(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、近年、電子ペーパーなどに代表される薄くてフレキシブルな電子機器が注目されている。このようなフレキシブルな電子機器の製造工程においても、樹脂などの基材の表面に電極などの機能層を積層した被処理体のアニール処理が必須となる。
【0007】
従来、樹脂を基材とした被処理体のアニール処理は、比較的低温のオーブンによって数時間をかけて行うのが一般的であった。樹脂はシリコンやガラスの基板と比較して耐熱性が著しく低いため、オーブンの温度は比較的低温とせざるを得なかった。
【0008】
ところが、近年急速に展開されるフレキシブルな電子機器の種類によっては、機能層を樹脂の耐熱温度限界以上に加熱しなければならない場合もある。また、機能層の種類によっては、アニール時間を上述した半導体ウェハーの熱処理と同様に、より短時間としなければ所望の特性が得られないこともある。さらに、アニール時間に数時間を要すると、生産性が低くならざるを得ないという問題もあった。
【0009】
これらの課題を解決するため、樹脂を基材とした被処理体に対しても上述のフラッシュランプアニールを適用することが考えられる。フラッシュランプアニールであれば、アニール時間は極めて短く、被処理体表層の機能層のみを選択的に加熱することも可能である。
【0010】
しかしながら、フラッシュ光を照射した瞬間は被処理体表層の機能層のみが加熱されたとしても、その機能層からの伝熱によって下地の樹脂基材が耐熱温度以上に加熱されるおそれがある。特に、フレキシブルデバイスなどの場合、機能層の膜厚が数10nm〜数100nmであることが多く、フラッシュ光照射によって機能層の表面が加熱されると容易に下地の基材に熱伝導する。その結果、樹脂の基材が熱ダメージを受けて損傷するという問題は完全には解消されないこととなる。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被処理体に含まれる樹脂を損傷することなく、被処理体を光照射加熱することができる熱処理方法および熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、表層よりも下側に樹脂を含む被処理体に対して光を照射することによって当該被処理体を加熱する熱処理方法において、
前記被処理体は基材をエポキシ樹脂の接着剤にて貼設した構造を含み、前記被処理体の表層には前記基材の上面に金属ナノインクの機能層が積層され、前記被処理体の表層に対して10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下の照射時間にてフラッシュ光を照射して前記被処理体を加熱することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理方法において、前記フラッシュ光をフィルタを透過させて前記被処理体に照射することを特徴とする。
【0014】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る熱処理方法において、前記フィルタを透過させることにより前記フラッシュ光から所定の波長域をカットして前記被処理体に照射することを特徴とする。
【0015】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明に係る熱処理方法において、前記フラッシュ光から波長400nm以下の紫外光をカットすることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかの発明に係る熱処理方法において、前記被処理体は樹脂の基材を含むことを特徴とする。
【0018】
また、請求項
6の発明は、表層よりも下側に樹脂を含む被処理体に対して光を照射することによって当該被処理体を加熱する熱処理装置において、
前記被処理体は基材をエポキシ樹脂の接着剤にて貼設した構造を含み、前記被処理体の表層には前記基材の上面に金属ナノインクの機能層が積層され、前記被処理体を保持する保持手段と、前記保持手段に保持された前記被処理体の表層にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、前記フラッシュランプの発光を制御してフラッシュ光の照射時間を10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下とする発光制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0019】
また、請求項
7の発明は、請求項
6の発明に係る熱処理装置において、前記保持手段と前記フラッシュランプとの間に設けられたフィルタをさらに備えることを特徴とする。
【0020】
また、請求項
8の発明は、請求項
7の発明に係る熱処理装置において、前記フィルタは、前記フラッシュ光から所定の波長域をカットすることを特徴とする。
【0021】
また、請求項
9の発明は、請求項
8の発明に係る熱処理装置において、前記フィルタは、前記フラッシュ光から波長400nm以下の紫外光をカットすることを特徴とする。
【0022】
また、請求項
10の発明は、請求項
6から請求項
9のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記被処理体は樹脂の基材を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1から請求項
