(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093189
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】対震丁番
(51)【国際特許分類】
E05D 7/04 20060101AFI20170227BHJP
E05D 5/12 20060101ALI20170227BHJP
E05D 3/02 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
E05D7/04
E05D5/12 E
E05D3/02
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-7366(P2013-7366)
(22)【出願日】2013年1月18日
(65)【公開番号】特開2014-136949(P2014-136949A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】501433619
【氏名又は名称】中西産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598081045
【氏名又は名称】フジメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】村松 道浩
(72)【発明者】
【氏名】宮里 彰
(72)【発明者】
【氏名】上原 英哉
【審査官】
小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−180608(JP,A)
【文献】
特開2000−034852(JP,A)
【文献】
実開昭57−071670(JP,U)
【文献】
特開平11−148264(JP,A)
【文献】
再公表特許第2010/089942(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 3/02
E05D 5/12
E05D 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体及び扉に取り付けられる軸側羽根と受側羽根を有し、該羽根には枠体若しくは扉に取り付けるための取付孔を有する羽根板と、羽根板の端部に形成された管部と、該管部の一端を塞ぐ儀星と、管部に挿入される軸と、軸の先端に当接する上座金と、管部内に固定した上止め輪と、上記上座金が上止め輪に当接する方向に上座金を付勢する圧縮コイルばねを具備し、上記軸側羽根と受側羽根間に可動空間を形成した対震丁番であって、上記軸は、先端に受孔を有し、該受孔に長さの異なる調整ピンを選択的に嵌着して長さを変更するようにしたことを特徴とする対震丁番。
【請求項2】
上記調整ピンは、受孔から脱落しないよう摩擦的に保持する保持手段で保持されている請求項1に記載の対震丁番。
【請求項3】
上記軸は下端に下座金を有し、該下座金が管部に固定した下止め輪にぶつかる位置まで上方に圧縮コイルばねで付勢されている請求項1に記載の対震丁番。
【請求項4】
上記軸は、長さの異なる複数の軸本体と、該軸本体に当接し下座金を有する連接部で構成され、該軸本体を管部に摩擦的に保持する保持手段を設け、上記長さの異なる複数の軸本体から選択した軸本体を管部に挿入することを特徴とする請求項3に記載の対震丁番。
【請求項5】
上記軸は、軸本体と、該軸本体に接続可能で下座金を有する連接部と、軸本体と連接部間に挟着される複数の調整座金で構成され、該軸本体を管部に摩擦的に保持する保持手段を設け、上記複数の調整座金から選択した調整座金を挟着することを特徴とする請求項3に記載の対震丁番。
【請求項6】
上記請求項1〜5に記載のいづれかに記載の対震丁番を備え、該対震丁番で枠体に扉を吊り込んだ扉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉を枠体に開閉自在に取り付けるための対震丁番であって、扉を吊り込む際に扉と枠体が干渉しないように対震丁番の軸高さを調節可能にし、地震等で枠体が変形するような外力を受けた場合であっても、変形を吸収して扉を確実に開くことを可能にした対震丁番に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の外力により枠体が変形したときも扉を開くことができるようにした対震丁番が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に示す対震丁番は、
