【文献】
妊娠末梢血を用いたDuchenne型筋ジストロフィーの出生前遺伝子診断 ,筋ジストロフィー及び類縁疾患の病態と治療法に関する研究 平成7年度研究報告書 高木班,1996, p.133-135
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を詳細に説明する。図面を参照しながら本明細書で説明される実施の形態は、説明のためのものであり、例示にすぎず、本発明の概略を理解するために用いられる。これらの実施の形態を、本発明を限定するものとして解釈してはならない。同一または類似の構成要素ならびに同一または類似の機能を有する構成要素は、説明の全体を通して、類似の参照番号で示される。
【0012】
なお、「第一」、「第二」などの用語は、本発明の説明を簡単にするために記述されており、相対的な重要性を明示及び示唆したり、技術的な特徴の数を暗示したりするものではないことを、理解すべきである。それにより、「第一」、「第二」と定義された特徴は、暗示的または明示的に一つ以上ものを含んでもよい。説明において、特に限定されない限り、「複数」、「いくつ」は、二又は二以上を示す。
【0013】
1.ゲノムに異常があるか否かを判断する方法
本発明の一態様によれば、本発明は、ゲノムの異常の有無を判断する方法を提供する。
図1を参照すると、本発明の実施例により、この方法には、次のステップが含まれる。
【0014】
S10:妊婦の生体試料から胎児有核赤血球を単離するステップ。
本発明において、妊婦の生体試料から胎児有核赤血球を単離することは、本発明者の次の発見に基づいている。現在では、胎児の遺伝的異常に対して行われた研究は、主に母体の末梢血から胎児の遊離DNAを単離することによる。しかしながら、胎児由来の遊離DNAに加えて、妊婦の末梢血には母体由来のDNAが多量あって、胎児のゲノムのDNAの半分が母由来のものであるため、DNA源を正確に区別することは、今まで困難であった。一方で、母体の末梢血にある胎児の遊離DNAは、不完全なゲノムとして存在するため、特定の遺伝子座を検出するプロセスにおいて、テンプレートが失われることにより偽陰性が大幅に増加する可能性がある。従って、胎児由来の遊離DNAを利用して、胎児の遺伝的異常を検出すること自体が欠陥を有する。またさらに、本発明者は、胎児の遊離核酸に加えて、母体の末梢血に完全な胎児細胞があることを発見した。母体の末梢血に遊離している胎児細胞は、主に栄養膜細胞と、白血球と、胎児有核赤血球とを含む。本発明者は、栄養膜細胞が多核と単球の2形態で存在するため、誤診につながりやすいことを発見した。白血球は、胎児を出産した後に、恒久的に母体血の中に存在する。これにより、次回の妊娠の検出を阻害する。また、本発明者は、胎児有核赤血球が、より短いライフサイクルを有し、胎児を出産した後、90日以内になくなり、次回の妊娠の検出を阻害しないこととともに、有核赤血球の表面抗原が比較的安定して同定および単離をしやすいことを発見した。従って、胎児有核赤血球により、ゲノムに異常があるか否かを効果的に判断できる。本発明者は、妊婦の末梢血にある胎児有核赤血球により非侵襲的に出産前の診断を行う方法は、高スループットの配列解読と組み合わせると、今までの母体血漿を用いた非侵襲的な出生前診断法より優れた効果を示すことを発見した。
【0015】
本発明の実施例によれば、有核赤血球の供給源である妊婦の生体試料に、特に制限はない。本発明のいくつかの実施例では、本発明の一実施例によれば、前記妊婦の生体試料は妊婦末梢血であると好ましい。これにより、妊婦から好適にサンプルを採取でき、胎児の発達に影響しないように妊婦末梢血から胎児有核赤血球を採取し、全ゲノムの配列を決定して、非侵襲的な出生前検査を実現できる。また、胎児有核赤血球の供給源である妊婦の妊娠段階に、特に制限はない。本発明の実施例によれば、20週未満の在胎週数である妊婦の生体試料を採取して、胎児有核赤血球を抽出してもよく、例えば、研究対象として12-2-週未満の在胎週数である妊婦の生体試料を採取してもよい。それにより、より効果的に胎児有核赤血球を抽出して研究に供することができる。また、本発明者は、本発明の方法によれば、一つの胎児有核赤血球しか採取しなくても、効果的に解析できることを発見した。
【0016】
本発明の実施例によれば、生体試料、例えば末梢血から有核赤血球を単離する方法に、特に制限はない。本発明の具体例によれば、末梢血から前記有核赤血球を単離することに、さらに、次のステップを含んでもよい。
【0017】
まず、密度勾配遠心分離用試薬により、前記末梢血に密度勾配遠心分離を行って、単核細胞を得る。本発明の実施例によれば、密度勾配遠心分離用試薬の種類に、特に制限はないが、本発明の具体例によれば、ポリショ糖、例えばフィコールを用いて、密度勾配を行ってもよい。好ましくは、800Xgで、30分前記勾配遠心を行ってもよい。
【0018】
単核細胞を得た後、有核赤血球の表面抗原を特異的に認識できる抗体が固定化された磁気ビーズにより、得られた単核細胞から有核赤血球が収集され、有核赤血球が抗体によって磁気ビーズに結合された後、磁気スクリーニングにより有核赤血球を得ることができる。
【0019】
本発明の実施例によれば、前記単核細胞を得た後であって、CD71抗体が固定化された磁気ビーズにより前記有核赤血球が収集される前に、更に、1%のBSAを含むPBSバッファーで前記単核細胞を洗浄することにより、残留する密度勾配遠心分離用試薬を除去するステップが含まれる。前記PBSバッファーは、リン酸二水素カリウムとリン酸二水素ナトリウムとを含むものであり、カルシウムイオンやマグネシウムイオンを含まないことが好ましい。これにより、顕著に有核赤血球の収集効率を向上できる。本発明の具体例によれば、1%のBSAを含むPBSバッファーで前記単核細胞を洗浄することには、更に、前記単核細胞を1%のBSAを含むPBSバッファーと混合させて、単核細胞を含む浮遊液を得るステップ、及び前記単核細胞を含む浮遊液に、好ましくは、800Xgで、30分遠心分離を行って、上澄みを捨てて、洗浄した有核赤血球を得るステップが含まれる。前記抗体は、CD71を特異的に認識できる抗体であると好ましい。本発明者は、本発明の実施例に係る有核赤血球を分離する方法により、末梢血から効果的に有核赤血球を単離でき、特に、胎児有核赤血球を単離できることを発見した。これにより、本発明は、簡単な操作で末梢血から胎児有核赤血球を単離できる方法を提供する。もちろん、有核赤血球の分離プロセスに更に他のステップを含んでもよいことは、当業者に自明である。例えば、本発明の具体例によれば、有核赤血球の分離方法は、次のステップを含む。妊婦から末梢血を適当量採取し、抗凝固剤で抗凝固状態にし、血液試料を、カルシウムイオンとマグネシウムイオンとを含まない0.1Mのリン酸塩緩衝液(PBS)により、所定の比率で希釈し、希釈された試料を密度勾配遠心分離用試薬の上に置いて、室温で密度勾配遠心分離を行う。遠心分離を行うと、単核細胞層が見える。慎重に該層細胞を吸引して、別の遠心分離管に移し、3倍体積量の1%のBSAを含むPBSバッファーに再懸濁させて、室温で再び遠心分離を行って上澄みを捨てる。残留する密度勾配液を除去するように、得られた細胞ペレットを同じ方法により、2回洗浄し、最終的に、0.1%のBSAを含むPBSに細胞ペレットを再懸濁させて、均一になるように吹かせた。そして、抗体が固定化された磁気ビーズを、20マイクロリットル/細胞10
6個の割合で加えて、4℃で静置した後、遠心分離を行って上澄みを捨てて、ペレットを1%のBSAを含むPBSに再懸濁させて、磁気ビーズの分級システムを組み立てた。分級カラムを、500マイクロリットルの1%のBSAを含むPBSバッファーで洗浄し、液体が流れた後、分級された細胞をカラムに入れて、流出物を集めて、「陰性細胞」と記した。1%のBSAを含むPBSでチューブを洗浄することを液体が流れた後2回繰り返し、PBS/EDTA/BSAを分級カラムに入れることを液体が流れた後1回繰り返した。最終的に、1%のBSAを含むPBSを分級カラムに入れて、磁場から離して、別の遠心管に液体を流して、有核赤血球を得た。
【0020】
S20:妊婦の生体試料から胎児有核赤血球を単離した後に、前記有核赤血球のゲノムの少なくとも一部の配列を決定して、配列の解析結果を得る。
本発明の実施例によれば、胎児有核赤血球を単離した後に、前記有核赤血球のゲノムの少なくとも一部の配列を決定してもよい。当業者は、所望の遺伝子により、有核赤血球のゲノム配列を決定する対象を選択して、これらの対象に対応する配列の解析結果を得ることができる。本発明の実施例によれば、当業者は、公知の方法で、配列を決定する対象、例えば、いくつかの染色体のみを選択してもよい。もちろん、そのままで有核赤血球の全ゲノムの配列を決定して、配列の解析結果を得た後、配列の解析結果から、特定のサイトからの配列データを選択して研究に供してもよいことは、当業者に自明である(詳細は後述する)。便宜のために、有核赤血球の全ゲノムの配列を決定することを例に以下説明する。
【0021】
本発明の実施例によれば、有核赤血球を得た後、有核赤血球の全ゲノムの配列を決定する方法に、特に制限はない。本発明の一実施例によれば、有核赤血球の全ゲノムの配列を決定するのに、更に次のステップを含む。まず、有核赤血球の全ゲノムを増幅して、増幅された全ゲノムを得る。そして、増幅された全ゲノムで、全ゲノム配列の決定用のライブラリーを構築する。最終的に、全ゲノム配列の決定用のライブラリーの配列を決定することにより、配列データからなる配列の解析結果を得る。それにより、効果的に有核赤血球の全ゲノム情報を得ることができ、更に、有核赤血球のゲノムに異常があるか否かを判断する効率を高めることができる。当業者は、ゲノムシーケンシングの具体的技術により、全ゲノムシーケンシングライブラリの構築方法を選択してもよい。全ゲノムシーケンシングライブラリを構築する詳細な方法は、配列の決定のための機器製造者、例えば、イルミナ会社が提供したマニュアルを参照すればよい。例えば、イルミナ会社のMultiplexing Sample Preparation Guide(Part#1005361;Feb 2010)やPaired−End SamplePrep Guide(Part#1005063;Feb 2010)を参照し、参照によりその内容をここに援用する。
【0022】
