(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
<1.第1実施形態>
<1.1 減圧乾燥装置1および周辺装置の構成>
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。
【0025】
本発明は、種々の基板処理フローにおいて適用可能な減圧乾燥装置(減圧乾燥方法)であるが、以下の説明では、レジスト塗布処理を施された液晶表示装置用のガラス基板(以下、「基板G」と呼ぶ)に使用される減圧乾燥装置(減圧乾燥方法)について説明する。
【0026】
図1は、この発明の第1実施形態における減圧乾燥装置1と塗布装置9との位置関係の一例を示す配置図である。
図1以降の各図には、水平面を規定する直交2方向としてX方向およびY方向が規定され、さらに、これらのXY方向に直交する鉛直方向としてZ方向が規定されている。
【0027】
図2は、第1実施形態における塗布装置9の構成を示す斜視図である。また、以下の説明では、基板Gの表面側(レジスト液を塗布される側)の主面を「第1主面S1」とよび、基板Gの裏面側(レジスト液を塗布されない側)の主面を「第2主面S2」とよぶ。
【0028】
塗布装置9は、基板Gの第1主面S1にレジスト液を塗布する装置であり、基板Gを水平姿勢で吸着保持可能な保持面を有するステージ90と、X方向に延びる長尺型のスリットノズル91と、ステージ90の上をX方向に横断しスリットノズル91を支持するブリッジ構造のノズル支持体92と、Y方向に延びる一対のガイドレール93に沿ってスリットノズル91(ノズル支持体92)を水平移動させる水平移動機構94(例えば、電動リニアモータ)とを有する。
【0029】
塗布処理を行う時は、ステージ90上に第1主面S1が上向きとなるよう基板Gを水平に保持した状態で、レジスト液供給部(図示せず)よりレジスト液を所定の流量でスリットノズル91に給送するとともに、水平移動機構94によってスリットノズル91(ノズル支持体92)を一定速度でY方向に沿って移動する。これにより、当該スリットノズル91の吐出口から基板G上にレジスト液が供給され、基板Gの第1主面S1上には一定の膜厚でレジスト液の塗布膜が形成される。
【0030】
搬送ロボットTRは、塗布装置9でその第1主面S1にレジスト液を塗布された基板Gを減圧乾燥装置1に搬送し、また、減圧乾燥装置1で減圧乾燥処理を完了した基板Gを次工程のプリベーキングユニット(図示せず)へ搬送するロボットである。
【0031】
搬送ロボットTRは、水平方向に延びる4本の棒状部材であるフィンガ部FGを有するとともに、鉛直方向を中心として旋回する旋回駆動機構、昇降機構、水平移動機構(いずれも図示せず)を備えるロボットである。搬送ロボットTRは、これらを能動化させることによって、各装置間で基板Gを受け渡すことができる。
【0032】
図3は、本発明の第1実施形態に係る減圧乾燥装置1の構成を示した縦断面図である。
【0033】
減圧乾燥装置1は、当該装置に固定された下部チャンバ11と、下部チャンバ11に対して開閉可能な上蓋として機能する可動の上部チャンバ12とからなるチャンバ10を有する。上部チャンバ12は、駆動源の内蔵された昇降機構13と連結されており、当該昇降機構13によって上下に駆動される。このような構成となっているため、上部チャンバ12を下部チャンバ11に対して密着(チャンバ密閉)或いは分離(チャンバ開放)させることができる。そして、密着状態ではチャンバ10の内部に基板Gの処理空間Lが形成される。一方、分離状態では、チャンバ10の内部と搬送ロボットTRとの間で基板Gの受渡しが可能となる。
【0034】
搬送ロボットTRが基板Gを減圧乾燥装置1に搬入する時は、減圧乾燥装置1は、上部チャンバ12を持ち上げてチャンバ開放とする。そして、搬送ロボットTRがチャンバ10内に設けられている複数の支持板22上に基板Gを載置し、チャンバ10外部に退避すると、上部チャンバ12を下してチャンバ10が密閉状態とされる。この密閉状態で、チャンバ10内の基板Gに対して減圧処理および復圧処理を時間順次に実行することで、基板G上に形成されたレジスト塗布膜に減圧乾燥処理が施され、当該基板Gの第1主面S1に所望のレジスト膜質特性が均一に得られる。
【0035】
そして、減圧乾燥装置1で1回(基板1枚分)の減圧乾燥処理が終了すると、昇降機構13が上部チャンバ12を持ち上げてチャンバ開放状態とされる。そこに搬送ロボットTRがアクセスして支持板22より処理済みの基板Gを受け取って搬出し、次工程のプリベーキングを行うプリベーキングユニット(図示せず)へ基板Gを搬送するようになっている。
【0036】
<1.2 減圧乾燥装置1の各部の構成>
図4は、本発明の第1実施形態に係る減圧乾燥装置1の構成を示した上面図である。なお、
図4では、減圧乾燥装置1に係る構成のうち、
図3に示す上部チャンバ12および昇降機構13を除いた構成を示している。
【0037】
上述したように、減圧乾燥装置1は、レジスト塗布後の基板Gに対して減圧乾燥処理を行い、当該レジスト液を乾燥させてレジスト膜を形成するための装置である。減圧乾燥装置1は、大略的に、基板を収容するチャンバ10と、チャンバ10内で基板を水平姿勢で支持する支持部20と、チャンバ10内に開口した排気口31を通じてチャンバ10内の排気を行なう排気部30と、チャンバ10内に開口した給気口41を通じてチャンバ10内に給気する給気部40と、チャンバ10内の圧力を検知する圧力センサ50とを備えている(
