特許第6093073号(P6093073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6093073
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】電子回路用の金属箔基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20170227BHJP
   H05K 3/04 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   H05K1/02 C
   H05K3/04 B
   H05K3/04 A
   H05K1/02 R
   H05K1/02 M
   H05K1/02 G
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-120563(P2016-120563)
(22)【出願日】2016年6月17日
【審査請求日】2016年6月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】716001441
【氏名又は名称】宮崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 達也
【審査官】 原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−113863(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3145388(JP,U)
【文献】 実開昭56−157777(JP,U)
【文献】 特開昭63−280487(JP,A)
【文献】 特開平09−023046(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3047660(JP,U)
【文献】 特開平02−140988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を有し、その片面もしくは両面に金属箔を有する、金属箔基板において、前記基材に格子状の凹部を設け、当該凹部を設けた面に前記金属箔を備えることによって、前記基材と前記金属箔との間に、前記凹部によって形成された空間をもち、前記凹部は、前記凹部の外側における前記金属箔を切断除去することによってパターンを形成するためにパターン間隔となる幅をもつことを特徴とする、金属箔基板。
【請求項2】
請求項1記載の金属箔基板において、さらに、薄膜層を有し、当該薄膜層を前記基材と前記金属箔との間に備え、前記薄膜層は、前記凹部の外側における前記金属箔を不可抗力的な外力から保護するために前記金属箔を補強する作用をもつことを特徴とする、金属箔基板。
【請求項3】
基材を有し、その片面もしくは両面に金属箔を有する、金属箔基板において、被切削部材を有し、前記基材に格子状の凹部を設け、当該凹部を設けた面に前記金属箔を備え、前記被切削部材を前記凹部に備えていることを特徴とする、金属箔基板。
【請求項4】
基材を有し、その片面もしくは両面に金属箔を有する、金属箔基板において、前記基材は、第1基材と当該第1基材より薄い第2基材とからなり、前記第1基材に格子状の凹部を設け、当該凹部を設けた面に前記第2基材を備えることによって、前記基材内部に前記凹部と前記第2基材とによって形成された空間をもち、前記金属箔を前記第2基材の外側に備え、前記第2基材は、前記空間の外側における前記金属箔を不可抗力的な外力から保護するために前記金属箔を補強する作用をもつことを特徴とする、金属箔基板。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の金属箔基板において、さらに、部品用の貫通穴を備えていることを特徴とする、金属箔基板。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の金属箔基板において、さらに、前記金属箔に前記凹部の位置を示す表示を備えていることを特徴とする、金属箔基板。
【請求項7】
基材を有し、その片面もしくは両面に金属箔を有する、金属箔基板において、被切削層を有し、当該被切削層を前記基材と前記金属箔との間に備え、前記被切削層は、前記基材に比べて良好な被切削性をもち、かつ、前記金属箔と共に切削除去することによってパターン間隔を形成するために0.1mm以上の厚さをもつ絶縁性の層であることを特徴とする、金属箔基板。
【請求項8】
請求項7記載の金属箔基板において、さらに、前記金属箔に寸法を示す方眼状の表示を備えていることを特徴とする、金属箔基板。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の金属箔基板にパターンを形成する方法であって、型を用いて金属箔を切断することによって、パターンを形成することを特徴とする、パターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外面に金属箔を有する、電子回路用の金属箔基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化に伴い、電子回路基板においてもパターンの高密度化が進み、専用設備がなければ高密度の回路基板を製作することは難しい。しかし、実験、試作、治具、電子工作などの用途において、小型化、高密度化がさほど要求されない製作物では、電子回路基板の自主製作はよく用いられる手段である。
