(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092866
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】フィルタ装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 63/00 20060101AFI20170227BHJP
B01D 63/06 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
B01D63/00 500
B01D63/06
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-524341(P2014-524341)
(86)(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公表番号】特表2014-521507(P2014-521507A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】EP2012065138
(87)【国際公開番号】WO2013020887
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年6月19日
(31)【優先権主張番号】102011080763.2
(32)【優先日】2011年8月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514035040
【氏名又は名称】ナノストーン ウォーター ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一
(72)【発明者】
【氏名】ゴベルト クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルツ マンフレッド
【審査官】
関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭50−016165(JP,A)
【文献】
特開平02−237622(JP,A)
【文献】
国際公開第2000/053293(WO,A1)
【文献】
実開昭61−000802(JP,U)
【文献】
特開2006−007165(JP,A)
【文献】
特開昭48−028380(JP,A)
【文献】
特開昭61−280396(JP,A)
【文献】
特開昭56−064296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 63/00
B01D 63/06
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(12)と、前記ハウジング(12)の中に配置された少なくとも1つのフィルタ部材(16)と、前記フィルタ部材(16)の第1の軸方向端部に形成された側方外側に向かって延びる第1のフランジ(24)と、前記フィルタ部材(16)の前記第1の軸方向端部とは反対側の第2の軸方向端部に形成された側方外側に向かって延びる第2のフランジ(24)と、前記第1のフランジ(24)と前記ハウジング(12)との間に配置され、且つ前記第1のフランジ(24)には止着されてない第1の弾性シール材(26)と、前記第2のフランジ(24)と前記ハウジング(12)との間に配置され、且つ前記第2のフランジ(24)には止着されてない第2の弾性シール材(26)と、を有し、
前記第1及び第2のフランジ(24)の外周面は、小径部が軸方向外側に位置し、大径部が軸方向内側に位置するテーパ状の面(25)とされているとともに、
前記第1及び第2の弾性シール材(16)の内周面は、小径部が軸方向外側に位置し、大径部が軸方向内側に位置するとともに、前記第1及び第2のフランジ(24)のテーパ状の面(25)に対して相補的なテーパ状の面(27)とされている
ことを特徴とするフィルタ装置(10)。
【請求項2】
前記第1及び第2の弾性シール材(26)は、前記フランジ(24)を少なくとも部分的に覆う、内方に向かって延びるリップ区域(29)を有していることを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ装置(10)。
【請求項3】
前記フランジ(24)は端部側に適用されたグラウト材によって形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のフィルタ装置(10)。
【請求項4】
前記第1及び第2の弾性シール材(26)はクランプ片(30)により、弾性作用により軸方向に付勢されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルタ装置(10)。
【請求項5】
