特許第6093237号(P6093237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6093237フッ素化ポリアミド酸を含有する中間転写部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093237
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】フッ素化ポリアミド酸を含有する中間転写部材
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20170227BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   G03G15/16
   C08L79/08 A
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-99533(P2013-99533)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2013-246438(P2013-246438A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2016年5月6日
(31)【優先権主張番号】13/482,976
(32)【優先日】2012年5月29日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ウー
(72)【発明者】
【氏名】ランホイ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】リン・マー
(72)【発明者】
【氏名】コック−イー・ロー
【審査官】 杉山 輝和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−068344(JP,A)
【文献】 特開2011−164571(JP,A)
【文献】 特開2011−209729(JP,A)
【文献】 特開2007−058154(JP,A)
【文献】 特表2007−526366(JP,A)
【文献】 特開2010−237675(JP,A)
【文献】 特開2002−174958(JP,A)
【文献】 特開2001−066913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド酸と官能化ペルフルオロポリエーテルとの反応によって生成されるフッ素化ポリアミド酸と、カーボンブラックとを含む層を備え、
前記該官能化ペルフルオロポリエーテルは、下記式により表され、
【化1】
式中、nは3〜120であり、mは5〜120である、中間転写部材。
【請求項2】
前記中間転写部材は、疎油性である、請求項1に記載の中間転写部材。
【請求項3】
前記ポリアミド酸は、ピロメリト酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸からなる群より選択される、請求項1に記載の中間転写部材。
【請求項4】
前記該官能化ペルフルオロポリエーテルは、下記式により表され、
【化2】
式中、nは3〜120であり、mは5〜120であり、
前記ポリアミド酸は、ピロメリト酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸、ピロメリト酸二無水物/フェニレンジアミンのポリアミド酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/フェニレンジアミンのポリアミド酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリン/フェニレンジアミンのポリアミド酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の中間転写部材。
【請求項5】
前記ポリアミド酸は、ピロメリト酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸であり、
前記該官能化ペルフルオロポリエーテルについて、nは10〜60であり、mは1〜60であり、n/mの比は0.5〜2である、請求項1に記載の中間転写部材。
【請求項6】
前記ポリアミド酸と前記官能化ペルフルオロポリエーテルの比は、90:10、80:20、70:30、または50;50である、請求項1に記載の中間転写部材。
【請求項7】
前記ポリアミド酸と前記官能化ペルフルオロポリエーテルの比は、70:30である、請求項1に記載の中間転写部材。
【請求項8】
前記ポリアミド酸は、約50〜約95重量%の量から選択され、
前記官能化ペルフルオロポリエーテルは、約5〜約50重量%の量から選択され、
これらの合計が約100%である、請求項1に記載の中間転写部材。
【請求項9】
カルボン酸官能化ペルフルオロポリエーテルのカルボン酸基は、加熱によって前記ポリアミド酸と反応する、請求項1に記載の中間転写部材。
【請求項10】
前記カーボンブラックは、前記中間転写部材の構成成分の合計が100%として、約3〜約40重量%の量で存在する、請求項1に記載の中間転写部材。
【請求項11】