電子回路基板を製作する過程において、金属箔基板に回路パターン(以下、パターンと呼ぶ)を形成する方法は、主に以下の(1)〜(4)の方法が用いられる。
【0003】
(1)は、エッチングによって不要な金属箔を溶かしてパターンを形成する方法である。この場合は、印刷や感光などによって金属箔にパターンを転写する工程、金属箔のエッチング工程、洗浄工程、乾燥工程、などの工程を経て形成される。前記エッチング工程では、その温度と時間とを厳密に管理する必要がある。そして、エッチング廃液は、無害化して廃棄しなければならない。
【0004】
(2)は、切削加工機またはレーザ加工機によって不要な金属箔部分を切削してパターンを形成する方法である。この場合は、パターンの加工データを作成し、前記加工データに基づいて、切削加工機またはレーザ加工機によって不要な金属箔部分を切削してパターンを形成する。なお、前記加工データを作成するためには、専用のソフトウェアとその操作が必要である。
【0005】
(3)は、手作業によって不要な金属箔部分を切削してパターンを形成する方法である。この場合に用いる工具は、カッターや彫刻刀やハンドグラインダーなどである。しかし、基板の基材は切削加工に適さない硬い材質のため、時間と労力とが必要な作業である。
【0006】
(4)は、予め格子状のパターンによって形成された接続網における不要な接続部分を取り除いて必要なパターンを形成する方法である(特許文献1参照)。その他、格子状のパターンをもつユニバーサル基板の不要な接続部分を切削除去する方法が知られている。これらの場合は、不要部分を取り除き易くするために、パターン幅を部分的に細くしている。しかし、前記(3)の方法と同様に基材が硬いため、少なからず困難を伴う作業であることは否めない。また、部分的にパターンを細くしなければ成立しない方法であるため、ベタパターンを形成することはできない。
【0007】
上記とは別に、導体を付け足すことによってパターンを形成する方法は、主に以下の(5)、(6)の方法が用いられる。
【0008】
(5)は、金属箔を備えない基板にアディティブ法によってパターンを形成する方法である。この方法には、めっき、導電ペーストの印刷、金属の蒸着、予め形成したパターンを貼り付ける、などの方法があるが、いずれも専用の製造設備が必要なため、その設備を持たない者が容易に行える方法ではない。
【0009】
(6)は、ユニバーサル基板に配線用の導体を貼り付けてパターンを形成する方法である。前記導体に配線用金属テープ(以下、テープと呼ぶ)を用いる方法は、特許文献2に示されている。この場合はパターン毎に、テープの採寸、テープの切断、はんだ付けによってテープを基板に貼り付ける作業が必要である。また、途中で角度を変えたりパターン幅を変えたりする場合は、複数のテープを組み合わせる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−190164号公報
【特許文献2】特開平9−282944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記のとおり、手順の少ない簡単な作業と、専用の設備や用品などを使用しない安価な方法と、パターン幅の制約を受けない(電気的特性を優先した)方法と、によって、パターンを形成することができないという問題がある。実験、試作、治具、電子工作などの用途において、単品製作あるいは少量製作の場合は、製作物全体の製作工数やコストに対して、パターンの形成にかかる工数やコストの比率が高くなる傾向がある。
【0012】
そこで、本発明は、手順の少ない簡単な作業と、専用の設備や用品などを使用しない安価な方法と、電気的特性を優先した方法と、によって、パターンを形成できる金属箔基板を提供すること、および、パターン形成の効率的な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る金属箔基板は、基材と金属箔とを有し、基材に格子状の凹部を設け、当該凹部を設けた面に金属箔を備えることによって、前記基材と前記金属箔との間に前記凹部によって形成された空間をもち、前記凹部は、前記凹部の外側における前記金属箔を切断除去することによってパターンを形成するためにパターン間隔となる幅をもつ。
【0014】
本発明に係る金属箔基板の別の形態では、さらに、薄膜層を有し、当該薄膜層を前記基材と前記金属箔との間に備え、前記薄膜層は、前記凹部の外側における前記金属箔を不可抗力的な外力から保護するために前記金属箔を補強する作用をもつ。
【0015】
本発明に係る金属箔基板の別の形態では、基材と金属箔と被切削部材とを有し、前記基材に格子状の凹部を設け、当該凹部を設けた面に前記金属箔を備え、前記被切削部材を前記凹部に備えている。
【0016】
本発明に係る金属箔基板の別の形態では、基材と金属箔とを有し、基材は第1基材と当該第1基材より薄い第2基材とからなり、前記第1基材に格子状の凹部を設け、当該凹部を設けた面に前記第2基材を備えることによって、前記基材内部に前記凹部と前記第2基材とによって形成された空間をもち、金属箔を前記第2基材の外側に備え、前記第2基材は、前記空間の外側における前記金属箔を不可抗力的な外力から保護するために前記金属箔を補強する作用をもつ。
【0017】
本発明に係る金属箔基板の別の形態では、さらに、部品用の貫通穴を備えている。
【0018】
本発明に係る金属箔基板の別の形態では、さらに、前記金属箔に前記凹部が設けられた位置を示す表示を備えている。
【0019】
