【実施例】
【0206】
[00246]本発明の更に完全な理解を容易にするために、実施例が以下に提供される。以下の実施例は、本発明を製造し、そして実施する例示的様式を例示する。然しながら、本発明の範囲は、これらの実施例中に開示される具体的な態様に制約されるものではなく、これらは、同様な結果を得るために別の方法を使用することができるため、例示のみの目的である。
【0207】
実施例1−HAT活性化化合物
[00247]本発明のヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)活性化剤であるYF2(
図3)は、神経変性疾患(即ち、アルツハイマー病及びハンチントン病)の記憶を回復する、そして各種の癌に対する治療のための良好な薬物候補である。YF2化合物がマウスに投与(i.p.)された場合、ウェスタンブロットは、これが、BBBを通過するだけでなく、更に海馬のヒストン3アセチル化レベルを増加すること(
図1)を示した。行動実験において、表題化合物は、Aβ42注入マウスにおける状況的恐怖記憶欠損を回復する(
図2)。Aβ42は、ADにおいて大量に生産されるタンパク質であり、そしてシナプス機能及び記憶の障害の原因である。
【0208】
実施例2−HAT活性化剤化合物の特徴
[00248]Mantelingu等からの化合物6Jを合成した(
図4)。然しながら、化合物6Jは、溶解性を持たず、そしてこれをH
2Oに入れるとすぐに沈殿した。然しながら、薬物が(100%DMSOに溶解したとしても)、これが投与されるとすぐに沈殿するものである懸念が存在した。従って、可溶性であった新しい化合物、“MOM”を合成した。
【0209】
[00249]MOMは、中程度の溶解性を有している(H
2O中のDMSO10%)。MOMをWTマウスに25mg/kg投与(i.p.)した。マウスの肝臓及び海馬を治療の1時間後抽出した。肝臓は、AcH3の非常に僅かな増加を示し、薬物が、非常に僅かな効力を、又は非常に僅かな膜透過性を有するかのいずれかであることを示した(
図6)。海馬は、AcH3レベルの増加はなく、薬物が、無効であるか、又は血液脳関門(BBB)を通過しないかのいずれかであることを示した(
図6)。MOMは、海馬及び肝臓中のAcH3レベルを増加することに失敗したが、実験を新しい投与(強制飼養及びi.p.で25mg/kg)で繰返した。その後、マウスの恐怖条件づけ処置を行って、学習の導入後、薬物が活性であるか否かを見た。マウスの肝臓及び海馬に加えて、マウスの皮質を更に抽出した。海馬、皮質、及び肝臓の試料は、再びAcH3の増加を示さず、薬物が、無効であるか又はBBBを通過しないか或いは細胞膜を通過しないかのいずれかであることを示した(
図7)。
【0210】
[00250]MOMがAcH3レベルの増加に失敗したが、異なった化学ベヒクル(10%DMSO及び10%Tween80)で実験を繰り返した。背部海馬に植込んだカニューレによってこれを与えることによって、BBBをバイパスした。海馬及び皮質の両方を治療後2時間及び4時間後に抽出した。ベヒクルと比較して、カニューレによってMOMを投与された(片側当たり100μg/μl)マウスは、AcH4の増加を示した(レーン1対レーン2、3)。薬物をi.p.で与えられたマウスは、AcH3の増加を示さなかった(
図8)。このデータは、化合物MOMが、BBBを通過しないことを示す。
【0211】
[00251]新しい化合物YF2(
図3)を合成した。YF2の調製は、カラム無しで、そして二相:透明及び油状は、目に見えた。その後、YF2(50mg/kg、i.p.)を、マウスに投与した。その投与の2及び4時間後、マウスを犠牲にし、そして海馬を抽出した。興味あることに、YF2は、BBBを通過することが可能であり、細胞を透過し、そしてAcH3を増加した(レーン1対レーン9、10)(
図8)。化合物は100%純粋ではなく、そして更なる精製/検証が必要であったが、本出願人等は、更にYF2を合成し、そしてそれを精製した。純度は、核磁気共鳴(NMR)によって検証した。マウスにYF2(i.p.生理食塩水中に溶解)を5、10、20mg/kgで投与した。海馬抽出物を、三つの異なった時点で(治療の0.5、1及び2時間後)製造した。次いで本出願人等は、AcH3に対してウェスタンブロットを行った。YF2の1時間−10mg/kg投与を除き、YF2は、AcH3レベルを劇的に増加し(
図10)、YF2がBBB及び細胞膜を通過したことを示した。
【0212】
実施例3−状況的及び手懸り付き恐怖条件づけ実験
[00252]状況的及び手懸り付き恐怖条件づけを、化合物がアミロイド−ベータ(Aβ)誘導の記憶欠損を回復することが可能であるか否かを評価するために行った。Aβは、アルツハイマー病において上昇されるペプチドである。海馬は、状況的記憶及びアルツハイマー病において重要な役割を演じる。この種類の認知試験は、訓練及び試験に多くの日数を必要とする他の行動課題よりはるかに速い[Q1、Q2]。本出願人等の条件づけ部屋は、遮音箱中にあった。透明なプレキシガラスの窓が、実験者がマウスの行動を三脚上に置かれ、そしてFreezeframeソフトウェア(MED Ass.Inc.)に接続されたカメラで撮影することを可能にした。バックグラウンドのホワイトノイズ(72dB)を得るために、一台のコンピューターファンを遮音室の片側に設置した。条件づけ部屋は、36本の棒の絶縁されたショックグリッドの床を有していた。床は除去可能であり、そしてそれぞれの実験患者後、本出願人等は75%エタノールで、そして次いで水で洗浄した。一度に一匹のみのマウスが、実験部屋にいた。
【0213】
[00253]手懸り付き及び状況的条件づけ実験において、マウスを離散純音(CS)(30秒間2800Hz及び85dBで継続される音響)の開始の2分前に条件づけ部屋に入れた。CSの最後の2秒に、マウスに0.8mAの2秒間の脚部ショック(US)を床の棒を通して与えた。CS/USの対の後、マウスを更に30秒間条件づけ部屋に残し、そして次いでそのホームケージに戻した。呼吸によって必要とされるものを除く全ての動きの非存在として定義される竦み行動を、Freezeviewソフトウェアを使用して採点した。
【0214】
[00254]状況的恐怖づけ学習を評価するために、竦みを、マウスが24時間訓練された部屋で、訓練後5分間(連続的に)測定した。手懸り付き恐怖学習を評価するために、状況的試験に続いて、マウスを新規な状況(滑らかな平らな床を持つ三角のケージ)中に2分間入れ(前−CS試験)、その後、彼らを3分間CSに暴露し(CS試験)、そして竦みを測定した。ショックの知覚性認知を、閾値評価によって決定した。一連の一回の脚部ショックを、恐怖条件づけのために使用した同じ感電させるグリッド上に置かれたマウスに供給した。最初、0.1mVのショックを1秒間供給し、そしてマウスの行動を、尻込み、跳躍、及び発声に対して評価した。30秒間隔で、ショックの強度を0.1mVずつ0.7mV迄増加し、そして次いで0mVまで、0.1mV減分で30秒間隔で戻した。発声、尻込み、そして次いで跳躍に対する閾値を、それぞれにマウスに対して、それぞれのマウスの脚部ショックに対する行動反応を示すショック強度を平均することによって定量化した。
【0215】
[00255]YF2を、マウスにi.p.投与した(マウスの一つの群は、20mg/kgを電気ショックの2時間前に投与され、一方他の群は、5mg/kgを電気ショックの30分前に投与された)。両方の投与量のYF2は、化合物が、状況的記憶の障害を救済することを証明する竦み時間を劇的に増加することが可能であった。最高の濃度(20mg/kg)の単独の化合物は、状況的記憶に影響せず(
図10)、化合物自体は記憶に関して毒性ではないことを示した。手懸り付きの記憶は、異なった群において変化せず、YF2が扁桃体機能に影響しないことを示した(
図11)。最後に、本出願人等が、ベヒクル、単独のYF2、単独のAβ、又はYF2プラスAβの存在中の知覚性閾値を評価した実験の異なった組合せ中の異なったマウスの群間に差は観察されなかった(
図12)。
【0216】
[00256]恐怖条件づけ試験中に得られた結果に基づき、本出願人等は、治療の最良の時点を検証するために、血液中のYF2の動態を決定することに決めた。この目的のために、本出願人等は、化合物(20mg/kg、i.p.)を投与し、そして次いで異なった時点で尾部から血液を試料採取した。YF2の動態は、概略注射の30分後にピークを示す(
図13)。
【0217】
[00257]参考文献
【0218】
【化40】
【0219】
実施例4−二日間の放射状アーム水迷路(RAWM)
[00258]課題は、モーリス水迷路(MWM)及び放射状アーム陸迷路の複合型である。この課題は、Aβ注入マウスにおいて変更された。マウスに対する動機づけは水中の浸漬である。マウスは、中心部から放射状に広がる6個のアレイ(アーム)中を、部屋に置かれた目に見える手懸りに基づいてアームの一つの末端の隠された(沈んだ)プラットフォームを見つけるまで泳ぐ必要があった。目的のアームは、学習基準が2日中に達成されるように、一連の試行に異なった出発アームを伴う全ての試行に対して一定に保たれた。プロトコルの最初の日は、訓練日であった。目的のアームを見える及び隠されたプラットフォーム間で変更することによって、プラットフォームの位置を同定するように、マウスを訓練した。1日目の最後の三回の試行及び二日目の全ての15回の試行は、目的のアームの位置を同定するために空間的手懸りを使用するようにマウスを強制するために隠れた逃避プラットフォームを使用した。
【0220】
[00259]消耗する実行によって課される学習の制約を回避し、そして連続した試行の結果であることができる疲労を回避するために、4匹のコホートのマウスを試験し、そして毎日の3時間の試験時間をかける15回の訓練の試行を通して異なったコホートに変更することによる間隔を置いた実行の訓練を確立した。一日目に、目に見えるプラットフォームを目的の位置に置いた。コホート1のマウス1を、一番目の出発アーム(採点表に規定された)の壁の周囲に近いプール中に静かに入れ、そしてプールの中心に向けた。不正なアームへの進入(プラットフォームのないアームへの進入)の回数を数えた。マウスが不正なアームに進入した場合、これは出発アームに静かに引き戻された。それぞれの試行は、1分まで継続した。15秒後のアームの選択の失敗を、誤りとして数え、そしてマウスを出発アームに戻した。1分後、プラットフォームを見つけられなかった場合、マウスを手をその後ろにおくことによって、これをプラットフォームに向けて水中を静かに案内した。マウスは、プラットフォーム上で15秒間休憩した。試行を完了した後、マウスをプールから出し、穏やかにタオルで拭き、そして加熱ランプ下のそのケージに戻した。目的のプラットフォームの位置は、それぞれのマウスに対して異なっていた。
【0221】
[00260]第一のコホートの全てのマウスが、見えるプラットフォームを見つける試行を行った後、プラットフォームを見えるものから隠されたものに取り換えた。コホート1からのそれぞれのマウスが、見える及び隠されたプラットフォームの6回の交互の試行を完了した後、マウスを加熱源下で休憩するままにし、そして第2のコホートのマウスを同じ方法で試験した。6回の交互の試行を完了した後、コホート2のマウスをそのケージに戻して、休憩させた。
【0222】
[00261]次に、第1のコホートのマウスは、再び見える−隠されたプラットフォームの位置を交互に使用して試行7−12を完了した。第1のコホートのマウスの休憩時間中に、第2のコホートのマウスが試行7−12を完了した。この時点で、全てのマウスが3回の隠されたプラットフォームの試行を行った。二日目、隠されたプラットフォームのみを使用する全ての15回の試行に対して、一日目と同じ方法を繰返した。データ解析のために、それぞれのマウスの平均を、3回の試行のブロックを使用して計算した。
図14に示すように、ベヒクルで治療されたマウスは、二日目の終りに近い3回の試行にわたって約1回の誤りを示した。
【0223】
[00262]対照的に、Aβ注入マウス[Aβ
42の両側注射;1分かけて1μlの最終体積中の200nM;それぞれの試験日に対し二回:1回目試行の15分前(試験の1番目の群に対して)及び7回目試行の15分前(試験の2番目の群に対して)背部海馬中に]は、学習に失敗し、訓練期間中3−4回の誤りを起こし、試行を通して改善がなかった。YF2による治療[(i.p.、5mg/kg、1回目試行の30分前(試験の1番目の群に対して)及び7回目試行の30分前(試験の2番目の群に対して)]は、Aβ誘導の記憶障害を救済した。更に、YF2それ自体は、この種類の試験に伴うマウスの能力に影響しない。二日間のRAWMによる試験の結果に影響することができるマウスの知覚、運動及び動機的技能の制御は、マウスの四つの異なった群間の見えるプラットフォームに到達するために必要な時間及び泳ぐ速さに、何らの差も示さなかった(
図15及び
図16)。
【0224】
実施例5−アルツハイマー病におけるヒストンアセチル化の調節不全
[00263]本出願人等は、最近、トリコスタチンA(TSA)によるヒストンの脱アセチル化の阻害が、APP/PS1マウスと呼ばれる、PS1(M146L、ライン6.2)中の変異を伴うAPP(K670MN671L)中のスウェーデン変異を発現する遺伝子導入(Tg)マウスの、アミロイドを沈積する動物モデル中のLTP及び状況的恐怖条件づけ(FC)を回復することを示した
[A21,A22]。更に、CBPのHAT活性は、PS1刺激後のin vitroの転写を向上するために必須であり、そしてAPP/PS1マウスのCBPレベルは、WTマウスより有意に低かった。APP/PS1マウスからの海馬は、FC訓練後、記憶の形成に重要であることを示すアセチル化であるアセチル化ヒストン4レベルの概略50%の減少を示した
[A23]。これらの発見に基づき、そして理論に束縛されることなく、ヒストンアセチル化を含む後成的変化は、ADに伴うシナプス機能及び記憶のAβ誘導の損傷において重要な役割を演じる。
【0225】
[00264]脳において、CREBリン酸化は、CBPに結合するCREB能力のために、そして記憶関連遺伝子の発現を刺激するために必要である。基底転写装置との相互作用をヒストンのアセチル化を触媒するアセチルトランスフェラーゼ(HAT)として働くことによって容易にする活性化補助因子としての、染色体抑圧の減少及び記憶関連遺伝子の転写における増加を起こすCBPは機能する。HATと異なり、HDACは、ヒストンからアセチル基を除去し、従ってDNAへの転写装置の接近を制限することが見いだされている。興味あることに、HDAC阻害剤は、LPT及びマウスが中性の刺激を有害なものと結合させなければならない連合記憶の形態である状況的恐怖記憶を向上することを示している[A25]。
【0226】
[00265]更に、CBP+/−マウスの記憶及びLTP欠損は、HDAC阻害剤のSAHAによって逆転され、この群の薬物のルビンシュタイン・テイビ症候群(RTS)中の精神的遅滞に対する治療剤としての潜在的使用を支持する[A24]。HDAC III阻害剤であるニコチンアミドは、ADの三重Tgマウスモデルにおける認知を、Thr321−ホスホtauの減少を含む機構によって回復することが見いだされている[A26]。更に、HDAC阻害剤は、樹状突起の発芽、シナプスの数の増加、並びに復元された学習及びニューロン減少のCK−p25Tgマウスモデル中の長期の記憶への接近を誘導した[A23]。HDAC阻害剤は、後成的及び非後成的変化を含む各種の機構によってニューロン機能に影響することができた[A27]。Aβ上昇後の認知障害が、ヒストンアセチル化(クロマチン再構築によって)の後成的修飾によって誘導することができるか否かは、決定されていない。
【0227】
[00266]WT−PS1は、CBPの転写活性能力を刺激し、一方そのADのM146L変異体は、このような効果を産生せず[A20]、ADのCBP及びそのHAT活性が関係することができることを示した。更に、HAT活性を欠損するCBP変異体は、増加した転写活性化能力に関して、WT−PS1に反応することが可能ではない。従って、CBP及びそのHAT領域は、PS1刺激後のin vitroの転写を向上するために必須であるように見受けられる。本発明人等は、APP/PS1マウスのヒストンのアセチル化レベルがWTマウスと異なり、従ってADが後成的病因の疾病として同定されることを見出した。
【0228】
[00267]有意性。 ADは、殆ど一世紀昔に記載されているが、ニューロンの病態の発症に導く分子機構は、いまだに未知である。理論に束縛されるものでないが、エピジェネティックス及びヒストンアセチル化は、ADにおいて基本的役割を演じることができる。更に、HDACの阻害、又は逆にHATの活性化は、疾病の進行を効果的に対抗することがっできる。
【0229】
[00268]Aβ誘導のシナプス及び記憶機能障害がヒストンの脱アセチル化の阻害によって回復されるか否かを決定すること。
[00269]TASがAPP/PS1マウスのLPT及び状況的学習の減少を救済することを示すデータに基づいて、本出願人等は、阻害剤が、更にAβの効果を、APP及びPS1の過剰発現の他の影響から分離するために、Aβ暴露後のこれらの欠損を救済するか否かを決定するものである。
【0230】
[00270]ADは、より大きいニューロンの機能障害に漸進的に導き、記憶の減少に導くシナプスの疾患として開始すると考えられる[A28]。Aβ誘導のシナプス及び記憶機能障害におけるエピジェネティクスの関与に好ましい証拠を得るために、本出願人等は、HDAC阻害剤のTSAを、生後3−4ヶ月のAPP/PS1マウスに対して使用する一連の実験を行った(これらのマウスの特徴を示す実験の詳細な説明については、本出願人等の原稿を参照されたい[A17,A29]。
【0231】
[00271]この年齢で、Tgマウスは、シナプス可塑性及び記憶機能障害を丁度示し始める[A29]。基礎シナプス伝達(BST)は、APP/PS1及びWTマウス間で同様である。本出願人等は、以前にこの年齢のマウスにおいて示されたように二つの群間でBSTの差を見いだせなかった[A29]。次いで海馬の切片を、TSA(1.65μM)で30分間潅流してから、シャファー側枝経路の高頻度反復刺激によってLPTを誘導した。TSAで治療されたAPP/PS1切片の増強は、ベヒクルで治療されたAPP/PS1切片におけるものよりはるかに大きかった(