前記中間転写部材は、約109〜約1013Ω/平方の抵抗率を有する、請求項1に記載の中間転写部材。
【請求項12】
前記中間転写部材は、フィルムの形態であり、かつ金属基材から自己放出し、約50〜約120°のヘキサデカン接触角を有する、請求項1に記載の中間転写部材。
【請求項13】
前記中間転写部材は、約55〜約90°のヘキサデカン接触角を有する、請求項1に記載の中間転写部材。
【請求項14】
フッ素化ポリアミド酸と、カーボンブラックとを含む層を備え、前記フッ素化ポリアミド酸は、ポリアミド酸と官能化ペルフルオロポリエーテルとの反応によって生成され、
前記該官能化ペルフルオロポリエーテルは、下記式により表され、
【化3】
式中、nは3〜120であり、mは5〜120である、疎油性中間転写部材。
【請求項15】
前記該官能化ペルフルオロポリエーテルについて、nは1〜60であり、mは1〜60であり、n/mの比は0.5〜2である、請求項14に記載の中間転写部材。
【請求項16】
前記ポリアミド酸は、ピロメリト酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸、ピロメリト酸二無水物/フェニレンジアミンのポリアミド酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/フェニレンジアミンのポリアミド酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸、およびベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリン/フェニレンジアミンのポリアミド酸からなる群から選択される、請求項14に記載の中間転写部材。
【請求項17】
前記ポリアミド酸は、ピロメリト酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸であり、
前記該官能化ペルフルオロポリエーテルは、下記式により表され、
【化4】
式中、nは1〜60であり、mは1〜60であり、n/mの比は0.5〜2である、請求項14に記載の中間転写部材。
【請求項18】
フッ素化ポリアミド酸と、ポリシロキサンと、カーボンブラックとを含む層を備え、前記フッ素化ポリアミド酸は、ポリアミド酸と官能化ペルフルオロポリエーテルとの反応によって生成され、
前記ポリアミド酸は、ピロメリト酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸からなる群より選択され、
前記該官能化ペルフルオロポリエーテルは、カルボン酸終端化ペルフルオロポリエーテルであり、前記カルボン酸官能化ペルフルオロポリエーテルのカルボン酸基は、前記ポリアミド酸と反応し、
前記中間転写部材は、約50〜約90°のヘキサデカン接触角を有する疎油性であり、
前記該官能化ペルフルオロポリエーテルは、下記式により表され、
【化5】
式中、nは3〜120であり、mは5〜120である、中間転写部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は一般的に、フッ素化ポリアミド酸を含む中間転写部材、ならびにフッ素化ポリアミド酸、任意の導電性填材成分、および任意のポリシロキサンからなる混合物を含有する中間転写部材に関する。
【背景技術】
【0002】
顕色した像の不適切な受理および顕色した乾式複写像の、その後の紙のような基材への部分的転写を結果として生じる公知の中間転写部材を脆性となるようにさせる特徴を有する材料を含む該部材がある。
【0003】
また、液体フルオロ剤を含む中間転写部材は公知であるが、この薬剤は、ポリアミド酸被覆溶液から得られるポリイミドのようなポリマーと非相溶性である。結果として生じるポリイミド相は分離しているので、この被膜からのポリイミドの放出は制御することが困難である。
【0004】
中間転写部材の調製に関する不利点は、通常、金属基材上に別個の放出層が沈積し、その後、中間転写部材成分を放出層に塗布することであり、ここで、該放出層は該成分を剥離によってまたは機械的装置の使用によって該部材から分離することができる。その後、中間転写部材成分は、乾式複写撮像系のために選択することのできるフィルムの形態となり、または該系において、該フィルムは、ポリマー層のような支持基材上に沈積することができる。別個の中間放出層の使用は、中間転写部材の調製の経費をおよび時間を増加させ、このような層は、中間転写部材の多くの特徴を変更することもできる。
【0005】
多くの公知の中間転写部材の不利点を実質的に回避または最少化する中間転写部材についての必要性がある。
【0006】
また、疎油性中間転写部材が調製される場合に選択される多くの基材からの自己放出特徴を有する、かつ例えば約3,500〜約10,000MPaの高いヤング率および例えば約150〜約300MPaもしくは約175〜約250MPaの優れた破壊強度を呈する該部材の材料についての必要性がある。
【0007】
さらに、長い時間に劣化が全くないかまたは最小である改良された安定性を有する中間転写部材についての必要性がある。
【0008】
別の必要性は、最少の解像問題で顕色した像をもたらす優れた導電性または抵抗率を有する中間転写部材に関する。
【0009】