図3、
図4参照)。また、減圧乾燥装置1は、これら各部の動作を制御するための構成として制御部8を備えている。
【0038】
チャンバ10は、基板に対して減圧乾燥処理を行うための処理空間Lを内部に有する耐圧容器である。上述したように、チャンバ10は、互いに分離可能な下部チャンバ11と上部チャンバ12とを有しており、下部チャンバ11は当該装置に固定され、上部チャンバ12には駆動源を内蔵する昇降機構13が接続されている。当該昇降機構13としては、例えば、エアシリンダまたは電動リニアモータからなる昇降機構を採用することができる。
【0039】
下部チャンバ11の上面の周縁部には、シリコンゴムなどで構成されたOリング14が設けられている。このため、昇降機構13によって上部チャンバ12が下降したときには、下部チャンバ11の上面と上部チャンバ12の下面との間がOリング14によって密閉され、チャンバ10内部に形成される処理空間Lは気密状態となる。
【0040】
支持部20は、チャンバ10の内部において基板Gを水平姿勢で支持するための機構であり、複数の支持ピン21をその上面に有する複数の支持板22と、当該複数の支持板22にそれぞれ当接して設けられる複数の昇降部材23と、複数の昇降部材23を一体的に上下に駆動させる昇降機構24とを有する。
【0041】
図3に示すように、複数の(本実施形態では3つの)支持板22は、それぞれ同じ高さ位置となるよう設けられている。このため、各支持ピン21の頭部を基板Gの第2主面S2に当接させることにより、基板Gは水平姿勢に支持される。
【0042】
複数の昇降部材23は、チャンバ10の外部に配置された1つの昇降機構24と連結されており、それぞれ下部チャンバ11の底部分を貫通してチャンバ10の内部に突き出している。また、複数の昇降部材23と下部チャンバ11の底部分とは図示しないシール部材によって真空封止されており、当該貫通部分からチャンバ10内外の気体が連通することが防止される。
【0043】
そして、昇降機構24を動作させることで、複数の昇降部材23および複数の支持板22を一体的に上下に駆動させ、チャンバ10内で基板Gが支持される高さを調節することができる。当該昇降機構24としては、昇降機構13と同様、エアシリンダまたは電動リニアモータからなる昇降機構を採用することができる。
【0044】
複数の支持板22(本実施形態では3つの支持板22)はX方向に延びる長尺型の板状部材であり、Y方向に一定間隔をあけて平行に設けられている。また、
図1に示すように、搬送ロボットTRは、−X方向側から減圧乾燥装置1にアクセスして減圧乾燥装置1への基板Gの搬入出をおこなう。このため、減圧乾燥装置1にアクセスするタイミングでは、搬送ロボットTRのフィンガ部FG(4本の棒状部材)と複数の支持板22とが、それぞれ、Y方向に一定間隔をあけて平行に設けられている。また、フィンガ部FGの隣接する棒状部材同士のY方向間隔は、1つの支持板22のY方向幅より大きくなるよう形成されている。このような構成となっているので、搬送ロボットTRがチャンバ10内にアクセスした場合でも、上面視においてフィンガ部FGの四股の空隙部分に複数の支持板22が配され、支持板22と搬送ロボットTRとが衝突することがない。
【0045】
したがって、基板Gを保持したフィンガ部FGを支持板22の直上に移動させ、昇降機構24によってフィンガ部FGの上方まで支持板22を上昇させることで、搬送ロボットTRから減圧乾燥装置1に基板Gを渡すことができる。また、基板Gが載置されている支持板22の直下にフィンガ部FGを移動させ、昇降機構24によってフィンガ部FGの下方まで支持板22を下降させることで、チャンバ10から搬送ロボットTRに基板Gを渡すことができる。
【0046】
図5は、本実施形態の減圧乾燥装置1の排気に係る構成を概念的に示した上面図である。なお、
図5中には、減圧工程の際に基板Gが存在する位置を点線で示し、そのときの基板Gの中心を中心位置POとして示している。この実施形態の場合、基板Gは矩形であるから、その中心位置POは当該矩形の2本の対角線の交点として定義される。半導体ウエハのように基板が略円形の場合には、基板がチャンバ内で支持された状態での当該円の中心点を中心位置として定義できる。
【0047】
排気部30は、チャンバ10内の気体を吸引排気しチャンバ10内を減圧状態とするための配管系であり、チャンバ10内に開口した排気口31と、排気管32と、開閉弁33と、圧力制御弁34と、真空ポンプ35とを備える。なお、以下の説明では、排気口31、排気管32、開閉弁33のそれぞれについて、その構成要素を特定する場合には、「排気口31a,31b,31c,31d」、「排気管32a,32b,32c,32d」、「開閉弁33a,33b,33c,33d」という表現を用いる場合がある。
【0048】
排気口31a,31b,31c,31dは、チャンバ10内に開口しており、排気管32a,32b,32c,32dをそれぞれ通じて圧力制御弁34および真空ポンプ35に接続されている。また、排気管32a,32b,32c,32dには、開閉弁33a,33b,33c,33dがそれぞれ設けられている。さらに、真空ポンプ35は排気ラインに接続されている。