本発明に係る金属箔基板の別の形態では、基材と金属箔と被切削層とを有し、当該被切削層を基材と金属箔との間に備え、前記被切削層は、前記基材に比べて良好な被切削性をもち、かつ、前記金属箔と共に切削除去することによってパターン間隔を形成するために0.1mm以上の厚さをもつ絶縁性の層である。
【0020】
本発明に係る金属箔基板の別の形態では、さらに、前記金属箔に寸法を示す方眼状の表示を備えている。
【0021】
本発明に係るパターンの形成方法は、型を用いて前記金属箔を切断することによって、パターンを形成する方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る金属箔基板を用いれば、外面の金属箔を、例えばカッターや彫刻刀などの一般的な工具によって容易に切断できる。そのため、簡単にパターンを形成できる。また、太いパターンやベタパターンの形成も可能であり、パターン幅の制約がない。このように、手順の少ない簡単な作業と、専用の設備や用品などを必要としない安価な方法と、電気的特性を優先した方法と、によって、パターンを形成することができる。
【0023】
また、本発明に係る金属箔基板のパターン形成に型を用いれば、作業の効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態1の構成を示す傾斜図である。
図2】実施形態1の完成状態を示す傾斜図である。
図3A】凹部2の形状例を拡大して示す傾斜図である。
図3B】凹部2の第1変形例を拡大して示す傾斜図である。
図3C】凹部2の第2変形例を拡大して示す傾斜図である。
図3D】凹部2の第3変形例と金属箔3を切断除去した応用例とを拡大して示す傾斜図である。
図3E】凹部2の第4変形例を拡大して示す傾斜図である。
図3F】凹部2の第5変形例と金属箔3を切断除去した応用例とを拡大して示す傾斜図である。
図3G】凹部2の第6変形例と金属箔3を切断除去した応用例とを示す上面図である。
図3H】凹部2の第7変形例を拡大して示す上面図である。
図4】実施形態1において、ユーザーが金属箔3を切断除去してパターンを形成する様子の例を拡大して示す参考図である。
図5A】実施形態1において、ユーザーが金属箔3を切断除去して試作回路のパターンを形成した例を示す参考図である。
図5B図5Aの試作回路の回路を示す参考図である。
図6】実施形態2の完成状態を示す断面図である。
図7A】実施形態3の完成状態を示す断面図である。
図7B】実施形態3の被切削部材8の第1変形例を拡大して示す断面図である。
図7C】実施形態3の被切削部材8の第2変形例を拡大して示す断面図である。
図7D】実施形態3の被切削部材8の第3変形例を拡大して示す断面図である。
図8】実施形態4の完成状態を示す断面図である。
図9】実施形態5の貫通穴15を備えた例を示す傾斜図である。
図10】実施形態6の表示16を備えた例を示す傾斜図である。
図11A】実施形態7の完成状態を示す断面図である。
図11B】実施形態7の被切削層17の第1変形例を示す断面図である。
図11C】実施形態7の被切削層17の第2変形例を示す断面図である。
図11D】実施形態8の方眼表示24を備えた例を示す傾斜図である。
図12A】パターンの形成に用いる型18の例を示す上面図である。
図12B】型18によってパターンを形成する方法の例を示す断面図である。
図12C】型18によって形成したパターンを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一または実質的に同一の機能および構成要素については、同一符号を付し、必要に応じて説明する。
【0026】
実施形態1.(実施形態1は請求項1に対応する。)
図1は、実施形態1の構成を示す傾斜図である。
図1に示すように、実施形態1の金属箔基板は、基材1と金属箔3とを有する。
前記基材1に格子状の凹部2を設ける。
【0027】
前記基材1の材料は、例えば、紙エポキシ積層材、ガラスコンポジット積層材、ガラスエポキシ積層材、などの絶縁性の積層材を用いる。前記積層材の場合に、前記凹部2を設ける方法は、ルータ加工による切削、レーザ加工による切削、予め凸部4の形状に加工した基材片を前記基材1に貼り付け、前記基材片間の隙間によって前記凹部2を構成する、などの方法がある。
また、前記積層材と同等程度の機械的強度、もしくは、ユーザーが所望する機械的強度をもち、かつ、前記積層材に比べて切削加工性や成形加工性に優れた絶縁性の材料(例えば耐熱性樹脂材やその複合材)を用いてもよい。その場合は、前記積層材に比べて、前記凹部2の形成にかかる工数やコストを低減することができる。
前記基材1における板厚tは、一般的な金属箔基板における標準値の1.6mmでよいが、違う値にする場合は前記1.6mmより厚くするのが好ましい。
【0028】
図2は、実施形態1の完成状態を示す傾斜図である。
図2に示す金属箔基板は、図1に示した、凸部4と金属箔3とが貼り付いてなる。前記貼り付けには、接着剤や粘着剤などを用いる。そして、前記凸部4と前記金属箔3とが貼り付いたことによって、空間5が形成される。当該空間5は、前記基材1と前記金属箔3との間に、前記凹部2によって形成された空間である。
【0029】
図2では、前記金属箔3は前記基材1の片面に備えられているが、前記金属箔3は前記基材1の両面に備えてもよい。前記金属箔3を両面に備える場合は、前記凹部2も両面に設ける。
【0030】
次に、前記凹部2の詳細について説明する。
図3Aは、凹部2の形状例を拡大して示す傾斜図である。
