(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
亜鉛−アルミニウム系合金めっき鋼板を製造するためのめっき浴槽の表面とエアーナイフ設備との間に設けられて、前記めっき浴槽から上がってくるめっき鋼板の周りに窒素帳幕を形成するための装置であって、
前記めっき浴槽(3)の表面から一定距離離れて前記めっき鋼板(1)の周りに沿って前記めっき浴槽(3)の表面に向かって窒素ガスを排出する下段窒素排出バー(41,42)と、
前記下段窒素排出バー(41,42)の側面から前記めっき鋼板(1)に向かって上方に傾いて延びている側面カバー(43)と、
前記側面カバー(43)の上端に設けられて、下方に窒素ガスを排出する上段窒素排出バー(44,45)と、
を備えてなる窒素帳幕形成装置。
亜鉛−アルミニウム系合金めっき鋼板を、亜鉛35〜55重量%、シリコン0.5〜3重量%、クロム0.005〜1.0重量%、マグネシウム0.01〜3.0重量%、チタン0.001〜0.1重量%を含有するとともに、残りとしてアルミニウム及び避けられない不純物を含有するめっき浴でめっき処理する、請求項1記載の窒素帳幕形成装置。
【背景技術】
【0002】
素地鋼板の耐食性を確保するための方法として亜鉛めっきを挙げることができる。この亜鉛めっき鋼板は、経済性があり、豊富な資源の量から広く使われてきており、現在も最も多く用いられているめっき鋼板の一つである。さらに、この亜鉛めっき鋼板の耐食性を向上させるために多くの研究が行われてきており、中でも、55%Al−Zn(ガルバリウム(Galvalume)ともいう。)アルミニウムめっき鋼板が1960年代後半に提案されて以来、現在、優れた耐食性と美麗な外観を呈している。
【0003】
このようなアルミニウムめっき鋼板は、亜鉛めっき鋼板に比べて耐食性及び耐熱性に優れており、自動車マフラー、家電製品、耐熱素材などに多く適用されている。
【0004】
その例としては、日本国特開昭57−47861号に開示された、鉄の中にTiを含有するアルミニウムめっき鋼板、特開昭63−184043号に開示された、鉄の中にC、Si、Cu、Ni及び少量のCrを含有するアルミニウムめっき鋼板、特開昭60−243258号に開示された、マンガン0.01〜4.0%、チタン0.001〜1.5%、シリコン3.0〜15.0%を含有するアルミニウムめっき鋼板などがある。
【0005】
また、アルミニウムと鉄との反応によるFe−Al合金層の成長や鉄の中へのアルミニウム金属の急速な拡散などを抑制するために、アルミニウムめっき浴に10%以下のSiを添加している。この方法によって製造されためっき鋼板は、加工性及び耐熱性に比較的優れていることから、自動車マフラー、温水器、暖房機、電気釜の内皮などの耐熱部品に多く使用されている。
【0006】
しかしながら、合金層の形成を抑えるために添加されるシリコンが、場合によってはむしろめっき鋼板の表面外観を損ね、鮮明でない外観とする場合もあるが、このようなシリコン添加による表面外観の損傷は、少量のマグネシウムの添加により、ある程度解決できることが知られている(U.S.Patent No.3,055,771 to Sprowl)。
【0007】
また、最近では、特に、自動車排気ガス系に使用される部品の長寿命化に伴って、アルミニウムのめっきされる鋼板にCrを含有する鋼板が開発されている。その例としては、日本国特開昭63−18043号のようにCrを1.8〜3.0%含有するめっき鋼板や、特開昭63−47456号のようにCrを2〜3%含有する鋼板などがある。
【0008】
しかしながら、上記のようなZn−Al合金めっき鋼板は、加工切断部では耐食性が充分でない欠点がある。これは、露出された切断面部が、亜鉛−アルミニウム合金層により、鉄の腐食を防ぐ犠牲防食性亜鉛が低減し、耐食性が低下することに起因する。また、Zn−Al合金めっき鋼板は異種の合金相を持たない形態でめっき層が形成されるため、屈曲加工や引き抜き加工後に使用する際、境界面が弱くなり、加工後に耐食性が劣化する欠点もある。
【0009】