加えて、経済的かつ効率的に製造することができる成分を含有し、かつ放出添加剤および均染剤は中間転写部材被膜組成物へと化学的に組み込まれる中間転写部材についての必要性がある。
【0010】
なおも別の必要性は、放出添加剤が前記混合物の組成物中に物理的に組み込まれる必要がなく、この点においてこのような組み込みは、該組成物の放出後の金属基材上に望ましくない残留物を形成する傾向にある、かつ化学的に相互作用した放出剤は、硬化後の中間転写部材からの放出流体を洗浄する必要性を排除する、中間転写部材を提供することに存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
フッ素化ポリアミド酸および導電性成分から本質的になり、この中で、該フッ素化ポリアミド酸はポリアミド酸と官能化ペルフルオロポリエーテルとの反応によって生成され、この中で、該ポリアミド酸は、ピロメリト酸二無水物/4,4−オキシジアニリンのポリアミド酸およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸からなる群から選択され、かつ該官能化ペルフルオロポリエーテルは、カルボン酸終端化ペルフルオロポリエーテルであり、この中で、該カルボン酸官能化ペルフルオロポリエーテルのカルボン酸基は該ポリアミド酸と反応し、かつ該部材は、約50〜約90°のヘキサデカン接触角度を有して疎油性である、中間転写部材がさらに開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の開示の単層の中間転写部材の例示的な実施形態を説明している。
図2図2は、本発明の開示の2層の中間転写部材の例示的な実施形態を説明している。
図3図3は、本発明の開示の3層の中間転写部材の例示的な実施形態を説明している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
より具体的には、油に対する親和性が欠如しており、したがって個体の手および指から該部材を保護して、該部材の再利用と単層のフッ素化ポリアミド酸の構造における本明細書に説明される他の利点とを可能にする疎油性混合物を含む中間転写部材が本明細書に提供されており、ここでは、基材上の別個の放出層についての必要性が回避されている。
【0014】
図1においては、フッ素化ポリアミド酸3、任意のシロキサンポリマー5、および任意の導電性成分6からなる単層2を含む中間転写部材が説明されている。
【0015】
図2においては、フッ素化ポリアミド酸9、任意のシロキサンポリマー10、および導電性成分11からなる下部層7と、放出成分14を含む任意の上部トナー放出層または外側トナー放出層13とを含む2層の中間転写部材が説明されている。
【0016】
図3においては、支持基材15と、フッ素化ポリアミド酸18、任意のシロキサンポリマー19、および任意の導電性成分20からなる単層17と、放出成分24を含む任意の放出層23とを含む3層の中間転写部材が説明されている。
【0017】
ポリアミド酸およびカルボン酸官能化ペルフルオロポリエーテル(HOOC−PFPE−COOH)から生じたフッ素化ポリアミド酸、カーボンブラックなどの導電性成分、ならびにポリシロキサンを一般的に含む自己放出型疎油性中間転写部材が開示されている。理論によって限定されるよう望んではいないが、該ポリアミド酸と該カルボン酸官能化ペルフルオロポリエーテル(HOOC−PFPE−COOH)との反応混合物について生じたATR−FTIRスペクトルは、カルボン酸官能化ペルフルオロポリエーテルのカルボン酸基がすべて、加熱または硬化によって該ポリアミド酸と反応することを示した。
【0018】
本明細書に開示された中間転写部材は、優れたトナー転写および優れた洗浄効率を呈しかつ自己放出特徴も呈する上で疎油性であり、かつここで例えばステンレス鋼基材上に存在する外部放出層の使用は回避され、乾式複写法に関して顕色された像の約90〜約99%の、および約95〜約100%の転写に関して迅速かつ完全な転写を可能にしながら、優れた機械的強度を有し、例えば約3,500〜約10,000メガパスカル(MPa)、約5,000〜約9,000MPa、または約6,000〜約8,000MPaのヤング率、約150〜約300MPaまたは約175〜約250MPaの破壊強度、約10〜約50ppm/°Kまたは約15〜約30ppm/°KのCTE(熱膨張係数)、および例えば約10〜約1013Ω/平方、約10〜約1013Ω/平方、約10〜約1012Ω/平方、または約1010〜約1012Ω/平方の、公知の高抵抗率メーターで測定されるような優れた抵抗率を有する。
【0019】
てこ上げ装置などの何らかの外部源の支援なしでの自己放出特徴は、効率的で経済的な形成ならびに、開示された中間転写部材組成物の金属基材からの約90〜約100%、および約95〜約99%の完全な分離を可能にし、該金属基材の上に該部材がフィルムの形態で初期的に調製され、ここで、放出材料および分離放出層は該金属基材上で回避することができる。自己放出特徴を得る時間は、例えば開示されたフッ素化ポリアミド酸含有組成物について選択された成分およびその量に応じて変化する。しかしながら一般的に、該時間は、約1〜約60秒、約1〜約45秒、約1〜約30秒、約1〜約20秒、または約1〜約5秒であり、一部の場合においては、約1秒未満である。
【0020】
