(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093169
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】交通制御システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/08 20060101AFI20170227BHJP
G08G 1/07 20060101ALI20170227BHJP
G08G 1/04 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
G08G1/08 A
G08G1/07 C
G08G1/04 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-267998(P2012-267998)
(22)【出願日】2012年12月7日
(65)【公開番号】特開2014-115757(P2014-115757A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】桶谷 敦
【審査官】
島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】
韓国登録特許第10−0944033(KR,B1)
【文献】
実開昭58−124900(JP,U)
【文献】
韓国登録特許第10−0998530(KR,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0218380(US,A1)
【文献】
特開2007−141144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/08
G08G 1/04
G08G 1/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般車両が走行する車両通行帯と前記車両通行帯に並設されて自転車が走行する自転車専用通行帯とを有する車道の車両及び自転車の交通を制御する交通制御システムであって、
前記自転車専用通行帯に向けて設置されたカメラと、
前記カメラが撮像した画像をもとに前記自転車専用通行帯に自転車が存在するか否かを検知する画像処理部と、
前記車両通行帯を走行する車両の交通を制御する車両用信号灯器と、
前記自転車専用通行帯を走行する自転車の交通を制御する自転車用信号灯器と、
前記画像処理部が自転車が存在すると判断し、前記自転車が存在する前記自転車専用通行帯の走行を制御する前記自転車用信号灯器が赤信号の場合、前記自転車が存在する前記自転車専用通行帯の走行を制御する前記自転車用信号灯器の赤信号から青信号への切替えを、前記自転車が存在する前記自転車専用通行帯に並設され、前記自転車が存在する前記自転車専用通行帯と同じ方向に走行する前記車両通行帯の車両を制御する前記車両用信号灯器の赤信号から青信号への切替えより、早いタイミングでおこなう信号灯器制御部と
を備えることを特徴とする交通制御システム。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記カメラが撮像した画像から二輪の車両のナンバープレートが無い場合は自転車と判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の交通制御システム。
【請求項3】
前記信号灯器制御部は、前記自転車用信号灯器の赤信号から青信号への切替えを前記車両用信号灯器の赤信号から青信号への切替えより早いタイミングでおこなう場合、前記自転車用信号灯器が青信号に切替わり、その後、前記車両用信号灯器が青信号への切替わることにより、前記自転車用信号灯器及び前記車両用信号灯器が同じ青信号の状態になるように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の交通制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通制御システムに係り、特に、カメラを用いて自転車を検知して交通信号を制御する機能を有する交通制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車道の普及や、「自転車は歩道ではなく車道」の意識の高まりから、交通信号制御機における自転車の制御方法が新たなに必要になっている。そのような状況において、自転車を検知する感知器が必要とされている。特に最近では、行政が、自転車の車道通行の徹底を促すための対策を公表し、普通自転車専用通行帯(いわゆる自転車レーン)や自転車道の整備による自転車の通行環境の整備等の対策が予定されている。
【0003】
そのような状況のもと、交通環境において、車両、自転車、人(歩行者)等を区別する技術が各種提案されている。例えば、車載レーダの反射の検出パターンから車両、自転車、人(歩行者)等を区別する技術がある(例えば、特許文献1参照)。具体的には、特許文献1に開示の技術は、複数のフレームのレーザレーダによる対象物体の反射の検出パターンをつなぎあわせることで、対象物体の輪郭を明瞭に示す合成検出パターンを生成し、その上で対象物体の相対位置、相対速度、動きベクトルなどの特徴からパターン認識を行っている。また、別の技術として、対象物体の検出パターンを距離毎の特徴パターンと比較する技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−191227号公報
【特許文献2】特開2011−186584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、画像感知器において、自動車及び自動二輪車・歩行者を全体及び個別に検知対象とする感知器はあるが、自転車のみを検知する感知器及び方法が求められていた。特に、自動二輪と自転車の区別がより重要になってきていることから、また、自転車道における自転車の通行環境の整備の観点から、上述の技術では、必ずしも十分でなく、別の技術が必要とされていた。
