特許第6093216号(P6093216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6093216金属管用塗料組成物およびそれを塗布してなる金属管
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093216
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】金属管用塗料組成物およびそれを塗布してなる金属管
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20170227BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D133/00
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-60903(P2013-60903)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-185238(P2014-185238A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098464
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 洌
(74)【代理人】
【識別番号】100149630
【弁理士】
【氏名又は名称】藤森 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100110984
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 敬子
(74)【代理人】
【識別番号】100111279
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 眞弘
(72)【発明者】
【氏名】八尾 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】出口 隆亮
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−177180(JP,A)
【文献】 特開平06−025605(JP,A)
【文献】 特開2011−006612(JP,A)
【文献】 特開2002−130179(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0083021(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂および溶剤を含む金属管の接水部分用の塗料組成物であって、該溶剤を該塗料組成物中40〜60重量%含み、該溶剤が、水不溶性で低揮発性の溶剤(a)を主成分とせず、水への溶解度が100g/L以上でありかつ低揮発性の水溶性溶剤(b)を少なくとも25重量%含有し、かつ水を含まないものであることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
溶剤中、高揮発性溶剤(c)を少なくとも3重量%含む請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記樹脂が(メタ)アクリル樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記金属管が上水道管であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4記載の塗料組成物を接水部分に塗布した金属管。
【請求項6】
前記金属管が鋳鉄管であり、かつ塗装領域が管の継手部である請求項5記載の金属管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属管の接水部分用の塗料組成物および該組成物を接水部分に塗布してなる金属管に関する。より詳細には、本発明は、上水道管などとして使用される鋳鉄管用の、水溶性溶剤を用いた低臭気型塗料組成物および該組成物を接水部分に塗布してなる鋳鉄管に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水道管、貯水管など飲料水の移送、貯蔵などには、鋳鉄管や鋼管などの金属管が用いられている。このような金属管は、地中をはじめ様々な条件下で使用されるものであり、腐食を防止するためにその管外面には有機溶剤を含む防食用樹脂系塗料が被覆されている。また、水道管などに使用される鋳鉄管は、一般に継手部として一端に挿口、もう一端に他の管体の挿口が挿入される受口を備えた管構造を有し、この受口内面および挿口外面の防食処理としても、同様の有機溶剤系塗装が施されている。
【0003】
しかしながら、継手部の受口内面および挿口先端外面は使用に際し管内を通過する水などが塗膜に接触する接水部分となるため、このような防食処理の結果、塗装後に有機溶剤が充分に揮発せず塗膜中に残存した場合、管内には、使用した有機溶剤に起因する溶剤臭が残るという問題があり、特に飲料水に使用される管では溶剤臭を除去することが求められている。
【0004】