図6に示すように、軸側羽根1と受側羽根2からなり、軸側羽根1は、管部3と、枠体への取付孔4を形成した羽根板5と、上記管部端に固着した儀星6と、管部内に設けられた
下止め輪7と、管部内に上下動かつ回動可能に挿通され下端に
下座金8を一体的に有する軸9と、
下座金が上記
下止め輪にぶつかる位置まで該軸を上方に付勢する圧縮コイルばね10を有している。また、受側羽根2は、上記軸9を相対的に上下動かつ回動可能に挿通する管部11と、扉への取付孔12を形成した羽根板13と、上記管部端に固着した儀星14と、管部内に設けられた
上止め輪15と、上下動可能な
上座金16と、該
上座金が上記
上止め輪にぶつかる位置まで
上座金を下方に付勢する圧縮コイルばね17を有する。そして、
図6(A)に示すように、上記軸側羽根1の軸9の先部を受側羽根2の管部11に挿入し、その先端を上記
上座金16に当接し、通常の状態で軸側羽根1の上端と受側羽根2の下端間に圧縮代となる約10mm前後の可動空間18を設けた状態に組み立てられる。通常は、2〜3組の対震丁番を用いて扉を枠体に取り付ける。地震等で枠体が変形して扉に過荷重が作用すると、軸側羽根1と受側羽根2に組み込まれた圧縮コイルばね10、17が撓み、軸の先端及び
下座金8、
上座金16が儀星6、14側に入り込み、入り込んだ分だけ軸側羽根1上面と受側羽根2下面間の可動空間18が減ることにより、過負荷を吸収して扉を開閉することができる。なお、上記可動空間18の周囲はカバー19で覆われている。対震丁番としては、上記軸側羽根に圧縮ばねを設けずに管部に軸を固定し、受側羽根に対して相対的に上下動かつ回動可能に構成したものも知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
上記のように対震丁番は、軸側羽根と受側羽根間に圧縮代となる可動空間を設けた構成であり、受側羽根と軸側羽根は、この所定の可動空間を存する状態で、正しく枠体及び扉に取り付けられていなければ地震等の際に期待されているような効果を発揮することができない。通常、扉を吊り込むときには、開閉の円滑さ及び体裁を考慮して上枠下面と扉の上面との間、及び下枠の上面と扉の下面の間には数mm程度の間隙が設けられるが、上記取付孔の位置がずれて加工されていたり、取付ねじにより上記各羽根を扉に取り付けるとき、扉に設けた雌ねじの取付位置が所定の位置からずれていると、扉を正しく吊り込むことができず、上記各間隙が小さ過ぎたり、大き過ぎたりし、極端な場合は扉と枠体が干渉して扉が閉じないことも生じる。
【0004】
上記のように扉の取付位置が正しい位置になくて、扉の位置が高すぎたり、低すぎたりしたとき、従来の汎用の旗丁番では、高さを調整できるようにした丁番が知られている(例えば特許文献3、4参照)。例えば特許文献3に記載されているものは、軸管間に複数の調整ピースを収納可能なキャップを設け、この調整ピースの枚数を増減して羽根板の高さを上下に調節できるようにしている。また、特許文献4に記載のものは、軸筒の上部から管内に調整ねじをねじ込み、該調整ねじの下端を球体を介して支軸に当接し、この調節ねじを進退させて羽根板の高さを変化できるように構成している。しかし、このような構成は、上記対震丁番に採用することはできない。すなわち、上記したように対震丁番では、軸側羽根と受側羽根の間に地震等の際に圧縮代となる所定の可動空間を確保しておかなければならないが、上記特許文献3に記載のように羽根板間に挿入される調整ピースの枚数を増減させるという構成では、圧縮代となる可動空間を羽根間に確保することができない。また、上記特許文献4に記載のように管部の上方から調整ねじをねじ込んでその先端を支軸に当接させる構成では、地震の際に圧縮コイルばねが撓んで座金の移動を許容するスペースを確保することができない。このように、従来の汎用旗丁番において知られている調整機構を対震丁番にそのまま採用することはむずかしい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−180608号公報(特許請求の範囲、
