特許第6093058号(P6093058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6093058
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】通信システム、基地局及び通信制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/16 20090101AFI20170227BHJP
   H04W 24/02 20090101ALI20170227BHJP
   H04W 28/18 20090101ALI20170227BHJP
   H04W 72/12 20090101ALI20170227BHJP
【FI】
   H04W28/16
   H04W24/02
   H04W28/18 110
   H04W72/12 130
【請求項の数】21
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-31646(P2016-31646)
(22)【出願日】2016年2月23日
【審査請求日】2016年2月23日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省「移動通信システムにおける三次元稠密セル構成及び階層セル構成技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】塩原 翔太
(72)【発明者】
【氏名】岡廻 隆生
(72)【発明者】
【氏名】藤井 輝也
【審査官】 望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/020457(WO,A1)
【文献】 特開2014−78989(JP,A)
【文献】 特開2012−178822(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/000336(WO,A1)
【文献】 特表2014−523169(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/084904(WO,A2)
【文献】 特表2011−508576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00−H04W99/00
H04B7/24−H04B7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信により第1の基地局及び第2の基地局からデータを協調送信可能な通信システムであって、
前記第1の基地局は、前記第1の基地局のセルと前記第2の基地局のセルとの間のセル境界エリアに、前記第1の基地局を希望局とする第1の通信端末が在圏しているとき、前記第1の通信端末における前記第2の基地局からの干渉を抑制するように前記第1の基地局からの送信信号に適用する干渉抑制パラメータの値を取得し、
前記第2の基地局は、前記第2の基地局のセルに在圏している前記第2の基地局を希望局とする第2の通信端末に対する希望データを複製し、その複製した希望データを、基地局間通信インターフェースを介して前記第1の基地局に送信し、
前記第1の基地局は、前記第1の通信端末に対する希望データ及び前記第2の基地局から受信した前記第2の通信端末に対する希望データに前記干渉抑制パラメータの値を適用して送信信号を生成し、
前記第2の基地局は、前記第2の通信端末に対する希望データの送信信号を生成し、
前記第1の基地局及び前記第2の基地局はそれぞれ、所定のデータ協調送信タイミングで、前記生成した送信信号を協調送信する、ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
請求項1の通信システムにおいて、
前記第1の基地局は、
前記第2の基地局に協調送信開始要求を送信し、その協調送信開始要求を受信した前記第2の基地局から、空き無線通信リソース情報を含む協調送信開始応答を受信し、
その協調送信開始応答に基づいて前記第1の基地局及び前記第2の基地局それぞれにおけるデータの協調送信に用いる協調用リソースを決定し、
前記決定した協調用リソースの情報を含む協調送信開始通知を前記第2の基地局に送信し、
前記第2の基地局は、
前記第1の基地局に前記協調用リソースの候補である前記空き無線通信リソース情報を含む協調送信開始応答を送信し、
その協調送信開始応答を受信した前記第1の基地局から、前記決定した協調用リソースの情報を含む協調送信開始通知を受信することを特徴とする通信システム
【請求項3】
請求項1の通信システムにおいて、
前記第1の基地局は、
前記第2の基地局に、協調用リソースの候補となる空きリソース情報を含む協調送信開始要求を送信し、その協調送信開始要求を受信した前記第2の基地局から、前記協調用リソースの候補となる空きリソース情報の中で使用可能な無線リソースを含む協調送信開始応答を受信し、
その協調送信開始応答に基づいて前記第1の基地局及び前記第2の基地局それぞれにおけるデータの協調送信に用いる協調用リソースを決定し、
前記決定した協調用リソースの情報を含む協調送信開始通知を前記第2の基地局に送信し、
前記第2の基地局は、
前記第1の基地局から受信した協調送信開始要求に含まれる前記協調用リソースの候補となる空きリソース情報の中で使用可能な無線リソースを選択し、前記使用可能な無線リソースを含む協調送信開始応答を送信し、
その協調送信開始応答を受信した前記第1の基地局から、前記決定した協調用リソースの情報を含む協調送信開始通知を受信することを特徴とする通信システム
【請求項4】
請求項2又は3の通信システムにおいて、
前記第1の基地局は、
前記協調用リソースを、前記第2の基地局から遠隔制御できるように貸し出し、
前記第2の基地局は、
前記第1の基地局から借り受けた前記協調用リソースを用いて、前記基地局間通信インターフェースを介して第1の基地局へ送信した前記第2の通信端末に対する希望データを遠隔制御して、前記第1の基地局から前記第1の通信端末に送信すること特徴とする通信システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの通信システムにおいて、
前記第2の基地局は、前記第2の基地局のセルに在圏している複数の通信端末のうち、前記第1の通信端末に対する干渉が最も弱い送信信号が前記第2の基地局から送信される通信端末を、前記第2の通信端末として選択すること特徴とする通信システム。
【請求項6】
請求項5の通信システムにおいて、
前記第2の基地局は、前記第2の基地局のセルに在圏している複数の通信端末の位置情報に基づいて、前記第2の通信端末を選択すること特徴とする通信システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの通信システムにおいて、
前記第2の基地局は、前記セル境界エリアに前記第2の通信端末が在圏しているとき、前記第2の通信端末における前記第1の基地局からの干渉を抑制するように前記第2の基地局からの送信信号に適用する干渉抑制パラメータの値を取得し、
前記第1の基地局は、前記第1の通信端末に対する希望データを複製し、その複製した希望データを、基地局間通信インターフェースを介して前記第2の基地局に送信し、
前記第2の基地局は、前記第2の通信端末に対する希望データ及び前記第1の基地局から受信した前記第1の通信端末に対する希望データに前記干渉抑制パラメータの値を適用して送信信号を生成する、こと特徴とする通信システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかの通信システムにおいて、
前記第1の基地局は、前記第1の通信端末から受信した無線信号の品質情報に基づいて、前記第1の基地局で用いる干渉抑制パラメータの値を計算して取得すること特徴とする通信システム。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかの通信システムにおいて、
前記第1の通信端末が、自らが受信した無線信号の品質情報に基づいて、前記干渉抑制パラメータを計算し、計算した前記干渉抑制パラメータを前記第1の基地局に送信することを特徴とする通信システム。
【請求項10】
請求項7の通信システムにおいて、
前記第2の基地局は、前記第2の通信端末から受信した無線信号の品質情報に基づいて、前記第2の基地局で用いる前記干渉抑制パラメータの値を計算して取得すること特徴とする通信システム。
【請求項11】
請求項7の通信システムにおいて、
前記第2の通信端末が、自らが受信した無線信号の品質情報に基づいて、前記干渉抑制パラメータを計算し、計算した前記干渉抑制パラメータを前記第2の基地局に送信することを特徴とする通信システム。
【請求項12】
請求項7の通信システムにおいて、
前記第1の基地局は、
前記第2の通信端末から受信した無線信号の品質情報を、基地局間通信インターフェースを介して前記第2の基地局から受信し、
前記第1の通信端末から受信した無線信号の品質情報と前記第2の基地局から受信した前記無線信号の品質情報とに基づいて、前記第1の基地局及び前記第2の基地局で用いる干渉抑制パラメータの値を計算し、
前記第2の基地局で用いる干渉抑制パラメータの値を、基地局間通信インターフェースを介して前記第2の基地局に送信し、
前記第2の基地局は、
前記第2の通信端末から受信した無線信号の品質情報を、基地局間通信インターフェースを介して前記第1の基地局に送信し、
前記第2の基地局で用いる干渉抑制パラメータの値を、基地局間通信インターフェースを介して前記第1の基地局から受信すること特徴とする通信システム。
【請求項13】
請求項7の通信システムにおいて、
前記第2の基地局は、
前記第1の通信端末から受信した無線信号の品質情報を、基地局間通信インターフェースを介して前記第1の基地局から受信し、
前記第2の通信端末から受信した無線信号の品質情報と前記第1の基地局から受信した前記無線信号の品質情報とに基づいて、前記第1の基地局及び前記第2の基地局で用いる干渉抑制パラメータの値を計算し、
前記第1の基地局で用いる干渉抑制パラメータの値を、基地局間通信インターフェースを介して前記第1の基地局に送信し、
前記第1の基地局は、
前記第1の通信端末から受信した無線信号の品質情報を、基地局間通信インターフェースを介して前記第2の基地局に送信し、
前記第1の基地局で用いる干渉抑制パラメータの値を、基地局間通信インターフェースを介して前記第2の基地局から受信すること特徴とする通信システム。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかの通信システムにおいて、
前記第1の基地局及び前記第2の基地局はそれぞれ、複数のアンテナを用いるMIMO(Multi Input Multi Output)伝送方式で前記協調送信を行い、
前記干渉抑制パラメータは送信ウェイトであること特徴とする通信システム。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかの通信システムにおいて、
