特許第6092900号(P6092900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092900
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】UV複合体を含む日焼け止め剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20170227BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20170227BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20170227BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20170227BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20170227BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20170227BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   A61K8/06
   A61K8/89
   A61K8/894
   A61K8/37
   A61K8/40
   A61K8/41
   A61Q17/04
【請求項の数】15
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-560080(P2014-560080)
(86)(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公表番号】特表2015-508827(P2015-508827A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】US2013028578
(87)【国際公開番号】WO2013130948
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2014年9月1日
(31)【優先権主張番号】61/605,535
(32)【優先日】2012年3月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポール ロバート タナー
【審査官】 松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−011281(JP,A)
【文献】 特表2006−526019(JP,A)
【文献】 特開2006−335978(JP,A)
【文献】 特表2009−535488(JP,A)
【文献】 特許第4001342(JP,B2)
【文献】 特開2007−145722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルションの形態の日焼け止め剤組成物であって、
a.2重量%〜40重量%のUV複合体であって、
液体UV活性物質とシリコーンエラストマーとの比が1:1〜8:1であるように液体UV活性物質中で膨潤させた、前記UV複合体の7重量%〜50重量%のシリコーンエラストマーを含む、UV複合体と、
b.3重量%〜50重量%の油相であって、前記液体UV活性物質が前記油相の少なくとも60重量%を占める、油と、
c.40重量〜90重量%の水相と、を含む、日焼け止め剤組成物。
【請求項2】
前記シリコーンエラストマーが、有機的に修飾されたシリコーンエラストマーである、請求項1に記載の日焼け止め剤組成物。
【請求項3】
前記シリコーンエラストマーが、ポリオルガノシロキサンクロスポリマー、ポリオキシアルキレン修飾ポリオルガノシロキサンクロスポリマー、及びポリグリセリン修飾ポリオルガノシロキサンクロスポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の日焼け止め剤組成物。
【請求項4】
前記シリコーンエラストマーが非球状である、請求項1に記載の日焼け止め剤組成物。
【請求項5】
前記日焼け止め剤組成物が0.01重量%〜10重量%の乳化剤を更に含む、請求項1に記載の日焼け止め剤組成物。
【請求項6】
前記液体UV活性物質が、2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート、サリチル酸ホモメンチル、オクチルジメチル−p−アミノ安息香酸、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−サリチレート、3,3,5−トリ−メチルシクロヘキシルサリチレート、アントラニル酸メチル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の日焼け止め剤組成物。
【請求項7】
前記液体UV活性物質が、2−エチルヘキシルサリチレート、2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の日焼け止め剤組成物。
【請求項8】
ジベンゾイルメタン化合物、ビス−エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、2,4,6−トリアニリノ−(p−カルボ−2’−エチルヘキシル−1’−オキシ)−1,3,5−トリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、ベンゾフェノン−3,4−メチルベンジリデンカンファー、エチルヘキシルビス−イソペンチルベンゾオキサゾリルフェニルメラミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される固体UV活性物質を含む、請求項1に記載の日焼け止め剤組成物。
【請求項9】
更に光安定剤を含む、請求項1に記載の日焼け止め剤組成物。
【請求項10】
更に、糖アミン、ビタミン、油調整剤、フォトステロール、ヘキサミジン化合物、引き締め剤、抗しわ活性物質、抗萎縮活性物質、フラボノイド、N−アシルアミノ酸化合物、レチノイド、ペプチド、粒子状物質、抗セルライト剤、剥離活性物質、抗にきび活性物質、抗酸化剤、ラジカルスカベンジャー、コンディショニング剤、抗炎症剤、日焼け活性物質、皮膚美白剤、植物抽出物、抗菌活性物質、抗真菌活性物質、抗菌性活性物質、制汗活性物質、感覚剤、保存剤、抗ふけ剤、直接付着ポリマー、洗浄性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される活性物質又は剤を含む、請求項1に記載の日焼け止め剤組成物。
【請求項11】
日焼け止め剤組成物に添加するためのSPF増強UV複合体であって、液体UV活性物質とシリコーンエラストマーとの比が3:1〜8:1であるように、液体UV活性物質中で膨潤させたシリコーンエラストマーを含む、UV複合体。
【請求項12】
前記シリコーンエラストマーが、ポリオルガノシロキサンクロスポリマー、ポリオキシアルキレン修飾ポリオルガノシロキサンクロスポリマー、及びポリグリセリン修飾ポリオルガノシロキサンクロスポリマーからなる群から選択される、請求項11に記載のUV複合体。
【請求項13】
前記シリコーンエラストマーが、アルキルジメチコン/ポリグリセリンクロスポリマー、ジメチコン/ポリグリセリンクロスポリマー(crossplymer)、ジメチコン/ポリ(プロピレングリコール)クロスポリマー、ジメチコン/ポリ(エチレングリコール)クロスポリマー、アルキルジメチコン/ポリ(プロピレングリコール)クロスポリマー、アルキルジメチコン/ポリ(エチレングリコール)クロスポリマー、及びアルキルジメチコンクロスポリマーからなる群から選択される、請求項11に記載のUV複合体。
【請求項14】
前記液体UV活性物質が、2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート、サリチル酸ホモメンチル、オクチルジメチル−p−アミノ安息香酸、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−サリチレート、3,3,5−トリ−メチルシクロヘキシルサリチレート、アントラニル酸メチル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載のUV複合体。
【請求項15】
さらに可溶化された固体UV活性物質を含み、
前記固体UV活性物質が、ジベンゾイルメタン化合物、ビス−エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、2,4,6−トリアニリノ−(p−カルボ−2’−エチルヘキシル−1’−オキシ)−1,3,5−トリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、ベンゾフェノン−3,4−メチルベンジリデンカンファー、エチルヘキシルビス−イソペンチルベンゾオキサゾリルフェニルメラミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載のUV複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液体UV活性物質中で膨潤させたシリコーンエラストマーを含むUV複合体を含むものとして、日焼け止め剤組成物を本明細書に記載する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め剤組成物は、局所に塗布された場合、太陽の紫外線(UV)に対する暴露の損傷作用から皮膚を保護するフィルムを与える。日焼け止め剤組成物は、UVが皮膚と相互作用して皮膚を損傷させ得る前に、UVを吸収するUV活性物質を含む。特定の組成物がUVを遮断する能力は、通常、太陽光線保護指数(SPF)評価で表される。組成物のSPF評価を高め、広域スペクトルの保護を提供するために、日焼け止め剤組成物中にUV活性物質化合物の組み合わせが通常使用されている。皮膚及び他のケラチン性組織を紫外線(UV)の有害効果から保護する多様な製品が市販されている。日焼け止め剤組成物の作製は、一般に、因子の均衡を含む。配合者は、組成物の有効性を最大限にすると共に、トレードオフを最小限にすることを所望している。日焼け止め剤組成物の有効性は、存在するUV活性物質の量を増大させることにより改善し得るが、非常に有効なUV活性物質は、消費者が好まない、重い油性の肌触りを有する。そのようなUV活性物質の量の増大により、消費者にとって望ましくない製品がもたらされ得る。
