(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る排水処理設備の一例を示すが、この排水処理設備は、原水を処理して、フロックやスラッジなどの固形成分を生成し、フロックを沈殿分離する沈殿処理系500と、沈殿処理系500でフロックを分離した上澄み水を濾過し、濾過処理水を得る濾過処理系600と、沈殿処理系500及び濾過処理系600で処理して生成されるスラッジをスラリーとして処理するスラリー処理系700と、濾過処理水を最終的に中和する中和処理系800とを備える。以下、沈殿処理系500、濾過処理系600、スラリー処理系700、及び中和処理系800の構成について説明する。
【0019】
沈殿処理系500は、高濃度原水槽10、濃度センサー12、制御部13、原水槽1、反応槽2、及び沈殿分離装置3を備え、濾過処理系600は濾過分離装置4を備え、スラリー処理系700は、スラリー槽5と脱水機6を備え、中和処理系800は、中和槽7を備える。なお、濾過処理系600は、原水の種別に応じてその要否が異なる。スラリー処理系700と中和処理系800は種別の異なる原水に対する共通の処理系として設置されてもよい。
【0020】
高濃度原水槽10は、処理対象となる金属成分の濃度が、予め定められた濃厚・半濃厚と分類される原水(以下では高濃度原水と呼ぶ)を一時的に貯留する。濃度センサー12は、高濃度原水中の金属成分の濃度を計測し、計測結果を制御部13に送信する。制御部13は、濃度センサー12から得た計測結果に従って、高濃度原水を原水槽1に分注移送する制御を行う。原水の分注移送とは、原水槽1への原水の移送を、複数回に分割して間欠的に実行する、あるいは、移送量を制御して実行することである。制御部13は、図示を省略したポンプの駆動のON/OFF制御を行うか、又は
図1に示す流量制御弁11を制御することにより原水の移送量を制御する。これにより、高濃度原水が原水槽1に分注移送される。
【0021】
原水槽1は、排水処理設備の処理対象となる原水を貯留する。原水槽1は、原水中に含まれる金属成分に対応して、個別に設置される。従って、
図1に示す排水処理設備のうち、沈殿処理系500は、原水の種別毎に装備される。原水は、含まれる金属成分が通常濃度である供給源と濃厚・半濃厚に分類される供給源とがわかっている場合がある。このような場合は、
図1に示すように、通常濃度原水については連続して原水槽1に移送され、高濃度原水については、既に説明したように、制御部13の制御により、高濃度原水槽10を介して、原水槽1に分注移送される。通常濃度か濃厚・半濃厚かは、当該施設毎に定める基準による。
【0022】
この分注移送により、原水槽1内に貯留されている原水中の金属成分の濃度の変化の程度は、分注移送を行わない場合と比べると、小さくなる。即ち、濃度の最大値は、より低くなる。
【0023】
反応槽2は、pH値を制御することにより、原水槽1から、図示を省略した第1配管を介して移送された原水の中の金属成分を、水に不溶の固形成分である金属水酸化物にするための原水の貯留槽である。反応槽2では、貯留されている原水のpH値を制御するために、苛性ソーダなどのアルカリ剤が添加される。pH値の制御処理がなされた水は、反応処理水として、固形成分を分離するために沈殿分離装置に移送される。なお、反応槽2では固形成分を分離しやすくするために凝集剤等も添加される。また、原水中に含まれる金属成分の種類によっては、金属酸化物が生成されやすくなるように酸化又は還元剤が添加されることもある。原水に対して複数の反応処理を実行するために、反応槽2は、原水の種別に応じて、複数の異なる反応槽を含んで構成されることもある。分注移送制御により、原水槽1から反応槽2に移送される原水中の金属成分の濃度の最大値は、分注移送の制御を行わない場合と比べると、低くなる。そのため、高濃度の原水を処理する場合、反応槽2で生成される固形成分の生成量は、分注移送の制御を行わない場合に比べて、小さく抑えられる。
【0024】
沈殿分離装置3は、反応槽2から、図示を省略した第2配管を介して移送された反応処理水中の金属水酸化物を含む固形成分を沈殿させ、沈殿分離汚泥(スラッジ)として分離し、上澄み水を生成する装置である。スラッジは、スラリーとしてスラリー処理系700に移送され、上澄み水は濾過処理系600に移送される。沈殿分離装置3は、一次分離槽30とバッファー槽32とを備える。
図2に一次分離槽30とバッファー槽32の構成例を示す。沈殿分離装置3は、少なくとも一槽の一次分離槽30と、一次分離槽3の後に設置される少なくとも一槽のバッファー槽32とを備える。前記一次分離槽30とバッファー槽32とは、それぞれの槽数の組み合わせがあり、例えば、原水の種類や、後述する濾過分離装置の膜の密度・その他の精度などに対応してどのような組み合わせがよいかが選択される。
【0025】
一次分離槽30は、反応処理水を貯留して、重力により反応処理水中の固形成分を沈殿させるところである。一次分離槽30は、
図2に示すように、貯水容器300と、貯水容器300の上部に設けられた上澄み水貯留容器301と、傾斜板302とを備える。上澄み水貯留容器301内には上澄み水貯留室3010が設けられている。上澄み水貯留室3010を除く、貯水容器300内の領域は分離室3001である。傾斜板302は、分離室3001内に貯留された反応処理水中の固形成分の沈殿処理を効率的に実行するために、通常は複数個、分離室3001内に設置される。固形成分は、沈殿により、スラッジ303として貯水容器300の底部3000に堆積する。従って、貯水容器300に貯留された貯留水の貯留水面近傍の水は、固形成分が沈殿により分離された上澄み水となる。上澄み水貯留容器301の内側の容器壁は貯水容器300の容器壁より低く作られている。そのため、貯水容器300内の貯留水面が上澄み水貯留容器301の内側の容器壁の高さを超えると、上澄み水は、堆積物、即ちスラッジ303に影響を与えることなく上澄み水貯留容器301内に流入し貯留される。
