特許第6092946号(P6092946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092946
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】爆薬材料の起爆
(51)【国際特許分類】
   F42B 3/113 20060101AFI20170227BHJP
   C06B 25/32 20060101ALI20170227BHJP
   C06B 25/04 20060101ALI20170227BHJP
   C06B 47/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   F42B3/113
   C06B25/32
   C06B25/04
   C06B47/00
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-121643(P2015-121643)
(22)【出願日】2015年6月17日
(62)【分割の表示】特願2009-552977(P2009-552977)の分割
【原出願日】2008年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-222166(P2015-222166A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2015年7月17日
(31)【優先権主張番号】60/895,321
(32)【優先日】2007年3月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511052004
【氏名又は名称】オリカ エクスプロージブズ テクノロジー プロプライアタリー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】グッドリッジ,リチャード ジョン
(72)【発明者】
【氏名】アップルビー,ロドニー ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,デイビッド オラフ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,トーマス
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−273800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 3/113
C06B 25/04
C06B 25/32
C06B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体爆薬;
封じ込め爆薬;
該封じ込め爆薬にレーザー光を放出するように適合させた光ファイバー、
を含む、爆発システムであって、
該封じ込め爆薬は、該封じ込め爆薬の爆発が該本体爆薬の起爆を引起すように該本体爆薬に関係付けて設けられており、該封じ込め爆薬の1部分と該本体爆薬の1部分が直接接触しているか又は該封じ込め爆薬と該本体爆薬との間に直接的に膜が設けられており、この膜は、封じ込め爆薬の爆発が本体爆薬の起爆を引き起こすような膜であり、該封じ込め爆薬が伸長管状部材中に封じ込められており、該管状部材の内径が、該爆薬が封じ込められるための臨界直径より大きく、該本体爆薬は、封じ込め爆薬が封じ込められる管状部材を取り巻いているシステム。
【請求項2】
該伸長管状部材が金属製であり、該伸長管状部材の内径が、該封じ込め爆薬が封じ込められるための臨界直径より3倍まで大きい値である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
該光学ファイバーの一端が、該封じ込め爆薬と接触しているか、又はその中に埋め込まれている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
該光学ファイバーの露出端部が、該光ファイバーの端部と該封じ込め爆薬との間に空気の間隙が生ずるように、封じ込め爆薬に隣接しているが接触しないように設けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