【0006】
本発明は、以上のような状況に鑑みなされたものであって、上記課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一般車両が走行する車両通行帯と前記車両通行帯に並設されて自転車が走行する自転車専用通行帯とを有する車道の車両及び自転車の交通を制御する交通制御システムであって、前記自転車専用通行帯に向けて設置されたカメラと、前記カメラが撮像した画像をもとに前記自転車専用通行帯に自転車が存在するか否かを検知する画像処理部と、前記車両通行帯を走行する車両の交通を制御する車両用信号灯器と、前記自転車専用通行帯を走行する自転車の交通を制御する自転車用信号灯器と、前記画像処理部が自転車が存在すると判断し、前記自転車が存在する前記自転車専用通行帯の走行を制御する前記自転車用信号灯器が赤信号の場合、前記自転車が存在する前記自転車専用通行帯の走行を制御する前記自転車用信号灯器の赤信号から青信号への切替えを、前記自転車が存在する前記自転車専用通行帯に並設され、前記自転車が存在する前記自転車専用通行帯と同じ方向に走行する前記車両通行帯の車両を制御する前記車両用信号灯器の赤信号から青信号への切替えより、早いタイミングでおこなう信号灯器制御部と、を備える。
また、前記画像処理部は、前記カメラが撮像した画像から二輪の車両のナンバープレートが無い場合は自転車と判断してもよい。
また、前記信号灯器制御部は、前記自転車用信号灯器の赤信号から青信号への切替えを前記車両用信号灯器の赤信号から青信号への切替えより早いタイミングでおこなう場合、前記自転車用信号灯器が青信号に切替わり、その後、前記車両用信号灯器が青信号への切替わることにより、前記自転車用信号灯器及び前記車両用信号灯器が同じ青信号の状態になるように制御してもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上、本発明によると、自転車専用通行帯を走行する自転車の安全を向上させる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る、交通制御システムが適用される交差点における交通状態を模式的に示した図である。
【
図2】実施形態に係る、交通制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る、自転車専用通行帯の自転車の検知及び存在時の交通制御の処理を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態の変形例に係る、交通制御システムが適用される車道における交通状態を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る交通制御システム10が適用される交差点における交通状態を模式的に示した図である。ここでは、図示で左から右へ進行する車道80及び車両(自転車91及び自動車92)に着目して例示している。
【0012】
車道80は、自動車92等が走行する一般的な車両通行帯81とともに自転車91が走行する自転車専用通行帯82を備えている。また、この交差点には、自動車92の交通制御用の車両用信号灯器71とともに、自転車91の交通制御のための自転車専用信号灯器72が備わる。
【0013】
この交通制御システム10では、路側に設置されるカメラ部51(画像感知器)及び画像感知器制御部20を用いて、自転車専用通行帯82に自転車91が赤信号で停止していることを検知したときのみ、自転車91の青信号の先出し制御を行う。その結果、スピード帯域が異なる自転車91と車両(自動車92や自動二輪車)における、車両による左折巻き込み防止等の安全確保と交通の円滑化を図ることができる。
【0014】
図2は、本実施形態の交通制御システム10の概略構成を示すブロック図である。交通制御システム10は、一般的な車両の交通制御を行うとともに、本実施形態に特徴的な自転車用の交通制御の機能を実現する。
【0015】
具体的には、交通制御システム10は、交通信号制御機70と、それに制御される車両用信号灯器71及び自転車専用信号灯器72とを備える。車両用信号灯器71は、車両通行帯81を走行する自動車92等の車両を対象として点灯制御される。自転車専用信号灯器72は、自転車専用通行帯82を走行する自転車91を対象として点灯制御される。
【0016】
さらに、交通制御システム10は、画像感知器制御部20、カメラ部51、スピーカー53及び表示板54を備え、自転車専用通行帯82の自転車91に関連する制御を行う。詳細な制御・処理については後述する。
【0017】
カメラ部51は、画像検知器であってCCD素子やCMOS素子等の撮像素子を備えた一般的な構成であり、自転車専用通行帯82の画像を撮像する。
図1の状況においては、カメラ部51は、交差点の方向を向いて設置されており、交差点に直前の領域、特に停車線の位置より手前側の領域を中心として撮像するように調整されている。したがって、カメラ部51は、交差点に存在する自転車91の後方を撮像する。
【0018】
スピーカー53及び表示板54は、
図4で後述するが、路側帯に配置され、自転車専用通行帯82に関連する警告等の報知を行う。
【0019】
画像感知器制御部20は、画像処理部21と、検出信号出力部22と、電源部23と、報知出力部24と、端子部25とを備える。
【0020】
画像処理部21は、カメラ部51が撮像した画像を取得し、自転車専用通行帯82に自転車91が存在するか否かを判断する。
図1の状況では、特に、赤信号で停止している自転車91の存在を検知する。
【0021】
ここで自転車91の検知手法について説明する。画像処理部21は、カメラ部51が撮像した画像を取得すると、例えばSVM(Support Vector Machine)等の公知の画像認識手法を用いて、四輪の車両と二輪の車両(自転車91や自動二輪車)とを区別する。SVMを用いた手法では、教師データとして各種の自転車91の画像データ及び自動二輪車、自動車の画像データを参照及び学習して、パターンマッチングや回帰分析手法によって二輪の車両(自転車91と自動二輪車)を判別する。