図17)。しかし、TSAは、WTマウスの海馬切片中のLPTの振幅を、ベヒクル単独で治療されたWT切片と比較して変化しなかった。更に、TSA潅流は、強縮を受けなかったAPP/PS1及びWT切片中の基線伝達に影響しなかった。
【0232】
[00272]シナプスの機能障害におけるTSAの急性効果に対する実験後、本出願人等は、TSAが、APP/PS1マウスの状況的FCの障害に対して有益であるか否かを決定した
[A17]。生後4ヶ月のマウスを、四つの群:TSAを伴うAPP/PS1、ベヒクルを伴うAPP/PS1、TSAを伴うWT及びベヒクルを伴うWTに分けた。TSA及びベヒクル対照溶液を、i.p.で2μg/g体重の濃度で投与した。本出願人等は、各種のマウスの群中で同様なショックの閾値を見出した。次いでマウスを、中性の刺激を有害なものと結合するために訓練した。これらを新規な状況(FC箱)に置き、穏やかな脚部ショックと対になったホワイトノイズの合図に暴露し、そして訓練の2時間前にTSAを注射した。恐怖学習を、状況の提示に反応する竦み行動−呼吸のために必要なものを除くすべての動きの非存在−を測定することによって24時間後評価した。本出願人等は、FCの訓練中の四つの群のマウス間の竦み行動に差を見出さなかった。24時間後、竦み行動は、状況的学習の解析において、ベヒクルで治療されたWT同腹仔と比較して、ベヒクルで治療されたAPP/PS1マウスにおいて減少した(
図18)。TSAは、Tgマウスの記憶を改善した。
【0233】
[00273]将来の実験において、本出願人等は、
図17及び
図18に記載された電気生理学的及び行動的発見を、構造的に異なったヒストンデアセチラーゼの阻害剤である酪酸ナトリウム(NaB)を使用して同定するものである。TSA実験に関して、生後3−4ヶ月のAPP/PS1マウスからの切片を、NaB(300μM)で30分間治療してから、シータバースト刺激を適用して、LPTを誘導するものである。対照は、ベヒクルで治療されたAPP/PS1マウス及びNaB又はベヒクルで治療されたWT同腹仔マウスからの切片で行うものである。TSAと同様に、本出願人等は、更に、NaB(1.2g/Kg)が、APP/PS1マウスの正常な状況的恐怖記憶を再確立するか否かを検査するものである。
【0234】
[00274]APP及びPS1遺伝子導入は、ニューロン機能に、Aβによる直接的影響を含む異なった機構によって[A30、A31]影響することができる。全長のAPP及びその開裂した産物の輸送及びシグナル伝達特性は、異なっている可能性があり、これらはシナプスの機能の側面に異なって影響することができる。Aβの影響をAPP及びPS1過剰発現の他の影響から分離するために、本出願人等は、Aβ自体が、Tgマウスにおける本出願人等の研究で観察された欠陥の原因であるか否かを決定するものである。ヒトAβの天然のオリゴマーが、モノマー及び原線維の非存在においてLTPをin vivoで顕著に阻害することが既に記載されているために、本出願人等は、200nMのオリゴマーのAβ
42を、TSA(1.65μM)と同時に30分間WT切片に、LTPの誘導の前に適用するものである。更に、本出願人等は、状況的恐怖記憶を、FCに対する訓練の15分前の背部海馬への200nMのオリゴマーのAβ
42の、TSA(2μgr/gr体重、訓練の2時間前、i.p.)と同時の両側注入によって障害するものである。理論に束縛されるものではないが、オリゴマーのAβ
42は、LTP及び恐怖記憶を阻害し、そしてTSAが、Aβ
42治療後の正常なLTP及び状況的恐怖記憶を再確立することを証明する筈である。単独のTSAは、何らの効果を持たない筈である。更なる実験において、本出願人等は、LTPを誘導するためのシータバースト刺激の適用の30分前に、NaB(300μM)プラス200nMのAβ
42を使用するものである。対照は、ベヒクルで治療された切片で行うものである。TSAと同様に、本出願人等は、更に、NaB(1.2g/Kg)が、Aβ
42注入マウスの正常な状況的恐怖記憶を再確立するか否かを検査するものである。総括すれば、これらの実験は、ヒストンアセチラーゼの阻害が、オリゴマーのAβの上昇によって起こされたシナプス及び記憶の機能障害に対して有益であることを証明するものである。
【0235】
[00275]Aβ上昇後のCBPの関与の特徴付け
[00276]i)WT−PS1が、HAT活性を欠損するCBP構築物で形質転換されたF11細胞の転写をもはや促進せず、そしてii)CBPレベルがAPP/PS1マウスにおいて減少するという観察の基づいて、本出願人等は、CBPのHAT活性及びレベルが、APP/PS1マウスにおいて、そしてAβ上昇後に影響されるか否かを決定するものである。
【0236】
[00277]本出願人等は、最近、CBPのHAT活性が、WT−PS1の刺激効果において何らかの役割を有するか否かを、全長のCBPが変異(WY−アミノ酸1503−1504がアラニン及びセリンで置換されている)を含有する構築物を使用することによって試験した。そのHAT活性を完全に無効にするこの変異は[A32]、Gal4のDNA結合領域に連結している(
図19)。全長のWT−CBPの向上したプロモーター活性と対照的に、WY−CBPに伴う活性は観察されなかった(
図20A)。WT及びWYのGal−CBP間の基礎活性に差はなかった(
図20B)。従って、HAT活性を欠損するCBP変異体は、増加された転写活性化能力に関してWT−PS1に反応することが不可能である。従って、CBP及びそのHAT領域は、PS1刺激後のin vitroの転写を向上するために必須であるように見受けられる。更に、本出願人等は、APP/PS1マウスの内因性CBPレベルを測定することを決定した。
【0237】
[00278]生後4ヶ月のAPP/PS1マウスの海馬からのウェスタンブロット分析は、WTの対照と比較して、CBPレベルの有意な減少を明らかにした(
図21)。将来の実験において、本出願人等は、これらの結果を複製するものである。別の戦略は、CBP分布(細胞質対核)における変化が、PS1(M146L)の、WT−PS1と比較して過剰な発現後のF11細胞中で観察された与えられた核の画分からのCBPの測定を含むものである[A20]。本出願人等は、更にAPP/PS1マウスにおけるCBPのHAT活性を基本的条件及び状況的学習のための訓練の1時間後の両方で、そのWT同腹仔と比較して直接測定するものである。対照は、CBPのHAT活性の変化が、新規な状況単独又はこれら間の結合の代わりの電気ショックのためであることを除外するための潜在阻害訓練パラダイムを使用して行われるものである[A25]。潜在阻害パラダイムにおいて、マウスが連合した状況的恐怖記憶の形成を遮断する空間的記憶を形成するものであるように、電気ショックを受ける前に新規な状況にマウスを予備暴露するものである。最後に、本出願人等は、HATアッセイのような実験パラダイムを使用する、海馬に対して新しい蛍光定量的アッセイを使用してHDAC活性を測定するものである。理論によって束縛されるものではないが、これらの実験は、CBP及び/又はHDACが、APP及びPS1導入遺伝子の過剰発現後に変化されるか否かを確立するものである。
【0238】
[00279]本明細書中に記載された電気生理学的及び行動的実験と同様に、本出願人等は、TSAの投与が、CBPレベル及びCBPのHAT活性の変化を救済するものであるか否かを求めるものである。本出願人等は、本明細書中に記載されたものと同じ実験を、APP/PS1マウスから海馬を回収する2時間前のTSA(2μg/g体重;i.p)による治療後に繰り返すものである。ベヒクル及びTSAで治療されたWT同腹仔が対照として役立つ。APP及びPS1過剰発現の影響を、Aβ自体の影響と区別するために、本明細書中に記載された実験(TSAを伴う又はベヒクルのみを伴うCBPレベル、CBP−HAT活性及び全HDAC活性を含む)を、ベヒクル注入マウスと比較するために、WTマウスの背部海馬に注入された200nMのAβ
42の存在中で繰返すものである。理論によって束縛されるものではないが、これらに実験は、CBP及び/又はHDACが、Aβ上昇後に変化されるか否かを確立するものである。
【0239】
[00280]Aβ上昇後、どのヒストンアセチル化レベルが変化するかを決定する。
[00281]データは、APP/PS1マウスの海馬中のアセチル化されたヒストン4レベルの約50%の減少を示している。将来の実験において、本出願人等は、更に転写及び記憶において重要な役割を演じるヒストン2B及び3に対する本出願人等の調査を拡大するものである[A23−A25]。本出願人等は、最後に、Aβ上昇がヒストンアセチル化に影響するか否かを検査するものである。
【0240】
[00282]本出願人等は、更に、APP/PS1マウスにおいて見られる障害が、WT同腹仔と比較して、後成的影響か否かを試験するものである。ヒストン2B、3及び4のアセチル化は、転写及び記憶において重要な役割を演じることが示された[A23−A25]。WT及びAPP/PS1マウスからの海馬中のH4のアセチル化を測定した。ベヒクル対照溶液を、i.p.でFC訓練の2時間前に投与した。状況的FCの1時間後、APP/PS1及びWTマウスを安楽死させ、そして海馬を抽出した。ウェスタンブロット分析は、WTマウスと比較して、APP/PS1マウスがアセチル化されたヒストン4レベルの50%より多い全体的減少を有することを証明した(
図22)。HDAC阻害が、APP/PS1マウスにおいて観察されたヒストン4のアセチルレベルの障害を救済することができるか否かも更に試験した。TSA(2μg/g体重;i.p)の状況的恐怖条件づけの2時間前の注射は、APP/PS1マウスのH4アセチル化を向上した(
図22)。理論によって束縛されるものではないが、ADは、後成的モチーフを伴う疾病である可能性があり、そしてHDAC阻害剤は、ADマウスモデルのヒストン4の減少したレベルを上昇することができる。
【0241】
[00283]将来の実験において、本出願人等は、ヒストン4の基礎アセチル化レベル、並びに制御を、本明細書中に記載される潜在阻害パラダイムを使用して測定するものである。更に、本出願人等は、本出願人等の研究を、生後4ヶ月のAPP/PS1及びWT同腹仔の海馬中のそのアセチル化を、基本条件及びFCのための訓練後の両方に、TSAを伴い又は伴わずヒストン4に対して測定することによって、ヒストン2B及び3に拡大するものである。対照は、更に本明細書中に記載される潜在阻害訓練パラダイムを使用して行われるものである。最後に、本出願人等は、これらの発見を、ヒストンデアセチラーゼの構造的に異なった阻害剤のNaBを使用して同定するものである。TSA実験に関して、本出願人等は、NaB(1.2g/Kg)が、APP/PS1マウスの正常なヒストン/類のアセチル化レベルを再確立するか否かを検査するものである。
【0242】
[00284]APP及びPS1の過剰発現の影響を、Aβ自体の影響から分離するために、異なったヒストンのアセチル化レベルの測定に関して本明細書中に記載された実験を、ベヒクル注入のマウスと比較するために、WTマウスの背部海馬に注入された200nMのオリゴマーのAβ
42の存在中で繰返すものである。理論によって束縛されるものではないが、オリゴマーのAβ
42は、ヒストン4のアセチル化レベルに影響するものである。残りのヒストンアセチル化レベルは、遺伝子導入(Tg)マウスからの発見と一致する筈である。更なる実験は、NaBで行われるものである。TSA実験に関して、本出願人等は、NaB(1.2g/Kg)が、APP/PS1マウスの正常なヒストン/類のアセチル化レベルを再確立するか否かを検査するものである。理論によって束縛されるものではないが、これらに実験は、減少したヒストンアセチル化のような後成的変化が、ADに伴うシナプス機能及び記憶のAβ誘導の損傷において重要な役割を演じることを証明するものである。
【0243】
[00285]
方法
[00286]動物: 二重Tgマウスを、APP及びPS1マウスを交雑することによって得るものである(PCRによって遺伝子型が同定された)
[A29]。Aβ実験のために本出願人等は、C57B16マウスを使用するものである。
【0244】
[00287]Aβ製剤: オリゴマーのAβ
42は、商業的に入手可能な合成ペプチド(American Peptides Co)から、記載されているように
[A33,A34]調製されるものである。
【0245】
[00288]電気生理学のために、400μmの切片を切断し、そして記録の前に、報告されているように
[A5]インターフェースチャンバー中に29℃で90分間維持するものである。簡単には、CA1のfEPSPは、CA1の放射状層に刺激及び記録電極を入れることによって記録されるものである。BST評価後、毎分最大誘発反応の約35%の反応を誘発する強度で、15分の基線が記録されるものである。LTPは、θ−バースト刺激(5Hzで繰返されるバーストを伴う100Hzの4回のパルス、及びそれぞれの強縮が15秒離れた3回の10回バーストの繋がりを含む)を使用して誘導されるものである。
【0246】
[00289]状況的及び手懸り付き条件づけのために、マウスを条件づけ部屋に離散純音(CS)(30秒間、2800Hzで85dBの音響)の開始の2分前に、記載されているよう
[A17]に入れられるものである。CSの最後の2秒に、マウスに2秒間、0.60mAの脚部ショック(US)を、床の棒によって与えるものである。CS/US対の後、マウスを30秒間条件づけ部屋に残すものであり、そして次いでそのホームケージに戻されるものである。竦み行動は、Freezeviewソフトウェア(MED Ass)を使用して採点されるものである。状況的恐怖学習を評価するために、竦みをマウスが24時間訓練されるものである部屋内で5分間訓練後測定するものである。手懸り付き恐怖学習を評価するために、状況的試験の24時間後、マウスを新規な状況中に2分間置き(前CS試験)、その後、マウスをCSに3分間暴露するものであり(CS試験)、そして竦みを測定するものである。
【0247】
[00290]ショックの知覚性認知を、記載されているように
[A17]、閾値評価によって決定するものである。
[00291]CBPレベルは、特異的CBP抗体を使用するウェスタンブロットで測定するものである。核画分は、7,700×gで1分間遠心された均質な組織から得られたペレット中に含有されるものである。
【0248】
[00292]CBPのHAT活性は、CBP抗体を使用する海馬抽出物の溶解からの免疫沈降によって測定されるものである。単離後、HAT活性は、アセチル残基を検出する間接的酵素結合免疫吸着測定法キットを、製造業者(Upstate)の説明書に従って使用して評価されるものである。
【0249】
[00293]HDAC活性アッセイのために、本出願人は、Biovision(CA)からの蛍光定量キットを、製造業者の説明書によって使用するものである。
[00294]ヒストンアセチル化アッセイのために、ウェスタンブロットを、液体窒素で瞬間冷凍された海馬から行うものである。核タンパク質は、酸で抽出され、そして変性7%−12%アクリルアミドゲル上で、続いてニトロセルロース上のエレクトロブロッティングで分離されるものである。アセチル化されたヒストン(H3、H2A及びH2B)は、Upstateから購入した抗体及びAmershamのECFキットを、製造業者のプロトコルによって使用して検出するものである。
【0250】
[00295]統計的解析: 実験は盲検で行われるものである。結果は、主効果として薬物又は遺伝子型による事後補正を伴うANOVAにより解析されるものである。
[00296]参考文献
【0251】
【化41】
【0252】
【化42】
【0253】
実施例6−アミロイド上昇後のクロマチン再構築の障害
[00297]ADに対するCREB及びCBPのリンクに加えて、後成的変化も更にADの発症に寄与することができる。記憶の形成において重要なアセチル化である[B19]アセチル化ヒストン4の海馬レベルは、恐怖条件づけ訓練後のアミロイドを沈着する動物モデルにおいて顕著に減少される。理論に束縛されるものではないが、ヒストンアセチル化の変化は、ADにおいて重要な役割を演じる。
【0254】
[00298]更に、恐怖条件づけに対する訓練後、APP/PS1マウス中の海馬のアセチル化H4レベルは、野生型の同腹仔より劇的に低く、ヒストンアセチル化の変化が、ADにおける記憶減少に関係することを示した。この観察は、HDAC阻害が、樹状突起の発芽、シナプスの数の増加、及びニューロン減少を伴うCK−p25遺伝子導入マウスにおける復元された学習及びLTMへの接近を誘発するという発見と一致する[B19]。ヒストンアセチル化のレベルは調査されていないが、二つの更なる研究におけるHDAC阻害剤の使用は、勇気づけるものである。HDAC III阻害剤のニコチンアミドは、ADの三重遺伝子導入マウスモデルの認知を、細胞質Thr321−ホスホtauの減少に関係する非後成的機構によって回復することが見いだされた[B49]。然しながら、回答されるべき多くの質問:HDAC阻害剤による治療は、軽度のプラーク負荷を伴う遺伝子導入マウス及び更に深刻なアミロイド沈着を伴うそれの両方におけるヒストンアセチル化、シナプス可塑性、及び記憶の欠損を救済するか?HDAC阻害剤の有益な効果は、参照記憶のような恐怖記憶に加えて他の顕在記憶の他の形態に拡大することができるか?転写及び記憶において重要な役割を演じることが更に知られているヒストンH2B及び3のような他のヒストンは、ADにおける記憶過程中に異常にアセチル化されるか?実験が、Aβ上昇とは独立に、各種の影響を起こすことができる変異APP及びPS1導入遺伝子を過剰発現するマウスに対して行われた場合、ヒストンアセチル化は、Aβ上昇後に影響されるか?ヒストンアセチルトランスフェラーゼCBPは、APP/PS1マウスにおけるヒストンアセチル化の減少及びその後のAβ上昇において役割を演じるか?が残っている。
【0255】
