特許第6093145号(P6093145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6093145-多電圧発電機 図000002
  • 特許6093145-多電圧発電機 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093145
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】多電圧発電機
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/14 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   H02J7/14 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-235830(P2012-235830)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-87212(P2014-87212A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】河端 真一
(72)【発明者】
【氏名】高木 剛
(72)【発明者】
【氏名】柳生 寿美夫
(72)【発明者】
【氏名】林 繁樹
【審査官】 馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−103002(JP,A)
【文献】 実開昭49−146608(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/14
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
H02J 3/00 − 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの動力によって駆動される三相のモータジェネレータと、
電池と、
前記モータジェネレータを駆動して発電された三相交流電圧を直流電圧に変換すると共に前記蓄電池の直流電圧を三相交流電圧に変換するインバータであって、前記蓄電池にスイッチを介して接続される直流端子を有するインバータと、
三相交流、単相交流及び直流の電源の種類及び必要な電圧値を入力する操作部と、
前記エンジン及び前記インバータを制御するコントローラと、
三相交流電圧を外部に出力する第1コネクタと、
単相交流電圧を外部に出力する第2コネクタと、
直流電圧を外部に出力する第3コネクタと、
を具備し、
前記コントローラは、
前記蓄電池の電圧とは異なった直流電圧を出力する際には、前記スイッチをオフとし且つ前記エンジンによって前記モータジェネレータを駆動した状態で、前記エンジンの回転数を制御すると共に前記インバータを位相制御して必要な直流電圧を生成し、該直流電圧を前記第3コネクタを介して出力可能であり、
前記蓄電池の電圧と同じ直流電圧を出力する際には、前記スイッチをオンとし且つ前記エンジンを停止した状態で、前記蓄電池から直流電圧を前記第3コネクタを介して出力可能であり、
交流電圧を出力する際には、前記スイッチをオフとし且つ前記エンジンによって前記モータジェネレータを駆動した状態で、前記エンジンの回転数を制御すると共に前記インバータを位相制御して必要な交流電圧を生成し、該交流電圧を、三相交流電圧として第1コネクタを介して外部に出力可能であると共に単相交流電圧として第2コネクタを介して外部に出力可能であり、又は、前記スイッチをオンとし、前記蓄電池からの出力をインバータによって位相制御して必要な交流電圧を生成し、該交流電圧を、三相交流電圧として第1コネクタを介して外部に出力可能であると共に単相交流電圧として第2コネクタを介して外部に出力可能である多電圧発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農業機械や草刈機等の汎用機械に用いられる多電圧発電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は近年温室効果ガスを含む排気ガスを規制する観点から排気ガスを規制する動きが社会的潮流となっている。この動きに対してハイブリッドカーや電気自動車等の開発が進められている。一方、従来の草刈り機や農業機械ではディーゼルエンジンが動力源として用いられ、エンジンの周囲にラジエーターやマフラー等を配置し、変速機を備えて動力を必要な部所に伝える構成であった。しかし従来のエンジンを動力源とする農業機械等にあっては、エンジンやマフラー等多くの部品を必要とし、製造コストが高くなるという欠点があった。
【0003】
この問題を解決するため特許文献1には動力を電動式とする農業機械が提案されている。又農業機械の負荷に供給するための動力源としては、例えば200Vで三相交流の電圧を出力するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−9607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし電動式の農業機械は機械毎に要求される電圧等の仕様が一定でない。このために汎用的な電源を用いて農業機械等に用いられる種々のインプル等を動作させる場合に種々のインプルに対して必要な電圧を供給することが難しいという問題点があった。