前記第1の基地局は、前記第1の基地局のセル内に在圏する通信端末から受信した無線通信の品質情報に基づいて前記セル境界エリアに前記第1の通信端末が在圏していると判断したとき、前記第1の通信端末及び前記第2の通信端末に対するデータの協調送信の開始を決定し、そのデータの協調送信を要求する協調送信開始要求を、基地局間通信インターフェースを介して前記第2の基地局に送信すること特徴とする通信システム。
【請求項16】
無線通信により複数の基地局からデータを協調送信可能な通信システムにおける前記複数の基地局のいずれか一つの基地局であって、
自セルと前記データの協調送信を行う他の基地局のセルとの間のセル境界エリアに、自局を希望局とする第1の通信端末が在圏しているとき、前記第1の通信端末における前記他の基地局からの干渉を抑制するように前記自局からの送信信号に適用する干渉抑制パラメータの値を取得する手段と、
前記第1の通信端末に対する希望データ及び前記他の基地局から受信した前記他の基地局のセルに在圏する第2の通信端末に対する希望データに前記干渉抑制パラメータの値を適用して送信信号を生成する手段と、
所定のデータ協調送信タイミングで、前記生成した送信信号を協調送信する手段と、を備えること特徴とする基地局。
【請求項17】
請求項16の基地局において、
前記第1の通信端末に対する希望データを複製し、その複製した希望データを、基地局間通信インターフェースを介して前記他の基地局に送信する手段を備えること特徴とする基地局。
【請求項18】
無線通信により複数の基地局からデータを協調送信可能な通信システムにおける前記複数の基地局のいずれか一つの基地局であって、
自セルに在圏している自局を希望局とする第2の通信端末に対する希望データを複製し、その複製した希望データを、基地局間通信インターフェースを介して、前記データの協調送信を行う他の基地局に送信する手段と、
前記第2の通信端末に対する希望データの送信信号を生成する手段と、
所定のデータ協調送信タイミングで、前記生成した送信信号を協調送信する手段と、を備えること特徴とする基地局。
【請求項19】
請求項18の基地局において、
自セルと前記他の基地局のセルとの間のセル境界エリアに前記第2の通信端末が在圏しているとき、前記第2の通信端末における前記他の基地局からの干渉を抑制するように自局からの送信信号に適用する干渉抑制パラメータの値を取得する手段と、
前記第2の通信端末に対する希望データ及び前記他の基地局から受信した該他の基地局を希望局とする第1の通信端末に対する希望データに前記干渉抑制パラメータの値を適用して送信信号を生成する手段と、を備えること特徴とする基地局。
【請求項20】
無線通信により第1の基地局及び第2の基地局からデータを協調送信するときの通信制御方法であって、
前記第1の基地局が、前記第1の基地局のセルと前記第2の基地局のセルとの間のセル境界エリアに、前記第1の基地局を希望局とする第1の通信端末が在圏しているとき、前記第1の通信端末における前記第2の基地局からの干渉を抑制するように前記第1の基地局からの送信信号に適用する干渉抑制パラメータの値を取得することと、
前記第2の基地局が、前記第2の基地局のセルに在圏している前記第2の基地局を希望局とする第2の通信端末に対する希望データを複製し、その複製した希望データを、基地局間通信インターフェースを介して前記第1の基地局に送信することと、
前記第1の基地局が、前記第1の通信端末に対する希望データ及び前記第2の基地局から受信した前記第2の通信端末に対する希望データに前記干渉抑制パラメータの値を適用して送信信号を生成することと、
前記第2の基地局が、前記第2の通信端末に対する希望データの送信信号を生成することと、
前記第1の基地局及び前記第2の基地局がそれぞれ、所定のデータ協調送信タイミングで、前記生成した送信信号を協調送信することと、を含むことを特徴とする通信制御方法。
【請求項21】
請求項20の通信制御方法において、
前記第2の基地局が、前記セル境界エリアに前記第2の通信端末が在圏しているとき、前記第2の通信端末における前記第1の基地局からの干渉を抑制するように前記第2の基地局からの送信信号に適用する干渉抑制パラメータの値を取得することと、
前記第1の基地局が、前記第1の通信端末に対する希望データを複製し、その複製した希望データを、基地局間通信インターフェースを介して前記第2の基地局に送信することと、
前記第2の基地局が、前記第2の通信端末に対する希望データ及び前記第1の基地局から受信した前記第1の通信端末に対する希望データに前記干渉抑制パラメータの値を適用して送信信号を生成することと、を含むことを特徴とする通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信により複数の基地局から通信端末にデータを協調して送信することができる通信システム、並びに、その通信システムに用いることができる基地局及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の基地局の1つを協調元の基地局として機能させ、その協調元の基地局がコアノードからデータを受信し、そのデータを他の協調先の基地局に分配することにより、各基地局から一つの通信端末にデータを協調送信できる通信システムであって、その基地局間協調送信を基地局間通信インターフェースにより自律分散的に制御するアンカー方式の通信システムが知られている(特許文献1、非特許文献1参照)。このアンカー方式の通信システムによれば、複数の基地局の無線通信エリア(セル)が重複しているセル境界エリアにおけるスループットの向上、通信品質の向上、通信帯域の有効利用等を実現することができ、複数の基地局における協調用リソースの管理を確実に行うことができるとともに、複数の基地局からの協調送信の効率を向上させることができる、とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記アンカー方式の通信システムにおいて、セル境界エリアに在圏する通信端末での干渉を抑制しつつ、その通信端末を含む複数の通信端末に対して、同一の無線リソースを用いて複数の基地局からデータを協調送信したい、という課題がある。
【0004】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、セル境界エリアに在圏する通信端末での干渉を抑制しつつ、その通信端末を含む複数の通信端末に対して、同一の無線リソースを用いて、複数の基地局からデータを協調送信することができる通信システム、基地局及び通信制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る通信システムは、無線通信により第1の基地局及び第2の基地局からデータを協調送信可能な通信システムであって、前記第1の基地局は、前記第1の基地局のセルと前記第2の基地局のセルとの間のセル境界エリアに、前記第1の基地局を希望局とする第1の通信端末が在圏しているとき、前記第1の通信端末における前記第2の基地局からの干渉を抑制するように前記第1の基地局からの送信信号に適用する干渉抑制パラメータの値を取得し、前記第2の基地局は、前記第2の基地局のセルに在圏している前記第2の基地局を希望局とする第2の通信端末に対する希望データを複製し、その複製した希望データを、基地局間通信インターフェースを介して前記第1の基地局に送信し、前記第1の基地局は、前記第1の通信端末に対する希望データ及び前記第2の基地局から受信した前記第2の通信端末に対する希望データに前記干渉抑制パラメータの値を適用して送信信号を生成し、前記第2の基地局は、前記第2の通信端末に対する希望データの送信信号を生成し、前記第1の基地局及び前記第2の基地局はそれぞれ、所定のデータ協調送信タイミングで、前記生成した送信信号を協調送信する。
前記通信システムにおいて、前記第1の基地局は、前記第2の基地局に協調送信開始要求を送信し、その協調送信開始要求を受信した前記第2の基地局から、空き無線通信リソース情報を含む協調送信開始応答を受信し、その協調送信開始応答に基づいて前記第1の基地局及び前記第2の基地局それぞれにおけるデータの協調送信に用いる協調用リソースを決定し、前記決定した協調用リソースの情報を含む協調送信開始通知を前記第2の基地局に送信し、前記第2の基地局は、前記第1の基地局に前記協調用リソースの候補である前記空き無線通信リソース情報を含む協調送信開始応答を送信し、その協調送信開始応答を受信した前記第1の基地局から、前記決定した協調用リソースの情報を含む協調送信開始通知を受信してもよい。
また、前記通信システムにおいて、前記第1の基地局は、前記第2の基地局に、協調用リソースの候補となる空きリソース情報を含む協調送信開始要求を送信し、その協調送信開始要求を受信した前記第2の基地局から、前記協調用リソースの候補となる空きリソース情報の中で使用可能な無線リソースを含む協調送信開始応答を受信し、その協調送信開始応答に基づいて前記第1の基地局及び前記第2の基地局それぞれにおけるデータの協調送信に用いる協調用リソースを決定し、前記決定した協調用リソースの情報を含む協調送信開始通知を前記第2の基地局に送信し、前記第2の基地局は、前記第1の基地局から受信した協調送信開始要求に含まれる前記協調用リソースの候補となる空きリソース情報の中で使用可能な無線リソースを選択し、前記使用可能な無線リソースを含む協調送信開始応答を送信し、その協調送信開始応答を受信した前記第1の基地局から、前記決定した協調用リソースの情報を含む協調送信開始通知を受信してもよい。
また、前記通信システムにおいて、前記第1の基地局は、前記協調用リソースを、前記第2の基地局から遠隔制御できるように貸し出し、前記第2の基地局は、前記第1の基地局から借り受けた前記協調用リソースを用いて、前記基地局間通信インターフェースを介して第1の基地局へ送信した前記第2の通信端末に対する希望データを遠隔制御して、前記第1の基地局から前記第1の通信端末に送信してもよい。
また、前記通信システムにおいて、前記第2の基地局は、前記第2の基地局のセルに在圏している複数の通信端末のうち、前記第1の通信端末に対する干渉が最も弱い送信信号が前記第2の基地局から送信される通信端末を、前記第2の通信端末として選択してもよい。ここで、前記第2の基地局は、前記第2の基地局のセルに在圏している複数の通信端末の位置情報に基づいて、前記第2の通信端末を選択してもよい。
また、前記通信システムにおいて、前記第2の基地局は、前記セル境界エリアに前記第2の通信端末が在圏しているとき、前記第2の通信端末における前記第1の基地局からの干渉を抑制するように前記第2の基地局からの送信信号に適用する干渉抑制パラメータの値を取得し、前記第1の基地局は、前記第1の通信端末に対する希望データを複製し、その複製した希望データを、基地局間通信インターフェースを介して前記第2の基地局に送信し、前記第2の基地局は、前記第2の通信端末に対する希望データ及び前記第1の基地局から受信した前記第1の通信端末に対する希望データに前記干渉抑制パラメータの値を適用して送信信号を生成してもよい。
また、前記通信システムにおいて、前記第1の基地局は、前記第1の通信端末から受信した無線信号の品質情報に基づいて、前記第1の基地局で用いる干渉抑制パラメータの値を計算して取得してもよい。
また、前記通信システムにおいて、前記第1の通信端末が、自らが受信した無線信号の品質情報に基づいて、前記干渉抑制パラメータを計算し、計算した前記干渉抑制パラメータを前記第1の基地局に送信してもよい。