図1、
図2)
【特許文献2】特許第4067910号公報(特許請求の範囲、
図1)
【特許文献3】実公平7−54526号公報(実用新案登録請求の範囲、
図1、
図3)
【特許文献4】実開平5−12575号公報(実用新案登録請求の範囲、
図1、
図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、地震等で枠体や扉が変形して扉に過負荷が作用しても、扉を開けることができるようにした対震丁番において、軸側羽根と受側羽根の取付位置が多少上下に変化してもその位置を調整して扉を正しい位置に吊り込んで対震丁番として正しく機能できるようにした調節機能付きの対震丁番を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のように、枠体21に取り付ける軸側羽根1と扉20に取り付ける受側羽根2の位置がずれている場合を検討すると、例えば
図7に示すような状態が考えられる。
図7(A)は、扉20を枠体21に正しく吊り込んだ状態で、扉と上枠の間には間隙Ammが形成され、扉と下枠の間には間隙Bmmが設けられている。
図7(B)に示すように、受側羽根の取付位置は正常で、枠体に取り付けた軸側羽根の取付孔の加工位置若しくは扉に設けた雌ねじの位置が、正常な位置からXmmだけ上に取り付けられていると、扉はXmmだけ上に上がる。したがって、このときは扉の上部の間隙は、A−X=ammとなり、扉の下部の間隙は、B+X=bmmとなり、本来あるべき上部の間隙が狭くなり、下部の間隙が広くなっている。
【0008】
また、
図7(C)に示すように、軸側羽根1の位置は正常で、扉に取り付けた受側羽根2が、正常な位置からXmmだけ下に取り付けられていると、扉はXmmだけ上がる。したがって、扉の上部の間隙はA−X=ammとなり、扉の下部の間隙は、B+X=bmmとなり、本来あるべき上部の間隙が狭くなり、下部の間隙が広くなっている。
図7(D)に示すように、受側羽根2の位置が正常で、枠体21に取り付けた軸側羽根1が、正常な位置からXmmだけ下に取り付けられていると、扉はXmmだけ下に下がる。したがって、扉の上部の間隙はA+X=cmmとなり、扉の下部の間隙は、B−X=dmmとなり、本来あるべき上部の間隙がXmmだけ広くなり、下部の間隙がXmmだけ狭くなっている。その他種々の取付態様により扉の取付位置が変化する。
【0009】
上記のように取付位置が変化した場合、対震丁番では軸側羽根と受側羽根の間に圧縮代となる可動空間を確保しなければならないし、軸端と儀星の間には圧縮コイルばねと上下動可能な座金が設けられているので、従来の汎用旗丁番の場合のような調整機構を設けることができない。そこで、本発明によれば、上記管部に挿入する軸の長さを可変することにより、対処できるようにして上記課題を解決した。
【0010】
すなわち、本発明によれば、枠体及び扉に取り付けられる軸側羽根と受側羽根を有し、該羽根には枠体若しくは扉に取り付けるための取付孔を有する羽根板と、羽根板の端部に形成された管部と、該管部の一端を塞ぐ儀星と、管部に挿入される軸と、軸の先端に当接する
上座金と、管部内に固定した
上止め輪と、上記
上座金が
上止め輪に当接する方向に
上座金を付勢する圧縮コイルばねを具備し、上記軸側羽根と受側羽根間に可動空間を形成した対震丁番であって、上記軸は長さの異なる複数の軸から成り、軸側羽根若しくは受側羽根の取付位置に応じて複数の軸から選択した軸を管部に設けることを特徴とする対震丁番が提供され、上記課題が解決される。
【0011】
上記長さの異なる複数の軸は種々に構成される。すなわち、本発明によれば、上記軸は、
先端に受孔を有し、該受孔に長さの異なる調整ピンを選択的に嵌着して長さを変更するようにした上記対震丁番が提供される。さらに、本発明によれば、上記軸は、長さの異なる複数の軸本体と、該軸本体に当接し