本発明の実施例によれば、更に、前記有核赤血球を溶解させて、前記有核赤血球の全ゲノムを放出させるステップを含んでもよい。本発明の一実施例によれば、有核赤血球を溶解させて、前記有核赤血球の全ゲノムを放出させる方法に、特に制限はなく、好ましくは、有核赤血球を十分に溶解可能であればよい。本発明の具体例によれば、アルカリ性の溶解液で前記有核赤血球を溶解して、前記有核赤血球の全ゲノムを放出させてもよい。本発明者は、これにより、効果的に前記有核赤血球を溶解させて、前記有核赤血球の全ゲノムを放出させることができ、放出された全ゲノムの配列を決定する際に、精度を高めることができ、更に、有核赤血球の染色体異数性を決める効率を高めることができることを発見した。本発明の実施例によれば、有核赤血球の全ゲノムを増幅させる方法に、特に制限はなく、PCRによる方法、例えば、PEP−PCR、DOP−PCR、やOmniPlex WGAを用いてもよいし、PCRによらない方法、例えば、MDA(多重置換増幅)を用いてもよい。本発明の具体例によれば、PCRによる方法、例えば、OmniPlex WGA法を用いることが好ましい。市販キットとしては、GenomePlex(Sigma Aldrich)PicoPlex(Rubicon Genomics)、REPLI−g(Qiagen)やillustra GenomiPhi(GE Healthcare)など適用できるが、これらに限定されない。そのため、本発明の具体例によれば、シーケンシングライブラリを構築する前に、有核赤血球全ゲノムをOmniPlex WGAで増幅させてもよい。それにより、全ゲノムを効果的に増幅でき、更に、有核赤血球の染色体異数性を判断する効率を高めることができる。
【0023】
本発明の実施例によれば、全ゲノムシーケンシングライブラリ(この明細書では、「核酸ライブラリー」又は「シーケンシングライブラリ」とも呼ばれる)を、前記増幅させた全ゲノムで構築するために、更に、次のステップを含む。
【0024】
まず、増幅させた全ゲノムを断片化させて、DNA断片を得る。本発明の実施例によれば、得られたDNAを断片化させる方法に、特に制限はないが、本発明のいくつかの実施例によれば、噴霧化、超音波破砕処理、HydroShear及び酵素での消化処理の少なくとも1種で、断片化してもよく、増幅させた全ゲノムをcovaris超音波破砕機で断片化することが好ましい。本発明の実施例によれば、断片化されたDNA断片の長さは200-400bp、好ましくは、350bpである。本発明者は、この長さで得られたDNA断片を用いることにより、核酸ライブラリーの構築、及び後続の処理に効果的に適用できるのを発見した。
【0025】
DNA断片を得た後に、得られたDNA断片にその末端を修復させて、末端が修復されたDNA断片を得ることができる。本発明の実施例によれば、DNA断片は、その末端を、5’→3’ポリメラーゼ活性と3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するが、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くクレノウ断片、及びT4 DNAポリメラーゼ、T4ポリヌクレオチドキナーゼで、修復されてもよい。これにより、DNA断片の末端を、効果的に修復させることができる。
【0026】
得られたDNA断片にその末端を修復させた後に、末端が修復されたDNA断片の3’末端に塩基Aを加えて、粘着末端Aを有するDNA断片を得ることができる。本発明のいくつかの具体例によれば、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性に欠けるKlenow断片(3’-5’エキソ−)で末端が修復されたDNA断片の3’末端に塩基Aを加えることにより、粘着末端Aを有するDNA断片を効果的に得ることができる。
【0027】
末端に塩基Aを加えた後に、粘着末端Aを有するDNA断片をアダプターに結合させて、結合生成物を得ることができる。本発明の実施例によれば、T4 DNAリガーゼを用いて、粘着末端Aを有するDNA断片をアダプターに結合させることにより、効果的に結合生成物を得ることができる。本発明の実施例によれば、このアダプターは、更にタグを含んでもよい。これにより、複数の有核赤血球試料の全ゲノムシーケンシングライブラリを同時に利便的に構築でき、複数の有核赤血球試料を組み合わせて、配列を決定できる。それにより、高スループットの配列解読装置を十分に利用し、時間を節約し、シーケンシングのコストを削減できる。
【0028】
結合生成物を得た後に、前記結合生成物をPCR増幅させて、第二の増幅生成物を得て、かつ前記第二の増幅生成物を精製し回収して、前記全ゲノムシーケンシングライブラリを構成する回収物を得る。
【0029】
全ゲノムシーケンシングライブラリを構築した後、本発明の実施例によれば、前記全ゲノムシーケンシングライブラリの配列を決定してもよい。当業者に理解されるように、本発明では、配列の決定手順はあらゆる配列決定法により実施されてもよい。配列決定法にはジデオキシ・チェーン・ターミネータ法(dideoxy chain−termination method)が含まれるがこれに限定さない。高スループットの配列決定法が好ましい。また、高スループットや大規模シークエンシングを特徴とする配列決定装置を用いれば、有核赤血球の染色体異数性を判断する効率を高めることができる。前記高スループットの配列解読法には、次世代法シークエンシング技術や単一分子のシークエンシング技術が含まれるが、これに限定されない。
【0030】
前記次世代法シークエンシング技術(Metzker ML.Sequencing technologies−the next generation.NatRev Genet.2010 Jan;11(1):31−46)には、イルミナ−Solexa(GA(商標),Hiseq2000(商標)など)、ABI−Solid、及びRoche−454(パイロシーケンシング)配列決定装置が含まれるが、これに限定されない。単一分子のシークエンシング技術には、真の単一分子のシークエンシング技術(Helicos社、True Single Molecule DNA sequencing)、単一分子のリアルタイムシークエンシング(Pacific Biosciences社、single molecule real−time(SMRT(商標))、及びナノ細孔シークエンシング技術(Oxford Nanopore Technologies社)など(Rusk,Nicole(2009−04−01).Cheap Third−Generation Sequencing.Nature Methods 6 (4):244−245)が含まれるが、これに限定されない。
【0031】
シーケンシング技術の進展に従って、他の配列決定法及び装置により全ゲノムの配列を決定してもよいのは、当業者に自明である。本発明の実施例によれば、全ゲノムの配列を決定して得たシーケンシングデータの長さに、特に制限はない。本発明の一具体的な実施例によれば、複数の前記シーケンシングデータは、平均長さが約50bpである。本発明者は、複数のシーケンシングデータの平均長さが約50bpである場合、シーケンシングデータの分析が容易になり、分析の効率を向上できるとともに、分析のコストを大幅に削減できることを発見した。更に、有核赤血球の染色体異数性を判断する効率が高められ、有核赤血球の染色体異数性を判断するコストを削減できる。ここで使用される「平均長」という用語は、各シーケンシングデータの長さの平均値を意味する。
【0032】
S30:配列の解析結果を得た後、当該配列の解析結果に基づいて、有核赤血球のゲノムに異常があるか否かを判断する。
本明細書で使用される「ゲノム異常」という用語は、広義に理解されるべきであり、ゲノム配列のいずれかの変化、例えば、染色体異数性、構造変異、一塩基突然変異などの遺伝的変異(http://en.wikipedia.org/wiki/Genetic_variation)を意味し、ゲノム修飾のサイトでの変化、例えば、メチル化レベルなども意味する。本発明の実施例によれば、検討対象とするゲノム異常は、染色体異数性、及び所定の領域での突然変異の少なくとも1種である。本発明の実施例では、所定の領域での突然変異は、構造変異(http://en.wikipedia.org/wiki/Structural_variation)又は一塩基突然変異(SNP,http://en.wikipedia.org/wiki/Single−nucleotide_polymorphism)を意味する。
【0033】
本発明の実施例によれば、ゲノムについて所定の領域での突然変異を判断するために、更に、次のステップを含んでもよい。
【0034】
まず、配列の解析結果に基づいて、有核赤血球の所定の領域での核酸配列を判断する。当業者は、既知方法により、所定の領域での核酸配列を決めることができる。例えば、既知の手法により、配列の解析結果について所定の領域に由来するシーケンシングデータを組み立てて、所定の配列に由来する核酸配列を得る。
【0035】
この所定の配列に由来する核酸配列を得た後、前記有核赤血球の所定の領域にある核酸配列を、比較対照となる核酸配列、好ましくは、健常者のゲノム配列と対比させる。その後、当該対比結果に基づいて、有核赤血球の所定の領域に異常があるか否かを判断する。本発明の実施例によれば、当該方法により検出できる所定の領域での突然変異は、挿入突然変異、欠失突然変異、置換突然変異、転座突然変異、コピー数変異、逆位突然変異及び一塩基変異多型から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0036】
図2を参照すると、本発明の実施例によれば、染色体異数性を判断する方法は、次のステップを含む。
【0037】
S100:まず、有核赤血球について全ゲノムの配列を決定して、第一の配列の解析結果を得る。全ゲノムの配列の決定については前述したので詳細な説明は省略する。
【0038】
S200:窓口
(ウインドウ)に第一の染色体の既知の配列を分ける。
有核赤血球のシーケンシングデータを解析するために、まず、それぞれ所定の長さを独立して有する窓口に既知の第一の染色体の配列を分ける。本発明の実施例によれば、これらの窓口の長さは、同一でもよいし、相違していてもよいし、特に制限はない。本発明の一実施例によれば、複数の前記窓口は、所定の長さがともに60KBである。それにより、有核赤血球における染色体異数性を判断する効率を向上できる。また、当業者は、必要に応じて、窓口に含まれる第一の染色体の配列範囲を選択してもよい。
【0039】
S300:各窓口に入るシーケンシングデータの数を判断する。