また、前記通信システムにおいて、前記第2の基地局は、前記第2の通信端末から受信した無線信号の品質情報に基づいて、前記第2の基地局で用いる前記干渉抑制パラメータの値を計算して取得してもよい。
また、前記通信システムにおいて、前記第2の通信端末が、自らが受信した無線信号の品質情報に基づいて、前記干渉抑制パラメータを計算し、計算した前記干渉抑制パラメータを前記第2の基地局に送信してもよい。
また、前記通信システムにおいて、前記第1の基地局は、前記第2の通信端末から受信した無線信号の品質情報を、基地局間通信インターフェースを介して前記第2の基地局から受信し、前記第1の通信端末から受信した無線信号の品質情報と前記第2の基地局から受信した前記無線信号の品質情報とに基づいて、前記第1の基地局及び前記第2の基地局で用いる干渉抑制パラメータの値を計算し、前記第2の基地局で用いる干渉抑制パラメータの値を、基地局間通信インターフェースを介して前記第2の基地局に送信し、前記第2の基地局は、前記第2の通信端末から受信した無線信号の品質情報を、基地局間通信インターフェースを介して前記第1の基地局に送信し、前記第2の基地局で用いる干渉抑制パラメータの値を、基地局間通信インターフェースを介して前記第1の基地局から受信してもよい。
また、前記通信システムにおいて、前記第2の基地局は、前記第1の通信端末から受信した無線信号の品質情報を、基地局間通信インターフェースを介して前記第1の基地局から受信し、前記第2の通信端末から受信した無線信号の品質情報と前記第1の基地局から受信した前記無線信号の品質情報とに基づいて、前記第1の基地局及び前記第2の基地局で用いる干渉抑制パラメータの値を計算し、前記第1の基地局で用いる干渉抑制パラメータの値を、基地局間通信インターフェースを介して前記第1の基地局に送信し、前記第1の基地局は、前記第1の通信端末から受信した無線信号の品質情報を、基地局間通信インターフェースを介して前記第2の基地局に送信し、前記第1の基地局で用いる干渉抑制パラメータの値を、基地局間通信インターフェースを介して前記第2の基地局から受信してもよい。
また、前記通信システムにおいて、前記第1の基地局及び前記第2の基地局はそれぞれ、複数のアンテナを用いるMIMO(Multi Input Multi Output)伝送方式で前記協調送信を行い、前記干渉抑制パラメータは送信ウェイトであってもよい。
また、前記通信システムにおいて、前記第1の基地局は、前記第1の基地局のセル内に在圏する通信端末から受信した無線通信の品質情報に基づいて前記セル境界エリアに前記第1の通信端末が在圏していると判断したとき、前記第1の通信端末及び前記第2の通信端末に対するデータの協調送信の開始を決定し、そのデータの協調送信を要求する協調送信開始要求を、基地局間通信インターフェースを介して前記第2の基地局に送信してもよい。
【0006】
また、本発明の他の態様に係る基地局は、無線通信により複数の基地局からデータを協調送信可能な通信システムにおける前記複数の基地局のいずれか一つの基地局であって、自セルと前記データの協調送信を行う他の基地局のセルとの間のセル境界エリアに、自局を希望局とする第1の通信端末が在圏しているとき、前記第1の通信端末における前記他の基地局からの干渉を抑制するように前記自局からの送信信号に適用する干渉抑制パラメータの値を取得する手段と、前記第1の通信端末に対する希望データ及び前記他の基地局から受信した前記他の基地局のセルに在圏する第2の通信端末に対する希望データに前記干渉抑制パラメータの値を適用して送信信号を生成する手段と、所定のデータ協調送信タイミングで、前記生成した送信信号を協調送信する手段と、を備える。
前記基地局において、前記第1の通信端末に対する希望データを複製し、その複製した希望データを、基地局間通信インターフェースを介して前記他の基地局に送信する手段を備えてもよい。
【0007】
また、本発明の更に他の態様に係る基地局は、無線通信により複数の基地局からデータを協調送信可能な通信システムにおける前記複数の基地局のいずれか一つの基地局であって、自セルに在圏している自局を希望局とする第2の通信端末に対する希望データを複製し、その複製した希望データを、基地局間通信インターフェースを介して、前記データの協調送信を行う他の基地局に送信する手段と、前記第2の通信端末に対する希望データの送信信号を生成する手段と、所定のデータ協調送信タイミングで、前記生成した送信信号を協調送信する手段と、を備える。
前記基地局において、自セルと前記他の基地局のセルとの間のセル境界エリアに前記第2の通信端末が在圏しているとき、前記第2の通信端末における前記他の基地局からの干渉を抑制するように自局からの送信信号に適用する干渉抑制パラメータの値を取得する手段と、前記第2の通信端末に対する希望データ及び前記他の基地局から受信した該他の基地局を希望局とする第1の通信端末に対する希望データに前記干渉抑制パラメータの値を適用して送信信号を生成する手段と、を備えてもよい。
【0008】
また、本発明の更に他の態様に係る通信制御方法は、無線通信により第1の基地局及び第2の基地局からデータを協調送信するときの通信制御方法であって、前記第1の基地局が、前記第1の基地局のセルと前記第2の基地局のセルとの間のセル境界エリアに、前記第1の基地局を希望局とする第1の通信端末が在圏しているとき、前記第1の通信端末における前記第2の基地局からの干渉を抑制するように前記第1の基地局からの送信信号に適用する干渉抑制パラメータの値を取得することと、前記第2の基地局が、前記第2の基地局のセルに在圏している前記第2の基地局を希望局とする第2の通信端末に対する希望データを複製し、その複製した希望データを、基地局間通信インターフェースを介して前記第1の基地局に送信することと、前記第1の基地局が、前記第1の通信端末に対する希望データ及び前記第2の基地局から受信した前記第2の通信端末に対する希望データに前記干渉抑制パラメータの値を適用して送信信号を生成することと、前記第2の基地局が、前記第2の通信端末に対する希望データの送信信号を生成することと、前記第1の基地局及び前記第2の基地局がそれぞれ、所定のデータ協調送信タイミングで、前記生成した送信信号を協調送信することと、を含む。
前記通信制御方法において、前記第2の基地局が、前記セル境界エリアに前記第2の通信端末が在圏しているとき、前記第2の通信端末における前記第1の基地局からの干渉を抑制するように前記第2の基地局からの送信信号に適用する干渉抑制パラメータの値を取得することと、前記第1の基地局が、前記第1の通信端末に対する希望データを複製し、その複製した希望データを、基地局間通信インターフェースを介して前記第2の基地局に送信することと、前記第2の基地局が、前記第2の通信端末に対する希望データ及び前記第1の基地局から受信した前記第1の通信端末に対する希望データに前記干渉抑制パラメータの値を適用して送信信号を生成することと、を含んでもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の基地局から複数の通信端末に対して、同一の無線リソースを用いてデータを協調送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの構成の一例を示す説明図。
図2】本実施形態に係る通信システムにおける協調用リソースの割り当てを例示する説明図。
図3】(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、同通信システムにおける協調送信開始前、協調送信中及び協調送信終了後における通信の一例を示す説明図。
図4】本実施形態に係る通信システムにおける協調送信開始前における通信制御例の一例を示すシーケンス図。
図5】本実施形態に係る通信システムにおけるデータ協調送信時のリソース貸し出し・借り受けの概念の一例を示す説明図。
図6】本実施形態に係る通信システムにおける協調送信中の通信制御例の一例を示すシーケンス図。
図7】本実施形態に係る通信システムにおける協調送信中の協調元の基地局及び協調先の基地局の通信レイヤ構造の一例を示す機能ブロック図。
図8】本実施形態に係る通信システムにおける協調送信終了後の通信制御例の一例を示すシーケンス図。
図9】本発明の他の実施形態に係る通信システムの構成の一例を示す説明図。
図10】他の実施形態に係る通信システムにおける協調送信中の通信制御例の一例を示すシーケンス図。
図11】他の実施形態に係る通信システムにおける協調送信中の基地局の通信レイヤ構造の一例を示す機能ブロック図。
図12】更に他の実施形態に係る通信システムにおける協調送信中の通信制御例の一例を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムの構成の一例を示す説明図である。本実施形態に係る通信システム10は、複数の無線基地局装置として、GPSなどにより互いに時刻同期している第1の基地局110及び第2の基地局120を備えている。これらの基地局110、120は、基地局間通信インターフェースとしての有線又は無線の通信回線を介して相互に通信することができ、互いに協調することにより、各基地局110、120の無線通信エリア(以下「セル」ともいう。)が重複したセル境界エリアに在圏する通信端末(以下「端末」という。)210と基地局120のセルに在圏する端末220とに、協調送信対象の希望データをそれぞれ協調送信することができる。この各端末210、220へのデータ協調送信には、複数のアンテナを用いるMIMO(Multi Input Multi Output)伝送方式が用いられ、各端末210、220による通信時におけるスループットの向上、通信品質の向上および通信帯域の有効利用を実現できる。
【0012】
なお、本実施形態では、無線技術としてLTE(Long Term Evolution)を仮定して説明するが、無線技術として、LTE−Advancedや5Gなど、他の無線技術を仮定した場合にも同様に適用することができる。
【0013】
なお、本実施形態では、互いに協調してデータを送信可能な複数の基地局が2つである場合について説明するが、当該複数の基地局は3つ以上であってもよい。また、本実施形態では、複数の基地局から協調送信された複数のデータを2台の端末で受信する場合について説明するが、当該協調送信された複数のデータを受信する端末は3台以上の複数台であってもよい。
【0014】
図1において、上記複数の基地局110、120のうち、一方の第1の基地局110が、各基地局からのデータの協調送信開始を判断して制御する機能を有する協調元の基地局である。また、他方の第2の基地局120が、協調元の基地局110によってデータの協調送信開始が制御される協調先の基地局である。これらの基地局110、120は、3GPP(Third Generation Partnership Project)の仕様においては「NodeB」と呼ばれたり、更に、LTEの仕様では発展型のNodeBとして「eNodeB(evolved Node B)」と呼ばれたりする場合がある。また、協調元の基地局はアンカー基地局やマスター基地局と呼ばれ、協調先の基地局はスレーブ基地局と呼ばれる場合もある。
【0015】