下座金を有する連接部で構成され、該軸本体を管部に摩擦的に保持する保持手段を設け、上記長さの異なる複数の軸本体から選択した軸本体を管部に挿入することを特徴とする上記対震丁番が提供される。また、軸側羽根の管部に軸の基端を固着した対震丁番においては、本発明によれば、管部に軸を固着せずに該管部に着脱可能に構成された長さが相違する複数の軸から成り、該軸を管部に摩擦的に保持する保持手段を設け、長さの異なる複数の軸から選択した軸を管部に挿入することを特徴とする上記対震丁番が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記のように構成され、本発明によれば、枠体及び扉に取り付けられる軸側羽根と受側羽根を有し、該羽根には枠体若しくは扉に取り付けるための取付孔を有する羽根板と、羽根板の端部に形成された管部と、該管部の一端を塞ぐ儀星と、管部に挿入される軸と、軸の先端に当接する
上座金と、管部内に固定した
上止め輪と、上記
上座金が
上止め輪に当接する方向に
上座金を付勢する圧縮コイルばねを具備し、上記軸側羽根と受側羽根間に可動空間を形成した対震丁番であって、上記軸は長さの異なる複数の軸から成り、軸側羽根若しくは受側羽根の取付位置に応じて複数の軸から選択した軸を管部に設けるようにしたので、扉の吊り込み現場で上記受側羽根を引き上げれば軸が露出するから、例えば上記
図7(B)のように軸側羽根の取付位置が正常な位置から上方にXmmずれているときは、Xmm短い軸を選択して使用すれば扉を正常な位置に吊り込むことができる。
図7(C)のように、受側羽根の位置が下方にXmmずれているときも、扉はXmm上がっているから、Xmm短い軸を選択して使用すればよい。また、
図7(D)のように軸側羽根が、下方にXmmずれているときは、扉はXmm下がっているから、Xmm長い軸を選択して使用すれば正常な位置に扉を吊り込むことができる。その他、変位の程度に応じて現場で適宜の軸を選択して使用すれば、羽根の取付位置を正しく調整して扉を枠体に吊り込むことができる。
【0013】
さらに、上記軸の長さを変更する構成として、
軸の先端に受孔を設け、該受孔に長さの異なる調整ピンを選択的に嵌着できるようにすると、現場において一方の羽根を外して軸の先端を露出させ、調整ピンを差し替えることにより、軸の長さを変えることができ、簡単に調整することができる。また、上記軸を、長さの異なる複数の軸本体と、該軸本体に当接し
下座金を有する連接部で構成し、該軸本体を管部に摩擦的に保持する保持手段を設けると、軸が軸本体と連接部に分離されていても、軸本体が管部から簡単に脱落しないので丁番全体が取扱い時にバラバラになることはない。そして、現場で羽根を外して軸本体を露出させ、選択的に長さの異なる軸本体に交換して管部に挿入することにより簡単に軸の長さを調整することができる。
【0014】
また、軸側羽根の管部に軸の基端を固着した対震丁番においては、該軸の固着を止め、軸を管部に摩擦的に保持する保持手段を設けて着脱可能に構成した長さが相違する複数の軸から構成すると、軸本体が管部から簡単に脱落しないので、取り扱い中にバラバラになることはなく、現場において羽根を外して軸を露出し、長さの異なる軸を選択して管部に交換して装着すれば、簡単に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】軸の先端の受孔に調整ピンを選択的に取り付けるようにした実施例を示し、(A)は軸の一部を断面して示す正面図、(B)は受孔の内面に形成した溝に弾性リングを設けた説明図、(C)は受孔の上部を開放して弾性リングを装着した後その周囲をかしめた説明図、(D)はピンに弾性リングを取り付けた説明図、(E)はピンの周囲にステイキングで隆起部を形成した説明図、(F)はローレット加工で隆起部を形成した説明図、(G)は取付孔に軽く圧入できる程度の外径を有する調整ピンを示す説明図。
【
図3】軸を軸本体と連接部に分離した実施例を示し、(A)は従来の軸の説明図、(B)は軸本体と別体の連接部として
下座金だけを形成した説明図、(C)は(B)図に示す
下座金に対向する軸本体の先部をテーパーに形成した説明図、(D)は連接部として
下座金と小径部を設けた説明図、(E)は(D)図に示す軸本体の両端にテーパーを設けかつ軸本体を軸側羽根の管部に脱落防止状態で挿入できる外径にした説明図、(F)は小径部に軸本体に接続するガイド軸を形成し軸本体との間に調整座金を挿入できるようにした説明図。
【
図4】上記長さの異なる軸を選択的に組み込んだ実施例を示し、(A)は上記
図3の(C)図に示す構成の断面図、(B)は上記
図3の(D)図に示す構成の断面図、(C)は上記