本発明の開示の中間転写部材は、単層構造または、例えば上部放出層を含む多層構造などにおける種々の構造のいずれかにおいて提供することができる。より具体的には、最終的な中間転写部材は、エンドレスの可撓性ベルト、織物、可撓性ドラムもしくは可撓性ローラー、堅牢なローラーもしくは堅牢な注射器、シート、ドレルト(drelt;ドラムとベルトの間の中間物)、部材におけるいずれの縫い目も可視的接合部もない縫い目なしベルト、およびこれらに類するものの形態であってもよい。
【0021】
(ポリアミド酸)
フッ素化ペルフルオロポリエーテル(PFPE)との混合のために選択されるポリアミド酸の例としては、ピロメリト酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸、ピロメリト酸二無水物/フェニレンジアミンのポリアミド酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸、ビフェニルテトラカルボン酸二水物/フェニレンジアミンのポリアミド酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二水物/4,4’−オキシジアニリン/フェニレンジアミンのポリアミド酸、およびこれらに類するもの、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0022】
ピロメリト酸二無水物/4,4−オキシジアニリンのポリアミド酸の市販されている例は、Industrial Summit Technology社(米国ニュージャージー州パーリン)から得ることのできるPYRE−ML(登録商標)RC5019(N−メチル−2−ピロリドン(NMP)における約15〜約16重量%)、RC5057(NMP:芳香族炭化水素(80:20比)における約14.5〜約15.5重量%)、およびRC5083(NMP:DMAc(15:85比)における約18〜約19重量%)、ならびにFUJIFILM Electronic Materials U.S.A.社から市販されているDURIMIDE(登録商標)100である。
【0023】
開示された中間転写部材のためのPFPEとの混合および反応のために選択されてもよいビフェニルテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸の例としては、UBE America社(米国ニューヨーク州ニューヨーク市)から両方とも入手可能なU−VARNISH A(商標)およびVARNISH S(商標)(NMPにおける約20重量%)が挙げられる。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/フェニレンジアミンのポリアミド酸の例としては、HD MicroSystems(米国ニュージャージー州パーリン)から両方とも入手可能なPI−2610(NMPにおける約10.5重量%)およびPI−2611(NMPにおける約13.5重量%)が挙げられる。
【0024】
本発明の開示のさらなる複数の実施形態においては、官能化PFPEとの混合および反応のために利用することのできるポリアミド酸またはエステルの例は、二無水物とジアミンとの反応によって生成することができる。該反応のために選択される好適な二無水物には、芳香族二無水物および芳香族テトラカルボン酸二無水物、例えば、9,9−ビス(トリフルオロメチル)キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシ−2,5,6−トリフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル二無水物、3,3’,4,4’−テトラカルボキシビフェニル二無水物、3,3’,4,4’−テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物、ジ−(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)エーテル二無水物、ジ−(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)スルフィド二無水物、ジ−(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ジ−(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,4,5−テトラカルボキシベンゼン二無水物、1,2,4−トリカルボキシベンゼン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリト酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4−4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’−ジフェニルスルフィドジオキシビス(4−フタル酸)二無水物、4,4’−ジフェニルスルホンジオキシビス(4−フタル酸)二無水物、メチレンビス(4−フェニレンオキシ−4−フタル酸)二無水物、エチリデンビス(4−フェニレンオキシ−4−フタル酸)二無水物、イソプロピリデンビス−(4−フェニレンオキシ−4−フタル酸)二無水物、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェニレンオキシ−4−フタル酸)二無水物、およびこれらに類するものなど、芳香族二無水物および芳香族テトラカルボン酸二無水物を含む。