[00299]本発明人等は、更に、この実施例において、ヒストンアセチル化のレベルにおけるクロマチンの変化が、記憶過程中のAβの上昇後に起こるか否かを考察するものである。理論に束縛されるものではないが、得られた結果は、記憶及びシナプス機能のAβ誘導の障害に対する新しい種類の機構が提供するものである。
【0256】
[00300]現時点で使用されているADのための治療は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用、又はNMDAアンタゴニストによるグルタミン酸神経毒性の遮断によるコリン作動性系の増強を含む。これらの薬剤は制約された効力を有する。主要な効果は、炎症及び酸化性損傷と戦う、そしてβ及びγセクレターゼを阻害する又はαセクレターゼを増加する薬剤の使用、或いはAβオリゴマー化を阻害する薬剤の使用、或いは脳からのAβの除去を増強するようなAβによる免疫化のような治療の使用のいずれかによって脳のAβ負荷を減少するタングル形成を阻害することが進行中である。然しながら、正常な生理学的機能におけるAPP、Aβ40及びセクレターゼの役割は、AD治療に対する有効なそして安全な方法を提供することにおける問題が存在することができる。転写装置及びヒストンアセチル化に干渉する薬物は、記憶が属すると考えられるそのシナプスの接触を伴う細胞を、Aβの影響に対して更に頑強で、そして抵抗性にするためのAD治療に対する新しい接近法を表すことができる。
【0257】
[00301]HDAC阻害は、APP/PS1マウスにおける海馬の長期増強の欠損を回復する。 これらの研究を鼓舞する観察は、本出願員らが、HDAC阻害剤のTSAの簡単な適用が、生後3−4ヶ月のAPP/PS1マウスからの切片によって示されるLTPの欠損を救済することが可能であるか否かを試験した一連の実験の結果であった(これらのマウスの特徴を示す実験の詳細な記載に対しては[B50])。この年齢において、遺伝子導入マウスは、シナプス可塑性及び記憶障害を丁度示し始めた[B14,B50])。以前に示されたように[B50]、基礎シナプス伝達(BST)は、APP/PS1及びWTマウス間で同様であった。次いで海馬の切片を、TSA(1.65μM)で30分間潅流してから、シャファー側枝経路の強縮刺激によってLPTを誘導した。TSAで治療されたAPP/PS1切片の増強は、ベヒクルで治療されたAPP/PS1切片におけるものよりはるかに大きかった(二変数ANOVA:F
1,11=13.166、p=0.004;
図17)。他方、TSAは、WTマウスからの海馬切片中のLPTの振幅を、ベヒクル単独で治療されたWT切片と比較して変化しなかった(F
1,12=0.512、p=0.488、
図17)。更に、TSA潅流は、強縮を受けなかったAPP/PS1及びWT切片中の基線伝達に影響しなかった(それぞれの群当たりn=3)。従って、HDAC阻害は、Aβ沈着のAPP/PS1マウスモデルにおけるLTPの欠損を救済することが可能である。
【0258】
[00302]HDAC阻害は、APP/PS1マウスの連合記憶の欠損を救済する。 ADに影響されたヒトと同様に[B51]、APP/PS1マウスは、連合記憶の欠損を示す[B46]。齧歯動物において、連合学習は、状況的恐怖条件づけによって評価することができる。中性刺激の有害なものとの結合に基づくこの行動的課題は、海馬機能に依存する[B52]。従って、シナプス機能障害におけるTSAの急性効果に対する実験後、本出願人等は、TSAが、生後3−4ヶ月のAPP/PS1マウスの状況的恐怖条件づけの障害に対して有益であるか否かを決定した[B14]。マウスを、四つの群:TSAを伴うAPP/PS1、ベヒクルを伴うAPP/PS1、TSAを伴うWT及びベヒクルを伴うWTに分けた。TSA及びベヒクル対照溶液を、i.p.で2μg/g体重の濃度で投与した。本出願人等は、各種のマウスの群間で同様なショックの閾値を見出した。次いでマウスを、中性の刺激を有害なものと結合するために訓練した。これらを、新規な状況(恐怖条件づけ箱)に置き、穏やかな脚部ショックと対になったホワイトノイズの合図に暴露し、そして訓練の2時間前にTSAを注射した。恐怖学習を、状況の提示に反応する竦み行動−呼吸によって必要とされるものを除く全ての動きの非存在−を測定することによって24時間後評価した。本出願人等は、恐怖条件づけの訓練中の四つの群のマウス間の竦み行動に差を見出さなかった(F
3,47=0.02997、p=0.9929、n=12−13/群;
図18)。24時間後、本出願人等は、ベヒクルで治療されたAPP/PS1マウスにおいて、ベヒクルで治療されたWT同腹仔と比較して、状況的学習の解析において、減少した竦み行動を見出した(F
3,47=0.0526、p=0.0280、n=12−13/群;
図18)。
【0259】
[00303]ベヒクルで治療されたAPP/PS1マウスの竦みは、ベヒクルで治療されたWTマウスのそれの約46%であった[ベヒクル治療APP/PS1マウス:14.88±2.97%対ベヒクル治療WT同腹仔:31.68±5.32%;それぞれn=13(メス11匹プラスオス2匹)及びn=13(メス12匹プラスオス2匹);t=2.76、p=0.0109;
図18]。然しながら、竦み時間は、APP/PS1マウスにおいて、TSAの投与後、ベヒクルで治療したマウスの約236.27%に増加した[TSA治療APP/PS1マウス:35.15±6.99%、n=12(メス10匹プラスオス2匹);t=2.744、p=0.0116;
図18]。統計的解析は、APP/PS1における竦みは、TSAで治療した(t=0.1902、p=0.8508)及びベヒクルで治療したWTマウス(t=0.3982、p=0.6941)の両方に関して有意に異ならないことを明らかにした。TSAで治療したWTマウスは、ベヒクルで治療したWTマウスと比較して竦みの僅かな非有意な増加を示した[TSA治療WTマウス:36.95±6.43%;n=13(メス11匹プラスオス2匹);t=0.6316、p=0.5336、
図18]。本出願人等は、次に海馬非依存性課題である[B46]手懸り付き恐怖条件づけを試験し、そして四つの群間で竦み行動の差を見出さなかった(両方の前CS群において、F
3,25=0.8763、p=0.4666、及びCS群においてF
3,24=0.6398、p=0.5968)。この結果は、主として手懸り付き条件づけに関係し、そしてAPP/PS1マウスにおいて正常であることが知られた扁桃体の機能が、以前に証明されたように[B53]、TSAによるHDACの阻害によって影響されないことを示す。まとめると、これらのデータは、ヒストンアセチル化の阻害が、APP/PS1マウスにおける正常な連合記憶を再確立することが可能であり、一方更に正常なシナプス可塑性を回復することを示す。
【0260】
[00304]HDAC阻害は、Aβ上昇による連合記憶の欠損を救済する。 APP及びPS1遺伝子導入は、Aβによる直接的影響を含む異なった機構[B23、B24]によってニューロン機能に影響することができる。全長のAPP及びその開裂産物は、H4アセチル化に異なって影響することができる。Aβの影響をAPP及びPS1の過剰発現の他の影響と分離するために、本出願人等は、次にAβ自体が、遺伝子導入マウスにおける本出願人等の研究において観察された、H4アセチル化の欠損の原因であるか否かを決定した。ヒトAβの天然のオリゴマーが、in vivoの記憶を顕著に阻害することが既に記載されているため[B54、B55]、本出願人等は、オリゴマーのAβ42含有する製剤(1μlの体積中の200nM、両側的に、1分かけてゆっくり)を、背部海馬に(
図24A−B)、恐怖条件づけのための訓練の15分前にTSA又はベヒクルの注射(2mg/kg体重、訓練の2時間前、i.p.)と共に適用した。注入は、背部海馬へのカニューレの植込み後5−7日目に起こった。本出願人等は、恐怖条件づけの訓練期中のマウスの四つの群間で竦み行動の差を見出さなかった(F
3,41=0.04188、p=0.9884、n=8−14/群;
図24C)。24時間後、竦み行動は、状況的学習の解析において、ベヒクル注入マウスと比較して、Aβ注入マウスにおいて減少した(F
3,41=0.04188、p=0.0209、n=8−14/群;
図24C)。Aβ注入マウスにおける竦みは、ベヒクル注入マウスのそれの約25%であった[Aβ注入マウス:8.580±2.119%対ベヒクル注入マウス:31.46±5.373% それぞれn=12及びオス11;t=3.147、p=0.0049;
図24C]。然しながら、竦み時間は、TSAの注射後のAβ注入マウスにおいて、Aβ注入マウス(TSA+Aβで治療されたマウス:26.17±4.747% n=14オス;t=3.066、p=0.0053;
図24)の約300%に増加した。統計的解析は、TSAを注射されたAβ注入マウスにおける竦みが、TSAを注射された(t=0.1902、p=0.8508)及びベヒクルを注入され、ベヒクルを注射された(t=0.3982、p=0.6941)マウスの両方に関して有意に異ならないことを明らかにした。TSAで治療されたマウスは、ベヒクルで治療されたマウスと同様な竦みの量を示した[TSA治療マウス:27.01±7.246%;n=8オス;t=0.4335、p=0.6701、
図24C]。本出願人等は、次に手懸り付き恐怖条件づけを試験し、そして四つの群間で竦み行動の差を見出さなかった(両方の、前−CS群において、F
3,52=1.547、p=0.2135、及びCS群において、F
3,52=0.4838、p=0.6950)。まとめると、これらのデータは、ヒストン脱アセチル化の阻害は、Aβ上昇後の正常な連合記憶を再確立することが可能であることを示す。
【0261】
[00305]APP/PS1マウスは、学習課題に反応するヒストン4アセチル化の減少した内在性レベルを示す。 HDAC阻害剤が、ヒストン以外の他の分子をアセチル化すること[B49]が知られていることを考慮すると、本出願人等の次の目的は、APP/PS1マウスの恐怖記憶に欠損に対するTSAの影響が、少なくとも部分的に、ヒストンアセチル化のレベルにおけるクロマチンの変化に連結しているか否かを決定することであった。H4のアセチル化は、転写及び記憶において重要な役割を演じることが示された[B19]。従って、本出願人等は、APP/PS1マウスにおいて観察された記憶の欠損が、H4の変化されたアセチル化に伴われるか否かを求めた。本出願人等は、生後3−4ヶ月の野生型(WT)及びAPP/PS1マウスからの、恐怖条件づけ後の海馬中のH4のアセチル化を測定した。ベヒクル対照溶液をi.p.で訓練の2時間前に投与し、そしてその1時間後にマウスを安楽死させ、そして海馬を抽出した。ウェスタンブロット分析は、WTマウスと比較して、APP/PS1マウスは、アセチル化H4レベルの50%より多い全体的減少を有していたことを示した(t=2.702、p=0.0355;
図25A)。興味あることに、交互的実験において、クラスI/IIのHDAC阻害剤のTSAの注射(2mg/kg体重;i.p、恐怖条件づけのための訓練の2時間前)は、APP/PS1マウスのH4アセチル化を向上した(ベヒクルで治療したAPP/PS1同腹仔と比較してt=3.283、p=0.0168;
図25A)。更に、TSAで治療されたAPP/PS1マウスからの海馬中のH4アセチル化レベルは、TSAで治療されたWT同腹仔のレベルと同様であった(t=0.2116、p=0.8385;
図5A)。最後に、以前に証明されたように[B26]、TSAは、WTマウスのH4アセチル化レベルを、ベヒクルで治療されたWT同腹仔からの海馬と比較して、増加した;
図25A)(t=7.659、p=0.0001)。
【0262】
[00306]本出願人等は、次に、APP/PS1マウス中のH4の基礎アセチル化レベルに、野生型マウスと比較して、何らかの変化があるか否かを決定することを望んだ。従って、本出願人等は、電気ショックを受けない状況に暴露された生後3−4ヶ月のWT及びAPP/PS1マウスからの海馬中のH4のアセチル化を測定した。本出願人等は、二つの実験群間に基礎アセチル化H4の差を見出さなかった(t=0.076、p=0.9427;
図25B)。これは、i)変異されたAPP及びPS1導入遺伝子の過剰発現が、状況的恐怖学習後のH4アセチル化のレベルの後成的変化に影響すること;及びii)TSAが、ADのマウスモデルにおけるヒストン4の減少したレベルを上昇することが可能であることを示した。
【0263】
[00307]PS1刺激後の転写に対するCBP及びそのHAT領域の役割。 記憶形成の根底にある機構の研究は、転写因子CREB及び活性化補助因子CBPによって仲介されるCRE依存性遺伝子発現に対する中心的役割を規定している。CBPは、CREB及び基底転写装置間に架橋を作り、そしてヒストンをアセチル化する。次に、ヒストンアセチル化は、染色体の変化を誘導し、染色体の阻止の減少をもたらす(
図23参照)。これは、記憶の形成の根底にあるタンパク質の合成のために必要な根底にある遺伝子の好結果な転写を可能にする。本出願人等は、最近CBPのHAT活性が、WT−PS1の刺激効果において、全長のCBPが変異(WY−アミノ酸1503−1504がアラニン及びセリンによって置換されている)を含有する構築物を使用することによって何らかの役割を有するか否かを試験した。そのHAT活性を完全に無効にするこの変異は[B56]、Gal4のDNA結合領域に連結している(
図19)。全長のWT−CBPの向上したプロモーター活性と対照的に、WY−CBPに伴う活性は観察されなかった(
図20A)。WT及びWYのGal−CBP間の基礎活性に差はなかった(
図20B)。従って、これらの発見は、HAT活性を欠損するCBP変異体が、増加された転写活性化能力に関してWT−PS1に反応することが不可能であることを示す。従って、CBP及びそのHAT領域は、PS1刺激後のin vitroの転写を向上するために必須であるように見受けられる。
【0264】
[00308]APP/PS1マウスは、減少されたCBPレベルを示す。 本出願人等は、次に、APP/PS1マウスの内因性CBPレベルを測定することを決定した。生後3−4ヶ月のAPP/PS1マウスの海馬からのウェスタンブロット分析は、脳のCBPレベルが、感応性PSを欠損するマウスにおいて減少される観察[B15]と一致して、WT対照と比較したCBPレベルの有意な減少を明らかにした(
図21)。将来の実験において、本出願人等は、変異されたAPP及びPS1導入遺伝子の過剰発現がCBPレベルに影響することを確実に確立する実験の数を増加するためにこれらの結果を複製するものである。
【0265】
[00309]
目的
[00310]1.ヒストン脱アセチル化の阻害が、Aβ上昇後のシナプス及び記憶障害を救済するか否かを決定すること。
【0266】
[00311]トリコスタチンA(TSA)によるヒストン脱アセチル化の阻害が、APP(K670MN671L)中のスウェーデン変異を、PS1(M146L、ライン6.2)中の変異[B22]と一緒に発現する遺伝子導入マウスであるAPP/PS1マウスのLTP及び状況的恐怖記憶の欠損を救済する[B20,B21]。本出願人等は、構造的に異なったヒストン−デアセチラーゼの阻害剤の酪酸ナトリウム(NaB)が、シナプス及び記憶欠損を救済するか否かを今や試験するものである。これらの観察が、アミロイドプラークが丁度形成し始める生後4ヶ月のAPP/PS1マウスにおいて得られたことを考慮し、本出願人等は、これらを、更に深刻なAβ沈着物を有する生後7ヶ月の遺伝子導入マウスに拡大するものである。更に、APP及びPS1導入遺伝子がAβによる直接的影響を含む異なった機構によって[B23、B24]ニューロン機能に影響することができることを考慮し、本出願人等は、ヒストン脱アセチル化の阻害が、Aβ自体によって誘導されたLTP及び状況的恐怖記憶の欠損を救済するか否かを調査するものである。本出願人等は、更に、これらの発見を顕在学習のもう一つの形態である参照記憶に拡大するものである。
【0267】
[00312]
研究の設計及び方法
[00313]原理。 記憶分野の広く受け入れられた概念は、記憶が、シナプス強度の長持ちする変化として脳中に保存されることである。この概念と一致して、ADは、漸進的により大きいニューロンの機能障害に導き、記憶の減少に導くシナプスの疾患として始まると考えられている[B57]。理論に束縛されるものではないが、HDAC阻害は、アミロイド上昇後のシナプス可塑性及び記憶の障害に対抗する。本出願人等は、TSAに加えて、付加的な、そして構造的に異なった阻害剤であるNaBでこれを試験するものである。次に、APP及びPS1導入遺伝子が、異なった機構によりニューロン機能に影響する[B23、B24]ことができることを考慮し、本出願人等は、Aβ自体が、遺伝子導入マウスに対する本出願人等の研究において観察されたヒストンアセチル化の欠損の原因であるか否かを決定するものである。更に、本出願人等は、本出願人等の発見を、彼らが重度のプラーク負荷を有する場合[B50]、年とったAPP/PS1マウスに拡大するものである。最後に、本出願人等は、本出願人等の発見を、恐怖記憶に加えて、顕在学習のもう一つの形態である参照記憶に拡大するものである。理論に束縛されるものではないが、ヒストン脱アセチル化の阻害は、オリゴマーのAβの上昇によって起こされるシナプス及び記憶の機能障害に対して有益である。
【0268】
[00314]実験の設計。 本出願人等は、
図17及び
図18に記載された電気生理学的及び行動的発見を、構造的に異なった阻害剤であるNaBを使用して確認するものである。TSA実験に関して、生後3−4ヶ月のAPP/PS1マウスからの切片を、NaB(300μM)で30分間治療してから、LTPを誘導するためにシータバースト刺激を適用するものである。対照は、ベヒクルで治療されたAPP/PS1マウス、及びNaB又はベヒクルで治療されたWT同腹仔マウスからの切片で行われるものである。TSAと同様に、本出願人等は、更にNaB(1.2g/Kg)が、APP/PS1マウスにおける正常な状況的恐怖記憶を再確立するか否かを点検するものである。これらの行動実験において、マウスを、四つの群:NaBを伴うAPP/PS1、ベヒクルを伴うAPP/PS1、NaBを伴うWT及びベヒクルを伴うWTに分けた。対照は、更にHDAC阻害剤が、新規な状況単独又はこれら間の結合の代わりの電気ショックの影響によって作用することを除外するための潜在阻害訓練パラダイムを使用して行われるものである[B26]。潜在阻害パラダイムにおいて、マウスが連合性の状況的恐怖記憶の形成を遮断する空間的記憶を形成するものであるように、電気ショックを受ける前に新規な状況にマウスを予備暴露するものである[B26]。