【0026】
一次分離槽30内に移送される反応処理水中の固形成分の濃度は、分注移送により、分注移送を行わなかった場合に比べて低くなる。従って、上澄み水に固形成分が混入する恐れも、分注移送を行わなかった場合に比べて小さくなる。
【0027】
バッファー槽32は、一次分離槽30から、図示を省略した第3配管を介して移送されてきた上澄み水を貯留し、貯留した上澄み水を、後続の濾過処理系600に供給する貯水容器320を備える。一次分離槽30からバッファー槽32への上澄み水の移送は重力を利用した移送、又はポンプによる移送のいずれでもよい。上澄み水は、貯水容器320のバッファー貯水室3201に貯留される。バッファー槽32に貯留された上澄み水は、バッファー槽32から、重力又はポンプ等を利用して濾過処理系600に移送される。バッファー貯水室3201内に貯留される上澄み水は、一次分離槽30の上澄み水貯留容器301内の上澄み水が移送されたものであるから、固形成分の量は低減されている。
【0028】
濾過処理系600は、バッファー槽32から、図示を省略した第4配管を介して移送されてきた上澄み水を処理する濾過分離装置4を備える。濾過分離装置4は、沈殿分離装置3の上澄み水に含まれる沈殿分離装置3で分離除去できなかった固形成分を除去するための濾過装置である。濾過膜には、除去対象とする固形成分の大きさに応じて、MF膜やUF膜などが選択使用される。濾過処理により生成されるスラリー(膜分離濃縮液)は、沈殿分離装置3で分離されたスラッジと合わせて、二系統で、スラリーとして、図示を省略した第6配管を介して、スラリー処理系700に移送される。一方、濾過により固形成分が除去された上澄み水である濾過処理水は、中和処理系800に移送される。
【0029】
スラリー処理系700のスラリー槽5は、沈殿処理系500から、第6配管を介して移送される二系統からのスラリーを一時的に貯留し、脱水機6は、スラリー槽5から移送されたスラリーを脱水する。脱水機6により、固形物と抽出水(清澄水)とが得られる。固形物は、人体に有害な金属成分を含むため、例えば産業廃棄物として廃棄される。この金属成分が産業利用可能な金属成分を含む場合は、それらの金属成分を抽出する処理に付されてもよい。抽出水は、後述する酸・アルカリ系の原水を処理する排水処理設備に還流されて再度処理される。
【0030】
中和処理系800は、後述する酸・アルカリ系原水の処理系の一部であり、濾過分離装置4から、第5配管を介して移送されてきた濾過処理水を処理する中和槽7を備える。中和槽7は、前述の如く、濾過分離装置4からの濾過処理水を一時的に貯留し、一般環境中に放流するために必要なpH値に中和する働きがある。
【0031】
この排水処理設備を使って実行される排水処理方法をフロー図の形で
図3に示す。排水処理は、沈殿処理系500を使用して原水の沈殿処理を実行する沈殿処理工程S1と、沈殿処理工程S1の後、濾過処理系600を使用して実行する濾過処理工程S2と、沈殿処理工程S1及び濾過処理工程S2で生成されるスラリーに対して、スラリー処理系700を使用して実行するスラリー処理工程S3と、濾過処理工程S2で生成される濾過処理水に対して、中和処理系800を使用して実行する中和処理工程S4とで構成される。ただし、原水の種別に応じて濾過処理工程S2は省かれることがあり、スラリー処理工程S3と、中和処理工程S4とは、複数の沈殿処理工程S1が実行された後にまとめて実行されてもよい。
【0032】
沈殿処理工程S1では、対象となる原水を原水槽1に分注移送の選択も含めて供給する(ステップS10)。通常濃度と見なされる原水は、原水槽1に連続して供給される。一方高濃度原水槽10内の高濃度原水については、制御部13は、濃度センサー12により計測された、高濃度原水槽10内の高濃度原水の濃度が、予め設定された値を超えない場合は、原水を原水槽1に連続的に供給し、予め設定された値を超える場合は、その濃度に応じて原水槽1への原水の移送流量を制御するか、又は、移送をバッジ処理にする場合は、移送の時間間隔を制御する。即ち、濃度が高くなるに従って、原水槽1への高濃度原水の供給量が低減される。濃度の増加による高濃度原水の供給量の低減の程度は、排水処理設備の運用に応じて予め自由に設定できる。原水槽1に供給された原水は、反応槽2に移送され、ここで、金属成分の不溶化処理がなされる(ステップS11)。不溶化処理とは、原水に苛性ソーダなどのアルカリ剤を注入することにより、所定の数値範囲になるように原水のpH値を制御することである。このpH値制御により、原水中に含まれ、分離の対象となる金属成分は、水に不溶な水酸化物、即ち固形成分になる。なお、反応槽2には塩化第2鉄などの凝集剤を添加する。凝集剤の添加により固形成分は凝集して大きくなり、沈殿しやすくなる。
【0033】