該封じ込め爆薬が、該レーザー光エネルギーを該封じ込め爆薬に加えるのを促進するため、非爆発性の熱移動媒体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
該熱移動媒体が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ナノダイヤモンド及びレーザー染料から選ばれる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
該本体爆薬がブースターの形態をとり、該封じ込め爆薬を封じ込めている該伸長管状部材がブースター中に埋め込まれている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
該本体爆薬がペントライトブースターの形態をとり、該ペントライトブースターが、該封じ込め爆薬を封じ込めている管状部材の周りに注型されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
該封じ込め爆薬と本体爆薬がエマルジョン爆薬組成物である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
該本体爆薬がエマルジョン爆薬材料である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
該本体爆薬が水ゲル爆薬である、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
請求項1記載の爆発システムにおいて本体爆薬を起爆する方法であって、
レーザー光の放射により封じ込め爆薬を爆発させ、それによって本体爆薬の起爆を引起すことを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爆薬装填物(explosive charge)を起爆させる(爆発させる)ためのシステムに関する。より詳しくは、本発明は、常用の起爆装置(detonator)の使用に依存しないシステムを提供する。本発明はまた、常用の起爆装置の使用を必要としない、爆薬装填物を起爆させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
起爆装置(即ち、雷管(blasting cap))は、別の、より大きい2次爆薬(secondary explosive)装填物の爆発を起爆するため特別に設計された装置である。起爆装置は、採鉱、切出し(quarrying)及び地震による探査(seismic exploration)を含む、爆薬装填物が爆発される広い範囲の商業的作業によく使用される。伝統的な考えは、起爆装置の使用はそのような作業の実施に欠かせないというものであった。しかしながら、これは、供給、保安及び安全に関して考慮すべき事項をもたらす。
【0003】
この背景に対抗して、起爆装置の使用に依存しない、爆薬装填物を起爆するためのシステムを提供することが望まれるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、常用の起爆装置の使用を必要としない、爆薬装填物を起爆させるシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、常用の起爆装置の使用に頼らずに爆薬装填物を起爆し得ることが見出された。より詳細には、本発明によれば、爆薬装填物はレーザーを用いて起爆され得る。
【0006】
従って、1実施態様において、本発明は、
本体(bulk)爆薬;
封じ込め(confined)爆薬;
該封じ込め爆薬にレーザー光を放出(deliver)するように適合(adapt)させた光ファイバー、
を含む、起爆装置の無い爆発システムであって、
該封じ込め爆薬は、該封じ込め爆薬の爆発が該本体爆薬の起爆を引起すように該本体爆薬に関係付けて設けられている、
システムを提供する。
【0007】
他の実施態様において、本発明は、本体爆薬を起爆する方法であって、
レーザーによる放射(irradiation)により、封じ込め爆薬を爆発させ、
該封じ込め爆薬は、該封じ込め爆薬の爆発が該本体爆薬の起爆を引起すように該本体爆薬に関係付けて設けられている、
方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1a】本発明による爆発システムを説明する概念図である。
図1b】本発明による爆発システムを説明する概念図である。