【0269】
[00315]本出願人等は、APP及びPS1過剰発現の影響を、Aβ自体の影響から分離するものである。本出願人等は、TSAが、オリゴマーのAβ42を含有する製剤によって誘導された状況的恐怖記憶の欠損を救済することを既に証明した(
図24参照)。従って、本出願人等は、TSAが、200nMのオリゴマーのAβ42によって誘導されるLTPの欠損を救済するか否かを決定するものである。ヒトAβの天然のオリゴマーが、モノマー及び原線維の非存在において、LTPをin vivoで顕著に阻害することは既に記載されているため、本出願人等は、200nMのオリゴマーのAβ42を、TSA(1.65μM)と同時に30分間WT切片に適用してから、LTPを誘導するものである。交互的な対照実験において、本出願人等は、単独のオリゴマーのAβ42、又は単独のTSA、或いはベヒクルを適用するものである。
【0270】
[00316]本出願人等は、本明細書中に記載された発見を、NaB(300μM)プラス200nMのAβ42を30分間、LTPを誘導するためのシータ−バースト刺激を適用する前に使用して複製するものである。対照は、ベヒクルで治療された切片で行われるものである。TSAに関して、本出願人等は、更にNaB(1.2g/Kg)が、Aβ42注入マウスにおける状況的恐怖記憶の欠損を救済するか否かを点検するものである。これらの行動実験において、対照は、更にHDAC阻害剤が、新規な状況単独又はこれら間の結合の代わりの電気ショックの影響によって作用することを除外するための潜在阻害訓練パラダイムを使用して行われるものである[B26]。
【0271】
[00317]本出願人等は、本明細書中に記載された実験の全てを、年取った(7ヶ月)マウスで、更に重度のプラーク負荷が存在する場合繰返すものであり、そしてシナプスの機能障害は、更にBSTを含む[B50]。
【0272】
[00318]本出願人等は、状況的恐怖記憶に対する本出願人等の発見を、顕在記憶のもう一つの形態の参照記憶に拡大するものである。本出願人等は、最近、非常に短時間を要する利益を有する方法を実行した[B58]。この方法は、モーリス水迷路及び放射状アーム陸迷路の複合型である。マウスに対する動機づけは水中の浸漬である。マウスは、中心部から放射状に広がる6個のアレイ(アーム)中を、アームの一つの末端の隠された(沈んだ)プラットフォームを見つけるまで泳ぐ必要があった。目的のアームは、学習基準が2日中に達成されるものであるように、一連の試行に異なった出発アームを伴う全ての試行に対して一定に保たれた。不正なアームへの進入の回数は、ものである。課題の終りに、マウスは、視覚、運動及び動機付けの欠損が実験の結果に影響する可能性を排除するために、見えるプラットフォームの試験を行うものである。これらの実験において、生後3−4及び7ヶ月のAPP/PS1並びにWT同腹仔に、TSA又はNaBを、課題を行う2時間前に投与するものである。ベヒクルを対照実験において使用するものである。参照記憶を評価する同様な実験を、更にAβ42注入マウスにおいて行った(これらの実験のために、マウスを次の群:Aβ42注入マウス+TSA又はNaB或いはベヒクル、ベヒクル注入マウス+TSA又はNaB或いはベヒクルに分けるものである)。
【0273】
[00319]理論に束縛されるものではないが、本出願人等は、HDAC阻害が、LTP及び記憶の欠損を救済することを示すものである。さもなければ、別の戦略として、本出願人等は、より高い濃度のHDAC阻害剤を、又は更に血液脳関門を通過することが示されている[B59]MS−275のような構造的に異なったHDAC阻害剤を試みるものである。次いで、齧歯類は、本明細書中に記載したような電気生理学的及び行動的試験を受けるものである。理論に束縛されるものではないが、オリゴマーのAβ42は、LTP及び恐怖記憶を阻害し、そしてTSAが、Aβ42治療後のLTP及び状況的恐怖記憶を回復することを証明するするものである。単独のTSAは、何ら効果を有しない筈である。若いマウス又はAβ注入マウスからの発見は、生後7ヶ月の遺伝子導入において確認されるべきである。さもなければ、別の戦略として、本出願人等は、試験の1又は4週間前に始まるHDAC阻害剤によるより長い治療を試みるものである。最後に、理論に束縛されるものではないが、参照記憶課題による発見は、恐怖条件づけにより得られたものと一致する筈である。そうであれば、これらの結果は、ヒストン脱セチル化の阻害が、一般的にAD様の動物モデルにおいて認知減少に対して有益であることを証明する筈である。さもなければ、これは、これが異なった種類の記憶及びHDAC阻害剤の使用間の解離を証明するものであるために、同等に興味あることであるものである。
【0274】
[00320]急性の海馬切片におけるLTPの根底にある機構を調査する研究は、転写が、2時間前に起こる増強のために必要ないことを示す[B26]。然しながら、本出願人等は、LTPの導入の直後にTSAの効果を観察した(
図17)。この発見は、Levenson等[B26]の結果と一致する。彼らが適用したLTP誘導パラダイムは、誘導又は発現のいずれかに対する転写に依存するLTPの形態を誘導する。これは、転写阻害剤である5,6−ジクロロベンゾイミダゾールリボシド(DRB)をWTマウスにおいて使用することによって証明された。DRBは、TSA誘導のLTP増加の初期及び後期の両方を遮断することが可能であり、TSAによるLTPの初期及び後期の向上の両方が転写調節に依存することを示した[B26]。
【0275】
[00321]TSA及び他のHDAC阻害剤は、シナプスを、Aβの影響に対して更に頑強に、そして抵抗性にするように見受けられるADの治療の新しい方法である。HDAC阻害剤の使用に関して、HDACの阻害が、遺伝子発現を包括的に変更し、そして従って非特異的様式で記憶過程に影響することができることが批判されている。然しながら、Vecsey等[B53]は、TSAが遺伝子発現を包括的に変更せず、しかし代わりに、記憶固定中の特異的遺伝子の発現が増加することを示した。彼らは、TSAを含むHDAC阻害剤が、記憶及びシナプス可塑性を、主としてCREB転写活性化に依存性である重要な遺伝子の活性化によって向上することを示すことが可能であった[B53]。従って、TSAが、Aβ蓄積の存在中の記憶の低下を停止しすること、並びに生後3ヶ月のAPP/PS1マウスの事例のように、すでに劣化された脳の機能を改善することが可能であることができる可能性がある。興味あることに、HDAC阻害剤を使用する脳の‘再配線’及び記憶の回復は、最近、CK−p25遺伝子導入マウスにおいて報告された[B19]。従って、HDAC阻害剤が、ADの脳にニューロンのネットワークを再確立することが可能であることができることは可能である。これは、AD患者中のHDACを標的とする小分子の使用が、長期の記憶に接近することを容易にすることができることを示す。最小化された副作用を持つHDAC阻害剤は、医薬工業界によって現時点で開発されつつある。これらの新しい阻害剤が、容易に脳に進入することができ、そしてこれらがTSAと同様に有効であるか否かを見ることが残されている。
【0276】
[00322]HDAC阻害剤は、後成的及び非後成的変化を含む各種の機構によってニューロンの機能に影響することができる[B19、B60]。従って、HDACのクラスI/IIのブロックは、非ヒストン基質のアセチル化を増加することができ、これは次に、記憶に伴う細胞の過程の増幅に寄与することができる。Green等[B49]は、クラスIIIのNAD+依存性HDACのビタミンB3を使用する阻害が、三重遺伝子導入マウスの認知欠損を、細胞質中のThr231−ホスホtauの減少に関係する機構によって回復することを示した。
【0277】
[00323]2.ヒストン2B、3及び4が、Aβ上昇後異常にアセチル化されるか否かを決定すること。
[00324]生後3−4ヶ月のAPP/PS1マウスからの海馬は、恐怖条件づけ訓練後、記憶の形成において重要であることが示されているアセチル化である、アセチル化されたヒストン4(H4)レベルの概略50%の減少を示した[B19]。将来の実験において、本出願人等は、これらが更に転写及び記憶において重要な役割を演じる[B19、B25、B26]ために、本出願人等の調査をヒストン2B及び3に拡大するものである。更に、本出願人等は、更に重度のプラーク負荷を持つ年取った遺伝子導入マウスを試験するものである(生後7ヶ月)。最後に、Aβの影響をAPP及びPS1の過剰発現の他の影響から分離するために、本出願人等は、海馬へのAβ注入が、ヒストン2B、3及び4のアセチル化に影響するか否かを検討するものである。
【0278】
[00325]
研究の設計及び方法
[00326]原理。 変異されたAPP及びPS1導入遺伝子の過剰発現は、状況的恐怖学習中に起こったH4アセチル化の変化に影響する(
図25参照)。更に、TSAによるHDAC阻害は、ADマウスモデルにおけるH4の減少したレベルを、上昇することが可能である。理論に束縛されるものではないが、ヒストンアセチル化のレベルにおける後成的機構は、ADにおける学習及び記憶を障害することができる。学習及び記憶中のアセチル化の変化を受ける更なるヒストンは、H2B及びH3である[B19、B25]。従って、将来の実験において、本出願人等は、これらのヒストンに対する本出願人等の研究を拡大するものである。更に、本出願人等は、構造的に異なったヒストン−デアセチラーゼの阻害剤のNaBを試験するものである。次に、APP及びPS1導入遺伝子がニューロンの機能に異なった機構によって影響することができる[B23、B24]ことを考慮し、本出願人等は、Aβ自体が、本出願人等の遺伝子導入マウスに対する研究において観察されたヒストンアセチル化の欠損の原因であるか否かを決定するものである。最後に、本出願人等は、本出願人等の発見を、年とったAPP/PS1マウスに、これらが重度のプラーク負荷を有する場合、拡大するものである[B50]。
【0279】
[00327]実験の設計。 本出願人等は、生後4ヶ月のAPP/PS1及びWT同腹仔の海馬中のH2B及びH3のアセチル化を、基礎条件及び恐怖条件づけのための訓練後の両方で、TSA(2mg/kg体重;i.p、恐怖条件づけのための訓練の2時間前)又はベヒクルを伴ってH4に関して測定するものである。対照は、ヒストン修飾が、新規な状況単独又はこれら間の結合の代わりの電気ショックのためであることを除外するために、潜在阻害訓練パラダイムを使用して行うものである[B26]。犠牲の直後に、脳組織を解剖し、そしてそれぞれのマウスからの二つの海馬を集め、そして後刻の均一化及び分析のために瞬間冷凍するものである。更なる対照は、小脳を使用するものである。
【0280】
[00328]本出願人等は、NaB(1.2g/Kg)が、更に、本明細書中の実施例6に記載されるTSA実験と同じ実験パラダイム及び対照におけるH2B、3及び4のアセチル化を回復することが可能であるか否かを試験するものである。
【0281】
[00329]本出願人等は、WTマウスの背部海馬へ注入された200nMのオリゴマーのAβ42の存在中のH4、2A及び3のアセチル化を、ベヒクル注入マウスと比較して測定するために、本明細書中の実施例6に記載される実験の全てを繰返すものである。対照は、潜在阻害訓練パラダイムを使用して、そして更に小脳を使用して行うものである。
【0282】
[00330]実施例6における発見は、構造的に異なったNaBで確認されるものである。TSA実験に関して、本出願人等は、NaB(1.2g/Kg)が、Aβ42注入マウスの正常なヒストンアセチル化レベルを再確立するか否かを検査するものである。更に、これらの実験のために、対照は、ベヒクル注入マウスで、そして潜在阻害訓練パラダイム、並びに小脳を使用して行うものである。
【0283】
[00331]本出願人等は、本出願人等が、深刻なアミロイド負荷が起こった場合のヒストンアセチル化のレベルを回復することができるか否かを、更に調査するものである。ADの病態の進行した段階においてHDAC阻害剤を使用する治療的可能性に直接関係するこの問題に対処するために、本出願人等は、本明細書中に記載される実験を、年とったAPP/PS1マウス(7ヶ月)に対して繰返すものである。
【0284】
[00332]理論に束縛されるものではないが、オリゴマーのAβ42は、H4アセチル化レベルに影響するものであり、そしてオリゴマーのAβ42は、ヒストン2B及び3のアセチル化レベルに対して遺伝子導入マウスと同じ効果を生じるものである。さもなければ、本出願人等は、Alzet浸透圧ミニポンプによる、200nMのオリゴマーのAβ42の更に延長した適用(1日、1週間、1ヶ月)を試みるものである。Aβ42を含有する合成製剤の使用に関する問題は、天然の形態のAβを産生する遺伝子導入マウスに使用によって大きく緩和される。H2B及び3に対する研究は、ヒストンアセチル化のレベルにおいて起こる後成的変化の種類の更に完全な概念を提供するものである。最後に、年とったマウスにおける研究は、HDAC阻害剤が、古い疾病の段階において使用することができるか否かを理解することを援助するものである。まとめれば、本明細書中に記載される研究は、Aβ上昇後に起こる事象としての後成的変化を確立することを援助するものである。
【0285】
[00333]ヒストンアセチル化に加えて、リン酸化、SUMO化、ユビキチン化、及びメチル化のような他のヒストンの翻訳後修飾(PTM)は、転写を制御することが示された[B7]。例えば、H3 Lys4メチル化及びH3 Lys56アセチル化のような活性遺伝子転写に伴うヒストン修飾は、遺伝子発現に導くことが見いだされた。然し、H3 Lys27メチル化及びH2A Lys119ユビキチン化のような遺伝子転写の不活性化に伴うヒストン修飾は、遺伝子発現抑制を起こすことが見いだされた。マウスにおいてAβ42のオリゴマーの形態への慢性的ニューロンの暴露の結果としてPTMが修飾される。記載される(
図24参照)ように、200nMのオリゴマーのAβ42が、WTマウスの背部海馬に注入されるものである。Aβ42注入マウスの海馬を取出し、そしてベヒクル注入マウスのそれと比較されるものである。本出願人等は、質量分光法を、免疫沈降された海馬のH2B、3及び4を使用して実行し、そしてAβ注入マウス及びベヒクル注入マウス間の異なったヒストンPTMを探求するものである。非特異的効果を制御するために、本出願人等は、ADに直接関係しない十分に研究された神経毒のガンマアセチレン性GABAを、本出願人等が注入した三番目の群のマウスを有するものである。次いで本出願人等は、本出願人等のAPP/PS1マウスモデルにおいて幾つかの最も興味あるヒストンのPTMを試験するものである。これらのマウスは、このヒストンのPTMが起こった場合、生後1ヶ月(プラーク形成の前)、2ヶ月(プラークが形成し始める時)、3−4ヶ月(プラーク形成の初期)、及び7ヶ月(プラーク形成の後期)に犠牲にされるものである。理論に束縛されるものではないが、減少したヒストンアセチル化のような後成的変化は、ADに伴うシナプス機能及び記憶のAβ誘導の損傷において重要な役割を演じる可能性がある。
【0286】
[00334]3.ヒストンアセチル−トランスフェラーゼCBPのレベル及び/又は活性が、Aβ上昇後改変されるか否かを決定すること。
[00335]CBPのHAT活性は、PS1刺激後のin vitroの転写を向上するために必須である。更に、生後3−4ヶ月のAPP/PS1マウス中のCBPレベルは、WTマウスより低いことが見いだされた。将来の実験において、本出願人等は、この観察を、年とった遺伝子導入マウスに対して、そして海馬のAβ注入後に拡大するものである。更に、本出願人等は、CBPのHAT活性が、若い及び年とったの両方のAPP/PS1マウスににおいて、並びにAβ注入後に影響されるか否かを決定するものである。最後に、本出願人等は、最近合成されたHATアゴニストのMOMによるHAT活性の刺激が、Aβ上昇後のLTP、記憶、及びヒストンアセチル化の欠損を救済するか否かを決定するものである。
【0287】
[00336]
研究の設計及び方法。
[00337]理論。 内因性CBPレベルは、APP/PS1マウスにおいて減少される(
図21参照)。これらのデータは、脳のCBPレベルが機能性PSを欠損するマウスにおいて減少するという観察と一致する[B15]。更に、CBP及びそのHAT領域が、PS1刺激後のin vitroの転写を向上するために必須であるように見受けられることを考慮し(
図20参照)、本出願人等は、APP/PS1マウスの基礎条件及び状況的学習のための訓練の1時間後の両方におけるCBPのHAT活性を、WT同腹仔と比較して直接測定するものである。本出願人等が、CBPレベル及び/又はHAT活性の両方の減少を見出した場合、本出願人等は、更にHATアゴニスト[B61]の使用が、状況的恐怖記憶及びヒストンアセチル化の欠損を救済するか否かを検査するものである。次に、APP及びPS1導入遺伝子が、異なった機構によって[B23、B24]ニューロンの機能に影響することができることを考慮し、本出願人等は、Aβ自体が、遺伝子導入マウスにおいて観察されたCBPレベル及び/又は活性の欠損の原因であるか否かを決定するものである。最後に、本出願人等は、本出願人等の発見を年とったAPP/PS1マウスに、これらが重度のプラーク負荷を有した場合、拡大するものである[B50]。まとめれば、CBPレベル及び/又は活性が、Aβ上昇後に変化するか否かに加えて、CBPレベル及び/又は活性が、APP及びPS1導入遺伝子の過剰発現後に変化されるか否かを評価するものである。研究者は、HATアゴニストが、シナプス及び記憶機能、並びにヒストンアセチル化の欠損を救済するか否かを試験するものである。
【0288】