【0049】
開閉弁33、圧力制御弁34および、真空ポンプ35は、制御部8と電気的に接続されている。したがって、制御部8が、真空ポンプ35を動作させた状態で、開閉弁33と圧力制御弁34とを開放することで、チャンバ10内の気体が排気口31に吸引され、排気管32を経由して排気ラインへ排気される。他方、制御部8が開閉弁33を閉止することでチャンバ10内の排気が停止される。このように、本実施形態の減圧乾燥装置1では、真空ポンプ35は動作させた状態で、開閉弁33の開閉によってチャンバ10内の排気のオンオフ制御を行なう。そのため、真空ポンプ35のオンオフによってチャンバ10内の排気のオンオフ制御を行なう場合と異なり、排気の開始時でも十分な排気力を実現することができる。
【0050】
また、制御部8によって圧力制御弁34の開度を調節することで、排気部30の排気力を調節することができる。このように排気力を調節することで、チャンバ10内を緩慢に減圧する状態(副排気)と、チャンバ10内を急激に減圧する状態(主排気)とを切り替えることができる。後述する減圧工程では、副排気を行ない一定時間が経過してから主排気に切り替える動作手順が採用されている。こうすることで、チャンバ10内の急激な減圧に伴って、基板G上に塗布されたレジスト液に含まれる溶剤成分が突沸するのを防止している。
【0051】
図6は、本実施形態の減圧乾燥装置1の給気に係る構成を模式的に示した上面図である。なお、
図6中には、復圧工程の際に基板Gが存在する位置を点線で、そのときの基板の中心を中心位置POとして示している。
【0052】
給気部40は、チャンバ10内に気体を供給し、排気部30によって減圧状態とされたチャンバ10内の圧力を大気圧まで復圧させるための配管系であり、給気口41と、給気管42と、開閉弁43と、流量調整弁44と、ガス供給源45とを備える。なお、以下の説明では、給気口41、給気管42、開閉弁43、流量調整弁44のそれぞれについて、その構成要素を特定する場合には、「給気口41a,41b,41c,41d」、「給気管42a,42b,42c,42d」、「開閉弁43a,43b,43c,43d」、「流量調整弁44a,44b,44c,44d」という表現を用いる場合がある。
【0053】
給気部40でチャンバ10内に供給する気体としては、例えば、窒素や圧縮空気などを採用することができるが、以下の説明では窒素を供給する場合について説明する。
【0054】
給気口41a,41b,41c,41dはチャンバ10内に開口しており、給気管42a,42b,42c,42dをそれぞれ通じてガス供給源45に接続されている。また、給気管42a,42b,42c,42dには、開閉弁43a,43b,43c,43dおよび流量調整弁44a,44b,44c,44dがそれぞれ設けられている。
【0055】
開閉弁43、流量調整弁44および、ガス供給源45は、制御部8と電気的に接続されている。したがって、制御部8が、開閉弁43と流量調整弁44とを開放するとともにガス供給源45から窒素を供給することで、当該窒素は給気管42を経由して、給気口41からチャンバ10内に供給される。その結果、チャンバ10内の圧力が大気圧まで復圧される。他方、制御部8がガス供給源45からの窒素の供給を停止することでチャンバ10内の復圧が停止される。
【0056】
また、流量調整弁44の開度を調節することで給気部40の給気力を調節することができる。このように給気力を調節することで、チャンバ10内を緩慢に復圧する状態(スローパージ)と、チャンバ10内を急激に復圧する状態(メインパージ)とを切り替えることができる。
【0057】
したがって、復圧工程をスローパージで行なうことによって、チャンバ10内の急激な圧力増加を防止し、チャンバ10内に気体状態で存在しうるレジスト液の溶剤成分が液滴化する可能性を低下させることができる。当該液滴が基板Gの第1主面S1上に付着することは基板Gの残渣不良に繋がるため、スローパージは残渣不良のリスクを低下させるという利点がある。一方、復圧工程をメインパージで行なえば、復圧工程にかかる処理時間が短縮され、タクトアップが実現されるという利点がある。
【0058】
図7は、密閉状態のチャンバ10内に形成される処理空間Lを概念的に分割して示した側面図である。なお、
図7は、チャンバ10と、排気口31と、給気口41とに係る構成を示した図であり、残余の構成(支持部20など)は省略している。また、
図7中の基板Gの位置は、減圧工程および復圧工程の際に支持部20によって支持される場合に存在する基板Gの位置を示している。
【0059】
以下の説明では、支持部20によって支持された基板Gの中心位置POから見て水平方向の一方側(この実施形態では+Y側)の処理空間Lを「+Y空間領域L1」と呼び、他方側(この実施形態では−Y側)の処理空間Lを「−Y空間領域L2」と呼ぶ。また、処理空間Lに関して、減圧工程および復圧工程の際における基板Gの高さに規定した仮想水平面IPを境界として、第1主面S1側(この実施形態では+Z側)を「上部分空間L11」、第2主面S2側(この実施形態では−Z側)を「下部分空間L12」と呼ぶ。
【0060】