【0003】
シリコーンエラストマーが、貧弱な審美性を是正するために使用され得るが、シリコーンエラストマーは処方に更なる課題を追加し、そして概して極めて高価である。シリコーンエラストマーは、独特の、消費者所望の感触プロファイルを提供することで周知である。シリコーンエラストマーは、UV活性物質の溶解度(万一日焼け止め剤が沈殿するならば、これはUV保護の有効性に直接影響する)及び製品全体の安定性に影響を与えることがある。従来のシリコーンエラストマーの問題点は、シリコーンエラストマーが、UV活性物質と適合し得ない溶媒中で合成及び/又は膨潤されることである。そのような場合、組成物中にUV活性物質を負荷する配合者の能力が制限される場合があり、又は、UV活性物質をより適合性とするために追加の賦形剤が必要となり得る。溶媒及び日焼け止め剤が適合性の問題を提示しない場合であっても、溶媒は、多くの場合、ケラチン性組織に対する有効性が殆ど又は全くない材料である。更に、溶媒は、UV活性物質が既に関連している重い、油状の感触を追加する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
エマルションの形態の日焼け止め剤組成物は、約2%〜約40%のUV複合体を含んでもよく、前記UV複合体は、液体UV活性物質とシリコーンエラストマーとの比が1:1〜8:1であるように液体UV活性物質中で膨潤させた、UV複合体の約7%〜約50重量%のシリコーンエラストマーを含む。日焼け止め剤組成物はまた、約3%〜約50%の油相であって、液体UV活性物質が油相の少なくとも約60重量%を占める、油層と、約40〜約90%の水相とを含む。
【0005】
日焼け止め剤組成物に添加するためのSPF増強UV複合体も、本明細書に記載する。SPF増強UV複合体は、液体UV活性物質とシリコーンエラストマーとの比が1:1〜8:1であるように液体UV活性物質中で膨潤させたシリコーンエラストマーを含む。
【0006】
日焼け止め剤組成物のSPFを増大させるための方法を記載し、前記方法は、液体UV活性物質とシリコーンエラストマーとの比が1:1〜8:1であるように液体有機UV活性物質中でシリコーンエラストマーを膨潤させることによってUV複合体を調製する工程と、少なくとも水相を含む担体系を調製する工程と、UV複合体を担体系中に分散する工程と、を含む。
【0007】
約5%〜約60%の油相を含む、エマルションの形態の日焼け止め剤組成物であって、前記油相が、油相の少なくとも60重量%の液体UV活性物質と、組成物の約0.5〜約10重量%のポリシロキサンエラストマーとを含み、液体有機UV活性物質とポリシロキサンエラストマーとの比が1:1〜8:1である、日焼け止め剤組成物も記載する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
特に指定がない限り、本明細書において使用する全ての百分率及び比率は、組成物全体の重量によるものとする。特に指示がない限り、全ての測定は周囲条件で実施されるものと理解され、「周囲条件」とは、約25℃、約101kPa(気圧)、及び相対湿度約50%における条件を意味する。全ての数範囲はより狭い範囲を包含し、表現された上方及び下方範囲の限界値は、明示されていない範囲を更に作り出すように組み合わせることができる。
【0009】
本発明の組成物は、本明細書に記載の必須構成成分並びに任意成分を含み、それらから本質的になり、又はそれらからなることができる。本明細書で使用するとき、「から本質的になる」とは、組成物又は構成成分は追加成分を包含してもよいが、それら追加成分が特許請求される組成物又は方法の基本的及び新規な特徴を実質的に変化させない場合に限ることを意味する。
【0010】
組成物に関連して使用される「塗布する」又は「塗布」は、本発明の組成物を表皮などのケラチン性組織上に塗布する又は拡げることを意味する。
【0011】
「ケラチン性組織」は、哺乳類(例えば、ヒト、イヌ、ネコなど)の最外保護外皮として配置されるケラチン含有層を指し、皮膚、唇、毛髪、足の爪、指の爪、角皮、ひづめなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
「皮膚科学的に許容可能な」は、記載される組成物又は構成成分が、過度の毒性、不適応性、不安定性、アレルギー反応などがなく、ヒトの皮膚組織と接触して使用するのに好適であることを意味する。
【0013】
「安全かつ有効な量」は、有益な効果を有意に誘導するのに十分な化合物及び組成物の量を意味する。
【0014】
「非UV」は、日焼け止め配合物の分野の当業者から、皮膚科学的に許容可能なUV活性吸収材料であると認識されない材料を意味する。
【0015】
「UV活性物質」は、日焼け止め配合物の分野の当業者から、UV活性吸収材料として皮膚科学的に許容可能であると認識される材料を意味する。それらのUV活性物質は、UV−A及び/又はUV−B活性剤として記載され得る。ヒト使用が意図される配合物中に活性剤を含ませるためには、一般に規制機関による認可が必要である。店頭の日焼け止め薬物製品中での使用に許容可能であるとして米国食品医薬品局により(21 C.F.R.part 352によって)認可された又はされつつあるそれらの活性薬剤としては、パラアミノ安息香酸、アボベンゾン、シノキセート、ジオキシベンゾン、ホモサレート、アントラニル酸メンチル、サリチル酸オクチル、オキシベンゾン、パジメートO、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、スルイソベンゾン、サリチル酸トロラミン、二酸化チタン、酸化亜鉛、ジエタノールアミンメトキシシンナメート、トリオレイン酸ジガロイル、エチルジヒドロキシプロピルPABA、アミノ安息香酸グリセリル、ジヒドロキシアセトンを有するローソン、赤色ペトロラタムを含むが、これらに限定されない有機及び無機物質が挙げられる。米国内では未だ認可されていないが、欧州(European Commission’s Cosmetic Directive Regulationによって)、日本、中国、オーストラリア、ニュージーランド又はカナダなどの他の領域又は国内で店頭での使用に認可されている他のUV活性物質の例としては、エチルヘキシルトリアゾン、ジオクチルブタミドトリアゾン、ベンジリデンマロネートポリシロキサン、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、ビスジエチルアミノヒドロキシベンゾイルベンゾエート、ビスベンゾオキサゾイルフェニルエチルヘキシルイミノトリアジン、ドロメトリゾールトリシロキサン、メチレンビス−ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、及びビス−エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、4−メチルベンジリデンカンファー、及びイソペンチル4−メトキシシンナメートが挙げられる。しかしながら、認可材料のリストは目下拡大しているため、当業者は、本発明が、現在ヒト使用に認可されているUV活性物質に限定されず、将来許可され得るUV活性物質も含むことを認識するであろう。
【0016】
組成物に関して、「リーブオン」は、塗布後ケラチン組織上に付着させたままにすることが意図される組成物を意味する。これらのリーブオン組成物は、皮膚に塗布した後、続いて(数分以内に)洗浄、すすぎ、又は拭き取りなどのいずれかにより除去される組成物とは区別される。リーブオン組成物では、シャンプー、洗顔料、手洗浄剤、ボディウォッシュ又は身体用洗浄剤などのような洗い流し型の適用は除外される。リーブオン組成物は、洗浄用界面活性剤又は合成界面活性剤を実質的に含まなくてよい。例えば、「リーブオン組成物」は、少なくとも15分間ケラチン組織上に付着させたままにしておくことができる。例えば、リーブオン組成物は、1%未満の洗浄性界面活性剤、0.5%未満の洗浄性界面活性剤、又は0%の洗浄性界面活性剤を含んでもよい。しかしながら、組成物には、皮膚に局所的に塗布した際に何らかの有意な洗浄効果をもたらすことを意図するものではない、乳化又は他の加工用界面活性剤も含有させることができる。
【0017】
「誘導体」は、関連化合物のエステル、エーテル、アミド、ヒドロキシ、及び/又は塩の構造類似体を意味する。
【0018】
「可溶性」は、25℃及び101kPa(1気圧)において少なくとも約0.1gの溶質が100mLの溶媒に溶解することを意味する。
【0019】
