特許第6092878号(P6092878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6092878画像ブロックをイントラ符号化するためのデバイスおよび方法、イントラ符号化済みの画像ブロックを担持する記憶媒体、ならびにイントラ符号化済みの画像ブロックを復号するための処理デバイスの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092878
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】画像ブロックをイントラ符号化するためのデバイスおよび方法、イントラ符号化済みの画像ブロックを担持する記憶媒体、ならびにイントラ符号化済みの画像ブロックを復号するための処理デバイスの使用
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/126 20140101AFI20170227BHJP
   H04N 19/147 20140101ALI20170227BHJP
   H04N 19/14 20140101ALI20170227BHJP
   H04N 19/176 20140101ALI20170227BHJP
   H04N 19/593 20140101ALI20170227BHJP
【FI】
   H04N19/126
   H04N19/147
   H04N19/14
   H04N19/176
   H04N19/593
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-533812(P2014-533812)
(86)(22)【出願日】2012年9月4日
(65)【公表番号】特表2014-531863(P2014-531863A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】EP2012067178
(87)【国際公開番号】WO2013050206
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年7月17日
(31)【優先権主張番号】11306283.0
(32)【優先日】2011年10月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シュバンス
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ サルモン
(72)【発明者】
【氏名】ヤニク オリヴィエ
【審査官】 山▲崎▼ 雄介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−283401(JP,A)
【文献】 特開2009−038746(JP,A)
【文献】 特開2010−252083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00−19/98
H04N 1/41−1/419
H03M 3/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像ブロックをイントラ符号化するための方法であって、
記画像ブロックのイントラ予測の残余の変換形態を量子化するステップであって、前記量子化では、すでに使用された量子化パラメータ値、対応する符号化コスト、および標的ビットレートを使用して決定された量子化パラメータ値を使用し、前記すでに使用された量子化パラメータ値および対応する符号化コストが、符号化される予定の画像ブロックとよく似ている、または符号化される予定の画像ブロックと同じ複雑度を有する画像ブロックを量子化するためにすでに使用されており、前記画像ブロックは前記画像ブロックのピクセルごとの比較によってよく似ているとみなされる、前記量子化するステップと、
前記対応する符号化コストが前記標的ビットレートを超えるかどうか判定するステップと、
前記対応する符号化コストが前記標的ビットレートを超えない場合、前記すでに使用された量子化パラメータ値より大きくない前記量子化パラメータ値を決定するステップと、
前記対応する符号化コストが前記標的ビットレートを超える場合、前記すでに使用された量子化パラメータ値より大きい前記量子化パラメータ値を決定するステップと、
前記量子化された変換形態を符号化するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
