(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092988
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】運搬台車
(51)【国際特許分類】
B62B 5/00 20060101AFI20170227BHJP
B62B 5/06 20060101ALI20170227BHJP
B62B 5/04 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
B62B5/00 L
B62B5/06 D
B62B5/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-231343(P2015-231343)
(22)【出願日】2015年11月27日
(62)【分割の表示】特願2014-224004(P2014-224004)の分割
【原出願日】2010年9月17日
(65)【公開番号】特開2016-41582(P2016-41582A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2015年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】597144484
【氏名又は名称】ジー・オー・ピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】千田 豊治
【審査官】
林 政道
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−024822(JP,A)
【文献】
特開2003−136905(JP,A)
【文献】
特開2006−347537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00− 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周にフレームを有する矩形状の台車本体と、前記台車本体の少なくとも四隅のコーナー部の裏側に取付けられた旋回キャスターと、を有する運搬台車であって、前記四隅のコーナー部に手押し棒が上側から挿入される挿入孔をそれぞれ設け、前記旋回キャスターのうちブレーキ付きの旋回キャスターにブレーキペダルを設け、前記ブレーキ付きの旋回キャスターが裏側に取付けられたコーナー部のみに、前記挿入孔の外周部分から前記フレームの側面を互いに直交する方向に延びる着色部を設けたことを特徴とする運搬台車。
【請求項2】
前記運搬台車を平面視で見たとき、前記着色部の外周は、前記フレームの側面よりも外側に位置する請求項1に記載の運搬台車。
【請求項3】
前記運搬台車の進行方向が前記運搬台車の長手方向の場合に、前記運搬台車を平面視で見たとき、前記フレームの内側に形成されている隙間を通して前記ブレーキペダルの一部が視認される請求項1または請求項2に記載の運搬台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷物を載置して運搬する運搬台車として、出願人は下記特許文献に示すような、平坦度のない場所でも安定状態で運搬移動できるようにした運搬台車を提案した。
【特許文献1】特開2009−220653号公報
【0003】
これは、
図10〜
図12に示すように、鉄製またはアルミニウム合金製の角パイプによるフレーム6と、このフレーム6の上部に接合される鉄製またはアルミニウム合金製の載置板であるベース7とで構成される台車本体の下側に、台座2bに車輪2aを回転自在に取付けたキャスター2を設けたものである。
【0004】
前記フレーム6は角パイプを縦横方向に付き合わせ溶接にて格子状に形成し、この格子状のフレーム6の下面で、キャスター2の取付けが予想される箇所の区画8に、キャスター2の取付板9をブラインドリベット10にて取付ける。取付板9の取付箇所は左右中央の区画8の合計6箇所を除いた全部の合計が6箇所である。
【0005】
このようにフレーム6上にベース7を取付けた台車本体の裏面の周辺部の少なくとも四隅にキャスター2を取付けた運搬台車において、前記少なくとも四隅に取付けた旋回キャスター2をつなぐ輪郭線の内側で、使用時の進行方向と同じ方向の縦列に2輪以上のキャスター2を設けた。このキャスター2は旋回キャスターまたは固定キャスターである。
【0006】
次に溝αを乗り越える方法を
図13について説明する。図中3は手押し棒で、運搬台車を押して
図13(b)のように溝αにキャスター2の左右の前輪が嵌っても、この状態でその後方の中央縦列の2輪のキャスター2と左右後の2輪のキ.ャスター2との、合計4輪で台車本体を安定した状態に支持でき、台車本体が傾くことはない。
