(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面を参照しつつ本発明について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0020】
図1に本発明の一実施形態に係る前照灯制御システム11が搭載された車両10の全体構成を模式的に示す。前照灯制御システム11は、前照灯装置12、統合制御部14、車輪速センサ16、操舵角センサ17、カメラ18、およびナビゲーションシステム19を備えている。
【0021】
統合制御部14は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM等を備え、車両10における様々な制御を実行する。統合制御部14は、本発明における制御手段の少なくとも一部として機能する。
【0022】
車輪速センサ16は、車両10に組み付けられる左右の前輪および後輪の4つの車輪の各々に対応して設けられている。車輪速センサ16の各々は統合制御部14と通信可能に接続されており、車輪の回転速度に応じた信号を統合制御部14に出力する。統合制御部14は、車輪速センサ16から入力された信号を利用して車両10の速度を算出する。
【0023】
操舵角センサ17は、ステアリングホイールに設けられて統合制御部14と通信可能に接続されている。操舵角センサ17は、運転手によるステアリングホイールの操舵回転角に対応した操舵角パルス信号を統合制御部14に出力する。統合制御部14は、操舵角センサ17から入力された信号を利用して車両10の進行方向を算出する。
【0024】
カメラ18は、例えばCCD(Charged Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の撮像素子を備え、車両前方を撮影して画
像データを生成する。カメラ18は統合制御部14と通信可能に接続されており、生成された画像データは統合制御部14に出力される。
【0025】
ナビゲーションシステム19は統合制御部14と通信可能に接続されており、車両10が走行している場所を示す情報等を統合制御部14に出力する。
【0026】
前照灯装置12は、前照灯制御部20、右前照灯ユニット22R、および左前照灯ユニット22Lを備えている。以下、右前照灯ユニット22Rと左前照灯ユニット22Lを、必要に応じて前照灯ユニット22と総称する。前照灯制御部20は、CPU、ROM、およびRAM等を有し、前照灯ユニット22による光の照射を制御する。前照灯制御部20は、本発明における制御手段の少なくとも一部として機能する。
【0027】
上記の右前照灯ユニット22Rを水平面で切断して上方から見た断面を
図2に示す。右前照灯ユニット22Rは、透光カバー30、ランプボディ32、エクステンション34、第1灯具ユニット36、および第2右灯具ユニット38Rを備えている。
【0028】
透光カバー30は透光性を有する樹脂等によって形成されている。透光カバー30は、ランプボディ32に装着されて灯室を区画形成している。第1灯具ユニット36および第2右灯具ユニット38Rは灯室内に配置されている。
【0029】
エクステンション34は、第1灯具ユニット36および第2右灯具ユニット38Rからの照射光を通過させるための開口部を有し、ランプボディ32に固定されている。第1灯具ユニット36は第2右灯具ユニット38Rよりも車両外側に配置されている。
【0030】
第1灯具ユニット36は、いわゆるプロジェクト型の灯具ユニットであり、後述するロービーム用配光パターンを形成する。第1灯具ユニット36は、光源42としてハロゲンランプ等のフィラメントを有する白熱灯や、メタルハライドランプ等のHID(High Int
ensity Discharge)ランプを用いている。第1灯具ユニット36の構成は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0031】
上記の第2右灯具ユニット38Rを水平面で切断して上方から見た断面を
図3の(a)に示す。第2右灯具ユニット38Rは、ホルダ46、投影レンズ48、および右発光素子ユニット49Rを備えている。