他のすでに使用された量子化パラメータ値および対応する他の符号化コストがさらに使用可能であり、使用可能な前記すでに使用された量子化パラメータ値のうち、一方は前記標的ビットレートを超える符号化コストに対応し、他方は前記標的ビットレートを超えない符号化コストに対応し、前記方法が、前記一方のすでに使用された量子化パラメータ値より大きく、前記他方のすでに使用された量子化パラメータ値より大きくない前記量子化パラメータ値を決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記すでに使用された量子化パラメータ値と前記他のすでに使用された量子化パラメータ値は、1だけ異なる、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記符号化され量子化された変換形態を非一時的記憶媒体に記憶するステップをさらに含む、請求項1ないしのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
画像ブロックをイントラ符号化するためのデバイスであって、
量子化パラメータ値を使用して前記画像ブロックのイントラ予測の残余の変換形態を量子化するための量子化手段と
すでに使用された量子化パラメータ値および対応する符号化コストを記憶するための記憶手段であって、前記すでに使用された量子化パラメータ値および対応する符号化コストが、符号化される予定の画像ブロックとよく似ている、または符号化される予定の前記画像ブロックと同じ複雑度を有する画像ブロックを量子化するためにすでに使用されており、前記画像ブロックは前記画像ブロックのピクセルごとの比較によってよく似ているとみなされる、前記記憶手段と、
前記すでに使用された量子化パラメータ値および対応する符号化コストが記憶されていると決定するための決定手段と
前記量子化パラメータ値を決定するために、前記すでに使用された量子化パラメータ値、前記対応する符号化コスト、および標的ビットレートを使用するように適合された処理手段と、
前記対応する符号化コストが前記標的ビットレートを超えるかどうか判定する手段と、
前記対応する符号化コストが前記標的ビットレートを超えない場合、前記すでに使用された量子化パラメータ値より大きくない前記量子化パラメータ値を決定する手段と、
前記対応する符号化コストが前記標的ビットレートを超える場合、前記すでに使用された量子化パラメータ値より大きい前記量子化パラメータ値を決定する手段と、
前記量子化された変換形態を符号化する手段と、
を備える、前記デバイス。
【請求項6】
前記対応する符号化コストは前記標的ビットレートに準拠しており、前記記憶手段は、他のすでに使用された量子化パラメータ値および前記標的ビットレートを超える対応する他の符号化コストを記憶するように適合され、前記処理手段は、前記他のすでに使用された量子化パラメータ値および前記他の対応する符号化コストをさらに使用し、前記量子化パラメータ値を決定するように適合される、請求項に記載のデバイス。
【請求項7】
プログラムがコンピュータデバイス上で実行されたときに、請求項に記載の方法のステップを実行する、前記プログラムコードの命令を有する非一時的記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像ブロックをイントラ符号化する分野においてなされたものである。
【背景技術】
【0002】
たとえばワイヤレス高精細度マルチメディアインターフェース(wHDMI)アプリケーションなど高精細度(HD)アプリケーションでは、時間的予測は、コンテンツの鮮明さにより、符号化効率の点であまり有利でないと判明している。同時に、時間的予測は、より高い複雑度の符号化器および/または復号器を必要とし、ランダムアクセスを妨げる。したがって、符号化器/復号器の複雑度と、ランダムアクセス性と、符号化コストと、視覚的品質との良好な妥協案をもたらすので、イントラだけの符号化器/復号器が多数のHDアプリケーション(たとえば、H264ハイ444イントラプロファイル)で使用される。
【0003】
符号化は、一般に、予測、変換、および量子化を含み、量子化の量子化ステップサイズは、量子化パラメータによって制御することができる。量子化を使用し、平均していくつかの、またはすべての画像にわたって歪みが最小限に抑えられ、一方、標的ビットレートを超えないという点で画像当たりの符号化コストが標的ビットレートに準拠するように、符号化コストを制御することができる。画像の符号化コストは、画像内で描写されるコンテンツの複雑度におおきく依存する。