この溶剤臭に対しては、充分に乾燥することが考えられるが、出荷までの時間が長期間となり、保管場所の問題など経済的に不利益な点が多く、これまで種々の対策が検討されてきた。
【0005】
たとえば、溶剤系塗料では、トルエンやキシレンなどの有機溶剤に加え、炭素数9〜10のアルキルシクロヘキサンとからなる溶剤を用い、それらの組合せにより溶剤の揮発の促進を意図した塗料が検討されているが、実用化には至っていない(特許文献1)。
【0006】
また、臭気の原因であるVOC(揮発性有機化合物)対策として、塗料の水系化が進んでいるが、水系塗料は塗装温度や下地調整などに制約があり、一部でしか採用されていない(特許文献2および3)。これに対し溶剤系塗料は、VOCや臭気の問題があるが、比較的塗装に制約が少なく需要がいまだに多いという現状がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−6612号公報
【特許文献2】特開2005−213274号公報
【特許文献3】特開2011−72966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、金属管用塗料に求められる諸機能を損なうことなく、溶剤臭を抑え、乾燥時間を短縮できる環境負荷が小さい溶剤系の金属管の接水部分用塗料組成物およびそれを接水部分に塗布してなる金属管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意検討した結果、金属管の接水部分の防食処理として、樹脂および溶剤を含む金属管の接水部分用塗料組成物において、溶剤として、水不溶性で低揮発性の溶剤を主成分とせず、溶剤中の水溶性溶剤の比率を25重量%以上としかつ溶剤として水を含まない溶剤系塗料組成物を用いることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、樹脂および溶剤を含む金属管の接水部分用の塗料組成物であって、該溶剤が、水不溶性で低揮発性の溶剤(a)を主成分とせず、水溶性溶剤(b)を少なくとも25重量%含有し、かつ水を含まないものであることを特徴とする塗料組成物に関する。
【0011】
本発明の金属管の接水部分用塗料組成物において、溶剤中、高揮発性溶剤(c)を少なくとも3重量%含むことが好ましい。
【0012】
本発明の金属管の接水部分用塗料組成物において、樹脂が(メタ)アクリル樹脂であることが好ましい。
【0013】
本発明の金属管の接水部分用塗料組成物において、適用する金属管が上水道管であることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、樹脂および溶剤を含む金属管の接水部分用の塗料組成物であって、該溶剤が、水不溶性で低揮発性の溶剤(a)を主成分とせず、水溶性溶剤(b)を少なくとも25重量%含有し、かつ水を含まないものであることを特徴とする塗料組成物を接水部分に塗布した金属管に関する。
【0015】
本発明の金属管の接水部分用塗料組成物を鋳鉄管に塗布する場合、塗装領域が管の継手部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の金属管の接水部分用塗料組成物によれば、密着性、耐腐食性、耐水性などの金属管用塗料に求められる諸機能を損なうことなく、塗料中の臭気の強い揮発性有機溶剤の量を低減することができ、塗料自体および塗膜の臭気を軽減することができる。また塗膜中に水溶性溶剤が残留しても、水による洗浄で洗い流すことができる。この際、残留揮発溶剤成分をも水溶性溶剤と共に水で洗い流すことができるため、溶剤臭を抑えることができる。水道用鋳鉄管の場合には、水道管としての使用に際し、洗管処理は必須工程であるため、溶剤除去のための塗膜の乾燥時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】鋳鉄管の継手部の一例の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の金属管の接水部分用塗料組成物は、樹脂および溶剤を含み、該溶剤が、水不溶性で低揮発性の溶剤(a)を主成分とせず、水溶性溶剤(b)を少なくとも25重量%含有し、かつ水を含まないものであることを特徴とする。
【0019】
本発明の塗料組成物が塗布される金属管は、金属製のものであれば特に限定されないが、たとえば鋳鉄管、鋼管、銅管などの金属管が挙げられる。金属管には、その表面にエポキシ系、ラテックス系または亜鉛溶射などの下地処理が施されていても良い。本発明の金属管の用途としては、上下水道用、貯水用など特に限定されるものではないが、本発明の塗料組成物の水洗によるさらなる効果を考慮すると、上水道用、貯水用などの飲料水用の鋳鉄管であることが特に好ましい。
【0020】
具体的には、鋳鉄管は、上下水道管などに広く用いられ、様々な埋設環境で使用されることが多く、特に管外面の耐久性、耐食性の向上が求められている。そのため、管外面の防食層として、たとえば日本ダクタイル鉄管協会規格JDPA Z 2010「ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗装」に規定されている亜鉛系プライマーを用いることが多い。また、亜鉛系プライマーの上塗り塗料として、たとえば日本水道協会規格JWWA K 139「水道用ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗料」に規定されている塗料を用いることが多い。本発明の塗料組成物は、この鋳鉄管の上塗り塗料としての使用に適したものである。