図2の(D)図に示す構成の断面図、(D)は軸側羽根に軸を脱落防止状態で着脱可能にした構成を示す断面図。
【
図5】上記
図3の(C)図に示す軸を用いた対震丁番を示し、(A)は分解断面図、(B)は扉に取り付けた状態の断面図、(C)は扉に荷重が作用して圧縮代となる可動空間がなくなった状態の断面図。
【
図6】従来の対震丁番の一実施例を示し、(A)は組立時の断面図、(B)は圧縮代となる可動空間がなくなった状態の断面図、(C)は分解断面図。
【
図7】従来の対震丁番で扉を吊り込んだ状態を示し、(A)は軸側羽根と受側羽根を正常に取り付けた状態、(B)は軸側羽根が少し上方に位置する状態、(C)は受側羽根が少し下方に下がって位置する状態、(D)は軸側羽根が少し下方に下がって位置する状態の各説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、扉20と枠体21の関係を示し、扉20は対震丁番22により枠体21に取り付けられ、ハンドル23で開閉する。この対震丁番の基本的な構成は従来のものと変わらないので、一例として説明した上記
図6を参照して、以下
図6に示す符号と同じ符号を用いて以下説明する。上記したように、対震丁番22は、軸側羽根1と受側羽根2からなり、軸側羽根1は、管部3と、枠体21への取付孔4を形成した羽根板5と、上記管部端に固着した儀星6と、管部内に設けられた下止め輪7と、管部内に上下動かつ回動可能に挿通され下端に
下座金8を一体的に有する軸9と、
下座金が上記
下止め輪7にぶつかる位置まで該軸9を上方に付勢する圧縮コイルばね10を有している。また、受側羽根2は、上記軸9を相対的に上下動かつ回動可能に挿通する管部11と、扉20への取付孔12を形成した羽根板13と、上記管部端に固着した儀星14と、管部内に設けられた
上止め輪15と、上下動可能な
上座金16と、該
上座金が上記
上止め輪にぶつかる位置まで
上座金を下方に付勢する圧縮コイルばね17を有する。上記軸9の先端は、軸胴部をすぼませた形状に形成してあるが、テーパー状に形成してもよく、儀星6、14は、組み立ての手順を考慮して適時に溶接やピン打ち込みにより管部と一体化させている。そして、上記軸側羽根1の軸9の先部を受側羽根2の管部11に挿入し、その先端を上記
上座金16に当接し、通常の状態で軸側羽根1の上端と受側羽根2の下端間に圧縮代となる約10mm前後の可動空間18を形成し、この可動空間18をカバー19で隠した状態で、通常2〜3組の対震丁番を用いて扉20を枠体21に取り付ける。
【0017】
上記軸9は、長さの異なる複数の軸で構成されている。軸の長さを変更するには種々の方法がある。
図2はその一実施例を示し、この方法は軸9の先端に長さの異なる調整ピン24を選択的に装着して軸9の全長を変えるようにしてある。
図2の(A)図を参照し、軸9の先端に受孔25を形成し、この受孔25に調整ピン24を嵌着する。調整ピン24としては、全長が例えば約1〜5mm程度長さの違うものを複数用意しておき、扉の吊り込み現場で、適宜の調整ピン24に差し替えれば、軸9の全長を変化させることができる。この調整ピン24は、受孔25から簡単に脱落しないように摩擦的に保持する保持手段で装着することが好ましい。この保持手段としては、例えば、(B)図に示すように、上記受孔25の内面に環状の取付溝26を形成し、該取付溝26にOリング等の弾性リング27を挿入し、該弾性リング27で調整ピン24の周囲を弾性的に保持することにより脱落防止してある。また、(C)図のように、受孔25の上部を上方に開口し弾性リング27を装着した後にその周囲の側壁28をかしめて固定したり、(D)図のように、調整ピン24に取付溝29を設けて弾性リング27を装着してもよい。
【0018】
さらに、脱落防止の保持手段としては、弾性リングを用いないで
図2の(E)図に示すようにステイキング加工により調整ピン24の周囲に隆起部30を形成して受孔25に軽い圧入状態で挿入したり、(F)図に示すようにローレット加工により隆起部30を形成してもよく、所望により(G)図に示すように、調整ピン自体の外径31を受孔25に軽く圧入できる程度の嵌めあい方式にして保持手段としてもよい。
【0019】
図2に示す実施例は軸9の下端に
下座金8を一体的に形成しているが、軸9を、軸本体32と、
下座金8を有する連接部33に分離し、軸本体32の長さを変えて軸の全長を変えるようにすることもできる。上記