なお、「+Y空間領域L1」、「−Y空間領域L2」、「上部分空間L11」、および「下部分空間L12」は、それぞれ、本発明における「第1空間領域」、「第2空間領域」、「第1部分空間」、および「第2部分空間」に相当する。
【0061】
このような処理空間Lについての概念的な分割を利用して、本実施形態の減圧乾燥装置1における、排気口31a,31b,31c,31d、および給気口41a,41b,41c,41dの配置関係について説明する。
【0062】
排気口31a,31b,31c,31dは、矩形状である下部チャンバ11底面の四隅に対応して1つずつ設けられている。より具体的には、−Y空間領域L2に配される排気口31a,31cと、+Y空間領域L1に配される排気口31d,31bとは、水平面視において、基板Gの中心位置POに対して点対称な配置となっている(
図5参照)。
【0063】
このため、後述する減圧工程によってチャンバ10内の気体が吸引排気される際には、基板Gの第1主面S1側(+Z側)に、中心位置POから排気口31a,31b,31c,31dに向けて均一に拡散する四方向の気流AF1が発生する(
図12参照)。
【0064】
一方、給気口41a,41b,41c,41dは全て、基板Gの中心位置POから見て一方側(+Y方向側)の、下部チャンバ11の底面に設けられている(
図6参照)。このように、給気口41a,41b,41c,41dは、基板の中心位置POから見て一方側の+Y空間領域L1(「第1空間領域」)内に開口した「一方側給気口」として機能する。
【0065】
このため、後述する復圧工程においてチャンバ10内に窒素が給気された直後のタイミングでは、給気口41a,41b,41c,41dの位置する+Y空間領域L1において、−Y空間領域L2よりも陽圧の雰囲気が形成される。その結果、基板Gの第1主面S1側(+Z側)には、+Y空間領域L1から中心位置POを越えて−Y空間領域L2に向かう一方向の気流AF2が発生する(
図14参照)。ただし、ここにおける「中心位置POを越えて」とは、「中心位置POの直上を通る」ことを意味するのではなく、+Y空間領域L1と−Y空間領域L2との境界線として中心位置POを通る仮想境界面IF(
図14参照)を越えるという意味である。
【0066】
また、本実施形態の減圧乾燥装置1では、排気口31および給気口41は、ともに、基板Gの第2主面S2側(−Z側)である下部分空間L12に配される。このため、減圧工程において発生する気流AF1のうち排気口31近傍で発生する強力な気流である吸引気流AF10や、復圧工程において発生する気流AF2のうち給気口41近傍で発生する強力な気流である噴出気流AF20が、基板Gの第1主面S1(レジスト液が塗布された側の主面)に直接的に影響を及ぼすことがない(
図11、
図13参照)。したがって、基板Gの第1主面S1には、上記気流の影響によるレジスト液の液ムラが生じにくい。
【0067】
また、
図4に示すように、給気口41は、水平面視において排気口31よりもチャンバ10の側壁10S側において開口している。このような配置関係となっている理由については後述する。
【0068】
圧力センサ50は、チャンバ10内の圧力を測定するための装置である(
図3参照)。本実施形態の減圧乾燥処理では、圧力センサ50によって測定されるチャンバ10内の圧力が所定の値に達したタイミングで、排気部30による吸引排気(減圧工程)を終了し、給気部40によるチャンバ10内への窒素の供給(復圧工程)が開始される。このような圧力センサ50としては、たとえば真空計を採用することができる。
【0069】
図8に示す制御部8は、減圧乾燥装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部8のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部8は、各種演算処理を行うCPU81、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM82、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM83、および処理プログラムPRやデータなどを記憶しておく固定ディスク84をバスライン89に接続して構成されている。
【0070】
バスライン89には、昇降機構13、昇降機構24、排気部30、給気部40、および圧力センサ50が接続されている。制御部8のCPU81は、固定ディスク84に格納されている処理プログラムPRを実行することにより、減圧乾燥装置1に係る各動作機構を制御して基板Gへの減圧乾燥処理を進行させる。
【0071】
また、バスライン89には、表示装置86および入力装置87が電気的に接続されている。表示装置86は、例えば液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、処理結果やメッセージ等の種々の情報を表示する。入力装置87は、例えばキーボードやマウス等を用いて構成されており、コマンドやパラメータ等の入力を受け付ける。装置のオペレータは、表示装置86に表示された内容を確認しつつ入力装置87からコマンドやパラメータ等の入力を行うことができる。なお、表示装置86と入力装置87とを一体化してタッチパネルとして構成するようにしても良い。
【0072】
