(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093138
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】採光構造
(51)【国際特許分類】
F21S 11/00 20060101AFI20170227BHJP
F21V 3/00 20150101ALI20170227BHJP
E06B 9/24 20060101ALI20170227BHJP
F21Y 111/00 20160101ALN20170227BHJP
【FI】
F21S11/00 300
F21V3/00 320
E06B9/24 Z
F21Y111:00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-225007(P2012-225007)
(22)【出願日】2012年10月10日
(65)【公開番号】特開2014-78376(P2014-78376A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年6月3日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】北 典夫
(72)【発明者】
【氏名】仙波 武士
(72)【発明者】
【氏名】須都 信義
(72)【発明者】
【氏名】弘本 真一
(72)【発明者】
【氏名】大和田 淳
【審査官】
竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−163065(JP,A)
【文献】
特開平11−315673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 11/00
E06B 9/24
F21V 3/00
F21Y 111/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外周部に取り付けられ、上下に複数設けられた第1のガラス体と、
下にある前記第1のガラス体から前記建物の外側へ離間して、下にある前記第1のガラス体の上部を覆うように取り付けられる、可視光を拡散して透過させる第2のガラス体と、
を有し、
前記第1のガラス体は、下方に向かって前記建物の外側へ傾斜するように取り付けられ、
上にある前記第1のガラス体と前記第2のガラス体は、下方に向かって前記建物の外側へ傾斜するように、同じ傾斜で連続して設けられることを特徴とする採光構造。
【請求項2】
前記第1のガラス体の近傍に取り付けられる、羽根板の角度が調整可能なブラインドを更に有することを特徴とする請求項1に記載の採光構造。
【請求項3】
前記ブラインドが、前記第2のガラス体に対応する位置にある上部と、その下にある下部とで前記羽根板を異なる角度に調整可能であることを特徴とする請求項2に記載の採光構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽光を建物内に取り込む採光構造に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギーの観点から、太陽光を建物内の照明として有効利用することが望まれている。しかしながら、直射日光をそのまま導入するとグレアなどの原因となり室内照明としては必ずしも適さないので、グレア等の問題を防ぎつつ太陽光を照明として利用するため様々な工夫が行われる。
【0003】
例えば、特許文献1の採光構造では、上下の窓の間に外方に向かって張り出す採光調整板を設けるとともに、上の窓にルーバーを設け、これにより直射日光を遮蔽しつつ太陽光を拡散反射させて取り込んで照明として用いている。また、特許文献2では、太陽光の照明利用を行うとともに直射日光を遮るために、ガラス等のパネルと庇を設けた例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−172926号公報
【特許文献2】特開平9−328852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような太陽光の照明利用と直射日光の遮蔽は太陽光を操作する上では相反するので、従来の例ではこれらを両立するために大きな構造となったり複雑になったりしがちであった。これにより、施工やメンテナンスの手間がかかったり、室内からの眺望が遮られて建物内の人間に閉塞感を与える場合があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、室内の人間に閉塞感を与えることなく、簡易な構成で太陽光の照明利用と直射日光の遮蔽を両立できる採光構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための第1の発明は、建物の外周部に取り付けられ、上下に複数設けられた第1のガラス体と、下にある前記第1のガラス体から前記建物の外側へ離間して、下にある前記第1のガラス体の上部を覆うように取り付けられる、可視光を拡散して透過させる第2のガラス体と、を有し、前記第1のガラス体は、下方に向かって前記建物の外側へ傾斜するように取り付けられ、上にある前記第1のガラス体と前記第2のガラス体
は、下方に向かって前記建物の外側へ傾斜するように、同じ傾斜で連続して設けられることを特徴とする採光構造である。
【0008】
本発明では、建物の外周部の第1のガラス体と、第1のガラス体の外側で第1のガラス体の上部を覆うようにして取り付けた第2のガラス体によって採光構造を構成する。第2のガラス体は可視光の拡散透過性を有するので、建物内への直射日光を遮蔽する庇の役割を果たすとともに、第2のガラス体に入射した直射日光を拡散して透過させ、照明光として有効利用することができる。