[00338]実験の設計。 本出願人等は、生後4ヶ月のAPP/PS1及びWT同腹仔の海馬中のCBPレベルを測定するものである。犠牲の直後に、脳組織を解剖し、そしてそれぞれのマウスからの二つの海馬を集め、そしてその後の均質化及び分析のために瞬間冷凍するものである。更なる対照は、小脳を使用するものである。
【0289】
[00339]本出願人等は、APP/PS1マウスの基礎条件及び状況的学習のための訓練の1時間後の両方におけるCBPのHAT活性を、そのWT同腹仔と比較して直接測定するものである。対照は、CBPのHAT活性の変化が、新規な状況単独又はこれら間の結合の代わりの電気ショックのためであることを除外するために、潜在阻害訓練パラダイムを使用して行うものである[B26]。更なる対照は、小脳を使用するものである。
【0290】
[00340]N−(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−2−エトキシ−ベンズアミド(CTB又は更に化合物6Jとも呼ばれる)[B61]のようなHATアゴニストを合成した。もう一つのベンズアミドHATアゴニストのMOMは、HAT活性の上方制御が、APP/PS1マウスのLTP、状況的恐怖記憶及びヒストンアセチル化の欠損を救済するか否かを検査するために合成された。本出願人等は、化合物を合成し(
図26A)、そしてこれがヒストンアセチル化を誘導することを示した(
図26B)。本出願人等は、MOMが、本明細書中に記載されたものと同じ実験パラダイムに従って、APP/PS1マウスからの海馬切片中のLTP欠損を救済するか否かを試験するものである。MOM(10μM)又はベヒクルを、θ−バーストによりLTPを誘導する30分前に適用するものである。MOM又はベヒクルで治療されたWT同腹仔の切片を、対照として使用するものである。次に、本出願人等は、アゴニストが、本明細書中に記載したものと同じ実験パラダイムに従ってAPP/PS1マウスの状況的恐怖記憶の欠損を救済するか否かを検査するものである。本出願人等は、更にMOMが、正常な参照記憶を再確立するか否かを検査するものである。
【0291】
[00341]MOMが、血液脳関門を通過しないことを考慮し、これを海馬中に直接供給するために、カニューレをAPP/PS1マウス及びWT同腹仔の背部海馬に植込むものである。本出願人等は、1μl中の100μgをゆっくりと1分かけて注入するものである。注入は、恐怖条件づけのための脚部ショックを適用する2時間前に起こるものである。本明細書中に記載される実験のように、本出願人等は、24時間における竦みの量を状況的恐怖記憶を、続いて48時間における手懸り付き恐怖記憶を評価するために測定するものである。次に、水迷路実験のために、本出願人等は、不正なアームへの進入の回数を測定するものである。最後に、実験の別の組において、海馬及び小脳を、恐怖条件づけのための訓練の1時間後に取出すものであり、そしてヒストンアセチル化のレベルを測定するものである。本出願人等が、MOMが、APP/PS1マウスのLTP及び記憶の欠損、並びに海馬のヒストンアセチル化を救済することを見出した場合、本出願人等は、HATアゴニストが、APP及びPS1導入遺伝子の過剰発現後のLTP、記憶及びヒストンアセチル化を回復することができると結論するものである。プロトコルは、更にHAT活性化剤のCTBの効果を試験するためにも行われるものである。
【0292】
[00342]CBPレベル、HAT活性、並びにMOM及びCTBの使用を含む本明細書中に記載される実験の全ては、WTマウスの背部海馬に注入された200nMのオリゴマーのAβ42の存在中で、ベヒクル注入マウスと比較して繰返されるものである。
【0293】
[00343]本出願人等は、更に本出願人等が、深刻なアミロイド負荷が起こった場合のCBPレベル及び/又はHAT活性の欠損を回復することができるか否かを調査するものである。この問題に対処するために、本出願人等は、本明細書中の実施例6に記載される実験を年とったAPP/PS1マウス(7ヶ月)において繰返すものである。
【0294】
[00344]Aβ42を含有する合成製剤の使用に関する問題は、Aβの天然の形態を産生する遺伝子導入マウスの使用によって大いに緩和される。CBPレベルを検査する実験が行われるものである。然しながら、CBPレベルが影響しない場合、本出願人等は、核画分からのCBPを測定することによる別の戦術を使用するものである。CBP分布の変化は、F11細胞において観察されている。CBPは、殆どWT−PS1を過剰発現している細胞の核中に見出され、一方、PS1の変異体型を過剰発現している細胞は、細胞質及び核の両方においてCBPを示す[B18]。従って、本出願人等は、CBP局在化の変化が、ADの発症において役割を演じることができるか否かを決定することが可能である筈である。
【0295】
[00345]CBPのHAT活性が変化するか否かを予測することは困難である。更に、CBPのHAT活性の変化が、恐怖条件づけのための訓練後の規定された時間に起こる可能性を除外することはできない。従って、本出願人等は、電気ショック後の異なった時点(1分、5分、20分及び2時間)における海馬のHAT活性を更に測定するものである(本明細書中に記載される実験と同様な対照と共に)。従って、Aβ上昇後の転写装置のレベルにおいて起こる変化の概念を得ることが可能な筈である。
【0296】
[00346]本出願人等は、HATアッセイ(基底、脚部ショックの1分、5分、20分及び1時間後)のような実験パラダイムを使用して、海馬に対する新しい蛍光定量アッセイによって海馬のHDAC活性を測定するものである。更なる別の可能性は、他のHATが、ヒストンアセチル化の減少に関係することである。これらは、GNATファミリー、MYSTファミリー、p300、及びACTR/SRC−1を含む。本出願人等は、これらのHATのレベル及び活性を測定するものである。
【0297】
[00347]最後に、MOM又はCTBが、APP/PS1マウス、並びにAβ注入マウスにおけるLTP、記憶及びヒストンアセチル化の欠損を救済しない可能性を排除することはできない。そうであれば、別の戦略として、本出願人等は、試験の1週間前、又はプラーク出現前の生後6週間に始まる、HATアゴニストによるより長期の治療を、二重遺伝子導入マウスにおける実験のために試みるものである。
【0298】
[00348]
実施例の一般的方法
[00349]
動物。 二重遺伝子導入マウスを、APP及びPS1マウスを交雑することによって得るものである(PCRによって遺伝子型を同定)[B20、B21、B50]。Aβ実験のために、本出願人等は、繁殖コロニーから得られるものであるC57B16マウスを使用するものである。全てのマウスを、温度及び湿度を調節された部屋内で、12時間の明/暗サイクル(午前6:00に点灯)に維持するものである。食糧及び水は、自由に使用可能であるものである。
【0299】
[00350]
電気生理学的研究。 本出願人等は、C57B16マウスから400μmの海馬切片を切断し、そしてこれらを、以前に報告されているように[B11]記録前に、インターフェースチャンバー中で29℃で90分間維持するものである。浴溶液は、124.0mMのNaCl、4.4mMのKCl、1.0mMのNa
2HPO
4、25.0mMのNaHCO
3、2.0mMのCaCl
2、2.0mMのMgSO
4、及び10.0mMのグルコースからなり、95%O
2及び5%CO
2で連続して泡立てられるものである。刺激電極として、本出願人等は、シャファー側枝繊維のレベルに置かれた双極のタングステン電極を使用するものである。記録電極として、本出願人等は、浴溶液で満たされ、そしてCA1の放線状層のレベルに置かれたガラスピペットを使用するものである。本出願人等は、最初fEPSPの傾斜に対する刺激電圧をプロットするために、基礎シナプス伝達(BST)を評価し、そして本出願人等のLTP実験の刺激の強度を決定するものである(これは最大誘発反応の約35%の反応を誘発する筈である)。LTPに対する基線は、15分間、毎分記録されるものである。LTPは、θ−バースト刺激を使用して誘発されるものである(5Hzで繰返されるバーストを伴う100Hzの4回のパルス、及びそれぞれの強縮が15秒離れた3回の10回バーストの繋がりを含む)。
【0300】
[00351]
恐怖条件づけ。 状況的恐怖条件づけは、以前に記載されているように[B14、B21]評価されるものである。マウスは、音(CS)(30秒間、2800Hzで85dBの音響)の開始の2分前に、条件づけ部屋に入れられるものである。CSの最後の2秒において、マウスは、2秒間、0.45mAの脚部ショック(US)を、床の棒を通して与えられるものである。次いで、マウスは、更に30秒間条件づけ部屋に放置されるものである。呼吸のために必要あるためを除く動きの非存在として定義される竦み行動は、Freezeviewソフトウェアを使用して採点されるものである。海馬機能が不可欠である記憶の種類である状況的恐怖学習は、訓練の24時間後、マウスが訓練されるものである部屋中の5分間の竦みを測定することによって評価されるものである。扁桃体機能に依存する記憶の種類である手懸り付き恐怖学習は、状況的試験の24時間後に、マウスを新規な状況に2分間置き(前−CS試験)、その後、彼らをCSに3分間暴露するものであり(CS試験)、そして竦みが測定されるものであることによって評価されるものである。
【0301】
[00352]ショックの知覚認知は、
閾値評価によって決定されるものである。簡単には、電流(1秒間0.1mA)が、30秒間隔で0.1mAずつ0.7mAまで増加されるものである。尻込み(ショックに対する最初の可視反応)、跳躍(最初の極端な運動反応)、及び叫び(最初の音声化苦痛)に対する閾値を、脚部ショックに対して、それぞれのマウスがその種類の行動的反応を顕在化するショック強度を平均することによって、それぞれのマウスに対して定量化するものである。知覚閾値評価における差は、実験方法がマウスの知覚閾値に影響しない場合、恐怖条件づけが試験された実験におけるマウスの異なった群間で観察されない筈である。
【0302】
[00353]更に、マウスの異なった群は、
オープンフィールド試験で検査されるものである。オープンフィールドは、72×72×33cmの内部寸法を持つ白色アクリルで製造された競技場であるものである(オープンフィールドの中心の36×36cmの寸法の部分は‘中心ゾーン’と定義されるものである)。マウスは、標準オープンフィールドの中心に置かれ、そしてその行動は、1時間モニターされ、そして中心区画対周辺中の時間の部分、及び中心区画への進入の回数を採点されるものである。マウスは、24時間後の第2の時間ブロックのために戻されるものである。中心区域で過ごした時間の同様なパーセントで示されるような探索的行動、及び中心区域への進入の回数の差は、処置がマウスの探索能力に影響しない場合、観察されない筈である。
【0303】
[00354]
参照記憶。 プロトコルの最初の日は、訓練日であるものである。マウスは、プラットフォームの位置を目的のアームの見える及び隠されたプラットフォームの両方間で変更することによって同定することを訓練されるものである。一日目の最後の3回の試行及び二日目の全ての15回の試行は、目的のアームの位置を同定するために空間的手懸りを使用するようにマウスを強制するために、隠された逃避プラットフォームを使用するものである。消耗する実行によって課される学習の制約を回避し、そして連続した試行の結果であることができる疲労を回避するために、4匹のコホートのマウスを試験し、そして毎日の3時間の試験時間をかける15回の訓練の試行を通して異なったコホートに変更することによる間隔を置いた実行の訓練を確立するものである。一日目に、目に見えるプラットフォームを目的の位置に置くものである。コホート1のマウス1を、一番目の出発アーム(採点表に規定された)の壁の周囲に近いプール中に静かに入れ、そしてプールの中心に向けるものである。不正なアームへの進入(プラットフォームのないアームへの進入)の回数を数えるものである。マウスが不正なアームに進入した場合、これは出発アームに静かに引き戻される。それぞれの試行は、1分まで継続するものである。15秒後のアームの選択の失敗は、誤りとして数えられるものであり、そしてマウスは出発アームに戻されるものである。1分後、プラットフォームを見つけられなかった場合、マウスを、手をその後ろにおくことによって、これをプラットフォームに向けて水中を静かに案内するものである。マウスは、プラットフォーム上で15秒間休憩するものである。試行を完了した後、マウスをプールから出し、穏やかにタオルで拭き、そして加熱ランプ下のそのケージに戻すものである。目的のプラットフォームの位置は、それぞれのマウスに対して異なっているものである。第一のコホートの全てのマウスが、見えるプラットフォームを見つける試行を行った後、プラットフォームを見えるものから隠されたものに取り換えるものである。コホート1からのそれぞれのマウスが、見える及び隠されたプラットフォーム間の6回の交互の試行を完了した後、マウスを加熱源下で休憩するままにするものであり、そして第2のコホートのマウスを同じ方法で試験するものである。6回の交互の試行を完了した後、コホート2のマウスをそのケージに戻して、休憩させるものである。次に、第1のコホートのマウスは、再び交互の見える−隠されたプラットフォームの位置を使用して試行7−12を完了するものである。第1のコホートのマウスの休憩時間中に、第2のコホートのマウスが試行7−12を完了するものである。この時点で、全てのマウスが3回の隠されたプラットフォームの試行を行わなければならないものである。二日目、隠されたプラットフォームのみを使用する全ての15回の試行に対して、一日目と同じ方法を繰返すものである。データ解析のために、誤りの回数を統計的ソフトウェア(SAS,Chicago,ILによるStatview)にインプットするものであり、そしてそれぞれのマウスの平均を、3回の試行のブロックを使用して計算するものである。記載[B58]されるように、本出願人等は、マウスが、二日目の終りに近い3回の試行にわたって1回又はそれより少ない誤りを示すものであることを予測する。学習に失敗したマウスは、訓練セッションを通して3−5回の誤りを犯し、試行による改善がないものである。
【0304】
[00355]課題の終りに、マウスの視覚、運動及び動機付け技術を試験するために、
可視プラットフォーム訓練が使用されるものである。プラットフォームに到達する時間及び泳ぐ速度の両方が記録され、そしてビデオ追跡装置(HVS 2020,HVS Image,UK)で分析されるものである。
【0305】
[00356]
注入技術。 20mg/kgのアバチンによる麻酔後、マウスの海馬の背部に26番ゲージのガイドカニューレを植込むものである(座標:P=2.46mm、L=1.50mm、深さ1.30mm)[B62]。カニューレは、アクリルの歯科用セメント(Paladur)で頭蓋骨に固定されるものである。6−8日後、本出願人等は、200pMのAβ
42、又はベヒクルを、1μlの最終体積で1分かけて、ポリエチレン管によってマイクロシリンジに接続されるものである注入カニューレを通して両側的に注射するものである。モーリス水迷路のために、マウスにそれぞれのセッション及び探索試行を行う20分前に注射するものであり、一方恐怖条件づけのために、マウスは、訓練の20分前に一回の注射を受けるものである。マウスは、行動実験の前の3日間、一日一回処理されるものである。注入中、マウスは、ストレスを最小にするために静かに処理されるものである。注入後、針は、拡散を可能にするために更に1分その位置に残されるものである。行動試験後、4%のメチレンブルーの溶液がカニューレに注入されるものである。マウスは犠牲にされ、そしてその脳が取出され、冷凍され、そして次いで注入カニューレの組織学的所在のためにクライオスタットにより−20℃で切断されるものである。
【0306】
[00357]
Aβの調製。 オリゴマーのAβ42は、記載されている[B63、B64]ように、商業的に入手可能な合成ペプチド(American Peptides Co)から調製されるものである。簡単には、凍結乾燥されたペプチドを、冷1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP,Sigma)中に再懸濁し、そしてポリプロピレンバイアル中にアリコート化するものである。24時間後、HFIP溶液を、ペプチドの薄いフィルムがバイアルの底に形成されるまでドラフト中で蒸発させるものである。ペプチドのフィルムを、穏やかな真空中で乾燥し、そして密封したバイアル中で−20℃で保存するものである。使用前に、無水のDMSO(Sigma)を加えて、純粋なAβ/DMSO溶液を得るものであり、これを10分間超音波処理するものである[B63]。オリゴマーのAβ42は、滅菌のPBS中のモノマーのAβ/DMSO溶液のアリコートを4℃で一晩インキュベートすることによって得られるものである。これらのAβ製剤の量は、ウェスタンブロット分析を使用して日常的に制御されるものであり、ここにおいて、Aβ試料は、トリス−トリシンPAGEによって、非変性/非還元性条件下で溶解され、そして次いでニトロセルロース膜に移されるものである。その後のウェスタンブロットは、抗ヒトAβモノクローナル抗体6E10(Signet Lab)との膜のインキュベーション後に行われるものである。免疫染色は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ化学発光によって明らかにされるものである。
【0307】
[00358]
ヒストンアセチル化アッセイ。 ウェスタンブロットは、液体窒素中で瞬間冷凍された海馬及び小脳から行われるものである。組織は、溶解緩衝液(pH6.8の62.5mMのトリス−HCl、3%のSDS、1mMのDTT)中で均質化され、そして4℃で10分間インキュベートされ、次いで超音波処理されてから、2,000rpmで5分間遠心されるものである。全細胞抽出物を、10−20%の勾配のPAGEゲル(Invitrogen)上で電気泳動し、そして次いで免疫ブロットするものである。抗体は、免疫ブロットのために1:1,000の濃度で使用されるものである。全ての抗ヒストン抗体は、Milliporeから購入されるものである。β−III−チューブリン抗体は、Promegaから購入されるものである。免疫ブロットのデータは、バンド強度を、画像化ソフトウェア(NIH ImageJ)を使用して測定することによって定量化されるものである。定量的免疫ブロット分析のために、等量のタンパク質がそれぞれのレーンに付加されるものである。等しい付加を確認するために、ブロットは、対応するpan−抗体又はβ−III−チューブリンのようなハウスキーピング抗体と共に再検出されるものである。定量化のために、本出願人等は、常に直線範囲のシグナルを使用する。