5の発明によれば、被処理体の表層に対して10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下の照射時間にてフラッシュ光を照射して当該被処理体を加熱するため、被処理体の表層から樹脂への熱伝導は最小限に抑制され、被処理体に含まれる樹脂を損傷することなく、被処理体を光照射加熱することができる。
【0025】
特に、請求項3の発明によれば、フィルタを透過させることによりフラッシュ光から所定の波長域をカットして被処理体に照射するため、当該波長域の光によって樹脂を損傷することが防止される。
【0026】
また、請求項
6から請求項
10の発明によれば、フラッシュランプの発光を制御してフラッシュ光の照射時間を10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下とするため、被処理体の表層から樹脂への熱伝導は最小限に抑制され、被処理体に含まれる樹脂を損傷することなく、被処理体を光照射加熱することができる。
【0027】
特に、請求項
8の発明によれば、フィルタがフラッシュ光から所定の波長域をカットするため、当該波長域の光によって樹脂を損傷することが防止される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る熱処理装置1の要部構成を示す図である。この熱処理装置1は、樹脂を基材とした被処理体8に対して光を照射することによって、その被処理体8を加熱する装置である。熱処理装置1は、主たる要素として、被処理体8を収容するチャンバー10と、被処理体8を保持する保持プレート20と、被処理体8にフラッシュ光を照射する加熱光源70と、光学フィルタ60と、を備える。また、熱処理装置1は、装置に設けられた各種動作機構を制御して処理を進行させる制御部3を備える。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0031】
チャンバー10は、加熱光源70の下方に設けられており、チャンバー側壁11およびチャンバー底部12によって構成される。チャンバー底部12は、チャンバー側壁11の下部を覆う。チャンバー側壁11およびチャンバー底部12によって囲まれる空間が熱処理空間15として規定される。また、チャンバー10の上部開口にはチャンバー窓18が装着されて閉塞されている。
【0032】
チャンバー10の天井部を構成するチャンバー窓18は、石英により形成された板状部材であり、加熱光源70から照射された光を熱処理空間15に透過する石英窓として機能する。チャンバー10の本体を構成するチャンバー側壁11およびチャンバー底部12は、例えば、ステンレススチール等の強度と耐熱性に優れた金属材料にて形成されている。
【0033】
また、熱処理空間15の気密性を維持するために、チャンバー窓18とチャンバー側壁11とは図示省略のOリングによってシールされている。すなわち、チャンバー窓18の下面周縁部とチャンバー側壁11との間にOリングを挟み込み、これらの隙間から気体が流出入するのを防いでいる。
【0034】
チャンバー10の内部には保持プレート20が設けられている。保持プレート20は、金属製(例えば、アルミニウム製)の平坦な板状部材である。保持プレート20は、チャンバー10内にて被処理体8を載置して水平姿勢に保持する。また、保持プレート20はヒータ21を内蔵する。ヒータ21は、ニクロム線などの抵抗加熱線で構成されており、図外の電力供給源からの電力供給を受けて発熱し、保持プレート20を加熱する。なお、保持プレート20には、ヒータ21に加えて、水冷管等の冷却機構を設けるようにしても良い。
【0035】
保持プレート20には、熱電対を用いて構成された図示省略の温度センサが設けられている。温度センサは保持プレート20の上面近傍の温度を測定し、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、温度センサによる測定結果に基づいて、ヒータ21の出力を制御し、保持プレート20を所定の温度とする。保持プレート20に保持された被処理体8は、保持プレート20によって所定の温度に加熱されることとなる。
【0036】
また、熱処理装置1は、チャンバー10内の熱処理空間15に処理ガスを供給するガス供給機構40および熱処理空間15から雰囲気の排気を行う排気機構50を備える。ガス供給機構40は、処理ガス供給源41、供給配管42および供給バルブ43を備える。供給配管42の先端側はチャンバー10内の熱処理空間15に連通接続され、基端側は処理ガス供給源41に接続される。供給配管42の経路途中に供給バルブ43が設けられる。供給バルブ43を開放することによって、処理ガス供給源41から熱処理空間15に処理ガスが供給される。処理ガス供給源41は、被処理体8の種類や処理目的に応じた適宜の処理ガスを供給することが可能であるが、本実施形態では窒素ガス(N
2)を供給する。
【0037】
排気機構50は、排気装置51、排気配管52および排気バルブ53を備える。排気配管52の先端側はチャンバー10内の熱処理空間15に連通接続され、基端側は排気装置51に接続される。排気配管52の経路途中に排気バルブ53が設けられる。排気装置51としては、真空ポンプや熱処理装置1が設置される工場の排気ユーティリティを用いることができる。排気装置51を作動させつつ、排気バルブ53を開放することによって、熱処理空間15の雰囲気を装置外に排出することができる。これらガス供給機構40および排気機構50によって、熱処理空間15の雰囲気を調整することができる。
【0038】
加熱光源70は、チャンバー10の上方に設けられている。加熱光源70は、複数本(