【0004】
非特許文献1には、符号化コストと、量子化された変換係数のうちのゼロの割合との間に線形の関係があることが記載されている。この線形の関係は、コンテンツ依存のパラメータをも含む。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】He Z.ら「Optimum bit allocation and accurate rate control for video coding via p−domain source modeling」IEEE TRANS. On Circuits and Systems for Video technology,Oct 2002,Vol.12:10,p.840−849
【発明の概要】
【0006】
符号化コストが画像コンテンツに依存するため、依然として標的ビットレートに準拠する最も小さな量子化パラメータ値は、画像ブロックについて個々に決定することしかできず、ここで画像ブロックは、画像ピクセルの方形または矩形のブロック、画像ピクセルの2つ以上のそのようなブロックで構成されるマクロブロック、または画像全体を指す。すなわち、変動する複雑度のコンテンツを有する画像ブロックの場合、最も小さな準拠する量子化パラメータ値は、画像ブロックにわたって様々である。
【0007】
しかし、本発明者らは、同じ鮮明さまたは複雑度の画像ブロック、特によく似た画像ブロックは、同じ最も小さな準拠する量子化パラメータ値を共有することを理解している。
【0008】
したがって、画像ブロック間のコンテンツが大きく変化しない、または全く変化しない、たとえば、画像ブロックが全体的または部分的に同じ静止画像、同じコンピュータグラフィックインターフェースまたはウェブサイトを、マウスポイント位置が変化すると共に、または何らかの文字が追加されただけのテキストエディタがわずかに変化すると共に描写する場合、最も小さな準拠する量子化パラメータ値は、1つまたはいくつかのよく似た画像ブロックを使用して決定することができる。次いで、決定された最も小さな準拠する量子化パラメータ値を、他のすべてのよく似た画像ブロックに使用することができる。
【0009】
この最も小さな準拠する量子化パラメータ値を他のすべてのよく似た画像ブロックに使用することにより、他のすべての画像ブロックが、標的ビットレートより低い符号化コストで、またよく似た画像ブロックにとって特に重要なものである同じ品質で確実に符号化される。よく似た画像ブロックの場合、変動する量子化パラメータ値の使用は、非常に目立つフリッカアーチファクトを引き起こす。
【0010】
そのようなアーチファクトを回避するために、すなわちピクチャレベルでの符号化コストが標的ビットレートに準拠し、一方、視覚的品質が最適化されるように量子化ステップを計算するために、画像ブロックをイントラ符号化するための、請求項1に記載の方法が提案される。
【0011】
前記方法は、処理手段を使用し、量子化パラメータ値を使用して画像ブロックのイントラ予測の残余の変換形態(transform)を量子化し、量子化された変換形態を符号化するステップを含む。また、前記方法は、処理手段をさらに使用し、すでに使用された量子化パラメータ値および対応する符号化コストが記憶手段内で使用可能であると決定するステップであって、すでに使用された量子化パラメータ値が、その画像ブロックと同じ複雑度を有する近い他の画像ブロックを量子化するためにすでに使用されている、ステップと、すでに使用された量子化パラメータ値、対応する符号化コスト、および標的ビットレートを使用し、量子化パラメータ値を決定するステップと、を含む。
【0012】
すでに使用された量子化パラメータ値および対応する符号化コストを使用し、量子化パラメータ値を決定することにより、フリッカアーチファクトを回避するために、同じ、またはわずかに変化した量子化パラメータ値を決定することができる。
【0013】