【0308】
[00359]
質量分析法。 免疫沈降されたヒストンの修飾の特徴づけは、質量分析によって行われるものである。免疫沈降されたヒストンは、PSR中の逆相HPLC又はSDS−PAGEによって精製され、次いで酵素的消化にかけられるものである。得られたペプチドは、Dionex nanflow LCを備えたWaters Qtof質量分析器のLC−MS/MSによって分析されるものである。トリプシンを使用する標準的な消化プロトコルは、分析するために小さすぎるペプチドをもたらすヒストンのN末端部分のLys残基の数のために、実行可能ではない。これは、更に修飾に最も富んだ領域であるために、LC−MS/MSによる分析のために最適な大きさ(800−2000Da)のペプチドをもたらす消化プロトコルを使用しなければならない。本出願人等は、Lys残基をプロピオン酸無水物で誘導し、従ってトリプシン消化をArgのみに制約するものである。本出願人等は、既にこの誘導及び消化方法を組換えヒストンH3.1の商業的製剤に対して成功裏に行い、そして質量分析によって容易に分析されるN末端領域からのトリプシンペプチドを得ている。ヒストン修飾の相対定量化のために、本出願人等は、安定な同位体標識法[B65]を使用して、トリプシンペプチドのカルボン酸基を修飾し、続いて質量分光分析を行うものである。
【0309】
[00360]
CBPレベルは、ウェスタンブロットで特異的CBP抗体を使用して測定されるものである。核画分は、7,700×gで1分間遠心された、均質化された組織から得られたペレット中に含有されるものである。
【0310】
[00361]
CBPのHAT活性は、CBP抗体を使用する海馬抽出物の溶解からの免疫沈降によって測定されるものである。単離後、HAT活性は、アセチル残基を検出するための間接的酵素結合免疫吸着測定アッセイキットを、製造業者(Upstate)の説明書により使用して評価されるものである。
【0311】
[00362]
HDAC活性は、Biovision(CA)からの蛍光定量法を、製造業者の説明書によって使用して測定されるものである。
[00363]
統計的解析。 実験は、盲検で行われるものである。結果は、平均値の標準誤差(SEM)として表示されるものである。有意性のレベルは、p<0.05に設定されるものである。結果は、スチューデントt検定(対比較)又は繰返し測定に対してANOVA(多重比較)によって主作用として処理条件を伴って解析されるものである。計画的比較が事後分析のために使用されるものである。行動のために、実験は、均衡がとれた様式で設計されるものであり、そしてマウスは、三つ又は四つの別個の実験の異なった条件のそれぞれで訓練及び試験されるものである。実験は、ANOVAで、主作用としての処理を伴って解析されるものである。
【0312】
[00364]参考文献
【0313】
【化43】
【0314】
【化44】
【0315】
【化45】
【0316】
【化46】
【0317】
【化47】
【0318】
実施例7:CHN、U251、NCI−ADR−RES、A549、Hs578T、CCRF−CEMに対する細胞生存率アッセイ
[00365]
アッセイパラメーター
読取り:Cell−TiterGlo及びCyquantによる細胞増殖、
化合物数:1(YF2)
濃度:10種(0.03、0.1、0.25、0.5、1、2.5、5、15、40及び80μM)
参照化合物:ビンブラスチン(VBL)
濃度:10種
(0.001、0.003、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3及び10μM)
薬物治療時間:72時間
複製:3
溶媒:水性媒体。
【0319】
[00366]
物質及び方法
[00367]細胞及び培養培地: 全ての細胞系を、ATCCから購入し、そして拡大され、そして低継代アリコートとしてCDASにおいて液体窒素下で保存された。細胞を維持し、そして推奨されそして最適な培養培地(
ACHN:EMEM、2mMのL−Gln、10%のFBS;
A549:Ham’s F12、10%のFBS;
U251:RPMI 1640、2mMのL−Gln、10%のFBS;
Hs578T:DMEM、4mMのL−Gln、1U/mLのウシインスリン、10%のFBS;
CCRF−CEM:ATCC RPMI、2mMのL−Gln、10%のFBS;
NCI−ADR−RES:RPMI 1640、2mMのL−Gln、10%のFBS)中で継代した。全ての実験を、20継代より少なく継代された細胞で行った。最適な播種密度を全ての細胞系に対して決定した。全ての細胞を、ウェル当たり6000細胞でプレートに入れたCCRF−CEMを除き、ウェル当たり1500細胞でプレートに入れた。
【0320】
[00368]薬物: YF2を、100%DMSO中の80mMの原液として供給した。ビンブラスチンを、Sigma(カタログ番号V−1377)から購入し、そして100%のDMSO中に1×10
−2Mで再懸濁した。両方の薬物の全ての希釈は、最終溶媒濃度が、0.1%を決して超えないように0.2%DMSOを含有する培養培地中で行った。
【0321】
[00369]薬物治療: YF2を、10種の濃度(0.03、0.1、0.25、0.5、1、2.5、5、15、40及び80μM)で三重のウェルで試験した。ビンブラスチンを、参照対照として使用し、そして反対数系列の10種の濃度(0、0.001、0.003、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、及び10μM)で試験した。細胞を、適当な濃度で培地中に再懸濁し、そして180μl(1500又は6000細胞)を、それぞれのウェルに加え、それに続いて20μlの薬物を最終濃度の10倍で加えて、所望の濃度をことごとくのウェルで得た。薬物治療プレートを37℃で72時間インキュベーとし、それに続いて細胞の生存率を、以下に記載するようなCell Titer Glo又はCyquantによって分析した。
【0322】
[00370]Cell Titer Gloアッセイ: 72時間の薬物治療期間後、アッセイプレートを遠心し、そして100μlの培地を吸引し、そして100J.1LのCell Titer Glo試薬(Promega)と、製造業者の推奨するプロトコルによって置換えた。試薬を細胞と混合し、そして蛍光をPerkin Elmer Envision装置を使用して測定した。アッセイ期間の全長の間インキュベートされた非治療の細胞を含有するウェルから得た平均の蛍光シグナルを、100%生存率の値を設定するために使用した。増殖のパーセントを、(試験シグナル)/(平均プレートバックグラウンドシグナル)×100として計算した。生存率の%を、薬物濃度に対してグラフ化して、それぞれの薬物に対するIC
50を計算した。
【0323】
[00371]Cyquantアッセイ: 薬物治療期間の72時間後、アッセイプレートを遠心し、培地を廃棄し、そして一晩冷凍した。プレートをCyquant
TM試薬(Invitrogen)を、製造業者の推奨するプロトコルによって使用して分析した。アッセイ期間の全長の間インキュベートされた非治療の細胞を含有するウェルから得た平均の蛍光シグナルを、100%増殖の値を設定するために使用した。増殖のパーセントを、(試験シグナル)/(平均プレートバックグラウンドシグナル)×100として計算した。増殖の%を、薬物濃度に対してグラフ化して、それぞれの薬物に対するIC
50を計算した。
【0324】
実施例8: YF2は、HDAC阻害ではなく、HAT活性化によって、ヒストンアセチル化を増加する
[00372]HDAC阻害は、ヒストンアセチル化の増加を起こす。本発明人等は、ヒストンアセチル化がHDAC阻害によって起こるか否かを試験した。
【0325】
[00373]結果の要約を表1に示す。化合物の平均IC
50値を表1に要約する。
[00374]表1.HDAC活性に対する化合物の阻害効果
【0326】
【表1】
【0327】
[00375]実験は、盲検で行われ、ここで、本発明のYF2化合物はOA2に対応する。研究は、YF2がHDAC阻害特性を持たないことを示す。YF2は、HDACを阻害しない。
【0328】
[00376]物質及び方法
[00377]物質:
HDACアッセイ緩衝液(BPSカタログ番号50031)
HDACアッセイ展開液(BPSカタログ番号50030)
HDAC基質1(BPS番号50032)
HDAC基質3(BPS番号50037)
HDACクラス2a基質1(BPS番号50040)
SAHA(Cayman Chemical,Ann Arbor,MI,カタログ番号10009929)。
【0329】
[00378]表2.研究に使用された化合物
【0330】
【表2】
【0331】
*化合物OA2は、10%DMSO中の2mMで濁っている(最高の試験点)。
**SAHA及びHDACiは、HDACに対する正の対照である。
[00379]実験条件
[00380]表3.酵素及び基質
【0332】
【表3】
【0333】
[00381]アッセイ条件。 試験化合物の一連の希釈物を、アッセイ緩衝液中の10%DMSO中で調製し、そして全ての反応においてDMSOの最終濃度が1%であるように、5μlの希釈物を、50μlの反応物に加えた。全ての酵素反応は、HDAC11の室温で3時間を除き、二重で37℃で30分間行った。50μlの反応混合物は、HDACアッセイ緩衝液、5μgのBSA、HDAC基質、HDAC酵素及び試験化合物を含有している。酵素反応後、50μlのHDAC展開液をそれぞれのウェルに加え、そしてプレートを室温で更に20分間インキュベートした。蛍光強度を、360nmの励起及び460nmの発光で、Tecan Infinite M1000マイクロプレートリーダーを使用して測定した。
【0334】
[00382]データ解析。 HDAC活性アッセイを、それぞれの濃度で二重で行った。蛍光強度のデータをコンピューターソフトウェア、Graphpad Prismを使用して解析した。化合物の非存在において、それぞれのデータの組における蛍光強度(F
t)を、100%活性と定義した。HDACの非存在において、それぞれのデータの組の蛍光強度(F
b)を、0%活性として定義した。化合物OA2は、アッセイ条件で蛍光を有している;従って、OA2の異なった濃度における蛍光強度を、バックグラウンド(Fb)として定義した。それぞれの化合物の存在中の活性のパーセントは、次の等式:活性%=(F−F
b)/(F
t−F
b)によって計算し、ここで、F=化合物の存在中の蛍光強度である。
【0335】
[00383]次いで一連の化合物濃度に対する活性%の値を、等式Y=B+(T−B)/1+10
((LogEC50−X)xHill Slop)で発生されたシグモイド曲線の用量−反応曲線の非線形回帰分析を使用してプロットし、ここで、Y=活性のパーセント、B=最低活性パーセント、T=最大活性パーセント、X=化合物の対数及びHill Slope=傾斜係数又はヒル係数である。IC
50値は、最大の半分の活性を起こす濃度によって決定された。
【0336】
[00384]
HDAC阻害に対するOA2(YF2化合物)の効果の結果
[00385]表4.HDAC1アッセイ−HDAC1活性に対するOA2の影響に対するデータ
【0337】
【表4】
【0338】
[00386]
図52は、表4に示した結果に対応する。
[00387]表5.HDAC3/NCOR2アッセイ−HDAC3/NCOR2活性に対するOA2の効果に対するデータ
【0339】
【表5-1】
【0340】
【表5-2】
【0341】
[00388]
図53は、表5に示した結果に対応する。
[00389]表6.HDAC5FLアッセイ−HDAC5FL活性に対するOA2の効果に対するデータ
【0342】
【表6】
【0343】
[00390]
図54は、表6に示した結果に対応する。
[00391]表7.HDAC7アッセイ−HDAC7活性に対するOA2の効果に対するデータ
【0344】
【表7】
【0345】
[00392]
図55は、表7に示した結果に対応する。
[00393]表8.HDAC8アッセイ−HDAC8活性に対するOA2の効果に対するデータ
【0346】
【表8】
【0347】
[00394]
図56は、表8に示した結果に対応する。
[00395]表9.HDAC10アッセイ−HDAC10活性に対するOA2の効果に対するデータ
【0348】
【表9】
【0349】
[00396]
図57は、表9に示した結果に対応する。
[00397]表10.HDAC11アッセイ−HDAC11活性に対するOA2の効果に対するデータ
【0350】
【表10-1】
【0351】
【表10-2】
【0352】
[00398]
図58は、表10に示した結果に対応する。
[00399]表11.サーチュイン1アッセイ−サーチュイン1活性に対するOA2の効果に対するデータ
【0353】
【表11】
【0354】
[00400]
図59は、表11に示した結果に対応する。
[00401]表12.サーチュイン2アッセイ−サーチュイン2活性に対するOA2の効果に対するデータ
【0355】
【表12-1】
【0356】
【表12-2】
【0357】
[00402]
図60は、表12に示した結果に対応する。
[00403]表13.HDAC6アッセイ−HDAC6活性に対するOA2の効果に対するデータ
【0358】
【表13】
【0359】
[00404]
図74は、表13に示した結果に対応する。
[00405]
HDAC阻害に対するSAHAの効果の結果
[00406]SAHAは、HDAC阻害剤(HDACi)である。これは、HDACに対する正の対照として役立つ。
図61−63は、HDACのHDACl、HDAC3/NCOR2、及びHDACに対するSAHAの阻害効果を示す。SAHAは、更にHDAC5FL、HDAC7、HDAC8、HDAC10、サーチュイン1及びサーチュイン2を阻害した(表1を参照)。
【0360】
実施例9:選択的HAT活性化剤の設計
[00407]アルツハイマー病(AD)における初期の健忘性の変化は、シナプスの機能障害に関連すると考えられる。これに関して、この疾病において高い量で産生されるペプチドであるβ−アミロイド(Aβ)は、記憶
[1,2]及びその電気生理学的モデルの長期増強(LTP)
[3−8]を阻害することが見いだされている。記憶は、遺伝子発現の制御によるエピジェネティクスによって調節されているため、ヒストン(H)アセチル化のような後成的機構の一つの調節解除は、記憶の破壊に導くことができる。ヒストンアセチル化の減少は、クロマチン構造が閉じることを起こし、従って、DNA中に含有される情報は、転写因子及び記憶の形成にとって少なく受け入れられることができる
[9]。
【0361】
[00408]ヒストンアセチル化を上方制御するために現時点で使用される主な戦略は、HDAC阻害剤に関係する。然しながら、非特異的HDAC阻害の多面的効果は、その治療的潜在性を妨害することができる
[10−13]。本出願人等は、二つのHATであるCBP及びPCAFの海馬レベルが、Aβ上昇後減少されることを示した。従って、本出願人等は、更にヒストンアセチル化を上方制御するもう一つの標的であるHATに焦点を当てている。この目的のために、本出願人等は、HAT活性化剤のYF2を合成している。本出願人等は、Aβの下流であるCBP及びPCAFを特異的に標的とする選択的なHAT活性化剤を設計することに関係する一連の調査を提案する。本出願人等の提案の目的は:
1)ADのために最適化された新しいHAT活性化剤を設計及び合成すること;
2)特異的にCBP及びPCAFを標的とする選択的HAT活性化剤に対する高い親和性及び良好な選択性を伴う化合物を同定すること;
3)新しいHAT活性化剤が、良好な薬物動態学的(PK)特性を有し、そして安全であるか否かを決定すること;
4)APP/PS1マウスにおけるシナプスの機能障害を救済するHAT活性化剤を選択すること;
5)更に、これらが、APP/PS1マウスの認知異常に対して有益であるか否かを決定するためにHAT活性化剤を選別すること;
である。
【0362】
[00409]
バックグラウンド及び有意性: クロマチンの翻訳後アセチル化状態は、酵素の二つの群であるHAT及びHDACの競合活性によって支配される。HDAC阻害剤は、LTP及び動物が中性の刺激を有害なものと結合しなければならない連合記憶の形成である状況的恐怖記憶を向上することが示されている
[P17]。更に、CBP
+/−マウスの記憶及びLTP欠損は、HDAC阻害によって逆転された
[P15]。神経変性疾患と対抗するHDACを阻害する潜在性は、広く探索されている
[14]。例えば、一組の実験において、Tsai等は、HDAC阻害剤が、神経変性のCK−p25Tgマウスモデルにおける樹状突起の発芽を誘導し、シナプスの数を増加し、そして学習及び長期記憶への接近を復元することを報告している
[15,16]。更に、最近の研究において、本出願人等は、HDAC阻害剤のTSAが、アミロイド沈着の二重TgのAPP(K670M:N671L)/PS1(M146L,ライン6.2)(APP/PS1)マウスモデルにおけるLTP及び状況的恐怖条件づけ(FC)を回復することを示している。参考文献であるBolden等(2006, Nature Reviews Drug Discovery,5:769−84)は、ヒストンデアセチラーゼファミリーを記載し、これは本明細書中に参考文献としてその全てが援用される。然しながら、HATは、より少ない程度にしか研究されていない。
【0363】
[00410]HATは、二つの主要な群、核HAT及び細胞質HATに分けることができる