【0025】
前記二無水物との反応のために選択される例示的なジアミンには、4,4’−ビス−(m−アミノフェノキシ)−ビフェニル、4,4’−ビス−(m−アミノフェノキシ)−ジフェニルスルフィド、4,4’−ビス−(m−アミノフェノキシ)−ジフェニルスルホン、4,4’−ビス−(p−アミノフェノキシ)−ベンゾフェノン、4,4’−ビス−(p−アミノフェノキシ)−ジフェニルスルフィド、4,4’−ビス−(p−アミノフェノキシ)−ジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−アゾベンゼン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−p−ターフェニル、1,3−ビス−(γ−アミノプロピル)−テトラメチル−ジシロキサン、1,6−ジアミノヘキサン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、1,3−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノ−2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロ−ビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロジフェニルエーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,1−ジ(p−アミノフェニル)エタン、2,2−ジ(p−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(p−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、およびこれらに類するもの、ならびにそれらの混合物を含む。
【0026】
前記二無水物反応体およびジアミン反応体は、種々の好適な量(例えば、約20:80〜約80:20、約40:60〜約60:40、および約50:50の重量比の二無水物:ジアミン重量比など)で選択することができる。
【0027】
前記ポリアミド酸は、種々の有効量で、官能化PFPEとの反応または混合のために選択される。一般的には、該反応のために選択されるポリアミド酸の量は例えば、約50〜約99重量%、約50〜約95重量%、約60〜約95重量%、または約70〜約90重量%であり、かつここで、該ポリアミド酸:該官能化PFPEの比は例えば、約90:10、約60:40、約70:30、約65:35、約80:20、または約50:50である。
【0028】
(官能化ペルフルオロポリエーテル(PFPE))
選択される官能化ペルフルオロポリエーテルの例は、カルボン酸官能化ペルフルオロポリエーテル(HOOC−PFPE−COOH)であり、その例は、
【化1】
(式中、nは反復セグメントの数を表し、例えば約3〜約120または約10〜約60であり、mは反復セグメントの数を表し、例えば約5〜約120または約10〜約60であり、かつn+mの合計は例えば、約40〜約180または約90〜約130であり、かつn/mの比は例えば、約0.5〜約2または約0.75〜約1である。)によって表される。
【0029】
カルボン酸官能化ペルフルオロポリエーテルの具体的な例は、平均当量約1,000およびフッ素含有量約61%のFLUOROLINK(登録商標)Cである。
【0030】
(ポリシロキサンポリマー)
中間転写部材は一般的に、ポリシロキサンポリマーを含むこともできる。本明細書において開示される中間転写部材混合物のために選択されるポリシロキサンポリマーの例としては、BYK ChemicalからBYK(登録商標)333、BYK(登録商標)330(メトキシプロピルアセタートにおける約51重量%)、およびBYK(登録商標)344(80:20比のキシレン:イソブタノールにおける約52.3重量%)として市販されているポリエーテル修飾したポリジメチルシロキサン;BYK(登録商標)−SILCLEAN3710およびBYK(登録商標)3720(メトキシプロパノールにおける約25重量%);BYK ChemicalからBYK(登録商標)310(キシレンにおける約25重量%)およびBYK(登録商標)370(75:11:7:7比のキシレン:アルキルベンゼン:シクロヘキサノン:モノフェニルグリコールにおける約25重量%)として市販されているポリエステル修飾したポリジメチルシロキサン;BYK ChemicalからBYK(登録商標)−SILCLEAN3700(メトキシプロピルアセタートにおける約25重量%)として市販されているポリアクリラート修飾したポリジメチルシロキサン;BYK ChemicalからBYK(登録商標)375(ジ−プロピレングリコールモノメチルエーテルにおける約25重量%)として市販されているポリエステルポリエーテル修飾したポリジメチルシロキサン;およびこれらに類するもの、ならびにそれらの混合物など、公知の好適なポリシロキサンが挙げられる。
【0031】