図1では図示の便宜上11本としているが、これに限定されるものではない)のフラッシュランプFLと、それら全体の上方を覆うように設けられたリフレクタ72と、を備えて構成される。加熱光源70は、チャンバー10内にて保持プレート20に保持される被処理体8に対して後述する光学フィルタ60および石英のチャンバー窓18を介してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射する。複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が水平方向に沿って互いに平行となるように平面状に配列されている。
【0039】
図2は、フラッシュランプFLの駆動回路を示す図である。同図に示すように、コンデンサ93と、コイル94と、フラッシュランプFLと、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)96とが直列に接続されている。また、
図2に示すように、制御部3は、パルス発生器31および波形設定部32を備えるとともに、入力部33に接続されている。入力部33としては、キーボード、マウス、タッチパネル等の種々の公知の入力機器を採用することができる。入力部33からの入力内容に基づいて波形設定部32がパルス信号の波形を設定し、その波形に従ってパルス発生器31がパルス信号を発生する。
【0040】
本実施形態では、フラッシュランプFLとしてキセノンフラッシュランプを用いている。フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部に陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)92と、該ガラス管92の外周面上に付設されたトリガー電極91とを備える。コンデンサ93には、電源ユニット95によって所定の電圧が印加され、その印加電圧(充電電圧)に応じた電荷が充電される。また、トリガー電極91にはトリガー回路97から高電圧を印加することができる。トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加するタイミングは制御部3によって制御される。
【0041】
IGBT96は、ゲート部にMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)を組み込んだバイポーラトランジスタであり、大電力を取り扱うのに適したスイッチング素子である。IGBT96のゲートには制御部3のパルス発生器31からパルス信号が印加される。IGBT96のゲートに所定値以上の電圧(Highの電圧)が印加されるとIGBT96がオン状態となり、所定値未満の電圧(Lowの電圧)が印加されるとIGBT96がオフ状態となる。このようにして、フラッシュランプFLを含む駆動回路はIGBT96によってオンオフされる。IGBT96がオンオフすることによってフラッシュランプFLと対応するコンデンサ93との接続が断続される。
【0042】
コンデンサ93が充電された状態でIGBT96がオン状態となってガラス管92の両端電極に高電圧が印加されたとしても、キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、通常の状態ではガラス管92内に電気は流れない。しかしながら、トリガー回路97がトリガー電極91に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には両端電極間の放電によってガラス管92内に電流が瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
【0043】
また、リフレクタ72は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ72の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間15の側に反射するというものである。
【0044】
チャンバー10のチャンバー窓18と加熱光源70との間に光学フィルタ60が配設されている。本実施形態の光学フィルタ60は、石英ガラスにバリウム(Ba)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、カドミウム(Cd)などの金属を溶解させて形成される板状の光学部材である。より詳細には、石英ガラスにバリウム、ヒ素、アンチモン、カドミウムからなる群より選択された少なくとも1以上の金属を溶解させて含有させる。石英ガラスに金属成分を含有させることにより、光学フィルタ60を透過する光から所定の波長域の光が反射または吸収されてカット(遮光)される。カットされる波長域は、石英ガラスに溶解させる金属の種類に依存する。本実施形態の光学フィルタ60は、波長400nm以下の紫外光をカットする。
【0045】
チャンバー10と加熱光源70との間に光学フィルタ60を設けることによって、フラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光が光学フィルタ60を透過するときに、波長400nm以下の紫外光がカットされる。そして、残る波長400nm以上の波長域の成分を有するフラッシュ光が光学フィルタ60を透過して保持プレート20に保持された被処理体8に照射されることとなる。
【0046】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えて構成される。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。また、