日焼け止め剤組成物は、非常に様々な形態を含むことができる。非限定的な例としては、単純な溶液(例えば、水又は油系)、分散液及びエマルションが挙げられる。日焼け止め剤組成物は、流体又は固体であってもよく、したがってローション、クリーム、ゲル、漿液、スティック、流動性固体、非晶質材料を含む。所定の実施形態では、日焼け止め剤組成物はエマルションの形態にある。エマルションは、一般に、連続水相(例えば、水中油型及び水中油中水型など)、又は連続油相(例えば、油中水型及び油中水中油型など)を有するものとして分類され得る。
【0020】
UV複合体
日焼け止め剤組成物は、UV複合体を含む。UV複合体は、液体UV活性物質中で完全に又は部分的に膨潤させたシリコーンエラストマーを含む。UV複合体は、別個の粒子(即ち、UV複合体粒子)の形態にあってもよい。UV複合体は、比較的均質な構造又はゲルの形態にあってもよい。UV複合体は、液体UV活性物質をシリコーンエラストマー中に捕捉させ又は分散し、UV複合体からデカントされ得る自由液体UV活性物質を排除したようなものである。いくつかの実施形態では、UV複合体は、液体UV活性物質で完全に又は部分的に膨潤されているシリコーンエラストマーからなり得る又は本質的になり得る。別の実施形態では、UV複合体は、液体UV活性物質及び非UV溶媒で完全に又は部分的に膨潤されているシリコーンエラストマーを含み得る。
【0021】
UV複合体は、日焼け止め剤組成物中に他の材料を混合する前に、シリコーンエラストマーを液体UV活性物質中で膨潤させることによって予備形成されてもよい。存在する商業用シリコーンエラストマーの多くは、非UV溶媒中で予備膨潤されて販売され得る。そのような場合、シリコーンエラストマーは、日焼け止め剤組成物に組み込まれる前に脱膨潤されて、非UV溶媒を除去してもよい。これらの商業用材料を脱膨潤させるための好適な方法は、予備膨潤シリコーンエラストマーを薄フィルムとして成型することである。フィルムを乾燥させることによって、溶媒を蒸発させる。乾燥プロセスは、熱及び/又は減圧により加速され得る。特定の乾燥条件は、予備膨潤シリコーンエラストマー中に存在する非UV溶媒に依存するであろう。乾燥した後、シリコーンエラストマーを回収し、液体UV活性物質中で再膨潤させる。別の実施形態では、UV複合体は、反応溶媒の役割を果たす1種以上の液体UV活性物質の存在下でのシリコーンエラストマーの重合中に形成され得る。別の実施形態では、UV複合体は、液体UV活性物質を含む油相中に存在する、利用可能な溶媒でシリコーンエラストマーが膨潤された場合に、日焼け止め剤組成物中で形成され得る。
【0022】
組成物は、任意の好適な量のUV複合体を含んで、所望のUV防護及び/又は肌触りの効果を提供することができる。所定の実施形態では、日焼け止め剤組成物は、約1%、2%、5%、10%、15%、20%又は25%から、約75%、50%、40%、30%、20%、10%又は5%までのUV複合体を含む。選択された一実施形態では、日焼け止め剤組成物は、約2%〜約40%のUV複合体を含む。
【0023】
日焼け止め剤組成物中で使用するのに好適なシリコーンエラストマーは、多様な慣習的反応経路よって形成することができる。好適な反応経路は、1)Si−H含有オルガノポリシロキサンと、ケイ素結合ビニル基又はビニル基を有する有機物を有するオルガノポリシロキサンとの間の付加反応により、白金金属触媒作用下で硬化する付加反応硬化オルガノポリシロキサン組成物と、2)ヒドロキシル末端ジオルガノポリシロキサンとSi−H含有オルガノポリシロキサンとの間の脱水素化反応により、有機スズ化合物の存在下で硬化する縮合硬化オルガノポリシロキサン組成物と、3)ヒドロキシル末端オルガノポリシロキサンと加水分解性オルガノシランとの間の縮合反応により、有機スズ化合物又はチタン酸エステルの存在下で硬化する縮合硬化オルガノポリシロキサン組成物(この縮合反応は、脱水、アルコール−遊離、オキシム−遊離、アミン−遊離、アミド−遊離、カルボキシル−遊離、及びケトン−遊離反応により例示される)と、4)オルガノペルオキシド触媒の存在下で熱硬化するペルオキシド硬化オルガノポリシロキサン組成物と、5)γ線、紫外線、又は電子ビームなどの高エネルギー放射線により硬化されるオルガノポリシロキサン組成物とを含む。従来の反応は、典型的には溶媒中で行われる。シリコーンエラストマーの合成で使用される従来の溶媒としては、エタノール、イソドデカン、及びジメチコンなどの揮発性シリコーン流体が挙げられる。溶媒は、反応後、周知の単離法を用いて除去されて、シリコーンエラストマーを回収する。UV複合体は、従来の溶媒の代わりに又は該溶媒に加えて液体UV活性物質(例えば、オクチサレート、ホモサレートなど)を使用することにより形成され得る。
【0024】
UV複合体は、様々な量のシリコーンエラストマーを含んでもよい。UV複合体中に存在するシリコーンエラストマーの量は、多くの場合、特定のシリコーンエラストマー、液体UV活性物質、及び、存在する場合、非UV溶媒に依存する。所定の実施形態において、UV複合体は、UV複合体の重量の7%、9%、10%、11%、14%、15%、16%、20%、25%、33%、又は50%の重量百分率から選択される任意の範囲のシリコーンエラストマーを含む。好適な実施形態では、UV複合体は、UV複合体の約7重量%〜約50重量%のシリコーンエラストマーを含む。日焼け止め剤組成物中に存在するシリコーンエラストマーの重量百分率は、日焼け止め剤組成物中のUV複合体の重量百分率を、UV複合体中のシリコーンエラストマーの重量百分率で乗算することにより容易に計算することができる。
【0025】
所定の実施形態において、シリコーンエラストマーは、非球状である。シリコーンエラストマーの形状は、顕微鏡により決定されてもよい。あるいは、球形は、円形度により定量化されてもよい。円形度は、定量的な二次元の像分析形状記述であり、ISO 9276−6:2008(E)8.2項に従って測定され、ソフトウエアCallistroバージョン25付きのOcchio Nano 500粒子キャラクタリゼーション装置(Occhio s.a.Liege,Belgium)を用いて行われる。円形度の値は0から1の範囲にあり、円形度1は二次元像で測定して完全に球状の粒子又は円板粒子を記述する。円形度は次式によって計算される。
【0026】
【数1】
(式中、Aは、2D記述子である投影面積であり、Pは、粒子の周囲の長さである)。所定の実施形態では、シリコーンエラストマーは、0.98、0.95、又は0.9未満の円形度を有する。
【0027】
選択された実施形態では、UV複合体は、有機修飾を有するシリコーンエラストマーを含む。有機修飾を有する好適なシリコーンエラストマーとしては、アルコキシ修飾を有するシリコーンエラストマーが挙げられる。アルコキシ修飾は、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン又はポリグリセリン単位を含ませることにより行われ得る。好適なアルコキシ修飾シリコーンエラストマーは、当技術分野にて周知の反応経路により形成され得る。好適な経路は、米国特許第5,236,986号、同第5,387,417号、同第5,412,004号、同第5,811,487号、及び米国特許出願公開第2006/0013791A1号、同第2006/0034875A1号、同第2010/0183525A1号、同第2010/0172849A1号、及び同第2010/0158824A1に記載されている。
【0028】
好適なシリコーンエラストマーとしては、多数の市販の材料が挙げられる。例示的なポリオキシエチレンシリコーンエラストマーとしては、ジメチコン/PEG−10/15クロスポリマー(Shin−Etsu Chemical Co,Ltd.のKSG−210)が挙げられる。ポリオキシプロピレンシリコーンエラストマーの例としては、ジメチコン/ビス−イソブチルPPG−20クロスポリマー(Dow Corning Corp.のDow Corning EL−8050、EL−8051、及びEL−8052)が挙げられる。例示的なポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンシリコーンエラストマーは、PEG−12ジメチコン/PPG−20クロスポリマー(Dow Corningから入手可能)である。
【0029】
アルキル含有ポリオキシエチレンシリコーンエラストマーの例には、PEG−15ラウリルジメチコンクロスポリマー(Shin−Etsu Chemical Co.,Ltd.のKSG−310、KSG−320、KSG−330、及びKSG−340)が挙げられる。
【0030】
ポリグリセリン修飾シリコーンエラストマーの例としては、ジメチコン/ポリグリセリン−3クロスポリマー(Shin−Etsu Chemical Co.,Ltd.のKSG−710)が挙げられる。
【0031】
アルキル含有ポリグリセリン修飾シリコーンエラストマーの例には、ラウリルジメチコン/ポリグリセリン−3クロスポリマー(Shin−Etsu Chemical Co.,Ltd.のKSG−810、KSG−820、KSG−830、及びKSG−840)が挙げられる。
【0032】
好適なシリコーンエラストマーとしては、アルコキシ修飾を有さない、有機修飾を有するシリコーンエラストマーが挙げられる。好適な有機修飾シリコーンエラストマーは、当技術分野にて周知の反応経路により形成することができる。好適な経路は、米国特許第5,654,389号及び同第6,262,170号に記載されている。好適なシリコーンエラストマーとしては、多数の市販の材料が挙げられる。アルキル含有メチルポリシロキサンエラストマーの例としては、C30〜45アルキルセテアリルジメチコンクロスポリマー(Momentive Performance Materials Inc.のVelvesil 125及び034)及びビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマー(Shin−Etsu Chemical Co.,Ltd.のKSG−41、KSG−42、KSG−43、及びKSG−44及びSiltech LLCのSilwax CR 5012−1)が挙げられる。