本形状例は、図3Aのように、V形状に形成されている。当該形状は、前記金属箔3を、(後述の)三角刀によって切断する場合に適している。
【0031】
図3Bは、凹部2の第1変形例を拡大して示す傾斜図である。
本第1変形例は、図3Bのように、半円またはU字形状に形成されている。当該形状は、底部が滑らかなため亀裂が入りにくく、前記V形状に比べて曲げやたわみに強い。
【0032】
図3Cは、凹部2の第2変形例を拡大して示す傾斜図である。
本第2変形例は、図3Cのように、四角形状に形成されている。当該形状は、前記金属箔3を、(後述の)型によって切断する場合に適している。また、側面が垂直なため、(後述の)カッターによる切断にも適している。
【0033】
図3Dは、凹部2の第3変形例と金属箔3を切断除去した応用例とを拡大して示す傾斜図である。
本第3変形例は、図3Dのように、凸部4が円柱状になるように残りの部分を窪ませた形状である。当該形状は、前記金属箔3を前記凸部4の周囲において、円弧または曲線状に切断することができる。そのため、滑らかな形状のパターンを形成できる。また、図3Dの右側の応用例に示すパターン3sのような、斜めに対向する凸部4間を繋ぐパターンの形成に適している。
【0034】
図3Eは、凹部2の第4変形例を拡大して示す傾斜図である。
本第4変形例は、図3Eのように、前記第3変形例に補助凸部4sを追加した形状である。当該補助凸部4sは、凹部2が交差する中央部分に設けられた、幅Wより若干小さい円柱状の凸部である。前記補助凸部4sによって、前記凹部2が交差する中央部分における前記金属箔3を補強することができる。
【0035】
図3Fは、凹部2の第5変形例と金属箔3を切断除去した応用例とを拡大して示す傾斜図である。
本第5変形例は、図3Fのように、隣り合う凸部4間に複数の凹部2を並行に設けている。この場合は、前記凸部4間にパターンを通す(形成する)ことが可能である。その通せるパターンの数は、そこに設ける凹部2の数から1を引いた数になる。
図3Fの場合は、右側に示す応用例のように、前記凸部4間(パターン3aとパターン3bとの間)にパターン3nを形成することができる。
【0036】
図3Gは、凹部2の第6変形例と金属箔3を切断除去した応用例とを示す上面図である。なお、図3G右側の応用例は凹部2を透視によって示している。
本第6変形例は、図3Gのように、格子状の凹部2が直交する箇所に、菱形(◇)状の凹部2を追加した構成である。当該構成は、前記凹部2の形状が、図3AのV形状、図3Bの半円またはU字形状、図3Cの四角形状、の場合に適用できる。
本第6変形例の場合も、前記第3変形例や前記第4変形例のように、斜めに対向する凸部4間を繋ぐパターンを形成することができる。図3G右側の応用例にその様子を示す。パターン3eが斜めに対向する凸部4間を繋ぐパターンである。
【0037】
図3Hは、凹部2の第7変形例を拡大して示す上面図である。図3Hは、凹部2が前記四角形状の場合の例を示している。
本第7変形例は、図3Hのように、凹部2が交差した部分の周囲に肉厚t5をもつ仕切り9を設けた構成である。前記肉厚t5は、被切削性が顕著に悪化しない厚さ(例えば、0.1mm〜0.3mm程度)に設定する。
本第7変形例は、前記凹部2が前記四角形状の場合に適しているが、前記V形状や前記半円またはU字形状にも応用可能である。
前記仕切り9は、前記凹部2の交差部分における前記金属箔3を補強する役割をもつ。
本第7変形例の利点は、前記金属箔3を前記凹部2の交差部分を跨いで直線状に切断した場合に、その切断端を前記仕切り9に固定することができる点である。
また、(後述の)型を押し付けて、前記金属箔3を前記凹部2の交差部分を跨いで直線状に切断する際に、型の刃と前記仕切り9とによって前記金属箔3を圧迫することができる。そのため、前記金属箔3を綺麗に切断できる。
【0038】
図3A図3Fにおける、凸部4の間隔P、凹部2の幅W、凹部2の深さDは、前記基材1の材質、その板厚t、使用する電圧、実装する部品の種類、などの条件によって、適する値が異なる。そのため、ユーザーの用途に合わせた値にするのがよい。例えば、前記金属箔3を片面に備え、前記基材1はガラスエポキシ積層材、その板厚tは1.6mm、使用電圧は20V程度、実装する部品はリード部品、前記凹部2はV形状、であれば、前記間隔Pは2.54mm、前記幅Wおよび前記深さDは、0.25mm〜0.5mm程度が適している。
なお、前記間隔Pおよび前記幅Wおよび前記深さDの値を小さくすれば、小型部品に適した高密度なパターンを形成することも可能である。
【0039】
次に、本実施形態1の金属箔基板を用いて、パターンを形成する方法について説明する。
図4は、実施形態1において、ユーザーが金属箔3を切断除去してパターンを形成する様子の例を拡大して示す参考図である。
図4に示すように、ユーザーがカッター20を用いて、金属箔3を空間5の両端において切断し、不要な金属箔3cを除去する。これにより、パターン3gとパターン3hとを形成できる。そのパターン間隔PWdは凹部2の幅Wと等しい。
【0040】
なお、前記金属箔3の厚さは、数十μm(例えば、一般の電子回路用途に用いる銅箔であれば、その主流は、18μm、35μm、70μm)である。そのため、前記金属箔3は、前記カッター20によって容易に切断することができる。
【0041】
また、前記カッター20の代わりに三角刀(彫刻刀)を用いれば、1回の切断作業によって前記金属箔3を前記空間5の両端において切断できる。そのため、作業効率が向上する。
【0042】