シーケンシングデータを得た後、得られたシーケンシングデータを既知の第一の染色体の配列と対比することによって、所定の長さを有する窓口にそれぞれ分けることができる。公知の方法や手段に基づいて、こられのシーケンシングデータの数を対比し算出できることは、当業者に自明である。例えば、シーケンシング機器製造会社からのソフトウェア、例えば、SOAPv2.20を用いて解析してもよい。本発明の一実施例によれば、前記各窓口に入るシーケンシングデータは、唯一適合のシーケンシングデータである。それにより、有核赤血球における染色体異数性を判断する効率を、シーケンシングデータをスクリーニングすることによって向上させることができる。ここで使用される「唯一適合のシーケンシングデータ」という用語は、シーケンシングデータを既知の染色体配列、例えば、ヒトゲノムであるHg19と対比させる時、唯一の参照ゲノムに完全に適合するシーケンシングデータであることを意味し、本明細書では、「unique read」とも呼ばれる。
【0040】
ここで使用される「第一の染色体」という用語は、広義に理解されるべきであり、研究対象となるあらゆる染色体であってもよく、その本数は、1本の染色体に限定されるものではなく、同時に染色体の全体を分析してもよい。本発明の実施例によれば、第一の染色体は、ヒト染色体におけるいずれかの染色体であってもよく、1〜23番染色体から選ばれるいずれかの染色体であってもよい。本発明の実施例によれば、21番染色体、18番染色体、13番染色体、X染色体、及びY染色体から選ばれる少なくとも1種である。それにより、一般的なヒトの染色体異常による疾患を効果的に判断でき、例えば、胎児の遺伝病を予測できる。従って、本発明の実施例における、有核赤血球の染色体異数性を判断する方法により、非常に効果的に体外生殖の分野における着床前スクリーニング検査(PGS)、着床前診断(PGD)、並びに胎児有核細胞による出生前検査に使用でき、単に有核赤血球を抽出することによって、胎児の染色体に異常があるか否かを迅速に予測し、胎児の重篤な遺伝性疾患を回避できる。本明細書で使用される「第一の染色体と完全に一致できる」という用語は、シーケンシングデータを、参照ゲノムにおける第一の染色体の既知の配列と対比させた後、第一の染色体の配列と完全に一致でき、これらのシーケンシングデータが第一の染色体の配列の解析結果に由来することを確定できることを意味する。
【0041】
S400:得られた各窓口に入るシーケンシングデータの数に基づいて、パラメータを決定する。
有核赤血球の全ゲノムの配列を決定した結果では、特定の染色体に対するシーケンシングデータの数と全ゲノムにおける当該染色体の含有量との間に正の相関があるので、配列の解析結果における、特定の染色体のシーケンシングデータの数、及び全ゲノムシーケンシングの総数を分析することにより、当該染色体を効果的に決定できる。そのため、第一の染色体の各窓口に入るシーケンシングデータの数を分析することによって、第一のパラメータを決定できる。当該第一のパラメータを用いて、第一の染色体に異数性があるか否かを確実に示すことができるようにするために、本発明の一実施例によれば、得られた各窓口に入るシーケンシングデータの数に基づいて第一のパラメータを決定することには、更に、それぞれ、各窓口に入るシーケンシングデータの数に対して所定の重みを付けるステップ、及び、前記第一の染色体の第一のパラメータとして、前記重みに基づいて各窓口に入る配列データの数を加重平均して中央値を算出するステップ、が含まれる。本発明者は、このような第一パラメータにより、シーケンシングデータにおける第一の染色体からのシーケンシングデータの数を効果的に反映できることを発見した。本発明の実施例によれば、重みをつけるのは、シーケンシングデータに存在する恐れがある誤差によるデータ歪曲を排除するためである。本発明の一例示によれば、所定の重みは、各窓口に入るシーケンシングデータの数を各窓口におけるGC含有量にそれぞれ関連させることにより得られる。それにより、シーケンシング技術によるGC含有量の高い領域に対する偏向誤差を効果的に排除する。本発明の実施例では、例えば次の方法によって重みを得ることができる。
【0042】
まず、ヒトの全ゲノムの各染色体を、所定の長さが60Kbである窓口にそれぞれ分け、各窓口の開始位置と終了位置とを記録して、そのGCの平均値(GC
refと記す)を統計する。試験サンプルのシーケンシングデータを得た後、配列の決定結果をゲノムと対比させる際に、唯一の参照ゲノムに完全に適合するシーケンシングデータ、即ち、唯一適合のシーケンシングデータを全部取り出して、そのサイト情報を得る。試験サンプルの対比結果に関わるゲノムの各染色体の各窓口における唯一適合のシーケンシングデータの数(UR
sampleと記す)を統計して、得られたUR
sampleとGC
refをグラフにプロットして、
図8Aを得た。
図8Aからわかるように、シーケンサーから導入されたGCの偏在により、おおよそ[0.35,0.55]領域にGCが分布しているシーケンシングデータは多数ある。平滑化スプライン法により、
図8Aにおける離散点を滑らかな曲線に当てはめて、GC含有量とシーケンシングデータの数との関係を示す
図8Bを得た。
図8Bにおいて、すべての窓口は、GCの平均のステップサイズである1%で分割される。当てはめたデータより、各GCの平均値と対応する各窓口での唯一適合のシーケンシングデータの数、即ちM
fitを得ることができる。式W
GC=M/M
fitにより、所定の重みであるW
GCを得た。当該重みの分布を
図8Cに示した。
図8Cにおいて、Mは、試験サンプルにおける、同一のGCの平均値を有する窓口に入る唯一適合のシーケンシングデータの数である。
【0043】
次に、第一のパラメータを得た後、第一のパラメータを所定の比較対照となるパラメータと比較させることによって、有核赤血球の前記第一の染色体に対する異数性があるか否かを判断できる。本明細書で使用される「所定の」という用語は、広く理解されるべきであり、予め実験により決定してもよいし、生体サンプルを分析する際、並列に実験して得てもよい。ここで使用される「並列に実験」という用語は、広義に理解されるべきであり、未知試料と既知試料とを、同時に配列決定及び分析をすることであっても、順に同じ条件で配列決定及び分析をすることであってもよい。例えば、異数性を有する既知の有核赤血球サンプル又は異数性を有さない有核赤血球サンプルを試験することによって得られる当該サンプルの第一のパラメータを、比較対照となるパラメータとして使用してもよい。
【0044】
また、本発明者は、同時期の配列決定における、異なる染色体のシーケンシングデータの数を比較及び統計分析することにより、第一の染色体に異数性があるか否かを判断できることを発見した。そのため、本発明の一実施例によれば、前記第一のパラメータに基づいて、有核赤血球の前記第一の染色体に対する異数性があるか否かを判断することには、更に、前記第一の染色体と同じ方法で第二の染色体の中央値を算出するステップ、前記第一の染色体の中央値と前記第二の染色体の中央値をt値検定することにより、前記第一の染色体と前記第二の染色体との差分値を得るステップ、及び、前記差分値を所定の第一の閾値及び第二の閾値と比較して、該差分値が所定の閾値を下回る場合は、前記有核赤血球の前記第一の染色体に対する異数性があると判断し、該差分値が所定の閾値を上回る場合には、前記有核赤血球の前記第一の染色体に対する異数性がないと判断するステップを含む。それにより、更に、第一の染色体と他の染色体との差異を明確に表すことができ、染色体異数性を判断する効率を向上できる。
【0045】
ここで使用される「第二の染色体」という用語は、広義に理解されるべきであり、研究対象となるあらゆる染色体であってもよい。その本数は、1本の染色体に限定されるものではなく、第一の染色体以外のすべての染色体を分析してもよい。本発明の実施例によれば、第二の染色体は、ヒト染色体におけるいずれかの染色体であってもよく、胎児有核赤血球では、第二の染色体は1〜23番ヒト染色体から選ばれるいずれかの染色体であると好ましい。本発明の実施例によれば、第二の染色体は1〜12番ヒト染色体から選ばれるいずれかの染色体であると好ましい。これらの染色体は一般に染色体異数性がないので、第一の染色体を検定する際に、参照として効果的に使用でき、検定の効率を向上できる。
【0046】
本発明の一実施例によれば、第一の染色体の中央値と第二の染色体の中央値とを、次の式により、t値検定する。
【0047】
【数1】
ここで、T
i,jは、第一の染色体と第二の染色体との差分値を、μ
iは、第一の染色体の中央値を、μ
jは、第二の染色体の中央値を、σ
iは、第一の染色体の各窓口に分布している配列データの数の標準偏差を、σ
jは、第二の染色体の各窓口に分布している配列データの数の標準偏差を、n
iは、第一の染色体における窓口の数を、n
jは、第二の染色体における窓口の数を示す。
【0048】
本発明の実施例によれば、所定の閾値の大きさは経験により得ることができ、又は異数性がある、あるいはは異数性がないことが知られる有核赤血球サンプルを予め試験して得られたt検定値を閾値として使用できる。前記所定の第一の閾値は−4以下で、前記第二の閾値は−3.5以上であると好ましい。
【0049】
本明細書で使用される「異数性」という用語は、染色体の正倍数性に相対的な用語であり、そのゲノム中において、一本又はいくつかの染色体を、欠失したり、追加したりすることを意味する。一般的に、通常の細胞の中には各染色体が二本存在するが、減数分裂の時に1対の相同染色体を単離しなかったり、予め、単離しておいたりすることによって形成された染色体数が異常な配偶子は、互いに、又は正常な配偶子に結合するため、異数性体細胞が生成される。また、体細胞分裂時にも、異数性体細胞、例えば、突然変異率が非常に高い腫瘍細胞が生成される。
【0050】
2.ゲノムに異常があるか否かを判断するシステム
本発明の別の態様によれば、本発明は、ゲノムに異常があるか否かを判断するシステム1000を提供する。
図3を参照すると、本発明の実施例によれば、システム1000は、母体血から胎児有核赤血球を単離する有核赤血球の分離装置100、前記有核赤血球のゲノムの少なくとも一部の配列を決定して、配列の解析結果を得る配列決定装置200、及び配列決定装置200から配列の解析結果を受信するように該配列決定装置200に接続され、配列の解析結果に基づいて、有核赤血球のゲノムに異常があるか否かを判断する分析装置300を含む。
【0051】