図2に示したように、制御部3は、パルス発生器31および波形設定部32を備える。上述のように、入力部33からの入力内容に基づいて、波形設定部32がパルス信号の波形を設定し、それに従ってパルス発生器31がIGBT96のゲートにパルス信号を出力する。
【0047】
上記の構成以外にも熱処理装置1には、種々の構成要素が適宜設けられる。例えば、チャンバー側壁11には、被処理体8を搬入出するための搬送開口部が形設されている。また、フラッシュランプFLからの光照射による過剰な温度上昇を防止するために、チャンバー側壁11に水冷管を設けるようにしても良い。さらに、フラッシュ光を吸収することによる光学フィルタ60の加熱を防止するために、光学フィルタ60に冷却エアを吹き付ける機構を設けるようにしても良い。
【0048】
次に、上記構成を有する熱処理装置1における被処理体8の処理手順について説明する。
図3は、熱処理装置1における被処理体8の処理手順を示すフローチャートである。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0049】
まず、チャンバー10内に被処理体8が搬入される(ステップS1)。被処理体8の搬入は、熱処理装置1外部の搬送ロボットによって行うようにしても良いし、手動にて行うようにしても良い。
図4は、被処理体8の構造を示す断面図である。本実施形態の被処理体8は、樹脂の基材81の上面に機能層82を積層して構成される。基材81の樹脂としては、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などを採用することができる。また、機能層82は、電極形成用の銀(Ag)のナノインクの層である。
図4に示すように、被処理体8は、表層に機能層82を形成しており、表層よりも下側に樹脂の基材81を含む。
【0050】
チャンバー10内に搬入された被処理体8は保持プレート20の上面に載置されて保持される(ステップS2)。被処理体8は、機能層82が形成された表面を上面側に向けて保持プレート20に保持される。保持プレート20の上面は、内蔵するヒータ21によって予め所定温度に加熱されている。保持プレート20の上面温度は制御部3によって制御されている。被処理体8は保持プレート20に載置されることによって熱伝導により加熱される。
【0051】
また、被処理体8がチャンバー10内に搬入されて、熱処理空間15が密閉空間とされた後、チャンバー10内の雰囲気調整が行われる(ステップS3)。本実施形態では、ガス供給機構40からチャンバー10内の熱処理空間15に窒素ガスを供給するとともに、排気機構50による排気を行う。これにより、チャンバー10内に窒素ガスの気流が形成され、熱処理空間15が窒素雰囲気に置換される。
【0052】
図5は、被処理体8の機能層82の温度変化を示す図である。時刻t1に被処理体8がチャンバー10内に搬入され、時刻t2にその被処理体8が保持プレート20に保持される。これにより、時刻t2に保持プレート20による被処理体8の予備加熱(アシスト加熱)が開始され、時刻t3に被処理体8の温度が所定の予備加熱温度T1に到達する。被処理体8が保持プレート20によって加熱されるときには、樹脂の基材81および機能層82を含む被処理体8の全体がほぼ均一に加熱される。従って、この予備加熱の段階では、基材81および機能層82がともに同様に予備加熱温度T1にまで昇温する。予備加熱温度T1は、樹脂の基材81に熱的ダメージを与えない範囲(PEN、PETであれば約120℃以下)で適宜に設定される。
【0053】
続いて、被処理体8の温度が予備加熱温度T1に到達した後、時刻t4に制御部3の制御により加熱光源70のフラッシュランプFLから保持プレート20に保持された被処理体8へ向けてフラッシュ光が照射される(ステップS4)。フラッシュランプFLがフラッシュ光照射を行うに際しては、予め電源ユニット95によってコンデンサ93に電荷を蓄積しておく。そして、コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にて、制御部3のパルス発生器31からIGBT96にパルス信号を出力してIGBT96をオンオフ駆動する。
【0054】
パルス信号の波形は、パルス幅の時間(オン時間)とパルス間隔の時間(オフ時間)とをパラメータとして順次設定したレシピを入力部33から入力することによって規定することができる。本実施形態においては、10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下のオン時間とその後の任意のオフ時間とを設定、つまり幅が10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下の1パルスを設定したレシピを装置のオペレータが入力部33から入力する。このようなレシピを入力部33から制御部3に入力すると、それに従って制御部3の波形設定部32は幅が10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下となる1パルス分のパルス波形を設定する。そして、波形設定部32によって設定されたパルス波形に従ってパルス発生器31がパルス信号を出力する。その結果、IGBT96のゲートには幅が10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下となる1パルス分のパルス信号が印加され、IGBT96のオンオフ駆動が制御されることとなる。具体的には、IGBT96のゲートに入力されるパルス信号がオンのときにはIGBT96がオン状態となり、パルス信号がオフのときにはIGBT96がオフ状態となる。本実施形態では、IGBT96のゲートに幅が10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下となる1パルス分のパルス信号が印加されるため、IGBT96は10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下オン状態となった後にオフ状態となる。