通信システム10は、複数の基地局110、120に協調送信対象のデータであるデータを配信するコアノード装置(以下「コアノード」という。)130を含んでもよい。コアノード130は、例えばLTEにおけるEPC(Evolved Packet Core)であり、データ通信網141を介して外部のネットワークと通信することができる。コアノード130と複数の基地局110、120とは、パケット網などのデータ通信網140を介して接続されている。通信システム10は、データ通信網140を含んでもよい。また、通信システム10は、複数の基地局110、120から協調送信される複数のデータを受信可能な端末210、220を含んでもよい。また、端末210、220は、通信サービスの利用者によって使用されるためユーザ装置(UE:User Equipment)と呼ばれる場合があり、移動可能なものであるため移動局と呼ばれる場合もあり、また、無線機と呼ばれる場合もある。
【0016】
端末210、220は、携帯電話機等の移動通信端末であってもよく、基地局110、120及びデータ通信網140等で構築されるネットワークは、移動通信ネットワークのセルラーネットワークであってもよい。データ通信網141は、インターネットやIMS(IP multimedia subsystem)などの外部ネットワークであってもよい。基地局110、120の無線通信エリアはそれぞれ、互いに大きさが異なるマクロセル、マイクロセル、フェムトセル、ピコセル等の各種セルのいずれかであってもよい。
【0017】
端末210、220と無線通信可能な複数の基地局110、120のうちいずれか一つは、複数の基地局110、120からデータを協調して送信する協調送信動作の開始および終了の判断および制御を行う機能を備える協調元の基地局である。協調元の基地局以外の他の基地局は、協調元の基地局によって協調動作させるように制御される被協調基地局としての協調先の基地局である。基地局110および120は、協調元基地局の機能と協調先基地局の機能の両方を持つことが可能であり、端末の状態に応じて端末毎に協調元基地局になったり、協調先基地局になったりすることができる。
【0018】
本実施形態では、基地局110、120と端末210、220との間の無線通信方式としてOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)方式を用いた場合について説明する。
【0019】
図2は、OFDMA方式における無線リソースの概念を例示する説明図である。図示のように、OFDMA方式を採用する場合は、所定周波数帯域を1単位とした周波数(F1、F2、F3、・・・)と、所定時間幅のサブフレームを1単位とした送信タイミングの時間(T1、T2、T3、・・・)とを指定することにより、無線リソースを割り当てる。例えば、図示の例では、ユーザU1の端末に対して周波数F2、F3及び時間T2で指定される2ブロックの無線リソースが割り当てられ、ユーザU2の端末に対して周波数F5及び時間T2で指定される1ブロックの無線リソースが割り当てられている。また、ユーザU3の端末に対して周波数F4、F5及び時間T5、T6で指定される4ブロックの無線リソースが割り当てられ、ユーザU4の端末に対して周波数F2及び時間T5で指定される1ブロックの無線リソースが割り当てられている。なお、本実施形態ではOFDMA方式を用いた通信システムについて説明するが、本発明はOFDMA方式以外の他の無線通信方式を用いた通信システムにも同様に適用することができる。
【0020】
また、本実施形態では一般的なLTEの実装に倣って、各基地局装置が、無線管理エリアであるセル内の無線リソースを管理する。後述の図3の例では、第の基地局110がセル110aの無線リソースを管理し、第の基地局120がセル120aの無線リソースを管理する。従って、第の基地局110が端末210と図2における無線リソースF1/T1を用いて通信を行っている場合、第の基地局120が同じ無線リソースF1/T1を使って端末220と通信を行っているとき、セル境界エリアAに端末210が移動すると、干渉が発生して端末210の下り信号の通信品質が劣化する(後述の図3参照)。そこで、第の基地局110が端末210とF1/T1を用いて通信を行っている場合、第の基地局120が異なる無線リソースF2/T2を使って端末220と通信して干渉を抑制することも可能であるが、無線リソースF1/T1と無線リソースF2/T2の2ブロックが必要となり無線リソースの利用効率が悪くなる。従って、基地局110と基地局120が同一の無線リソースF1/T1を使い、通信品質を劣化させずに同時に通信する協調送信方式が求められている。
【0021】
以下、本実施形態では、このような協調送信方式として基地局間協調MU−MIMOを用いた場合について説明する。なお、本実施形態では、基地局間協調MU−MIMOを用いた通信システムについて説明するが、本発明は基地局間協調MU−MIMO以外の他の協調送信方式を用いた通信システムにも同様に適用することができる。
【0022】
図3(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、本実施形態に係る通信システム10における協調送信開始前、協調送信中及び協調送信終了後における通信の一例を示す説明図である。
図3(a)に示す協調送信開始前においては、第1の基地局110の無線管理エリアであるセル110a内に第1の通信端末である端末210が在圏している。第1の基地局110は、コアノード130から送信対象のデータを受信すると、そのデータについて生成された無線電波の送信信号を、第1のセル110aの無線リソースを用いて、第1のセル110a内の端末210に送信する。また、第2の基地局120の無線管理エリアであるセル120a内に第2の通信端末である端末220が在圏している。第2の基地局120は、コアノード130から送信対象のデータを受信すると、そのデータについて生成された無線電波の送信信号を、第2のセル120aの無線リソースを用いて、第2のセル120a内の端末220に送信する。
【0023】
図3(a)に示すように、端末210および端末220が、セル110aおよびセル120aとの間のセル境界エリアAから十分離れていれば、基地局110と基地局120が同じ無線リソースを使って(例えば、前述したOFDMAの場合では、同じ周波数および同じ時刻に)、端末210および端末220に信号を送信したとしても、端末210が基地局120から受信する信号(干渉波)および端末220が基地局110から受信する信号(干渉波)は十分小さく無視することができ、セル毎に独立して通信を行うことができる。
【0024】
しかし、図3(b)に示すように、端末210が移動してセル境界エリアAに入ると、端末210が基地局120から受信する信号(干渉波)が無視できなくなり、端末210の通信特性を劣化させる。そこで、基地局110と基地局120は、基地局間協調MU−MIMOを用いた協調送信を開始し、端末210が基地局120から受信する信号(干渉波)を抑制し端末210における通信特性を改善するとともに、協調送信と同じ無線リソース(例えば、前述したOFDMAの場合では、同じ周波数および同じ時刻)を用いて基地局120が端末220への通信を継続する。
【0025】
さらに、図3(c)に示すように、端末210が、基地局120の無線管理エリアであるセル120a内に移動したと判断すると、端末210は基地局110から基地局120へハンドオーバし、協調送信を終了する。
【0026】
以下では、本例を用いて、協調送信開始時の処理手順、協調送信中の処理手順、協調送信終了時の処理手順について、詳細を説明する。
【0027】
図4は、図3(a)の状態から図3(b)の状態に遷移する際の協調送信開始時の処理手順の一例を示すシーケンス図である。なお、図中のかっこで示した数字は制御ステップの順番を便宜的に示したものである。また、図4の例では、第1の基地局110のセル110aに一つの端末210が在圏し、第2の基地局120のセル120aに三つの端末220、221、222が在圏する例を示しているが、各セルに在圏する端末の数は図示のものに限定されない。
【0028】
図4において、コアノード130から第1の基地局110を介して、その基地局110のセル110aに在圏する端末210へデータが送信される通常のデータ送信が行われると、端末210が第1の基地局110及び第2の基地局120を含む近隣の基地局からの電波の受信強度を計測し、無線通信の品質情報(以下、適宜「無線通信品質情報」という。LTEでは「Measurement Report」とも呼ばれる。)として第1の基地局110に送信する(ステップ1)。
【0029】
同様に、コアノード130から第2の基地局120を介して、その基地局120のセル120aに在圏する複数の端末220、221、222へデータが送信される通常のデータ送信が行われると、各端末220、221、222が、第1の基地局110及び第2の基地局120を含む近隣の基地局の電波の受信強度を計測し、無線通信品質情報として第2の基地局120に送信する(ステップ2)。
【0030】
第1の基地局110は、端末210から受信した無線通信品質情報に基づいて、第1の基地局110及びその近隣の第2の基地局120の電波の受信強度の差が予め定められた閾値(協調送信開始閾値)以下であれば、第1の基地局110は、各基地局110、120の双方のセル110a、120aが重複しているセル境界エリアA内に端末210が在圏していると判断し、干渉波を抑制するために基地局間協調MU−MIMOを用いた協調送信の開始を判断し(ステップ3)、協調送信開始要求を第2の基地局120に送信する(ステップ4)。このとき、端末210に対して第1の基地局110が協調元の基地局として機能し、第2の基地局120が協調先の基地局として機能する。
【0031】
なお、協調元基地局や協調先基地局の機能は基地局毎にあらかじめ決められているものではない。例えば、第2の基地局120のセルに在圏する端末220がセル境界エリアに移動して協調送信を開始する場合、端末220に対して第2の基地局120が協調開始を判断する協調元基地局となり、第1の基地局110が協調先基地局となる。このように、各基地局110、120は、端末毎に協調元基地局の機能と協調先基地局の機能の両方を有することができる。
【0032】
第2の基地局120は、第1の基地局110から協調送信開始要求を受信すると、第2の基地局120のセル120aに在圏する端末220、221、222それぞれから受信した無線通信品質情報に基づいて、端末220、221、222から端末210と基地局間協調MU−MIMOを用いて協調送信を行うもう一台の端末を選択する(ステップ5)。この基地局間協調MU−MIMOを用いた協調送信を行うデータ協調送信対象の端末としては、例えば、第2の基地局120から端末220、221、222に向けて送信された送信信号がセル境界エリアAの端末210に届く干渉信号が最も弱い端末が選択される。このように干渉信号が最も弱い端末を選択することにより、データの協調送信時におけるセル境界エリアAの端末210での基地局間干渉をより確実に低減できる。なお、端末の選択には、GPSなどで取得された端末220、221、222の位置情報を用いてもよい。本例では、端末220を端末210と基地局間協調MU−MIMOによる協調送信を行う端末として選択している。
【0033】