[18]。核A型HATは、HAT領域の配列保存に基づいて少なくとも四つの異なったファミリー:Gcn5及びp300/CBP関連因子(PCAF)、MYST(MOZ、Ybf2/Sas3、Sas2及びTip60)、p300及びCBP(二つのヒトパラログp300及びCBPのために命名)並びにRttl09に分類することができる。Gcn5/PCAF及びMYSTファミリーは、酵母からヒトへの同族体を有するが、p300/CBPは、後生動物特異的であり、そしてRttl09は、真菌特異的である。HAT1のような細胞質B型HATは、ヒストン沈着に関係する
[P22]。参考文献であるMarmorstein及びRoth(2001,Curr Opin in Genet and Develop.,11:155−161)は、その表1にHATファミリー及びその転写関連機能を列挙し、これは、本明細書中にその全てが参考文献として援用される。
【0364】
[00411]ステロイド受容体活性化補助因子、TAF250、ATF−2、及びCLOCKのような他の核HATファミリーが記載されているが、これらのHAT活性は、主要なHAT群のようには徹底的に調査されていない
[18]。これらの四つのファミリーは、ファミリー内で高い配列同一性を示すが、しかしファミリー間では配列同一性は、不良ないし無いことを示す。更に、異なったファミリーのHAT領域の大きさは、異なる
[P22]。興味あることに、HATは、哺乳動物中で高度に保存されている
[P22]。全てのこれらのHATの中で、三つ:CBP、p300
[19,20]、及びPCAF
[21]が記憶に関係することが示された。興味あることに、CBP及びPCAFレベルの両方は、Aβの上昇によって減少される。
【0365】
[00412]HAT活性化剤は、ヒストンアセチル化を向上するための実行可能な方法である。HAT活性化剤のための二つの足場が確認されている。一番目のものはCTPB及びその誘導体CTBを含む
[22,23]。二番目のものは、ただ一つの化合物、ネモロソンを含む
[24]。CTBP/CTBは、不溶性で、そして膜不透過性であることが見いだされている
[22,23]。更に、CTBPは、CNS疾病において使用されるために好ましくない特徴を有し(MWは553.29であり、clogPは12.70である)、そしてCTBのclogPは5.13である。ネモロソンは、502のMW及び8.42のclogPを有する。要約として、ADを含むCNS疾患の治療におけるHAT活性化剤のための有望な治療的役割を支持する多くの証拠が存在する。本出願人等は、特異的にCBP及びPCAFを標的とする新しい化学的成分を開発することによって、この可能性を開拓するものである。
【0366】
[00413]
研究の設計及び方法:
[00414]1)
ADのために最適化された、新しいHAT活性化剤を設計及び合成すること。 本出願人等は、CTPB/CTB足場のSAR研究に基づき、YF2と命名された新しい化合物を設計した。YF2(MW430.13、clogP5.15、clogBB0.17)は、増加した溶解性、膜透過性及び血液脳関門透過性を有し、急性毒性試験において安全である。YF2は、Aβ上昇後のH3アセチル化の海馬レベルの減少を救済し、PCAF、CBP及びGcn5、並びにp300の酵素活性を向上し、HDACに対するよりPCAF、CBP及びGcn5に対する優れた選択性を有し、そしてAβ暴露によって誘導された恐怖及び参照記憶に欠損を救済することが可能であった。本出願人等は、その新薬の開発につながる可能性(druggability)を、良好なPK及びADMET特性を持つ薬物様リード化合物の合成に焦点を当てた、医薬化学(医化学)的方法を使用して改良している。本出願人等は、YF2の二つの芳香族環の一つの異なった位置に異なった分子を保有するHAT活性化剤を設計及び合成するものである。特に、本出願人等は、ミクロソームによってアルキル化され、そして芳香族環を酸化性反応から保護する可能性があるジメチルアミノ基を置換するものである。更に、本出願人等は、HAT結合部位を、i)二つの芳香族環間のアミト゛基の重要性を評価すること、ii)分子構造を制約すること、iii)現在YF2を形成する二つの芳香族環間の距離を改変すること、iv)二つの芳香族環の一つを複素環によって置換すること、そしてv)二つの芳香族環の一つの置換基の障害を増加することによって、探索するものである。本出願人等は、a)HAT特異性及び効力、b)大きいCNS透過、並びにc)安全性を持つHAT活性化剤を見出すものである。
【0367】
[00415]2)
CBP及びPCAFを特異的に標的とする選択的HAT活性化剤に対して高い親和性及び良好な選択性を持つ化合物の同定。 HAT活性化剤の効力(EC
50)の評価後、本出願人等は、CBP及びPCAFに関する選択性を検査するものである。良好な効力(<100nM)、選択性(p300、Gcn5、MYSTファミリー及びHDACに対して少なくとも50倍)及び溶解性を示すことが見いだされたHAT活性化剤に対して、本出願人等は、これらが、成獣のマウスにおいて海馬のH3及びH4アセチル化を増加するか否かを決定するための機能アッセイを使用するものである。
【0368】
[00416]3)
新しいHAT活性化剤が、良好な薬物動態学的(PK)特性を有し、そして安全であるか否かを決定すること。 選択されたHAT活性化剤を、生体利用率、脳取込み、及びBBB透過を含む好ましくないPK特性に対して選別されるものである。これらの試験を通過した化合物は、急性及び慢性毒性の試験を含む基本的なADMET特徴を評価されるものである。
【0369】
[00417]4)
APP/PS1マウスにおけるLTPを救済するHAT活性化剤を選択すること。 本出願人等は、選択されたHAT活性化剤が、APP/PS1切片のLTP欠損を回復するか否かを、電気生理学的技術を使用して決定するものである
[25]。
【0370】
[00418]
これらがAPP/PS1マウスの認知異常を回復するか否かを試験するためのHAT活性化剤を更に選別する。 本出願人等は、切片で選別されたHAT活性化剤が、行動アッセイを使用する状況及び参照記憶の障害に対してAPP/PS1マウスを保護することができるか否かを決定するものである
[25]。次に、本出願人等は、HAT以外の標的に対するその更に包括的な選択性に対して、本出願人等の化合物を特徴づけするものである。本出願人等は、更に多くの薬物の市場からの撤退をもたらした、二つの領域:薬物−薬物相互作用(肝臓代謝)、hERGチャンネル遮断(心機能不全)に焦点を当てた一連のアッセイによりこれらを選別するものである。
【0371】
[00419]
YF2、アルツハイマー病、及び薬物発見研究: 現時点で使用されているAD治療は、制約された効力を有する。タングル形成を阻害し、炎症及び酸化性損傷と戦い、そして脳のAβ負荷を減少するための主要な努力が行われている
[26−28]。然しながら、正常な生理学的機能におけるAPP、Aβ、及びセクレターゼの役割
[29−31]は、AD治療に対する有効な、そして安全な方法を提供することに問題を与えることができる。ニューロンの機能障害に導くAβ標的と相互作用する薬剤を開発することは、多くの研究所によって現時点で試験されているもう一つの方法である。理論に束縛されるものではないが、HAT活性化剤は、疾病の進行に有効に対抗することができる化合物の新しい群である。
【0372】
[00420]
参考文献
【0373】
【化48】
【0374】
【化49】
【0375】
【化50】
【0376】
実施例10:ADの治療のためのHATアゴニスト
[00421]本出願人等は、CREB結合タンパク質(CBP)及びp300/CBP関連因子(PCAF)の海馬レベルが、ヒストンアセチル化を触媒し、そして記憶の形成に関連する二つのアセチルトランスフェラーゼ(HAT)が、Aβ上昇後、減少されることを証明している
[P14−16]。
【0377】
[00422]本出願人等は、HAT活性化剤化合物のYF2を設計し、そして合成している(
図29)。YF2は、2−(ジメチルアミノ)エタノール並びに酸2及び4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)アニリンのEDCの存在中の反応によって得られた3間の光延反応によって調製された。酸は、1のエステル加水分解によって合成された。最後に、YF2は、水溶性化合物を得るためにHCl/Et
2Oで処理された。In vitroアッセイにおいて、YF2は、CBP、PCAF、及びGCN5に対する活性を有する。CBP、PCAF、及び、GCN5に対するYF2のEC
50は、それぞれ2.75μM、29.04μM及び49.31μMである。更に、YF2は、p300及びHDAC活性(HDAC1、3、5、6、7、8、10、11、及びsirt1−2)に干渉しなかった。YF2は、更に
図72に示すようにp300活性を増加する。
【0378】
[00423]これらの結果に励まされて、本出願人等は、次いでYF2の薬物動力学(PK)及び血液脳関門(BBB)透過能力を調査した。BALB/cマウスに対する20mg/kgのi.p.及びi.v.投与後、血漿及び脳濃度をLCMS/MSによって決定した。表14のデータは、YF2が脳に急速に吸収されることを示す(15分におけるT
max)。
【0379】
[00424]表14.YF2の薬物動力学的特性
【0380】
【表14】
【0381】
*比=脳/血漿
CBP、PCAF及びGCN5に対するYF2のEC
50は:それぞれ2.75μM、29.04μM及び49.31μMである。
【0382】
[00425]脳中のYF2の量は、i.p.及びi.v.投与に対してそれぞれ8.2及び10.8のAUC
0−t比で血漿中のそれより高かった。脳及び血漿中のYF2の排出半減期は、約40分であった。脳及び血漿中のT
max値は、同様であり、脳に対するYF2の分布も、更に急速であることを示した。更に、急性の毒性実験において、YF2は、300mg/kg(i.p.)迄何らの不都合な影響を誘導しなかった。
【0383】
[00426]次いで、本出願人等は、YF2が、マウスの海馬におけるヒストンアセチル化を増加するか否かを試験した。化合物を、20mg/kgでi.p.投与し、30分後マウスを犠牲にし、そして海馬を取出し、そしてWB分析のために急速冷凍した。
図64に示すように、YF2は、記憶の形成に関係することが示されているヒストンリジンのアセチル化を増加した(H3K4、H3K9、H3K14、H4K5、H4K8、H4K12、H4K16、及びH2B)
[P15,P33]。
【0384】
[00427]次に、本出願人等は、YF2が、Aβ上昇後のシナプス及び認知機能障害を弱めることができるか否かを検討した。YF2は、海馬へのAβ注入後のH3アセチル化レベルの欠損を救済した(
図65)。次に、本出願人等は、LTP又は状況的恐怖記憶、並びに参照記憶を、オリゴマーのAβ
42、又はベヒクルの存在中で誘導した。LTP実験において、200nMのAβ
42又はベヒクルを、浴溶液を通してθ−バーストの適用の20分前に潅流した。行動実験において、200nMのAβ
42(1μlの最終体積で1分かけて)又はベヒクルを、脚部ショックの15分前、又は1回目試行の15分前(参照記憶を評価する2日間の放射状アーム水迷路(RAWM)試験中の試験の第1群に対して
[P34])及び7回目試行の15分前(RAWMの試験の第2群に対して)に、前の週にカニューレを前もって植込まれたマウスの背部海馬に両側的に注入した。Aβは、LTP並びに参照及び状況的恐怖記憶の両方を減少した(
図66)。然しながら、YF2(1μM、LTP実験においてθ−バーストの30分前;5又は20mg/kg、i.p.、行動実験におけるAβ投与の15分前)は、電気生理学的及び行動的欠損を回復した(
図16)。
【0385】
[00428]理論に束縛されるものではないが、これらの実験が、Aβ
42の合成製剤で得られたことを考慮すれば、これが、ADの脳でシナプスの機能障害を起こすAβと同じであるか否かを知ることは困難である。従って、本出願人等は、これらの実験を、Aβを沈積したマウスモデルのAPP/PS1マウスにおいて検証した
[P35]。これらのマウスは、ADの病態に関して、十分に特徴づけされている
[P34−38]。これらは、生後3ヶ月のように早くからシナプス及び記憶障害を示し始める
[P34]。二重変異APP(K670M:N671L)/PS1(M146L)(ライン6.2)を持つ遺伝子導入マウスは、生後8−10週目に皮質及び海馬に大きいプラークを発生し始める。これらは、生後3ヶ月までに、状況的恐怖記憶及び空間作業記憶の障害と一緒にLTPの減少を有する。
【0386】
[00429]
図67に示すように、WTマウスは、RAWM課題の二日目の終りに近い二回の試行にわたって<2回の誤りを示した。次に、APP/PS1マウスは、学習に失敗し、そして訓練セッションを通して>3回の誤りをおかした。然しながら、YF2(20mg/Kg、i.p.FCのための訓練の30分前、又はRAWMに対する試験の一番目及び二番目の群の前に)による治療は、WTマウスの記憶に影響することなく、二重Tgの記憶の欠損を救済した。本出願人等は、二重Tgマウスが、条件的恐怖記憶を評価するためのFCを行った場合、同様な結果を得た(
図67)。
【0387】
[00430]要約として、ヒストン3及び4アセチル化は、Aβ上昇後に減少する。HATレベル(CBP及びPCAF)は、Aβ42上昇後減少する。HDAC阻害は、Aβ42上昇後のシナプス機能及び記憶の損傷に対して有益である。HAT活性化は、Aβ42上昇後の記憶減少に対して有益である。本出願人等は、ヒストン3アセチル化の均衡を変化し、そしてAβ上昇後の正常な記憶を復元する、HAT活性化剤のYF2を設計及び合成した。
【0388】
実施例11:CBP及び/又はPCAF及び/又はP300に対して高い親和性及び良好な選択性を持つHAT活性化剤
[00431]化合物は、Active Motif(USA,CA)からのHATアッセイキットを使用して、先ずHAT活性化剤活性に対して試験されるものである。このアッセイのために、本出願人等は、ヒトCBP、PCAF、p300及びGCN5(Enzo Life Sci.,USA)の触媒領域を使用するものである。残りのHATの触媒領域は、New England Biolabs K.lactisタンパク質発現キットを使用して製造されるものである。CBP及び/又はPCAFの強力な活性化剤(EC
50<100nM)であることに加えて、候補化合物は、更に選択的でなければならない。全ての他のHATに対して分析された場合、これらは、CBP及び/又はPCAFに対して少なくとも50倍大きい効力を示さなければならない。最後に、実施例13及び14に概略記載したシナプス及び記憶の機能障害の試験において効力を示す最も強力/選択的化合物に対して、本出願人等は、HDACに対する選択性を検討するものである。これらの試験を行う一方、本出願人等は、更に溶解性を評価するものである(中性水性緩衝液>10μg/ml)。
【0389】
[00432]本出願人等の次の目的は、ニューロン製剤を使用してin vitroのデータを確認することであるものである。特に、
本出願人等は、新しいHAT活性化剤を、一次培養物及び成獣のマウス中で試験するものである。本出願人等は、最初、化合物が、生後10日目の培養された海馬ニューロン(記載されている
[P47]ように調製)の特異的ヒストンアセチル化を増加することができるか否かを決定するものである。培地を吸引し、そしてHAT活性化剤を含有する0.5mLのPBSで置換えるものである。37℃で30分後、細胞を取出し、そしてWB分析のために溶解するものである。海馬培養物中の試験を通過した化合物は、次に急性毒性の評価後、マウスに投与される化合物の投与量を決定するために、成獣のマウスにおいて試験されるものである(以下の“毒性試験”を参照されたい)。成獣のマウスにおける試験は、細胞培養物が、複雑な細胞−細胞相互作用及びin vivoの薬物PK、BBB透過、等(更に以下の実施例12を参照されたい)を伴う全身を再現しないために、必須である。マウスは、HAT活性化剤で治療されるものであり、海馬をi.p.注射の30分後に回収し、そしてWB分析のために溶解するものである。全ての実験は、三重で行われるものである。本出願人等が、特異的ヒストンアセチル化の増加を見出した場合、候補化合物は、活性と見做されるものである。
【0390】
[00433]選択された化合物に対して、本出願人等は、更にチャンネル、受容体、トランスポーターとの相互作用を、実施例12において考察されるADMET/Tox研究に加えて、NIMH PDSPプログラム(CNS標的の列挙に対してhttp://pdsp.cwru.eduを参照されたい)を使用して試験するものである。
【0391】
実施例12:新しいHAT活性化剤が、良好な薬物動態学的(PK)特性を有し、そして安全であるか否かを決定すること
[00434]本出願人等は、新規なHAT活性化剤の基本的なPK特性及び毒性に対処するデータを作成するものである。必要な場合、PK及び毒性研究によって得られた情報を、改良された生体利用率、脳取込み、及び安全性の最終目的を持つ新しい分子の更なる化学的修飾に導くために使用するものである。行われる必要がある薬物動力学的アッセイは、a)生体利用率及びb)脳取込みの測定を含むものである。マウスに、活性化剤をi.p.注射するものである(最終薬物候補に対して更に、p.o.及びi.v.の投与経路を使用して、PK試験も行われるものである)。5−6匹のマウス/性別を、それぞれの時点に対して使用するものである。生体利用率(投与後の時間の関数としての血液中の化合物の濃度)の評価のために、血液試料を一回の急性投与後に試験動物から得るものである(5分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、及び24時間目に収集)。血液は、後眼窩穿刺によって回収され、ヘパリン処置した試験管中に収集し、そして血漿を遠心によって得るものである。試料を、LC−MSによって分析して、候補化合物及び可能性のある代謝物の量を測定するものである。脳取込み及びBBB透過の指標は、脳からの候補化合物の組織抽出によって得るものである。簡単には、脳ホモジネートを11,000rpmで10分間遠心するものである。試料のアリコートを、アセトニトリルに加え、次いで分析のためにLC−MS/MSに注射するものである。脳及び血漿濃度の同様なパターンは、脳取込みが血液中の濃度を反映するという事実の表示であるものである。>1のピーク脳/血液濃度比は、本出願人等の化合物に対する脳取込みが、臨床使用中の既知のCNS薬物のそれに匹敵することを示すものである。例えば、6−フェニルアミノピリダジンCNS薬物であるミナプリンに対する脳/血液比は、>2である