【0033】
選択された実施形態では、シリコーンエラストマーは、アルキルジメチコン/ポリグリセリンクロスポリマー、ジメチコン/ポリグリセリンクロスポリマー、ジメチコン/ポリ(プロピレングリコール)クロスポリマー、ジメチコン/ポリ(エチレングリコール)クロスポリマー、アルキルジメチコン/ポリ(プロピレングリコール)クロスポリマー、アルキルジメチコン/ポリ(エチレングリコール)クロスポリマー、及びアルキルジメチコンクロスポリマーから選択される。
【0034】
上記に提示した商業用の例の多くは、UV活性物質ではない溶媒中で膨潤されたシリコーンエラストマーを有する。そのような場合、シリコーンエラストマーは、日焼け止め剤組成物に組み込まれる前に脱膨潤されて、非UV溶媒を除去してもよい。揮発性溶媒中で膨潤された商業用エラストマーを脱膨潤させるための好適な方法は、商業用エラストマーを不活性基材上で薄フィルムに成型し、生成物フィルムを乾燥させた後、残留した無溶媒エラストマーを回収することである。次いで、この無溶媒エラストマーを1種以上のUV活性物質中で膨潤させてもよい。
【0035】
あるいは、反応溶媒の役割を果たす1種以上の液体UV活性物質の存在下でシリコーンエラストマーを合成することによって、エラストマーを脱膨潤させる必要性を回避してもよい。
【0036】
UV複合体は、液体UV活性物質を含む。液体UV活性物質は、1種以上のUV活性物質を含んでもよい。周囲条件で液体である好適なUV活性物質としては、2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート、サリチル酸ホモメチル、オクチルジメチル−p−アミノ安息香酸、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−サリチレート、3,3,5−トリ−メチルシクロヘキシルサリチレート、アントラニル酸メチル、及びこれらの化合物の混合物が挙げられる。所定の実施形態では、液体UV活性物質は、2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート、2−エチルヘキシルサリチレート、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0037】
UV複合体は、様々な量の液体UV活性物質を含むことができる。UV複合体中に存在する液体UV活性物質の量は、多くの場合、特定のシリコーンエラストマー、液体UV活性物質、及び、存在する場合、非UV溶媒に依存する。所定の実施形態では、UV複合体は、液体UV活性物質を、液体UV活性物質とシリコーンエラストマーとの重量比1:1〜10:1で含む。別の実施形態では、液体UV活性物質とシリコーンエラストマーとの重量比は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、又は10:1の端点から選択される任意の範囲内にある。好適な範囲は、約1:1〜約8:1である。前述の重量比は、液体UV活性物質がシリコーンエラストマー中に捕捉され又は分散したUV複合体を指す。これらの比は、UV複合体からデカントされ得る自由液体UV活性物質を含まない。UV複合体中の液体UV活性物質に加えて、追加の自由液体UV活性物質を日焼け止め配合物に加えてもよいことを認識するべきである。全体としての日焼け止め剤組成物は、UV複合体の一部として又は自由液体として、組成物の約0.1重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、3重量%、5重量%から、約40重量%、30重量%、20重量%、10重量%、7重量%、又は5重量%までのUV活性物質を含んでもよい。
【0038】
液体UV活性物質は、周囲条件にて固体であるが溶媒に溶解するUV活性物質も含むことができる。溶媒は、液体UV活性物質(例えば、オクチサレート)又は非UV液体(例えば、イソプロピルラウロイルサルコシネート、C12〜15アルキルベンゾエート、アジピン酸ジイソプロピルなど)であってもよい。非UV液体が固体UV活性物質の可溶化に使用される場合、UV活性物質の重量は、液体UV活性物質とシリコーンエラストマーとの重量比の計算に使用されるが、非UV液体の重量は使用されない。周囲条件にて固体のUV活性物質としては、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(即ち、ブチルメトキシジベンゾイルメタン又はアボベンゾン)(DSMからPARSOL(登録商標)1789として市販)などのジベンゾイルメタン誘導体が挙げられる。他の好適な固形UV活性物質としては、ビス−エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(即ち、BASFからTinosorb(登録商標)Sとして市販のベモトリジノール)、2,4,6−トリアニリノ−(p−カルボ−2’−エチルヘキシル−1’−オキシ)−1,3,5−トリアジン(即ち、BASFからUvinul(登録商標)T 150として市販のエチルヘキシルトリアゾン)、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(即ち、3V SigmaからUvasorb(登録商標)HEBとして市販のイスコトリジノール(iscotrizinol))、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート(BASFからUvinul(登録商標)A Plusとして市販)、ベンゾフェノン−3(即ち、EMD Chemical,Inc.からEusolex 4360として入手可能な(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−フェニルメタノン又はオキシベンゼン)、4−メチルベンジリデンカンファー(DSMからPARSOL(登録商標)5000として市販)、エチルヘキシルビス−イソペンチルベンゾオキサゾリルフェニルメラミン(3V SigmaからUvasorb(登録商標)k2Aとして市販)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
UV複合体は、他の非UV溶媒を含んでもよい。好適な非UV溶媒としては、本明細書に列挙した油が挙げられる。所定の実施形態では、UV複合体は、シリコーンエラストマー及び液体UV活性物質からなる又は本質的になるが、当業者は、UV複合体が日焼け止め剤組成物中に存在する場合、ある程度の液体移動が生じ得ることを認識するであろう。液体UV活性物質はUV複合体及び/又は非UV溶媒から移動する場合があり、又はUV複合体中に油が移動する場合がある。同様に、脱膨潤後でも、非UV溶媒の残留量がシリコーンエラストマー中に存在し得るが、そのような量は、UV複合体中に存在するUV液体と比較して有意でないと考慮される。
【0040】
日焼け止め剤組成物
日焼け止め剤組成物は、UV複合体に加えて材料を含む油相を含んでもよい。油相は、油、皮膚軟化剤、及び油溶性ビタミンなどの他の油溶性材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、油相は、油相の少なくとも約60重量%のUV活性物質を含む。別の実施形態では、油相は、油相の少なくとも約60重量%の液体UV活性物質を含む。
【0041】
油相は、水又は水溶性溶媒に好適ではない材料を可溶化、分散、又は支持するのに使用し得る油を含んでもよい。好適な油としては、シリコーン、炭化水素、エステル、アミド、エーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
好適なシリコーン油としては、ポリシロキサンが挙げられる。ポリシロキサンは、25℃で約5E−7〜約1m2/s(約0.5〜約1,000,000センチストーク)の粘度を有してもよい。このようなポリシロキサンは、一般化学式:
3SiO[R2SiO]xSiR3
により表すことができ、式中、Rは、独立して、水素又はC1〜30直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和アルキル、フェニル又はアリール、トリアルキルシロキシから選択され、xは、所望の分子を得るために選択された0〜約10,000の整数である。所定の実施形態では、Rは水素、メチル、又はエチルである。市販のポリシロキサンとしては、ジメチコンとしても既知である、ポリジメチルシロキサンが挙げられ、その例としては、Shin−EtsuのDM−Fluidシリーズ、Momentive Performance Materials Inc.から販売されているVicasil(登録商標)シリーズ、及びDow Corning Corporationから販売されているDow Corning(登録商標)200シリーズが挙げられる。好適なポリジメチルシロキサンの具体例としては、6.5E−7、1.5E−6、5E−5、0.0001、0.00035、0.01、0.0125、0.1、及び0.3m2/s(0.65、1.5、50、100、350、10,000、12,500、100,000、及び300,000センチストーク)の粘度を有する、Dow Corning(登録商標)200フルイド(Xiameter(登録商標)PMX−200 Silicone Fluidsとしても販売)が挙げられる。
【0043】
好適なジメチコンとしては、化学式:
3SiO[R2SiO]x[RR’SiO]ySiR3
により表されるものが挙げられ、式中、R及びR’は、それぞれ独立して、水素又はC1〜30直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和アルキル、アリール又はトリアルキルシロキシであり、x及びyは、それぞれ、所望の分子を得るために選択された1〜1,000,000の整数である。好適なシリコーンとしては、フェニルジメチコン(Botanigenics,Inc.のBotansil(商標)PD−151)、ジフェニルジメチコン(Shin−EtsuのKF−53及びKF−54)、フェニルトリメチコン(Dow Corningの556コスメチック・グレード液)、又はトリメチルシロキシフェニルジメチコン(Wacker−BelsilのPDM−20、PDM−200、又はPDM−1000)が挙げられる。他の例は、少なくともR’が脂肪族アルキル(例えば、C12〜22)であるアルキルジメチコンである。好適なアルキルジメチコンはセチルジメチコンであり、式中、R’は直鎖C16鎖であり、Rはメチルである。セチルジメチコンは、2502コスメチック・フルイドとしてDow Corningから、あるいはAbil Wax 9801又は9814としてEvonik Goldschmidt GmbHから入手可能である。
【0044】
環状シリコーンは組成物に使用され得るシリコーンオイルの一種である。このようなシリコーンは、一般式:
【0045】
【化1】
を有し、(式中、Rは、独立して、水素又はC1〜30直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和アルキル、フェニル又はアリール、トリアルキルシロキシから選択され、n=3〜8である)、及びこれらの混合物である。一般的に、nが4、5及び/又は6であるシクロメチコンの混合物が使用される。市販のシクロメチコンとしては、Dow Corning UP−1001 Ultra Pure Fluid(即ち、n=4)、Dow Corning XIAMETER(登録商標)PMX−0245(即ち、n=5)、Dow Corning XIAMETER(登録商標)PMX−0245(即ち、n=6)、Dow Corning 245フルイド(即ち、n=4及び5)及びDow Corning 345フルイド(即ち、n=4、5及び6)が挙げられる。
【0046】
好適な炭化水素油としては、直鎖、分枝鎖、又は環状アルカン及びアルケンが挙げられる。鎖長は、揮発性などの所望の機能特徴に基づき選択されてもよい。好適な揮発性炭化水素は、5〜20の炭素原子、あるいは、8〜16の炭素原子を有してもよい。
【0047】
他の好適な油としては、エステルが挙げられる。好適なエステルは、典型的には、少なくとも10個の炭素原子を含有した。これらのエステルとしては、脂肪酸又はアルコールに由来するヒドロカルビル鎖とのエステル(例えば、モノエステル、多価アルコールエステル、並びにジ−及びトリ−カルボン酸エステル)が挙げられる。このエステルのヒドロカルビルラジカルは、アミド及びアルコキシ部分(例えば、エトキシ又はエーテル結合など)のような他の適合性のある官能基を含むか、又はこのヒドロカルビルラジカルをこうした官能基へ共有結合させてよい。例示的なエステルとしては、イソステアリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、オレイン酸イソデシル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸デシル、イソステアリン酸イソプロピル、アジピン酸ジヘキシルデシル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ステアリン酸オレイル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オレイル、酢酸ラウリル、プロピオン酸セチル、C12〜15安息香酸アルキル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル及びアジピン酸オレイルが挙げられるが、これらに限定されない。他の好適なエステルは、更にPersonal Care Product Council’s International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,Thirteenth Edition,2010の「エステル」の機能カテゴリーに記載されている。日焼け止め剤組成物中での使用に好適な他のエステルとしては、多価アルコールエステル及びグリセリドとして既知のものが挙げられる。
【0048】
他の好適な油としては、アミドが挙げられる。アミドとしては、25℃で液体であり、水に不溶性である、アミド官能基を有する化合物が挙げられる。好適なアミドとしては、N−アセチル−N−ブチルアミノプロピオネート、イソプロピルN−ラウロイルサルコシナート、及びN,N,−ジエチルトルアミドが挙げられる。他の好適なアミドは、米国特許第6,872,401号に開示されている。
【0049】
他の好適な油としては、エーテルが挙げられる。好適なエーテルとしては、多価アルコールの飽和及び不飽和脂肪エーテル、並びにそれらのアルコキシル化誘導体が挙げられる。例示的なエーテルとしては、ポリプロピレングリコールのC4〜20アルキルエーテル、及びジ−C8〜30アルキルエーテルが挙げられる。これらの物質の好適な例としては、PPG−14ブチルエーテル、PPG−15ステアリルエーテル、ジオクチルエーテル、ドデシルオクチルエーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
日焼け止め剤組成物は、水相を含んでもよい。日焼け止め剤組成物は、組成物の約1重量%〜約95重量%の水相を含んでもよい。一実施形態では、本組成物は、組成物の約1重量%、3重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、又は90重量%〜約95重量%、90重量%、85重量%、80重量%、75重量%、70重量%、65重量%、60重量%、55重量%、50重量%、45重量%、40重量%、35重量%、30重量%、25重量%、20重量%、15重量%、10重%、又は5重量%の水相を含んでもよい。水相は、水、水混和性溶媒、及び他の水溶性材料などの水性担体を含む。好適な水混和性溶媒としては、一価アルコール、二価アルコール、多価アルコール、グリセロール、グリコール、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられる。特に好適な溶媒としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノールなどの低級脂肪族アルコール;1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、デカンジオールなどのジオール;グリセリン;水、及び、これらの混合物が挙げられる。所定の実施形態では、日焼け止め剤組成物は、水、ジオール、グリセリン、及びこれらの混合物を含む。
【0051】
日焼け止め剤組成物は、乳化剤を含んでもよい。乳化剤は、組成物がエマルションの形態にある時、又は不混和性物質が混合されている場合、特に好適である。日焼け止め剤組成物は、約0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.5%、又は1%〜約20%、10%、5%、3%、2%、又は1%の乳化剤を含んでもよい。乳化剤は、非イオン性、アニオン性、又はカチオン性であり得る。乳化剤の非限定的な例は、米国特許第3,755,560号、同第4,421,769号、及びM.C.Publishing Co.から発行されたMcCutcheonのEmulsifiers and Detergents,2010 Annual Ed.に開示されている。他の好適な乳化剤は、更にPersonal Care Product Council’s International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,Thirteenth Edition,2006の「Surfactants−Emulsifying Agents」の機能カテゴリーに記載されている。
【0052】
好適な乳化剤は、以下のエーテル及びエステルのクラスを含む。ポリグリコールと脂肪族アルコールのエーテル、ポリグリコールと脂肪酸のエステル、ポリグリコールと脂肪族アルコールのグリコシル化エーテル、ポリグリコールと脂肪酸のグリコシル化エステル、C12〜30アルコールとグリセロール又はポリグリセロールのエーテル、C12〜30脂肪酸とグリセロール又はポリグリセロールのエステル、オキシアルキレン修飾C12〜30アルコールとグリセロール又はポリグリセロールのエーテル、ショ糖又はブドウ糖を含むC12〜30脂肪族アルコールエーテル、ショ糖とC12〜30脂肪酸のエステル、ペンタエリスリトールとC12〜30脂肪酸のエステル、ソルビトール及び/又はソルビタンとC12〜30脂肪酸のエステル、ソルビトール及び/又はソルビタンとアルコキシ化ソルビタンのエーテル、ポリグリコールとコレステロールのエーテル、C12〜30脂肪酸とソルビトール及び/又はソルビタンのアルコキシ化エーテルのエステル、並びにこれらの組み合わせ。
【0053】