このような処理を行った後の反応槽2の貯留水は、反応処理水として沈殿分離装置3の一次分離槽30を構成する貯水容器300に移送され、そこで重力を利用して反応処理水中の固形成分が沈殿分離される(ステップS12)。その結果、貯水容器300の底部3000近傍には固形成分であるスラッジ303が堆積し、貯水容器300の貯留水の上方には固形成分の少ない上澄み水が存在する。貯水容器300内に移送される反応処理水の量が大きくなるにつれて貯留水面が上昇する結果、上澄み水は上面から上澄み水貯留容器301の上澄み水貯留室3010内に流れ込む。このとき貯水容器300の底部近傍には水流の影響はないため、底部3000に堆積したスラッジには、これを攪拌するような力は働かない。従って、上澄み水貯留室3010内に流れ込む上澄み水には、巻き上げに伴うスラッジは含まれない。
【0034】
また、原水槽1に供給される原水に、高濃度原水が含まれる場合には、分注移送を行うことにより、分注移送を行わない場合に比べて、原水槽1に貯留された原水中の金属成分の濃度は、低くなる。そのため、反応槽2内で生成される固形成分の濃度は、分注移送により低減する。従って、固形成分の濃度が低い反応処理水を沈殿分離装置で処理した結果得られる上澄み水に残存する固形成分の量も、分注移送しない場合と比べると、小さくなる。
【0035】
ステップS12で実行される一次分離槽30での沈殿分離処理では、スラッジと上澄み水とが生成される。これらはいずれも処理の対象となるが、スラッジの処理は、一定周期、又はスラッジの堆積状況に応じて実行される。スラッジ又は上澄み水という処理の対象に応じて(ステップS13)、それ以降の工程が異なる。
【0036】
ステップS13で、スラッジの処理がなされる場合(ステップS13;YES)は、スラッジはスラリーとして、後述するスラリー処理工程S3で処理される。
【0037】
一方、ステップS13で、上澄み水の処理がなされる場合(ステップS13;NO)は、上澄み水貯留室3010内の上澄み水は、バッファー槽32の貯水容器320に移送され、貯留される(ステップS14)。上澄み水貯留室3010内の上澄み水は、分離室3001の底部3000近傍に堆積しているスラッジ303とは隔絶されているので、この移送においても、バッファー槽32に移送される上澄み水に、分離室3001の底部3000近傍に堆積したスラッジが巻き上げられて混入するということが避けられる。ステップS14の処理の後は濾過処理工程S2に移行する。
【0038】
濾過処理工程S2では、バッファー槽32のバッファー貯水室3201内に貯留した上澄み水を濾過分離装置4に通水し、この上澄み水に分離されずに残っている微小な固形成分を濾過して分離する(ステップS20)。その結果、濾過分離装置4では濾過されて濾過膜上に残った固形成分と、濾過膜による濾過で固形成分が除去された濾過処理水とが得られる。濾過膜は使用時間と共に目詰まりが進行して濾過効率が低下するので、所定の頻度で逆洗浄して濾過膜上に付着した固形成分を除去しなければならない。この逆洗浄処理のときは濾過分離装置4でスラリーが生成される。従って、ステップS20の後、逆洗浄処理、即ち濾過膜のクリーニング処理を実行するかどうか、を判断し(ステップS21)、逆洗浄処理を実行するときは(ステップS21;YES)、スラリーが発生するため、スラリー処理工程S3に移行する。逆洗浄処理を実行しないとき(ステップS21;NO)は濾過処理水を次の中和処理工程S4に移送する。
【0039】
スラリー処理工程S3では、沈殿分離処理工程ステップS12で生成されたスラッジを処理する際に(ステップS13;YES)発生するスラリー及び/又は濾過分離装置4の逆洗浄処理の実行時(ステップS21;YES)に生成されるスラリーをスラリー槽5に供給する(ステップS30)。次に、スラリー槽5内のスラリーは脱水機6に供給され脱水処理される(ステップS31)。その結果、脱水処理によりスラリーから抽出された抽出水と、脱水後に残る固形物とが得られる。固形物は、例えば産業廃棄物として処理基準に従って廃棄処分を行う。固形物は、含有する金属成分を抽出するために有価金属抽出工程に移送されてもよい。抽出水は定められた基準に従って処理されるが、通常はpH値を所定の範囲内の数値にするための処理がなされていないため、酸・アルカリ系の排液処理用の原水を処理するための原水槽1に還流させ、その後、pH値を所定の範囲内の数値にするための処理が行われる。
【0040】
中和処理工程S4では、濾過分離装置4で得られる濾過処理水が、ステップS21の「NO」に対応して、中和槽7に供給される(ステップS40)。中和槽7では、酸又はアルカリ剤を添加して濾過処理水のpH値を環境放出可能な値にまで調整する中和処理が実行される(ステップS41)。中和処理が終わった濾過処理水は処理完了水として、通常は一般環境に放出されるが、他の用途に再利用してもよい。
【0041】
以上、説明したように、この排水処理設備では、高い濃度で金属成分を含む原水を、金属成分の濃度に従って、原水槽1に分注移送することにより、反応処理水中の固形成分の濃度が低減するため、沈殿分離装置3の上澄み水に含まれる固形成分の濃度が低減する。従って、沈殿分離装置3の後に、例えば濾過分離装置4を設置して上澄み水を更に濾過する場合に、分注移送を行わない場合に比べて、濾過膜の目詰まりの程度が軽減し、濾過分離装置4の逆洗浄処理や濾過膜の交換処理の頻度が低減するという効果を奏することができる。濾過分離装置4を後置しない場合であっても、上澄み水中の、通常、人体に有害と考えられる金属成分を含む固形成分の濃度が低減する為、処理水の一般環境放出や他の用途への再利用が可能になるという効果を奏することができる。
【0042】
なお、沈殿分離装置3の一次分離槽30が、