前記ハウジング(12)と前記クランプ片(30)の間にシールリング(40;46)が配置されていることを特徴とする、請求項4に記載のフィルタ装置(10)。
【請求項6】
前記シールリング(40;46)はOリング(40)として構成されていることを特徴とする、請求項5に記載のフィルタ装置(10)。
【請求項7】
前記クランプ片(30)及び/または前記クランプ片(30)のほうを向いている前記第1及び第2の弾性シール材(26)の側は隆起部(34)及び/または切欠き(36;38)によって構造化されていることを特徴とする、請求項4から6のいずれか1項に記載のフィルタ装置(10)。
【請求項8】
前記フィルタ部材(16)及び/または前記ハウジング(12)は円筒状の断面を有していることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のフィルタ装置(10)。
【請求項9】
前記フィルタ部材(16)及び/または前記ハウジング(12)は多角形の断面を有していることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のフィルタ装置(10)。
【請求項10】
前記フィルタ部材(16)は円型隔膜または平型隔膜を含んでいることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のフィルタ装置(10)。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のフィルタ装置(10)を製造する方法において、次の各方法ステップを有しており、すなわち、
a)前記フィルタ部材(16)の第1の端部領域の周りにプラスチックからなる注型材料を注入し、
b)前記注型材料を硬化させ、前記注型材料によって少なくとも1つの前記フィルタ部材(16)が外装されると同時に、前記第1の端部領域において、小径部が軸方向外側に位置し、大径部が軸方向内側に位置するテーパ状の面(25)である外周面を有するフランジ(24)が形成され、
c)前記フィルタ部材(16)の第2の端部領域で方法ステップa)及びb)に準じて同様に手順を進め、それにより前記第2の端部領域において、小径部が軸方向外側に位置し、大径部が軸方向内側に位置するテーパ状の面(25)である外周面を有する第2のフランジ(24)が形成され、
d)前記ハウジング(12)の内部の内側円周において、第1の端部に、第1のフランジ(24)のほうを向く側の面が、前記第1のフランジ(24)のテーパ状の円周面(25)に対して相補的に構成された円錐状の面(27)である第1の弾性的な第1のシール材(26)を配置し、
e)前記ハウジング(12)を前記第1のシール材(26)とともに少なくとも1つの前記フィルタ部材(16)の上に嵌め合わせ、それにより第1のフランジ(24)の前記テーパ状の円周面(25)が第1のシール材(26)の前記テーパ状の円周面(27)と相補的になるようにし、
f)前記ハウジング(12)の反対側の第2の端部において弾性的な第2のシール材(26)を前記第2のフランジ(24)に外嵌し、前記第2のシール材(26)は、前記第2のフランジ(24)のほうを向く側の面が、前記第2のフランジ(24)の前記テーパ状の円周面(25)に対して相補的な円錐状の面(27)とされ、
g)クランプ片(30)を前記ハウジング(12)に外側で固定し、前記第2のシール材(26)を、前記クランプ片(30)により軸方向において弾性作用により付勢する方法。
【請求項12】
少なくとも1つの前記フィルタ部材(16)の両方の端部領域のうち少なくとも一方は、テーパ状に構成されたフランジ(24)を形成するために、テーパ状に構成された鋳型の中でまだ液状である注型材料に浸けられることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
両方のフランジ(24)のうち少なくとも一方はテーパ状の外面を生成するためにあとから機械的に加工されることを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載されている、液体の媒体を濾過するためのフィルタ装置に関する。さらに本発明の対象は、請求項11の前提部分に記載されている、液体の媒体を濾過するためのフィルタ装置を製造する方法である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、液体の媒体、特に汚れた水(いわゆる未濾過液)を濾過するための、隔膜モジュールによって構成されるフィルタ装置の分野に関わるものである。このような隔膜モジュールは、たとえば少なくとも1つの長手方向通路が通過する、少なくとも1つの長尺状のフィルタ部材を含んでいる。隔膜モジュールは、たとえばセラミックのような多孔性材料でできている。長手方向通路の内壁は、ごく薄いフィルタ隔膜で被覆されている。さらに隔膜モジュールは、フィルタ部材を取り囲む、特にステンレス鋼からなるハウジングを含んでいる。長手方向通路を通っていく未濾過液の経路で、流動方向に対して横向きに、長手方向通路の壁面に装着されたフィルタ隔膜によって未濾過液が浄化され、壁面から、フィルタ部材とハウジングとの間の回収室に濾液として入る。このときハウジングは、外部に対して少なくとも液体に対して確実に密閉されていなくてはならない。