直鎖又は分枝鎖タイプのシリコーン乳化剤もまた、使用され得る。特に有用なポリエーテル修飾シリコーンとしては、Shin EtsuのKF−6011、KF−6012、KF−6013、KF−6015、KF−6015、KF−6017、KF−6043、KF−6028、及びKF−6038が挙げられる。また、特に有用なのは、Shin EtsuのKF−6100、KF−6104、及びKF−6105を含むポリグリセロール化直鎖又は分岐鎖シロキサン乳化剤である。
【0054】
日焼け止め剤組成物は、追加のUV活性物質を含んでもよい。追加のUV活性物質としては、2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸などの水溶性である材料、並びに、酸化亜鉛及び二酸化チタンを含む無機微粒子、並びにメチレンビス−ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(BASFからTinosorb(登録商標)Mとして市販)を含む有機微粒子などの微粒子UV遮断剤が挙げられる。追加のUV活性物質としては、更に、UV複合体と関連していない液体UV活性物質及び可溶化固体UV活性物質(例えば、自由液体UV活性物質)が挙げられる。
【0055】
日焼け止め剤組成物は、光安定剤を含んでもよい。組成物は、組成物の約0.0001重量%、0.001重量%、0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.5重量%、又は1重量%〜約20重量%、10重量%、7重量%、又は5重量%の1種以上の好適な光安定剤を含んでもよい。
【0056】
好適な光安定剤は、米国特許第7,713,519号に開示されているα−シアノジフェニルアクリレートである。α−シアノジフェニルアクリレートは、一般式:
【0057】
【化2】
を有してもよく、式中、R1及びR2のいずれか又は両方は、独立して、直鎖又は分岐鎖C1〜30アルコキシラジカルであり、任意の非アルコキシR1又はR2ラジカルは水素であり、R3は直鎖又は分岐鎖C1〜30アルキルである。あるいは、R1及びR2のいずれか又は両方は、独立して、C1〜8アルコキシラジカルであり、任意の非アルコキシR1又はR2ラジカルは水素であり、R3は直鎖又は分岐鎖C2〜C20アルキルである。あるいは、R1及びR2のいずれか又は両方は、独立して、メトキシであり、任意の非メトキシR1又はR2は水素であり、R3は直鎖又は分岐鎖C2〜C20アルキルである。
【0058】
好適なα−シアノジフェニルアクリレートとしては、エチルヘキシルメトキシクリレン、又は2−エチルヘキシル2−シアノ−3−(4−メトキシフェニル)−3−フェニルプロペノエートが挙げられ、式中、R1はメトキシであり、R2は水素であり、R3は2−エチルヘキシルである。この材料は、Hallstar Companyから商品名Solastay(登録商標)S1で入手可能である。
【0059】
他の好適な光安定剤としては、米国特許第5,993,789号、同第6,113,931号、同第6,126,925号及び同第6,284,916号に開示されているナフタレンジカルボン酸のジエステル又はポリエステルが挙げられる。ナフタレンジカルボン酸の好適なジエステル又はポリエステルは、次式:
【0060】
【化3】
を有してもよく、式中、各R1は、独立して、炭素原子を1〜22個有するアルキル基、又は式HO−R2−OHを有するジオール、又は式HO−R3−(−O−R2−)m−OHを有するポリグリコールであり、R2及びR3は同一であっても異なってもよく、それぞれ炭素原子を1〜6個有する直鎖又は分岐鎖アルキレン基であり、m及びnはそれぞれ、1〜約100、1〜約10又は2〜約7である。ナフタレンジカルボン酸の好適なジエステルとしては、SymriseからCorapan(登録商標)TQとして入手可能なジエチルヘキシル2,6−ナフタレートが挙げられる。
【0061】
他の好適な光安定剤は、4−ヒドロキシベンジリデンマロネート誘導体又は4−ヒドロキシシンナメート誘導体である。好適な材料は、次式:
【0062】
【化4】
を有してもよく、式中、Aは、UV放射を吸収する発色団基であり、1つの2価の基又は2つの1価の基を含み、少なくとも1つの基がカルボニル(C=O)官能基を有し、R’は水素、直鎖若しくは分枝鎖C1〜C8アルキルラジカル、又は直鎖若しくは分枝鎖C1〜C8アルコキシラジカルであり、R”は直鎖又は分枝鎖C1〜C8アルキルラジカルである。例示的な化合物としては、エチル−α−シアノ−3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシシンナメート、エチル−α−アセチル−3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシシンナメート、イソ−プロピル−α−アセチル−3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシシンナメート、イソ−アミル−α−アセチル−3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシシンナメート、2−エチルヘキシル−α−アセチル−3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシシンナメート、ジエチル−3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンジリデンマロネート、ジ−(2−エチルヘキシル)−3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンジリデンマロネート、ジイイソアミル−3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンジリデンマロネート、ジドデシル−3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンジリデンマロネート、ジパルミトイル−3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンジリデンマロネート、及びジ−イソプロピル−3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンジリデンマロネートが挙げられる。特に好適な化合物は、EMD Chemicals,Inc.から商品名Oxynex(登録商標)STで入手可能なジエチルヘキシルシリンジリデンマロネート(INCI名)である。更なる好適な4−ヒドロキシベンジリデンマロネート誘導体又は4−ヒドロキシシンナメート誘導体は、米国特許第7,357,919号及び米国特許出願公開第2003/0108492 A1号及び同第2003/0157035 A号に開示されている。
【0063】
他の好適な光安定剤としては、米国特許出願公開第2010/0183529号に記載の2−ピロリジノン−4−カルボキシエステル化合物;米国特許出願公開第2008/0145324号に記載の、2つのアミノベンゾエート又はアミノベンズアミド基で置換されたケイ素含有s−トリアジン;米国特許出願公開第2004/00579912号、同第2004/00579914号、同第200/00579916号及び同第2004/062726号に記載のフルオレン誘導体;米国特許出願公開第2005/0220727号に記載の、Cibaにより商品名Tinogard(登録商標)Qとして販売されているトリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)シトレートなどのピペリジノール塩;並びに米国特許出願公開第2008/0019930号に記載のアリールアルキルアミド及びエステルが挙げられる。
【0064】
他の好適な光安定剤は、Personal Care Product Council’s International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,Thirteenth Edition,2010の「光安定剤」の機能カテゴリーに列挙されている。
【0065】
日焼け止め剤組成物は、有効な及び/又は消費者が望む製品を提供するために、1つ以上の任意構成成分を含んでもよい。例えば、組成物は他の活性物質又は剤を含むことができる。例えば、好適な任意選択的なスキンケア活性物質及び剤としては、糖アミン、ビタミン、油調整剤、フォトステロール(photosterols)、ヘキサミジン化合物、引き締め剤、抗しわ活性物質、抗萎縮活性物質、レチノイド、ペプチド、粒子状物質、抗セルライト剤、剥離活性物質、抗にきび活性物質、抗酸化剤、ラジカルスカベンジャー、コンディショニング剤、抗炎症剤、日焼け活性物質、皮膚美白剤、植物抽出物、抗菌活性物質、抗真菌活性物質、抗菌性活性物質、制汗活性物質、感覚剤、保存剤、抗ふけ剤、洗浄性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される活性物質又は剤を挙げることができる。これらの材料の例は、米国特許出願公開第2007/0185038 A1号、同第2006/0275237 A1号、同第2004/0175347 A1号及び同第2006/0263309 A1号に提供されている。日焼け止め剤組成物は、組成物の約0.0001重量%、0.001重量%、0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、又は3重量%〜約30重量%、25重量%、20重量%、15重量%、10重量%、7重量%、5重量%、3重量%、2重量%、又は1重量%の1つ以上のスキンケア活性物質含むことができる。
【0066】
所定の実施形態では、スキンケア活性物質は、糖アミン、ビタミン、ヘキサミジン化合物、ペプチド、及びこれらの組み合わせから選択することができる。
【0067】