【0032】
投影レンズ48は、筒状に形成されたホルダ46の一方の開口部に装着されている。投影レンズ48は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであり、その後側焦点面上に形成される光源像を反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。
【0033】
右発光素子ユニット49Rは、基板50、第1右発光素子52R1〜第5右発光素子52R5、およびヒートシンク54を備えている。
【0034】
図4の(a)は右発光素子ユニット49Rの構成を示している。第1右発光素子52R1〜第5右発光素子52R5の各々は、同一の高さと同一の幅を有する直方体状に形成されている。図示は省略しているが、第1右発光素子52R1〜第5右発光素子52R5の各々は、光源および薄膜を有している。光源は1mm角程度の発光面を有する白色LED(発光ダイオード)であり、薄膜はこの発光面を覆うように設けられている。
【0035】
第1右発光素子52R1〜第5右発光素子52R5は、車両左側から車両右側に向かって第1右発光素子52R1〜第5右発光素子52R5の順に、基板50の前方側表面に配列されてLEDアレイを形成している。投影レンズ48の後方焦点Fは、第3右発光素子52R3の表面中心に位置している。
【0036】
ヒートシンク54は、アルミニウム等の金属により多数の放熱フィンを有する形状に形成されており、基板50の後方側表面に装着されている。
【0037】
図3の(a)に示すように、第1右発光素子52R1〜第5右発光素子52R5がホルダ46の内部に配置されるように、基板50がホルダ46の他方の開口部に装着されている。第1右発光素子52R1〜第5右発光素子52R5の各々は、発光することによりそれぞれの像が灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影される。第1右発光素子52R1〜第5右発光素子52R5は、本発明における第1の光源群として機能する。
【0038】
左前照灯ユニット22Lは右前照灯ユニット22Rと左右対称に構成されており、詳細な説明は省略する。なお
図3の(b)に示すように、左前照灯ユニット22Lが備える第2左灯具ユニット38Lは、第2右灯具ユニット38Rと同様の構成を有している。また
図4の(b)に示すように、第2左灯具ユニット38Lが備える左発光素子ユニット49Lは、右発光素子ユニット49Rと同様の構成を有している。
【0039】
したがって第1左発光素子52L1〜第5左発光素子52L5は、車両左側から車両右側に向かって第1左発光素子52L1〜第5左発光素子52L5の順に、基板50の前方側表面に配列されてLEDアレイを形成している(第2右灯具ユニット38Rと左右対称ではない)。第1左発光素子52L1〜第5左発光素子52L5は、本発明における第2の光源群として機能する。
【0040】
第1右発光素子52R1〜第5右発光素子52R5および第1左発光素子52L1〜第5左発光素子52L5の各々の点消灯は、前照灯制御部20が発光素子ごとに電流の供給・遮断を行なうことで制御される。
【0041】
図5の(a)は、右前照灯ユニット22Rおよび左前照灯ユニット22Lから前方に照射される光により、例えば車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを示している。
【0042】
ロービーム用配光パターンPLは、第1灯具ユニット36によって形成される。ロービーム用配光パターンPLは左配光のロービーム用配光パターンであり、その上端縁に第1カットオフラインCL1〜第3カットオフラインCL3を有している。第1カットオフラインCL1〜第3カットオフラインCL3は、灯具正面方向の消点であるH−Vを通る鉛直線であるV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延在している。
【0043】