【0021】
本明細書において、「金属管の接水部分」とは、使用に際して水に接する部分を意味し、具体的には、水道管や貯水管の管内面のみならず、金属管を連結する場合には、その連結部の水に接する部分をも包含する。本発明の塗料組成物の特に好ましい塗布領域としては、管外面と同様の防食処理を必要とし、かつ使用に際しては水と接することとなる、たとえば水道管に使用される鋳鉄管の継手部があげられる。
【0022】
鋳鉄管の構造は、通常、直管または異形管である管部、および両端に他管との継手部を有する。継手部とは、一方の管の挿口1とその挿口が差し込まれて固定されるための他方の管の受口2の両方を意味する。本発明における接水部分とは、図1においては、ドットで表した部分、すなわち管体内面3ならびに継手部の挿口内面4およびゴム輪5などの止水部より先端の挿口先端外面6および受口内面7となる。本発明の塗料組成物の塗装領域としては、接水部分であれば特に限定されるものではないが、前述したように管体の外面と同様の塗装を必要とする継手部のうちの挿口先端外面6および受口内面7が洗管処理により必然的に本発明の効果を発揮できる点において最も適している。外面塗装における塗膜の膜厚は、直管で100μm以上、異形管で80μm以上が目標とされる。
【0023】
水道用鋳鉄管については、日本水道協会規格JWWA K 139に「通水後の水質、特に臭気を考慮して、工場出荷までに十分乾燥しなければならない」と明記され、水中濃度の基準値としてトルエン0.2mg/L以下、キシレン0.4mg/L以下との具体的な数値が掲げられている。
【0024】
本明細書において、「溶剤系塗料組成物」や「溶剤系」との用語は、水性塗料と区別するために用いられるものであり、溶剤として水を含まないものを意味する。
【0025】
本明細書において、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」などの用語は、それぞれ「メタクリル」と「アクリル」、「メタクリレート」と「アクリレート」の総称である。
【0026】
本明細書において、「(メタ)アリル」とは、「アリル」および「メタリル」の総称である。
【0027】
本発明に使用される樹脂は、水道用として必要な物性を備え、水質に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではなく、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂などを使用することができる。
【0028】
<(メタ)アクリル樹脂>
本発明の金属管用塗料組成物に使用される(メタ)アクリル樹脂は、該組成物の主成分となるものであり、塗料組成物中に15〜50重量%含まれ、より好ましくは20〜30重量%含まれる。(メタ)アクリル樹脂はビニル系共重合体(A)とビニル系共重合体(B)とを含有する。ビニル系重合体(A)とビニル系重合体(B)との重量比は、好ましくは50.0:50.0〜99.9:0.1、より好ましくは66.7:33.3〜99.9:0.1、最も好ましくは75.0/25.0〜99.9:0.1である。ビニル系重合体(A)の重量比が50.0未満になると、塗膜硬度が低くなるため、表層用塗膜としては不適当となり、99.9を超えると、ビニル系重合体(B)の使用量が少なくなりすぎるため、層間の親和性を向上させ、付着性を向上させる効果が不充分になる。
【0029】
ビニル系重合体(A)は、主として基材の表層で硬質の樹脂層を形成し、耐腐食性、塗装後の耐ブロッキング性、耐候性、耐アルカリ性および耐水性を付与するために使用される成分である。
【0030】
ビニル系重合体(A)の示差熱走査熱量計(DSC)により測定されるガラス転移温度(Tg)は特に限定されないが、塗膜の硬質化およびクラック防止の観点から40〜110℃であることが好ましい。
【0031】
ビニル系重合体(A)の数平均分子量は特に限定されないが、耐水性、耐アルカリ性、塗膜硬度を考慮すると高分子量であることが良く、塗装作業性、塗膜外観を考慮すると低分子量であることが良いことから、10,000〜50,000であることが好ましい。
【0032】
ビニル系重合体(A)を構成する単量体としては、たとえば下記の単量体(a)〜(i)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
単量体(a):スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンまたはジビニルベンゼンなどの各種スチレン系芳香族モノマー(芳香族ビニル系モノマー)。
【0034】
単量体(b):メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜13のアルキル基を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル基または芳香族基などを有する(メタ)アクリレートなどの各種(メタ)アクリレート。
【0035】