前記ポリシロキサンポリマーまたはその共重合体は、合成したフッ素化ポリアミド酸、ポリシロキサンポリマー、および存在する場合、導電性成分からなる混合物など、該混合物中に存在する固体成分の重量を基にした約0.01〜約1重量%、約0.05〜約1重量%、約0.05〜約0.5重量%、または約0.1〜約0.3重量%など、種々の有効量で中間転写部材混合物中に存在することができる。
【0032】
(任意の填材)
任意に、中間転写部材は、例えば中間転写部材の導電性を変更および調整するために、1種類以上の填材を含有してもよい。中間転写部材が単層構造である場合、導電性填材は、本明細書に開示されるフッ素化ポリアミド酸含有混合物中に含まれることができる。しかしながら、中間転写部材が多層構造である場合、導電性填材は、支持基材中、該支持基材上を被覆するポリマー混合物層中、ならびに支持基材およびポリマー混合物層の両方の中など、該部材の1つ以上の層の中に含まれることができる。
【0033】
所望の結果を提供する何らかの好適な填材を使用することができる。例えば、好適な填材には、カーボンブラック、金属酸化物、ポリアニリン、他の公知の好適な填材、および填材の混合物を含む。
【0034】
本明細書に説明される中間転写部材のために選択することのできるカーボンブラック填材の例としては、Evonik−Degussa社から入手可能な特殊ブラック4(BET表面積=180m/g、DBP吸収=1.8mL/g、一次粒径=25nm)、Evonik−Degussa社からすべて入手可能な特殊ブラック5(BET表面積=240m/g、DBP吸収=1.41mL/g、一次粒径=20nm)、カラーブラックFW1(BET表面積=320m/g、DBP吸収=2.89mL/g、一次粒径=13nm)、カラーブラックFW2(BET表面積=460m/g、DBP吸収=4.82mL/g、一次粒径=13nm)、カラーブラックFW200(BET表面積=460m/g、DBP吸収=4.6mL/g、一次粒径=13nm)、Cabot社から入手可能なVULCAN(登録商標)カーボンブラック、REGAL(登録商標)カーボンブラック、MONARCH(登録商標)カーボンブラック、およびBLACK PEARLS(登録商標)カーボンブラックが挙げられる。導電性カーボンブラックの具体的な例は、BLACK PEARLS(登録商標)1000(BET表面積=343m/g、DBP吸収=1.05mL/g)、BLACK PEARLS(登録商標)880(BET表面積=240m/g、DBP吸収=1.06mL/g)、BLACK PEARLS(登録商標)800(BET表面積=230m/g、DBP吸収=0.68mL/g)、BLACK PEARLS(登録商標)L(BET表面積=138m/g、DBP吸収=0.61mL/g)、BLACK PEARLS(登録商標)570(BET表面積=110m/g、DBP吸収=1.14mL/g)、BLACK PEARLS(登録商標)170(BET表面積=35m/g、DBP吸収=1.22mL/g)、VULCAN(登録商標)XC72(BET表面積=254m/g、DBP吸収=1.76mL/g)、VULCAN(登録商標)XC72R(けば状のVULCAN(登録商標)XC72)、VULCAN(登録商標)XC605、VULCAN(登録商標)XC305、REGAL(登録商標)660(BET表面積=112m/g、DBP吸収=0.59mL/g)、REGAL(登録商標)400(BET表面積=96m/g、DBP吸収=0.69mL/g)、REGAL(登録商標)330(BET表面積=94m/g、DBP吸収=0.71mL/g)、MONARCH(登録商標)880(BET表面積=220m/g、DBP吸収=1.05mL/g、一次粒径=16nm)、およびMONARCH(登録商標)1000(BET表面積=343m/g、DBP吸収=1.05mL/g、一次粒径=16nm)、Evonik社から入手可能な特殊カーボンブラック、ならびにEvonik−Degussa社から入手可能なChannelカーボンブラックである。本明細書に具体的に開示されていない他の公知の好適なカーボンブラックは、本明細書に開示された中間転写部材のための填材または導電性成分として選択してもよい。
【0035】
中間転写部材組成物への組み込みのために選択することのできるポリアニリン填材の例は、Panipol Oy社(フィンランド国)から市販されているPANIPOL(商標)F、および公知のリグノスルホン酸グラフト結合型ポリアニリンである。これらのポリアニリンは通常、例えば約0.5〜約5ミクロン、約1.1〜約2.3ミクロン、または約1.5〜約1.9ミクロンの比較的小さな粒径を有する。
【0036】
開示された中間転写部材組成物のために選択することのできる金属酸化物填材には、例えば、酸化スズ、アンチモンでドープ処理された酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、および酸化チタン、ならびにこれらに類するものを含む。
【0037】
存在する場合、前記填材は、合成したフッ素化ポリアミド酸、および導電性成分または導電性填材の固体全体の例えば約1〜約60重量%、約3〜約40重量%、約4〜約30重量%、約10〜約30重量%、約3〜約30重量%、約8〜約25重量%、または約13〜約20重量%の量で選択することができる。
【0038】
(任意の放出層)