画像ブロックをイントラ符号化するための他の提案されているデバイスは、量子化パラメータ値を使用して画像ブロックのイントラ予測の残余の変換形態を量子化するための量子化手段と、量子化された変換形態を符号化するための符号化手段と、を備える。このデバイスは、すでに使用された量子化パラメータ値および対応する符号化コストを記憶するための記憶手段であって、すでに使用された量子化パラメータ値が、その画像ブロックとよく似ている、またはその画像ブロックと同じ複雑度を有する少なくとも1つの他の画像ブロックを量子化するためにすでに使用されている、記憶手段と、すでに使用された量子化パラメータ値および対応する符号化コストが記憶されていると決定するための決定手段と、を備える。さらに、このデバイスは、すでに使用された量子化パラメータ値、対応する符号化コスト、および標的ビットレートを使用し、量子化パラメータ値を決定するように適合された処理手段を備える。
【0014】
一実施形態では、記憶手段は、他のすでに使用された量子化パラメータ値および対応する他の符号化コストを記憶するように適合され、処理手段は、他のすでに使用された量子化パラメータ値および他の対応する符号化コストをさらに使用し、量子化パラメータ値を決定するように適合される。
【0015】
さらに、提案されている方法に従ってイントラ符号化されたイントラ符号化済みの画像ブロックが記憶されている非一時的記憶媒体が提案される。
【0016】
また、提案されている方法に従ってイントラ符号化されたイントラ符号化済みの画像ブロックを復号するための処理デバイスの使用が提案される。
【0017】
このデバイスの他の実施形態では、出力の一定のビットレートには、復号に使用されない挿入ビットを用いて到達することができる。
【0018】
提案されている実施形態は、画像ごとに、符号化コストが標的ビットレートを超えないようにし、次のより小さな量子化パラメータ値では符号化コストが標的ビットレートを超えることになることがわかっている最も小さな準拠する量子化パラメータ値がわかった後で、よく似ている画像ブロックの符号化中に量子化パラメータ値をフリーズすることを可能にする。したがって、復号されたピクチャの品質は、量子化がフリーズされた後、非常に安定である。その理由は、よく似ている画像の量子化がその時間中変化しないからである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の例示的な実施形態が図面に示されており、以下の説明でより詳細に述べる。これらの例示的な実施形態は、本発明について説明するために述べられているにすぎず、本発明の開示または特許請求の範囲に規定されている範囲を限定するためのものではない。
図1】本発明の例示的な実施形態の流れ図である。
図2】本発明の他の例示的な実施形態の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、対応して適合された処理デバイスを備える任意の電子デバイスで実現することができる。たとえば、本発明は、テレビジョン、移動電話、パーソナルコンピュータ、デジタルスチールカメラ、デジタルビデオカメラ、または自動車エンターテイメントシステムにおいて実現することができる。
【0021】
その流れ図が図1に示されている本発明の例示的な実施形態では、よく似ている画像は、必ずしもよく似ていない画像のより大きなシーケンス内で連続するシーケンスとして含まれる。より大きなシーケンスの符号化は、ステップINITにおいて標的ビットレートで開始され、符号化される画像にわたって平均して標的ビットレートを満たすために、可変の整数値の量子化パラメータのための初期値が変えられる。
【0022】
この例示的な実施形態では、符号化器を含む処理デバイスが使用され、現在の画像の画像ブロックを符号化するステップENCを実行し、符号化は、量子化パラメータ値を使用して画像ブロックのイントラ予測の残余の変換形態を量子化することを含む。使用される量子化パラメータ値、およびこの符号化から得られる符号化コストが、記憶手段を更新するためのステップBUFで使用される。判断ステップDECにおいて、対応する画像ブロックが画像ブロックによく似ていないと決定され、対応する画像ブロックが画像ブロックと同じサイズおよび形状のものであり、次に符号化される予定の画像内の同じ位置に位置する場合、ステップCLRにおいて記憶手段がクリアされ、次に符号化される予定の画像の対応する画像ブロックを符号化するための量子化パラメータ値が、ステップRDOにおいて従来技術のレート制御に従って決定される。
【0023】
この検出するステップDECは、たとえば、第1の画像の画像ブロックを次に続く画像の対応する画像ブロックとピクセルごとに比較することを含み、第1の画像の画像ブロックと同一の少なくともある数のピクセルを有する次に続く画像の対応する画像ブロックが、第1の画像の前記画像ブロックとよく似ているとみなされる。あるいは、画像ブロック間の差分絶対値の和が、検出するステップのための閾値と共に使用される。