図2に示すように構成された上澄み水貯留容器を備えたので、一次分離槽30から移送される上澄み水に含まれる固形成分の量が更に低減する。
【0043】
図1に示す排水処理設備を実際の排水処理システムとして展開した例を
図4〜
図10に示す。
図4は排水処理システムの概略構成を示す図である。
【0044】
図4に例示する排水処理システム1000は、
図1の沈殿処理系500に対応したものを3系統、濾過処理系600に対応したものを2系統備える。
図1の沈殿処理系500に対応した3系統は、それぞれ、Ni、Cuを含む原水の沈殿処理を行うNi、Cu系沈殿処理系510、クロムを含む原水の沈殿処理を行うクロム系沈殿処理系520、及び酸・アルカリ系に3価クロム、無電解Niを含む原水の沈殿処理を行う3価クロム・酸・アルカリ系沈殿処理系530である。
図1の濾過処理系600に対応した2系統は、それぞれ、Ni、Cu系濾過処理系610とクロム系濾過処理系620である。スラリー処理系700と中和処理系800は、それぞれ1系統のみであり、3系統の沈殿処理系、及び2系統の濾過処理系に対して共通で使用される。
【0045】
Ni、Cu系沈殿処理系510で得られた上澄み水はNi、Cu系濾過処理系610で濾過され、濾過処理水Aとして中和処理系800に供給される。同様に、クロム系沈殿処理系520で得られた上澄み水はクロム系濾過処理系620で濾過され、濾過処理水Bとして中和処理系800に供給される。3価クロム・酸・アルカリ系沈殿処理系530で得られた上澄み水は中和処理系800に供給される。Ni、Cu系沈殿処理系510及びNi、Cu系濾過処理系610で得られるスラリーを合わせたスラリーA、クロム系沈殿処理系520及びクロム系濾過処理系620で得られるスラリーを合わせたスラリーB、及び3価クロム・酸・アルカリ系沈殿処理系530で得られるスラリーCは、それぞれスラリー処理系700に供給され、固形物と抽出水とが得られる。抽出水は還流水Aとして処理用に3価クロム・酸・アルカリ系沈殿処理系530に還流される。中和処理系800は、供給された濾過処理水A、B及び上澄み水を中和して処理完了水として一般環境に放出する。
【0046】
図5は、Ni、Cu系沈殿処理系510とこれに関連するNi、Cu系濾過処理系610及びスラリー処理系700の構成を示す。
図6は、クロム系沈殿処理系520とこれに関連するクロム系濾過処理系620の構成を示す。
図7は、
図4に示した3価クロム・酸・アルカリ系沈殿処理系530とこれに関連する中和処理系800の構成を示す。
【0047】
まず、
図5について説明する。
図5に示すNi、Cu系沈殿処理系510は、金属成分としてNi、Cuを含む原水(Ni、Cu系原水)の金属成分を沈殿処理により分離する設備で、Ni、Cu系原水を貯留するNi、Cu系原水槽1Aと、原水中に含まれるNi、Cu成分から水に不溶の金属水酸化物を生成するNi、Cu系反応槽2Aと、Ni、Cu系反応槽2Aで生成された金属水酸化物を含む固形成分を沈殿処理により分離して上澄み水を取り出す沈殿分離装置3Aとを備える。
【0048】
Ni、Cu系原水槽1Aは、
図1の原水槽1に対応するもので、金属成分としてNi、Cuを含む原水を、貯留する。なお、原水は、含まれる金属成分の濃度に応じて、Ni、Cu系原水槽1Aに分注移送される。
【0049】
Ni、Cu系反応槽2Aは、
図1の反応槽2に対応し、Ni、Cu系原水槽1Aから供給される原水中に含まれるNi、Cu成分を水に対して不溶な金属水酸化物にするための原水の貯留槽である。この反応を促進するために、苛性ソーダが加えられ、pH値が調整されるとともに、生成された金属水酸化物を凝集させて沈殿しやすくするための凝集剤として塩化第二鉄が添加される。Ni、Cu系反応槽2A内の原水は、上記の添加剤の添加後には、金属水酸化物等の固形成分を含む反応処理水となり、沈殿分離装置3Aに移送される。分注移送により、反応処理水中の固形成分の濃度は低減する。
【0050】
沈殿分離装置3Aは、Ni、Cu系反応槽2Aからの反応処理水を貯留して、その中に含まれる固形成分を分離し、上澄み水を得るための貯留槽である。沈殿分離装置3Aは、
図1の沈殿分離装置3に対応し、同様に、一次分離槽30Aとバッファー槽32Aとは、それぞれ
図1の一次分離槽30とバッファー槽32とに対応している。それぞれの構成及び機能も
図1で説明したとおりである。分注移送により、反応処理水中の固形成分の濃度が低下しているので、上澄み水中に残存する固形成分の濃度も、分注移送を行わないときよりも低減する。
【0051】
図5に示すNi、Cu系濾過処理系610は、バッファー槽32Aから移送される上澄み水を濾過することにより、上澄み水に含まれる微小な固形成分を除去した濾過処理水、すなわち、Ni、Cu成分を更に除去した濾過処理水を得るための設備である。Ni、Cu系濾過処理系610は、
図1に示す濾過分離装置4に対応する、MF膜分離装置4A、具体的には濾過塔40A、及び分離汚泥槽41Aを備える。この濾過塔40Aは濾過膜として、Ni、Cu系の金属水酸化物の濾過に最適な孔径を有するMF膜を備えたものである。上澄み水は濾過塔40Aで濾過される。分離汚泥槽41Aは、沈殿分離装置3Aからのスラッジをスラリーとしたもの及び濾過塔40Aの逆洗浄時に排出されるスラリーを貯留する。貯留されたスラリーはスラリー処理系700にスラリーAとして移送される。濾過塔40Aで濾過された濾過処理水Aは、