【0003】
水濾過の分野では、2種類のフィルタ部材が従来技術から知られている。一方では、断面が円形のフィルタ部材があり、これは「管型隔膜」と呼ばれており、その中で液体の媒体が通常は内側から外側に向かって濾過される。フィルタ隔膜は、長手方向通路の内側に装着されている。他方では、断面が長方形のフィルタ部材も従来技術で知られており、これは「平型隔膜」と呼ばれており、通常は外側から内側に向かって濾過が行われる。ただしどちらの種類でも、それぞれ逆向きの濾過方向への濾過も知られている。
【0004】
隔膜モジュールの組立と密閉にあたっては、従来技術においてさまざまな実施形態がある。フィルタ部材がモノリスでできている場合、これは通常上側領域と下側領域で、端部片の直径が本来の本体の直径よりも若干小さくなるように加工される。加工された端部に、隔膜モジュールのハウジングに対する封止のためにO−リングが装着され、モノリスがO−リングまたは別案としてL−リングを含めて、モジュールハウジングの中に差し込まれる。
【0005】
隔膜モジュールが注型された隔膜束(すなわち、平行に配置された複数のフィルタ部材)を含んでいる場合、周知の通り、モジュールハウジングに特にL字型のシール材が予備設置され、その中に束全体が正しい嵌め合いで挿入される。L字型のシール材をまず隔膜束の上に載せておいてから、これと一緒にハウジングの中に差し込むこともできるが、シール材はハウジングに予備設置されているほうが好ましい。
【0006】
たとえば特許文献1は、少なくとも一方の端部に、たとえば耐火性コンクリートからなる、テーパ状に構成されたセラミックのフランジを有するフィルタ部材を備えた隔膜モジュールを示している。
【0007】
特許文献2は、フィルタ部材の端部領域が、傾いた肩部を備える肉厚部を有する隔膜モジュールを示しており、肉厚部はさまざまな材料で製作されていてよく、肩部はさまざまなシール材と協働作用する。
【0008】
特許文献3は、フィルタ部材の端部領域がたとえばテーパ状に構成されたL字型のシール材によってハウジングに対して封止される隔膜モジュールを示している。シール材のテーパ状の面は、これと相補的に構成された隔膜モジュールのカバーの面と協働作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2006/009449A1号パンフレット
【特許文献2】ドイツ特許出願公表第69019552T2号明細書
【特許文献3】ドイツ特許出願公開第19846041A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、異なる材料の熱膨張が生じたときでも濾液と未濾過液の確実な分離が保証されており、それを簡単な組立によってシール材の損傷や滑りなしに実現することができるように、隔膜モジュールを構成することにある。さらに、隔膜モジュールを低コストに製造することが意図される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は本発明によると、請求項1の構成要件を備えるフィルタ装置によって解決され、および、副請求項の構成要件を備える方法によって解決される。好ましい発展例は従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明の根底にある思想は、フィルタ装置のために、密閉の新規の方式と作用形態を創出することにある。少なくとも1つのフィルタ部材の一部であるフランジのテーパ状の面が、これと相補的に構成されたシール材の面と協働作用すれば、フィルタ部材はハウジング内で作動のために確実に固定され、組立中におけるハウジング内でのフィルタ部材の滑りやシール材の損傷が回避される。このとき未濾過液に対する濾液の確実な分離が、微生物によって生じる可能性のある堆積を生じることなく実現される。本発明は、フィルタ部材として管型隔膜を使うか平型隔膜を使うかに左右されることがなく、ならびに、ハウジング内のフィルタ部材の数に左右されることがない。ハウジングと1つないし複数のフィルタ部材は、断面が円筒状に構成されるのが好ましいが、多角形で構成されていてもよい。
【0013】
このときシール材は、フランジを少なくとも部分的に覆う、内方へと延びるリップ区域を有しているのが好ましい。この方策により、フランジとシール材との間のシール面の領域が広くなり、このことは封止の信頼性を大幅に向上させる。
【0014】