【0022】
つづいて、画像処理部21は、判別した二輪の車両をナンバープレートの有無により、自転車91と自動二輪車とを区別する。具体的には、画像処理部21は、ナンバープレートがある場合は自動二輪車であると判断し、ナンバープレートが無い場合は自転車91であると判断する。ナンバープレートの認識技術に関しては、公知の技術により実現できる。
【0023】
検出信号出力部22は、画像処理部21で自転車91を検知した場合、その旨を交通信号制御機70に通知する。その通知を受けた交通信号制御機70は、自転車専用信号灯器72の青信号への切替えを車両用信号灯器71の青信号への切替えより先に行う先出し制御を行う。
【0024】
電源部23は、画像感知器制御部20の各構成要素に電力を供給すると共に、カメラ部51及びスピーカー53に電力を供給する。
【0025】
端子部25は、画像感知器制御部20に接続される外部の機器(交通信号制御機70、カメラ部51、スピーカー53及び表示板54)との接続インタフェイスである。
【0026】
以上の構成による制御に関して、
図3のフローチャートを参照して説明する。
自転車専用信号灯器72が赤信号の時に、画像処理部21は、カメラ部51を制御して自転車専用通行帯82に存在する車両の後方撮像の画像を取得する(S10)。自転車専用通行帯82に車両が存在するか否かは、撮像結果をもとに判断してもよいし、また図示しない別の手段(超音波検知装置等)のセンシング結果をもとに判断してもよい。車両が存在しないと判断した場合には、例えば赤信号の期間、継続して画像取得処理が実行される。
【0027】
つづいて、車両が存在している場合には、画像処理部21は、上述のようにSVM等の手法を用いて形状認識処理を行い(S12)、自転車又は自動二輪車の存在の判別を行う(S14)。
【0028】
自転車又は自動二輪車の存在が確認出来ない場合、つまり、車両が自動車等の四輪車両である場合(S16N)、当該フローの処理は終了し、再度S10のステップから処理が開始する。
【0029】
自転車又は自動二輪車の存在が確認出来た場合(S16のY)、画像処理部21は、画像中の車両にナンバープレートが備わるか否かを判断する(S18)。ナンバープレートが備わると判断した場合(S20のN)、車両は自転車ではなく自動二輪車であることから、当該フローの処理は終了し、再度S10のステップから処理が開始する。
【0030】
画像中の車両にナンバープレートが備わらないと判断した場合(S20のY)、画像処理部21は、その旨を検出信号出力部22に通知し、さらに、検出信号出力部22は画像処理部21からの通知結果、つまり、自転車91が交差点手前の自転車専用通行帯82に存在する旨を交通信号制御機70に通知する(S22)。つづいて、交通信号制御機70は、自転車存在時の交通制御を実行する(S24)。ここでは、交通信号制御機70は、車両用信号灯器71及び自転車専用信号灯器72を青信号に切り替える場合に、車両用信号灯器71より所定時間先に自転車専用信号灯器72を青信号に切り替える。
【0031】
以上、本実施形態によると、自転車専用通行帯82の自転車91を精度よく的確に検知することができ、自転車91が存在する場合の交通制御を効果的に実現できる。例えば、上述の実施形態では、赤信号で停止している自転車91が存在する場合、自転車91の青信号の先出し制御を行うことができ、その結果として、スピード帯域が異なる自転車91と車両(自動車92や自動二輪車)における、車両による左折巻き込み防止等の安全確保と交通の円滑化を図ることができる。
【0032】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素や処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0033】
上述の実施形態では、交差点における赤信号で停止している自転車91に着目して交通制御を行ったが、これに限る趣旨ではない。
図4は、本変形例に係る交通制御システム10が適用される車道における交通状態を模式的に示した図である。交通制御システム10の構成については
図2で示した構成と同様であるので、各構成要素の説明は省略する。
【0034】
本変形例では、カメラ部51は、交差点ではなく通常の通行帯(車道80)の自転車専用通行帯82に向けて設置されている。そして、カメラ部51が撮像した画像をもとに上述のような画像処理を行った結果、画像処理部21が自転車専用通行帯82に自動二輪車93等の車両(自転車91以外の車両)が存在していると判断した場合、それら車両に対してスピーカー53や表示板54によって自転車専用通行帯82である旨及び自転車専用通行帯82を走行したり路上駐車しないように警告する。
【0035】
なお、緊急自動車94が近くを通行する場合に自動二輪車93等が自転車専用通行帯82に進入することは適正な行動であることから、その様な場合は、上記の警告を行わないようにしてもよい。緊急自動車94の検知は、画像認識や音声認識でもよいし、緊急自動車94等からの識別信号を送信するようにしてもよい。
【0036】
また、時間帯や天候等の環境によってはカメラ部51が取得する画像が不鮮明となったりして画像認識による自転車91の検出が難しい場合がある。そのような場合には、画像認識による自転車91の検知処理は実行しないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 交通制御システム
20 画像感知器制御部
21 画像処理部
22 検出信号出力部
23 電源部
24 報知出力部
25 端子部
51 カメラ部
53 スピーカー
54 表示板
70 交通信号制御機
71 車両用信号灯器
72 自転車専用信号灯器
80 車道
81 車両通行帯
82 自転車専用通行帯
91 自転車
92 自動車
93 自動二輪車
94 緊急自動車