本発明の実施例によれば、有核赤血球の分離装置100は、更に、密度勾配遠心分離用試薬により、妊婦の末梢血である妊婦の生体試料に密度勾配遠心分離を行って、単核細胞を得る単核細胞の分離ユニット101と、該単核細胞の分離ユニット101に接続され、有核赤血球の表面抗原を特異的に認識できる抗体が固定化された磁気ビーズにより、前記単核細胞から有核赤血球が収集される磁気収集ユニット102を含んでもよい。それにより、当該有核赤血球の分離装置100によって、有核赤血球を、次の方法で効果的に分離できる。
【0052】
まず、密度勾配遠心分離用試薬により、前記末梢血に密度勾配遠心分離を行って、単核細胞を得る。単核細胞を得た後、有核赤血球の表面抗原を特異的に認識できる抗体が固定化された磁気ビーズにより、得られた単核細胞から有核赤血球が収集され、有核赤血球が抗体によって磁気ビーズに結合された後、磁気スクリーニングにより有核赤血球を得た。本発明の具体例によれば、前述の有核赤血球の分離装置100は、次の操作に適している。妊婦から末梢血を適当量採取し、抗凝固剤で抗凝固状態にし、血液試料を、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを含まない0.1Mのリン酸塩緩衝液(PBS)により、所定の比率で希釈し、希釈された試料を密度勾配遠心分離用試薬の上にゆっくりと置き、室温で密度勾配遠心分離を行う。遠心分離を行うと、単核細胞層が見える。慎重に該層細胞を吸引して、別の遠心分離管に移し、3倍体積量の1%のBSAを含むPBSバッファーに再懸濁させて、室温で再び遠心分離を行って、上澄みを捨てる。残留する密度勾配液を除去するように、得られた細胞ペレットを同じ方法で2回洗浄し、最終的に、0.1%のBSAを含むPBSに細胞ペレットを再懸濁させて、均一になるように吹かせた。そして、抗体が固定化された磁気ビーズを、20マイクロリットル/細胞10
6個の割合で加えて、4℃で静置した後、遠心分離を行って、上澄みを捨てた。ペレットを0.1%のBSAを含むPBSに再懸濁させて、磁気ビーズの分級システムを組み立てた。分級カラムを、500マイクロリットルの0.1%のBSAを含むPBSバッファーで洗浄し、液体が流れた後、分級された細胞をカラムに入れて、流出物を集めて、「陰性細胞」と記した。0.1%のBSAを含むPBSでチューブを洗浄することを液体が流れた後2回繰り返し、PBS/EDTA/BSAを分級カラムに入ることを液体が流れた後1回繰り返した。最終的に、0.1%のBSAを含むPBSを分級カラムに入れて、磁場から離して、別の遠心管に液体を流して、有核赤血球を得た。当該有核赤血球の分離方法については、前述したので詳細な説明は省略する。
【0053】
また、
図5を参照すると、本発明の実施例によれば、当該システムは、更に、全ゲノムシーケンシングライブラリの構築装置400を含んでもよい。本発明の実施例によれば、全ゲノムシーケンシングライブラリの構築装置400は、配列決定装置200に接続されて、配列決定装置200に配列を決定するための全ゲノムシーケンシングライブラリを提供する。
図6を参照すると、本発明の実施例によれば、全ゲノムシーケンシングライブラリの構築装置400は、更に、有核赤血球の溶解ユニット401、全ゲノムの増幅ユニット402、及びシーケンシングライブラリの構築ユニット403を含んでもよい。本発明の実施例によれば、有核赤血球の溶解ユニット401は、有核赤血球の分離装置100に接続され、有核赤血球を受け取って溶解させて、有核赤血球の全ゲノムを得る。全ゲノムの増幅ユニット402は、有核赤血球の溶解ユニット401に接続され、有核赤血球の全ゲノムを増幅させるために用いられる。シーケンシングライブラリの構築ユニット403は、増幅された全ゲノムを受け取るために用いられるとともに、全ゲノムシーケンシングライブラリを、増幅された全ゲノムで構築する。当該全ゲノムシーケンシングライブラリの構築装置400は、有核赤血球のシーケンシングライブラリを効果的に構築できる。ここで使用される「接続」という用語は、広く理解されるべきであり、直接的に接続しても、間接的に接続してもよく、また、機能的に接続できれば、同一の容器やデバイスを使用してもよい。例えば、有核赤血球溶解のユニット302と全ゲノムの増幅ユニット303とを、同一のデバイスで動作させてもよい。即ち、有核赤血球を溶解させた後に、同一のデバイス又は容器において全ゲノムを増幅させて、全ゲノム増幅反応に適するように、デバイス内の条件(反応条件及び反応系の組成を含む)を変えればよい。このように、有核赤血球の溶解ユニット302と全ゲノムの増幅ユニット303とが機能的に接続されることを実現することが、「接続」という用語に含まれると考えることができる。当業者は、用いられるゲノムシーケンシングの具体的技術によって、全ゲノムシーケンシングライブラリの方法及びデバイスを選択してもよい。全ゲノムシーケンシングライブラリを構築する詳細な方法は、シーケンサーの製造者、例えば、イルミナ社が提供したマニュアルを参照すればよい。本発明の一実施例によれば、全ゲノムの増幅ユニット303は、前記全ゲノムを、OmniPlex WGA法で増幅させるための装置を含む。そのように、全ゲノムを効果的に増幅させ、有核赤血球にゲノム異常があるか否かを判断する効率をさらに向上できる。
【0054】
本発明の一実施例によれば、全ゲノムの配列決定装置100は、illumina−Solexa、ABI−Solid、Roche−454、及び単一分子のシークエンシング装置から選ばれる少なくとも1種を含む。それにより、有核赤血球の染色体異数性を判断する効率を、高スループット、大規模シークエンシングを特徴とするシークエンシング装置で、向上できる。当業者にとって、他の配列決定法及び装置、例えば、第三世代のシーケンシング技術、及び将来開発される進歩的なシーケンシング技術で、全ゲノムの配列を決定してもよいことは自明である。本発明の実施例によれば、全ゲノムシーケンシングにより得られたシーケンシングデータの長さに、特に制限はない。
【0055】
前述のように、本発明の実施例によれば、有核赤血球の配列の解析結果を得た後に、染色体異数性を分析してもよい。従って、本発明の実施例によれば、分析装置300は、以下を行うために使用できる。まず、それぞれ所定の長さを独立して有する複数の窓口に既知の第一の染色体の配列を分ける。次に、得られたシーケンシングデータを、当該既知の第一の染色体の配列と対比させて、各窓口に入るシーケンシングデータの数を特定する。最後に、得られた各窓口に入るシーケンシングデータの数に基づいて、第一のパラメータを決定し、前記第一のパラメータに基づいて、有核赤血球の前記第一の染色体に対する異数性があるか否かを判断する。当該システム1000により、有核赤血球に染色体異数性があるか否かを効果的に判断できる。本発明の一実施例によれば、分析装置300は、更に、配列対比ユニット(図示せず)を含む。配列対比ユニットは、配列の決定結果を既知のゲノム配列情報と比較することにより、参照ゲノムと完全に対応できるシーケンシングデータ、及び第一の染色体由来のシーケンシングデータを得るために使用される。それにより、特定の染色体由来のシーケンシングデータを効果的に決定し、有核赤血球の染色体異数性を判断する効率を向上できる。ここで使用される「第一の染色体」という用語は、広義に理解されるべきであり、研究対象となるあらゆる染色体であってもよく、その本数は、1本の染色体に限定されず、同時に染色体全体を分析してもよい。本発明の実施例によれば、第一の染色体は、ヒト染色体におけるいずれかの染色体であってもよい。例えば、1番染色体、18番染色体、13番染色体、X染色体、及びY染色体から選ばれる少なくとも1種であってもよい。それにより、一般的なヒトの染色体異常による疾患を、効果的に判断でき、例えば、胎児の遺伝病を予測できる。従って、本発明の実施例における、有核赤血球の染色体異数性を判断する方法は、非常に効果的に体外生殖の分野における着床前スクリーニング検査(PGS)、着床前診断(PGD)、並びに胎児有核細胞による出生前検査に使用できるので、有核赤血球を抽出するだけで、胎児の染色体に異常があるか否かを迅速に予測し、胎児の重篤な遺伝性疾患を回避できる。
【0056】
第一のパラメータなどの事項については前述しているので、詳細な説明は省略する。
【0057】
なお、本発明の一実施例によれば、分析装置300は、更に、次の手順によって、得られた各窓口に入るシーケンシングデータの数に基づいて、第一のパラメータを決定するユニットを含んでもよい。当該手順は、各窓口に入るシーケンシングデータの数に対して、それぞれ、所定の重みを付けるステップ、及び、前記第一の染色体の第一のパラメータとして、前記重みに基づいて各窓口に入る配列データの数を加重平均して中央値を算出するステップ、を含む。
【0058】
本発明の一実施例によれば、分析装置300は、更に、次の手順によって、前記第一のパラメータに基づいて、有核赤血球の前記第一の染色体に対する異数性があるか否かを判断するユニットを含んでもよい。当該手順は、前記第一の染色体と同じ方法で第二の染色体の中央値を算出するステップ、前記第一の染色体の中央値と前記第二の染色体の中央値とをt値検定することにより、前記第一の染色体と前記第二の染色体との差分値を得るステップ、及び、前記差分値を所定の第一の閾値及び第二の閾値と比較して、該差分値が所定の閾値を下回ると、前記有核赤血球の前記第一の染色体に対する異数性があると判断するステップを含む。
【0059】
本発明の一実施例によれば、分析装置300は、更に、第一の染色体の中央値と第二の染色体の中央値とを、次の式により、t値検定するユニットを含んでもよい。
【0060】
【数2】
ここで、T
i,jは、第一の染色体と第二の染色体との差分値を、μ
iは、第一の染色体の中央値を、μ
jは、第二の染色体の中央値を、σ
iは、第一の染色体の各窓口に分布しているシーケンシングデータの数の標準偏差を、σ
jは、第二の染色体の各窓口に分布しているシーケンシングデータの数の標準偏差を、n
iは、第一の染色体における窓口の個数を、n
jは、第二の染色体における窓口の個数を示す。
【0061】
また、本発明の実施例によれば、分析装置300は、ゲノムにおいて、所定の領域に突然変異があるか否かを判断するのに適する。そのように、本発明の一実施例によれば、分析装置300は、更に、前記配列の解析結果に基づいて、有核赤血球の所定の領域における核酸配列を決める核酸配列決定ユニット、前記核酸配列決定ユニットと接続され、前記有核赤血球の所定の領域における核酸配列を、比較対照となる核酸配列、好ましくは、健常者のゲノム配列と対比させる対比ユニット、及び前記対比ユニットと接続され、当該対比結果に基づいて、有核赤血球の所定の領域に異常があるか否かを判断する異常判断ユニットを含んでもよい。所定の領域に突然変異があるか否かを判断する方法及び詳細については前述したので詳細な説明は省略する。
