(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092862
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】コイル状部材及びコイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 5/00 20060101AFI20170227BHJP
H02K 3/04 20060101ALI20170227BHJP
H02K 3/18 20060101ALI20170227BHJP
H02K 3/28 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
H01F5/00 F
H02K3/04 E
H02K3/18 P
H02K3/28 M
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-521427(P2014-521427)
(86)(22)【出願日】2013年6月14日
(86)【国際出願番号】JP2013066457
(87)【国際公開番号】WO2013187501
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2014年12月16日
【審判番号】不服2016-1073(P2016-1073/J1)
【審判請求日】2016年1月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-136134(P2012-136134)
(32)【優先日】2012年6月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512158446
【氏名又は名称】本郷 武延
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】本郷 武延
【合議体】
【審判長】
藤井 昇
【審判官】
矢島 伸一
【審判官】
中川 真一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−178052(JP,A)
【文献】
特開昭52−103633(JP,A)
【文献】
特開2004−363514(JP,A)
【文献】
特開2005−228984(JP,A)
【文献】
特開2008−85077(JP,A)
【文献】
特開2006−50853(JP,A)
【文献】
特開2007−181303(JP,A)
【文献】
特開2007−135339(JP,A)
【文献】
特開2006−204029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04 - 15/04
H01F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアの周りに配設されるコイル状部材であって、
コアの周りを巻くように配設される導線を有し、
前記導線の長さ方向に対して垂直な断面形状は矩形状であり、
前記導線は、コアの周方向に沿うように形成された前記導線の1周以下の長さの複数の導線部材を連続して導線部材の長さ方向において隣接させ、対向する端部同士を圧接して接合することにより構成され、
前記導線は、1周毎に、コアの軸方向に位置がずれており、
1周におけるコアの軸方向から見た内周形状は矩形状であり、
コアの軸方向の一方から他方に向かい、コアの周方向の少なくとも一部において、前記導線の幅が広くなるように、前記各導線部材の幅を変化させて接合するか、又は、コアの軸方向の一方から他方に向かい、前記導線の高さが低くなるように、前記各導線部材の高さを変化させて接合した
ことを特徴とするコイル状部材。
【請求項2】
前記導線の少なくとも一部を絶縁体により被覆し、又は、コアの軸方向において隣接する前記導線の間に絶縁体を配設したことを特徴とする請求項1記載のコイル状部材。
【請求項3】
コアの周りにコイル状部材が配設されたコイル部を有するコイル装置であって、
前記コイル状部材は、前記コアの周りを巻くように配設された導線を有し、
前記導線の長さ方向に対して垂直な断面形状は矩形状であり、
前記導線は、前記コアの周方向に沿うように形成された前記導線の1周以下の長さの複数の導線部材を連続して導線部材の長さ方向において隣接させ、対向する端部同士を圧接して接合することにより構成され、
前記導線は、1周毎に、前記コアの軸方向に位置がずれており、
前記コイル状部材の1周における前記コアの軸方向から見た内周形状は矩形状であり、
前記コアは、環状部材に対して径方向に突出するように、複数配置されており、
前記コイル状部材は、前記環状部材の径方向の外側に向かい、前記環状部材の周方向における前記導線の幅が広くなるように、前記各導線部材の幅を変化させて接合するか、又は、前記環状部材の径方向の外側に向かい、前記導線の高さが低くなるように、前記各導線部材の高さを変化させて接合した
ことを特徴とするコイル装置。
【請求項4】
前記導線の少なくとも一部を絶縁体により被覆し、又は、前記コアの軸方向において隣接する前記導線の間に絶縁体を配設したことを特徴とする請求項3記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアの周りに配設されるコイル状部材及びこのコイル状部材を備えたコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コアの周りにコイル状部材が配設されたコイル部を有するコイル装置としては、例えば、モータ、発電機、又は、トランス等の電気機器が挙げられ、広く使用されている。このようなコイル装置としては、例えば、環状部材の径方向に複数のコアを配設し、各コアの周りにそれぞれコイル状部材を配設したものが知られている。このコイル装置では、低損失科及び小型化を図るうえで、コイル状部材の占積率を高めることが求められている。
【0003】