このような欠点を改善するために、韓国登録特許第10−0586437号の耐食性に優れたZn−Al−Mg−Si合金めっき鋼板の鋼材では、Al 45〜70重量%、Mg 3〜10重量%、Si 3〜10重量%、 及び残部Zn及び不回避な不純物からなるめっき浴でめっき処理する方法が提案され、また、韓国登録特許10−0928804号では耐食性及び加工性に優れたZn−Al−Mg合金めっき鋼板などが提案された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、めっき浴槽の表面から上がってくるめっき鋼板の周りを窒素ガスで包むことによって、めっき鋼板の表面に酸化被膜が形成されることをより抑える窒素帳幕形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、亜鉛−アルミニウム系合金めっき鋼板を製造するためのめっき浴槽の表面とエアーナイフ設備との間に設けられて、前記めっき浴槽から上がってくるめっき鋼板の周りに窒素帳幕を形成するための装置であって、前記めっき浴槽(3)の表面から一定距離離れて前記めっき鋼板(1)の周りに沿って前記めっき浴槽(3)の表面に向かって窒素ガスを排出する下段窒素排出バー(41,42)と、前記下段窒素排出バー(41,42)の側面から前記めっき鋼板(1)に向かって上方に傾いて延びている側面カバー(43)と、前記側面カバー(43)の上端に設けられて、下方に窒素ガスを排出する上段窒素排出バー(44,45)と、を備えてなる窒素帳幕形成装置である。
【0013】
亜鉛−アルミニウム系合金めっき鋼板を、亜鉛35〜55重量%、シリコン0.5〜3重量%、クロム0.005〜1.0重量%、マグネシウム0.01〜3.0重量%、チタン0.001〜0.1重量%を含有するとともに、残りとしてアルミニウム及び避けられない不純物を含有するめっき浴でめっき処理することが好ましい。
【0014】
前記めっき浴は、前記マグネシウム全体重量を基準に1〜10重量%のカルシウムをさらに含有することを特徴とすることが好ましい。
【0016】
亜鉛35〜55重量%、シリコン0.5〜3.0重量%、クロム0.005〜1.0重量%、マグネシウム0.01〜3.0重量%、チタン0.001〜0.1重量%、及び残部のアルミニウム及び避けられない不純物からなるめっき浴でめっき処理することによって、加工性及び耐食性に優れた亜鉛−アルミニウム系合金めっき鋼板を製造することができる。
【0017】
また、前記めっき浴に、前記マグネシウム全体重量を基準に1〜10重量%のカルシウムをさらに含有することによって、めっき鋼板の表面にMgO酸化被膜が形成されるのを抑制する、亜鉛−アルミニウム系合金めっき鋼板の製造方法に適用される装置を提供することができる。
【0018】
本発明のめっき付着量は、少ない付着量による組織の不安定成長に起因する耐食性の低下、及び多い付着量による不経済性の面から、20〜100g/m
2(片面基準)にすることが好ましい。
【0019】
また、めっき浴の温度は550〜650℃にし、めっき後の冷却速度は15〜30℃/秒に制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、めっき浴槽から上がってくるめっき鋼板の周辺を窒素帳幕で包むことによって、めっき鋼板の表面への酸化被膜の形成を抑え、めっき層の表面品質が低下することを防止することができる。
【0021】
したがって、本発明の亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板は、建築内外装材、家電用部品及び耐熱用素材などの、耐食性が要求される分野に広く用いることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明実施形態について詳しく説明する。
【0024】
本発明実施形態の方法において、めっき浴槽は35〜55重量%の亜鉛を含む。亜鉛の方が素地鉄よりも犠牲防食性を有し、腐食を抑制する役割を果たす。亜鉛は35重量%以上確保される必要がある。35重量%以下になると、めっき浴が昇温してトップドロス(Top Dross)の増加及び操業上の支障を招き、作業性が悪くなる。一方、55重量%以上になると、めっき鋼板での比重の上昇により原価が上昇し、経済性が低下する。
【0025】
本発明実施形態のめっき浴槽は0.5〜3.0重量%のシリコンを含有する。シリコンは、合金層の成長を抑制すると共に、めっき浴の流動性を向上させて、光沢を付与する効果を奏するもので、添加量は0.5重量%以上にしなければならない。めっき層におけるシリコンの重要な機能は、素地鋼板及びアルミニウムの合金層の形成を制御することであるが、シリコン添加量0.5重量%以下ではこのような機能が制限され、加工性が著しく低下することになる。一方、3重量%以上では、めっき層の耐食性向上に寄与する因子として働くMg