単量体(c):ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネートなどのマレイン酸、フマル酸、イタコン酸などによって代表される各種のジカルボン酸と炭素数1〜4の1価アルコールとのジエステル。
【0036】
単量体(d):2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート;ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、モノ−2−ヒドロキシエチル−モノブチルフマレートなどの各種ジカルボン酸の水酸基含有エステル;プラクセルFA、プラクセルFM(以上、ダイセル化学工業(株)製のカプロラクトン付加モノマーの商品名)などに代表される、いわゆるε−カプロラクトン系のモノマーなどの各種α,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロアルキルエステル。
【0037】
単量体(e):酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ベオバ(商品名、シェル社製、分岐状脂肪族モノカルボン酸のビニルエステル)などの各種ビニルエステル。
【0038】
単量体(f):グリシジル(メタ)アクリレート、(β−メチル)グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテルなどの各種グリシジル基含有ビニルモノマー。
【0039】
単量体(g):(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸などの各種不飽和カルボン酸;前記不飽和ジカルボン酸と1価アルコールとのモノエステル(ハーフエステル)などの種々のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸。
【0040】
単量体(h):ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの各種ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのN−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニル(メタ)アクリレート、ピペリジニルエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有ビニルモノマー。
【0041】
単量体(i):上記単量体(a)〜(h)と共重合性を有する不飽和結合含有ポリエステル。特に代表的なものとしては、特公昭45−22011号公報、特公昭46−20502号公報、特公昭44−7134号公報、特開昭48−78233号公報または特開昭50−58123号公報などに開示されているような、共重合性不飽和結合を有する成分を必須として、他の成分と反応させることによって、樹脂骨格中に共重合性不飽和結合を有する不飽和結合含有ポリエステル。
【0042】
ビニル系重合体(A)を製造するにあたり、単量体(a)〜(i)はそれぞれ単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0043】
単量体(a)〜(i)から製造されるビニル系重合体(A)の具体例としては、メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸/ジメチルアミノエチルメタクリレート/(不飽和ポリエステル)共重合体で、DSCによる実測Tgが60℃、数平均分子量が20,000のものをはじめ、スチレン/メチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体で、DSCによる実測Tgが80℃、数平均分子量が15,000のものや、メチルメタクリレート/t−ブチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体で、DSCによる実測Tgが70℃、数平均分子量が15,000のものや、スチレン/メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/ジブチルフマレート/グリシジルメタクリレート共重合体で、DSCによる実測Tgが60℃、数平均分子量が30,000のものなどが挙げられる。
【0044】
ビニル系重合体(A)の製造は懸濁重合法や塊状重合法などが採用されるが、溶液重合法または溶液ラジカル重合法によって製造することが簡便であり、また、懸濁重合法で多用される界面活性剤のような通常の有機溶剤に溶解しがたい不純物が混入する余地がなくなるため好ましい。
【0045】
溶液重合法によりビニル系重合体(A)を製造する際に使用される有機溶剤としては、たとえばトルエン、キシレンや、ソルベッソ100、ソルベッソ150(以上、エクソン社製の商品名)などの各種芳香族炭化水素系溶剤;スワゾール310(商品名、丸善石油化学(株)製)、LAWS(商品名、シェル社製)などの各種脂肪族−芳香族炭化水素混合溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどの各種エステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン系溶剤;EEP(商品名、イーストマン・コダック社製)、ブチルセロソルブなどの各種のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノールなどの各種アルコール系溶剤などが挙げられる。これらは単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0046】