図2】本発明による爆発システムを説明する概念図である。
図3】本発明による爆発システムを説明する概念図である。
図4】本発明による爆発システムを説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明によれば、本体爆薬(装填物)は、封じ込め爆薬(装填物)の爆発により起爆される。順番に、該封じ込め爆薬の起爆は、該封じ込め爆薬へのレーザー光放射により引起こされる。かくて、該本体爆薬は、常用の起爆装置を使用せずに起爆される。これは、当該技術分野における重要な進歩を意味すると考えられる。
【0010】
本発明によれば、レーザー起爆は、該封じ込め爆薬をその発火(ignition)が起こるまで加熱することにより達成される。該封じ込め爆薬は、この初期発火が完全な爆発に伝播するように封じ込められる。該封じ込め爆薬と本体爆薬とは、該封じ込め爆薬の爆発が該本体爆薬の起爆を引起すように互いに関係付けて設けられる。本発明の1実施態様において、該封じ込め爆薬の1部分と該本体爆薬の1部分とは直接接触し得る。しかしながら、他の実施態様において、封じ込め爆薬と本体爆薬との間の意図された作業関係が維持されれば、これは必ずしも本質的ではない。例えば、ある実施態様において、該封じ込め爆薬及び本体爆薬は、膜、又は類似物により分離され得る。この場合、膜、又は類似物は、製造の容易さのために含まれ得る;該膜(又は類似物)は、該本体爆薬の爆発に影響を与えない。
【0011】
該封じ込め爆薬は、通常2次爆薬材料(secondary explosive material)である。適切な材料の例は、PETN(ペンタエリスリトール テトラニトレート)、テトリル(tetryl)(トリニトロフェニルメチルニトラミン)、RDX(トリメチレントリニトラミン)、HMX(シクロテトラメチレン-テトラニトラミン)、ペントライト(pentolite)(PETN及びTNT(トリニトロトルエン))、及び類似物、を含む。これらの中で、PETN又はペントライトの使用が好ましい。他の実施態様において、該封じ込め爆薬は、例えば燃料油中に分散した不連続の酸化剤塩(oxidiser salt)相を含む油中水エマルジョンのような、常用のエマルジョン爆薬であり得る。典型的には、そのようなエマルジョンは、酸化剤塩として、硝酸アンモニウム及び/又は硝酸ナトリウムを含む。そのようなエマルジョン組成物は当該技術分野で非常によく知られている。更に、該封じ込爆薬は、酸化剤塩、増感剤、増粘剤、架橋剤、及び燃料、を含む常用の水ゲル爆薬であり得る。これらの組成物もまた、当該技術分野でよく知られている。
【0012】
使用される本体爆薬もまた、一般に、前に例示したような2次爆薬である。封じ込め爆薬と本体爆薬とが2次爆薬であるとき、本発明の爆発システムは1次爆薬(primary explosive)を含まないものと認識される。該本体爆薬装填物は、該封じ込め爆薬と同じか又は異なる。該封じ込め爆薬が該本体爆薬と同じとき、本発明は、該本体爆薬の1部分の適切な封じ込めにより実施され得る。
【0013】
本発明の重要な態様は、該封じ込め爆薬が封じ込められる仕方であり、それは、封じ込めの形状寸法(geometry)が該本体爆薬の爆発の成功に決定的な役割を持つことが分かったからである。かくて、該封じ込め爆薬は、該封じ込め爆薬の最初の発火を含み、且つ完全な爆発への引続いた伝播が可能なような仕方で封じ込められねばならない。様々な封じ込め手段(形状寸法及び材料)が、本発明の実施において採用され得る。
【0014】
1実施態様において、該封じ込め爆薬は、伸長(elongate)管状部材中に封じ込められ得る。通常、これは円形の横断面を持つが、必須ではない。伸長管状部材が使用されるとき、該管状部材の内径は、該爆薬が封じ込められるための臨界直径(critical diameter)より大きくなければならない。該封じ込め爆薬が、例えば該封じ込め手段が金属製であるときのように、強く封じ込められるとき、該管状部材の内径は、該爆薬が封じ込められるための臨界直径より3倍まで大きい値であり得る。
【0015】
典型的な、本発明に有用な円形横断面の管状部材は、一般に約4〜約5mm、例えば約3mm、の内径、そして約110mmまで、例えば約2〜110mm、の長さを持つ。管状部材の、該封じ込め爆薬の転移(transition)に必要な長さは、爆薬の様々なタイプの間で変わるであろう。例えば、PETNの場合、該管状部材の最小長さは約30mmであり、一方ペントライトの場合、該最小長さは約90mm(約3mmの内径の場合)であろう。