次に、第2の基地局120は、データ協調送信に使用可能な無線リソース(空きリソース)をチェックし、その空きリソースを協調用リソースの候補として決定し、その空きリソースをデータ協調送信時に用いるためのリソース制御を行う(ステップ6)。また、第2の基地局120は、上記空きリソースに関するリソース情報とともに、上記協調送信開始要求に応答する協調送信開始応答を第1の基地局110に返信する(ステップ7)。
【0034】
第1の基地局110は、第2の基地局120から受信した空きリソースの情報に基づいて、基地局間協調MU−MIMOの協調送信に用いる協調用リソースを決定し、その協調用リソースを第2の基地局120から遠隔制御できるように第2の基地局120に貸し出すためのリソース制御を行う(ステップ8)。その後、第1の基地局110は、自局が協調元の基地局として機能し第2の基地局120が協調先の基地局として機能する基地局間協調MU−MIMOの協調送信の開始を決定し(ステップ9)、そして、基地局間協調MU−MIMOの協調送信の開始を第2の基地局120に伝えるために、上記決定した協調送信に用いる協調用リソースの情報とともに、協調送信開始通知を第2の基地局120に送信する(ステップ10)。協調送信開始通知を受信した第2の基地局は、自局の協調用リソースを端末220に対する基地局間協調MU−MIMOの協調送信に使用するようにリソース制御設定を行うとともに、第1の基地局110から借り受けた協調用リソースを遠隔制御して端末210に対する基地局間協調MU−MIMOの協調送信に使用するようにリソース制御設定を行う。
【0035】
図5は、上記データ協調送信時の協調用リソース貸し出し・借り受けの概念の一例を示す説明図である。
図5において、協調元の基地局(第1の基地局)110は、協調用リソースとして、自局の周波数リソースF5a及びF6aを割り当てて協調先の基地局120に貸し出す。この協調元の基地局110における協調用リソース(周波数リソースF5a及びF6a)は、基地局間協調MU−MIMOの協調送信時における自局から端末210への希望データ(第1データ)の送信と、協調先の基地局120から端末220への希望データ(第2データ)を基地局間通信インターフェースにより基地局110に転送したデータの送信とに使用される。しかし、協調元の基地局110における協調用リソース(周波数リソースF5a及びF6a)は、協調元の基地局110のスケジューラ116で制御されず、協調先の基地局120のスケジューラ126から遠隔制御される。従って、基地局間協調MU−MIMOの協調送信が行われている間、協調元の基地局110のスケジューラは、協調元の基地局110から端末210以外の他の端末へのデータ送信に、協調用リソースを使用できない。
【0036】
また、協調先の基地局(第2の基地局)120は、協調用リソースとして、協調元の基地局110から周波数リソースF5a及びF6a借り受けるとともに、周波数リソースF5a及びF6aと同じ周波数リソースからなる自局の周波数リソースF5b及びF6bを割り当てる。協調元の基地局110から借り受けた周波数リソースF5a及びF6aは、前述のように、基地局間協調MU−MIMOの協調送信時における協調元の基地局110から端末210への第1データの送信と自局から転送した第2データの送信とに使用される。また、協調先の基地局120における協調用リソース(周波数リソースF5b及びF6b)は、基地局間協調MU−MIMOの協調送信時における自局から端末220への希望データである第2データの送信に使用される。協調先の基地局120における協調用リソース(周波数リソースF5b及びF6b)は協調先の基地局120のスケジューラ126で制御され、基地局間協調MU−MIMOの協調送信が行われている間、協調先の基地局120から端末220以外の他の端末へのデータ送信に使用できない。以上のリソース制御により決定された同一の周波数F5およびF6を用いて、同一の時刻(データ協調送信タイミング、例えばT1)に、協調元の基地局110及び協調先の基地局120は基地局間協調MU−MIMOの協調送信を行う。従って、協調元の基地局110及び協調先の基地局120は、協調送信中に互いにリソースのネゴシエーションを行うことなく、端末210、220に対して基地局間協調MU−MIMOの協調送信することが可能になる。
【0037】
図6は、図3(b)に示す協調送信中の処理手順の一例を示すシーケンス図である。
図6において、上記協調元の基地局110から協調先の基地局120へ協調送信開始通知が送受信された後、協調元の基地局110はセル境界エリアAの端末210に協調開始コマンドを送信し(ステップ1)、協調先の基地局120は自セルに在圏する上記選択した端末220に協調開始コマンドを送信する(ステップ1)。
【0038】
端末210は、協調元の基地局110から協調送信開始コマンドを受信すると、基地局110から協調送信されてくるデータを処理するための所定の協調送信用プログラムを起動して協調送信処理を開始して協調送信データを処理可能な状態になり、協調元の基地局110および協調先の基地局120からのダウンリンクの伝搬チャネルの状態(CSI:Channel State Information)を含むフィードバック情報(LTEではCSIフィードバックとも呼ばれる)を基地局110に送信する(ステップ2)。また、端末220は、協調先の基地局120から協調送信開始コマンドを受信すると、基地局120から協調送信されてくるデータを処理するための所定の協調送信用プログラムを起動して協調送信処理を開始して協調送信データを処理可能な状態になり、協調元の基地局110および協調先の基地局120からのダウンリンクの伝搬チャネルの状態(CSI)を含むフィードバック情報を基地局120に送信する(ステップ2)。
【0039】
協調元の基地局110は、フィードバック情報を端末210から受信すると、データ協調送信時にMIMO伝送方式で端末210に送信するデータに適用する干渉抑制パラメータとしての「送信ウェイト」(3GPPの仕様では「Precoding Matrix」とも呼ばれる。)の値を計算する(ステップ3)。送信ウェイトは、MIMO伝送方式における複数の送信アンテナそれぞれから送信する送信信号に乗算される複素数からなる重み係数である。例えば、この送信ウェイトの値は、協調元の基地局110からセル境界エリアAの端末210に送信される送信信号が、セル境界エリアAの端末210において協調先の基地局120から送信される第2データの送信信号(干渉波)と逆位相になるように計算される。この送信ウェイトを用いることで、端末210において干渉波が抑制されて下り信号(基地局110から端末210へ送信される第1データ)の通信品質を改善することができる。また、図6の例では、端末210からの伝搬チャネル状態のフィードバック情報をもとに、送信ウェイトの計算を基地局110で行うように記載したが、端末210が伝搬チャネル状態をもとに送信ウェイトを計算し、計算した送信ウェイトを基地局110に送信するフィードバック情報に含めてもよい。
【0040】
協調元の基地局110は、上記送信ウェイトの値を計算するのと同時に、協調送信対象の端末210に対する希望データ(第1データ)をコアノード130から受信する(ステップ4)。また、協調先の基地局120は、協調送信対象の端末220に対する希望データ(第2データ)をコアノード130から受信すると(ステップ5)、その第2データを複製して、所定の協調送信の制御情報(協調送信制御情報)とともに、協調元の基地局110に送信する(ステップ6)。協調先の基地局120から協調元の基地局110への第2データの送信には、LTEの基地局間接続の標準インターフェースであるX2インターフェース等の基地局間通信インターフェースを介して、GTPv2(GPRS Tunneling Protocol Version2)などのトンネリングプロトコルを用いることができる。協調送信制御情報には協調元の基地局110の協調用リソースを遠隔に制御するためのデータ協調送信タイミングおよびMCS情報を含んでもよい。MCS情報とは変調方式および符号化方式を定める情報で、上記フィードバック情報に基づいて協調先の基地局120のスケジューラ126で計算される(図7参照)。
【0041】
次に、協調元の基地局110は、第1データと、協調先の基地局120から受信した第2データとに、送信ウェイトを乗算して、送信信号を生成し(ステップ7)、協調先の基地局120によって協調用リソースが遠隔制御されることにより、送信信号を、上記予め設定した所定の協調用リソースで上記データ協調送信タイミングにセル境界エリアAの端末210へ送信する(ステップ8)。一方、協調先の基地局120は、第2データの送信信号を、上記予め設定した所定の協調用リソースで上記データ協調送信タイミングにセル境界エリアの端末210および自セルの端末220へ送信する(ステップ8)。
【0042】
上記図6の協調送信では、協調元基地局110と協調先基地局120がGPSなどにより時刻同期されていれば、協調元の基地局110及び協調先の基地局120から、協調送信制御情報に含まれるデータ協調送信タイミングで協調送信を行うことができる。しかも、協調先の基地局120からセル境界エリアAの端末210に干渉信号として届いた第2データの送信信号を、協調元の基地局110から所定の送信ウェイトを乗算して送信された第2データの逆位相の送信信号によりキャンセルすることができるので、セル境界エリアAの端末210における基地局間干渉を抑制することができる。
【0043】
端末210において、協調元の基地局110および協調先の基地局120からの伝搬チャネルの状態は刻一刻と変化する情報である。従って、端末210からのフィードバック情報は比較的短い周期で送信される。例えば、LTEでは、CSIフィードバックは1ミリ秒ごとに端末から基地局へ送信される。従って、図6に示す協調送信中の処理手順は、基地局間協調MU−MIMOの協調送信をおこなっている間は、端末210からフィードバック情報が受信されるたびに繰り返し実施される。以上により、刻一刻と変化する伝搬チャネルの状態に合わせて最適なMCS情報や送信ウェイトを計算することで、基地局間協調MU−MIMOの協調送信を実行することができる。
【0044】
図7は、上記協調送信中の協調元の基地局110及び協調先の基地局120の通信レイヤ構造の一例を示す機能ブロック図である。各基地局110、120は、データ収斂プロトコル層(PDCP層)111、121、無線リンク制御層(RLC層)112、122、メディアアクセス制御層(MAC層)113、123、及び物理層(PHY層)114、124からなる、多層の通信レイヤ構造を有している。
【0045】
PDCP層111、121では、データの圧縮及び暗号化並び伸張及び復号化等の処理を行う。RLC層112、122では、データの分割、結合、順序制御及び再送(ARQ:Automatic Repeat−Request)等の処理を行う。MAC層113、123では、データの送信のスケジューリング、多重化、再送(HARQ:Hybrid Automatic Repeat Request)等の処理を行う。
【0046】