溶液ラジカル重合法に使用されるラジカル重合開始剤としては、たとえばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキシド(BPO)、t−ブチルパーベンゾエート(TBPB)、t−ブチルハイドロパーオキシド(TBPO)、ジ−t−ブチルパーオキシド(DTBPO)、クメンハイドロパーオキシド(CHP)などが挙げられる。
【0047】
本発明の(メタ)アクリル樹脂に含有されるビニル系重合体(B)は、主として硬質のビニル系重合体(A)に相溶し、基材や下地に存在する水酸基と反応性を有し、また比較的軟質で粘着性を有するので、トップコートとこれらの間の付着性向上のために使用される成分である。また、ビニル系重合体(A)と同様に耐水性、耐アルカリ性および耐候性に優れる。
【0048】
ビニル系重合体(B)は加水分解性シリル基を含有し、DSCにより測定されたTgが−20〜30℃である以外は特に限定されるものではないが、層間付着向上のための粘着性付与の点からは低分子量であることが良く、耐水性、耐アルカリ性、耐候性の点からは高分子量であることが良いことから、数平均分子量は2,000〜10,000であることが好ましい。DSCにより測定されたビニル系重合体(B)のTgは、付着性および耐水性を考慮して−20〜30℃であることが好ましい。
【0049】
加水分解性シリル基とは、ケイ素原子に加水分解性基、たとえばアルコキシ基、アシロキシ基、ハロゲン原子などが結合した基である。ビニル系重合体(B)中における加水分解性シリル基を含有するビニル系単量体単位の含量は、付着性向上の観点から5〜80重量部であることが好ましい。
【0050】
ビニル系重合体(B)を構成する単量体としては、前記単量体(a)〜(i)および単量体(j):ビニルトリエトキシシラン、メチルビニルジエトキシシランなどのビニル基含有アルコキシシラン;γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのメタクリロキシ基含有アルコキシシランなどの加水分解性シリル基含有重合性不飽和単量体;KR−215、X−22−5002(以上、信越化学工業(株)製の商品名)などの各種シリコン系モノマーなどが挙げられる。単量体(j)は単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。なかでも、同時に使用するビニル系モノマーとの共重合性に優れるという理由からγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0051】
単量体(a)〜(j)から製造されるビニル系重合体(B)の具体例としては、n−ブチルアクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合体で、DSCによる実測Tgが20℃、数平均分子量が5,000のものをはじめ、スチレン/ジブチルフマレート/ビニルトリエトキシシラン共重合体で、実測Tgが25℃、数平均分子量が4,000のものや、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合体で、実測Tgが10℃、数平均分子量が5,000のものや、n−ブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/ジブチルフマレート/ビニルトリエトキシシラン/γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合体で、実測Tgが20℃、数平均分子量が5,000のものなどが挙げられる。
【0052】
加水分解性シリル基を導入したビニル系重合体(B)の製造は、加水分解性シリル基を含有しない単量体と、これらと共重合性を有する加水分解性シリル基含有単量体とを共重合させる方法;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどの加水分解性シリル基含有シランカップリング剤を、ビニル系重合体分子中に含まれる官能基と反応させることによって加水分解性シリル基を導入する方法などによって製造される。
【0053】
加水分解性シリル基を含有しない単量体と、これらと共重合性を有する加水分解性シリル基含有単量体とを共重合させる方法の場合、ビニル系重合体(A)の製造の場合と同様にして製造すれば良い。
【0054】
一方、加水分解性シリル基含有シランカップリング剤を、ビニル系重合体分子中に含まれる官能基と反応させることによって加水分解性シリル基を導入する方法の場合、ビニル系重合体をビニル系重合体(A)の場合と同様にして製造した後、加水分解性シリル基含有シランカップリング剤に含まれる加水分解性シリル基以外の官能基と、ビニル系重合体に含まれる官能基とを、必要に応じて触媒を使用して加熱などの方法によりグラフトさせることにより製造すれば良い。