さらに、フランジは、端部側に適用されたグラウト材(eine endseitig aufgestragene Vergussmasse)によって形成されているのが好ましい。このとき、少なくとも1つのフィルタ部材ないしフィルタ部材の束の端部領域全体が、同じグラウト材で製造方法中に外部に対して閉止されることが意図されるのが好ましい。このようにしてフランジは、端部領域全体を閉止するための1つの共通の製造ステップで製作することができ、その際に、少なくとも1つのフィルタ部材とともに一体的なユニットを形成する。そのために少なくとも1つのフィルタ部材の端部領域に適用されるべき、たとえば固いグラウト材をなすように硬化する溶融液の形態の注型材料は、プラスチックを含んでおり、好ましくはポリマー、特に熱可塑性プラスチックを含んでいる。熱硬化性プラスチックや2成分プラスチック、たとえばエポキシドやアクリレートも可能である。前掲のプラスチックは高い信頼度で作用し、容易に加工することができ、低コストである。これに加えて、フィルタ装置の前掲の材料はすべて飲料水用に認可された素材である。
【0015】
このときテーパ状に構成されたフランジの面は、製造プロセスにおいて、少なくとも1つのフィルタ部材の端部領域を、テーパ状に構成された鋳型の中で注型材料に浸けることによって製作することができる。別案として、あとから機械加工によってテーパ状の面を製作することも当然ながら可能である。
【0016】
さらに本発明にとって、シール材はクランプ片により軸方向で、好ましくは弾性作用により、付勢されているのが好ましい。このときクランプ片は、そのために折曲されていてよい金属プレートとして構成されているのが好ましい。クランプ片は、特にシール材に対する対応フランジないし固定プレートとしてフィルタ装置に作用し、それによって封止作用を促進する。それによっても、フィルタ部材が簡単かつ確実にハウジングで保持される。
【0017】
封止作用をいっそう強化するために、ハウジングとクランプ片の間にシールリングが配置されていることが補足として可能である(その場合、クランプ片は必ずしも必要ではない)。そのためにハウジングは、シールリングの断面の一部が中に挿入される切込みを有しているのが好ましい。このとき、たとえばクランプ片の延長部が、シール材から遠くないところで、切込みに挿入されたシールリングを圧力で付勢してこれを圧縮させることによって、追加の封止作用が生じる。このときシールリングは、Oリングとして構成されているのが好ましい。角のある構成のシール材、ないし部分的に角のある構成のシール材、ないし平型シール材も考えられるが、平型シール材を使用するときには切込みを相応に適合化するか、または、切込みを全面的に省略しなければならない。
【0018】
クランプ片および/またはクランプ片のほうを向いているシール材の側が、隆起部および/または切欠きによって構造化されることによって、封止作用を強化するさらに別の選択肢が与えられる。このとき切欠きは、たとえば溝として構成されていてよい。シール材の切欠きと隆起部は、たとえば場合により生じる装置の起伏を補償する役目を果たす。この場合にも、クランプ片はフィルタ装置の軸方向において力により付勢され、その際、隆起部が部分的に圧縮され、それによって封止をする作用が生じる。さらに、たとえばクランプ片の隆起部とこれに対応するシール材の切欠きとによって、シール材を相応に固定することができる。
【0019】
本発明によるフィルタ装置の製造方法は、次の各方法ステップを意図している:
【0020】
a)少なくとも1つのフィルタ部材の第1の端部領域の周りにプラスチックからなる注型材料を注型し、該注型材料によって少なくとも1つのフィルタ部材が外装されると同時に、第1の端部領域の領域で外方に向かって側方に延びるフランジが生成される。
【0021】
b)注型材料を硬化させる。
【0022】
c)少なくとも1つのフィルタ部材の第2の端部領域で前記方法ステップa)およびb)に準じて同様に手順を進め、それにより第2の端部領域で外方に向かって側方に延びる第2のフランジが生成される。第1および第2の端部領域のフランジは同一に構成されているのが好ましい。
【0023】
d)第1のフランジのほうを向く側において第1のフランジのテーパ状の形状に対して相補的に構成された第1の弾性シール材を、ハウジングの内部の内側円周で第1の端部に配置する。このとき第1のシール材は、外面に(シール材のテーパ状の構成に対して横向きに)切欠きと隆起部を有してよい。
【0024】
e)ハウジングを第1のシール材とともに少なくとも1つのフィルタ部材の上に嵌め合わせ、それにより第1のフランジが第1のシール材のテーパ状の形状と協働作用するようにする。このときハウジングは、第1のシール材の場合により設けられる隆起部を圧縮する。差込部に対する、ハウジングの正確な寸法の対応配置が前提条件となる。
【0025】
f)ハウジングの反対側の第2の端部で第2の弾性シール材を第2のフランジに外嵌し、第2のシール材は第2のフランジのテーパ状の形状に対して相補的に構成されている。このとき第2のシール材は、外面に(シール材のテーパ状の構成に対して横向きに)切欠きと隆起部を有することができる。