【0016】
該封じ込め手段は、他の形状寸法を呈し得る。かくて、球形の又は円錐形の封じ込め手段が使用され得る。
【0017】
説明のため、以下において、本発明は、封じ込め手段としての円形横断面の管状伸長部材と関係して記載されるであろう。
【0018】
該封じ込め手段のための適切な材料の例は、金属及び合金、例えばアルミニウム及び鉄、及び強度の高い高分子材料を含む。
【0019】
典型的には、該本体爆薬は、該封じ込め爆薬の1部分と(直接)接触して設けられる。該封じ込め爆薬が伸長管状部材中に封じ込められるとき、該必要な接触は、該封じ込められた部分が封じ込められている該管状部材の端部により達成され得る(その端部は、レーザー光が光ファイバーから放出される管状部材の端部から遠くにある)。他の形状寸法の封じ込め手段が採用されるとき、少なくとも1部分の封じ込め爆薬が該本体爆薬と接触していることが重要である。
【0020】
本発明の爆発システムは、該封じ込め爆薬にレーザー光を伝達するように適合させた光ファイバーを含む。これは、(露出した)ファイバーの一端が該封じ込め爆薬と接触して、即ち埋め込まれて(embedded in)、設けられることによりなされ得る。かくて、該光ファイバーの一端は、該封じ込め爆薬が封じ込められている該管状部材の端部に挿入され得る。該光ファイバーは、通常50〜400μmの直径を持つであろう。
【0021】
本発明の1実施態様において、該光ファイバーの露出した端部は、爆薬(の外部表面)に隣接しているが接触してはいないように設けられ得る。(露出した)光ファイバーの端部と該封じ込め爆薬との間に(空気の)間隙を設けることが、該封じ込め爆薬への熱移動に、そしてそれによりレーザー光が該ファイバーから放出される時と該封じ込め爆薬が起爆される時との間の遅れ時間に、影響を持つことが判明した。より詳細には、該間隙は、逆伝導効果(reverse conduction effect)を最小化/回避することにより該封じ込め爆薬への効果的な熱移動をし易くする絶縁体として機能すると考えられる。好ましくは、光ファイバーの露出端部は、該管状部材中の起爆爆薬の表面から短い距離で離れて設けられる。典型的には、この短い距離は、5μm〜5.0mmである。
【0022】
該光ファイバーは、常用のデザインのものであり、クラッド(cladding)の層を持つ。この層は、該光ファイバーが該管状部材中で該封じ込め爆薬に関係して配置されるとき、該光ファイバーの一端で除去され得る。光ファイバーの特性は、他の要素の中で、該封じ込め爆薬に伝達されるレーザー光の波長に基づいて選択されるであろう。例として、該波長は、典型的には780〜1450nmである。
【0023】
該光ファイバーの露出端部は、通常、適切な接続装置により該封じ込め爆薬との関係で適切な位置に保持される。O-リングが、該光ファイバーの露出端部をつかみ、ガスの漏れを避けるのに使用され得る。
【0024】
該レーザーの加熱態様及び使用される封じ込め爆薬のタイプを含み、ただしそれらに限定されない本システムの特性によって、本発明の実施のため、該封じ込め爆薬中に、該封じ込め爆薬に該レーザー光のエネルギーを加えるのを促進するための非爆発性の熱移動媒体を含む必要があり得る。典型的には、該熱移動媒体は、使用されるレーザー光の波長に吸収帯を持つレーザー光吸収材料である。熱移動媒体の例は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ナノダイアモンド及びレーザー染料を含む。そのような材料は商業的に入手可能である。一般に、使用されるとき、該封じ込め爆薬は、10重量%までの熱移動媒体を含むであろう。使用される熱移動媒体の量は、実験により最適化され得る。
【0025】
同様にして、熱源として役立つ及び爆発反応に積極的に寄与する他の添加剤が該封じ込め爆薬中に含まれ得る。そのような材料は、ナノサーマイト(nanothermites)、ナノ金属、硝酸化ナノ材料及び他の感光性(optically sensitive)燃料を含む。そのような材料の量は、該封じ込め爆薬の10重量%までであり得る。そのような材料は、熱移動媒体と共に、又は単独で使用され得る。熱移動媒体及び/又は感光性材料の1つ又はより多くの使用は、そのような媒体及び/又は材料が使用されないときより低い程度の大きさのレーザーエネルギーによる爆発の達成を可能にし得る。