2Si相が表面上に過剰に生成及び成長して、表面粗化、表面の早期変色、及び後処理被服特性の阻害といった不具合を招くことになる。そのため、シリコンの添加量は0.5〜3重量%にすることが好ましい。
【0026】
めっき浴に添加されるクロムは、めっき層の表面に緻密な不動態酸化被膜を形成してアルミニウムめっき鋼板の耐食性を向上させるだけでなく、めっき浴中にクロム元素が均一に分布するようになることから、めっき層の結晶粒を微細化させる機能を果たす。
【0027】
なお、めっき層内のクロム成分は、めっき層内に集積された一定形態のAl−Zn−Si−Cr混在相の帯(band)を形成すること(
図2)、及びアルミニウムと反応してAlCr
2相を形成することにより、加工性、及び加工後の破たん面の耐食性を向上させる役割を果たす。このようなクロムの役割が上記のシリコン含量を3重量%以下と管理し、めっき層内にシリコン成分が針状に析出しすぎることを制御する要因として働く。
【0028】
このような効果を有するクロムの含量は0.1以上にしなければならないことが知られている(U.S.Patent No.3,055,771 to Sprowl)。しかし、本発明実施形態ではクロムの含量を0.005〜1.0重量%とする。クロムの含量が0.005重量%以下であれば、めっき浴中に均一に分布する効果が少なく、1.0重量%以上では、クロム含量の増加に従ってめっき浴の昇温が必要となり、めっき浴の昇温によりドロス(dross)が増加し、このドロスがめっき鋼板の表面に付着して外観を損ねるということがある。
【0029】
従ってクロムの添加量は、好ましくは0.005〜1.0重量%である。また、本発明実施形態のめっき浴槽はマグネシウムを0.01〜3.0重量%含有する。
【0030】
上記クロムと共に添加されるマグネシウムは、めっき層に接している空気中の酸素と結合して不動態被膜を形成することで、合金層の内部に酸素が拡散することを防止し、追加の腐食現象を阻止して耐食性を改善させる。めっき層中のマグネシウムとシリコン成分との反応で形成されたMg
2Si相(
図1及び
図2参照)、及びマグネシウムと亜鉛との反応で形成されたMgZn
2相の存在は、腐食が進行する過程において、亜鉛の犠牲防食性と共に、局部電池の形成により腐食速度を低減する役割を果たす。また、アルミニウムと反応して酸素の拡散を遮断する効果があり、加工後のせん断面耐食性を著しく改善させる。
【0031】
もし、マグネシウムの添加量が0.01重量%以下であれば、分散度、及び酸化特性による耐食性改善において効果が少なく、3.0重量%を超えると、めっき浴が飽和すると同時に溶融点が上昇して、作業性が低下し、また、持続した上部ドロスの発生により表面品質が低下する。その結果、製造コストの上昇及び生産工程上の問題点が増加する。
【0032】
そのため、マグネシウムの添加量は0.01〜3.0重量%が好ましい。
【0033】
また、本発明実施形態のめっき浴槽はカルシウムをマグネシウム重量対比1〜10重量%含む。上記のマグネシウム、クロムと共に添加されるカルシウムは、めっき鎔湯の界面に発生するマグネシウム酸化物の生成を抑制することによって、マグネシウム微細酸化被膜がめっき鋼板の表面に付着して外観品質を阻害する現象を防ぐ。
【0034】
Mg鎔湯にCa、Be、Alなどを添加すると、高温でも鎔湯の酸化及び発火がだいぶ抑えられることが知られている。カルシウムを添加して鎔湯の酸化力を抑制する方法のメカニズムは次の通りである。カルシウム添加によりMg鎔湯の発火温度は200℃以上と増加するが、このカルシウムの添加によりMg合金の発火温度が上昇することは、一般に、表面に形成される酸化層が、多孔質の酸化層から緻密な酸化層へと変化して酸素の取り込みを效果的に遮断可能になるメカニズムであるからである。
【0035】
万一、カルシウムの添加量がマグネシウムの重量%対比1重量%以下であると、分散度の低下、及びMgO酸化被膜の抑制において効果が少なく、マグネシウム重量%対比10重量%を超えると、アルミニウム、カルシウムの金属間化合物生成により、めっき層加工性の低下を誘発することがある。そのため、カルシウムの添加量はマグネシウム重量比の1〜10重量%が好ましい。
【0036】