図5Aは、実施形態1において、ユーザーが金属箔3を切断除去して試作回路のパターンを形成した例を示す参考図である。図5Aは、パターン(前記金属箔3)側から見た図であって、凹部2や裏側に実装する部品を透視している図である。
図5Bは、図5Aの試作回路の回路を示す参考図である。
【0043】
図5Aに示す試作回路は、オペアンプ13と抵抗器14a〜14dとによって構成された反転増幅回路(図5Bの回路図に示す回路)である。
破線11は、凹部2と凸部4との境界を示す線、部品穴12は部品を挿入するための貫通穴である。
【0044】
図5Aの試作回路は、以下の条件によって製作される。
金属箔3を片面に備える。前記金属箔3は銅箔である。その厚さは35μmである。基材1はガラスエポキシ積層材である。その板厚tは1.6mmである。凸部4の間隔Pは2.54mmである。凹部2の形状は図3Aに示したV形状である。凹部2の幅Wは0.5mm、深さDは0.25mmである。切断工具は、三角刀を用いる。
【0045】
そして、太実線10は、前記試作回路のパターンを形成するために、前記金属箔3を切断除去した箇所を示す線である。
図5Aに示した例は、電源やGNDのパターンを太くしており、電気的特性を考慮したパターンになっている。
【0046】
以上のように、本実施形態1の金属箔基板を用いれば、カッターや彫刻刀などの一般的な工具によって前記金属箔3を容易に切断できる。そのため、簡単にパターンを形成することができる。また、太いパターンやベタパターンも形成できるため、電気的特性の良好なパターンを得ることができる。さらに、専用の設備や用品などを必要としないため、パターンの形成にかかる費用を低減することができる。
【0047】
実施形態2.(実施形態2は請求項2に対応する。)
図6は、実施形態2の完成状態を示す断面図である。
図6に示すように、実施形態2の金属箔基板は、前記実施形態1の金属箔基板において、さらに、薄膜層7を有する。
前記薄膜層7は、前記基材1と前記金属箔3との間に挟まれて配置される。
【0048】
前記薄膜層7の材料は、良好な被切断性と、耐熱性と、前記金属箔3より高い引張強度と、をもつ。
前記薄膜層7の「被切断性」は、前記金属箔3と共に、カッターなどの一般的な工具によって容易に切断できる性質である。
また、ここで言う「耐熱」とは、はんだ付け作業を想定し、コテ先温度を350℃に設定したはんだコテによって、前記金属箔3の表面を5秒間加熱したときに、発火、発煙、有毒ガスの発生、炭化、溶化、著しい変形、を起こさないことである。
例えば、前記薄膜層7には、厚さ10μm〜100μm程度の、耐熱ポリイミドフィルムなどを用いればよい。
前記金属箔3と前記薄膜層7とを貼り付け、前記薄膜層7と前記凸部4とを貼り付ける。前記貼り付けには接着剤や粘着剤などを用いる。
【0049】
図6では、前記金属箔3は前記基材1の片面に備えられているが、前記金属箔3は前記基材1の両面に備えてもよい。前記金属箔3を両面に備える場合は、前記凹部2および前記薄膜層7も両面に備える。
図6では、前記凹部2の形状は図3Cに示した四角形状であるが、他の形状でもよい。
【0050】
本実施形態2の金属箔基板においてパターンを形成する方法は、前記実施形態1と同様に、前記金属箔3を切断除去する方法である。その場合、本実施形態2では、前記金属箔3と前記薄膜層7とが貼り付いているため、前記薄膜層7も同時に切断除去することになるが、前記薄膜層7は良好な被切断性をもつため、前記実施形態1と同様に、カッターや彫刻刀などの一般的な工具によって容易に切断除去することができる。
【0051】
本実施形態2の利点は、前記薄膜層7を備えることによって、前記凹部2の外側における前記金属箔3を補強できる。これにより、前記金属箔3に対して不可抗力的に外力が加わった場合の、前記金属箔3の変形や破損を防止できる点である。そのため取り扱いが容易になる。
【0052】
実施形態3.(実施形態3は請求項3に対応する。)
図7Aは、実施形態3の完成状態を示す断面図である。
図7Aに示すように、実施形態3の金属箔基板は、基材1と金属箔3と被切削部材8とを有する。
前記基材1に格子状の凹部2を設ける。
前記基材1の材料および前記凹部2を設ける方法は、前記実施形態1と同様である。
【0053】
前記被切削部材8は、前記凹部2を塞ぐように備えられる。前記被切削部材8の材料は、絶縁性と、耐熱性と、前記基材1に比べて柔らかくて良好な被切削性と、をもつ。前記被切削部材8には、例えば、耐熱性樹脂材やその複合材などを用いればよい。
前記基材1と前記被切削部材8と前記金属箔3とのそれぞれを、接着剤や粘着剤などによって貼り付ける。これにより、前記金属箔3は前記被切削部材8に固定される。
なお、ここで言う材料の「被切削性」は、人がカッターや彫刻刀などの一般的な工具を用いて、当該工具の刃先を通常の力において、その材料内に入り込ませることができ、これにより、その材料に切れ目を入れたり削ったりすることが可能な性質である。
【0054】
図7Aでは、前記金属箔3は前記基材1の片面に備えられているが、前記金属箔3は前記基材1の両面に備えてもよい。前記金属箔3を両面に備える場合は、前記凹部2および前記被切削部材8も両面に備える。
図7Aでは、前記凹部2の形状は図3Cに示した四角形状であるが、他の形状でもよい。
図7Aでは、前記被切削部材8は前記凹部2全体を塞ぐような形状であるが、下記の図7B図7Dに示すような形状でもよい。
【0055】
図7Bは、実施形態3の被切削部材8の第1変形例を拡大して示す断面図である。