【0006】
本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、農業機械や草刈り機等の汎用機械の動力源として用いることができる多電圧の発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、多電圧発電機は、エンジンと、前記エンジンの動力によって駆動される三相のモータジェネレータと、蓄電池と、前記モータジェネレータを駆動して発電された三相交流電圧を直流電圧に変換すると共に前記蓄電池の直流電圧を三相交流電圧に変換するインバータであって、前記蓄電池にスイッチを介して接続される直流端子を有するインバータと、三相交流、単相交流及び直流の電源の種類及び必要な電圧値を入力する操作部と、前記エンジン及び前記インバータを制御するコントローラと、三相交流電圧を外部に出力する第1コネクタと、単相交流電圧を外部に出力する第2コネクタと、直流電圧を外部に出力する第3コネクタと、を具備し、前記コントローラは、前記蓄電池の電圧とは異なった直流電圧を出力する際には、前記スイッチをオフとし且つ前記エンジンによって前記モータジェネレータを駆動した状態で、前記エンジンの回転数を制御すると共に前記インバータを位相制御して必要な直流電圧を生成し、該直流電圧を前記第3コネクタを介して出力可能であり、前記蓄電池の電圧と同じ直流電圧を出力する際には、前記スイッチをオンとし且つ前記エンジンを停止した状態で、前記蓄電池から直流電圧を前記第3コネクタを介して出力可能であり、交流電圧を出力する際には、前記スイッチをオフとし且つ前記エンジンによって前記モータジェネレータを駆動した状態で、前記エンジンの回転数を制御すると共に前記インバータを位相制御して必要な交流電圧を生成し、該交流電圧を、三相交流電圧として第1コネクタを介して外部に出力可能であると共に単相交流電圧として第2コネクタを介して外部に出力可能であり、又は、前記スイッチをオンとし、前記蓄電池からの出力をインバータによって位相制御して必要な交流電圧を生成し、該交流電圧を、三相交流電圧として第1コネクタを介して外部に出力可能であると共に単相交流電圧として第2コネクタを介して外部に出力可能である。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を有する本発明によれば、本発明による多電圧の発電機を直流、交流の
種類や電圧の異なる電源として用いることができ、電源についての問題を解消することができる。従って農業機械等の負荷となるインプルを電動化することも可能となる。又本発明によれば1つのインバータを用いているため、低価格化することができるという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の実施の形態による多電圧発電機の全体構成を示すブロック図である。
図2図2は本発明の実施の形態によるインバータとその周辺回路を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の実施の形態による多電圧発電機の全体構成を示すブロック図である。本図に示すようにこの多電圧発電機はエンジン11を有している。エンジン11の動力はモータジェネレータ(MG)12を回転駆動するものである。エンジン11のクランク軸は直接モータジェネレータ12に連結されていてもよく、ベルト等の連結手段を介して接続されていてもよい。
【0012】
モータジェネレータ12は三相交流式のモータ及び発電機であって、回転数に応じた三相交流をインバータ13に与えると共にコネクタ(第1コネクタ)14より外部に出力する。又その三相のうちの二相の出力を単相交流としてコネクタ(第2コネクタ)15より外部に出力できるようにしている。インバータ13は三相交流の位相制御を行うものであり、直流側の端子にスイッチ17を介して蓄電池18が接続されている。蓄電池18は例えば100〜500V等の二次電池であり、発電機システムの二次電池として用いられる。そしてインバータ13にはその出力を規定するためのコントローラ19が接続されている。コントローラ19には操作部20が接続される。操作部20は直流、単相交流又は三相交流の電源の種類や、必要な電圧を入力するためのものである。インバータ13は三相交流が入力されたときに位相制御を行い、整流、平滑して所望の電圧の直流電圧とすると共に、蓄電池18から直流電圧が与えられたときに位相制御を行い、所望の電圧の三相交流を出力するものである。
【0013】
次にインバータ13の詳細について説明する。図2に示すようにインバータ13は直流電源の入力端子31a,31bの間に平滑用のコンデンサ32が接続され、更にその両端に例えばパワーMOSFET等のスイッチング素子33Uと34U,33Vと34V,33Wと34Wが図示のように並列に接続される。そして各スイッチング素子の両端には逆流防止用のダイオードが接続されており、スイッチング素子33Uと34Uの中点、33Vと34Vの中点、及び33Wと34Wの中点が前述したモータジェネレータ12の各相に図示のように接続されて構成される。
【0014】