【0024】
よく似た画像ブロックに対して、符号化器は、ステップRPOにおいて、本発明による新しいレート制御を適用する。
【0025】
ステップRPOでは、記憶手段内の量子化パラメータ値および符号化コストが使用される。
【0026】
記憶手段は、よく似ている画像ブロックの連続するシーケンスが終了した後で空になるように構成される。
【0027】
よく似た現在のシーケンスに対しては、記憶手段の記憶状態に応じて最大3つの異なる段階がある。
【0028】
初期段階では、1つの符号化コストおよび1つの関連する量子化パラメータ値だけが記憶される。初期段階中のレート制御は、記憶された符号化コストが標的ビットレート準拠である場合、記憶された量子化パラメータ値より小さな量子化パラメータ値が、次に符号化される予定の画像内のよく似ている、また対応する画像ブロックに使用されるように制約することができる。また、記憶された符号化コストが標的ビットレートに準拠しないものである場合、記憶された量子化パラメータ値より大きい量子化パラメータ値が使用される。初期段階では、量子化パラメータ値の変化は1だけ、または記憶された符号化コストおよび標的ビットレートに依存するものとすることができる。
【0029】
任意選択の中間段階では、一方が標的ビットレートに準拠し他方が標的ビットレートに準拠しない2つの異なる符号化コストと、2つの関連の量子化パラメータ値とが記憶され、これらの記憶された異なる量子化パラメータ値は、1より多い数だけ異なる。この任意選択の中間段階中のレート制御は、次に符号化される予定の画像内のよく似ている対応する画像ブロックを量子化するために、準拠する符号化コストの場合記憶された量子化パラメータ値より小さな、また準拠しない符号化コストの場合記憶された量子化パラメータ値より大きい量子化パラメータ値が使用されるように制約することができる。この任意選択の中間段階では、量子化パラメータ値の変化は1だけとすることができる。あるいは、この任意選択の中間段階における量子化パラメータ値の変化は、記憶された量子化パラメータ値間の差に依存することができる。代替として、または追加として、この任意選択の中間段階における量子化パラメータ値の変化は、記憶された符号化コストと標的ビットレートとの差に依存することができる。
【0030】
最終段階では、一方が標的ビットレートに準拠し他方が準拠しない2つの異なる符号化コストが依然として記憶される。しかし、最終段階では、記憶される2つの関連の量子化パラメータ値は、1だけ異なる。すなわち、最終段階では、最も小さな準拠する量子化パラメータ値と、次に小さな、したがって標的ビットレートに準拠しない量子化パラメータ値とが記憶され、前記最も小さな準拠する量子化パラメータ値は、ステップRPOにおいて、連続するシーケンスの画像内のまだ符号化されていないよく似ている対応する画像ブロックすべてを量子化するために、固定された量子化パラメータ値として使用することができる。
【0031】
このシステムは、よく似た現在のシーケンスのすでに符号化された画像すべてが同じ標的ビットレートとの準拠の符号化コストをもたらしている、すなわち符号化コストすべてが標的ビットレートに準拠するか、または符号化コストすべてが準拠しないものである限り、初期段階にある。
【0032】
初期段階中、記憶された符号化コストが、よく似た現在のシーケンスの現在の画像を符号化することによってもたらされた現在の符号化コストと比較される。現在の符号化コストが記憶された符号化コストを超えるが標的ビットレートを超えない場合、または現在の符号化コストが標的ビットレートを超えるが記憶された符号化コスト未満で超える場合、記憶された符号化コストおよび記憶された量子化パラメータ値が上書きされ、したがって現在の符号化コストおよび現在の量子化パラメータ値によって置き換えられる。
【0033】
現在のシーケンスの現在の画像を符号化することにより記憶された符号化コストとは異なる準拠の現在の符号化コストがもたらされる、すなわち、現在の符号化コストおよび記憶された符号化コストのうちの一方だけが標的ビットレートに準拠し、他方が準拠しないものになった後で、現在の画像を符号化するために使用される現在の符号化コストおよび量子化パラメータ値がやはり記憶され、任意選択の中間段階または最終段階に入る。
【0034】