【0026】
爆発が望まれる爆薬装填物は、一般に該封じ込め爆薬の少なくとも1部分と(直接に)接触して設けられる。典型的には、この接触は、該光ファイバーと連携した該管状部材の端部から遠い、該封じ込め爆薬が封じ込められる管状部材の端部で起こるであろう。該爆薬装填物が提供される形によって、該爆薬装填物はまた、封じ込め爆薬が封じ込められる管状部材を取り巻き得る。換言すれば、該管状部材は該爆薬装填物中に埋め込まれ得る。
【0027】
本発明の1実施態様において、該爆薬装填物はブースター(booster)、例えばペントライトブースター、の形をとる。この場合、該封じ込め爆薬、好ましくはPETN又はペントライト、は、該ブースター中に埋め込まれた伸長管状部材中に設けられる。該ブースターは、従って、該管状部材を収容するように設計され得る。かくて、該管状部材は、起爆装置起爆ブースター(detonator initiated boosters)の場合として(as is the case for)、適切な溜め(well)中のブースター中に設けられ且つ固定(secure)され得る。別法として、常用のブースターがこの実施態様を実施するのに使用され得る。
【0028】
別法として、本発明の他の実施態様において、該ペントライトブースターは、適切な管状部材の周りに注型(cast around with)され得る。この場合、本発明を、殻/注型物(shell/casting)と該殻/注型物により境界付けられた(defined)くぼみ(cavity)中に伸びた(extend)一体的に形成された管状部材、を含むワンピースブースターを用いて実施することが出来得る。適切な爆発性材料(類)は、次いで該殻/注型物及び管状部材中に注型され得る。
【0029】
該ブースターに関係した本発明のこれらの実施態様は、石油と天然ガスの埋蔵調査において地質の特性決定する分析のための信号(衝撃波)を発生させるのに(ペントライト)ブースターが使用される地震による探査において、実用的な用途を持ち得る。かくて、本発明は、地震による探査における本発明の実施態様の使用まで拡がる。
【0030】
本発明の他の実施態様において、該爆薬装填物はある長さの爆発用コード(cord)の形をとる。この場合、該爆発用コードの端部は、封じ込め爆薬の少なくとも1部分と直接接触して設けられる。任意の適切な保持装置又は接続装置が、使用の前にこの接触が維持されるのを確かにするため使用され得る。該爆発用コードの起爆は別として、該爆発用コードは常用の仕方で使用され得る。複数の爆発孔(blastholes)にわたる該爆発用コードの瞬間的爆発は、プレスプリット(pre-split)及びトンネル境界爆発用途に有利であると証明され得る。
【0031】
他の実施態様において、該封じ込め爆薬及び本体爆薬は、エマルジョン爆薬材料であり得る。常用のエマルジョン爆薬材料は、この点で使用され得る。この実施態様において、該エマルジョン爆薬材料の1部分は適切な伸長管状部材中に封じ込まれ、そして本体エマルジョン爆薬材料中に浸漬(immersed)/埋め込み、され得る。この実施態様(及び全ての他の態様)において、封じ込めに使用する手段の性質(nature)及び寸法は、本発明の実施を最適化するため操作され得る。
【0032】
本発明に従って該封じ込め爆薬を起爆するのに必要なレーザー光は、様々なレーザー源から放射され得、例えば固体レーザー及びガスレーザーが使用され得る。レーザービームはレーザーダイオードによっても発生され得る。典型的には、本発明に従った有用なレーザービームの特性は、近赤外領域に波長を持つダイオードレーザーから放射される。実用上、該レーザーは、通常、自蔵(self-contained)ダイオードレーザー及び電力源であろう。該レーザーは、常用の仕方で光ファイバーに結合され得る。有用なレーザー、電力源及び光ファイバーは商業的に入手可能である。
【0033】
本発明の実施態様に従って、該光ファイバー端部と該封じ込め爆薬との間での添加剤(additive)及び適切な埋め合わせ部材(stand-off)の使用は、比較的低い出力(1Wより低い)のレーザーを用いた爆薬の起爆を可能にし得る。ダイオードレーザーの使用との組み合わせで、これは、小さい、手に取れるレーザーシステムを用いた本発明の成功裏の実施を容易にする。
【0034】
本発明の実施態様は、添付した非限定の図面において説明される。