図7に示す中和処理系800に移送される。分注移送により、バッファー槽32AからNi、Cu系濾過処理系610に移送される上澄み水中に残存する固形成分の濃度は低下するので、その分MF膜の負担が小さくなり、濾過の効率をより長く維持することができ、逆洗浄処理又はMF膜の交換の頻度を低減することができる。
【0052】
図5に示すスラリー処理系700は、
図1に示すスラリー処理系700と同じくスラリー槽5を備えると共に、貯水槽60を備える。
図5に示すスラリー処理系700のスラリー槽5には分離汚泥槽41Aから移送されるスラリーAのみでなく、他の沈殿電処理系から移送されるスラリーB、Cも供給される。脱水機6はスラリー槽5に貯留したスラリーの供給を受けて脱水処理する。脱水処理により、スラリーから抽出された抽出水は貯水槽60に貯留され還流水Aとして、酸・アルカリ系原水槽1Cに戻される。脱水処理により得られた固形物は、例えば産業廃棄物として処理される。
【0053】
次に、
図6について説明する。
図6に示すクロム系沈殿処理系520は、金属成分としてクロムを含む原水(クロム系原水)の沈殿処理を行う設備で、クロム系原水を貯留するクロム系原水槽1Bと、原水に含まれるクロム成分から水に不溶の金属水酸化物を生成するクロム系反応槽2Bと、クロム系反応槽2Bで生成された金属水酸化物を含む固形成分を沈殿処理により分離して上澄み水を取り出す沈殿分離装置3Bとを備える。
【0054】
クロム系原水槽1Bは、
図1の原水槽1に対応するもので、金属成分としてクロムを含む原水を貯留する。なお、原水は、含まれる金属成分の濃度に応じて、クロム系原水槽1Bに分注移送される。
【0055】
クロム系反応槽2Bは、
図1の反応槽2に対応するもので、クロム系原水槽1Bから供給される原水中に含まれるクロム成分を水に対して不溶な金属水酸化物にするための貯水槽である。クロム系反応槽2Bは、具体的には、
図6に示すように、クロム還元槽20Bと、滞留槽21Bと、pH調整槽22Bとで構成される。厳密に言えば
図1の反応槽2に対応するのはpH調整槽22Bであり、クロム還元槽20Bと、滞留槽21BとはpH調整槽22Bにおける反応の前準備のための貯水槽である。
【0056】
クロム還元槽20Bは、原水中に通常含まれる6価のクロムイオンを還元して、水酸化物の生成に必要な3価のクロムイオンにするための原水の貯水槽である。還元剤には、例えば重亜硫酸ソーダが使用され、更に重亜硫酸ソーダの還元剤としての働きを促進するために苛性ソーダや硫酸を添加してpH値を所定の範囲内に調整する。
【0057】
滞留槽21Bは、上記クロムイオンの還元反応を更に促進するために原水を滞留させるための貯水槽であり、重亜硫酸ソーダとpH値調整のための硫酸とが添加される。
【0058】
pH調整槽22Bは、3価に還元されたクロムイオンが含まれる貯留水に苛性ソーダを添加することにより貯留水のpH値を所定の範囲に調整するために原水を貯留する貯留槽である。これにより貯留水に含まれる3価のクロムイオンから水に不溶なクロム水酸化物が生成される。即ち、pH調整槽22B内の貯留水は、金属水酸化物等の固形成分を含む反応処理水となり、沈殿分離装置3Bに移送される。
【0059】
沈殿分離装置3Bは、pH調整槽22Bからの反応処理水を貯留して、その中に含まれる固形成分を分離し、上澄み水を得る装置である。沈殿分離装置3Bは、
図1の沈殿分離装置3に対応し、一次分離槽30Bとバッファー槽32Bはそれぞれ
図1の一次分離槽30とバッファー槽32とに対応している。それぞれの構成及び機能も
図1で説明したとおりである。
【0060】
図6に示すクロム系濾過処理系620は、バッファー槽32Bから移送される上澄み水を濾過することにより、上澄み水に含まれる微小な固形成分を除去した濾過処理水、すなわち、クロム成分を更に除去した濾過処理水を得るための設備である。クロム系濾過処理系620は、
図1に示す濾過分離装置4に対応するクロム系MF膜分離装置4B、具体的には濾過塔40Bと、分離汚泥槽41Bとを備える。この濾過塔40Bは濾過膜として、クロム水酸化物の濾過に最適な孔径を有するMF膜を備えたものである。上澄み水は濾過塔40Bで濾過される。分離汚泥槽41Bは、沈殿分離装置3Bからのスラッジをスラリーとしたもの及び濾過塔40Bの逆洗浄時に排出されるスラリーを貯留する。貯留されたスラリーはスラリー処理系700のスラリー槽5にスラリーBとして移送される。濾過塔40Bで濾過された濾過処理水Bは、
図7に示す中和処理系800の中和槽7に移送される。分注移送により、すでに説明したように、バッファー槽32Bから濾過処理系620に移送される上澄み水中に残存する固形成分の濃度は低下するので、その分、MF膜の負担が小さくなり、濾過の効率をより長く維持することができ、逆洗浄処理又はMF膜の交換の頻度を低減することができる。
【0061】
次に
図7について説明する。
図7は、3価クロム・酸・アルカリ系沈殿処理系630の装置構成を示す図である。3価クロム・酸・アルカリ系沈殿処理系630は、金属成分として、無電解Niを含む酸性又はアルカリ性の原水(以下、「酸・アルカリ原水」とする)の沈殿処理を行う設備であり、処理対象となる原水を貯留する酸・アルカリ原水槽1Cと、酸・アルカリ原水槽1Cに移送するために3価クロム系原水を貯留する3価クロム系原水槽1Dと、原水中に含まれる3価クロム及び無電解Niから水に不溶な金属水酸化物を生成する酸・アルカリ系反応槽2Cと、酸・アルカリ系反応槽2Cで生成された金属水酸化物を含む固形成分を沈殿処理により分離して上澄み水を取り出す沈殿分離装置3Cと、を備える。