【0062】
係る方法について説明した他の特徴及び利点は、有核赤血球に異常があるか否かを判断するシステムにも適用できるので詳細な説明は省略する。
【0063】
3.胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法
本発明の更に別の態様によれば、本発明は、胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法を提供する。これは、次の手順を含む。
【0064】
まず、妊婦の生体試料から胎児有核赤血球を単離する。胎児有核赤血球を得た後、前記有核赤血球のゲノムの少なくとも一部の配列を決定して、配列の解析結果を得る。最後に、得られた配列の解析結果に基づいて、胎児有核赤血球のゲノムを効果的に配列決定する。
【0065】
ここで使用される「ゲノム配列」という用語は、広義に理解されるべきであり、つまり、全ゲノムの配列であっても、ゲノム配列の一部であってもよい。以上は、母体血から胎児有核赤血球を単離するステップ、及び、前記有核赤血球のゲノムの少なくとも一部の配列を決定するステップを説明したが、ここでは詳細な説明は省略する。
【0066】
なお、本発明の一実施例によれば、前記妊婦の生体試料は妊婦末梢血である。本発明の一実施例によれば、検討対象として12−20週の在胎週数である妊婦の生体試料を採取する。本発明の一実施例によれば、前記妊婦末梢血から胎児有核赤血球を単離するのは、更に、密度勾配遠心分離用試薬により、前記末梢血に密度勾配遠心分離を行って、単核細胞を得るステップ、及び、有核赤血球の表面抗原を特異的に認識できる抗体が固定化された磁気ビーズにより、前記単核細胞から有核赤血球を分離するステップを含む。本発明の一実施例によれば、前記密度勾配遠心分離用試薬は、フィコールであり、例えば800Xg、30分で前記勾配遠心を行う。本発明の一実施例によれば、前記単核細胞を得た後であって、CD71抗体が固定化された磁気ビーズにより、前記有核赤血球が収集される前に、さらに、1%のBSAを含むPBSバッファーで前記単核細胞を洗浄して、残留する密度勾配遠心分離用試薬を除去する。前記PBSバッファーは、カルシウムイオンやマグネシウムイオンを含まないと好ましい。本発明の一実施例によれば、1%のBSAを含むPBSバッファーで前記単核細胞を洗浄することには、更に、前記単核細胞を1%のBSAを含むPBSバッファーと混合させて、単核細胞を含む浮遊液を得るステップ、及び前記単核細胞を含む浮遊液に、好ましくは、200Xg、5分で遠心分離を行って、上澄みを捨てて、洗浄した有核赤血球を得るステップが含まれる。本発明の一実施例によれば、前記抗体は、CD71を特異的に認識できる抗体であると好ましい。本発明の一実施例によれば、有核赤血球1個の配列が決定される。本発明の一実施例によれば、有核赤血球の全ゲノムの配列が決定される。本発明の一実施例によれば、有核赤血球の全ゲノムの配列を決定することには、更に、前記有核赤血球の全ゲノムを増幅して、増幅された全ゲノムを得るステップと、増幅された全ゲノムで、全ゲノム配列を決めるためのライブラリーを構築するステップと、全ゲノム配列を決定するためのライブラリーを配列決定することにより、配列データからなる配列の解析結果を得るステップと、が含まれる。本発明の一実施例によれば、有核赤血球全ゲノムが、OmniPlex WGA法で増幅される。本発明の一実施例によれば、シーケンシングライブラリを前記増幅させた全ゲノムで構築することには、更に、増幅された全ゲノムを断片化させて、DNA断片を得るステップ、得られたDNA断片にその末端を修復させて、末端が修復されたDNA断片を得るステップ、末端が修復されたDNA断片の3’末端に塩基Aを加えることにより、粘着末端Aを有するDNA断片を得るステップ、前記粘着末端Aを有するDNA断片をアダプターに結合させて、結合生成物を得るステップ、前記結合生成物をPCR増幅させて、第二の増幅生成物を得るステップ、及び、前記第二の増幅生成物を精製し回収して、前記全ゲノムシーケンシングライブラリを構成する回収物を得るステップ、を含む。本発明の一実施例によれば、増幅された全ゲノムを、コバリス社製の超音波破砕機にて断片化させる。本発明の一実施例によれば、前記DNA断片長は350bpであると好ましい。本発明の一実施例によれば、5’→3’ポリメラーゼ活性と3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するが、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くクレノウ断片、及びT4 DNAポリメラーゼ、T4ポリヌクレオチドキナーゼで、前記DNA断片にその末端を修復させる。本発明の一実施例によれば、クレノウ断片(3’−5’ exo-)を用いて、前記末端が修復されたDNA断片の3’末端に塩基Aを加える。本発明の一実施例によれば、T4 DNAポリメラーゼを用いて、前記粘着末端Aを有するDNA断片をアダプターに結合させる。本発明の一実施例によれば、Hiseq2000、SOLiD、454、及び単一分子のシークエンシング装置から選ばれる少なくとも1つを用いて、前記配列を決定する。これらの特徴の利点については前述したので、詳細な説明は省略する。
【0067】
以上、有核赤血球からのゲノムに異常があるか否かを判断する方法について説明した他の特徴及び利点も、同様に、胎児有核赤血球のゲノム配列を判断する方法に適用できるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0068】
以下、実施例により本発明を説明する。なお、これらの実施例は説明のためだけのものであり、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【実施例】
【0069】
(実施例1)
実験材料
サンプルである末梢血は、いずれもダウン症スクリーニングを受けたハイリスクの妊婦由来のものである。他の実験材料は、特に記載がない限り、いずれも本分野における従来の方法で用いられる試薬、又は市販のものである。
【0070】
実験手順
1.有核赤血球抽出
妊婦から末梢血を3ml採取し、抗凝固剤としてEDTAを用い、血液試料を、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを含まない0.1Mのリン酸塩緩衝液(PBS)を用いて、1:1の割合で希釈し、希釈された試料を、密度が1.077である3mlのFicoll試薬(Sigma社製、アメリカ)の上にゆっくりと置き、室温、800g×30minで密度勾配遠心分離を行った。遠心分離を行った後、単核細胞層が見えた。慎重に層細胞を吸引して、1.5mlの遠心分離管に移し、3倍体積量の1%のBSAを含むPBSバッファーに再懸濁させて、室温、200g×5minで再び遠心分離を行って、上澄みを捨てた。残留する密度勾配液を除去するように、得られた細胞ペレットを同じ方法により、2回洗浄した。最終的に、0.1%のBSAを含む300mlのPBSに細胞ペレットを再懸濁させて、均一になるように吹かせた。細胞数を測定し、そして、CD71抗体が固定化された磁気ビーズ(ミルテニーバイオテク株式会社、ドイツ)を、20マイクロリットル/細胞10
6個の割合で加えて、4℃で15min静置した後、遠心分離を行って、上澄みを捨てた。0.1%のBSAを含むPBSにペレットを再懸濁させて、磁気ビーズの分級システム(ミルテニーバイオテク株式会社、ドイツ)を組み立てた。分級カラムを、0.1%のBSAを含む500マイクロリットルのPBSバッファーで洗浄し、液体が流れた後、分級された細胞をカラムに入れて、流出物を集めて、「陰性細胞」と記した。0.1%のBSAを含むPBSでチューブを洗浄することを、液体が流れた後、2回繰り返し、PBS/EDTA/BSAを分級カラムに入れることを、液体が流れた後、1回繰り返した。最終的に、0.1%のBSAを含むPBSを分級カラムに入れて、磁場から離して、15mlの遠心管に液体を流して、「陽性細胞」と記した。陽性細胞に遠心分離を行い、最下部の約100マイクロリットルを残し、得られた有核赤血球を「GP9」と記した。
【0071】
2.全ゲノムシーケンシングライブラリの構築
Sigma社の操作マニュアルに従い、GenomePlex Single Cell Whole Genome Amplificationキットにより、有核赤血球全体に全ゲノム増幅を行った。超音波破砕装置であるコバリスを用いて、コバリスを用いた場合の取扱説明書に従って、増幅された生成物を断片化させて、DNA断片の長さが350bpのDNA断片を得た。
【0072】
断片化された生成物にその末端を修復させて、末端に塩基Aを加えた。具体的には、以下の通りであった。
【0073】
末端修復は、次の反応系で行われる。
10×T4ポリヌクレオチドキナーゼの緩衝液 10μl
dNTPs(10mM) 4μl
T4 DNAポリメラーゼ 5μl
クレノウ断片 1μl
T4ポリヌクレオチドキナーゼ 5μl
断片化された生成物であるDNA断片 30μl
ddH
2Oを100μl追加する。
【0074】
20℃で、反応を30分行った後、PCR生成物の精製キット(QIAGEN)を用いて、末端が修復された生成物を回収した。最後に、得られた生成物をEB緩衝液34μlに溶かした。
【0075】
末端に塩基Aを加えるのは、次の反応系で行われる。
10×クレノウ緩衝液 5μl
dATP(1mM) 10μl
クレノウ(3’-5’ exo−) 3μl
DNA 32μl
【0076】
37℃で、孵化を30分行った後、MinElute(登録商標) PCR生成物の精製キット(QIAGEN)により精製して得られた生成物を12μlのEB緩衝液に溶かした。
【0077】
アダプターへの結合反応は、以下の通りであった。
2x Rapid DNA結合の緩衝液 25μl
PEI Aアダプター oligomix(20μM) 10μl
T4 DNAポリメラーゼ 5μl
末端に塩基Aを加えたDNA 10μl
【0078】
20℃で、反応を15分行った後、PCR生成物の精製キット(QIAGEN)を用いて、結合生成物を回収した。最後に、得られた生成物を32μlのEB緩衝液に溶かした。
【0079】
0.2mlのPCRチューブでPCRの反応系を準備した。
試料 10μl
Phusion DNAポリメラーゼMix 25μl
PCR用プライマー