さらに、バスライン89には、DVDやCD−ROMなどの記録媒体RMから記録内容を読み取る読取装置88が接続されている。処理プログラムPRは、記録媒体RMから読取装置88によって読み出されて固定ディスク84に格納されるようにしてもよい。また、ネットワーク経由で外部の情報処理装置からダウンロードされるようにしてもよい。
【0073】
<1.3 減圧乾燥装置1の動作>
図9は、本実施形態における減圧乾燥装置1の処理動作の一例を示す動作フロー図である。以下、
図9に示す動作フローに沿って、減圧乾燥装置1の動作を説明する。
【0074】
減圧乾燥装置1において基板Gを処理するときには、まず、昇降機構13により上部チャンバ12が上昇され、チャンバ10が開放される(ステップST1)。
【0075】
そして、搬送ロボットTRにより基板Gがチャンバ10の内部に搬入されると、昇降機構24によって複数の支持板22が上昇され、複数の支持ピン21上に基板Gが渡される。その後、搬送ロボットTRはチャンバ10の外部へ退避し、複数の支持板22に支持される基板Gは、昇降機構24によって減圧乾燥処理を実行する高さまで下降される(ステップST2)。
【0076】
このようにチャンバ10内に基板Gが搬入されてその高さ調節が行われると、昇降機構13によって上部チャンバ12が下降され、チャンバ10が密閉状態とされる(ステップST3)。なお、昇降機構24による支持板22の昇降は、昇降機構13による上部チャンバ12の昇降と同期して行なわれてもよい。
【0077】
図10は、減圧工程(ステップST4〜ステップST7A)と復圧工程(ステップST7B〜ステップST9)とに係る、排気部30(真空ポンプ35)と給気部40(ガス供給源45)との動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【0078】
また、
図11、
図12は、減圧工程(副排気と主排気とを含む)中に、排気部30による排気の影響によってチャンバ10内に発生する気流AF1を概念的に示した側面図および上面図である。なお、
図12は、上部チャンバ12および昇降機構13に係る構成を除いた上面図で描かれている。
【0079】
ステップST3で基板Gがチャンバ10内に支持された状態でチャンバ10が密閉されると、チャンバ10内の副排気が開始される(ステップST4)。具体的には、減圧乾燥装置1は、予め真空ポンプ35を動作させておき、副排気開始のタイミング(
図10:T1)に排気部30の開閉弁33および圧力制御弁34を開放する。この結果、チャンバ10内部の気体は排気口31を通じて排気ラインへ吸引排気され、チャンバ10の内部は比較的緩やかに減圧される(
図10:時刻T1〜時刻T2)。
【0080】
そして、副排気が開始されて一定時間が経過すると、副排気から主排気に切り替えられる(ステップST5)。上述したように、主排気では、副排気のときより圧力調節弁34の開度が大きくなるよう制御部8によって制御される。この結果、チャンバ10内は、より急激に減圧される(
図10:時刻T2〜時刻T3)。
【0081】
このように、減圧工程(ステップST4,ステップST5)によってチャンバ10の内部が減圧されることに応じて、基板Gの表面に塗布されたレジスト液に含まれる溶剤成分が気化し、基板G上に塗布されたレジスト液が乾燥する。そして、気化された溶剤成分も気流AF1に沿って排気口31から排気ラインへ吸引排気される(
図11,12)。
【0082】
また、副排気と主排気との2段階に分けて減圧することで、チャンバ10内の急激な圧力変化が防止され、基板G上のレジスト液に含まれる溶剤成分が突沸することを回避することができる。
【0083】
そして、圧力センサ50によって測定されるチャンバ10内の圧力が設定値に達すると(ステップST6でYesに分岐)、開閉弁33が閉止され排気動作が停止される(ステップST7A)。それと同時に、給気部40によるチャンバ10内への窒素の給気が開始される(ステップST7B)。なお、当該設定値は、基板処理のレシピによって決定されるパラメータであり、減圧乾燥処理に先立って制御部8のRAM83に格納される値である。
【0084】
図13、
図14は、復圧工程中に、給気部40による給気の影響によってチャンバ10内に発生する気流AF2を概念的に示した側面図および上面図である。なお、
図14は、上部チャンバ12および昇降機構13に係る構成を除いた上面図で描かれている。
【0085】
本実施形態で実行される復圧工程(
図10:時刻T3〜時刻T5)は、流量調整弁44の開度が大きい状態で開閉弁43を開放するとともにガス供給源45から窒素を供給するメインパージのみが実行される。このため、スローパージを実行する場合に比べて復圧工程にかかる処理時間が短縮され、タクトアップに繋がる。
【0086】
また、
図10における時刻T3〜時刻T4においては、開閉弁33の閉止動作とガス供給源45の動作開始とはシーケンス制御上は同一のタイミングで行なわれるものの、現実には、減圧を終了して復圧に移行するにあたって、排気口31近傍での吸引気流AF10(排気圧)が消失する前に給気口41の位置での噴出気流AF20(給気圧)が立ち上がる。このため、復圧工程の開始直後(