【0007】
さらに前進して
図8(c)の位置に達し、中央縦列の2輪のキャスター2のうちの前の1輪が溝αに嵌ったときは、前後左右の4輪のキャスター2と中央縦列の残りの後方の1輪のキャスター2の合計5輪で台車本体を安定状態に支持できる。
【0008】
最後に、左右後輪の2輪のキャスター2が溝αに嵌っても、この状態でその前方の中央縦列の2輪のキャスター2と左右前輪の2輪のキャスター2との、合計4輪で台車本体を安定した状態に支持でき、いずれの場合も台車本体が傾くことはなく、安全に溝αを順次乗り越えていくことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、キャスター2には、ブレーキ付きキャスターとブレーキ付きでないキャスターとがあり、通常、ブレーキ付きキャスターは台車本体の四隅のコーナー部のうち、前後のいずれかの左右の双方、もしくは一方に設けられる。
【0010】
前記6輪のキャスター2のうち、台車本体の四隅の角部に配置されるものは、ここに手押し棒3を挿着するためのコーナー部材5が取付けられることから、手押し棒3、コーナー部材5を避けて回転できるように「旋回偏心半径+キャスター半径」の分だけ垂下部分から台車本体の内側に入った箇所に取付けられる。
【0011】
一方、ブレーキ付きキャスターは、
図14に示すように取付板9に結合するキャスター2のヨーク2cから足踏式のブレーキペダル33を出したものであるが、このブレーキペダル33の存在は台車本体の下側となり、台車本体に隠れてしまった、その存在の確認が困難であった。
【0012】
それゆえ、ブレーキのかけ忘れ等が生じ、事故にもつながるおそれもある。
【0013】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、ブレーキ付きキャスターの存在位置を容易に認識でき、坂道等でも、確実かつ迅速にブレーキをかけることができ、事故を未然に防ぐことができる運搬台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、外周にフレームを有する矩形状の台車本体と、前記台車本体の少なくとも四隅のコーナー部の裏側に取付けられた旋回キャスターと、を有する運搬台車であって、前記四隅のコーナー部に手押し棒が上側から挿入される挿入孔をそれぞれ設け、前記旋回キャスターのうちブレーキ付きの旋回キャスターにブレーキペダルを設け、前記ブレーキ付きの旋回キャスターが裏側に取付けられたコーナー部
のみに、前記挿入孔の外周部分から前記フレームの側面を互いに直交する方向に延びる着色部を設けたことを要旨とするものである。
【0015】
請求項1記載の本発明によればコーナー部のうち、ブレーキ付きキャスターを裏側に設けたるコーナー部を着色したことにより、この着色を目視すれば、どこのコーナー部の下のキャスターが、ブレーキ付きものであるかを即時に知ることができる。
【0016】
また、ブレーキペダルは、運搬台車の進行方向に対して直交する方向である側面視で見て、前記着色の下側にブレーキペダルが視認されるので、コーナー部の着色に対応して、ブレーキの存在を迅速に把握できる。
【0017】
請求項2記載の本発明は、前記運搬台車を平面視で見たとき、前記着色部の外周は、前記フレームの側面よりも外側に位置することを要旨とするものである。
【0018】
請求項2記載の本発明によれば、着色部の外周は、フレームの側面よりも外側に位置するので、目立たせることができる。
【0019】
請求項
3記載の本発明は、前記運搬台車の進行方向が前記運搬台車の長手方向の場合に、前記運搬台車を平面視で見たとき、前記フレームの内側に形成されている隙間を通して前記ブレーキペダルの一部が視認されることを要旨とするものである。
【0020】
請求項
3記載の本発明によれば、上からもブレーキペダルが視認されるので、ブレーキの存在を迅速に把握できる。
【発明の効果】
【0021】
以上述べたように本発明の運搬台車は、台車本体の裏面の周辺部の少なくとも四隅にキャスターを取付けた運搬台車において、ブレーキ付きキャスターの存在位置を容易に認識でき、坂道等でも、確実かつ迅速にブレーキをかけることができ、事故を未然に防ぐことができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の運搬台車の実施形態を示すブレーキ解除時の側面図、
図2は同上平面図、
図3はブレーキ時の側面図、
図4は同上平面図で、鉄製またはアルミニウム合金製の角パイプによるフレーム6と、このフレーム6の上部に接合される鉄製またはアルミニウム合金製の載置板であるベース7とで構成される台車本体の下側に、台座2bに車輪2aを回転自在に取付けたキャスター2を設けたものである。