PHY層114、124では、端末210、220との間で送受信される高周波の送受信信号の変調、復調、符号化等の処理を行う。また、協調元の基地局の場合、PHY層114では、セル境界エリアAに在圏する端末に対する希望データ(第1データ)と、協調先の基地局から転送されてきた協調先のセルに在圏する端末に対する希望データ(第2データ)とに、フィードバック情報に基づいて予め計算した送信ウェイトを適用して送信信号が生成される。また、このPHY層114、124は、端末210、220と無線通信する無線通信部として機能する。
【0047】
協調元の基地局110の制御部117は、協調開始時に、協調元の基地局110および協調先の基地局120それぞれにおいてデータの協調送信に用いる協調用リソース(例えば周波数)を決定し、協調先の基地局120に協調用リソースを貸し出す。
【0048】
協調先の基地局120の制御部127は、協調開始時において、協調元の基地局110で決定された協調用リソースを協調元の基地局110から借り受ける。制御部127は、協調元の基地局110から借り受けた協調用リソースを遠隔から制御する。更に、制御部127は、協調元の基地局110の協調用リソースを遠隔的に制御するために、自セルの端末220に対する協調送信対象の第2データ及び協調送信制御情報を協調元の基地局110に送信する。
【0049】
また、複数の基地局110、120はそれぞれ、基地局間通信部115、125とスケジューラ116、126と協調用リソース制御部118、128とを備えている。基地局間通信部115、125は、有線又は無線の通信回線を用いたX2インターフェース等の基地局間通信インターフェースを介して、自局以外の他の基地局と通信するものである。
【0050】
スケジューラ116、126はそれぞれ、各基地局110、120における処理・動作を制御する制御部117、127の一部を構成し、どの無線リソースを使用して送信するか、どの変調方式を用いて送信するか、どの符号化方式を用いて送信するかなどを決定し、前述のRLC層112、122、MAC層113、123及びPHY層114、124を制御して、データの送信を行う。例えば、協調元の基地局110のスケジューラ116は、どの協調用リソースを使用して送信するかを決定し、協調送信中において、協調元の基地局110のRLC層112、MAC層113、PHY層114を制御する。また、協調先の基地局120のスケジューラ126は、協調送信中において、協調先の基地局120のRLC層122、MAC層123、PHY層124を制御するとともに、協調元の基地局110の協調リソース制御部118を介して、協調元の基地局110のPHY層114を制御して、基地局間協調MU−MIMOの協調送信を行う。
【0051】
協調元の基地局110は、協調先の基地局120から送信される協調送信制御情報に基づいて、協調送信対象のデータの協調用リソースを遠隔的に制御するための協調用リソース制御部118を備えている。協調元の基地局110における協調用リソースは、協調用リソース制御部118を介して、協調先の基地局120に対して貸し出され、協調先の基地局120のスケジューラ126によって遠隔的に制御可能になっている。
【0052】
なお、協調先の基地局120のスケジューラ126は、協調リソース制御部128を介して、協調先の基地局120のPHY層124を制御して、基地局間協調MU−MIMOの協調送信を行う。
【0053】
図7において、協調先の基地局120は、コアノードから第2データを受信し、PDCP層121、RLC層122、MAC層123の処理を施してMAC−PDUと呼ばれるデータを生成する。(以下、第2データから生成されたMAC−PDUを「MAC−PDU2」と呼ぶ。)また、協調先の基地局120のスケジューラ126は、端末220からのフィードバック情報より、MAC−PDU2に適用する変調方式や符号化方式の情報(MCS情報)などを計算する。そして、協調元の基地局110の協調用リソース制御部118は、協調先の基地局120のMAC層123から通信回線を介して、協調送信対象のMAC−PDU2を受信し、協調元の基地局110内のPHY層114に転送する。また、協調用リソース制御部118は、協調先の基地局120のスケジューラ126から通信回線(基地局間通信インターフェース)を介して、協調送信制御情報(データ協調送信タイミングの情報、MCS情報等)を受信する。このとき、協調送信制御情報は、MAC−PDU2のヘッダ情報などに含まれていてもよい。協調用リソース制御部118は、協調先の基地局120から受信した協調送信制御情報に基づいて、協調元の基地局110内のPHY層114におけるMAC−PDU2の処理をする。具体的には、MCS情報に指定された変調方式および符号化方式でPHY層114における変調処理および符号化処理をMAC−PDU2に実施する。また、協調元の基地局110は、コアノードから第1データを受信し、PDCP層111、RLC層112、MAC層113の処理を施してMAC−PDUと呼ばれるデータを生成する。(以下、第1データから生成されたMAC−PDUを「MAC−PDU1」と呼ぶ。)また、協調元の基地局110のスケジューラ116は、端末210からのフィードバック情報より、MAC−PDU1に適用する変調方式や符号化方式の情報(MCS情報)などを計算する。そして、MCS情報に指定された変調方式および符号化方式でPHY層114における変調処理および符号化処理をMAC−PDU1に実施する。さらに、協調元基地局110のPHY層114では、上記の変調処理および符号化処理を施したMAC−PDU1およびMAC−PDU2に、上記計算した送信ウェイトを乗算し、データ協調送信タイミング情報に指定された時間にPHY層114からセル境界エリアA内の端末210に対する送信処理を行う。
【0054】
また、図7において、協調先の基地局120の協調用リソース制御部128は、前述のスケジューラ126が計算したMCS情報に指定された変調方式および符号化方式でPHY層124における変調処理および符号化処理をMAC−PDU2に実施するとともに、データ協調送信タイミング情報に指定された時間にPHY層124から自セル内の端末220およびセル境界エリアA内の端末210に対する送信処理を行う。
【0055】
なお、協調用リソース制御部128を独立に設けずに、協調用リソース制御部128の機能を、協調先の基地局120内の制御部127に組み込むように構成してもよい。同様に、協調用リソース制御部118を独立に設けずに、協調用リソース制御部118の機能を、協調元の基地局110内の制御部117に組み込むように構成してもよい。
【0056】
上記構成の通信システムに用いる基地局110、120のハードウェアは、例えば、アンテナのほか、送信増幅器、受信増幅器、無線信号処理部、ベースバンド信号処理部、有線伝送路インターフェース部、コンピュータ装置などで構成される。また、これらのハードウェア構成のうち、アンテナ、送信増幅器及び受信増幅器は前述の無線通信部に対応し、有線伝送路インターフェース部は前述の基地局間通信部に対応する。コンピュータ装置は、例えばマイクロコンピュータで構成され、前述の制御部117、127や協調用リソース制御部118、128として機能し、予め組み込まれた所定の制御プログラムに基づいて各部を制御する。特に、コンピュータ装置は、所定の制御プログラムに基づいて無線信号処理部やベースバンド信号処理部を制御することにより、例えば前述のPDCP層、RLC層、MAC層及びPHY層などの複数の通信レイヤ構造を介して、送受信のデータや信号を処理する。
【0057】
図8は、図3(b)の状態から図3(c)の状態に遷移する際の協調送信終了時の処理手順の一例を示すシーケンス図である。
図8において、協調元の基地局110は、無線通信品質情報を端末210から受信し(ステップ1)、その無線通信品質情報に基づいて、例えば基地局120の電波受信強度が、基地局110の電波受信強度より、予め定められた閾値(協調終了閾値)だけ大きくなると、端末210がセル境界エリアAから出て協調先の基地局120のセル120aのエリアに在圏するようになったと判断し、協調送信(基地局間協調MU−MIMOの協調送信)の終了を決定し(ステップ2)、協調送信終了要求を協調先の基地局120に送信する(ステップ3)。協調先の基地局120は、協調元の基地局110から協調送信要求を受信すると、協調元の基地局110から借り受けた周波数リソースを返却し、端末220の選択を解除し、協調元の基地局110に協調送信終了応答を送信し(ステップ4)、協調送信終了コマンドを端末220に送信する(ステップ5)。協調元の基地局110は、協調先の基地局120から協調送信終了応答を受信する(ステップ4)と、協調送信終了コマンドを端末210に送信する(ステップ5)。
【0058】
各端末210、220は、協調送信終了コマンドを受信すると、上記起動していた協調送信用プログラムを停止して協調送信終了処理を実行し(ステップ6)通常のデータ通信が可能な状態になると、協調送信終了コマンド成功応答を基地局110、120に送信する(ステップ7)。
【0059】
協調先の基地局120は、端末220から協調送信終了コマンド成功応答を受信すると、端末210についてデータ通信のパスを切り替えてハンドオーバするためのパス切替要求をコアノード130に送信する(ステップ8)。協調先の基地局120は、コアノード130からパス切替要求成功応答を受信すると、基地局120を介したデータ送受信のためのリンクが確立される(ステップ9)。そして、基地局120から基地局110へコンテキスト解放が送信され、端末210の基地局110から基地局120へのハンドオーバ処理が完了する。以上により、協調送信の終了処理が完了し、その後は、コアノード130から基地局120を介して端末210へデータが送信される通常のデータ送信が行われる。
【0060】
なお、上記図1図8の実施形態では、端末210、220のうち端末210のみがセル境界エリアAに在圏する場合について説明したが、次の実施形態に示すように端末210、220の両方がセル境界エリアAに在圏してもよい。
【0061】
図9は、本発明の他の実施形態に係る通信システムの構成の一例を示す説明図であり、本実施形態では、端末210、220の両方がセル境界エリアAに在圏し、基地局110と基地局120が協調し、両端末に対して基地局間協調MU−MIMOを用いた協調送信を実施している。なお、図9図11において、前述の図1図8と共通する部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0062】
なお、本実施形態では、先に基地局110のセルに在圏する端末210がセル境界エリアに移動して協調送信を開始し、協調送信中に基地局120のセルに在圏する端末220がセル境界エリアに移動して協調送信を開始した場合を仮定する。
【0063】
図9に示すように、端末210および端末220が移動してセル境界エリアAに入ると、端末210が基地局120から受信する信号(干渉波1)および端末220が基地局110から受信する信号(干渉波2)が無視できなくなり、端末210および端末220の通信特性を劣化させる。そこで、基地局110と基地局120は、端末210および端末220に信号の協調送信を開始し、端末210が基地局120から受信する信号(干渉波1)および端末220が基地局110から受信する信号(干渉波2)を抑制し、端末210および端末220における通信特性を改善するとともに、同一の無線リソースを用いて基地局120が端末220へ、基地局110が端末210へ、それぞれの通信を継続する。