図10:時刻T3〜時刻T4)では、給気部40から給気されて発生する気流AF2のうち下部分空間L12を流れる気流の一部が排気口31に吸引されつつ、全体としては+Y空間領域L1から−Y空間領域L2に向けての気流が発生する(
図13参照)。
【0087】
そして、チャンバ10内の圧力が上昇し、圧力センサ50によって計測されるチャンバ10内の圧力が大気圧に達すると、ステップST8でYesに分岐し、給気部40によるチャンバ10内の復圧が終了される(ステップST9)。
【0088】
復圧が終了すると、昇降機構13により上部チャンバ12が上昇され、チャンバ10が開放される(ステップST10)。このとき、昇降機構24により支持板22も基板Gを保持した状態で上昇する。
【0089】
その後、チャンバ10から減圧乾燥処理を完了した基板Gを搬出する(ステップS11)。具体的には、搬送ロボットTRを動作させることにより複数の支持ピン21上に載置される基板Gの下方にフィンガ部FGを挿入するとともに、複数の支持板22を下降させて基板Gをフィンガ部FGに渡す。搬送ロボットTRは、フィンガ部FG上に基板Gを受け取ると、当該基板Gを保持した状態でチャンバ10の外部へと移動する。以上をもって、1枚の基板Gに対する減圧乾燥処理が終了する。
【0090】
なお、後続の基板Gにも連続して減圧乾燥処理を施す場合には、ステップST12でYesに分岐しステップST2へと移行することで、当該後続の基板Gについても減圧乾燥処理を施すことが可能となる。
【0091】
<1.4 減圧乾燥装置1の効果>
以下、本発明の第1実施形態に係る減圧乾燥装置1の効果について説明する。
【0092】
(1)本実施形態の減圧乾燥装置1では、給気口41が基板Gの中心位置POから見て水平方向一方側(+Y側)の+Y空間領域L1内に開口した「一方側給気口」として機能しており、チャンバ10内で基板Gの減圧乾燥が行われた後の復圧工程では、当該一方側給気口(給気口41)を用いてチャンバ10内への給気が行われる。このため、給気口41からチャンバ10内へ窒素が給気された直後のタイミングでは、給気口41の位置する+Y空間領域L1で、−Y空間領域L2よりも陽圧の雰囲気が形成される。その結果、
図13,
図14に示すように、給気によってチャンバ10内に生じる気流AF2のうち、支持板22に支持される基板Gの第1主面S1側を流れる気流は、+Y空間領域L1から中心位置POを超えて−Y空間領域L2に向かう一方向の気流となる。
【0093】
このように基板Gの第1主面S1側で一方向の気流が形成されるため、復圧工程でチャンバ10内に発生する気流AF2同士が衝突して瞬間的に圧力が高まる箇所である「圧力集中領域PD」が、基板Gの第1主面S1側に生じる可能性を低下させることができる。
【0094】
この圧力集中領域PDでは、その圧力の上昇に伴って、当該圧力集中領域PD内に浮遊するレジスト液の溶剤成分が液滴化するおそれがある。したがって、上述したように圧力集中領域PDが基板Gの第1主面S1側で発生する可能性を低下させる(圧力集中領域PDを基板Gの側方あるいは第2主面S2側で発生させる)ことによって、液滴化されたレジスト液の溶剤成分が基板Gの第1主面S1側に付着する残渣不良のリスクを低下させることができる。
【0095】
(2)また、給気口41が下部分空間L12(基板Gの第2主面S2側)に設けられているため、復圧工程の際にチャンバ10内に発生する気流AF2のうち、給気口41の近傍で発生し特に圧力の強い気流である噴出気流AF20が、直接的に基板Gの第1主面S1側(レジスト液を塗布された側)に吹きつけられることがない。このため、基板Gの第1主面S1上に復圧の際の噴出気流AF20の影響による流れムラが生じることがない。
【0096】
(3)また、給気口41は上部分空間L11(基板Gの第1主面S1側)に向けて開口しているため、復圧工程の際にチャンバ10内に発生する気流AF2のうち、基板Gの第1主面S1側を流れる一方向の気流が、基板Gの第2主面S2側を流れる気流に比べて相対的に速くなる。この結果、圧力集中領域PD(気流の衝突箇所)が基板Gの第1主面S1側に発生する可能性をさらに低下させることができ、残渣不良のリスクが低下する。
【0097】
(4)また、本実施形態の減圧乾燥装置1では、
(4−1)給気口41と排気口31とが下部分空間L12に設けられ、
(4−2)給気口41が水平面視において排気口31よりもチャンバ10の側壁10S側において開口しており、
(4−3)減圧工程(基板Gの減圧乾燥)を終了させて復圧工程に移行するにあたって、排気口31位置での吸引気流AF10(排気圧)が消失する前に給気口41位置での噴出気流AF20(給気圧)が立ち上がるタイミング関係となるように(
図13参照)、制御部8が給気部40および排気部30の動作シーケンスを制御している。
【0098】
以上のような構成となっているので、下部分空間L12に給気された窒素によって発生する気流AF2のうち、水平面視において外側(側壁10S沿い)に向かう気流は吸引気流AF10の影響を受けにくい一方で、水平面視において内側に向かう気流は吸引気流AF10の影響により排気口31に吸引されやすい(
図13参照)。このため、減圧工程から復圧工程に移行された直後において、気流AF2のうち、水平面視において外側に向かう気流が内側に向かう気流に比べて相対的に速く流動する。
【0099】
また、給気口41と排気口31とが下部分空間L12に設けられているので、