【0055】
また、パルス発生器31から出力するパルス信号がオンになるタイミングと同期して制御部3がトリガー回路97を制御してトリガー電極91に高電圧(トリガー電圧)を印加する。コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にてIGBT96のゲートにパルス信号が入力され、かつ、そのパルス信号がオンになるタイミングと同期してトリガー電極91に高電圧が印加されることにより、パルス信号がオンのときにガラス管92内の両端電極間で電流が流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
【0056】
このように、制御部3からIGBT96のゲートに幅が10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下となる1パルス分のパルス信号を出力するとともに、該パルス信号がオンになるタイミングと同期してトリガー電極91に高電圧を印加することにより、フラッシュランプFLに電流が流れてフラッシュ光が放射される。そして、該パルス信号がオフになると、IGBT96もオフ状態となり、フラッシュランプFLに流れる電流が遮断されてフラッシュ光の放射も停止される。このようにして、フラッシュランプFLに10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下の通電時間にて電流を流し、フラッシュランプFLの発光時間を10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下としてるのである。
【0057】
図6は、フラッシュランプFLの発光時間制御を説明する図である。IGBT96を使用することなくフラッシュランプFLを発光させた場合には、コンデンサ93に蓄積されていた電荷のほとんどが一時に消費され、フラッシュランプFLの発光強度の波形は
図6の点線にて示すようなものとなる。この場合のフラッシュランプFLの発光時間は、主にコイル94のインダクタンスに依存しているが、概ね数ミリ秒程度である。
【0058】
本実施形態においては、フラッシュランプFLを含む回路中にスイッチング素子たるIGBT96を接続してそのゲートに幅が10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下となる1パルス分のパルス信号を出力している。これにより、コンデンサ93からフラッシュランプFLへの電荷の供給をIGBT96によって断続し、フラッシュランプFLに電流が流れる時間を10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下に制御している。フラッシュランプFLは、両端電極間で電流が流れているときのみ発光する。すなわち、IGBT96によってフラッシュランプFLへの通電時間を10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下とすることにより、フラッシュランプFLの発光強度の波形は図
6の実線にて示すようなものとなり、その発光時間も10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下となるのである。
【0059】
フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー10内の保持プレート20へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ72により反射されてからチャンバー10内へと向かう。このとき、フラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光は、光学フィルタ60を透過した後に熱処理空間15に入射する。本実施形態では、波長400nm以下の紫外光をカットする光学フィルタ60が加熱光源70とチャンバー窓18との間に設置されているため、フラッシュ光が光学フィルタ60を透過するときに400nm以下の波長域の紫外光がカットされる。その結果、チャンバー10内の熱処理空間15には、波長400nm以下の紫外光がカットされたフラッシュ光が入射されることとなる。そして、紫外光がカットされ、かつ、照射時間が10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下となるフラッシュ光が保持プレート20に保持された被処理体8の表層に照射され、その表層に形成された機能層82が加熱される。
【0060】
フラッシュランプFLからフラッシュ光が照射された機能層82の温度は、瞬間的に処理温度T2にまで上昇し、その後急速に予備加熱温度T1にまで下降する。このようなフラッシュ加熱によって、機能層82に対する必要な熱処理が行われる。機能層82が銀のナノインクであれば、処理温度T2は約180℃である。
【0061】