第1カットオフラインCL1は対向車線カットオフラインとして利用される。第3カットオフラインCL3は、第1カットオフラインCL1の左端部から左上方に向かって斜めに延在している。第2カットオフラインラインCL2は、第3カットオフラインCL3とH−H線との交点から左側においてH−H線上に延在している。すなわち第2カットオフラインCL2は自車線側カットオフラインとして利用される。
【0044】
ロービーム用配光パターンPLにおいて、第1カットオフラインCL1とV−V線との交点であるエルボ点Eをやや左寄りに囲むようにして高光度領域であるホットゾーンHZが形成されている。
【0045】
付加配光パターンPAは、第2右灯具ユニット38Rからの照射光と第2左灯具ユニット38Lからの照射光とによって形成される。すなわち、第2右灯具ユニット38Rによって形成される右付加配光パターンPARと、第2左灯具ユニット38Lによって形成される左付加配光パターンPALが合成されて形成される。
【0046】
付加配光パターンPAは水平線(H−H線)を含み、下端が第1カットオフラインCL1上に位置するよう水平方向に延在する帯状に形成される。よって第2右灯具ユニット38Rおよび第2左灯具ユニット38Lは、ハイビーム用の光源として機能するものであってもよい。
【0047】
図5の(b)に付加配光パターンPAと、右付加配光パターンPARおよび左付加配光パターンPALの関係を示す。この例では、付加配光パターンPAは各々同一の形状と面積を有する5つの部分領域PA1〜PA5に分割されている。同様にして、右付加配光パターンPARは5つの右部分領域PAR1〜PAR5に、左付加配光パターンPALは5つの左部分領域PAL1〜PAL5に分割されている。
【0048】
部分領域PA1は、右部分領域PAR1および左部分領域PAL1の合成によって形成される。部分領域PA2は、右部分領域PAR2および左部分領域PAL2の合成によって形成される。部分領域PA3〜PA5についても同様に、右部分領域PAR3および左部分領域PAL3の合成、右部分領域PAR4および左部分領域PAL4の合成、右部分領域PAR5および左部分領域PAL5の合成により形成される。
【0049】
右部分領域PAR1〜PAR5の各々は、第1右発光素子52R1〜第5右発光素子52R5の各々を光源像とした投影像として形成される。左部分領域PAL1〜PAL5の各々は、第1左発光素子52L1〜第5左発光素子52L5の各々を光源像とした投影像として形成される。
【0050】
つまり部分領域PA1〜PA5の各々は、第1の光源群である第1右発光素子52R1〜第5右発光素子52R5のうち対応する一つと、第2の光源群である第1左発光素子52L1〜第5左発光素子52L5のうち対応する一つの、計二つの光源により照射されることとなる。
【0051】
次に、上記の構成を有する前照灯制御システム11による調光制御について
図6を参照しつつ説明する。
【0052】
付加配光パターンPAが形成されている場合、すなわち第2右灯具ユニット38Rおよび第2左灯具ユニット38Lによる光の照射が行なわれている場合において、統合制御部14はカメラ18から入力された画像データを解析し、車両前方を走行する車両(対向車または前走車)があるか否かを判定する。そのような車両がある場合に統合制御部14は、画像データを解析して得られた前方車両の位置を示す位置データを前照灯制御部20に出力する。
【0053】
カメラ18から入力される画像データに加えてあるいは代えて、図示しないレーザセンサ等の前方センサにより取得される障害物データ等を利用して前方車両の存在を特定してもよい。
【0054】
前照灯制御部20は、当該位置データの示す前方車両の位置が含まれる付加配光パターンPA内の部分領域を特定し、当該部分領域に対応する発光素子を消灯させる。
図6の(a)に示す例では、前方車両は部分領域PA3に位置しているため、合成により部分領域PA3を得る右部分領域PAR3および左部分領域PAL3に対応する第3右発光素子52R3および第3左発光素子52L3が消灯される。
【0055】
結果として前方車両が位置する部分領域PA3は非照射領域とされ、前方車両の運転手のグレアを抑制することができる。部分領域PA1〜PA5を示す図の下方に示した棒グラフは、各部分領域PA1〜PA5の照度を表している。
【0056】