最終段階には、現在の量子化パラメータ値と以前に記憶された量子化パラメータ値が1だけ異なる、すなわち、一方が他方の次に小さいものであり、大きい方が最も小さな準拠する量子化パラメータ値に対応する場合だけ入る。これは、たとえば量子化パラメータ値の変化が初期段階において1だけである場合に生じる。
【0035】
そうでない場合には、任意選択の中間段階に入る。任意選択の中間段階中には、記憶された符号化コストのどれが現在の符号化コストと同じ標的ビットレートとの準拠を有するか判定される。すなわち、標的ビットレートを超える現在の符号化コストについて、やはり標的ビットレートを超える記憶された符号化コストの1つが決定される。また、標的ビットレートを超えない現在の符号化コストについて、記憶された符号化コストの他方のものが決定される。次いで、決定された符号化コストが現在の符号化コストと比較される。現在の符号化コストが決定された符号化コストを超えるが標的ビットレートを超えない場合、または現在の符号化コストが標的ビットレートを超えるが決定された符号化コスト未満で超える場合、決定された符号化コストおよび関連の量子化パラメータ値が上書きされ、したがって現在の符号化コストおよび現在の量子化パラメータ値によって置き換えられる。
【0036】
すわなち、任意選択の中間段階中、および最終段階では、記憶された量子化パラメータ値が、最も小さな準拠する量子化パラメータ値に対して上限および下限を規定する。任意選択の中間段階では、これらの境界は、1より多い数だけ異なる。したがって、下限と上限の間で量子化パラメータ値の符号化コストを試験することにより、最終的にシステムは、最終段階に収束する。
【0037】
異なる例示的な実施形態の流れ図が図2に示されている。ここでは、現在の量子化パラメータ値および符号化コストを記憶するステップBUFが、ピクチャ検出の固定後、すなわち、直前に符号化された画像とよく似ていることを検出した後で行われる。この異なる例示的な実施形態において実現されるステップRPOは、4つの検出ステップDEC1、DEC2、DEC3、およびDEC4を含む。
【0038】
DEC1では、現在の画像の符号化コストが標的ビットレートを超えるかどうか判定される。
【0039】
ステップDEC2では、他の符号化コストが存在する場合、他の符号化コストが標的ビットレートを超えるかどうか判定され、他の符号化コストは、現在の量子化パラメータ値より1だけ大きい、次に大きな量子化パラメータ値に関連する。ステップDEC2には、現在の符号化コストが標的ビットレートを超えるとステップDEC1で決定された場合に入る。
【0040】
他の符号化コストが標的ビットレートを超えないとステップDEC2で決定された場合、次に符号化される予定のよく似ている画像は、次のより大きな量子化パラメータ値を使用して符号化される。
【0041】
他の符号化コストが標的ビットレートを超えるとステップDEC2で決定された場合、次に符号化される予定のよく似ている画像は、従来技術のレート制御に従って決定される量子化パラメータ値を用いて符号化される。
【0042】
DEC3では、さらに他の符号化コストが存在するかどうか判定され、さらに他の符号化コストは、現在の量子化パラメータ値より1だけ小さい、次に小さな量子化パラメータ値に関連する。ステップDEC3には、現在の符号化コストが標的ビットレートを超えないとステップDEC1で決定された場合にのみ入る。
【0043】
DEC4では、さらに他の符号化コストが標的ビットレートを超えるかどうか判定される。ステップDEC4には、ステップDEC3に入り、さらに他の符号化コストが存在すると決定された場合にのみ入る。
【0044】
さらに他の符号化コストが標的ビットレートを超えるとステップDEC4で決定された場合、次に符号化される予定のよく似ている画像は、現在の量子化パラメータ値を使用して符号化される。
【0045】
さらに他の符号化コストが標的ビットレートを超えないとステップDEC4で決定された場合、次に符号化される予定のよく似ている画像は、次のより小さな量子化パラメータ値より小さい量子化パラメータ値を用いて符号化される。一実施形態では、次に符号化される予定のよく似ている画像を符号化するために使用される予定の量子化パラメータ値がさらに選択され、この量子化パラメータ値は、準拠しない符号化コストをもたらす、以前に使用された量子化パラメータ値すべてのうちの最も大きいものであることが知られている最も大きい既知の準拠しない量子化パラメータ値より大きいものである。