ここで、本実施形態においては、フラッシュランプFLの照射時間を10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下の極めて短時間としている。このため、被処理体8の表層側に位置する機能層82のみが選択的に加熱されて処理温度T2にまで昇温される。また、フラッシュ光の照射時間が10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下の極めて短時間であれば、加熱された機能層82から下地の基材81への熱伝導は最小限に抑制される。従って、機能層82のみが処理温度T2にまで昇温され、基材81は予備加熱温度T1からほとんど昇温しない。本実施形態の処理温度T2(180℃)は、PENまたはPETの基材81の耐熱温度を超える温度であるが、機能層82のみが処理温度T2にまで昇温されて基材81はほとんど昇温しないため、耐熱性の乏しい基材81に熱的ダメージを与えることは防止される。その一方、機能層82については必要な処理温度T2にまで昇温されるため、確実に所望の熱処理がなされることとなる。すなわち、本実施形態のように照射時間が10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下のフラッシュ光照射によって被処理体8を加熱すれば、耐熱性に乏しい基材81であっても、基材81を過度に加熱することなく、機能層82を基材81の耐熱温度を超える目標処理温度T2にまで昇温して確実な熱処理を行うことができる。
【0062】
また、基材81を構成する樹脂材料は耐熱性に乏しいのみならず、紫外光によっても劣化しやすい。例えば、PENであれば200nm〜400nmの波長域の光によって劣化し、PETであれば200nm〜380nmの波長域の光によって劣化する。
【0063】
図7は、キセノンのフラッシュランプFLの放射分光分布を示す図である。同図に示すように、キセノンのフラッシュランプFLから出射されるフラッシュ光には、波長400nm以下の紫外光成分も多く含まれる。従って、フラッシュランプFLからのフラッシュ光をそのまま被処理体8に照射すると、基材81が紫外光成分を吸光して損傷することとなる。
【0064】
このため、本実施形態では、加熱光源70とチャンバー窓18との間に波長400nm以下の紫外光をカットする光学フィルタ60を設置し、被処理体8の表面に照射されるフラッシュ光から波長400nm以下の紫外光をカットしている。これにより、フラッシュ光に含まれる紫外光成分によって被処理体8の基材81が損傷するのを防止することができる。その一方、被処理体8の表面に照射されるフラッシュ光には強度が比較的強い波長400nmよりも長波長側の光はそのまま含まれているため、機能層82に対する必要な熱処理は確実に実行することができる。
【0065】
フラッシュ光照射による被処理体8のフラッシュ加熱処理が終了して所定時間が経過した後、チャンバー10から処理後の被処理体8が搬出される(ステップS5)。これにより、熱処理装置1における一連の熱処理が完了する。なお、被処理体8を搬出する前に、チャンバー10内を大気雰囲気に置換するようにしても良い。
【0066】
本実施形態においては、樹脂の基材81の上面に機能層82を積層した被処理体8に対してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射してフラッシュ加熱処理を行っている。このとき、IGBT96によってフラッシュランプFLへの通電時間を10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下とすることにより、フラッシュ光照射時間を10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下としている。
【0067】
フラッシュ光照射時間を従来(
図6の点線)よりも顕著に短い10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下としているため、昇温した機能層82から下地の樹脂基材81への熱伝導は最小限に抑制される。よって、表層の機能層82からの熱伝導による樹脂の基材81の損傷を防止することができる。その一方、機能層82については必要な処理温度T2にまで昇温されるため、確実に所望の熱処理がなされることとなる。すなわち、本実施形態では、被処理体8に対して10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下の照射時間にてフラッシュ光を照射することにより、被処理体に含まれる樹脂の基材81を損傷することなく、機能層82のみを必要な処理温度T2にまで昇温して所望の熱処理を実行することができるのである。
【0068】
このような極めて短時間の光照射を行う技術としては、従来よりレーザーアニールが知られている。しかしながら、レーザーアニールは、被処理体8に対して面ではなく線で光照射を行って加熱するため、処理ムラが発生することがある。また、線で光照射を行って加熱するため、被処理体8の全面を処理するのには相当な時間を要することとなる。
【0069】
これに対して、本発明のように、照射時間が10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下のフラッシュ光照射であれば、被処理体8の全面に一括照射を行うため、レーザーアニールで問題となる処理ムラが生じることはない。また、レーザーアニールに比較して、被処理体8の全面の処理に要する時間は顕著に短くなる(純粋なプロセスのみに要する時間は10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下)。その結果、熱処理装置1の処理時間も短いものとなる。換言すれば、本発明に係る技術は、短時間光照射を行うレーザーアニールの利点(熱伝導の抑制)と、全面一括光照射を行うフラッシュランプアニールの利点(処理時間の短縮)とを兼ね備えたものである。