【0062】
酸・アルカリ系原水槽1Cは、
図1の原水槽1に対応するもので、金属成分として3価クロムと無電解Niとを含む酸性又はアルカリ性の原水を貯留する。また、スラリー処理系700から還流される還流水A(
図5参照)、及び後述する沈殿分離装置3Cで得られる上澄み水の一部も還流水Cとして酸・アルカリ系原水槽1Cに供給される。なお、3価クロム系原水槽1Dは、最初に3価クロム系原水を貯留する貯留槽で、3価クロム系原水は、この3価クロム系原水槽1Dを介して酸・アルカリ系原水槽1Cに移送される。これは酸・アルカリ系原水槽1Cに移送される3価クロム系原水の量をコントロールするための措置である。ここで、無電解Ni系原水は、その金属成分の濃度に応じて、酸・アルカリ原水槽1Cに分注移送され、3価クロム系原水は、その金属成分の濃度に応じて、3価クロム系原水槽1Dに分注移送される。なお、3価クロム系原水は、3価クロム系原水槽1Dから酸・アルカリ原水槽1Cに移送されるときに、分注移送されてもよい。
【0063】
酸・アルカリ系反応槽2Cは、
図1の反応槽2に対応しており、混合槽20Cと反応槽21Cと凝集槽22Cとを備える。
【0064】
混合槽20Cは、原水に含まれる金属成分を水酸化物にするための薬剤を添加して十分に混合させるために、原水を貯留する貯留槽である。原水のpH値は不明のため、pH値調整のために添加される薬剤は硫酸と苛性ソーダである。塩化第二鉄は生成された固形成分を凝集させて沈殿速度を速めるための凝集剤である。
【0065】
反応槽21Cは、添加した添加剤による金属成分の水酸化物を生成させる反応を起こさせ、生成された金属水酸化物の凝集を促進するために、混合槽20Cから移送された添加物が混合された原水を貯留する貯留槽である。原水には、反応及び凝集の促進のために更に硫酸と苛性ソーダが添加され、原水のpH値が所定の範囲内になるように調整される。
【0066】
凝集槽22Cは、反応槽21Cから移送された反応処理後の水を貯留する貯留槽である。貯留された水には、金属水酸化物を更に凝集させるための高分子凝集剤である、例えば、スイフロック(商品名)が添加される。金属水酸化物が凝集した後の金属水酸化物等の固形成分を含む水は反応処理水として沈殿分離装置3Cに移送される。
【0067】
沈殿分離装置3Cは、
図1の沈殿分離装置3に対応しており、凝集槽22Cから移送された反応処理水中の固形成分を分離し、上澄み水を得る。沈殿分離装置3Cは、
図1に示す沈殿分離装置3の一次分離槽30に対応する第1スイレイシック(スイレイシックは沈殿分離装置の商品名である)30Cと、
図1に示すバッファー槽32を代替する第2スイレイシック32Cとを備える。スイレイシックは商品名であり、傾斜板効果を利用した高速凝集沈殿槽のことである。
図8に、第1スイレイシック30Cの構成を、
図9、
図10に第2スイレイシック32Cの構成を例示する。
【0068】
図8に例示する第1スイレイシック30Cは、基本的には、特公平8−4684号公報に開示されている構造を踏襲しており、傾斜板を利用した沈殿分離装置の一種である。第1スイレイシック30Cは、下方に開く形の円錐形の傾斜板3020Cと、同様に下方に開く形の円錐形の傾斜板3021Cとを備える。傾斜板3020Cの内側空洞部は、傾斜板3020Cの上方に設けられた上澄み水貯留容器301Cに連通している。また、この傾斜板3021Cの内側空洞部は、傾斜板3021Cの上方に設けた反応処理水注入容器304Cに連通している。給水管305C(取込み管)が、貯水容器300Cの側壁を貫通して内側に延び、反応処理水注入容器304Cに連通している。同様に、取水管306C(排出管)が、貯水容器300Cの側壁及び反応処理水注入容器304Cの壁面を貫通して内側に延び、上澄み水貯留容器301Cに連通している。また、円錐形の傾斜板3020Cの中心軸に沿って回転軸307Cが配置され、貯水容器300Cの底面中心に回転自在に固定され、第1スイレイシック30Cの上部に設置されたモーター308Cにより回転する。貯水容器300Cの底部3000Cは中心方向に傾斜した斜面で形成され、その中心部にスラッジ貯留室3002Cが形成されている。回転軸307Cは、貯水容器300Cの傾斜した底部3000C近傍で回転軸307Cに取り付けた掻寄板取付棒309Cと、掻寄板取付棒309Cに取り付けられ、底部3000Cに接触する形状に形成された掻寄板310Cとを備える。
【0069】
反応処理水は給水管305Cを経由して第1スイレイシック30Cに供給され、反応処理水注入容器304Cの内側壁と上澄み水貯留容器301Cの外側壁とで囲まれた領域及びその下方にある傾斜板3021Cの内壁面と傾斜板3020Cの外壁面とで囲まれた領域を通路として貯水容器300C内を下降し、間隙部3003Cを経由して分離室3001C内に達する。この途上で反応処理水に含まれている固形成分は重力により傾斜板3020C上に沈殿するとともに、分離室3001C内でも固形成分は沈殿して、貯水容器300Cの底部3000Cに堆積する。傾斜板3020C上に堆積した固形成分も重力により傾斜板を滑り落ちて貯水容器300Cの底部3000Cに堆積する。
【0070】
反応処理水が、第1スイレイシック30Cに供給され続けると、貯水容器300C内の水面は上昇する。このとき固形成分は貯水容器300Cの底部3000Cに堆積するので、水面近傍は固形成分が除去された上澄み水となる。水面が上昇して上澄み水貯留容器301C内に達すると取水管306Cでの上澄み水の取り出しが可能となる。この上澄み水は第2スイレイシック32Cに移送される。