本明細書で有用な糖アミンの例としては、グルコサミン、N−アセチルグルコサミン、マンノサミン、N−アセチルマンノサミン、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン、これらの異性体(例えば立体異性体)、及びこれらの塩(例えばHCl塩)が挙げられる。グルコサミン、特にD−グルコサミン及びN−アセチルグルコサミン、特にN−アセチル−D−グルコサミンは、本明細書で使用するのに好ましい。
【0068】
「ビタミン」とは、ビタミン、プロビタミン、並びにそれらの塩、異性体及び誘導体を意味する。好適なビタミンの非限定的な例としては、ビタミンB化合物(B1化合物、B2化合物、B3化合物、B5化合物、例えばパンテノール又は「プロB5」、パントテン酸、パントテニル;B6化合物、例えばピロキシジン、ピリドキサル、ピリドキサミン;カルニチン、チアミン、リボフラビン);ビタミンA化合物並びにビタミンAの天然及び/又は合成類似物、例えばレチノイド、レチノール、酢酸レチニル、パルミチン酸レチニル、レチノイン酸、レチンアルデヒド、プロピオン酸レチニル、カロチノイド(プロビタミンA)、及びビタミンAの生物活性を有するその他の化合物;ビタミンD化合物、ビタミンK化合物、ビタミンE化合物、又はソルビン酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、その他のトコフェロール及びトコフェロール化合物のエステルを含むトコフェロール;ビタミンC化合物、例えばアスコルビン酸塩、脂肪酸のアスコルビルエステル、並びにアスコルビン酸誘導体、例えば、リン酸アスコルビルマグネシウム及びリン酸アスコルビルナトリウムなどのリン酸アスコルビル、アスコルビルグルコシド、並びにソルビン酸アスコルビル;並びに飽和及び/又は不飽和脂肪酸などのビタミンF化合物が挙げられる。
【0069】
所定の実施形態では、日焼け止め剤組成物はビタミンB3化合物を含む。本明細書で使用するとき、「ビタミンB3化合物」とは、次式:
【0070】
【化5】
を有する化合物及びこれらの誘導体並びにこれらの任意の塩を意味し、式中、Rは、−CONH2(即ち、ナイアシンアミド)、−COOH(即ち、ニコチン酸)又は−CH2OH(即ち、ニコチニルアルコール)である。
【0071】
日焼け止め剤組成物は、ヘキサミジン化合物、その塩、及び誘導体を含んでもよい。本明細書で使用するとき、「ヘキサミジン化合物」は、次式:
【0072】
【化6】
を有する化合物を意味し、式中、R1及びR2は、任意であり、又は有機酸(例えば、スルホン酸など)である。好適なヘキサミジン化合物としては、Laboratoires SerobiologiquesからEleastab(登録商標)HP100として市販のヘキサミジンジイセチオネートが挙げられる。
【0073】
本明細書で使用するとき、「ペプチド」とは、10個以下のアミノ酸を含むペプチド、及びこれらの誘導体、異性体、金属イオン(例えば、銅、亜鉛、マンガン、マグネシウムなど)など他の種との錯体を意味する。「ペプチド」とは、天然起源ペプチド及び合成ペプチドの両方を指す。また、本明細書で有用なのは、ペプチドが含まれている天然起源の組成物及び市販されている組成物である。ペプチドは、少なくとも1つの塩基性アミノ酸(例えば、ヒスチジン、リシン、アルギニン)を含み得る。例えば、好適なペプチドは、ジペプチドカルノシン(β−ala−his)、トリペプチドgly−his−lys、トリペプチドhis−gly−gly、トリペプチドgly−gly−his、トリペプチドgly−his−gly、テトラペプチドgly−gln−pro−arg、ペンタペプチドlys−thr−thr−lys−ser、ペプチドの親油性誘導体、及び前出のものの金属錯体(例えば、トリペプチドhis−gly−glyの銅錯体(ラミンとしても既知))である。他の好適なペプチドとしては、ペプチドCK(arg−lys−arg);ペプチドCK+(ac−arg−lys−arg−NH2);及びペプチドE、arg−ser−arg−lysが挙げられる。市販のトリペプチド誘導体含有組成物は、100ppmのパルミトイル−gly−his−lysを含有しているBiopeptide CL(登録商標)(Sederma,France)であり、市販されている。市販のペンタペプチド誘導体含有組成物は、100ppmのパルミトイル−lys−thr−thr−lys−serを含有するMatrixyl(登録商標)(Sederma,France)である。好適なペプチドは、C端末のアミノ酸にスレオニンを有するジペプチド系分子であり、例えば、米国特許第2007/0020220 A1号に記載のパルミトイル−lys−thrなどである。
【0074】
本明細書で有用なペプチド誘導体としては、パルミトイル誘導体などの親油性の誘導体が挙げられる。一実施形態では、ペプチドは、パルミトイル−lys−thr−thr−lys−ser、パルミトイル−gly−his−lys、これらの誘導体、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0075】
また、所与の製品型に従来使用される成分のような、あらゆる他の好適な任意構成成分も、本発明の日焼け止め剤組成物に含まれることができる。The Personal Care Product Council’s International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,Thirteenth Edition,2010は、本明細書の組成物に添加することができる幅広い種類の非限定的な機能材料について記述している。このような機能材料の種類の例としては、研磨剤、吸収剤、香水、抗にきび剤、抗固化剤、消泡剤、抗微生物剤(例えば、ヨードプロピルブチルカーバメート)、抗真菌剤、抗酸化剤、結合剤、緩衝剤、充填剤、キレート剤、着色剤、化粧用収斂剤、化粧用殺生物剤、変性剤、収斂剤、外用鎮痛薬、フィルム形成剤、乳白剤、pH調整剤、植物誘導体、植物抽出物、植物組織抽出物、植物種子抽出物、植物油、植物、植物抽出物、保存剤、推進剤、還元剤、皮脂コントロール剤、金属イオン封鎖剤、美白剤、皮膚−コンディショニング剤(例えば、湿潤剤及び閉鎖剤)、並びに皮膚保護剤が挙げられるが、これらに限定されない。任意の他の好適なパーソナルケア成分としては、米国特許出願第2010/0112100号の第513〜839段落に列挙される材料が挙げられる。
【0076】
日焼け止め剤組成物の作製方法
上記の通り、日焼け止め剤組成物は多様な形態を取り得る。以降の手法は例示的なものであり、限定するものとして読まれるものではない。シリコーンエラストマーと液体UV活性物質とを好適な容器内で混合することによりUV複合体を予備形成してもよい。このUV複合体を数分間(例えば、15、30、又は60分間)〜数時間(例えば、12、24、36、又は48時間)放置して、シリコーンを完全に吸着及び膨潤させてもよく、この時間中、撹拌、粉砕、振とう、又はいくつかの他の機械的手段により混合を行ってもよい。UV複合体及び他の油相材料を混合し(例えば、撹拌棒を入れた電磁攪拌器)、場合により80℃に加熱してもよい。油相を均質となるまで混合する。
【0077】
日焼け止め剤ケア組成物がエマルションの形態にある場合、油相は上記の方法に従って調製することができる。別の容器では、水及び/又は水混和性溶媒などの水性担体と、存在する場合には任意の水溶性材料とを組み合わせることにより、水相を調製してもよい。組み合わせたものを混合し(例えば、撹拌棒を入れた電磁攪拌器)、場合により80℃に加熱してもよい。エマルションの具体的な形態(O/W又はW/O)に応じ、適切な相に乳化剤を添加することができる。典型的には、乳化剤は、連続相に添加することができる。更に、所望されるエマルション形態に応じ、油相には水相を加えることができ、逆もまた同様に行うことができる。エマルションを混合してもよい(例えば、撹拌棒を入れた電磁攪拌器、ローターステーターミル(rotor-stator mill)、プロペラ型ミキサーなど)。組成物を均質となるまで混合する。場合によりエマルションを適切な容器に移す。このエマルションを冷却させてもよい。
【0078】
UV複合体の実施例
以下は、例示的なシリコーンエラストマーと液体UV活性物質との組み合わせである。実施例のいくつかにおいて、UV複合体が形成される。実施例では、以下のシリコーンエラストマーを使用した。
1.Dow Corning(登録商標)9045−シクロメチコン(D5)中で供給されるジメチコンクロスポリマー。
2.Velvesil 125−シクロメチコン(D5)中で供給されるC30〜45アルキルセテアリルジメチコンクロスポリマー。
3.KSG−42−イソドデカン中で供給されるビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマー。
4.Dow Corning(登録商標)EL−8050 ID SOEB−イソドデカン中で供給されるジメチコン/ビス−イソブチルPPG 20クロスポリマー。
5.KSG−240−シクロメチコン(D5)中で供給されるジメチコン/PEG−10クロスポリマー。
6.KSG−320−イソドデカン中で供給されるPEG−15/ラウリルジメチコンクロスポリマー。
7.KSG−820−イソドデカン中で供給されるラウリルジメチコン/ポリ−グリセリン−3クロスポリマー。
【0079】
シリコーンエラストマーは、非UV溶媒中で供給される。溶媒を抽出し、シリコーンエラストマーを上述した溶媒抽出法により脱膨潤させた。液体UV活性物質で再膨潤させる前に、脱膨潤エラストマーの観察を行った。様々な比の液体UV活性物質及びシリコーンエラストマーを調製した。サンプルを機械的攪拌(およそ1100振動/分)を用いて周囲条件にておよそ2〜3時間、膨潤させた後、目視検査を行った。