*(10pmol/μl) 1μl
Nタグ付プライマー
**(10pmol/μl) 1μl
UltraPureTM水 13μl
【0080】
*PCR用プライマーの配列は、AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTであった。
【0081】
**Nタグ付のプライマーの配列は、CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATCGTGATGTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTであった。
【0082】
反応条件は以下の通りであった。
【表A】
【0083】
PCR生成物の精製キット(QIAGEN)を用いて、PCRの生成物を回収した。最後に、得られた生成物を22μlのEB緩衝液に溶かした。
【0084】
タグ付きの(index)Nは、各ライブラリーにおいて8bpを有する唯一のタグ配列であり、構築済みのライブラリーはAgilent(登録商標)Bioanalyzer 2100で検出された。結果を
図8に示した。
図8に示すように、構築されたライブラリーは、分布の範囲が要求を満たしていた。要求を満たすようにライブラリーをそれぞれQ−PCR法で定量して、フローセル(flow cell)におけるレーン(lane)でライブラリーを混合し、コストを削減するために、シングルパスシーケンスのように配列を決定した。本例では、illumina(登録商標)社の取扱説明書(http://www.illumina.com/support/documentation.ilmnから入手できる)を参照し、illumina(登録商標)HiSeq 2000(商標)シーケンサー及び方法を利用して、配列を決定した。このシーケンサーは、シークエンシング反応のサイクル数がPE91index(即ち、91bp indexで双方向からのシークエンシング)である。
【0085】
3.配列の解析
配列の解析結果を表1に示す。配列決定されたサンプルGP9は、配列データの総数(読み出し)が13,407,381で、対比可能な参照ゲノム(HG19)の数が9,217,701で、対比率が68.70%で、唯一適合のシーケンシングデータの数が7,341,230で、唯一の対比率が80%であった。
【0086】
【表1】
【0087】
データを予備分析した後に、SOAP v2.20を用いて、シーケンシングの読み取り長を参考配列であるhg19と対比させる。対比の方法は、以下の通りである。
【0088】
重みを次の方法により得る。
【0089】
まず、ヒト全ゲノムの各染色体を、それぞれ、所定の長さが60Kbである窓口に分け、各窓口の開始位置と終了位置とを記録して、そのGCの平均値(GC
refと記す)を統計する。試験サンプルのシーケンシングデータを得た後、配列の決定結果をゲノムと対比させる時、唯一の参照ゲノムに完全に適合するシーケンシングデータ、即ち、唯一適合のシーケンシングデータを取り出して、そのサイト情報を得る。試験サンプルの対比結果と対応する、ゲノムにおける各染色体の、各窓口における唯一適合のシーケンシングデータの数(UR
sampleと記す)を統計して、得られたUR
sampleとGC
refをグラフにプロットして、
図8Aを得た。
図8Aを参照すると、シーケンサーから導入されたGCの偏在によって、おおよそ[0.35,0.55]領域にGCが分布しているシーケンシングデータは多数あった。平滑化スプライン法により、
図8Aにおける離散点を滑らかな曲線に当てはめて、反応中のGC含有量とシーケンシングデータ数との関係を示す図である
図8Bを得た。
図8Bにおいて、すべての窓口は、GCの平均のステップサイズである1%で分割される。当てはめたデータより、各GCの平均値と対応する、各窓口における唯一適合のシーケンシングデータ数、即ちM
fitを得ることができる。式W
GC=M/M
fitにより、所定の重み付け係数であるW
GCを得て、当該重み付け係数の分布を
図8Cに示した。
図8Cにおいて、Mは、試験サンプルにおける、GCの平均値が等しい窓口に入る唯一適合のシーケンシングデータ数である。
【0090】
得られた重み付け係数を用いて、目的とするサンプルに、ゲノムでの各染色体窓口に入る唯一適合のシーケンシングデータ数を、各窓口に応じて、UR
fit=UR
bin*W
GCにより修正した。各染色体を修正した唯一適合のシーケンシングデータ数の中央値UR
i(i=1,2,…,22)を算出して、棒グラフ、即ち
図8Dを描いた。
図8Dを参照すれば、サンプルGP9では、21番染色体に対応する唯一適合のシーケンシングデータ数は他の染色体よりも極めて高く、21番染色体に異数性があると決定できる。
【0091】
また、一般的な異数体である21番染色体、18番染色体、13番染色体にt値検定を行った。これらの染色体のシーケンシングデータ数を、次の式により、t値検定する。
【0092】
【数3】
ここで、μは、目的とするサンプルの染色体UR
i(i=13,18,21;j=1,2,…,22)を、i、jは、染色体i、j、σはある染色体に対応するUR分布の標準偏差を、nは、染色体における窓口の個数を示す。
【0093】
染色体iを1-12番染色体に対比させて、次の式により、差分の平均値(t−value)を算出する。
【0094】
【数4】
【0095】
バラツキが小さく、注目する染色体(例えば、chr13,chr18及びchr21)を除外するので、1-12番染色体を選択する。この方法で設定された閾値(正常染色体)がt−value≦−4である場合、それに対応する染色体は3倍体なので、ハイリスクとし、−4<t−value≦-3.5である場合、結果が不確定であるとし、t−value>−3.5である場合、ローリスクとする。表2に、サンプルGP9で、13番染色体、18番染色体及び21番染色体に対応するt−valueを示す。表2を参照すると、サンプル名GP9の13番、18番及び21番染色体に対応するt−valueにおいて、21番染色体のt−valueは21を上回り、該染色体は3倍体なので、ハイリスクとする。
【0096】
【表2】
【0097】
本明細書において、「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例示」、「具体的な例示」または「いくつかの例示」という用語は、この実施例または例示に関連して説明した特徴、構造、材料、または特性が、少なくとも本開示の実施例または例示の一つに含まれることを意味する。本明細書において、前記の概略の用語は、必ずしも同じ実施例または例示について言及していない。更に、特徴、構造、材料、又は特性は、いずれかの実施例又は例示に、適切な方法で組み合わせることができる。
【0098】
本発明の実施例を説明したが、本発明の原理および趣旨から逸脱しなければ、種々の変形および改変をすることができ、本発明の範囲は、添付の請求の範囲およびその均等物を含むことは、当業者に理解される。
(付記)
(付記1)
妊婦の生体試料から胎児有核赤血球を単離するステップ、
前記有核赤血球のゲノムの少なくとも一部の配列を決定して、配列の解析結果を得るステップ、及び、
前記配列の解析結果に基づいて、前記有核赤血球のゲノムに異常があるか否かを判断するステップ、を含む、
ことを特徴とするゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記2)
前記妊婦の生体試料は妊婦末梢血である、
ことを特徴とする付記1に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記3)
検討対象として12-20週の在胎週数である妊婦の生体試料を採取する、
ことを特徴とする付記1又は2に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記4)
妊婦末梢血から前記胎児有核赤血球を単離するステップは、更に、
密度勾配遠心分離用試薬により、前記末梢血に密度勾配遠心分離を行って、単核細胞を得るステップ、及び、
有核赤血球の表面抗原を特異的に認識できる抗体が固定化された磁気ビーズにより、前記単核細胞から有核赤血球を収集するステップ、を含む、
ことを特徴とする付記2又は3に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記5)
前記密度勾配遠心分離用試薬はポリショ糖であり、例えば800Xg、30分で前記勾配遠心を行う、
ことを特徴とする付記4に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記6)
前記単核細胞を得た後であって、CD71抗体が固定化された磁気ビーズにより、前記有核赤血球を収集する前に、更に、残留する密度勾配遠心分離用試薬を除去するように、1%のBSAを含むPBSバッファーで前記単核細胞を洗浄するステップを含み、
前記PBSバッファーは、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを含まない、
ことを特徴とする付記4に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記7)
1%のBSAを含むPBSバッファーで前記単核細胞を洗浄するステップは、更に、
前記単核細胞を1%のBSAを含むPBSバッファーと混合させて、単核細胞を含む浮遊液を得るステップ、及び、
前記単核細胞を含む浮遊液に、好ましくは、200Xg、5分で遠心分離を行って、上澄みを捨てて、洗浄した有核赤血球を得るステップ、を含む、
ことを特徴とする付記6に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記8)
前記抗体は、CD71を特異的に認識できる抗体である、
ことを特徴とする付記4に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記9)
有核赤血球1個の配列決定を行う、
ことを特徴とする付記1に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記10)
有核赤血球の全ゲノムの配列決定を行う、
ことを特徴とする付記1に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記11)
有核赤血球の全ゲノムの配列決定を行うことは、更に、
前記有核赤血球の全ゲノムを増幅して、増幅された全ゲノムを得るステップと、