【0023】
図2、
図3に示すように、鉄製またはアルミニウム合金製の角パイプによるフレーム6と、このフレーム6の上部に接合される鉄製またはアルミニウム合金製の載置板であるベース7とで構成される台車本体の下側に、台座2bに車輪2aを回転自在に取付けたキャスター2を設けた。
【0024】
前記フレーム6は角パイプを縦横方向に付き合わせ溶接にて格子状に形成し、この格子状のフレーム6の下面で、キャスター2の取付けが予想される箇所の区画8に、キャスター2の取付板9をブラインドリベット10(
図10参照)にて取付ける。取付板9の取付箇所は左右中央の区画8の合計6箇所を除いた全部の合計が6箇所である。
【0025】
キャスター2は、前記台車本体の裏面の周辺部の少なくとも四隅に取付けたものの他に、少なくとも四隅に取付けた旋回キャスター2をつなぐ輪郭線の内側で、使用時の進行方向と同じ方向の縦列に2輪以上のキャスター2を設けた。
【0026】
かかる台車本体の四隅の角部では、フレーム6を構成する縦横の角パイプをアルミニウムなどによる押出し形材で形成、全体形状が平面L字形であるコーナー部材5で接合する。
【0027】
コーナー部材5は、その詳細を
図8、
図9に示すと、手押し棒3が挿着される筒状で外周面が円弧状の挿入孔12をL字形の角部に形成し、この挿入孔12の箇所から互いに直交する方向にフレーム6の取付部として対向する側壁部材13a,13bをそれぞれ垂直に突設した。
【0028】
前記側壁部材13a,13bのうち、外側に位置する側壁部材13bは、挿入孔12の外周部に連成するものであり、挿入孔12との接続部分では挿入孔12と同じ高さを備え、端部ではフレーム6とほぼ同じ高さを備えて、底辺が傾斜部14に形成される。
【0029】
挿入孔12の底部には手押し棒3の脱落を防止するための支持板12aが設けてある。
【0030】
以上のようにしてフレーム6にコーナー部材5を取付けるには、対向する側壁部材13a,13bの間の空隙にフレーム6を差込む。この場合、側壁部材13a,13bの間は、上下とも開口に形成されているから、フレーム6をこの側壁部材13a,13bの間に差込んでも、これとは反対にコーナー部分に位置する縦横のフレーム6にコーナー部材5を差込んでもよい。また、差込方向も、上下のいずれからでも行える。
【0031】
側壁部材13a,13bの間にフレーム6が挿入された状態で、リベット15またはボルトでコーナー部材5をフレーム6に固定する。このフレーム6との結合はリベット15などを使用するものであるから、アルミニウム製のコーナー部材5に対して、フレーム6が同材質のものである必要はない。
【0032】
以上のようにしてコーナー部材5を取付けた運搬台車は、他物に接触しやすい角部に外周部が円弧状のコーナー部材5が取付けられているから、衝撃が吸収され、コーナー部材5が損傷するなどして交換する場合は、リベット15などを外すだけで取外しでき、新規のコーナー部材5もリベット15で固定するだけでよいから簡単に交換できる。
【0033】
また、コーナー部材5には手押し棒3の挿入孔12が形成され、ここの差込口には手押し棒3からの過重なモーメントがかかる。コーナー部材5が他物との接触だけでなく、このように内側からも変形しやすい部位を備えていることを勘案すると、かかるコーナー部材5の交換を容易に行えるようにしたことは実効的である。
【0034】
ところで、キャスター2には、ブレーキ付きキャスターとブレーキ付きでないキャスターとがあり、ブレーキ付きキャスターは台車本体の四隅のコーナー部のうち、前後の両方もしくはいずれか一方、さらに左右の双方、もしくは一方に設けられる。
【0035】
本発明は、前記キャスターを設ける台車本体の四隅のコーナー部のうち、ブレーキ付きキャスターを裏側に設けたコーナー部
のみを着色(例えば、赤や緑)し、着色部1を設けた。
【0036】
この着色部1は、一例としてコーナー部がアルミニウム合金素材の場合は焼き付け等で行い、コーナー部を形成するコーナー部材5の前記側壁部材13a,13bのうち、外側に位置する側壁部材13bの全面について施す。
【0037】
このようにして前記一つのコーナー部には、手押し棒が上側から挿入される挿入孔12が設けられるとともに、前記挿入孔12の形成部分から前記フレームの側面を互いに直交する方向に延びる着色部が設けられることになる。
【0038】
ブレーキ付きキャスターは、
図5〜
図7に示すように、ヨーク(把持体)2cと、車輪2aと、ブレーキシュー16と、ブレーキペダル17とからなる。
【0039】