一方コントローラ19はステータコイルの間に接続されるインバータの6つのMOSFETのスイッチングのタイミングを制御して位相制御を行うと共に、モータジェネレータ12を回転させることでエンジン11の始動を制御するものである。
【0015】
次にこの実施の形態の動作について説明する。まずこの実施の形態による多電圧発電機は3つの動作モードを有している。第1のモードは蓄電池18の充電モードであり、第2のモードはエンジン11から外部の機器に電力を供給するエンジンモード、第3の動作モードは蓄電池18から外部の機器に電力を供給する蓄電池モードである。まず第1の充電モードの動作時には、コントローラ19はまずモータジェネレータ12を駆動し、これに連結されたエンジン11を始動させる。これによってエンジン11の動力がモータジェネレータ12に伝えられる。そしてインバータ13の位相制御を行うことにより三相交流や単相交流を得ることができる。そして回転数や位相を制御することで蓄電池18よりわず
かに高いレベルの直流電圧を発生させ、スイッチ17をオンとして蓄電池18の充電を行う。そして蓄電池の電圧を認識し、所定の電圧に達すれば充電動作を停止する。
【0016】
次に操作部20に外部に出力する電力の種類、即ち三相交流、単相交流、直流電圧のいずれかと電圧、周波数が入力された場合には、第2,第3の動作モードでこの多電圧発電機10を動作させる。このとき必要な電圧とその種類に応じて以下のように第2,第3のいずれかのモードで動作する。
【0017】
(1)蓄電池電圧より高い直流電圧出力
ここで蓄電池18より高いレベルの直流電圧が操作部20を介して外部より要求された場合には、この電圧値はコントローラ19に入力される。第3の蓄電池モードでは蓄電池をそのまま用いた場合に比べて高い直流電圧を出力することができないため、エンジンモードを用いる。コントローラ19はモータジェネレータ12を駆動してエンジン11を始動し、その回転力をモータジェネレータ12に伝える。ここでエンジン11の回転数を必要な電圧に応じて変化させる。そしてインバータ13によって整流することによって高い直流電圧を得てコネクタ(第3コネクタ)16より外部に出力することができる。又蓄電池以上の電圧を出力する場合には、スイッチ17をオフとしておく。但し直流出力用のコネクタ16と蓄電池18との間に図示しない充電器を接続する場合は、スイッチ17をオン状態として蓄電池18を同時に充電するようにしてもよい。
【0018】
(2)蓄電池電圧以下の直流電圧出力
ここで蓄電池18より低いレベルの直流電圧が操作部20を介して外部より要求された場合には、この電圧値はコントローラ19に入力される。第3の蓄電池モードでは蓄電池18をそのまま用いた場合に比べて低い直流電圧を出力することができないため、エンジンモードを用いる。この場合もインバータ13において位相制御を行うことによって0Vから任意の電圧レベルまでの低い電圧を出力することができる。蓄電池18の電圧以下の電圧を外部に出力する場合には、スイッチ17をオフとしておく。
【0019】
尚、蓄電池とほぼ同一の直流電圧を供給する際にはエンジン11を停止し、スイッチ17をオンとして蓄電池18より直流電圧をそのまま供給する。
【0020】
(3)蓄電池の電圧より高い交流電圧出力
この場合は第2,第3のいずれのモードも使用することができる。第2のモードは蓄電池18の容量が低下している場合に用いられる。この場合はエンジン11を始動し、エンジン11からの出力に基づいてモータジェネレータ12を駆動し、その回転数を制御する。そして位相制御を行うことによって三相交流又は単相交流の必要な電圧をコネクタ14又は15より外部に出力することができる。
【0021】
第3のモードは蓄電池18の容量が十分ある場合や静粛性を要求される環境下で使用するのに好適である。第3のモードではスイッチ17をオンとし、蓄電池18からの出力をインバータ13によって昇圧して三相交流や単相交流を出力する。そしてインバータ13の位相制御を行うことによって種々の電圧を外部に出力することができる。
【0022】
(4)蓄電池電圧より低い交流電圧出力
この場合は第2,第3のいずれのモードも使用することができる。第2のエンジンモードを用いる場合には、スイッチ17をオフし、蓄電池18を切り離すと共にエンジン11を回転し、モータジェネレータ12を駆動する。そしてインバータ13で位相制御を行って必要な電圧とすることで、低い三相交流又は単相交流電圧をコネクタ14又は15より外部に出力することができる。
【0023】
又第3のモードは蓄電池18の容量が十分ある場合や静粛性を要求される環境下で使用するのに好適である。第3モードでは蓄電池から出力される電圧をVdcとすると、√3/2・Vdcまでの線間電圧となる三相交流を出力することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば1つのインバータとエンジン及び蓄電池を用いることによって種々の電圧を外部に出力することができる。従って本発明は例えば農業機械や芝刈機などの種々の産業機械に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
11 エンジン
12 モータジェネレータ
13 インバータ
14,15,16 コネクタ
17 スイッチ
18 蓄電池
19 コントローラ
20 操作部
図1
図2