増幅された全ゲノムで、全ゲノムシーケンシングライブラリを構築するステップと、
前記ライブラリーの配列を決定して、配列データからなる配列の解析結果を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする付記10に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記12)
前記有核赤血球全ゲノムを、OmniPlex WGAで増幅させる、
ことを特徴とする付記11に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記13)
前記全ゲノムシーケンシングライブラリを構築するステップは、更に、
増幅された全ゲノムを断片化させて、DNA断片を得るステップと、
前記DNA断片にその末端を修復させて、末端が修復されたDNA断片を得るステップと、
末端が修復されたDNA断片の3’末端に塩基Aを加えて、粘着性末端Aを有するDNA断片を得るステップと、
前記粘着性末端Aを有するDNA断片をアダプターに結合させて、結合生成物を得るステップと、
前記結合生成物をPCR増幅させて、第二の増幅生成物を得るステップと、
前記第二の増幅生成物を精製して回収し、前記全ゲノムシーケンシングライブラリを構成する回収物を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする付記11に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記14)
増幅された全ゲノムを、Covaris破砕機にて、断片化させる、
ことを特徴とする付記13に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記15)
前記DNA断片長は350bpである、
ことを特徴とする付記13に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記16)
5’→3’ポリメラーゼ活性と3’→5’エキソヌクレアーゼ活性とを有し、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くクレノウ断片、T4 DNAポリメラーゼ、及びT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて、前記DNA断片にその末端を修復させる、
ことを特徴とする付記15に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記17)
クレノウ断片(3’−5’ exo−)を用いて、前記末端が修復されたDNA断片の3’末端に塩基Aを加える、
ことを特徴とする付記13に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記18)
T4 DNAポリメラーゼを用いて、前記粘着末端Aを有するDNA断片をアダプターに結合させる、
ことを特徴とする付記13に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記19)
Hiseq2000、SOLiD、454、及び単一分子のシークエンシング装置から選ばれる少なくとも1つを用いて、前記配列決定を行う、
ことを特徴とする付記1に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記20)
前記ゲノム異常は、染色体異数性、及び所定の領域での突然変異から選ばれる少なくとも1種である、
ことを特徴とする付記1に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記21)
前記ゲノム異常は染色体異数性であり、
前記配列の解析結果に基づいて、前記有核赤血球のゲノムに異常があるか否かを判断するステップは、更に、
有核赤血球の全ゲノムの配列を決定して、配列データからなる配列の解析結果を得るステップ、
所定の長さを独立して有する複数の窓口に既知の第一の染色体の配列を分けるステップ、
前記配列の解析結果に係る配列データを、前記既知の第一の染色体の配列と対比して、各窓口に入る配列データの数を特定するステップ、
各窓口に入る配列データの数に基づいて、第一のパラメータを決定するステップ、及び、
前記第一のパラメータに基づいて、前記有核赤血球の前記第一の染色体に対する異数性があるか否かを判断するステップ、を含む、
ことを特徴とする付記1に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記22)
前記第一の染色体は、ヒト染色体における21番染色体、18番染色体、13番染色体、X染色体、及びY染色体から選ばれる少なくとも1種である、
ことを特徴とする付記21に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記23)
前記複数の窓口は、同一の長さを有する、
ことを特徴とする付記21に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記24)
前記複数の窓口は60KBの長さを有する、
ことを特徴とする付記22に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記25)
前記各窓口に入る配列データは、唯一適合の配列データである、
ことを特徴とする付記21に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記26)
前記各窓口に入る配列データの数に基づいて、第一のパラメータを決定するステップは、更に、
各窓口に入る配列データの数に所定の重みを付けるステップ、及び、
前記第一の染色体の第一のパラメータとして、前記重みに基づいて各窓口に入る配列データの数を加重平均して中央値を算出するステップ、を含む、
ことを特徴とする付記21に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記27)
前記所定の重みは、各窓口に入る配列データの数を、各窓口におけるGC含有量にそれぞれ関連させることにより得られる、
ことを特徴とする付記26に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記28)
前記第一のパラメータに基づいて、前記有核赤血球の前記第一の染色体に対する異数性があるか否かを判断するステップは、更に、
前記第一の染色体と同じ方法で第二の染色体の中央値を算出するステップ、
前記第一の染色体の中央値と前記第二の染色体の中央値とをt値検定することにより、前記第一の染色体と前記第二の染色体との差分値を得るステップ、及び、
前記差分値を所定の第一の閾値及び第二の閾値と比較して、該差分値が所定の閾値を下回ると、前記有核赤血球の前記第一の染色体に対する異数性があると判断し、該差分値が所定の閾値を上回ると、前記有核赤血球の前記第一の染色体に対する異数性がないと判断するステップ、を含む、
ことを特徴とする付記27に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記29)
前記第二の染色体は1−12番ヒト染色体から選ばれるいずれか一種である、
ことを特徴とする付記28に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記30)
前記第一の染色体の中央値と前記第二の染色体の中央値とを、次の式
【数5】
(ここで、Ti,jは、第一の染色体と第二の染色体との差分値を、μiは、第一の染色体の中央値を、μjは、第二の染色体の中央値を、σiは、第一の染色体の各窓口に分布している配列データ数の標準偏差を、σjは、第二の染色体の各窓口に分布している配列データ数の標準偏差を、niは、第一の染色体における窓口の数を、njは、第二の染色体における窓口の数を示す。)
により、t値検定する、
ことを特徴とする付記28に記載のゲノムに異常の有無を判断する方法。
(付記31)
前記所定の第一の閾値は−4以下で、前記第二の閾値は−3.5以上である、
ことを特徴とする付記26に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記32)
前記ゲノム異常は、所定の領域での突然変異である、
ことを特徴とする付記1に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記33)
前記配列の解析結果に基づいて、前記有核赤血球のゲノムに異常があるか否かを判断するステップは、更に、
前記配列の解析結果に基づいて、有核赤血球の所定の領域における核酸配列を決めるステップ、
前記有核赤血球の所定の領域における核酸配列を、比較対照となる核酸配列、好ましくは、健常者のゲノム配列と対比するステップ、及び、
該対比結果に基づいて、前記有核赤血球の所定の領域に異常があるか否かを判断するステップ、を含む、
ことを特徴とする付記32に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記34)
前記所定の領域での突然変異は、挿入突然変異、欠失突然変異、置換突然変異、転座突然変異、逆位突然変異、コピー数変異及び一塩基多型の少なくとも1種を含む、
ことを特徴とする付記33に記載のゲノムの異常の有無を判断する方法。
(付記35)
妊婦の生体試料から胎児有核赤血球を単離する有核赤血球の分離装置、
前記有核赤血球のゲノムの少なくとも一部の配列を決定して、配列の解析結果を得る配列決定装置、及び、
前記配列決定装置から配列の解析結果を受信するように該配列決定装置に接続され、前記配列の解析結果に基づいて、前記有核赤血球のゲノムに異常があるか否かを判断する分析装置、を含む、
ことを特徴とするゲノムの異常の有無を判断するシステム。
(付記36)
前記有核赤血球の分離装置は、更に、
密度勾配遠心分離用試薬により、妊婦の末梢血である妊婦の生体試料に密度勾配遠心分離を行って、単核細胞を得る単核細胞の分離ユニットと、
該単核細胞の分離ユニットに接続され、有核赤血球の表面抗原を特異的に認識できる抗体が固定化された磁気ビーズにより、前記単核細胞から有核赤血球を収集する磁気収集ユニットと、を含む、
ことを特徴とする付記35に記載のシステム。
(付記37)
前記シーケンサーは、Hiseq2000、SOLiD、454、及び単一分子のシークエンシング装置から選ばれる少なくとも1つである、
ことを特徴とする付記35に記載のシステム。
(付記38)