【0035】
図1aは、鋼鉄製の伸長管状部材3中に封じ込め爆薬2を含む起爆システム1を説明する。該管の寸法は、内径3.2mm、外径6.4mm、長さ110mmである。封じ込めた爆薬はPETNであり、約1.0g/cm3の充填密度で該管状部材3中に詰めこまれている。ペントライトが使用されるとき、それは該管中に注型され得る。注型ペントライトの密度は1.6g/cm3である。PETNとペントライトは共に、熱移動媒体及び/又は感光性材料でドープされ得る。典型的には、図中で説明された実施態様において、2%のカーボンブラックでドープされたPETN及びペントライトは、本発明の実施に有用であることが分かった。
【0036】
該管状部材3の一端は光ファイバー接続装置5を用いて光ファイバー4に接続される。該光ファイバー4は、クラッドの外層6を含む。該光ファイバーの露出端部は該管状部材3中に伸び、そして封じ込め爆薬2と接触する。該管状部材3は該ブースター7中に設けられた溜め(well)を経由してブースター7中に挿入される。O-リングが、光ファイバー4の露出端部を掴むのに使用される。
【0037】
使用時、レーザー源(図示せず)が光ファイバー4を通して該封じ込め爆薬2にレーザー光を放出するのに用いられる。これは該封じ込め爆薬2の加熱を引起し、発火に導く。該封じ込め爆薬が適切に封じ込められていれば、該最初の発火は完全な爆発に伝播する。順番に、これはブースター7の爆発を引起す。
【0038】
図1bは同様な取り合わせを示すが、この場合、該光ファイバー4の端部と該封じ込め爆薬2との間に間隙8が設けられる。この間隙8の効果は、該光ファイバー4の露出端部から該封じ込め爆薬2への熱移動を遅らせ、それにより、該レーザーが発射されたときと該起爆爆薬が起爆したときの間の遅延時間に影響を与えることである。
【0039】
図2は、図1bに示されたと同様の起爆システムを説明するが、ここでは、ある長さの爆発用コード9の開放端部は、該管状部材3中の該封じ込め爆薬2と接触して設けられる。保持用ナット10、金環(ferrule)11及び圧縮器具(compression fitting)12が、該封じ込め爆薬2に関係する位置で該爆発用コードを保持するために使用される。図1bのように、間隙8が該光ファイバー4と該封じ込め爆薬2の間に設けられる。
【0040】
レーザー源(図示せず)が、該光ファイバー4を経由して該封じ込め部分2に連通するレーザー光のビームを発生するのに用いられる。これは、封じ込め部の加熱と発火を引起す。該封じ込め部分の爆発は、順番に爆発用コード9の起爆を引起す。
【0041】
図3及び図4は、下記の実施例中で議論される。
次の非限定の実施例は、本発明の実施態様を説明する。
【実施例】
【0042】
実施例において使用したレーザーは、Lissotschenko Mikrooptik(LIMO)レーザーダイオード、詳しくは60ワット ダイオードレーザー LIMO 60-400-F400-DL808であった。このレーザーは波長808nmの光を発生し、400μm光ファイバーに結合している。該レーザーは冷却を必要とし、これは、ThermoTek P308-15009レーザーダイオード冷却装置を用いてなされる。Amtron CS412制御装置がレーザー発生を制御するのに使用される。該レーザー及び冷却装置は(離れた)調製室に、そして該制御装置は別の制御室に設置された。該調製室は、間違えた場合(if tripped)該レーザーの出力を低下させるインターロックを備えたドアを持つ。
【0043】
夫々の実験について、該レーザーは、該調製室から出るパイプを通して噴射タンク(blast tank)中に供給される光ファイバー(直径200μm又は400μm)により、起爆システム又はその構成部品に接続される。
【0044】
PETNの起爆
2%カーボンブラックでドープされたPETNのバッチが調製され、標準SMA 905隔壁接続装置(bulkhead connector)の形態の伸長管状部材中に手で詰め込まれた。光ファイバーの露出端部が、該ドープされたPETNと直接接触するように該管状部材の端部に挿入された。該ドープされたPETNは、38ワットのレーザー出力を受けた。著しい爆発音(report)があり、残留PETNは観察されなかった。
【0045】
爆発用コードの起爆