【0064】
図10は、図9に示す協調送信中の処理手順の一例を示すシーケンス図である。
図10において、協調元の基地局110から協調先の基地局120へ協調送信開始通知が送受信された後、協調元の基地局110はセル境界エリアAの端末210に協調開始コマンドを送信し、協調先の基地局120は自セルに在圏する上記選択した端末220に協調開始コマンドを送信する(ステップ1)。
【0065】
端末210は、協調元の基地局110から協調送信開始コマンドを受信すると(ステップ1)、基地局110から協調送信されてくるデータを処理するための所定の協調送信用プログラムを起動して協調送信処理を開始して協調送信データを処理可能な状態になり、協調元の基地局110および協調先の基地局120からのダウンリンクの伝搬チャネルの状態を含むフィードバック情報を基地局110に送信する(ステップ2)。また、端末220は、協調先の基地局120から協調送信開始コマンドを受信すると(ステップ1)、基地局120から協調送信されてくるデータを処理するための所定の協調送信用プログラムを起動して協調送信処理を開始して協調送信データを処理可能な状態になり、協調元の基地局110および協調先の基地局120からのダウンリンクの伝搬チャネルの状態を含むフィードバック情報を基地局120に送信する(ステップ2)。協調先の基地局120は、端末220から受信したフィードバック情報を、基地局間通信インターフェースを介して協調元の基地局110に送信する(ステップ3)。
【0066】
協調元の基地局110は、端末210、220それぞれのフィードバック情報を受信すると、データ協調送信時にMIMO伝送方式で端末210、220に送信するデータに適用する送信ウェイトの値を計算し(ステップ4)、協調先の基地局120に送信する(ステップ5)。この送信ウェイトの値は、例えば、協調元の基地局110からセル境界エリアAの端末210に送信される送信信号が、セル境界エリアAの端末210において協調先の基地局120から送信される送信信号(干渉波1)と逆位相になり、且つ、協調先の基地局120からセル境界エリアAの端末220に送信される送信信号が、セル境界エリアAの端末220において協調元の基地局110から送信される送信信号(干渉波2)と逆位相になるように計算される。この送信ウェイトを用いることで、端末210において干渉波1が抑制されて下り信号(基地局110から端末210へ送信される第1データ)及び、端末220において干渉波2が抑制されて下り信号(基地局120から端末220へ送信される第2データ)の通信品質を改善することができる。
【0067】
協調元の基地局110は、端末210に対する希望データである協調送信対象の第1データをコアノード130から受信する(ステップ6)と、その第1データを複製して、所定の協調送信制御情報(協調送信制御情報1)とともに、協調先の基地局120に送信する(ステップ7)。また、協調先の基地局120は、端末220に対する希望データである協調送信対象の第2データをコアノード130から受信する(ステップ8)と、その第2データを複製して、所定の協調送信制御情報(協調送信制御情報2)とともに協調元の基地局110に送信する(ステップ9)。
【0068】
なお、協調先の基地局120から協調元の基地局110への第2データの送信及び、協調元の基地局110から協調先の基地局120への第1データの送信には、LTEの基地局間接続の標準インターフェースであるX2インターフェース等の基地局間通信インターフェースを介して、GTPv2などのトンネリングプロトコルを用いることができる。また、協調送信制御情報1には協調先の基地局120の協調用リソースを遠隔に制御するためのデータ協調送信タイミングおよびMCS情報を含んでもよい。また、協調送信制御情報2には協調元の基地局110の協調用リソースを遠隔に制御するためのデータ協調送信タイミングおよびMCS情報を含んでもよい。
【0069】
次に、協調元の基地局110は、第1データと、協調先の基地局120から受信した第2データとに、送信ウェイトを乗算して、送信信号を生成し(ステップ10)、協調先の基地局120によって協調用リソースが遠隔制御されることにより、上記予め設定した所定の協調用リソースで上記データ協調送信タイミングに送信信号をセル境界エリアAの端末210および端末220に送信する(ステップ12)。一方、協調先の基地局120は、協調元の基地局110から受信した第1データと、第2データとに、協調先の基地局110から受信した送信ウェイトを乗算して、送信信号を生成し(ステップ11)、協調元の基地局110によって協調用リソースが遠隔制御されることにより、上記予め設定した所定の協調用リソースで上記データ協調送信タイミングに送信信号をセル境界エリアAの端末210および端末220に送信する(ステップ12)。
【0070】
なお、本実施形態では、先に端末210への協調送信が決定したため、基地局110が協調元の基地局として機能し、基地局120が協調先の基地局として機能しているが、協調元基地局や協調先基地局の機能は基地局毎にあらかじめ決められているものではない。例えば、先に基地局120のセルに在圏する端末220がセル境界エリアに移動して協調送信を開始し、協調送信中に基地局110のセルに在圏する端末210がセル境界エリアに移動して協調送信を開始した場合、端末220に対して第2の基地局120が協調開始を判断する協調元基地局となり、第1の基地局110が協調先基地局となる。このように、各基地局110、120は、端末毎に協調元基地局の機能と協調先基地局の機能の両方を有することができる。
【0071】
上記図10の協調送信では、協調元基地局110と協調先基地局120がGPSなどにより時刻同期されていれば、協調元の基地局110及び協調先の基地局120から、協調送信制御情報に含まれるデータ協調送信タイミングで協調送信を行うことができる。しかも、協調先の基地局120からセル境界エリアAの端末210に干渉波1として届いた第2データの送信信号を、協調元の基地局110から所定の送信ウェイトを乗算して送信された第2データの逆位相の送信信号によりキャンセルすることができ、且つ、協調元の基地局110からセル境界エリアAの端末220に干渉波2として届いた第1データの送信信号を、協調先の基地局120から所定の送信ウェイトを乗算して送信された第1データの逆位相の送信信号によりキャンセルすることができるので、セル境界エリアAの端末210および端末220における基地局間干渉を抑制することができる。
【0072】
末210および端末220において、協調元の基地局110および協調先の基地局120からの伝搬チャネルの状態は刻一刻と変化する情報である。従って、端末210および端末220からのフィードバック情報は比較的短い周期で送信される。例えば、LTEでは、CSIフィードバックは1ミリ秒ごとに端末から基地局へ送信される。従って、図10に示す協調送信中の処理手順は、基地局間協調MU−MIMOの協調送信をなっている間は、端末210および端末220からフィードバック情報が受信されるたびに繰り返し実施される。以上により、刻一刻と変化する伝搬チャネルの状態に合わせて最適なMCS情報や送信ウェイトを計算することで、基地局間協調MU−MIMOの協調送信を実行することができる。
【0073】
図11は、上記協調送信中の協調元の基地局110及び協調先の基地局120の通信レイヤ構造の一例を示す機能ブロック図である。なお、図7と共通する部分については説明を省略する。
図11において、協調元の基地局110は、コアノードから第1データを受信し、PDCP層111、RLC層112、MAC層113の処理を施してMAC−PDU1を生成する。生成されたMAC−PDU1は複製され、通信回線(基地局間通信インターフェース)を介して協調先の基地局120へ送信される。また、協調先の基地局120は、コアノードから第2データを受信し、PDCP層121、RLC層122、MAC層123の処理を施してMAC−PDU2を生成する。生成されたMAC−PDU2は複製され、通信回線(基地局間通信インターフェース)を介して協調元の基地局110へ送信される。
【0074】
協調元の基地局110の協調用リソース制御部118は、協調先の基地局120のMAC層123から通信回線(基地局間通信インターフェース)を介して、協調送信対象のMAC−PDU2を受信し、協調元の基地局110内のPHY層114に転送する。また、協調用リソース制御部118は、協調先の基地局120のスケジューラ126から通信回線(基地局間通信インターフェース)を介して、協調送信制御情報2(データ協調送信タイミングの情報、MCS情報等)を受信する。このとき、協調送信制御情報2は、MAC−PDU2のヘッダ情報などに含まれていてもよい。協調用リソース制御部118は、協調先の基地局120から受信した協調送信制御情報2に基づいて、協調元の基地局110内のPHY層114におけるMAC−PDU2を処理する。具体的には、MCS情報に指定された変調方式および符号化方式でPHY層114における変調処理および符号化処理をMAC−PDU2に実施する。また、協調元の基地局110のスケジューラ116は、端末210からのフィードバック情報より、MAC−PDU1に適用するMCS情報などを計算する。そして、MCS情報に指定された変調方式および符号化方式でPHY層114における変調処理および符号化処理をMAC−PDU1に実施する。さらに、上記変調処理および符号化処理が施されたMAC−PDU1およびMAC−PDU2に上記計算した送信ウェイトを乗算し、データ協調送信タイミングにPHY層114からセル境界エリアA内の端末210および端末220に対する送信処理を行う。
【0075】
また、協調先の基地局120の協調用リソース制御部128は、協調元の基地局110のMAC層113から通信回線(基地局間通信インターフェース)を介して、協調送信対象のMAC−PDU1を受信し、協調先の基地局120内のPHY層124に転送する。また、協調用リソース制御部128は、協調元の基地局110のスケジューラ116から通信回線(基地局間通信インターフェース)を介して、協調送信制御情報1(MCS情報等)を受信する。このとき、協調送信制御情報1は、MAC−PDU1のヘッダ情報などに含まれていてもよい。協調用リソース制御部128は、協調元の基地局110から受信した協調送信制御情報1に基づいて、協調先の基地局120内のPHY層124におけるMAC−PDU1を処理する。具体的には、MCS情報に指定された変調方式および符号化方式でPHY層124における変調処理および符号化処理をMAC−PDU1に実施する。また、協調先の基地局120のスケジューラ126は、端末220からのフィードバック情報より、MAC−PDU2に適用するMCS情報などを計算する。そして、MCS情報に指定された変調方式および符号化方式でPHY層124における変調処理および符号化処理をMAC−PDU2に実施する。さらに、上記変調処理および符号化処理を施されたMAC−PDU1およびMAC−PDU2に基地局110から受信した上記送信ウェイトを乗算し、データ協調送信タイミングにPHY層124からセル境界エリアA内の端末210および端末220に対する送信処理を行う。
【0076】