【0055】
加水分解性シリル基含有シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのほか、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基含有アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有アルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランのようなクロロ基含有アルコキシシランなどが挙げられる。
【0056】
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの反応生成物からなるエポキシ樹脂、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの反応生成物からなるエポキシ樹脂に脂肪酸を反応させたもの、エピクロロヒドリンとビスフェノールFとの反応生成物からなるエポキシ樹脂、エピクロロヒドリンとビスフェノールFとの反応生成物からなるエポキシ樹脂に脂肪酸を反応させたもの、スチレン、酢酸ビニルまたはブタジエンを含むアクリレートもしくはメタクリレート共重合物、キシレン樹脂、トルエン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、クマロンインデン樹脂、カルボキシル化アクリル変性SBR樹脂などが挙げられる。
【0057】
<溶剤>
本発明の金属管の接水部分用塗料組成物に使用される溶剤は、不揮発分および粘度の調整のために用いられるものであり、水不溶性で低揮発性の溶剤(a)を主成分とせず、水溶性溶剤(b)を少なくとも25重量%含有し、かつ水を含まないものである。溶剤は塗料組成物中に好ましくは25〜85重量%含まれ、より好ましくは40〜60重量%含まれる。
【0058】
本発明に用いられる水溶性溶剤(b)は、低級アルコールや、プロピレングリコールモノエーテルなど、水に良く溶解する溶剤、たとえば水への溶解度が25℃で水1Lに対しておおよそ100g以上であり、好ましくは混和レベルで水に溶解する溶剤である。また、その溶剤自体の臭気が弱いものがより好ましい。さらに、本発明に用いる水溶性溶剤としては、酢酸ブチルと同程度またはそれ以下の蒸発速度を有する低揮発性溶剤を使用することが好ましい。
【0059】
水溶性溶剤(b)の例としては特に限定されるものではないが、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、Sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどの低級アルコール;メチルエチルケトン;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどのプロピレングリコールモノエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノエーテル;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのジエチレングリコールモノエーテル;プロピレングリコール;モノエチレングリコールなどが挙げられる。これらのなかでも、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、モノエチレングリコール、PGMMEなどの低揮発性溶剤を使用することが好ましい。これらの溶剤は、単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0060】
溶剤中の水溶性溶剤(b)の割合は、25重量%以上であり、50重量%〜99重量%が好ましい。水溶性溶剤の割合が25重量%より少ないと、水洗によるトルエンなど樹脂中に含まれるかまたは併用する高揮発性溶剤の除去促進効果が得られにくい傾向がある。
【0061】
溶剤には水溶性溶剤(b)以外に塗料の分野において通常使用されるその他の溶剤を含有しても良く、たとえば、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン;1−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール;エチル−3−エトキシプロピオネート(EEP:商品名、イーストマン・コダック社製)などのエーテルなどを挙げることができる。これらは、作業性、塗料安定性、溶解性、蒸発速度、安全性、法規制などを考慮して、単独でまたは2種以上を混合して適宜使用される。これらのなかでも、水溶性溶剤(b)と共に、特に高揮発性溶剤(c)を併用することが好ましい。本発明における高揮発性溶剤(c)とは、酢酸ブチルより速い蒸発速度を有するものを意味する。具体的には、たとえばトルエン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。水溶性溶剤(b)に高揮発性溶剤(c)を併用することにより、揮発性に優れた高揮発性溶剤(c)が優先的に揮発し、水溶性溶剤(b)は水での洗浄により洗い流すことができる。
【0062】