【0080】
表1は、様々なシリコーンエラストマー中でのオクチサレート(2−エチルヘキシル−サリチレート)の負荷容量を示す(実施例番号は、上記に列挙したエラストマーに一致する)。いくつかの実施例では、UV複合体は、デカント可能な液体UV活性物質を有さずに、1:1以上の比で形成された。例えば、実施例A5のジメチコン/PEG−10クロスポリマー(KSG−240)は、1:1〜4:1の比でUV複合体を形成することが可能であった。シリコーンエラストマーは、5:1の比で容量を超えた。したがって、最大液体UV負荷(より詳細には、オクチサレート負荷)は、4:1〜5:1である。「*」を有する実施例は、特定された比にて自由液体が観察されたことを示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表2は、様々なシリコーンエラストマー中でのオクチノキセート(オクチルメトキシシンナメート)の負荷容量を示す(実施例番号は、上記に列挙したエラストマーに一致する)。いくつかの実施例では、UV複合体は、デカント可能な液体UV活性物質を有さずに、1:1以上の比で形成された。例えば、実施例B5のジメチコン/PEG−10クロスポリマー(KSG−240)は、1:1〜2:1の比でUV複合体を形成することが可能であった。シリコーンエラストマーは、3:1の比で容量を超えた。したがって、最大液体UV負荷(より詳細には、オクチノキセート負荷)は、2:1〜3:1である。「*」を有する実施例は、特定された比にて自由液体が観察されたことを示す。
【0083】
【表2】
【0084】
表3は、様々なシリコーンエラストマー中での混合液体UV系の負荷容量を示す(実施例番号は、上記に列挙したエラストマーに一致する)。混合液体UV系は、液体及び可溶化固体UV活性物質の両方を含む。混合液体UV系は、3部のアボベンゾン、6部のオキシベンゾン、15部のホモサレート、2.6部のオクトクリレン(octocrylane)、及び5部のオクチサレートを含み、これらは全て重量による。いくつかの実施例では、UV複合体は、デカント可能な液体UV活性物質を有さずに、1:1以上の比で形成された。例えば、実施例C6のPEG−15/ラウリルジメチコンクロスポリマー(KSG−320)は、1:1〜5:1の比でUV複合体を形成することが可能であった。シリコーンエラストマーは、6:1の比で容量を超えた。したがって、最大混合液体UV系負荷は、5:1〜6:1である。「*」を有する実施例は、特定された比にて自由液体が観察されたことを示す。
【0085】
【表3】
【0086】
SPF有効性
表2に記載した選択されたUV複合体と、液体UV活性物質、オクチノキセート単独を有する対照脚(leg)とに関する、インビトロでのUV有効性データを収集した。粗面化したPMMA板(Helioscience,Marseille,FranceのHD6板)に各組成物を塗布し、塗布した製品を15分間硬化させた後、Labsphere UV2000(Labsphere,Inc.,North Sutton,NH)を使用して、得られた製品フィルムのインビトロでのSPFを測定することによって、各実施例のインビボでのSPFを測定した。実施例は、シリコーンエラストマー及びオクチノキセートを含むUV複合体を含み、これらは対照に関して一貫した量(0.0100g)のオクチノキセートが各実施例中に存在することを確実にするよう塗布される。表4に示した結果は、UV複合体が、対照のニートのオクチノキセートよりも高い、インビトロでのSPF値を提供することを示す。UV複合体は、UV液体単独と比較して高いUV吸収効力(SPFの増大を介して)を提供している。実施例は、僅かな量の過剰の液体UV活性物質を含むが、対照を超えるSPF増大は明かにUV複合体の結果である。当業者は、本UV複合体中に使用されるシリコーンエラストマーが、単独では有意なUV有効性を有さないことを認識するであろうことに留意される。
【0087】
【表4】
【0088】
日焼け止め剤組成物実施例
以下は、表1、2、及び3に示した例示的なUV複合体を含む日焼け止め剤組成物の実施例である。
【0089】
【表5】
1 記入した液体UV活性物質とシリコーンエラストマーとの比におけるUV複合体の重量パーセント。
2 CognisのEmulgade(商標)PL68/50
3 BASFのビス−エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
4 Seppicのポリアクリルアミド、C13〜14イソパラフィン、及びラウレス−7
5 Equistarのポリエチレンホモポリマースフェア
6 Dow Corningのジメチコン及びジメチコノール
【0090】
適切な容器中で、水相材料を組み合わせ、75℃に加熱する。別の適切な容器で、油相材料を組み合わせ、75℃に加熱する。次に油相を水相に加え、得られたエマルションをすり混ぜる(例えば、ローターステーターミルにより)。次に、増粘剤をエマルションに加え、撹拌しながらエマルションを45℃に冷却する。45℃にて、残りのその他の成分を加える。次に、撹拌しながら生成物を30℃になるまで冷却し、再度すり混ぜ、次に適切な容器に注ぎ入れる。
【0091】
UV複合体の感触効果を示す日焼け止め剤組成物
UV複合体の使用により達成される優れた調製結果を示すために、2つの日焼け止め剤組成物を調製し、1つはUV複合体を使用し、1つは同一の濃度のUV活性物質及びシリコーンエラストマーを使用するが、非UV溶媒が付随する市販のシリコーンエラストマーを使用して調製した。
【0092】
【表6】
1 LonzaのDMDMヒダントイン、ヨードプロピニルブチルカルバメート
2 オクチサレートとジメチコン/ビス−イソブチルPPG 20クロスポリマーの3:1ブレンド、僅かに過剰量のオクチサレートを有する、オクチサレート及びシリコーンエラストマーのUV複合体からなる。したがって、組成物αは、約5%のオクチサレート及び約1.66%のジメチコン/ビス−イソブチルPPG 20クロスポリマーを含む。
3 EL−8051 IN(Dow Corning,Midland,MI)は、ネオペンタン酸イソデシル溶媒中で膨潤された12%エラストマーとして供給される市販のジメチコン/ビス−イソブチルPPG 20クロスポリマーである。組成物βが組成物αと同一の量のオクチサレート(5%)及びジメチコン/ビス−イソブチルPPG 20クロスポリマー(1.66%)の両方を含むために、5%のオクチサレートを加える必要があり、またEL−8051 INを13.84%の濃度で加える必要がある。その結果、組成物βは、追加の12.18%のネオペンタン酸イソデシル溶媒も含む。
4 Seppic(商標)のポリアクリルアミド、C13〜14イソパラフィン及びラウレス−7
【0093】
UV複合体を有する組成物αと等価な組成物(即ち、同一の重量百分率のオクチサレート及びシリコーンエラストマー)を提供するために、従来の材料を有する組成物βは、約12.18%のネオペンタン酸イソデシルを必ず含む必要があるであろう。12.18%ネオペンタン酸イソデシルを含ませることにより、組成物中に利用可能な、例えばスキンケア活性物質、皮膚軟化剤、又は更なるUV活性物質などの他のより有効な材料のための場所が低減する。加えて、ネオペンタン酸イソデシルは油性材料のため、配合物の皮膚感触に対して負の影響を有する。このことは、本発明者らが5人の人々に、両方の製品に触って、皮膚上で比較的低い脂性及び油性を有すると思われる製品を選択するよう要求する試験を行うことにより示された。パネリストは、管理された用量(0.1g)の各製品を手掌前腕上に塗布し、該製品を皮膚上に擦り込み、脂性及び油性が比較的低い組成物を特定するよう要求された。全パネリスト(5人中5人)が皮膚上で比較的低い脂性及び油性を有するとして組成物αを選択した。
【0094】
本明細書に開示した寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に断らないかぎり、そのような寸法のそれぞれは、記載された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば、「40ミリメートル」として開示される寸法は、「約40ミリメートル」を意味するものである。
【0095】
任意の相互参照又は関連特許若しくは関連出願を包含する本明細書に引用される全ての文献は、明確に除外ないしは別の方法で限定されない限り、その全てが本明細書中に参照により組み込まれる。いずれの文献の引用も、こうした文献が本願で開示又は特許請求される全ての発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、また、こうした文献が、単独で、あるいは他の全ての参照文献とのあらゆる組み合わせにおいて、こうした発明のいずれかを参照、教示、示唆又は開示していることを容認するものでもない。更に、本文書において、用語の任意の意味又は定義の範囲が、参考として組み込まれた文書中の同様の用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合には、本文書中で用語に割り当てられる意味又は定義に準拠するものとする。
【0096】
本発明の特定の実施形態が例示され記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には自明であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を添付の特許請求の範囲で扱うものとする。