【0046】
ステップDEC3に入り、さらに他の符号化コストが存在しないと決定された場合、ステップDEC2にも入る。
【0047】
他の例示的な実施形態では、最も小さな準拠する量子化パラメータは、よく似たシーケンスのイントラ予測された最初の画像の残余の変換係数を最初の量子化パラメータ値で量子化し、符号化によって対応する符号化コストを決定することによって決定される。次いで、決定された符号化コストから、ρ領域(rho-domain)モデルのコンテンツ依存パラメータが決定される。次いで、最初の画像の符号化コストが、異なる量子化パラメータ値について、ρ領域モデルを使用して推定される。したがって、最も小さな準拠する量子化パラメータ値は、最初の画像を符号化することから決定され、シーケンスの他の画像すべてをこの値で量子化することができ、この最初の画像は、この値を使用して再符号化することができる。
【0048】
いくつかの量子化パラメータ値が記憶されるデータベースが構築され、記憶される量子化パラメータ値は、異なるすでに符号化された画像について決定された最も小さな準拠する量子化パラメータ値であるように、異なる例示的な実施形態を拡張することができる。
【0049】
記憶された量子化パラメータ値と共に、対応するすでに符号化された画像が記憶される。記憶された、すでに符号化された画像の1つによく似ている現在の画像を符号化するために、記憶された、対応する量子化パラメータ値を、量子化のために、または適切な量子化パラメータ値を探索するための開始点として使用することができる。
【0050】
あるいは、対応するすでに符号化された画像の鮮明さまたは複雑度に特徴的な値が、記憶された量子化パラメータ値と共に記憶される。次いで、現在の画像と同じ鮮明さまたは複雑度を有するすでに符号化された画像に対応する記憶される量子化パラメータ値が、量子化のために、または適切な量子化パラメータ値を探索するための開始点として使用される。
【0051】
そのような符号化のために適合されたデバイスの例示的な実施形態は、符号化器と、2つの異なる量子化パラメータ値、および対応する符号化コストを中間記憶するための手段と、を備え、符号化器は、量子化のための手段を備え、記憶された量子化パラメータ値の一方が、標的ビットレートに準拠する符号化コストに対応し、他方の記憶された量子化パラメータ値が、標的ビットレートを超える符号化コストに対応する。
【0052】
このデバイスの例示的な実施形態は、現在の量子化パラメータ値および現在の符号化コストを使用して記憶手段を更新する。現在の符号化コストが標的ビットレートを超えないが現在記憶されている標的ビットレート準拠の符号化コストより高い場合、量子化パラメータの前記一方、および対応する符号化コストが、現在の量子化パラメータ値および現在のコストによって置き換えられる。同時に、量子化パラメータ値は、低減後、量子化パラメータ値が依然として他方の記憶された量子化パラメータ値より大きい限り低減される。
【0053】
同様に、現在の符号化コストが標的ビットレートを超えるが現在記憶されている標的ビットレートに準拠しない符号化コストより小さい場合、前記他方の量子化パラメータ値、および対応する符号化コストが、現在の量子化パラメータ値および現在のコストによって置き換えられる。同時に、量子化パラメータ値が増大される。
【0054】
この置き換え、および量子化パラメータ値の変化は、記憶された量子化パラメータ値が1だけ異なる。すなわち、依然として標的ビットレートに準拠する符号化コストをもたらす一方の量子化パラメータ値が、標的ビットレートに準拠しない符号化コストをもたらす他方の量子化パラメータ値より1だけ大きい。次いで、準拠する符号化コストをもたらす前記量子化パラメータ値が、符号化器によって、よく似ている画像のまだ符号化されていない画像すべてを符号化するために使用される。
【0055】
それに加えて、または代替として、本発明の原理は、マクロブロックレベルで使用することができる。すなわち、よく似ているマクロブロックのシーケンスの異なる画像内の同じ位置にあるシーケンスが、よく似ているマクロブロックサイズの画像ブロックのシーケンスとみなされる。
【0056】
すなわち、ピクチャのシーケンスが、独立した画像ブロックシーケンスのモザイク(mosaic:寄せ集め)とみなされ、各独立した画像ブロックシーケンスは、マクロブロックサイズの画像ブロックのシーケンスの異なる画像内の同じ位置にあるマクロブロックを表すシーケンスである。次いで、マクロブロックのシーケンスのそれぞれを符号化するために使用される量子化パラメータ値が、マクロブロック標的ビットレートに鑑みて、本発明に従って調整される。