最も好ましい組合せとしては、揮発性に乏しい低揮発性水溶性溶剤、たとえばPGMMEと、高揮発性の水不溶性溶剤、たとえばトルエンとの組合せが挙げられ、その効果が本願発明の実施例により明確に示されている。
【0063】
さらに、本発明の塗料組成物の溶剤の特徴の1つは、水不溶性で低揮発性の溶剤(a)を主成分としないことである。水不溶性で低揮発性の溶剤(a)とは、水に対してほとんど溶解せず、たとえば水への溶解度が25℃で水1Lに対しておおよそ500mg以下であり、酢酸ブチルと同程度またはそれ以下の蒸発速度を有する溶剤を意味する。具体的には、キシレンなどの芳香族炭化水素;たとえばソルベッソ100、ソルベッソ150などの芳香族炭化水素系溶剤;スワゾール1000、スワゾール1500、スワゾール1800(いずれも商品名、丸善石油化学(株)製)、LAWS(商品名、シェル社製)などの脂肪族−芳香族炭化水素混合物を挙げることができる。これらは、作業性、塗料安定性、溶解性、蒸発速度、安全性、法規制などを考慮して、単独でまたは2種以上を混合して適宜使用することができるが、主成分としては使用することができない。これらの水不溶性で低揮発性の溶剤を多く含有すると、水洗時までに水不溶性の溶剤が多く残留してしまい、水溶性溶剤と共に総て洗い流すことが難しくなる。したがって、これらの水不溶性で低揮発性の溶剤の溶剤中の割合は、合わせて10重量%以下、好ましくは5重量%以下、最も好ましくは1.0重量%以下であり、含有しないことが最も好ましい。
【0064】
<その他の成分>
本発明の金属管の接水部分用塗料組成物は、上記成分のほかに必要に応じて水質に影響を与えない範囲の公知の顔料、添加剤などを添加することができる。
【0065】
本発明の金属管の接水部分用塗料組成物は、塗装作業性を確保するために、塗装時のチクソ係数を2.0〜4.0に調整することが望ましい。塗装時粘度のチクソ係数が2.0未満の場合は浸漬塗装においてタレのため必要膜厚が塗装できなくなり、また4.0を超えるとスプレー塗装時に流動性(レベリング性)が低下するため塗装後の仕上がり外観が低下する。チクソ係数の調整は、主として粘性調整剤や、顔料の種類および添加量によってなされるが、一般的には塗膜性能を確保するため、顔料の種類および添加量が決定された後、チクソ性が不足している分だけ粘性調整剤を添加する方法がとられる。
【0066】
また、本発明の金属管の接水部分用塗料組成物は、塗装作業性を確保するために、塗装時の塗料不揮発分を30〜50重量%に調整することが好ましい。塗料不揮発分とは、塗料を一定条件下で加熱したときに塗料成分の一部が揮発または蒸発した後に残ったもの(塗膜)の重さを、塗料の元の重さに対する百分率で表したものを意味し、樹脂中の固形分や顔料などである。塗装時不揮発分が30重量%未満では浸漬塗装において厚膜塗装が困難になり、50重量%を超えると粘度が高くなりすぎるため、スプレー塗装作業性、ローラー塗装作業性が低下し、好ましくない。
【0067】
本発明の金属管用塗料組成物に使用される顔料は、塗料に充分な着色性を付与するためのものであり、含量は特に限定されないが、塗料組成物中に5〜35重量%含まれることが好ましく、15〜30重量%含まれることがより好ましい。
【0068】
顔料としては、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック(たとえば、商品名 MA100、三菱化学(株)製など)、シアニンブルー、シアニングリーンなどの着色顔料;炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム(たとえば、土屋カオリン工業(株)製、平均粒径0.5μmなど)、クレーなどの体質顔料;燐酸亜鉛、燐酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウムなどの防錆顔料などが挙げられる。これらは単独で使用しても良く、必要により2種以上を混合して使用しても良い。
【0069】
その他の添加剤としては、シリコーンや有機高分子からなる消泡剤;シリコーンや有機高分子からなる表面調整剤;アマイドワックス、有機ベントナイトなどからなる粘性調整剤(タレ止め剤);シリカ、アルミナなどからなる艶消し剤;ポリカルボン酸塩などからなる分散剤;ベンゾフェノンなどからなる紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、フェノール系などの酸化防止剤;ワックスなど、公知の添加剤を挙げることができる。これらは必要により単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0070】
<塗料組成物の製造方法>
本発明の金属管用塗料組成物の製造には塗料製造に慣用されている設備を使用する。製造方法は特に限定されないが、たとえばビニル重合体(A)およびビニル重合体(B)からなる(メタ)アクリル樹脂を調製し、それに顔料、添加剤(顔料分散剤、粘性調整剤)、溶剤などを添加した後、ロールミル、SGミル、ディスパーなどで分散処理することによって所望の塗料組成物が得られる。
【0071】
本発明の金属管用塗料組成物を金属管に塗布する方法は特に限定されないが、刷毛塗装、ローラー塗装、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、浸漬塗装、シャワーコート塗装などの方法で塗布される。