【0026】
g)クランプ片をハウジングに外側で固定し、第2のシール材がクランプ片により軸方向で特に弾性作用により付勢される。このとき、第2のシール材の場合により設けられる隆起部が圧縮される。
【0027】
本発明の方法においては、製造コストは非常に低い。フィルタ装置の組立を使用場所で(現場で)行えるという利点がある。修理目的や点検目的のために、簡単な解体も可能である。ここでは「注型材料」という用語は、当初には理由の如何を問わず実質的に液相として存在しており、その後、同じく理由の如何を問わず硬化する、あらゆるプラスチックを含んでいる。プラスチックとしては、ポリマー、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック、たとえばエポキシドやアクリレートのような2成分プラスチック、およびその他の多くが考慮の対象となる。
【0028】
その他の利点は、以下の説明および添付の図面から明らかとなる。当然のことながら、上に挙げた構成要件および以下にこれから説明する構成要件は、それぞれ記載された組み合わせの形ばかりでなく、本発明の枠組から外れることなくそれ以外の組み合わせでも、あるいは単独でも適用可能である。図面は個々に次のものを示している:
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明によるフィルタ装置を示す縦断面図である。
【
図2】
図1のフィルタ装置の上側の端部領域を示す拡大縦断面図である。
【
図3】異なるクランプ片を有する、
図2に類似する図面である。
【
図5】別のハウジングを備える第2の実施形態を示す、
図4に類似する図面である。
【
図6】さまざまなクランプ片を備えたフィルタ装置のさらに別の実施形態の一領域を示す断面図である。
【
図7】さまざまなクランプ片を備えたフィルタ装置のさらに別の実施形態の一領域を示す断面図である。
【
図8】さまざまなクランプ片を備えたフィルタ装置のさらに別の実施形態の一領域を示す断面図である。
【
図9】さまざまなクランプ片を備えたフィルタ装置のさらに別の実施形態の一領域を示す断面図である。
【
図10】さまざまなクランプ片を備えたフィルタ装置のさらに別の実施形態の一領域を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明によるフィルタ装置10を縦断面図で示している。フィルタ装置10は、ステンレス鋼で製作されているのが好ましい管状のハウジング12を有している。側方で外方に向かってハウジング12に2つの排出接続管14が配置されており、これらは他の装置との互換性を可能にするために規格化されているのが好ましい。
【0031】
ハウジング12の中には、複数の長尺状のフィルタ部材16がハウジング12の長手方向に配置されている。フィルタ部材16は多孔性材料、好ましくはセラミックでできており、長手方向通路18を有するとともに、その内面にフィルタ隔膜を有している。フィルタ部材は管型隔膜および/または平型隔膜であってよい。濾過方向は内側から外側に向いているのが好ましい。すなわち、各々の長手方向通路18の一方の端部へと、濾過されるべき媒体(未濾過液)が導入される(矢印20参照)。長手方向通路18を通っていく未濾過液の経路で、未濾過液は流動方向に対して横向きに、長手方向通路18の壁面(多孔性材料)に装着されたフィルタ隔膜によって浄化され、濾液として壁面から外方に向かって外に出る(いわゆる浸透)。ハウジング12の内部空間は、外部に対して確実に密閉されていなければならない。
【0032】
ハウジング12を密閉するために、
図1のフィルタ部材16は下側および上側の端部領域に、フィルタ部材16を包囲する、封止をするグラウト材22を有している。グラウト材22は硬化した注型材料で形成れており、注型材料はプラスチック、好ましくはポリマー、特に熱可塑性プラスチックでできている。熱硬化性プラスチックや、エポキシドまたはアクリレートのような2成分プラスチックも可能である。
【0033】
フィルタ部材16の構造体の円周部に、この構造体はグラウト材22の延長部でそれぞれ上側および下側(
図1)に、好ましくはグラウト材22と同じ材料からなる、半径方向外方に向かって延びる環状の鍔の形態のフランジ24を有している。そのようにしてフランジ24は、ハウジング12の内部におけるフィルタ部材の一体的な構成要素となっている。両方のフランジ24は、半径方向に突き出す円周面25の上でテーパ状に傾いて、好ましくは上側および下側で同一に、ただし鏡像対称に反転して構成されている。このとき小径部は軸方向外側に位置しており、大径部は軸方向内側に位置している。
【0034】