【0071】
貯水容器300Cの底部3000Cに堆積した固形成分(スラッジ)は、適宜モーター308Cを駆動させて掻寄板310Cを底部3000Cに沿って回転させることにより、底部3000Cからスラッジ貯留室3002Cに掻き寄せられる。スラッジ貯留室3002C内のスラッジは、スラッジ排出管311Cを介してスラリー槽5に排出される。
【0072】
第2スイレイシック32Cは、傾斜板を利用した他の種類の沈殿分離装置である。
図1のバッファー槽32は上澄み水の貯留のみであったが、第2スイレイシック32Cは、第1スイレイシック30Cで得られた上澄み水になお残留する固形成分を分離して、より固形成分の少ない上澄み水を得るためのものである。
【0073】
第2スイレイシック32Cは、
図9及び
図10に示すように、貯水槽320Cと、第1スイレイシック30Cの上澄み水を取り込む給水管(取込み管)325Cと、貯水槽320Cの上部に貯水槽320と同心状に配置され、給水管325Cと連通し、給水管325Cを介して取り込んだ上澄み水を一旦貯留する上澄み水貯留室324Cと、を備え、この上澄み水貯留室324Cには、
図9、
図10に示すように、上澄み水貯留室324Cの底面を、同心状に2つの環状体321C、323Cが貫通する。それぞれの環状体の外壁面が上澄み水貯留室324Cの底面を貫通する部位は、溶接などにより密閉されている。内側の環状体321Cの壁面は、その上端が上澄み水貯留室324Cの壁面の上端と同じ高さ又はそれ以上の高さを有し、その下端は、上澄み水貯留室324Cの底面位置よりも低い位置まで伸びて、後述する傘状の傾斜板322Cの上部と連通する。2つの環状体のうち、より外側の環状体323Cの壁面は、その上端が、上澄み水貯留室324Cの壁面の上端よりも低い位置にあり、その下端は、環状体321Cの下端と同程度又は幾分低い位置にある。この環状体323Cをオーバーフロー壁323Cと呼んでもよい。上澄み水貯留室324Cの下方には、環状体321Cと、その下端で連通する傘状の傾斜板322Cが設けられる。この傾斜板322Cの最大広がり裾野と、貯水槽320Cの内面との間には、間隙部3203Cが環状に形成される。貯水槽320Cの内部は固形成分分離のために上澄み液が滞留する分離室3201Cである。環状体321Cには、この内部に貯留された上澄み水を第2スイレイシック32C外に取り出すための取水管326Cが連通している。貯水槽320Cの下端には堆積したスラッジを取り出すためのスラッジ排出管331Cが取り付けられる。
【0074】
第1スイレイシック30Cの上澄み水は、給水管325Cを介して上澄み水貯留室324Cに一旦貯留され、貯留された上澄み水の水面がオーバーフロー壁323Cを超えると超えた分の上澄み水は、オーバーフロー壁323Cと環状体321Cの管壁との間の空間を通路として下降し、傾斜板322Cの上面に沿って更に下降する。傾斜板322Cの下端まで下降した上澄み水は間隙部3203Cを介して上澄み水滞留室3201Cに滞留する。移送された上澄み水は、傾斜板322Cに沿って下降するとき、及び上澄み水滞留室3201Cに滞留する間に、上澄み水中に残留する固形成分は更に沈殿し、上澄み水滞留室3201Cの上方にある傾斜板322Cの内側の上方に貯留される上澄み水の中の固形成分は更に減少する。第1スイレイシック30Cから第2スイレイシック32Cに移送される上澄み水の総量が増えるにつれて、上澄み水滞留室3201Cの水面が上昇し、傾斜板322Cの内側に貯留された上澄み水の液面も上昇する。この液面が取水管326Cの位置を超えると、ここに貯留された上澄み水は、取水管326C(排出管)より次の工程、即ち、最終中和処理系800に送られる。前記流下隙間Sを流れた固形物、夾雑物等は、貯水槽320Cの底部3200Cに向かって沈下し、堆積する。
【0075】
図7に示す3価クロム・酸・アルカリ系沈殿処理系530の場合には濾過処理系がないが、分注移送により、すでに説明したように、沈殿処理系3Cの上澄み水中に残存する固形成分の濃度は低下する。従って、上澄み水のその後の処理が簡便化されるとともに再利用の場が広がる。
【0076】
以上、詳述したように、原水が金属成分を高い濃度で含む場合に、金属成分の濃度に応じて、原水を分注移送することにより、反応処理水中の固形成分の濃度を低く抑えられるため、沈殿処理後の上澄み水中に残存する固形成分の濃度を低減することができる。沈殿処理後に得られる上澄み水に対して更に濾過処理を行う場合には、濾過膜に対する目詰まり等の負担が軽減される。
【0077】
以下では、原水の金属成分を固形成分化して除去する際に、原水を直接濾過処理する場合と、沈殿処理を実行した後の上澄み水を濾過処理する場合の、濾過性に対する影響を調べた試験結果を示す。この試験結果は濾過処理の対象となる水に含まれる固形成分の量の違いによる濾過性への影響を示している。一方、本願の特徴である分注移送については、その有無により、濾過対象となる上澄み水の中に含まれる固形成分の量が異なる。したがって、本試験の結果は、分注移送の効果の一例を示す、参考データとなりうる。
【0078】
試験は、メッキ排水を原水とし、この原水中の金属成分を反応槽で処理して、固形成分であるSS(浮遊物質)を含む反応処理水と、この反応処理水を沈殿処理し、固形成分であるSS(浮遊物質)を沈降させて得られる上澄み水とを濾過処理対象として、それぞれ、濾過した時の、濾過膜の濾過性を比較した。以下では反応処理水を原水と呼ぶ。また濾過膜を膜と略称する。