本発明実施形態のめっき浴槽のエアナイフ(Air Knife)の下端部に、窒素パージ(Purge)、及び酸化被膜のストリップ(Strip)への吸着の遮断が可能な窒素噴射ノズルが取り付けられたダム(Dam)適用を含む。ストリップがめっき浴に浸漬後、めっき浴の界面から上昇すると、エアナイフの下端部を窒素雰囲気でパージ(Purge)して酸化被膜の生成を抑制し、且つ、めっき鎔湯の表面の外巻部で空気と接触して生成された微細酸化被膜が、ダムの内部に引き込まれてストリップに吸着することを防止するために、窒素ダムの下端部に窒素カーテンノズルを用いて窒素ワイピング(Wiping)を行う。
【0037】
さらに、本発明実施形態のめっき浴槽には、めっき層の外観であり、且つめっき層における花柄の形状であるスパンコール(Spangles)の微細化のために、チタンを0.001〜0.1重量%を含有する。チタンの添加量が0.001重量%以下であれば、鋼板上における分散度が低下し、0.1重量%以上であれば、めっき浴での溶解が容易でないため、その効果性の向上に寄与しない。
【0038】
本発明実施形態は、従来のガルバリウムめっき鋼板について、アルミニウム、亜鉛及びシリコンを含有するめっき浴に、クロム、マグネシウム、カルシウム、及びチタンを同時に適度の組成で添加して核生成の機会を多く作ることによって、スパンコール(spangles)を微細化するということに着目する。
【0039】
すなわち、添加された成分は、鎔湯中で鋼板がめっき処理された後にめっき層内に分散され、Mg
2Si相、MgZn
2相、AlCr
2相などの数多くの核を生成することによって、めっき材が凝固する過程中に結晶粒界間相互干渉する作用をして、結晶粒の成長を制御する役割を果たす。
【0040】
これにより、美麗な表面外観が確保されると共に、粒界間腐食を抑制して耐食性が強化する効果を奏する。また、アルミニウムと鉄との合金層成長を抑えることによって、加工性に優れためっき被膜層を形成することができる。
【0041】
一方、めっき浴の鎔湯内に入浴する時の素地鋼板の温度は570〜650℃、鎔湯温度は550〜650℃に設定することが好ましい。
【0042】
素地鋼板の入浴温度が550℃以下になると、めっき浴の流動性が低下し、めっき被膜の外観不良及び塗膜密着性の低下につながることがある反面、650℃以上になると、素地鋼板の熱的拡散が速くなって、合金層の異常成長を招くことによって、加工性が低下すると共に、鎔湯内にFe酸化物層が過剰生成される問題点がある。
【0043】
めっき付着量は、片面基準で20〜100g/m
2にするのが好ましい。もし、めっき付着量を20g/m
2以下にすると、付着量を制御するエアーナイフ設備の空気圧力が増加しすぎて、めっき付着量のばらつきが発生するとともに、鎔湯内の表面酸化物の急増により被膜の外観損傷及び酸化ドロスの付着が発生する。
【0044】
また、100g/m
2以上にすると、合金層が過剰形成され、加工性が著しく低下する問題点がある。
【0045】
一方、本発明実施形態は、めっき浴槽の表面から上がってくるめっき鋼板の周りを窒素ガスで包むことによって、該めっき鋼板の表面に酸化被膜が形成されるのをより抑える窒素帳幕形成装置を提供する。
【0046】
図4乃至
図6に、本発明実施形態の窒素帳幕形成装置を模式的に示す。
【0047】
本発明実施形態の窒素帳幕形成装置は、めっき浴槽3の表面から一定距離離れて設けられ、リフティング手段5により、めっき浴槽3の表面からエアーナイフ2との間で上下動可能に構成される。
【0048】
本発明実施形態の窒素帳幕形成装置は、めっき浴槽3の表面から上がってくるめっき鋼板1の周りに沿って長方形に形成された下段窒素排出バー41,42を備える。該下段窒素排出バー41,42は、側面の窒素供給パイプ46から窒素を取り込んで、当該めっき浴槽3の表面に向けて窒素ガスを排出する。図示してはいないが、当該下段窒素排出バー41,42の下面には窒素ガスを吹き出す孔(ノズル)が等間隔で複数個形成されている。
【0049】
当該下段窒素排出バー41,42は、長方形のパイプで一体に形成されたものでもよいが、
図4のように、第1バー41と第2バー42とが別個に形成され、相互に幅方向に(図面では上下方向に)離れてもよい。
【0050】
また、本発明実施形態の窒素帳幕形成装置は、当該下段窒素排出バー41,42の側面から当該めっき鋼板1に向かって上方に傾くように延びている側面カバー43と、当該側面カバー43の上端に設けられて、下方に窒素ガス10を排出する上段窒素排出バー44,45と、を備える。
