3)上で、前記カーカススリーブ3と環状固定構造4とを嵌合する。
【0095】
クランプ43及び環状固定構造4は、環状保持シート21に対応して配置される。カーカススリーブ3の両側の端部フラップは、小さなアイドラーローラー30、及びアイドラーローラー29の上に位置する。
【0096】
このステップ中、環状フランジ34は係合位置にあり、ハーフドラム15は一体であり、支持体16から離隔されている。
【0097】
この時点で、軸方向内側セクター18は半径方向に展開され(
図4)、最終的に、軸方向内側セクター18は、第2のブレード48の半径方向内端部の近傍にカーカススリーブ3を移送し、カーカススリーブ3の半径方向内面に当たるように支持プレート24を移送する。
【0098】
クランプ43が、ビードコア5(放出アクチュエーター49)に対する把持力を減少させ、軸方向外側セクター19が展開され(
図5)、最終的に、カーカススリーブ3を、第1のブレード46の半径方向内端部に当たるように移送し、第1のブレード46を、ばね47によって及ぼされる力の作用に反して半径方向に押し離し、それにより、環状保持シート23を画定し、ビードコア5の周りにカーカススリーブ3の一部を部分的に巻く。同時に、軸方向外側セクター19の半径方向展開は、受止テールピース37を通してターンアップレバー28の自由端28bを半径方向に離れるように移動させ、ターンアップレバー28は、それぞれの回転軸「Z−Z」の周りでの数度の角度にわたる回転を始める。
【0099】
クランプ43は、ビードコア5を解放して、成形ドラム1から離され、軸方向内側セクター18は、更に半径方向に展開されて、環状保持シート23にビードコア5を軸方向で係止する(
図6)。
【0100】
この時点で、ハーフドラム15と、それと一体になっている支持体16とを、ねじ切りシャフト27の回転によって互いからわずかにだけ離れるように移動させることによって、カーカススリーブ3の引張りが行われる。
【0101】
次いで、細長い要素を供給し、長手方向軸「X−X」の周りで成形ドラム1全体を回転させることによって、インサート11が、支持プレート24に対応して配置されたカーカススリーブ3の半径方向外面に敷設される。このステップで、フック38は、釘39に対して作用する求心力を提供し、釘39は、ばねリング31と共に、ターンアップレバー28が遠心力の効果によって傘状に開くのを防止する。
【0102】
更なる輸送デバイス(図示せず)は、カーカススリーブ3の周りにクラウン構造8を搬送し、ねじ切りシャフト27が回転駆動されて、ハーフドラム15と支持体16を相互に近付け、最終的に、ハーフドラム15内に圧力下で流体を導入することによってカーカススリーブ3に円環形態を与え、前記カーカススリーブ3の半径方向外側部分をクラウン構造8に当接させる(
図7)。
【0103】
この時点で、ハーフドラム15は、スペーサー50及びアクチュエーター53によってシャフト14に軸方向で係止され、環状フランジ34は、ハーフドラム15から支持体16を係止解除する係合解除位置にされる。
【0104】
ねじ切りシャフト27が回転駆動され、それにより、支持体16を、互いに近付くように中心線平面「Y」に向けて移動させ、各支持体16をそれぞれのハーフドラム15に近付ける。各ターンアップレバー28のアイドラーローラー29は、まず、それぞれの傾斜面40上を転がり、次いで、カーカススリーブ3の端部フラップの挿間により、ビードコア5に当接し、トレッドバンド10の転動を行うためにこの位置で停止される(
図8)。ローラー(図示せず)がトレッドバンド10に押し当てられ、成形ドラム1は、長手方向軸「X−X」の周りで回転される。
【0105】
転動後、支持体16は、更に中心線平面「Y」の近くに移動され、各ローラー29は、端部フラップ上を転がり、フィラー6に前記端部フラップを押し当て、最終的に、この端部フラップの端部がトレッドバンド10の軸方向外端部に付与される(
図9)。
【0106】
その後、支持体16は、ハーフドラム15から最大距離の位置に戻されて、側壁3aの転動を行い、最後に、軸方向内側セクター18及び軸方向外側セクター19は、半径方向で収縮されてビード7を解放し、成形ドラム1からのタイヤ2の解放を可能にする(
図10)。