図6に示す対震丁番は軸側羽根が簡単に分離しないように、軸の下方部分に小径部を設けてその下端に
下座金8を軸9と一体的に形成してある(
図3A)。この軸9を、
図3の(B)図に示すように、軸本体32と、
下座金8で構成された連接部33に分離し、全長が例えば約1〜5mm程度長さの異なる軸本体32を複数用意しておく。そして、この軸本体は、上記調整ピンの場合と同じように、脱落防止用の保持手段で保持することが好ましい。(B)図に示す保持手段は、軸本体32に取付溝34を設けてOリング等の弾性リング27を装着し、管部から脱落しないようにしてある。この弾性リング27を設ける位置は、軸側羽根1の管部3に対応する位置が好ましい。このようにすれば、軸本体32を選択的に変更することにより軸9の全長を変えることができる。
【0020】
上記
図3の(B)図に示す軸本体32は、一端がテーパー状に形成され、他端の小径部が軸本体の胴部と同じ円柱状に形成されているが、(C)図に示すように、連接部に対向する軸本体32の先端もテーパー状に形成していずれの方向でも軸本体32を管部に組み込むことができるようにしたり、(D)図に示すように、小径部35と
下座金8を連接部33としたり、軸本体32の一端及び小径部35に対向する軸本体の先端を(E)図に示すようにテーパー状にしてもよい。なお、(E)図
の実施例では、軸側羽根に挿入される軸本体32の外径を、管部に軽く圧入できる程度のはめあい方式に形成して脱落防止の保持手段としているが、保持手段としては、ステイキングやローレット加工で周面に隆起部を形成して管部から脱落しないようにしたり、上記(C)図のように弾性リングを装着して保持手段としてもよい。
【0021】
図3の(F)図に示す実施例は、連接部33の小径部35にガイド軸36を突設するとともに軸本体32の下端に該ガイド軸36を取り付ける取付孔37を形成し、連接部33と軸本体32間に調整座金38を挟着できるようにしたものである。そして、調整座金38として厚さ約1〜3mm程度
のものを複数枚用意しておき、現場で増減して装着するようにしておけば、軸本体32の長さを変えなくても軸9の全長を変化させることができる。
【0022】
上記のようにして軸の長さを変えることができるが、これらの軸を有する対震丁番を上記
図6に示す対震丁番に組み込んだ状態の一例が
図4に示されている。
図4の(A)図は、上記
図3の(C)図に示すように形成された長さの相違する複数の軸本体32から最適長さの軸本体を選択して組み込んだものである。また、
図4の(B)図は
図3の(D)図に示す構成の複数の軸本体32を選択して組み込んだもの、
図4の(C)図は上記
図2の(D)図に示すように長さの相違する調整ピン24から最適の調整ピンを選択して受孔25に組み込んだものである。
【0023】
上記特許文献2のように、軸の基端を軸側羽根に固定するようにした対震丁番の場合、上記
図2に示す実施例のように軸9の先端に長さの異なる調整ピン24を交換して着脱できるようにしてもよいし、
図4の(D)図に示すように軸の固定を止め、軸として例えば約1〜5mm程度長さの異なる複数の軸39を用意し、現場で該軸39を選択して交換できるようにしてもよい。該軸は、脱落防止用の保持手段で保持されている。
図4(D)に示す実施例では、軸側羽根の管部に軽く圧入できる程度の外径のはめあい方式に形成して嵌合するようにしてあるが、ステイキングやローレット加工で周面に隆起部(図示略)を形成して管部に挿入したり、その他管部から脱落しないような種々の保持手段を用いることができる。
【0024】
上記
図4の(A)図に示す対震丁番の分解図が
図5の(A)図に示されており、この丁番は、組立状態では(B)図に示すように、軸側羽根1と受側羽根2間に可動空間18が形成され、地震等により過負荷が扉に作用したときには、(C)図に示すように上記可動空間18がなくなる方向に軸側羽根1及び又は受側羽根2を移動させることにより扉を開くことができる。
【0025】
上記各実施例においては、軸の長さを種々の方法により変えているが、これらの方法を適宜組み合わせて構成することもできる。
【符号の説明】
【0026】
1 軸側羽根
2 受側羽根
9 軸
18 可動空間
24 調整ピン
32 軸本体
33 連接部
38 調整座金