図13および
図14に示すように、気流AF2のうち、水平面視において内側に向かう気流は下部分空間L12(基板Gの第2主面S2側)を流動し、水平面視において外側に向かう気流は上部分空間L11(基板Gの第1主面S1側)へと流動する。
【0100】
まとめると、復圧工程で発生する気流AF2のうち、上部分空間L11(基板Gの第1主面S1側)で流れる気流の方が、下部分空間L12(基板Gの第2主面S2側)で流れる気流よりも速くなる。このような構成となっているため、圧力集中領域PDが基板Gの直上に発生する可能性をさらに低下させることができ、残渣不良のリスクが低下する。また、給気口41は排気口31よりもチャンバ10の側壁10S側において開口しているため、減圧工程から復圧工程に移行された直後において、減圧工程によって排気口31近傍まで流動したレジスト液の溶剤成分が給気工程で基板Gの第1主面S1側へ押し戻されることを防止することができ、残渣不良のリスクが低下する。
【0101】
なお、
図13で示したように、一方向気流が基板Gの第1主面S1の面上で生じるだけでなく、基板Gの第2主面S2の面上の大部分でも一方向気流の状態となることが好ましい。第2主面S2そのものには液晶表示セルなどの電子デバイスを形成しないため、仮に第2主面S2上に残渣不良が生じても直接的には基板Gの歩留まりには影響しない。しかしながら、減圧乾燥処理の後工程などで第2主面S2に付着した残渣が舞い上がって第1主面S1側に付着する可能性はゼロではないため、残渣の発生は極力防止する方が好ましく、圧力集中領域PDは、給気口41からも基板Gの中心からもできるだけ遠い領域(具体的には、給気口41から遠い側での基板Gの端部またはそれよりも外側)で生じさせることが好ましい。
【0102】
以上説明したように、本実施形態の減圧乾燥装置1では、排気口31と給気口41との配置、および排気と給気との動作タイミングを特徴づけることよって、圧力集中領域PDが基板の第1主面S1側に発生する(基板Gの残渣不良がおこる)可能性を低下させることが可能である。
【0103】
したがって、減圧乾燥処理において従来行われていた、メインパージの前に一定時間スローパージを実行することでチャンバ10内の急激な圧力増加を防止する技術を用いずとも、基板Gにおける残渣不良の可能性を低下させることができる。すなわち、復圧工程をメインパージ(給気圧の強い急激な復圧)のみで実行することが可能となり、減圧乾燥処理のタクトアップが実現される。
【0104】
<2.第2実施形態>
<2.1 第2実施形態における減圧乾燥装置1Aの構成>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図15は、第2実施形態の減圧乾燥装置1Aの要部構成の概略を示す側面図である。また、
図16は、第2実施形態に係る給気部40A(特に、給気部材46)の外観を示す模式図であり、
図16(b)は
図16(a)のA−A断面を示している。なお、
図15以降の各図において、第1実施形態と同一の要素については同じ符号を付している。
【0105】
第2実施形態の減圧乾燥装置1Aは、第1実施形態の減圧乾燥装置1の構成において、給気部40を給気部40Aに代えた構成となっている。より具体的には、第1実施形態でチャンバ10の底壁に設けられチャンバ10内に開口していた給気口41に代えて、第2実施形態では、スリット状の開口部47を有する給気部材46がチャンバ10内に設けられる。第2実施形態の減圧乾燥装置1の残余の構成は第1実施形態と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0106】
第2実施形態の給気部40Aは、排気部30によって減圧状態とされたチャンバ10内の圧力を大気圧まで復圧させるための配管系であって、スリット状の開口部47を有する給気部材46と、ガス供給源45から供給される窒素を給気部材46に送る給気管42と、給気管42に設けられる開閉弁43と、流量調整弁44と、ガス供給源45とを備える。
【0107】
図15および
図16に示すように、給気部材46は、チャンバ10内にX方向に沿って延設された筒状の部材であり、X方向に延びて設けられたスリット状の開口部47を有する。また、給気部材46は+Y空間領域L1でかつ下部分空間L12に設けられており、その開口部47は、水平面視において復圧工程の際に基板Gが存在する位置よりもチャンバ10の側壁10S側で、鉛直軸(Z方向)から基板G側に角度θ(0度<θ<90度)だけ傾斜した方向に開口している(
図16(a),(b)参照)。
【0108】
以上のような構成となっているため、第2実施形態の減圧乾燥装置1では、開口部47が、中心位置POから見て水平方向一方側(+Y側)の下部分空間L12に開口しており、上記水平方向と直交する方向に沿って延びたスリット状の「一方側給気口」として機能する。
【0109】
<2.2 第2実施形態における減圧乾燥装置1Aの効果>
以下、本発明の第2実施形態に係る減圧乾燥装置1Aの効果について説明する。
【0110】
図17、
図18は、復圧工程中に給気部40Aによる給気の影響によってチャンバ10内に発生する気流AF2を概念的に示した側面図および上面図である。なお、