このように拡散透過性を有する第2のガラス体によって太陽光の照明利用と直射日光の遮蔽を両立させることにより、簡易な採光構造によって窓周りの光環境を最適化することができ、施工やメンテナンスの手間もかからない。また、第2のガラス体の拡散透過率等を調整することである程度の眺望も確保でき、第1のガラス体の下部からも外景が見えるので、閉塞感を軽減することができる。
【0009】
また第1のガラス体と第2のガラス体を連続的に形成することで、より簡易な構成となり、施工やメンテナンスがさらに容易になる。
【0010】
また、前記採光構造は、前記第1のガラス体の近傍に取り付けられる、羽根板の角度が調整可能なブラインドを更に有することが望ましい。
これにより、太陽高度の低い時期などでは、必要に応じてブラインドを用いて直射日光を遮蔽することができる。
【0011】
前記ブラインドが、前記第2のガラス体に対応する位置にある上部と、その下にある下部とで前記羽根板を異なる角度に調整可能であることが望ましい。
これにより、例えば日射量が大きい場合などでは、必要に応じて上部の羽根板は略水平として第2のガラス体からの拡散光を室内に導入し照明光として有効利用しつつ、下部の羽根板は略垂直として直射日光等を外側に反射して遮蔽することなどが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、室内の人間に閉塞感を与えることなく、簡易な構成で太陽光の照明利用と直射日光の遮蔽を両立できる採光構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】採光構造10による太陽光の照明利用と直射日光の遮蔽について示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
(採光構造10の構成)
図1は、第1の実施形態の採光構造10を示す図である。
図1(a)は
図1(b)の線A−Aに沿った断面構成を示す図である。
図1(b)は採光構造10を建物1の外側から見た図である。
【0016】
図に示すように、採光構造10は、第1のガラス体11、取付部12、第2のガラス体13、ブラインド14等を有する。また、採光構造10は、柱部30間において建物1のカーテンウォールを構成し、各階において水平方向に複数取り付けられる。また、上下階の間で採光構造10の水平方向の位置が対応する。
【0017】
第1のガラス体11は、建物1の外周部において、上下階のフロア2の間に取り付けられる透明のガラス体である。なお、第1のガラス体11としては可視光を透過させればよく、この限りにおいて様々な部材を使用可能である。単層ガラスで構成されるか複層ガラスとして構成されるかなども特に問わない。このような第1のガラス体11の例としては、熱線吸収ガラスやLow−Eガラス等が挙げられる。
【0018】
取付部12は、第2のガラス体13を取り付けるためのものである。取付部12は、フロア2の高さにおいて、建物1の外周部から建物1の外側へと張り出すように設けられる。
【0019】
第2のガラス体13は、第1のガラス体11から建物1の外側へ離間して、取付部12の先端から垂下するように設けられる。第2のガラス体13の下端部は、第1のガラス体11の所定の高さまで達し、第1のガラス体11の上部を覆うようになっている。この下端部は、側方にある柱部30に取り付けられる。
【0020】
第2のガラス体13は、可視光を拡散して透過させる拡散透過性を有するものであり、この限りにおいて様々な部材を使用することが可能である。単層ガラスであるか合わせガラスであるかなども特に問わない。また、必ずしも第2のガラス体13の全面が拡散透過性を有していなくともよい。
このような第2のガラス体13の一例としては、乳白ガラスや、タペストリー加工のような拡散効果のある仕上げ加工が施された特殊ガラスがある。また、拡散透過性を有する乳白色など半透明の仕上げ用ガラスシート膜をガラス表面に貼り付けた単層ガラスや合わせガラスも使用できる。その他、拡散透過性を有する特殊中間膜や樹脂層を、2枚の透明のガラスで挟んで形成された合わせガラスなども使用できる。
【0021】
また、第2のガラス体13への入射光に関し、拡散して透過する透過光の割合(拡散透過率)と、入射方向が維持される透過光の割合は様々に調整することが可能であり、これにより外部の眺望をある程度確保することができる。例えば乳白ガラスの場合、乳白の濃度を調整するとよい。
【0022】
ブラインド14は、第1のガラス体11の上端部近傍の建物内部側に設けられる。ブラインド14は上下に伸縮可能であり、必要に応じて伸長、収縮する。ブラインド14は通常時には収縮した状態であるが、伸長させると下端部が第1のガラス体11の下端部まで達するようになっている。また、ブラインド14は羽根板の角度が調整可能である。
【0023】
(採光構造10による太陽光の照明利用と直射日光の遮蔽)
次に、採光構造10による太陽光の照明利用と直射日光の遮蔽について、
図2を参照しながら説明する。
【0024】
図2(a)に示すように、取付部12を介して建物1の外側に設けられた第2のガラス体13は、建物内への直射日光20を拡散させ、建物内への直射日光20の到達を防ぐ庇としての役割をする。第2のガラス体13の下端部の位置は、例えば、夏季等の日中に直射日光20が建物内に到達しないように太陽高度等を考慮し、外部の眺望も鑑みた上で決定することができる。