【0057】
別の例示的な実施形態では、本発明は、よく似た連続するサブシーケンスの画像のマクロブロックを平均する際に使用される予定の平均量子化パラメータ値を決定するために使用される。
(付記1)
画像ブロックをイントラ符号化するための方法であって、処理手段を使用し、
量子化パラメータ値を使用して前記画像ブロックのイントラ予測の残余の変換形態を量子化し、前記量子化された変換形態を符号化するステップを含み、処理手段をさらに使用し、
すでに使用された量子化パラメータ値および対応する符号化コストが記憶手段内で使用可能であると決定するステップであって、前記すでに使用された量子化パラメータ値が、前記画像ブロックとよく似ている、または前記画像ブロックと同じ複雑度を有する他の画像ブロックを量子化するためにすでに使用されている、ステップと、
前記すでに使用された量子化パラメータ値、前記対応する符号化コスト、および標的ビットレートを使用し、前記量子化パラメータ値を決定するステップと、
を含む、前記方法。
(付記2)
前記対応する符号化コストが前記標的ビットレートを超えるかどうか判定するステップと、前記対応する符号化コストが前記標的ビットレートを超えない場合、前記すでに使用された量子化パラメータ値より大きくない前記量子化パラメータ値を決定するステップと、前記対応する符号化コストが前記標的ビットレートを超える場合、前記すでに使用された量子化パラメータ値より大きい前記量子化パラメータ値を決定するステップと、をさらに含む、付記1に記載の方法。
(付記3)
他のすでに使用された量子化パラメータ値および対応する他の符号化コストがさらに使用可能であり、使用可能な前記すでに使用された量子化パラメータ値のうち、一方は前記標的ビットレートを超える符号化コストに対応し、他方は前記標的ビットレートを超えない符号化コストに対応し、前記方法が、前記一方のすでに使用された量子化パラメータ値より大きく、前記他方のすでに使用された量子化パラメータ値より大きくない前記量子化パラメータ値を決定するステップをさらに含む、付記1に記載の方法。
(付記4)
前記すでに使用された量子化パラメータ値と前記他のすでに使用された量子化パラメータ値は、1だけ異なる、付記3に記載の方法。
(付記5)
前記他の画像ブロックは、前記画像ブロックである、付記1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
(付記6)
前記符号化され量子化された変換形態を非一時的記憶媒体に記憶するステップをさらに含む、付記1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
(付記7)
画像ブロックをイントラ符号化するためのデバイスであって、
量子化パラメータ値を使用して前記画像ブロックのイントラ予測の残余の変換形態を量子化するための量子化手段と、前記量子化された変換形態を符号化するための符号化手段と、を備え、
すでに使用された量子化パラメータ値および対応する符号化コストを記憶するための記憶手段であって、前記すでに使用された量子化パラメータ値が、前記画像ブロックとよく似ている、または前記画像ブロックと同じ複雑度を有する少なくとも1つの他の画像ブロックを量子化するためにすでに使用されている、記憶手段と、
前記すでに使用された量子化パラメータ値および対応する符号化コストが記憶されていると決定するための決定手段と、をさらに備え、前記デバイスは、
前記すでに使用された量子化パラメータ値、前記対応する符号化コスト、および標的ビットレートを使用し、前記量子化パラメータ値を決定するように適合された処理手段を備える、前記デバイス。
(付記8)
前記記憶手段は、他のすでに使用された量子化パラメータ値および対応する他の符号化コストを記憶するように適合され、前記処理手段は、前記他のすでに使用された量子化パラメータ値および前記他の対応する符号化コストをさらに使用し、前記量子化パラメータ値を決定するように適合される、付記7に記載のデバイス。
(付記9)
付記6に記載の方法に従ってイントラ符号化されたイントラ符号化済みの画像ブロックが記憶されている非一時的記憶媒体。
(付記10)
付記1ないし5のいずれか一項に記載の方法に従ってイントラ符号化されたイントラ符号化済みの画像ブロックを復号するための処理デバイスの使用。
図1
図2