しかし、環状部材の径方向に複数のコアを配設したコイル装置では、隣接する各コアの間の空間が、環状部材の中心側よりも外側の方が広くなるので、平角線を巻回したコイル状部材を配設すると、外側に隙間できてしまうという問題があった。そのため、平角線を用いた場合には、60%程度の占積率しか得ることができなかった。
【0004】
そこで、丸線を積層して巻くことによりコイル状部材を形成し、コアの外側において丸線の積層数を多くすることにより、占積率を高める方法も提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、丸線を積層した場合、隣接する丸線の間に隙間ができてしまうので、占積率を十分に高くすることができないという問題があった。また、積層するので、放熱性が低下してしまい、丸線で発生した熱により抵抗が上昇してしまうという問題もあった。更に、コアの外側において積層数を多くするなど製造方法が複雑でコストが高くなってしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−274878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、容易かつ安価に占積率を高くすることができるコイル状部材及びコイル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコイル状部材は、コアの周りに配設されるものであって、コアの周りを巻くように配設される導線を有し、導線は、コアの周方向に沿うように形成された複数の導線部材を接合することにより構成されたものである。
【0008】
本発明のコイル装置は、コアの周りにコイル状部材が配設されたコイル部を有するものであって、コイル状部材は、コアの周りを巻くように配設された導線を有し、導線は、コアの周方向に沿うように形成された複数の導線部材を接合することにより構成されたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コアの周方向に沿うように形成された複数の導線部材を接合することにより、コアの周りを巻くように配設される導線を構成するようにしたので、コアの形状及びコイル状部材が配設される空間部の形状に合わせて、導線部材を形成し、接合することができる。よって、容易かつ安価に、コアの形状及びコイル状部材が配設される空間部の形状に合ったコイル状部材を形成することができ、コイル状部材の占積率を高くすることができる。
【0010】
特に、コアの軸方向の一方から他方に向かい、導線の幅が広くなるように、各導線部材の幅を変化させて接合するようにすれば、コアが、環状部材に対して径方向に突出するように複数配置されている場合に、環状部材の径方向の外側に向かい、導線の幅を広くすることができる。よって、コイル状部材の占積率を高くすることができる。
【0011】
また、コアの軸方向の一方から他方に向かい、導線の高さが低くなるように、各導線部材の高さ変化させて接合するようにすれば、コアが、環状部材に対して径方向に突出するように複数配置されている場合に、環状部材の径方向の外側に向かい、導線の高さを低くすることができる。よって、導線の断面積を一定とし、導線の抵抗を均一とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るコイル状部材を備えたコイル装置の構成を表す部分断面図である。
【
図2】
図1に示したコイル状部材を取り出して拡大して表す図である。
【
図3】
図2に示したコイル状部材をI方向から見た図である。
【
図4】
図2に示したコイル状部材を構成する導線部材の構成例を表す図である。
【
図5】導線を巻回して形成した従来のコイルの構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係るコイル状部材10を備えたコイル装置20の構成を表すものである。
図2は、
図1に示したコイル状部材10を取出して表すものであり、
図3は、
図2に示したコイル状部材10をI方向から見た状態を表している。このコイル装置20としては、例えば、モータ、発電機、又は、トランス等の電気機器が挙げられ、コイル状部材10は、例えば、ステータに用いられる。
【0015】
コイル装置20は、例えば、複数のコア21が間隔を開けて設けられた環状部材22を備えている。コア21は、例えば、環状部材22に対して、環状部材22の径方向に突出するように配設されており、コア21の軸方向を環状部材22の径方向としている。コア21は、例えば、複数の電磁鋼板を積層して構成されている。各コア21の間には、コイル状部材10を配設するための空間部23が形成されている。各空間部23は、例えば、環状部材22の径方向の外側に向かい周方向の幅が広くなっている。なお、
図1では、コア21を環状部材22の外周側に配設する場合を示したが、内周側に配設するようにしてもよい。
【0016】
各コア21の周りには、例えば、絶縁材料よりなるコイルボビン24を介して、コイル状部材10が配設されており、コア21とコイル状部材10とでコイル部25を構成している。コイル状部材10は、例えば、コア21の周りを巻くように配設された導線11を有している。導線11は、例えば、1周毎に、コア21の軸方向に位置をずらして連続して整列配置されている。導線11は、例えば、銅等の導電性材料により構成されている。導線11の長さ方向に対して垂直な断面形状は、矩形状であることが好ましい。コイル状部材10の占積率を高くすることができるからである。コア21の軸方向において隣接する導線11の間には、例えば、図示しないが、絶縁体である絶縁フィルムが挿入されている。
【0017】
また、導線11は、コア21の周方向に沿うように形成された複数の導線部材12を接合することにより構成されている。
図4は、1つの導線部材12の構成例を表すものである。導線部材12の長さは、例えば、1周以下とすることが好ましい。なお、
図4は、導線部材12の長さが1周の場合を示している。このように構成すれば、コア21の形状及び空間部23の形状に合わせて、導線部材12を容易に形成することができるので、容易かつ安価に、コイル状部材10の占積率を80%以上に高くすることができるからである。
【0018】