図2で説明された形状が長さ1mの爆発用コードの爆発を試すために実施された。10g/mのコードが使用された。カーボンブラックでドープされたPETNが、標準SMA 905隔壁接続装置中に充填された。光ファイバー接続装置は標準SMA 905器具であった。平均0.3gの、約1.0g/cm3の密度に圧縮された、2%カーボンブラックでドープされたPETNが、該隔壁接続装置中に充填された。該隔壁接続装置は、突合せ溶接(butt weld)が開口され(reemed)該隔壁接続装置を受け入れるようにタップが設けられている(tapped) Yorlok圧縮器具(compression fitting)中に挿入された。
【0046】
起爆爆薬は38Wレーザーエネルギーを放射された。これは、該爆発用コードの爆発に導き、該実験後残留コードは無かった。
【0047】
該爆発用コードが完全な爆発に進むかどうかを試験するため、3mの爆発用コードがレーザー起爆装置中に挿入された。該爆発用コードの自由端部は小さい結び目とされ、そして、Magnafracパッケージエマルジョン(packaged emulsion)の2x16'カートリッジの端部中に挿入された。該システムは38Wレーザー放射により起爆された。該カートリッジの爆発速度は、2本線法(two wire method)により測定された。測定値は4820m/sであった。この方法の誤差は±200m/sである。比較のため、5個のカートリッジが#8雷管(cap)で打たれ(shot)、そしてVODが記録された。平均VODは4850m/sであった。この結果から、該爆発用コードは完全爆発を達成していた。
【0048】
ペントライトブースターの起爆
ブースターを起爆させるため該起爆薬が爆発転移への爆燃(deflagration to detonation transition)(DDT)を受けるのを確実にする設計が必要である。
【0049】
様々なタイプの封じ込め爆薬が、内径3.2mm、外径6.4mm、長さ110mmの伸長ステンレス管に封じ込められ、1連の実験が行われた。該管は開放端部で(セロハン(登録商標)テープにより)封止され、もう一方の端部で光ファイバーに接続された。該光ファイバーの露出端部は該起爆薬中に伸ばされた。この取り合わせは図3及び4に示される。
【0050】
図3は、伸長ステンレス管3中に装備された封じ込め爆薬2を示す。該管3の端部は、封じ込め爆薬2の損失を避けるためセロハン(登録商標)テープ12で封止される。このタイプは、該本体爆薬の爆発がどのように達成されるかということについては、本発明の実施に影響を与えない。光ファイバー4は、適切な接続装置により該管の端部に接続される。該光ファイバー4の露出端部は該封じ込め部分2の中に伸びる。図3に示された実施態様において、該封じ込め爆薬2は、異なる爆薬材料の別々の部分(discrete portions)(2a、2b)からなり得る。該光ファイバー4の端部に隣接した該部分2aは、該光ファイバー4の露出端部から遠い部分より熱移動に対してより敏感にされ得る。かくて、該部分2aは、カーボンブラックでドープしたPETNであり得、そして該部分2bは単にPETNであり得る。
【0051】
図4は、ブースター7中に充填されたときの該管3を示す。これを容易にするため、該ブースター7は1個又はより多くの溜め(well)を備えられ得る。該管3は、エポキシ接着剤で該溜め中に封止される。封じ込め爆薬2の長手方向の少なくとも1部分は、該管3が該ブースター溜め中に挿入されるとき、該ブースター7により取りまかれる。
【0052】
使用された封じ込め爆薬の性質、レーザー出力、爆発の有無、及び該レーザーの開始時と爆発発生時との間の(およその)時間は、次の表に示される。爆発の成功は、本発明により起爆されるブースターを用いたHDPEの証明板(witness plate)(4x2x24cm)になされた損傷を、#8雷管により起爆される同じ種類のブースター(90gペントライト)を用いた同じタイプの証明板になされた損傷と比較することにより評価された。
【0053】
【表1】
【0054】
注目すべき幾つかの特徴がある。先ず、該カーボンブラックは放射エネルギーを該爆薬に効率的に加えるための効率的な剤と思われる。カーボンブラックが無い場合、2%カーボンブラックでドープされたPETNの場合より、起爆するのに殆ど3桁大きいエネルギーが必要である。エネルギーは単純には時間と出力を掛けた値であり、該レーザーにより供給される一定の出力において、該レーザーは臨界点に達するのにより長い時間の作動が必要である。更なる比較については、実験番号3及び10参照。