[P48]。
【0392】
[00435]次に、本出願人等は、急性毒性を評価するものである。全ての臨床的徴候、開始の時間、期間、毒性の可逆性及び死亡率を、記録するものである。動物は、最初の24時間中定期的に観察され、最初の4時間は連続して、次いで少なくとも一日一回で14日間、又は彼らが死ぬまで、食物及び液体取込み、体重、並びに自発運動及び探索行動を検査するためにモニターされるものである。本出願人等は、更に最大許容投与量(MTD)及び慢性毒性を評価するものである。MTDは、怠惰感又は死に関していずれもの毒性効果を生じない最大の投与される投与量として計算されるものである(体重は時間をかけてモニターされる)。慢性毒性は、MTDで評価されるものである。全ての臨床的徴候、開始の時間、期間、毒性の可逆性及び死亡率が記録されるものである。可能性のある慢性毒性の徴候の発生は、治療の終りの少なくとも1ヶ月後評価されるものである。
【0393】
[00436]ADMET問題のために、全ての薬物の半分以上が市場に到達することに失敗していると推定されている
[P49]。従って、経費のかかる動物の毒物学的作業及びその後の効力評価の過程の取り組む前に(実施例13及び14を参照されたい)、本出願人等は、本出願人等の三つの最良の化合物を迅速な、経費のかからない一連のアッセイにより選別するために、in vitroのADMET試験の最近の進歩を利用するものである。本出願人等は、多くの薬物の市場からの撤退をもたらした二つの分野:薬物−薬物相互作用(肝臓代謝)、hERGチャンネル遮断(心臓機能不全)に焦点を当てるものである。肝毒性に関連する薬物−薬物相互作用を試験するために、本出願人等は、
シトクロムP450阻害アッセイ(SRI internationalによって行われる)を使用するものである。
hERGチャンネル遮断アッセイを、NIMH PDSPプログラムを使用して行うものである。
【0394】
実施例13:APP/PS1マウスのLTPを救済するHAT活性化剤を選択すること
[00437]シナプスの機能障害は、ADの主要な特徴である
[P50]。本出願人等の薬物選別プロトコルの定量的側面は、新しく合成された化合物のシナプス機能に対する効果の測定を含むものである。APP/PS1マウスは、生後3ヶ月目までにLTPの障害を提示し
[P34]、そして従って、マウスの加齢を長時間待つことなくシナプス機能の比較的迅速な評価を可能にする。本出願人等は、LTPを、これが学習及び記憶の根底にあると考えられるシナプス可塑性の種類であるために試験するものである。YF2が、LTPのAβ誘導の減少を救済するという発見に基づいて、本出願人等は、正常なLTPを再確立することができるものを選択するための本出願人等の医化学的研究によって示される化合物を選別するものである。化合物を、
図66Aのような同じ実験プロトコルを使用して30分間適用されるものである。対照は、ベヒクルで治療されたAPP/PS1マウス、及び化合物又はベヒクルで治療されたWTマウスからの切片で行われるものである。化合物が、APP/PS1切片中の正常なLTPを再確立した場合、本出願人等は、化合物が、APP/PS1マウスのシナプス可塑性の障害を救済することができると結論するものである。本出願人等は、更にもう一つの疾病の重要な側面である認知障害を調査するものである(実施例14を参照されたい)。
【0395】
[00438]動物:Tgマウスは、APP(K670M:N671L)をPS1(M146L)(ライン6.2)マウスと交雑することによって得るものである。遺伝子型は、尾部試料のPCRによって同定するものである
[P41−P53]。
【0396】
[00439]電気生理学は、オスで行うものである(Gong et alの記載
[P54]を参照されたい)。
[00440]統計的解析:実施例14を参照されたい。
【0397】
実施例14:HAT活性化剤が、APP/PS1マウスの認知異常を回復することができるか否かを試験するためのHAT活性化剤を更に選別すること
[00441]理論に束縛されるものではないが、実施例13によって示された新規なHAT活性化剤による治療は、生後3及び6ヶ月目のAPP/PS1マウスにおける認知欠損を救済することができる。行動課題に関して、本出願人等は、AD患者において影響される異なった種類の記憶(参照及び連合)を評価する試験の二つの種類である、RAWM及び状況的FCを使用するものである。治療は、同じタイミングで行われるものである(即ち、恐怖条件づけのための訓練の30分前、又はRAWMのための試験の一回目及び二回目の群の前)。試験される条件は:HAT活性化剤で治療されたAPP/PS1及びWT、ベヒクルで治療されたAPP/PS1及びWTを含む。行動試験後、マウスを犠牲にし、そのその血液及び脳を、Aβレベル、Tauタンパク質、TARDBP及びTDBレベル、並びにアルファ−シヌクレイン測定のために使用するものである。HAT活性化の有効性の対照として、本出願人等は、海馬のアセチル−H4レベルを、恐怖条件づけのための訓練の30分前の化合物の投与後、及び電気ショックの1時間後の海馬の除去後に測定するものである(APP/PS1マウスは、電気ショック後、アセチル化H4の減少を有することが示されている
[P21])。最後に、本出願人等は、市場からの多くの薬物の撤退をもたらした二つの分野:薬物−薬物相互作用、hERGチャンネル遮断に焦点を当てた一連のアッセイによりこれらを選別するものである(実施例12を参照されたい)。
【0398】
[00442]動物:実施例13を参照されたい。
[00443]行動研究: 実験は、可変性を減少するために、オスの動物のみの盲検で行うものである。
A)空間的記憶。この種類の参照記憶は、記載されている
[P56]ように二日間のRAWMで研究することができる;更に
図66Bを参照されたい)。課題は、モーリス水迷路(MWM)及び放射状アーム陸迷路の複合型である。これらの実験のために、記載されている
[P34]ように、視覚、運動及び動機付けの欠損がマウスの能力に影響することを除外するために、
可視プラットフォーム試験を行うものである。B)状況的及び手懸り付き学習の両方を試験するための
恐怖条件づけは、記載されている
[P57]ように評価されるものである。これらの実験のために、マウスの異なった群の電気ショックを受けた脚部の知覚性認知を検査するために、
閾値評価試験を行うものである
[P57]。更に、記載されている
[P58,P59]ように、探索を評価するために、
オープンフィールド試験を行うものである。
【0399】
[00444]ヒストンアセチル化アッセイ: ウェスタンブロットを、液体窒素で瞬間冷凍された海馬から行うものである。組織を、RIPA緩衝液中で均質化し、次いで超音波処理してから、10,000rpmで5分間遠心するものである。全細胞の抽出物を、10−20%勾配のPAGEゲル(Invitrogen)上で電気泳動し、そして次いで免疫ブロットするものである。免疫ブロットのために、抗体を1:1,000の濃度で使用するものである。全ての抗ヒストン抗体は、Milliporeから購入されるものである。免疫ブロットデータは、バンド強度を測定することによって、画像ソフトウェア(NIH ImageJ)を使用して定量化されるものである。
【0400】
[00445]Aβレベルの決定は、以前に記載されている
[P34]ように冷凍された脳半球及び血漿のホモジネートで行われるものである。
[00446]アルファ−シヌクレインレベルの決定は、α−シヌクレインELISAキット(カタログ番号NS400;Millipore,Billerica,MA)を使用し、製造業者の説明書によって、冷凍された脳半球のホモジネートに対して行われるものである。
【0401】
[00447]TARDBP/TDP−43レベルの決定は、ヒトTAR DNA結合タンパク質43、TARDBP/TDP−43のELISAキット(カタログ番号E1951h;Wuhan EIAab Science Co,Wuhan,China)を使用して、製造業者の説明書によって、冷凍された脳半球のホモジネートに対して行われるものである。
【0402】
[00448]全Tau及びリン酸化されたTau(Thr231)レベルの決定は、MesoScale Discovery(Gaithersburg,MD)(http://www.mesoscale.com/catalogsystemweb/webroot/products/assays/alzheimers.aspxを参照されたい)から入手可能なアッセイ及びキットを、製造業者の説明書によって使用して、冷凍された脳半球のホモジネート及び血漿に対して行われるものである。
【0403】
[00449]統計: 実験のマウスは、盲検で行われるものである。結果は、平均の標準誤差(SEM)として表示されるものである。有意性のレベルは、p<0.05に設定されるものである。結果は、主効果として薬物及び遺伝子型による事後補正を伴うANOVAにより解析されるものである。
【0404】
[00450]
参考文献
【0405】
【化51】
【0406】
【化52】
【0407】
【化53】
【0408】
【化54】
【0409】
【化55】
【0410】
実施例15:これらが、ハンチントン病のマウスモデルにおける認知異常を回復するか否かを試験するためのHAT活性化剤の更なる選別
[00451]本出願人等は、実施例13によって示されたHAT活性化剤化合物による治療が、ハンチントン病のマウスモデル(例えば、FVB−Tg(YAC128)53Hay/J及びFVB/NJ−Tg(YAC72)251 lHay/Jマウス、Jackson Laboratory,Bar Harbor MEから入手可能)の認知欠損を救済することができるか否かを試験するものである。行動課題に関して、本出願人等は、記憶の異なった種類(参照及び連合)を評価する二種類の試験である、RAWM及び状況的FCを使用するものである。治療は、同じタイミングで行われるものである(即ち、恐怖条件づけのための訓練の30分前、又はRAWMのための試験の一回目及び二回目の群の前)。試験される条件は:HAT活性化剤で治療されたハンチントン病のマウス及びWT、ベヒクルで治療されたハンチントン病のマウス及びWTを含む。行動試験後、マウスを犠牲にし、そしてその血液及び脳をハンチンチンタンパク質レベルの測定のために使用するものである。HAT活性化の有効性に対する対照として、本出願人等は、恐怖条件づけのための訓練の30分前の化合物の投与及び電気ショックの1時間後の海馬の除去後の海馬のアセチル−H4レベルを測定するものである。最後に、本出願人等は、市場からの多くの薬物の撤退をもたらした二つの分野:薬物−薬物相互作用、hERGチャンネル遮断に焦点を当てた一連のアッセイによりこれらを選別するものである(実施例12を参照されたい)。
【0411】
[00452]動物: ハンチントン病のマウスモデル(例えば、FVB−Tg(YAC128)53Hay/J[ストック番号004938]及びFVB/NJ−Tg(YAC72)251 1Hay/Jマウス[ストック番号003640])は、Jackson Laboratory(Bar Harbor ME)から得られるものである。更に、Hodgson et al,(May 1999)Neuron,Vol.23,181−192を参照されたい。
【0412】
[00453]行動研究: 実験は、可変性を減少するため、オスのマウスのみで盲検で行われるものである。
A)空間的記憶。この種類の参照記憶は、記載されている
[P56]ように二日間のRAWM試験で研究することができる。課題は、モーリス水迷路(MWM)及び放射状アーム陸迷路の複合型である。これらの実験のために、記載されている
[P34]ように、視覚、運動及び動機付けの欠損がマウスの能力に影響することを除外するために、
可視プラットフォーム試験を行うものである。B)状況的及び手懸り付き学習の両方を試験するための
恐怖条件づけは、記載されている
[P57]ように評価されるものである。これらの実験のために、マウスの異なった群の電気ショックを受けた脚部の知覚性認知を検査するために、
閾値評価試験を行うものである
[P57]。更に、記載されている
[P58,P59]ように、探索を評価するために、
オープンフィールド試験を行うものである。
【0413】
[00454]ヒストンアセチル化アッセイ: ウェスタンブロットを、液体窒素で瞬間冷凍された海馬から行うものである。組織を、RIPA緩衝液中で均質化し、次いで超音波処理してから、10,000rpmで5分間遠心するものである。全細胞の抽出物を、10−20%勾配のPAGEゲル(Invitrogen)上で電気泳動し、そして次いで免疫ブロットするものである。免疫ブロットのために、抗体を1:1,000の濃度で使用するものである。全ての抗ヒストン抗体は、Milliporeから購入されるものである。免疫ブロットデータは、バンド強度を測定することによって、画像ソフトウェア(NIH ImageJ)を使用して定量化されるものである。
【0414】
[00455]ハンチンチンレベルの決定は、ハンチンチン(Htt)ELISAキット(カタログ番号ABIN423526;Antibodies−online,Atlanta,GA)を使用し、製造業者の説明書によって、冷凍された脳半球のホモジネート及び血漿に対して行われるものである。
【0415】
[00456]統計: 実験のマウスは、盲検で行われるものである。結果は、平均の標準誤差(SEM)として表示されるものである。有意性のレベルは、p<0.05に設定されるものである。結果は、主効果として薬物及び遺伝子型による事後補正を伴うANOVAにより解析されるものである。
【0416】
実施例16:これらが、パーキンソン病のマウスモデルにおける運動活性の異常を回復するか否かを試験するためのHAT活性化剤の更なる選別
[00457]PDは、黒質核中のドーパミンニューロンの75−95%迄のニューロンの死を伴う変性疾患である。本出願人等は、実施例13によって示されたHAT活性化剤化合物による治療が、パーキンソン病(PD)のマウスモデルの異常な運動動作を救済するか否かを試験するものである(例えば、Jackson Laboratory,Bar Harbor MEからhttp://jaxmice.jax.org/list/ ral594.htmlで入手可能なパーキンソン病のマウスモデルを参照されたい; 更にEmborg,Journal of Neuroscience Methods 139(2004)121−143;Lane Psychopharmacology(2008)199:303−312;及びMeredith et al,Acta Neuropathol(2008)115:385−398を参照されたい)。行動課題に関して、本出願人等は、例えば、運動障害、動作緩慢、振戦、及び/又は握力を、PDの各種の段階における化合物の効力の評価のために試験するものである。試験される条件は:HAT活性化剤で治療されたPDマウス及びWT、ベヒクルで治療されたPDマウス及びWTを含む。行動の評価後、マウスを犠牲にし、そしてその脳を凝集したアルファ−シヌクレインタンパク質の測定のために使用するものである。HAT活性化の有効性の対照として、本出願人等は、海馬のアセチル−H4レベルを測定するものである。
【0417】
[00458]動物: パーキンソン病のマウスモデルは、Jackson Laboratory(Bar Harbor ME)から得られるものである。更に、Meredith et al.,Acta Neuropathol(2008)115:385−398を参照されたい。
【0418】
[00459]行動研究: 実験は、可変性を減少するために、オスのマウスのみで盲検で、Fleming et al.,((2004)The Journal of Neuroscience,24(42):9434−9440)及びHwang et al,((2005)The Journal of Neuroscience,25(8):2132−2137)によって記載されている方法によて行われるものである。
【0419】
[00460]ヒストンアセチル化アッセイ: ウェスタンブロットを、液体窒素で瞬間冷凍された海馬から行うものである。組織を、RIPA緩衝液中で均質化し、次いで超音波処理してから、10,000rpmで5分間遠心するものである。全細胞の抽出物を、10−20%勾配のPAGEゲル(Invitrogen)上で電気泳動し、そして次いで免疫ブロットするものである。免疫ブロットのために、抗体を1:1,000の濃度で使用するものである。全ての抗ヒストン抗体は、Milliporeから購入されるものである。免疫ブロットデータは、バンド強度を測定することによって、画像ソフトウェア(NIH ImageJ)を使用して定量化されるものである。
【0420】
[00461]アルファ−シヌクレインレベルの決定は、α−シヌクレインELISAキット(カタログ番号NS400;Millipore,Billerica,MA)を使用し、製造業者の説明書によって、又は標準的な神経病理学的方法(脳組織学)によって、冷凍された脳半球のホモジネートに対して行われるものである。
【0421】
[00462]統計: 実験のマウスは、盲検で行われるものである。結果は、平均の標準誤差(SEM)として表示されるものである。有意性のレベルは、p<0.05に設定されるものである。結果は、主効果として薬物及び遺伝子型による事後補正を伴うANOVAにより解析されるものである。
【0422】
均等物
[00463]当業者は、日常的実験より多くを使用せず、本明細書中に記載される特定の物質及び方法に対する多くの均等物を認識するか、又は確認することが可能であるものである。このような均等物は、本発明の範囲内であり、そして以下の特許請求の範囲によって包含されると考えられるものである。