フランジ24のテーパ状の円周面25と、ハウジング12との間には、フランジ24に対して相補的に構成された弾性シール材26がそれぞれ配置されている。つまりこの弾性シール材は、半径方向内側に位置するテーパ状の、ないしは傾いた円周面27を有しており、この円周面は軸方向外側の小径部と、軸方向内側の大径部とを備えている。シール材26は、フランジ24を部分的に覆う、半径方向内方に向かって延びるリップ区域29を有している。
【0035】
図1では、シール材26は下側の端部領域で、ハウジング12の肩部28の上に予備設置されている。上側の端部領域ではハウジング12は当初のうち開いており、それは、フィルタ部材とグラウト材からなるフィルタ構造体をそこからハウジング12の中に挿入できるようにするためである。その際には、ハウジング12およびフィルタ構造体の寸法安定性が前提条件となる。
【0036】
フィルタ構造体の挿入後、上側の端部領域において、フランジ24とハウジング12の間にシール材26が挿入される。次いで、クランプ片30によりフランジ24とシール材26の領域で、ハウジング12が閉止される。クランプ片30は、折曲されていてもよい、弾性作用のある薄板でできているのが好ましい。クランプ片30は固定プレートないし対応フランジとして作用するとともに、軸方向の力によってシール材26を付勢する。それによりハウジング12の内部は、長手方向通路18に導入されずに中へ侵入してくる場合がある液体に対して防護される。密閉作用を向上させるため、ないしは最適化するためのシール材26の領域の構成についての詳しい情報については、あとでまた述べる。
【0037】
図2は、本発明に基づくテーパ状に構成されたシール材26の機能を説明するための原理図を示している。いずれの実施形態にも共通するのは、それぞれテーパ状に構成されているフランジ24の円周面25が、これと相補的に構成されているシール材26の円周面27と同一平面上で当接していることである。このときシール材26とフランジ24は、テーパ状に構成された面25および27の軸方向長さが等しいことが好ましい。それによりシール領域は、Oリングを使用した場合のように点状に形成されるのではなく、シール領域が面によって具体化されており、このことは封止作用の向上をもたらす。クランプ片30ないし肩部28(上側の端部領域であるか、それとも下側の端部領域であるかによる)は、シール材30を圧力で付勢し、それによって本来の封止作用がフランジ24とシール材26の間に生じる。
【0038】
図3は、クランプ片30の5通りの異なる実施形態を有する、テーパ状に構成されたシール材26を示している。
図3および以下に続く各図面のそれぞれ異なる実施形態は、必要に応じて代替的に選択することができ、フィルタ装置10の封止作用を個別の使用条件に合わせて適合化する役目を果たす。クランプ片30は、部分的にハウジング12に当接するとともに部分的にシール材26に当接して、詳しくは図示しない仕方でハウジング12に取り付けられており、たとえばねじ止めされている。
図3(および以下に続く図面)のシール材26は、それぞれ外側から半径方向内方に向かってフランジ24から突き出している。このときシール材26の端面側の外面は、フィルタ装置10の長軸に対して同心的な、断面が半円形をした環状ないしビード状の隆起部34を有している。これに加えてハウジング12はその端面側の外面に、同じくフィルタ装置10の長軸に対して同心的な溝36を有している。
【0039】
クランプ片30の第1の実施形態a)では、クランプ片は隆起部34に対して相補的な溝37を有しており、取付位置にあるときに隆起部34がこれらの溝に収容され、その際にシール材26を固定する。溝36にはクランプ片30の対応する隆起部が係合し、これも同じくクランプ片30を固定ないしセンタリングする役目を果たす。
【0040】
クランプ片30の第2の実施形態b)では、クランプ片は、断面がほぼ半円形をした周回する溝38をハウジング12の溝36と同じ高さに、ただしこれに対して反対向きに膨出するように有している。すなわち両方の溝36,38は、組付け位置にあるとき、断面がほぼ円形をした周回する収容スペースを形成し、その中にOリング40が挿入される。隆起部34には、クランプ片30の平坦な面42が当接する。
【0041】
クランプ片30の第3の実施形態c)では、平坦な面42が実施形態b)に比べて軸方向外側に向かってオフセットされている。
【0042】
クランプ片30の第4の実施形態d)では、平坦な面42が実施形態b)に比べて半径方向内側に向かって(シール材26のほうへと)オフセットされている。Oリングの使用は必ずしも意図されておらず、すなわち、対応する周回する溝は設けられていない。しかしながらこの実施形態でも、Oリングを挿入して、これを単にクランプ片の平坦な面とハウジングの間で封止作用をもつように圧縮することが可能である。
【0043】
クランプ片30の第5の実施形態e)では、クランプ片30の面全体が構造化されないで平坦に構成されており、したがって、クランプ片30のもっとも単純な形態をなしている。