【0025】
また、第2のガラス体13に当たった直射日光20は拡散光21として透過し、建物内の照明として有効利用することができる。さらに、第2のガラス体13の拡散透過率等を調整することである程度の眺望も確保でき、第1のガラス体11の下部からも外景が見えるので、室内の人間に閉塞感を与えることもない。
【0026】
一方、
図2(b)に示すように、冬季等、建物内に直射日光22が入り、グレア等の不快感が生じるのを防ぐためには、必要に応じてブラインド14を降ろして羽根板の角度を調整すればよい。これにより直射日光22を遮蔽し拡散光23として反射させ、不快感を与えるのを防ぐことができる。
【0027】
なお、ブラインド14は上記のような場合に限らず必要に応じて使用され、この際、第2のガラス体13に対応する位置にあるブラインド14の上部と、その下にあるブラインド14の下部とで、羽根板の角度を異なるものとすることも可能である。
例えば日射量が大きい場合では、
図2(c)に示すように、ブラインド14の上部の羽根板は略水平として第2のガラス体13からの拡散光21を点線24に例示するように室内へ到達させ照明利用を図る一方、ブラインド14の下部の羽根板は略垂直とし直射日光22等を外側に反射させ遮蔽することが可能である。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、建物1の外周部の第1のガラス体11と、第1のガラス体11の外側で第1のガラス体11の上部を覆うようにして取り付けた第2のガラス体13によって採光構造10を構成する。第2のガラス体13は可視光の拡散透過性を有するので、建物内への直射日光20を遮蔽する庇の役割を果たすとともに、第2のガラス体13に入射した直射日光20を拡散して透過させ、照明光として有効利用することができる。
【0029】
このように拡散透過性を有する第2のガラス体13によって太陽光の照明利用と直射日光の遮蔽を両立させることにより、簡易な採光構造10によって窓周りの光環境を最適化することができ、施工やメンテナンスの手間もかからない。また、第2のガラス体13を直射日光の遮蔽に用いることで窓周りの温熱環境の最適化も可能になり、これらの最適化によって建物1の省CO
2・省エネルギー性能を向上させることができる。
【0030】
さらに、第2のガラス体13の拡散透過率等を調整することである程度の眺望も確保できる。また、第1のガラス体11の下部からも外景が見えるので、閉塞感を軽減することができ、光環境等の最適化とも相まって建物内の人間の知的生産性向上も可能になる。
【0031】
加えて、羽根板の角度が調整可能なブラインド14により、冬季等、太陽高度の低い時期などでは、必要に応じてブラインド14を用い直射日光22を遮蔽することができる。
【0032】
また、ブラインド14は、第2のガラス体13に対応する位置にある上部と、その下にある下部とで羽根板を異なる角度に調整可能とすることで、例えば日射量が大きい場合などでは、上部の羽根板は略水平として第2のガラス体13からの拡散光21を室内に導入し照明光として有効利用しつつ、下部の羽根板は略垂直として直射日光22等を外側に反射して遮蔽することなどが可能である。
【0033】
ただし、本発明はこれに限ることはない。例えば、取付部12の先端に通気孔を設けることにより排熱を行い、第1のガラス体11と第2のガラス体13の間の熱だまりを防ぐことも可能である。
【0034】
加えて、室内に外気を取り込んで自然換気を行うために、第1のガラス体11に換気装置を設けることもできる。
【0035】
このように、本発明の採光構造は第1の実施形態で説明したものに限らない。次に、第1のガラス体11や第2のガラス体13の構成が異なる例を、第2の実施形態として説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0036】
[第2の実施形態]
図3は、第2の実施形態の採光構造10aについて示す図である。
図3(a)は
図3(b)の線B−Bに沿った断面構成を示す図である。
図3(b)は採光構造10aを建物1の外側から見た図である。
【0037】
図に示すように、第2の実施形態では、第1のガラス体11が下方に向かって建物1の外側へ傾斜するように設けられる。また、第2のガラス体13が、第1のガラス体11の下端部から同じ傾斜で連続するように設けられる。この第2のガラス体13は、下階の第1のガラス体11から建物1の外側へと離間し、その上部を覆うようになっている。なお、第1のガラス体11と第2のガラス体13は、連続していればその傾斜を異なるものとすることも可能である。
【0038】
第2の実施形態では、第1のガラス体11と、この第1のガラス体11の上部を覆い、上階の第1のガラス体11から連続する第2のガラス体13、および第1の実施形態と同様のブラインド14などが、採光構造10aを構成している。
【0039】
この採光構造10aにおいても、第2のガラス体13が、第1の実施形態と同様の役割を果たす。従って、第2の実施形態でも第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、第2の実施形態では第1のガラス体11と第2のガラス体13を連続させるので、より簡易な構成となり、施工やメンテナンスがさらに容易になる。
【0040】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0041】
1:建物
10、10a:採光構造
11:第1のガラス体
12:取付部
13:第2のガラス体
14:ブラインド
20、22:直射日光
21、23:拡散光