【0055】
次に、PETN中のカーボンブラックには最適濃度があると思われる。実験番号2及び3は全く同一の結果であり、一方、カーボンブラックの量を50%まで増加させることは有害効果を持つ。明らかに、該PETNが起爆するのに実質的により多くのエネルギーを必要とするよう十分に希釈されるポイントがある。これは、熱移動効果か、又はPETNはこの条件下では適切に伝播出来ないためであろう。
【0056】
第3に、該光ファイバーと該爆薬表面との間の間隙は、実験番号8及び9に見られる遅れ時間に実質的な効果を持つ。該空気間隙は、殆ど確かに絶縁層として機能する。
【0057】
第4に、カーボンブラックでドープされた注型ペントライトは、比較的高い及び低いレーザー出力で容易に爆発された。
【0058】
最後に、そして最重要事項として、この設計はブースターが比較的低いレーザー出力で爆発されるのを可能にする。結果として、持ち運び可能な起爆システムは極めて経済的である。
【0059】
この明細書とそれに続く請求項を通して、文脈がそうでないとする以外は、「含む(comprise, comprises and comprising)」という用語は、述べられた整数又は工程、或いは整数又は工程の群の包含を暗示し、如何なる他の整数又は工程或いは整数又は工程の群の排除を暗示しない、と理解されよう。
【0060】
如何なる先行刊行物(又はそれから派生した情報)又は知られている如何なる事項についてのこの明細書中の引用も、その先行刊行物(又はそれから派生した情報)又は知られている如何なる事項がこの明細書と関連する試みの分野における一般常識の部分をなすという承認、了解又は如何なる形における示唆としても捉えられるべきではない。本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[17]に記載する。
[1]
本体爆薬;
封じ込め爆薬;
該封じ込め爆薬にレーザー光を放出するように適合させた光ファイバー、
を含む、起爆装置の無い爆発システムであって、
該封じ込め爆薬は、該封じ込め爆薬の爆発が該本体爆薬の起爆を引起すように該本体爆薬に関係付けて設けられている、
システム。
[2]
該封じ込め爆薬の1部分と該本体爆薬の1部分が直接接触している、項目1に記載のシステム。
[3]
該封じ込め爆薬と該本体爆薬とが膜により分離されている、項目1に記載のシステム。
[4]
該封じ込め爆薬が2次爆薬材料である、項目1に記載のシステム。
[5]
該封じ込め爆薬がPETN又はペントライトである、項目4に記載のシステム。
[6]
該本体爆薬材料が2次爆薬材料である、項目1に記載のシステム。
[7]
該封じ込め爆薬が伸長管状部材中に封じ込められている、項目1に記載のシステム。
[8]
該管状部材の内径が、該爆薬が封じ込められるための臨界直径より大きい、項目7に記載のシステム。
[9]
該ファイバーの一端が、該封じ込め爆薬と接触しているか、又はその中に埋め込まれている、項目1に記載のシステム。
[10]
該ファイバーの露出端部が、該封じ込め爆薬に隣接しているが接触しないように設けられている、項目1に記載のシステム。
[11]
該封じ込め爆薬が、該レーザー光エネルギーを該封じ込め爆薬に加えるのを促進するため、非爆発性の熱移動媒体を含む、項目1に記載のシステム。
[12]
該熱移動媒体が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びレーザー染料から選ばれる、項目11に記載のシステム。
[13]
該封じ込め爆薬がブースター中に埋め込まれた伸長管状部材中に設けられている、項目1に記載のシステム。
[14]
ペントライトブースターが、該封じ込め爆薬を封じ込めている適切な管状部材の周りに注型されている、項目1に記載のシステム。
[15]
該本体爆薬が、ある長さの爆発用コードの形をとり、該爆発用コードの一端は、該封じ込め爆薬の少なくとも1部分と直接接触して設けられている、項目1に記載のシステム。
[16]
該封じ込め爆薬と本体爆薬がエマルジョン爆薬組成物である、項目1に記載のシステム。
[17]
本体爆薬を起爆する方法であって、
レーザー光の放射により封じ込め爆薬を爆発させることを含み、該封じ込め爆薬は、該封じ込め爆薬の爆発が該本体爆薬の起爆を引起すように、該本体爆薬に関係付けて設けられている、
方法。
図1a
図1b
図2
図3
図4