図7Bに示す被切削部材8の第1変形例は、前記凹部2の外側(前記金属箔3側)に蓋をするような板状の形状である。この場合は、図7Aの被切削部材8に比べて薄いため、材料費を低減でき、被切削性も向上する。
【0056】
図7Cは、実施形態3の被切削部材8の第2変形例を拡大して示す断面図である。
図7Cに示す被切削部材8の第2変形例は、前記凹部2の外側(前記金属箔3側)と側面側とに材壁をもつ略半柱状の形状である。こ場合は、前記第1変形例に比べて外力に対する強度が高い。
【0057】
図7Dは、実施形態3の被切削部材8の第3変形例を拡大して示す断面図である。
図7Dに示す被切削部材8の第3変形例は、前記凹部2に嵌合する筒状の形状である。この場合は、前記第2変形例に比べて被切削部材8自体の強度が高い。
【0058】
また、前記第1〜第3変形例は、(後述の)型によって前記金属箔3を切断する際、前記金属箔3と共に打ち抜くことが可能である。その場合は型刃の間隔を、図7Bの幅W、または、図7Cの幅W4、または、図7Dの幅W4に合わせる。
【0059】
なお、前記被切削部材8は、前記凹部2が前記四角形状の場合を示したが、前記四角形状以外の場合はその形状に合わせる。
【0060】
本実施形態3の金属箔基板においてパターンを形成する方法は、前記実施形態1と同様に、前記金属箔3を切断除去する方法である。その場合、本実施形態3では、前記金属箔3と前記被切削部材8とが貼り付いているため、前記被切削部材8を同時に切削する必要があるが、前記被切削部材8は良好な被切削性をもつため、前記実施形態1と同様に、カッターや彫刻刀などの一般的な工具によって容易に切削することができる。
【0061】
本実施形態3の利点は、前記被切削部材8を備えることによって、前記凹部2の外側における前記金属箔3を補強することができる。これにより、前記金属箔3に対して不可抗力的に外力が加わった場合の、前記金属箔3の変形や破損を防止できる点である。また、前記凹部2を補強する効果もあり、前記実施形態1の金属箔基板に比べて、前記基材1の反りやたわみを少なくできる利点もある。
【0062】
実施形態4.(実施形態4は請求項4に対応する。)
図8は、実施形態4の完成状態を示す断面図である。
図8に示すように、実施形態4の金属箔基板は、基材1と金属箔3とを有する。
【0063】
前記基材1の材料は、例えば、紙エポキシ積層材、ガラスコンポジット積層材、ガラスエポキシ積層材、耐熱性樹脂材、耐熱性樹脂複合材、などの絶縁性の材料である。
前記基材1は、第1基材1iと第2基材1sとからなる。前記第2基材1sの厚さは、前記第1基材1iに比べて被切断性が良好な厚さ(例えば、0.1mm〜0.3mm程度)である。前記第1基材1iの厚さは、前記基材1の板厚tから前記第2基材1sの厚さを引いた値である。
【0064】
前記第1基材1iに、格子状の凹部2を設ける。
前記第2基材1sを、前記第1基材1iにおける凸部4に貼り付け、前記金属箔3を、前記第2基材1sの外側に貼り付ける。前記貼り付けには、接着剤や粘着剤などを用いる。
前記第1基材1i、前記第2基材1s、前記金属箔3、を貼り付ける順序は、前記金属箔3と前記第2基材1sとを貼り付け、次に、前記凸部4と前記第2基材1sとを貼り付ける順序でもよい。
そして、前記凸部4と前記第2基材1sとが貼り付いたことによって、空間5が形成される。当該空間5は、前記第1基材1iに設けた前記凹部2と前記第2基材1sとによって形成された空間である。その位置は、前記第2基材1sと前記金属箔3とが接する面から前記第2基材1sの厚さ分を隔てた位置、つまり、前記基材1内部における前記金属箔3の近傍(外側付近)である。
【0065】
本実施形態4の金属箔基板においてパターンを形成する方法は、前記実施形態1と同様に、前記金属箔3を切断除去する方法である。その場合、本実施形態4では、前記金属箔3と前記第2基材1sとが貼り付いているため、前記第2基材1sを同時に切断する必要があるが、前記第2基材1sは、薄く良好な被切断性をもつため、前記実施形態1と同様に、カッターや彫刻刀などの一般的な工具によって容易に切断することができる。
【0066】
本実施形態4の利点は、前記第2基材1sを備えることによって、前記空間5の外側における前記金属箔3を補強することができる。これにより、前記金属箔3に対して不可抗力的に外力が加わった場合の、前記金属箔3の変形や破損を防止できる点と、前記金属箔3の補強用として前記基材1以外の材料を用いる必要がないため、材料コストの増加を抑えることができる点とである。
【0067】
図8では、前記金属箔3は前記基材1の片面に備えられているが、前記金属箔3は前記基材1の両面に備えてもよい。前記金属箔3を両面に備える場合は、前記凹部2および前記第2基材1sも両面に備える。
図8では、前記凹部2の形状は図3Aに示したV形状であるが、他の形状でもよい。
【0068】
実施形態5.(実施形態5は請求項5に対応する。)
図9は、実施形態5の貫通穴15を備えた例を示す傾斜図である。
図9に示すように、実施形態5の金属箔基板は、さらに、前記基材1にリード部品を実装するための貫通穴15を備える。その位置は、前記凸部4の各中央部分である。その間隔Pは、標準的な2.54mmに設定するのがよい。そして、その穴径は、部品のリード径を想定し、φ0.9mm〜φ1.1mm程度がよい。
【0069】
なお、本実施形態5の場合は、前記貫通穴15部分にφ2mm程度の部品ランドを形成してもよい。当該部品ランドは、前記貫通穴15を中心とするφ2mm程度の範囲を除いた前記金属箔3部分にソルダーレジストを塗布することによって形成することができる。
【0070】