なお統合制御部14が前方車両を含む付加配光パターンPA内の部分領域を特定する処理までを行ない、特定結果に対応する各発光素子の点消灯を示すコマンドを前照灯制御部20に出力する構成としてもよい。この場合において前照灯制御部20は、当該コマンドに基づいて各発光素子に流れる電流の供給・遮断を制御することとなる。
【0057】
車両の走行に伴って前方車両との相対位置が変化すると、前方車両は付加配光パターンPA内を移動する。グレア抑制の効果を持続させるためには、移動する前方車両に追随して非照射領域を付加配光パターンPA内で移動させる必要がある。この動作は当初の非照射領域と照射領域を入れ替える操作と見ることができ、所定の照射領域を付加配光パターンPA内で移動させると言い換えることもできる。
【0058】
図6の(b)は、前方車両の位置が部分領域PA3から部分領域PA2へ移動した場合を示している。この場合、当初非照射領域とされていた部分領域PA3を照射領域とし、前方車両が移動した先の部分領域PA2を照射領域から非照射領域とする。ここで部分領域PA3に対応する第3右発光素子52R3および第3左発光素子52L3を同時に消灯させ、部分領域PA2に対応する第2右発光素子52R2および第2左発光素子52L2を同時に点灯させると、運転手には非照射領域が不連続に移動しているように見える。さらに非照射領域が別の部分領域に移動していく場合、運転手には非照射領域が付加配光パターンPA内を小刻みに移動しているように見え、煩わしさを感じる。
【0059】
そこで本実施形態においては、移動後の照射領域に対応する二つの光源を時間差をもって点灯させるようにしている。
図6の(b)に示す例では、非照射領域から照射領域とされる部分領域PA3に対応する右部分領域PAR3および左部分領域PAL3のうち、先ず右部分領域PAR3に対応する第3右発光素子52R3が点灯される。
【0060】
また移動後の非照射領域に対応する二つの光源を時間差をもって消灯させるようにしている。
図6の(b)に示す例では、照射領域から非照射領域とされる部分領域PA2に対応する右部分領域PAR2および左部分領域PAL2のうち、先ず右部分領域PAR2に対応する第2右発光素子52R2が消灯される。
【0061】
この結果、部分領域PA2およびPA3の照度は、左右の発光素子を点灯させた場合の半分となる。
【0062】
次いで
図6の(c)に示すように、左部分領域PAL3に対応する第3左発光素子52L3が点灯され、左部分領域PAL2に対応する第2左発光素子52L2が消灯される。この結果、部分領域PA3は完全に照射領域とされ、部分領域PA2は完全に非照射領域とされる。
【0063】
図6の(a)と(c)を比較すると、非照射領域が部分領域PA3から部分領域PA2に移動している(照射領域が部分領域PA2から部分領域PA3へ移動している)ことが判る。本実施形態においては、この移動に際して
図6の(b)に示す状態、すなわち移動に係る部分領域の照度が非照射状態と照射状態の中間値をとる状態を経由する。したがって運転手には非照射領域あるいは照射領域が配光パターンPA内を滑らかに移動しているように見え、煩わしさを解消することができる。
【0064】
なおグレア抑制という目的に鑑みると、部分領域を照射領域から非照射領域とする動作は可及的速やかに行なうことが望ましい。したがって発光素子を点灯させる際の時間差(本発明における第1の時間差)と比較して、発光素子を消灯させる際の時間差(本発明における第2の時間差)を短くすることが好ましい。すなわち
図6の例においては、第3右発光素子52R3を点灯させてから第3左発光素子52L3を点灯させるまでの時間差よりも、第2右発光素子52R2を消灯させてから第2左発光素子52L2を消灯させるまでの時間差を短くすることが好ましい。
【0065】
図7に示すように、発光素子を消灯させる際の時間差を零としてもよい。すなわち特定の部分領域を非照射領域とする場合は、当該部分領域に対応する左右の発光素子を同時に消灯させることとしてもよい。
【0066】
図7の(a)および(b)に示すように、前方車両が部分領域PA3から部分領域PA2へ移動すると、移動先の部分領域PA2に対応する第2右発光素子52R2および第2左発光素子52L2が同時に消灯される。これによって部分領域PA2においては、速やかにグレアの抑制状態が確保される。