【0070】
また、本実施形態においては、保持プレート20とフラッシュランプFLとの間に、波長400nm以下の紫外光をカットする光学フィルタ60を設置してフラッシュ光照射を行っている。このため、フラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光が光学フィルタ60を透過するときに400nm以下の波長域の紫外光がカットされる。よって、被処理体8の表面に照射されるフラッシュ光からは波長400nm以下の紫外光がカットされており、紫外光による樹脂の基材81の損傷を防止することができる。その一方、被処理体8の表面に照射されるフラッシュ光には比較的強度が強い波長400nmよりも長波長側の光はそのまま含まれているため、フラッシュ光照射によって被処理体8の機能層82を必要な処理温度T2にまで昇温することができる。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、PENまたはPETの基材81の上面に銀のナノインクの機能層82を積層したものを被処理体8としていたが、被処理体8はこれに限定されるものではなく、種々のバリエーションが可能である。
【0072】
例えば、上記実施形態では被処理体8の基材81をPENまたはPETとしていたが、これに代えてポリカーボネートやアクリル樹脂などの他の樹脂材料を用いるようにしても良い。これらの樹脂材料も耐熱性に乏しく、紫外光によって劣化する。ポリカーボネートおよびアクリル樹脂ともに200nm〜300nmの波長域の光によって劣化する。基材81としてポリカーボネートまたはアクリル樹脂を用いる場合には、光学フィルタ60のカット波長域を300nm以下とする。光学フィルタ60のカット波長域の調整は、石英ガラスに溶解させる金属の種類を変化させることによって可能である。波長300nm以下の紫外光をカットする光学フィルタ60を設け、フラッシュ光照射時間を10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下とすることにより、上記実施形態と同様に、樹脂の基材81を損傷することなく、機能層82を必要な処理温度T2にまで昇温して加熱処理を行うことができる。
【0073】
また、基材81に積層する機能層82も銀のナノインクに限定されるものではなく、銅などの他の金属のナノインク(またはナノワイヤ)であっても良い。機能層82が銅であれば、上記実施形態における処理温度T2は約400℃となる。さらに、機能層82は、アモルファスシリコン、ドーピング後のポリシリコン、ITO(酸化インジウムスズ)、グラビアインクなどであっても良い。機能層82がITOである場合、処理温度T2は約220℃となる。また、機能層82がシリコンであれば、処理温度T2は900℃以上にもなる。
【0074】
また、被処理体8の構造は
図8に示すようなものであっても良い。
図8の被処理体8は、ガラス基板83の上面に接着剤84を用いてガラスの基材81を貼着し、その基材81の上面に機能層82を積層して構成される。接着剤84としては、例えばエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ系接着剤を用いることができる。エポキシ系接着剤の耐熱温度は約160℃である。比較的剛性の高いガラス基板83を用いることによって、被処理体8の取り扱いは、樹脂の基材81上に機能層82を積層した上記実施形態よりも容易となる。
図8の被処理体8も表層よりも下側に樹脂の接着剤84を含むものである。なお、必要な処理が終了した後、基材81をガラス基板83から剥がし、機能層82を積層した基材81をデバイスとして利用する。
【0075】
図8のような構造を有する被処理体8に対しても上記実施形態と同様にして熱処理装置1によるフラッシュ加熱が行われる。ガラス基板83およびガラスの基材81は、耐熱性に富み、また紫外光による劣化も生じない。しかし、樹脂の接着剤84は、上記実施形態の基材81と同様に、耐熱性に乏しく、紫外光によって劣化しやすい。このため、上記実施形態と同様に、フラッシュ光照射時間を10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下とし、光学フィルタ60によって被処理体8の表面に照射されるフラッシュ光から波長400nm以下の紫外光をカットすることにより、樹脂の接着剤84に紫外光による損傷および熱的ダメージを与えることなく、機能層82のみを必要な処理温度にまで昇温して所望の熱処理を実行することができる。
【0076】
要するに、本発明に係る熱処理技術によって処理対象となる被処理体8は表層よりも下側に樹脂を含むものであれば良い。
図4の例では被処理体8が樹脂の基材81を含み、
図8の例では被処理体8が基材81を樹脂の接着剤84にて貼設した構造を含む。このような被処理体8に対して本発明に係る熱処理技術によって加熱処理を行うことにより、被処理体8に含まれる樹脂を損傷することなく、被処理体8を光照射加熱することができる。
【0077】
また、上記実施形態においては、IGBT96によってフラッシュランプFLへの通電時間を10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下としていたが、これに限定されるものではなく他の手法によってフラッシュ光照射時間を10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下に規定するようにしても良い。例えば、回路中にIGBT96を設けることなく、コイル94のインダクタンスおよびコンデンサ93の静電容量を調整することによってフラッシュランプFLへの通電時間を10マイクロ秒以上100マイクロ秒以下とするようにしても良い。