本実施形態5の利点は、前記貫通穴15を備えることによって、ユーザーが穴開け加工の手間を省ける点である。
【0071】
実施形態6.(実施形態6は請求項6に対応する。)
図10は、実施形態6の表示16を備えた例を示す傾斜図である。
図10に示すように、実施形態6の金属箔基板は、さらに、前記金属箔3に表示16を備える。図10に示す表示16は、前記凹部2の中心位置を破線によって表示した例である。
前記表示16は、前記凹部2の中心位置または両端位置を、破線や実線などによって表す。もしくは、前記凹部2の領域を、ベタ塗りなどによって表す。
前記表示16の表現方法は、目視によって容易に視認できることを目的として、色や濃さや太さなどを組み合わせた様々な表現方法を用いることができる。
前記表示16を備える方法は、シルク印刷やインクジェット印刷や熱転写などの方法を用いる。
【0072】
本実施形態6の利点は、前記表示16を備えることによって、前記凹部2が存在する位置を目視によって認識することができる。そのため、ユーザーが前記表示16に沿って、切断や切削加工を効率良く行える点である。
【0073】
実施形態7.(実施形態7は請求項7に対応する。)
図11Aは、実施形態7の完成状態を示す断面図である。図11Bは、実施形態7の被切削層17の第1変形例を示す断面図、図11Cは、実施形態7の被切削層17の第2変形例を示す断面図である。
図11Aに示すように、実施形態7の金属箔基板は、基材1と金属箔3と被切削層17とを有する。前記被切削層17は、前記基材1と前記金属箔3との間に挟まれて配置される。
【0074】
前記基材1の材料は、例えば、紙エポキシ積層材、ガラスコンポジット積層材、ガラスエポキシ積層材、などの絶縁性の材料である。
前記被切削層17の材料は、絶縁性と、耐熱性と、前記基材1に比べて柔らかくて良好な被切削性と、をもつ。前記被切削層17には、例えば、耐熱性樹脂材やその複合材などを用いる。また、前記被切削層17の形状を、図11Bに示す第1変形例、または、図11Cに示す第2変形例のような形状にする場合は、さらに、良好な成形加工性をもつ材料が好ましい。
前記基材1と前記被切削層17とを貼り付け、次に、前記被切削層17と前記金属箔3とを貼り付ける。前記貼り付けの順序は逆でもよい。前記貼り付けには、接着剤や粘着剤などを用いる。
【0075】
本実施形態7の金属箔基板においてパターンを形成する方法は、前記実施形態1と同様に、前記金属箔3を切断除去する方法である。その場合、本実施形態7では、前記金属箔3と前記被切削層17とが貼り付いているため、前記被切削層17を同時に切削する必要があるが、前記被切削層17は、良好な被切削性をもつため、前記実施形態1と同様に、カッターや彫刻刀などの一般的な工具によって容易に切削することができる。
【0076】
なお、前記被切削層17が薄い場合は、狭いパターン間隔のパターンを形成しやすいが、広いパターン間隔のパターンを形成しにくい。
また、前記被切削層17が厚い場合は、広いパターン間隔のパターンを形成しやすいが、薄い場合に比べて材料費が増える。
したがって、前記被切削層17における層厚t2は、ユーザーの用途に合わせて、0.1mm〜0.8mm程度の範囲において設定するのがよい。このとき、前記基材1の厚さは、板厚tから、前記層厚t2を引いた値である。
【0077】
図11Aでは、前記金属箔3は前記基材1の片面に備えられているが、前記金属箔3は前記基材1の両面に備えてもよい。前記金属箔3を両面に備える場合は、前記被切削層17も両面に備える。
【0078】
本実施形態7の利点は、前記被切削層17を備えることによって、ユーザーが自由な形状のパターンを形成できる点である。例えば、曲線や任意角度のパターンを形成することも可能である。
【0079】
前記被切削層17は、良好な被切削性をもつが、厚くなるにつれて被切削性に影響が出る。これを改善するため、前記被切削層17は、図11Bに示す第1変形例のように、前記基材1と対向する面に複数の凹部22を設けて、前記基材1との間に空間23を形成するような形状でもよい。
【0080】
前記凹部22の形状は図3A図3Eに示したような形状(図3A図3Eを適用する場合は、図11Bに対して上下が逆)でもよいし、他の形状でもよい。この場合の肉厚t3および肉厚t4および幅W2は、前記層厚t2によって最適値が異なるが、強度が極端に低下せずに良好な被切削性が保たれる値(例えば、前記層厚t2が0.5mmを超える場合、0.2mm〜0.4mm程度)にすればよい。
【0081】
本第1変形例の利点は、前記層厚t2による被切削性への影響を緩和できる点である。さらに、本第1変形例における被切削層17を成形加工によって製作すれば、前記凹部22を設けない場合に比べて材料の量を少なくできる。
【0082】
また、図11Cに示す被切削層17の第2変形例のように、凹部22を前記金属箔3と対向する面に設けてもよい。本第2変形例は前記実施形態1と似ているが、本第2変形例における被切削層17の材料がもつ加工性に優れた性質によって、前記凹部22における幅W、および、凸部の間隔Pを狭めた高密度な凹凸を形成できる利点がある。
【0083】
実施形態8.(実施形態8は請求項8に対応する。)
図11Dは、実施形態8の方眼表示24を備えた例を示す傾斜図である。
図11Dに示すように、実施形態8の金属箔基板は、さらに、前記金属箔3に方眼表示24を備える。
当該方眼表示24は、寸法を実線や破線などによって方眼状に表示したものである。その表現方法は、目視によって容易に視認できることを目的として、色や濃さや太さなどを組み合わせた様々な表現方法を用いることができる。