図18は、上部チャンバ12および昇降機構13に係る構成を除いた上面図で描かれている。
【0111】
上述したように、第2実施形態の開口部47(一方側給気口)は、水平面視において復圧工程の際に基板Gが存在する位置よりもチャンバ10の側壁10S側で、鉛直軸から基板G側に傾斜した方向に開口している。このため、開口部47より噴出される噴出気流AF20は基板Gの第1主面S1側により多く流動し、上記基板Gの第1主面S1側を流れる気流AF2が、基板Gの第2主面S2側を流れる気流AF2に比べて相対的に速くなる(
図17、
図18参照)。この結果、圧力集中領域PD(気流の衝突箇所)が、基板Gの第1主面S1側に発生する可能性をさらに低下させることができ、残渣不良のリスクが低下する。
【0112】
なお、第2実施形態の減圧乾燥装置1Aにおいて、第1実施形態の減圧乾燥装置1と同様の構成となっている事項に関しては、第1実施形態の減圧乾燥装置1と同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0113】
<3 変形例>
以下、本発明の変形例について説明する。
【0114】
本発明の減圧乾燥装置1,1A(減圧乾燥方法)は、溶剤を含む塗布液が第1主面S1上に塗布された基板Gに減圧乾燥処理を行うものであれば適用可能であり、上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0115】
したがって、被処理基板は液晶用のガラス基板に限るものではなく、他のフラットパネルディスプレイ用基板や、半導体ウエハ、CD基板、フォトマスク、プリント基板等も可能である。減圧乾燥処理対象の塗布液もレジスト液に限らず、たとえば層間絶縁材料、誘電体材料、配線材料等の処理液も可能である。また、塗布装置9と減圧乾燥装置1,1Aとの配置関係も
図1に示すような構成に限られず、たとえば、減圧乾燥装置1が多段に積み重ねられた構成であってもよいし、搬送ロボットTRが複数備えられるような構成であってもよい。
【0116】
チャンバ10の構造や形状はもちろん、チャンバ10内外の各部、特に、排気部30、給気部40の構造、一方側給気口の個数、配置位置等も、上述した実施形態のものに限らず、種種の変形が可能である。すなわち、一方側給気口は1個でもよく複数個でもよい。また、上記実施形態では、排気のオンオフ制御および排気力の制御を行なうために開閉弁33と圧力制御弁34とを用いていたが、これらに代えて、閉止状態から全開状態までを調整可能な一の弁を採用しても良い。開閉弁43と流量調整弁44とについても同様である。
【0117】
図19は、上記第2実施形態の変形例に係る給気部材46Bの外観を示す模式図である。
図19に示すように、給気部材46Bは、一方向に延びる筒状の部材であり、当該一方向に沿って等間隔に配列された複数の円形開口48を一方側給気口として有している。この円形開口48の開口軸もまた、
図18(b)の場合と同様の角度θだけ鉛直軸Zから傾いていることが好ましい。この円形開口48の配列は、複数のスポット状開口の配列の典型例となっている。この給気部材46Bを、第2実施形態の給気部材46に代えて、+Y空間領域L1でかつ下部分空間L12にX方向に沿って延設する構成を採用してもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、スローパージを行なわない復圧工程について説明したが、これに限られるものではない。すなわち、メインパージの前に一定時間スローパージを実行してもよい。この場合、本発明の適用とスローパージを用いた復圧(急激な圧力変化を伴わない復圧)とによって、残渣不良の可能性を大きく低下させることが可能である。
【0119】
また、上記実施形態では、基板Gの第1主面S1側が上方となるように支持部20に載置される構成を示したが、基板Gの第1主面S1側が下方となる場合、すなわち処理液が塗布された主面を下側に向けて基板を保持して減圧乾燥を行う場合にも本発明の減圧乾燥装置1を適用することができる。この場合には、上部分空間L11を「第2部分空間」、下部分空間L12を「第1部分空間」と対応させることで、上記実施形態と同様の効果を得られる。
【0120】
また、上記実施形態では、基板Gの中心位置POから見て水平方向一方側の「第1空間領域内」に一方側給気口が開口した構成を例に挙げて説明したが、上記第1空間領域を「チャンバ10内の水平面視における領域のうち、基板Gの中心位置POから見て水平方向一方側の端部からの4分の1の領域」と規定することで、より好適に本発明を実施することができる。すなわち、一方側給気口が水平面視においてチャンバ10の端部側から4分の1の領域内に配されることによって、復圧工程の際に基板Gの第1主面S1上で第1空間領域から第2空間領域に向けてのより強い一方向気流が形成され、圧力集中領域PDが基板の上方で発生しにくくなるため、残渣不良の防止効果が特に高くなる。
【0121】
また、本発明の減圧乾燥装置1,1Aでは、チャンバ10内の復圧を、第1空間領域内に開口している少なくとも1つの一方側給気口を通じて給気することによって行う。すなわち、本発明の減圧乾燥装置1では、復圧工程において用いる一方側給気口が第1空間領域内に配されていれば足り、他の工程で用いる給気口については第2空間領域や中心部分に配されていても構わない。