【0051】
上段窒素排出バー44,45は、めっき浴槽の表面に向かって窒素排出孔(図示せず)が形成されているパイプ形態のもので、当該側面カバー43の上端において互いに向かい合って形成されて、内側に窒素ガスを吹き出す。当該上段窒素排出バー44,45は、窒素供給パイプ46から窒素が供給される。
【0052】
一方、当該側面カバー43は、当該下段窒素排出バー41,42から当該上段窒素排出バー44,45まで当該めっき鋼板1に向かって上方に傾くように形成されているため、排出された窒素ガス10が散在することなく、当該めっき鋼板1の周辺に捕まって留まる。
【0053】
以上説明した本発明実施形態の窒素帳幕形成装置により、めっき浴槽3の表面から上がってくる比較的高温のめっき鋼板1の周辺に窒素帳幕47を形成することによって、当該めっき浴槽3の表面に酸化被膜が形成されることを抑えることができる。
【0054】
以下、本発明実施形態を、実施例と比較例とを対比して説明する。実施例を挙げて本発明をより具体化するが、これらの実施例に本発明が限定されるわけではない。
【0055】
鋼鈑の厚さ0.8mm、幅120mm、長さ250mmサイズの脱脂した冷延鋼鈑を、溶融めっきシミュレータを用いてめっきをした。表1のようにめっき浴の組成を変化させて亜鉛−アルミニウム系合金めっき鋼板を作製した。また、
図4乃至
図6に示した窒素帳幕形成装置を用いて窒素帳幕を形成した。
【0056】
めっき付着量はエアーナイフで調節した。作製した亜鉛−アルミニウム系合金めっき鋼板の片面めっき付着量を基準にした評価結果を、表1に示す。
【0057】
評価項目としては耐食性及び加工性とした。耐食性は、KSD 9504試験法によって、35℃ NaCl塩水噴霧試験雰囲気において初期の赤錆発生(5%)時間で比較、評価した。加工性は、KSD 0006試験法によって180゜ OTベンディング(bending)試験をしたのち発生したクラック(crack)の幅(破たん面の幅)を、30〜50倍率の立体顕微鏡(stereo microscope)で観察し、破たん面の幅サイズを測定することによって比較、評価した。合金相の観察にはX−線回折(XRD)装備を用いた。
【0058】
具体的な試験評価方法による評価結果は、下記の通りである。
【0059】
1.加工性:発生したクラックの幅を観察し、評価した。
◎:破たん幅10〜20μm
△:破たん幅20〜30μm
X:破たん幅40〜50μm
【0060】
2.ドロス発生度合:めっき組成別溶解めっき試験片の作製後、めっき浴の上部に発生したドロス量を測定、評価した。
◎:めっき浴対比ドロス発生量5%以下
△:めっき浴対比ドロス発生量10〜20%
X:めっき浴対比ドロス発生量20%以上
【0061】
3.表面外観:めっき層の表面上におけるスパンコールの鮮明度及び形成度合を肉眼で観察、評価した。
◎:スパンコール形成が鮮やかで且つ光沢が高い
△:スパンコール形成が鮮やかでない
X:スパンコール形成が微弱で且つ外観が良好でない
【0062】
4.せん断面耐食性:塩水噴霧試験1,000時間後の赤錆発生度合を評価した。
◎:赤錆発生割合5%以下
△:赤錆発生割合10〜20%
X:赤錆発生割合30%以上
【0063】
5.平板耐食性:塩水噴霧試験2,500時間後の赤錆発生度合を評価した。
◎:赤錆発生割合5%以下
△:赤錆発生割合20〜30%
X:赤錆発生割合30%以上
【0065】
表1に示すように、本発明に係る実施例の方が、加工性及び耐食性の面で優れていることがわかる。すなわち、実施例では、180゜ OTベンディング(bending)試験を行った後にも、発生したクラック(破たん面)が10〜20μm程度と、比較例に比べて優れていることがわかる。耐食性においても、実施例では、平板の赤錆は、片面基準のめっき付着量50g/m
2において3,000時間以上で現れ、せん断部の赤錆は1000時間以上で現れ、既存の組成に比べてはるかに優れていることがわかる。
【0066】
また、肉眼観察の結果、実施例における表面外観が、比較例のそれよりも良好であった。これは、スパンコールサイズの微細化による結果である。
【0067】
以上の通り、本発明の好ましい実施形態について説明したが、これは例示であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、当業者は様々な修正、追加、置換等が可能である。