【0078】
また、上記実施形態においては、スイッチング素子としてIGBT96を用いていたが、これに代えてゲートに入力された信号レベルに応じて回路をオンオフできる他のトランジスタを用いるようにしても良い。もっとも、フラッシュランプFLの発光には相当に大きな電力が消費されるため、大電力の取り扱いに適したIGBTやGTO(Gate Turn Off)サイリスタをスイッチング素子として採用するのが好ましい。
【0079】
また、上記実施形態においては、石英ガラスに所定の金属成分を含有させたものを光学フィルタ60として用いていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュ光から所定波長域の光をカットできるものであれば良い。例えば、所定の色のインクによって着色した水を中空のガラス部材に封入したものを光学フィルタ60としても良い。或いは、石英ガラスの表面に金属または金属酸化物の薄膜を成膜することによって光学フィルタ60を形成するようにしても良い。もっともこのような薄膜は、フラッシュ光照射時の急速な昇温によって剥離するおそれがあるため、石英ガラスに金属を溶解させる方が好ましい。
【0080】
さらに、フラッシュランプFL自体の構成を異なるものとすることによって所定の波長域の光をカットするようにしても良い。具体的には、フラッシュランプFLのガラス管内部に封入されているキセノンガスのガス圧を低くすると、
図7の放射分光分布が長波長側にシフトする。その結果、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光自体から短波長側の紫外光をカットすることができる。逆に、フラッシュ光から長波長側の赤外光をカットする場合には、封入されているキセノンガスのガス圧を高くすれば良い。もっとも、キセノンガスのガス圧を変化させると、フラッシュ光の強度が低くなったり、或いはフラッシュランプFLにダメージを与えることがあるため、上記実施形態のように光学フィルタ60によって所定の波長域の光をカットするのが望ましい。
【0081】
また、光学フィルタ60がカットする波長域は400nm以下に限定されるものではなく、被処理体8に含まれる樹脂の特性に応じた適宜のものとすれば良い。例えば、上述したように、被処理体8に含まれる樹脂がポリカーボネートまたはアクリル樹脂であれば、光学フィルタ60がカットする波長域は300nm以下であれば良い。また、被処理体8に含まれる樹脂がPENであれば、200nm〜400nmの波長域の光によって劣化するため、200nm〜400nmの波長域の光のみをカットする光学フィルタ60を適用するようにしても良い。さらに、被処理体8に含まれる樹脂が長波長の赤外光によって劣化する性質を有する場合には、赤外光をカットする光学フィルタ60を用いるようにしても良い。すなわち、光学フィルタ60がカットする波長域は、被処理体8に含まれる樹脂を損傷する波長域であれば良い。
【0082】
また、光学フィルタ60は、特定の波長域をカットするものに限定されず、全波長域にわたって光量を低減するものであっても良い。このような光学フィルタ60としては、例えば石英ガラスの表面を粗面化して擦りガラス状としたものを用いることができる。被処理体8に含まれる樹脂が耐熱性には乏しいものの、特定波長域に対して劣化する性質を有さないものであれば、このような光学フィルタ60を用いることによって被処理体8に照射されるフラッシュ光の強度を低くすることができ、被処理体8に含まれる樹脂の損傷をより確実に防止することができる。
【0083】
また、被処理体8に含まれる樹脂が特定波長域に対して劣化する性質を有さないものであれば、光学フィルタ60は必ずしも必須の要素ではない。
【0084】
また、上記実施形態においては、保持プレート20にヒータ21を備え、フラッシュ光照射前に被処理体8を予備加熱するようにしていたが、処理温度T2が比較的低温である場合には、フラッシュ光照射のみによって機能層82を処理温度T2にまで昇温することができるため、ヒータ21による予備加熱は必ずしも必須の要素ではない。もっとも、保持プレート20によって被処理体8を予備加熱温度T1に安定して加熱してからフラッシュ光照射を行うことにより、異なる複数の被処理体8間での温度履歴を均一にすることができる。
【0085】
また、保持プレート20に冷却機構を設け、フラッシュ加熱処理後の被処理体8を強制的に冷却するようにしても良い。
【0086】
また、上記実施形態においては、複数のフラッシュランプFLの上方にリフレクタ72を設けるようにしていたが、これに代えて、複数のフラッシュランプFLのそれぞれを反射膜付きのランプとしても良い。すなわち、各フラッシュランプFLのガラス管の上側半分に反射膜を付け、それによってフラッシュ光を熱処理空間15の側に反射する。このような反射膜付きのフラッシュランプFLを用いる場合には、
図9に示すように、ランプ配列の両端におけるフラッシュランプFLを他のフラッシュランプFLよりも下方(被処理体8に近い側)に配置し、被処理体8の周辺部の照度を高めるようにしても良い。この場合、ランプ配列の両端のそれぞれにおいて、2本以上のフラッシュランプFLを被処理体8に近づけて配置するようにしても良い。
【0087】
また、上記実施形態では、加熱光源70にキセノンのフラッシュランプFLを備えていたが、これに代えてクリプトンなどの他の希ガスのフラッシュランプを用いるようにしても良い。