図10の例では、ステップ4において、協調元の基地局が送信ウェイトの計算を行っているが、図12に示すように、協調先の基地局が送信ウェイトの計算を行ってもよい。図12の例では、ステップ3において協調元の基地局110が協調先の基地局120に端末210から受信したフィードバック情報を送信し、ステップ4において協調先の基地局120において送信ウェイトを計算し、ステップ5において計算した送信ウェイトを協調先の基地局120から協調元の基地局110へ送信することで、同様の効果を実現できる。
【0077】
また、上記実施形態では、協調元の基地局110が、協調先の基地局120に協調送信開始要求を送信し、その協調送信開始要求を受信した協調先の基地局120から、協調用リソースの候補である空きリソースの情報を含む協調送信開始応答を受信し、その協調送信開始応答に基づいて協調用リソースを決定しているが、他の方法で協調用リソースを決定してもよい。
【0078】
例えば、協調元の基地局110が、協調先の基地局120に協調用リソースの候補である空きリソースの情報を含む協調送信開始要求を送信し、その協調送信開始要求を受信した協調先の基地局120から、前記協調用リソースの候補について使用可能か否かを判断した判断結果を含む協調送信開始応答を受信し、その協調送信開始応答に基づいて協調用リソースを決定してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、前記協調用リソースの決定、貸し出し及び借り受けを協調送信開始時に行っているが、予め設定した所定のタイミングに定期的に行うようにしてもよい。例えば、前記協調用リソースの決定、貸し出し及び借り受けを、基地局間通信の時間(数m秒)よりも十分に長いタイミングで定期的に(例えば、1秒、5秒又は10秒ごとに)行うようにしてもよい。
【0080】
また、前記協調用リソースの決定、貸し出し及び借り受けは、端末210との間の無線通信の品質を示すチャネル品質指標(CQI:Channel Quality Indicator)に基づいて行ってもよい。このCQIは、複数の無線通信チャネル(複数の周波数)ごとに、端末210が無線通信可能な基地局との間の無線通信チャネルの品質を示すものであり、端末210からのフィードバック情報に含まれる。この端末210から受信したCQIに基づいて、例えば各無線通信チャネル(周波数)のCQIの値が所定の範囲よりも大きく変化したか否かを判断する。そして、前記CQIの値が所定の範囲よりも大きく変化したタイミングで、協調送信に最適な無線通信チャネル(周波数)のリソースに切り替えるように前記協調用リソースの決定、貸し出し及び借り受けを行う。
【0081】
以上、上記実施形態によれば、セル境界エリアAに在圏する端末210での干渉を抑制しつつ、その端末210を含む複数の端末210、220に対して、同一の無線リソースを用いて、複数の基地局110、120からデータを効率よく協調送信することができる。また、セル境界エリアAに複数の端末210、220が在圏する場合も、そのセル境界エリアAに在圏する端末210、220での干渉を抑制しつつ、その端末210、220を含む複数の端末に対して、同一の無線リソースを用いて、複数の基地局110、120からデータを効率よく協調送信することができる。
また、上記実施形態によれば、協調先の基地局120のセルに在圏する複数の端末220、221、222のうち、セル境界エリアAの端末210に対する干渉が最も弱い送信信号が協調先の基地局120から送信される端末220を、協調送信対象の端末として選択することにより、データ協調送信時におけるセル境界エリアAの端末210での基地局間干渉をより確実に低減できる。また、協調先の基地局120は、その基地局120のセルに在圏している複数の端末のGPSなどの位置情報に基づいて協調送信対象の端末220を選択することにより、端末選択処理が簡易になり、複数の基地局110、120からのデータ協調送信を速やかに開始することができる。
上記実施形態によれば、協調元の基地局110及び協調先の基地局120はそれぞれ複数のアンテナを用いるMIMO伝送方式で協調送信を行い、干渉抑制パラメータとして、複数の送信アンテナそれぞれから送信する送信信号に乗算される重み係数である送信ウェイトを用いている。この送信ウェイトを、セル境界エリアAに在圏する端末210に対して送信する第1データ及び第2データの送信信号に適用することにより、セル境界エリアAの端末210において協調先の基地局120から送信される第2データの送信信号と逆位相の送信信号を簡易に且つ確実に生成することができる。
【0082】
また、上記実施形態によれば、協調元の基地局110が各基地局110、120における協調用リソースを一元的に制御できるので、各基地局110、120がそれぞれ協調用リソースを個別に制御する場合に比して、各基地局110、120からの協調送信に用いる協調用リソースの管理をより確実に行うことができる。しかも、協調元の基地局110が協調用リソースを一元的に制御可能な状態で、各基地局110、120から複数の端末210、220へのデータ協調送信を繰り返し行うことができる。よって、データを協調送信するたびに基地局110、120間のネゴシエーションによって協調用リソースの調整を行う場合に比して、基地局110、120間の通信遅延の影響を受けにくく、協調送信の効率が向上する。
また、上記実施形態によれば、前記協調用リソースの決定、貸し出し及び借り受けを、前記協調送信を可能にする協調送信開始時に行うことにより、その協調送信開始時における無線通信リソースの空き状態に基づいて最適な協調用リソースを使用できるので、データの協調送信を確実にすることができる。
また、上記実施形態によれば、前記協調用リソースの決定、貸し出し及び借り受けを、予め設定した所定のタイミングに定期的に行うことにより、協調送信により適した協調用リソースに更新することができるため、データの協調送信をより確実にすることができる。
また、上記実施形態によれば、前記協調用リソースの決定、貸し出し及び借り受けを、基地局110、120と端末210、220との間の無線通信の品質情報(CQI)に基づいて行うことにより、基地局−端末間の無線通信状況の変化に応じて、前記協調用リソースを、協調送信に最適な無線通信リソースに更新することができる。
また、上記実施形態によれば、協調元の基地局110は、協調先の基地局120に協調送信開始要求を送信し、その協調送信開始要求を受信した協調先の基地局120から、協調用リソースの候補である空き無線通信リソースの情報を含む協調送信開始応答を受信し、その協調送信開始応答に基づいて前記協調用リソースを決定する。このように協調先の基地局120における協調用リソースの候補である空き無線通信リソースの情報を含む協調送信開始応答に基づいて協調用リソースを決定することにより、協調元の基地局110は、決定した協調用リソースの情報を協調先の基地局120に送信する必要がなくなる。従って、協調送信の初期化処理の効率化を図ることができる。特に、この場合は、協調先の基地局120における協調用リソースの候補である空き無線通信リソースを協調元の基地局110に提示するため、協調用リソースとして優先的に設定することができる。
また、上記実施形態によれば、協調元の基地局110は、協調先の基地局120に協調用リソースの候補を含む協調送信開始要求を送信し、その協調送信開始要求を受信した協調先の基地局120から、その協調用リソースの候補について使用可能か否かを判断した判断結果を含む協調送信開始応答を受信し、その協調送信開始応答に基づいて前記協調用リソースを決定してもよい。この場合も、協調元の基地局110は、決定した協調用リソースの情報を協調先の基地局120に送信する必要がなくなる。従って、協調送信の初期化処理の効率化を図ることができる。特に、この場合は、協調元の基地局110の空き無線通信リソースを協調用リソースの候補として協調先の基地局120に提示することができるため、協調元の基地局110における空き無線通信リソースを、協調用リソースとして優先的に設定することが可能になる。
【0083】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに移動通信システム、基地局及び通信端末装置(端末、ユーザ端末装置、移動局)の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0084】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、Node B、通信端末装置、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0085】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる各部は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置や記憶装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0086】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0087】
10 通信システム
110 協調元の基地局(第1の基地局)
120 協調先の基地局(第2の基地局)
111、121 データ収斂プロトコル層(PDCP層)
112、122 無線リンク制御層(RLC層)
113、123 メディアアクセス制御層(MAC層)
114、124 物理層(PHY層)
115、125 基地局間通信部
116、126 スケジューラ
117、127 制御部
118、128 協調用リソース制御部
130 コアノード
210、220、221、222 端末
A セル境界エリア
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】
【特許文献1】特開2012−178822号公報
【0089】
【非特許文献1】厳 宝山、岡廻 隆生、林 秀樹、「複数基地局間協調送信のためのネットワーク制御システムの基本設計と実装」、電気通信学会2010年電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集、119頁
【要約】
【課題】複数の基地局から複数の通信端末に対して、同一の無線リソースを用いてデータを協調送信することができる通信システム、基地局及び通信制御方法を提供する。
【解決手段】第1の基地局は、セル境界エリアに第1の通信端末が在圏しているとき、第1の通信端末における第2の基地局からの干渉を抑制するように第1の基地局からの送信信号に適用する干渉抑制パラメータの値を取得する。第2の基地局は、第2の基地局のセルに在圏している第2の通信端末に対する希望データを複製して第1の基地局に送信する。第1の基地局は干渉抑制パラメータの値と第1の通信端末に対する希望データと第2の基地局から受信した第2の通信端末に対する希望データ及びデータ協調送信の制御情報とに基づいて送信信号を生成し、第2の基地局は第2の通信端末に対する希望データの送信信号を生成する。各基地局は所定のデータ協調送信タイミングで送信信号を協調送信する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
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