図5は、従来のコイル110の形状を表すものであり、1本の導線111を巻回して形成されている。
図5に示したように、導線111を巻回して形成する場合には、導線111を湾曲させるので、角に丸みが生じてしまい直角とすることは難しい。これに対して、本実施の形態に係るコイル状部材10であれば、複数の導線部材12をコア21の形状及び空間部23の形状に合わせて形成したのち、各導線部材12を接合するので、角を直角とすることもでき、容易に占積率を高くすることができる。
【0019】
また、従来のコイル110では、導線111を湾曲させるので、角の内周側が膨らんでしまい、隣接する導線111の間に隙間が生じてしまうのに対して、本実施の形態に係るコイル状部材10であれば、各導線部材12を目的の形状に加工してから接合するので、内周側が大きく膨らむことがなく、隣接する導線11の間の隙間を小さくすることができ、占積率を高くすることができる。
【0020】
本実施の形態のコイル状部材10では、導線11は、例えば、コア21の軸方向の一方から他方に向かい、環状部材22の周方向における導線11の幅W1が広くなるように、各導線部材12の幅W1を変化させて接合することにより構成されることが好ましい。空間部23の幅は環状部材22の径方向の外側に向かい広くなっているので、それに合わせて導線11の幅W1を環状部材22の径方向の外側に向かい広くすることにより、コイル状部材10の占積率を高くすることができるからである。なお、環状部材22の周方向における導線11の幅W1というのは、環状部材22の周方向において、コア21の軸方向に対して垂直方向の導線11の長さである。
【0021】
導線11は、また、例えば、コア21の軸方向の一方から他方に向かい、導線11の高さHが低くなるように、各導線部材12の高さHを変化させて接合することにより構成されることが好ましい。すなわち、環状部材22の径方向の外側に向かい、導線11の幅W1を広くするのに合わせて、導線11の高さHを低くすることが好ましい。導線11の長さ方向に対して垂直な方向の断面積を一定とすることにより、導線11の抵抗を一定とすることができるからである。導線11の高さHというのは、コア21の軸方向における長さである。
【0022】
なお、導線11の断面積は、環状部材22の周方向と、周方向に対して垂直な方向とで、一定としてもよいが、目的に応じて異ならせてもよい。例えば、環状部材22の周方向における導線11の幅W1と、環状部材22の周方向に対して垂直な方向における導線11の幅W2とは、同一でもよいが、異なっていてもよく、コア21の軸方向の一方から他方に向かい、導線11の幅W1のみを広くし、幅W2を一定とするようにしてもよい。すなわち、コア21の軸方向の一方から他方に向かい、導線11の幅が、コア21の周方向の少なくとも一部、幅W1において、広くなるようにしてもよい。環状部材22の周方向に対して垂直な方向におけるコイル状部材10の幅を大きくせずに、空間部23におけるコイル状部材10の占有率を高くすることができるからである。本実施の形態のコイル状部材10によれば、複数の導線部材12を接合して導線11を構成するので、任意に設計することが可能である。
【0023】
このコイル状部材10は、例えば、銅板又は銅線等の導電性部材を加工することにより、コア21の形状及び空間部23の形状に合わせて各導線部材12を形成したのち、同線部材の長さ方向において隣接する導線部材12の隣接する端部同士を接合することにより形成することができる。接合は、電気溶接、高周波溶接、ろう付け、圧接等の各種方法を用いることができる。
【0024】
このように本実施の形態によれば、コア21の周方向に沿うように形成された複数の導線部材12を接合することにより、コア21の周りを巻くように配設される導線11を構成するようにしたので、コア21の形状及び空間部23の形状に合わせて、導線部材12を形成し、接合することができる。よって、容易かつ安価に、コア21の形状及び空間部23の形状に合ったコイル状部材10を形成することができ、コイル状部材10の占積率を高くすることができる。
【0025】
特に、コア21の軸方向の一方から他方に向かい、導線11の幅W1が広くなるように、各導線部材12の幅を変化させて接合するようにすれば、コア21が、環状部材22に対して径方向に突出するように複数配置されている場合に、環状部材22の径方向の外側に向かい、導線11の幅W1を広くすることができる。よって、コイル状部材10の占積率を高くすることができる。
【0026】
また、コア21の軸方向の一方から他方に向かい、導線11の高さHが低くなるように、各導線部材12の高さを変化させて接合するようにすれば、コア21が、環状部材22に対して径方向に突出するように複数配置されている場合に、環状部材22の径方向の外側に向かい、導線11の高さHを低くすることができる。よって、導線11の断面積を一定とし、抵抗を均一とすることができる。
【0027】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、
図6に示したように、コア21の軸方向の一方から他方に向かい、導線11の高さHを一定とし、環状部材22の周方向における導線11の幅W1を広くするようにしてもよい。この場合も、環状部材22の周方向に対して垂直な方向における導線11の幅W2は、コア21の軸方向の一方から他方に向かい、幅W1と同様に広くするようにしてもよく、また、一定としてもよい。
【0028】
また、例えば、導線11の少なくとも一部を絶縁体により被覆するようにしてもよい。例えば、各導線部材12を接合して導線11を形成したのち、導線11の少なくとも一部を絶縁体により被覆することにより構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
モータ、発電機、又は、トランス等の電気機器に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
10…コイル状部材、11…導線、12…導線部材、20…コイル装置、21…コア、22…環状部材、23…空間部、24…コイルボビン、25…コイル部