【0067】
一方、
図7の(b)および(c)に示すように、非照射領域から照射領域とされる部分領域PA3については、
図6の例と同様にして先ず右部分領域PAR3に対応する第3右発光素子52R3が点灯され、所定の時間差をもって左部分領域PAL3に対応する第3左発光素子52L3が点灯される。
【0068】
これにより部分領域PA3については、照度が非照射状態と照射状態の中間の値をとる状態を経由して照射状態に至るため、運転手には非照射領域あるいは照射領域が配光パターンPA内を滑らかに移動しているように見え、煩わしさを解消することができる。
【0069】
また、上記のようにある特定の部分領域の照度を徐々に変化させるために、当該部分領域に対応する発光素子に流れる電流値を徐々に増減させる制御法が知られているが、本実施形態の調光制御によれば、そのような制御法と同等の効果を各発光素子を点消灯させるのみの簡易な制御で達成することができる。
【0070】
なお上記の調光制御は、運転手の操作により有効無効を切り替え可能とされている。またナビゲーションシステム19が取得する車両の位置情報に基づいて統合制御部14が要否を判断し、自動的に有効無効を切り替え可能としてもよい。
【0071】
また本実施形態の前照灯制御システム11は、車両10の操舵角変化に追従して前照灯の配光パターンを水平左右方向に移動させて操舵先を照射する電子スイブル制御動作を可能としている。
【0072】
具体的には、統合制御部14が車輪速センサ16および操舵角センサ17から入力された信号に基づき、前照灯制御部20を通じて第2右灯具ユニット38Rと第2左灯具ユニット38Lの各々について各発光素子に流れる電流の値を増減させることによって付加配光パターンPAの分布を変化させる。これにより付加配光パターンPAは水平左右方向に移動し、各灯具ユニットのランプ光軸を機械的に変位させるのと同等の効果を得ることができる。
【0073】
付加配光パターンPA内を移動する前方車両に対応する部分領域を非照射領域とする上記の調光制御においては、カメラ18や図示しない前方センサより取得されるデータに基づいて非照射領域の移動を行なっている。そのため新たなデータが取得されて前方車両の位置情報が更新されない限り、非照射領域は移動しない。
【0074】
このことを説明するために比較例として示す
図8の(a)においては、部分領域PA2に位置する前方車両のグレアを抑制するために、部分領域PA2が非照射領域とされている。図中の棒グラフは、各部分領域PA1〜PA5の照度を示している。この状態から車両を右旋回させると、電子スイブル制御により配光パターン全体が右方向に移動する一方で、相対位置の変化によって前方車両が部分領域PA2から部分領域PA3へ移動する場合がある。
【0075】
ここで電子スイブル制御と非照射領域移動制御が独立して行なわれると、前方車両の位置情報更新が配光パターンのスイブル動作に間に合わず、非照射領域が部分領域PA2から移動しないという事態が生じうる。すなわち本来は高い光度で照射をすべき部分領域PA2が非照射状態のまま、前方車両が位置してグレア抑制を行なうべき部分領域PA3が照射されてしまう。
【0076】
そこで本実施形態では、付加配光パターンPAの一部を非照射領域とする調光制御が行なわれている状態で電子スイブル制御が実行された場合、カメラ18や前方センサからのデータ更新を待つことなく、電子スイブルによる付加配光パターンPAに移動と連動して非照射領域を移動させるようにしている。
【0077】
例えば
図8の(b)においては、部分領域PA2に位置する前方車両のグレアを抑制するために、第2右発光素子52R2および第2左発光素子52L2を消灯して部分領域PA2が非照射領域とされている。この状態からステアリングホイールを操作して車両10を右旋回させると、統合制御部14が車輪速センサ16および操舵角センサ17からの信号に基づいて電子スイブル制御を実行し、前照灯制御部20に付加配光パターンPA全体を右方向に移動させる。
【0078】