【0072】
本発明の金属管用塗料組成物が塗布された金属管は、塗料中のトルエンなどの高揮発性溶剤がまず先に揮発する。また塗膜中に水溶性溶剤が残留しても、管内を洗管する際に溶出される。その際、残留しているトルエンやキシレンなどの揮発性溶剤を伴い排出される。したがって、水道管や貯水管などに使用しても、塗膜に接触した水から溶剤臭はほとんど感知されず、もちろん水質に悪影響を及ぼさないという効果を有する。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
以下の実施例において製造する塗料組成物は、日本ダクタイル鉄管協会規格JDPA Z 2010「ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗装」平成21年2月12日改正に規定されている3.1.3アクリル樹脂塗料に準ずるものである。
【0075】
実施例および比較例において使用した成分の詳細をつぎに示す。
・(メタ)アクリル樹脂:メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート/メタクリル酸/(不飽和ポリエステル)共重合体(不揮発分:50.0%、25℃におけるガードナー粘度:Z2、酸価:1.5、数平均分子量:15,000、DSCによる実測Tg:60℃)80重量部と、n−ブチルアクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合体(不揮発分:50.0%、25℃におけるガードナー粘度:D、酸価:0.5、数平均分子量:5,000、DSCによる実測Tg:20℃)20重量部との混合物
・顔料:カーボンブラックおよび硫酸バリウム
・アマイドワックス
・PGMME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
・MIBK:メチルイソブチルケトン
・IPA:イソプロピルアルコール
【0076】
各溶剤の物性を以下の表1に示す。
【表1】
【0077】
実施例1〜5および比較例1
表2の組成にしたがって、塗料組成物を調製した。
【0078】
<臭気評価>
(1)揮散性試験
実施例1〜5および比較例1において製造した各塗料を、両面すりガラスのガラス板(200×70×2mm)に刷毛塗りで塗装し(目標20μm)、臭気評価を行った。
具体的には、常温で各所定時間(24および48時間)乾燥させたガラス板を、ステンレスバット(容量4L)に密封して24時間後に容器中の溶剤揮散濃度を測定し、臭気を評価した。なお、管継手部における塗料の接水が最大となる直径75mmの鋳鉄管の接水面積比(管内面の塗装面積/管内総容積)により、塗装面積を72cm2とした。
【0079】
結果を表2に示す。
臭気の評価基準は、つぎのとおりである。
◎:臭気なし
○:微溶剤臭
○△:弱溶剤臭
△:溶剤臭
×:強溶剤臭
【0080】
表2に示す結果から、比較例1と比べて実施例1〜5ではすべてのサンプルで臭気について効果が見られた。塗布量換算膜厚を考慮すると、実施例2および3の効果が大きかった。
【0081】
(2)浸出試験
実施例1〜5および比較例1において製造した各塗料を、ラテックス系の下塗りの無いもの(A)およびあるもの(膜厚60μm)の両面すりガラスのガラス板(200×70×2mm)に刷毛塗りで塗装した(下塗りなし(A)は膜厚80μmで、下塗り有り(B)は膜厚20μm)。そして、JWWA Z 108水道用資機材−浸出試験方法に準拠し、塗装されたガラス板を1日、3日および7日間乾燥させたものをそれぞれ供試水1Lに16時間浸漬し、供試水中の溶剤の濃度を測定し、臭気を評価した。なお、管継手部における塗料の接水が最大となる直径75mmの鋳鉄管の接水面積比(管内面の塗装面積/管内総容積)により、塗装面積を72cm2とした。
【0082】
結果を表2に示す。臭気の評価基準は、前記(1)揮散性試験と同じである。また、残留塩素の減量はいずれの場合も0.1mg/L以下であった。
【0083】
【表2】
【0084】
表2の結果から、実施例1〜5では、比較例1に対していずれも臭気が低減しており、本発明の効果が確認された。
【0085】
<揮発分残存率測定試験>
実施例3および比較例1において製造した各塗料を、両面すりガラスのガラス板(200×70×2mm)に刷毛塗りで塗装し、塗膜の重量変化から溶剤の揮発速度の評価を行った。塗装量からの膜厚は、それぞれ21.5および21.1μmで同程度であった。
具体的には、常温で各所定時間(1、3、5、24、48および72時間)乾燥させたガラス板の重量を測定し、その後50℃で60分強制乾燥したガラス板の重量を差し引き揮発分の残存率を算出した。結果を表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
表3の結果から、キシレンおよびPGMMEの蒸発速度が同程度であるにも関わらず、実施例3の溶剤の揮散が非常に速いことがわかる。このことから、PGMMEの樹脂との相溶性が影響していると考えられる。
【符号の説明】
【0088】
1 挿口
2 受口
3 管体内面
4 挿口内面
5 ゴム輪
6 挿口先端外面
7 受口内面
図1