前記寸法における単位(線の間隔)は、ユーザーの用途に合わせて、1ミリメートル、または1/10インチ、または1/20インチなどにすればよい。また、当該単位の5倍や10倍などの一定間隔毎に、前記実線や前記破線の表現方法を変えて強調してもよい。さらに目盛りを文字または数字によって表示してもよい。
前記方眼表示24を備える方法は、シルク印刷やインクジェット印刷や熱転写などの方法を用いる。
【0084】
本実施形態8の利点は、前記方眼表示24を備えることによって、ユーザーがパターンの採寸や位置合わせなどの作業を、前記方眼表示24に基づいて行うことができる。そのため、寸法に関する作業を効率良く行える点である。
【0085】
<本発明に係る金属箔基板において、型を用いて金属箔を切断することによってパターンを形成する方法>(請求項9)
図12Aは、パターンの形成に用いる型18の例を示す上面図である。図12Bは、型18によってパターンを形成する方法の例を示す断面図である。図12Cは、型18によって形成したパターンを示す上面図である。
図12Aに示すように、型18は先端部(刃部)19を備える。
当該型18の材料は、硬く耐久性のある金属がよいが、使用回数が少ない用途であれば、実用上問題のない強度をもつ安価な合成樹脂材料などでもよい。
ただし、前記型18を前記実施形態3の金属箔基板に用いる場合は、前記型18の材料は、前記実施形態3における前記被切削部材8より硬い材料にする。また、前記実施形態7の金属箔基板に用いる場合は、前記型18の材料は、前記実施形態7における前記被切削層17より硬い材料にする。
また、前記先端部(刃部)19部分のみを硬く耐久性のある材料とし、それ以外を安価な合成樹脂材料などによって構成してもよい。
【0086】
図12Bに示す例は、実施形態1の金属箔基板にICのフットパターンを形成する方法を示したものである。この例は、回路パターン全体における一部分についての形成例であって、回路パターン全体を示すものではない。
図12Bに示すように、凹部2の外側における金属箔3に前記型18の前記先端部(刃部)19を押し付け、前記先端部(刃部)19を前記凹部2に入り込ませて前記金属箔3を切断する。このとき、前記先端部(刃部)19の間隔W3を、前記凹部2内に隙間なく丁度入る値にすれば、前記先端部(刃部)19と前記凹部2における端部分との接触箇所において、前記金属箔3を圧迫できる。これにより、前記金属箔3を切断することができる。
そして切断後、不要な金属箔3c部分を除去すれば、図12Cに示すような、ICのフットパターン部(破線内)21を形成することができる。
【0087】
なお、本方法の場合に適した前記凹部2の形状は図3Cに示した四角形状であるが、前記四角形状以外であっても、前記先端部(刃部)19を鋭利にし、かつ、それを強く押し付けることによって前記金属箔3の切断は可能である。
【0088】
本方法の利点は、型を用いることによってパターンの形成における作業効率を向上できる点である。
型によるパターンの形成方法は、前記例に示したフットパターンのような定型パターンを形成する場合に効果的である。
さらに、全てのパターン形成に必要な切断作業を1つの型によって同時に行えば、同じパターンの回路基板を複数枚製作する場合において作業効率が非常によくなる。
【0089】
なお、前記先端部(刃部)19は、図12Bでは、前記凹部2に対して2つの先端部(刃部)を備える例を示したが、前記金属箔3を確実かつ綺麗に切断することを目的として、図示した例以外でもよい。
また、金属箔基板側に位置合わせ用のガイド穴を2箇所以上設け、その穴に嵌合する突起を型に設けるようにすれば、作業時の位置合わせが容易になり、かつ、切断精度が向上する。
【0090】
本発明の金属箔基板は、図示する形態に限らず、本発明の範囲内において、他の形態であってもよい。例えば、金属箔3と基材1とを分けて、ユーザーが組み合わせて使用することを目的とした、キットの形態としてもよい。
また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、変更、省略、置き換えを行うことができる。
【符号の説明】
【0091】
1 基材
1i 第1基材
1s 第2基材
2,22 凹部
3 金属箔
3a,3b,3d,3e,3f,3g,3h,3n,3s パターン
3c 不要な金属箔
4 凸部
4s 補助凸部
5,23 空間
7 薄膜層
8 被切削部材
9 仕切り
10 太実線
11 破線
12 部品穴
13 オペアンプ
14a,14b,14c,14d 抵抗器
15 貫通穴
16 表示
17 被切削層
18 型
19 先端部(刃部)
20 カッター
21 フットパターン部(破線内)
24 方眼表示
W,W2,W4 幅
P,W3 間隔
PWd パターン間隔
D 深さ
t 板厚
t2 層厚
t3,t4,t5 肉厚
【要約】      (修正有)
【課題】簡単な作業と安価な方法と電気的特性を優先した方法とによって、パターンを形成できる金属箔基板およびパターン形成方法を提供する。
【解決手段】基材1に格子状の凹部2を設け、その面に金属箔3を備えることによって、基材と金属箔との間に、凹部によって形成された空間をもつ。また基材は、第1基材と薄い第2基材とからなり、第1基材に凹部を設け、その面に第2基材を備え、金属箔を第2基材の外側に備えることによって、基材内の金属箔近くに、凹部によって形成された空間をもつ。
【選択図】図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図1