【0044】
図4および
図5は、フィルタ装置10の上側および下側の端部領域におけるシール材26の領域の構成の可能性を示している。
図4では、フィルタ部材16とフランジ26とからなるフィルタ構造体が、下側の端部領域でハウジング12の段部に挿入されており、シール材26は、隆起部34を有するように構成された軸方向下側においてハウジング12の肩部28の上に位置している。上側の端部領域においても、シール材は軸方向外側ないし上側に向かって隆起部34を有しており、この隆起部が、
図3の実施形態d)に準じてクランプ片30に当接する。さらに、長方形の断面を有する周回するハウジング12の溝36の中にはシールリング46が、角のある構成となっているその下側面で挿入されており、このシールリングは、円形に構成されたその上側面では、平坦に構成されているクランプ片30の部分42に当接する。弾性作用をもつように構成されたクランプ片30は、隆起部34およびシールリング46を軸方向の押圧力によって付勢する。
【0045】
図5では、フィルタ部材16とフランジ26からなるフィルタ構造体が下側の端部領域で、ハウジング12の部分48の上に1つのエッジのところで平坦に載っており、シール材26は、隆起部34を有するように構成された軸方向の端面で、ハウジング12の平坦な部分48の上に載っている。上側の端部領域でも、シール材は軸方向外側に向かって周回するビード状の隆起部34を有しており、この隆起部は、
図3の実施形態e)に示すようにクランプ片30に当接する。さらに、ハウジング12の溝36にはシールリング46が、角を有するように構成されたその下側面で挿入されており、このシールリングは、円形に構成されたその上側面では、平坦に構成されたクランプ片30に当接する。弾性作用をもつように構成されたクランプ片30は、隆起部34およびシールリング46を軸方向の押圧力によって付勢する。
【0046】
図6から
図10は、シール材26およびクランプ片30のさらに別の構成の可能性を示している。
図6から
図10ではシール材26は、フィルタ装置10の長軸に対して同心的な周回するビード状の軸方向の隆起部34を、それぞれ軸方向の外面に(クランプ片30のほうを向くように)有している。
【0047】
図6ではハウジング12は、長方形の断面を有する溝36を有しており、その中にOリング40が若干のクリアランスをもって挿入されている。平坦に構成されたクランプ片30(
図3の実施形態e)に準ずる)は、Oリング40および隆起部34に当接している。弾性作用をもつように構成されたクランプ片30は、隆起部34およびOリング40を軸方向の押圧力によって付勢する。
【0048】
図7ではハウジング12は、半円形の断面を有する溝36を有しており、クランプ片30は、これに向かい合う溝38を有しており、その中にOリングが挿入されている。
図3の実施形態c)に準ずるクランプ片30は、Oリング40および隆起部34に当接している。弾性作用をもつように構成されたクランプ片30は、隆起部34およびOリング40を軸方向の押圧力によって付勢する。
【0049】
図8ではハウジング12は、長方形の断面を有する溝36を有しており、その中にシールリング46が、角をもつように構成されたその下側面で挿入されている。
図3の実施形態c)に準ずるクランプ片30は、シールリング46の円形の上側部分に当接するとともに、軸方向外方に向かって段差のついた面42で、隆起部34に当接している。弾性作用をもつように構成されたクランプ片30は、隆起部34およびシールリング46を軸方向の押圧力によって付勢する。
【0050】
図9ではハウジング12は、長方形の断面を有する溝36を有しており、その中にシールリング46が、角をもつように構成されたその面で挿入されている。
図3の実施形態d)に準ずるクランプ片30は、シールリング46の円形の部分に当接するとともに、内側に向かって段差のついた面42で、隆起部34に当接している。弾性作用をもつように構成されたクランプ片30は、隆起部34およびシールリング46を軸方向の押圧力によって付勢する。
【0051】
図10ではハウジング12は、長方形の断面を有する溝36を有しており、その中にシールリング46が、角をもつように構成されたその下側面で挿入されている。
図3の実施形態e)に準ずる平坦に構成されたクランプ片30は、シールリング46の円形の上側部分に当接するとともに、隆起部34に当接している。弾性作用をもつように構成されたクランプ片30は、隆起部34およびシールリング46を軸方向の押圧力によって付勢する。
【0052】
本発明によるフィルタ装置10は、本明細書の最初の部分で説明した製造方法によって低コストで製造することができる。このとき、使用場所(現場)で組立を行うこともできる。シール材26の領域の1つないし複数の好適な実施形態の選択を、使用場所での最新の周辺条件によって決めることができる。