【0079】
1.試料名:メッキ排水
・ニッケル系反応槽 原水の性状:空色懸濁水
・銅系反応槽 原水の性状:黒色懸濁水
2.試験方法
2.1 濾過試験
濾過方式:外圧全濾過方式(定圧濾過)
濾過圧:0.1MPa
膜銘柄:M02−100
膜素材:PVDF 孔径:0.02μm、膜面積:0.0152m(97cm×5本)
物理洗浄(逆洗浄)方式:工ア押し(0.2MPa、10秒)、工アバブリング(0.1MPa、60秒)
物理洗浄間隔:濾過量 100L/m
2毎に洗浄
濾過処理対象としたサンプル:
サンプル(1);ニッケル系原水・・・沈殿処理なし
サンプル(2);ニッケル系上澄み水・・・次のような沈殿処理あり。原水16Lを10分撹拌→1時間静置後、上澄み水を14L採取。
サンプル(3);銅系原水・・・沈殿処理なし。
サンプル(4);銅系上澄み水・・・次のような沈殿処理あり。原水18Lを10分撹拌→1時間静置後、上澄み水を14L採取。
2.2 水質分析:
分析サンプル:サンプル(1)、(3)の原水、及びサンプル(2)、(4)の上澄み水
分析項目:浮遊物質量(SS)、粒度分布
【0080】
3.試験結果
3.1 水質分析結果
表1に、サンプル(1)から(4)についての水質分析結果を示した。
【表1】
【0081】
3.2 濾過試験結果
サンプル(1)のニッケル系原水に対しては表2と
図11A及び
図11Bに、サンプル(2)のニッケル系上澄み水に対しては表3と
図12A、
図12B及び
図13に、サンプル(3)の銅系原水に対しては表4と
図14A、
図14Bに、そしてサンプル(4)の銅系上澄み水に対しては表5と
図15A、
図15B及び
図16に、それぞれの濾過試験結果を示した。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0082】
[サンプル(1):ニッケル系原水]
i)原水は空色懸濁水で、膜処理水は無色透明であった。
ii)膜の処理水透過の程度を示すFLUXは、濾過の進行とともに徐々に低下した。物理洗浄によるFLUXの回復効果は良好で、全般的には安定傾向がみられた。
iii)膜表面に多量のSSが付着するが、物理洗浄で綺麗に剥離し、除去できた。
iv)試験後の膜の新膜に対する透水性保持率は89%であった。
[サンプル(2):ニッケル系上澄み水]
i)原水は空色微濁水で、膜処理水は無色透明であった。
ii)FLUXは、濾過進行中も殆ど低下すること無く、試験開始時の値を安定に維持した。サンプル(1)と比べると、濾過性は良好であった。
iii)膜表面に微量のSSが付着するが、物理洗浄で綺麗に剥離し、除去できた。
iv)試験後の膜の新膜に対する透水性保持率は96%であった。
[サンプル(3):銅系原水]
i)原水は黒色懸濁水で、膜処理水は無色透明であった。
ii)FLUXは、濾過の進行とともに徐々に低下した。物理洗浄によるFLUXの回復効果は良好で、全般的には安定傾向がみられた。
iii)膜表面に多量のSSが付着するが、物理洗浄で綺麗に剥離し、除去できた。
iv)試験後の膜の新膜に対する透水性保持率は97%であった。
[サンプル(4):銅系上澄み水]
i)原水は黒色微濁水で、膜処理水は無色透明であった。
ii)FLUXは、濾過進行中も殆ど低下すること無く、試験開始時の値を安定に維持した。サンプル(3)と比べると、濾過性は良好であった。
iii)膜表面に微量のSSが付着するが、物理洗浄で綺麗に剥離し、除去できた。
iv)試験後の膜の新膜に対する透水性保持率は98%であった。
【0083】
4.結果のまとめ
4.1 ニッケル系排水
ニッケル系排水について、サンプル(1)の原水は空色懸濁水で、その膜処理水は無色透明であった。サンプル(2)の上澄み水は空色微濁水で、その膜処理水は無色透明であった。濾過性は、サンプル(1)の原水に対しては、濾過の進行とともにFLUXが徐々に低下した。膜の物理洗浄によるFLUXの回復効果は良好で、全般的には安定傾向がみられた。サンプル(2)に対しては、濾過進行中もFLUXの低下は殆どなく、ほぼ試験開始時の値を安定に維持した。水質については、浮遊物質量は、サンプル(1)では1620mg/Lで、サンプル(2)では67mg/Lであった。
4.2 銅系排水
銅系排水について、サンプル(3)の原水は黒色懸濁水で、その膜処理水は無色透明であった。サンプル(4)の上澄み水は黒色微濁水で、その膜処理水は無色透明であった。濾過性は、サンプル(3)に対しては、濾過の進行とともにFLUXが徐々に低下した。膜の物理洗浄によるFLUXの回復効果は良好で、全般的には安定傾向がみられた。サンプル(4)に対しては、濾過進行中もFLUXの低下は殆どなく、ほぼ試験開始時の値を安定に維持した。水質については、浮遊物質量は、サンプル(3)では290mg/Lで、サンプル(4)では4.8mg/Lであった。
【0084】
今回の試験結果から、ニッケル系排水及び銅系排水ともに、膜処理前にSSを沈降させて得られる上澄み水を濾過することにより、濾過膜への負担が軽減され、設備の安定運転が期待できることがわかる。高濃度原水の分注移送により、上澄み水中の固形成分の濃度は低減するので、分注移送を行わない場合に比べると、この試験結果の場合と同様に、濾過膜への負担が軽減され、設備をより安定して運転することが期待できる。
【0085】
上記実施の形態に示す例は、本発明の好ましい一例を示したものであり、同様な効果と特徴を有する他の構造、手段は、本発明の範疇である。