同時に統合制御部14は、前照灯制御部20に非照射領域を左側の部分領域PA3に移動させる制御を実行させる。結果として部分領域PA2は然るべき光度で照射されると共に、相対位置変化によって部分領域PA3へ移動した前方車両のグレアを抑制することができる。
【0079】
より具体的には、非照射領域の中心と投影レンズ48の後方焦点Fを結ぶ線が投影レンズ48の光軸となす角度をαとし、電子スイブル制御による付加配光パターンPAのスイブル量をΔθとした場合、非照射領域の中心がα−Δθに位置するように移動制御がなされる。
【0080】
または上記のα、Δθに加えて車両速度や光源の配置に係るパラメータβを加味した関数f(α、β、Δθ)やデータテーブルを予め統合制御部14に格納しておき、これらの情報に基づいて非照射領域の移動量を定める構成としてもよい。
【0081】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0082】
付加配光パターンPAに含まれる部分領域の数は、上記の構成に限られるものではない。水平方向(
図5のH−H線方向)に二つ以上の任意の数を選択することができる。また垂直方向(
図5のV−V線方向)に複数列の部分領域が並ぶ構成としてもよい。
【0083】
付加配光パターンPAに含まれる部分領域の形状は、上記の構成に限られるものではない。各部分領域の面積と形状の少なくとも一方は互いに相違してもよい。
【0084】
付加配光パターンPAに含まれる部分領域の数と各部分領域PA1〜PA5を照射する光源の数の関係は、上記の構成に限られるものではない。すなわち部分領域の少なくとも一つは、三つ以上の光源により照射されるものとしてもよい。この場合三つ以上の光源を時間差をもって点消灯させることにより、照射状態と非照射状態の間で取りうる照度の中間値が増えるので、より細やかな照度変化を得ることができる。運転手には照射領域または非照射領域がより滑らかに移動しているように見える。
【0085】
ある特定の部分領域を照射する少なくとも二つの光源が右前照灯ユニット22Rと左前照灯ユニット22Lの各々に設けられている必要はない。所望の付加配光パターンPAが得られ、所定の部分領域を照射しうるのであれば、少なくとも二つの光源の車両10における位置は任意である。
【0086】
ロービーム用配光パターンPLを得るための第1灯具ユニット36を、第2右灯具ユニット38Rおよび第2左灯具ユニット38LのようにLEDアレイで構成してもよい。この場合、ロービーム用配光パターンPLを複数の部分領域に分割し、その少なくとも一つを選択的に照射領域または非照射領域とすることができる。
【0087】
ある特定の部分領域を照射領域または非照射領域とする場合に、第2右灯具ユニット38Rが備える発光素子を先に点灯または消灯させ、所定の時間差をもって第2左灯具ユニット38Lが備える発光素子を点灯または消灯させる必要はない。点灯または消灯の順序は左右逆でもよく、車両の走行状態に応じて順序を切り替える構成としてもよい。
【0088】
前照灯制御部20は、右前照灯ユニット22Rと左前照灯ユニット22Lの各々について設けられる構成としてもよい。例えば右前照灯ユニット22Rに割り当てられた前照灯制御部に発光素子を点灯するコマンドが入力された場合は直ちに点灯制御を行ない、左前照灯ユニット22Lに割り当てられた前照灯制御部に同じコマンドが入力された場合は所定の時間差をもって点灯制御を行なうように構成しておけば、統合制御部14から入力されるデータ量を最小限に抑えることができる。
【0089】
付加配光パターンPA内の部分領域を選択的に非照射状態とする上記の調光制御や電子スイブル制御が実行されるのは、当該部分領域に前方車両が存在する場合に限られない。歩行者をカメラ18や前方センサで検出して同様の調光制御や電子スイブル制御を実行することにより、歩行者のグレアを抑制することができる。
【0090】
第2右灯具ユニット38Rおよび第2左灯具ユニット38Lの消灯時において、カメラ18が付加配光パターンPAの形成可能範囲内に歩行者等を認めた場合に、一部の発光素子のみを点灯させて当該歩行者等をスポット照射する場合においても、上記の調光制御や電子スイブル制御を適用することができる。