前記配列決定装置に接続され、該配列決定装置に配列を決定する全ゲノムシーケンシングライブラリを提供する全ゲノムシーケンシングライブラリの構築装置を含み、
該全ゲノムシーケンシングライブラリの構築装置は、更に、
前記有核赤血球の分離装置に接続され、有核赤血球を受け取って溶解させて、有核赤血球の全ゲノムを得る有核赤血球の溶解ユニット、
前記有核赤血球の溶解ユニットに接続され、有核赤血球の全ゲノムを増幅させて、増幅された全ゲノムを得る全ゲノムの増幅ユニット、及び、
増幅された全ゲノムを受け取るとともに、全ゲノムシーケンシングライブラリを前記増幅された全ゲノムで構築するシーケンシングライブラリの構築ユニット、を含む、
ことを特徴とする付記34に記載のシステム。
(付記39)
前記分析装置は、
所定の長さを独立して有する複数の窓口に既知の第一の染色体の配列を分け、
前記配列の解析結果に係る配列データを、前記既知の第一の染色体の配列と対比して、各窓口に入る配列データの数を特定し、
各窓口に入る配列データの数に基づいて、第一のパラメータを決定し、
前記第一のパラメータに基づいて、前記有核赤血球の前記第一の染色体に対する異数性があるか否かを判断する、ように構成される、
ことを特徴とする付記35に記載のシステム。
(付記40)
前記分析装置は、前記各窓口に入る配列データの数に基づいて、第一のパラメータを決定するユニットを備え、
該ユニットは、
各窓口に入る配列データの数に所定の重みを付け、
前記第一の染色体の第一のパラメータとして、前記重みに基づいて各窓口に入る配列データの数を加重平均して中央値を算出する、ように構成される、
ことを特徴とする付記39に記載のシステム。
(付記41)
前記分析装置は、前記第一のパラメータに基づいて、前記有核赤血球の前記第一の染色体に対する異数性があるか否かを判断するユニットを備え、
該ユニットは、
前記第一の染色体と同じ方法で第二の染色体の中央値を算出し、
前記第一の染色体の中央値と前記第二の染色体の中央値とをt値検定することにより、前記第一の染色体と前記第二の染色体との差分値を得て、
前記差分値を所定の閾値と比較して、該差分値が該所定の閾値を下回ると、前記有核赤血球の前記第一の染色体に対する異数性があると判断する、ように構成される、
ことを特徴とする付記40に記載のシステム。
(付記42)
前記分析装置は、更に、前記第一の染色体の中央値と前記第二の染色体の中央値とを、次の式
【数6】
(ここで、Ti,jは、第一の染色体と第二の染色体との差分値を、μiは、第一の染色体の中央値を、μjは、第二の染色体の中央値を、σiは、第一の染色体の各窓口に分布している配列データの数の標準偏差を、σjは、第二の染色体の各窓口に分布している配列データの数の標準偏差を、niは、第一の染色体における窓口の個数を、njは、第二の染色体における窓口の個数を示す)
により、t値検定するユニットを含む、
ことを特徴とする付記41に記載のシステム。
(付記43)
前記分析装置は、更に、
前記配列の解析結果に基づいて、有核赤血球の所定の領域における核酸配列を決める核酸配列決定ユニット、
前記核酸配列決定ユニットと接続され、前記有核赤血球の所定の領域における核酸配列を、比較対照となる核酸配列と対比する対比ユニット、及び、
前記対比ユニットと接続され、当該対比結果に基づいて、有核赤血球の所定の領域に異常があるか否かを判断する異常判断ユニット、を含む、
ことを特徴とする付記35に記載のシステム。
(付記44)
前記対比ユニットは、比較対照となる核酸配列、好ましくは、健常者のゲノム配列を記憶している、
ことを特徴とする付記43に記載のシステム。
(付記45)
妊婦の生体試料から胎児有核赤血球を単離するステップ、
前記有核赤血球のゲノムの少なくとも一部の配列を決定して、配列の解析結果を得るステップ、及び、
前記配列の解析結果に基づいて、前記胎児有核赤血球のゲノム配列を決めるステップ、を含む、
ことを特徴とする胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記46)
前記妊婦の生体試料は妊婦末梢血である、
ことを特徴とする付記45に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記47)
検討対象として12-20週の在胎週数である妊婦の生体試料を採取する、
ことを特徴とする付記45又は46に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記48)
妊婦末梢血から前記胎児有核赤血球を単離するステップは、更に、
密度勾配遠心分離用試薬により、前記末梢血に密度勾配遠心分離を行って、単核細胞を得るステップ、及び、
有核赤血球の表面抗原を特異的に認識できる抗体が固定化された磁気ビーズにより、前記単核細胞から有核赤血球を収集するステップ、を含む、
ことを特徴とする付記46又は47に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記49)
前記密度勾配遠心分離用試薬はポリショ糖であり、例えば800Xg、30分で前記勾配遠心を行う、
ことを特徴とする付記48に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記50)
前記単核細胞を得た後であって、CD71抗体が固定化された磁気ビーズにより、前記有核赤血球が収集される前に、更に、残留する密度勾配遠心分離用試薬除去するように、1%のBSAを含むPBSバッファーで前記単核細胞を洗浄するステップを含み、
前記PBSバッファーは、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを含まない、
ことを特徴とする付記48に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記51)
1%のBSAを含むPBSバッファーで前記単核細胞を洗浄するステップは、更に、
前記単核細胞を1%のBSAを含むPBSバッファーと混合させて、単核細胞を含む浮遊液を得るステップ、及び、
前記単核細胞を含む浮遊液に、好ましくは、200Xg、5分で遠心分離を行って、上澄みを捨てて、洗浄した有核赤血球を得るステップ、を含む、
ことを特徴とする付記50に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記52)
前記抗体は、CD71を特異的に認識できる抗体である、
ことを特徴とする付記48に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記53)
有核赤血球1個の配列決定を行う、
ことを特徴とする付記45に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記54)
有核赤血球の全ゲノムの配列決定を行う、
ことを特徴とする付記45に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記55)
有核赤血球の全ゲノムの配列決定を行うことは、更に、
前記有核赤血球の全ゲノムを増幅して、増幅された全ゲノムを得るステップと、
増幅された全ゲノムで、全ゲノムシーケンシングライブラリを構築するステップと、
前記ライブラリーの配列を決定して、配列データからなる配列の解析結果を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする付記54に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記56)
前記有核赤血球全ゲノムを、OmniPlex WGAで増幅させる、
ことを特徴とする付記55に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記57)
前記全ゲノムシーケンシングライブラリを構築するステップは、更に、
増幅された全ゲノムを断片化させて、DNA断片を得るステップと、
前記DNA断片にその末端を修復させて、末端が修復されたDNA断片を得るステップと、
末端が修復されたDNA断片の3’末端に塩基Aを加えて、粘着性末端Aを有するDNA断片を得るステップと、
前記粘着性末端Aを有するDNA断片をアダプターに結合させることにより、結合生成物を得るステップと、
前記結合生成物をPCR増幅させて、第二の増幅生成物を得るステップと、
前記第二の増幅生成物を精製して回収し、前記全ゲノムシーケンシングライブラリを構成する回収物を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする付記55に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記58)
増幅された全ゲノムを、Covaris破砕機にて、断片化させる、
ことを特徴とする付記57に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記59)
前記DNA断片長は350bpである、
ことを特徴とする付記57に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記60)
5’→3’ポリメラーゼ活性と3’→5’エキソヌクレアーゼ活性とを有し、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くクレノウ断片、T4 DNAポリメラーゼ、及びT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて、前記DNA断片にその末端を修復させる、
ことを特徴とする付記59に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記61)
クレノウ断片(3’−5’ exo−)を用いて、前記末端が修復されたDNA断片の3’末端に塩基Aを加える、
ことを特徴とする付記57に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記62)
T4 DNAポリメラーゼを用いて、前記粘着末端Aを有するDNA断片をアダプターに結合させる、
ことを特徴とする付記57に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。
(付記63)
Hiseq2000、SOLiD、454、及び単一分子のシークエンシング装置から選ばれる少なくとも1つを用いて、前記配列決定を行う、
ことを特徴とする付記45に記載の胎児有核赤血球のゲノム配列を決める方法。