ヨーク(把持体)2cは、金属板を曲げ加工してなるものとしており、取付板9の下方に取付けられ、ブレーキシュー16は、金属板を曲げ加工してなるものとしており、ブレーキライニング(図示せず)を設けたものとしている。
【0040】
ブレーキペダル17は、金属板を曲げ加工してなるものとしており、一端の操作部18を踏み付けて揺動させることにより、ブレーキシュー16を車輪2aに押しつけて車輪2aを固定するものである。
【0041】
ブレーキペダル17は、前記一端の操作部18を閉塞端とし、中央に空隙19を形成したコ字形アームからなり、該アームは緩やかに凹形を描くように湾曲し、かつ前記操作部18は端を跳ね上げるように形成した。
【0042】
ブレーキ時には、車輪2aはこのブレーキペダル17の空隙19に入り込むように位置付ける。
【0043】
また、前記跳ね上げるように形成した操作部18には、足踏片20を前方に突き出させて設けた。
【0044】
そして、ブレーキペダル17は、
図1、
図2に示すように、ブレーキ解除時に車輪2aが前後方向に向いた場合に、平面視して、前記操作部18が台車本体の周囲から顕出するものとした。
【0045】
前記運搬台車の進行方向が前記運搬台車の長手方向の場合に、前記運搬台車の進行方向に沿って見て、前記着色部の下側に前記ブレーキペダル17が視認される。
【0046】
図2に示すように前記ブレーキ付きの旋回キャスターは、取付板9を介して前記台車本体に取付けられ、前記運搬台車を平面視で見たとき、前記フレーム6と前記取付板9との隙間を通して前記ブレーキペダル17の一部が視認される。
【0047】
ブレーキ操作は、ブレーキペダル17を足で踏みこむと、ブレーキペダル17が押し下がり、ブレーキシュー16が車輪2aに押しつけてられて車輪2aを固定し、ブレーキ解除にはブレーキペダル17を足で押し上げると、ブレーキシュー16の車輪2aへの係合が解かれるものである。
【0048】
ブレーキ付きキャスターは、台車本体の裏面の周辺部の少なくとも四隅のいずれかに取付ける場合に、四隅には手押し棒3を挿着するためのコーナー部材5が取付けられることから、手押し棒3、コーナー部材5を避けて回転できるように「旋回偏心半径+キャスター半径」の分だけ垂下部分から台車本体の内側に入った箇所に取付けられる。
【0049】
その結果、車輪2aの向きやブレーキ状態では、台車本体の裏面に隠れてブレーキペダルの位置がわからない。
【0050】
そこで、着色部1により、キャスターを設ける台車本体の四隅のコーナー部のうち、ブレーキ付きキャスターを裏側に設けたコーナー部を把握でき、これによりブレーキ付きキャスターの存在を認識できるとともに、ブレーキ解除時に車輪2aが前後方向に向いた場合に、ブレーキペダル17が台車本体の周囲から顕出するので、確実にブレーキを掛けることができる。
【0051】
なお、前記運搬台車は、前記台車本体の裏面の周辺部の少なくとも四隅に取付けたものの他に、少なくとも四隅に取付けた旋回キャスター2をつなぐ輪郭線の内側で、使用時の進行方向と同じ方向の縦列に2輪以上のキャスターを設けたものとしたが、これに限定されるものでなく、例えば、特開2009−227042号公報にあるように、平面長方形の台車本体の、長手方向の左右両側にそれぞれ縦列に3輪ずつ旋回キャスター2を軸着した運搬台車において、前記3輪のキャスターのうちの真中のキャスターを前後の2輪の旋回キャスターよりも外側に配置させたものや、台車本体の裏面の周辺部の少なくとも四隅にのみキャスターを設けたものなど、種々のタイプのものに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の運搬台車の1実施形態を示すブレーキ解除時の側面図である。
【
図2】本発明の運搬台車の1実施形態を示すブレーキ解除時の平面図である。
【
図3】本発明の運搬台車の1実施形態を示すブレーキ時の側面図である。
【
図4】本発明の運搬台車の1実施形態を示すブレーキ時の平面図である。
【
図5】本発明で使用するブレーキ付きキャスターの側面図である。
【
図6】本発明で使用するブレーキ付きキャスターの正面図である。
【
図7】本発明で使用するブレーキ付きキャスターの底面図である。
【
図14】従来のブレーキ付きキャスターの側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 着色部 2 キャスター
2a 車輪 2b 台座
2c ヨーク 3 手押し棒
5 コーナー部材 6 フレーム
7 ベース 8 区画
9 取付板 10 ブラインドリベット
11 ボルトとナット 12 挿入孔
12a 支持板 13a,13b 側壁部材
14 傾斜部 15 リベット
16 ブレーキシュー 17 ブレーキペダル
18 操作部 19 空隙
20 足踏片 33 ブレーキペダル