所望の場合、任意の放出層は、本明細書に説明されるフッ素化ポリアミド酸層混合物の上など、中間転写部材中に含むことができる。該放出層は、追加的なトナー洗浄を提供することを、および光導電体から中間転写部材へのさらなる顕色した像の転写効率を支援するために含んでもよい。
【0039】
選択される場合、前記放出層は、何らかの所望のかつ好適な厚さを有することができる。例えば、該放出層は、約1〜約100ミクロン、約10〜約75ミクロン、または約20〜約50ミクロンの厚さを有することができる。
【0040】
この任意の放出層は、フッ素化エチレンプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフルオロアルコキシポリテトラフルオロエチレン(PFA TEFLON(登録商標))、および他のTEFLON(登録商標)様材料を含むTEFLON(登録商標)様材料、フルオロシリコーンなどのシリコーン材料、ならびにSampson Coatings(米国バージニア州リッチモンド都)から入手可能なSilicone Rubber 552などのシリコーンゴム(ポリジメチルシロキサン/ジブチルスズジアセタート、100gのポリジメチルシロキサンゴム混合物あたり0.45gのDBTDA、分子量Mおよそ3,500)、ならびにVITON A(登録商標)、VITON E(登録商標)、VITON E60C(登録商標)、VITON E45(登録商標)、VITON E430(登録商標)、VITON B910(登録商標)、VITON GH(登録商標)、VITON B50(登録商標)、VITON E45(登録商標)、およびVITON GF(登録商標)として種々の名称の下で商業的に公知であるビニリデンフルオリド、ヘキサフルオロプロピレン、およびテトラフルオロエチレンからなる共重合体および三元重合体など、VITON(登録商標)として販売されているもののようなフルオロエラストマーを含むことができる。名称VITON(登録商標)は、E.I.DuPont de Nemours社の商標である。2つの公知のフルオロエラストマーは、(1)VITON A(登録商標)として商業的に公知の、ビニリデンフルオリド、ヘキサフルオロプロピレン、およびテトラフルオロエチレンからなる共重合体の1クラス、(2)VITON B(登録商標)として商業的に公知の、ビニリデンフルオリド、ヘキサフルオロプロピレン、およびテトラフルオロエチレンからなる三元重合体の1クラス、ならびに(3)35モル%のビニリデンフルオリド、34モル%のヘキサフルオロプロピレン、および29モル%のテトラフルオロエチレンを2%の硬化部位単量体とともに有するVITON GF(登録商標)など、ビニリデンフルオリド、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、および硬化部位単量体からなる四元重合体の1クラスから構成される。硬化部位単量体は、4−ブロモペルフルオロブテン−1、1,1−ジヒドロ−4−ブロモペルフルオロブテン−1、3−ブロモペルフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロ−3−ブロモペルフルオロプロペン−1、または市販の硬化部位単量体など、E.I.DuPont de Nemours社から入手可能なものであることができる。
【0041】
(中間転写部材形成)
生成したフッ素化ポリアミド酸および導電性填材成分を含む、本明細書に説明される中間転写部材混合物は、何らかの好適な方法によって中間転写部材へと製剤化することができる。例えば、公知の粉砕過程を使用して、中間転写部材混合物の均一な分散物を得、約125℃〜約400℃、約200℃〜約350℃、または約160℃〜約290℃で、例えば約30分間〜約120分間、または約45分間〜約100分間の好適な時間加熱および硬化させて、カルボン酸官能化ペルフルオロポリエーテルのカルボン酸基とポリアミド酸の間の反応を完了させ、次に、ステンレス鋼基材もしくはそれに類するものなど個々の金属基材上を、公知の画線棒(draw bar)塗布方法もしくは流し塗り方法を使用して被覆することができる。結果として生じる個々のフィルムまたは複数のフィルムは、該フィルムを190℃で30分間、250℃で30分間、および290℃で60分間加熱および硬化させることによって、あるいは中間転写部材混合物を約100℃〜約400℃、約75℃〜約320℃、または約160℃〜約320℃に、約20〜約180分間、約40〜約120分間、または約30〜約60分間などの好適な時間、該基材上に残存しながら加熱することによって一般的に硬化させることによるなど、高温で乾燥させることができる。乾燥および室温(約23℃〜約25℃)への冷却後、該フィルムを該鋼基材から自己放出し、すなわち、該フィルムは何ら外部の支援を用いることなく放出する。結果として生じる中間転写フィルム製品は、例えば約15〜約150ミクロン、約20〜約100ミクロン、または約25〜約80ミクロンの厚さを有することができる。
【0042】
本明細書に開示された混合物の沈積のために選択された金属基材として、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、銅、およびこれらの合金、ガラス板、ならびに他の従来の典型的な公知の材料を選択することができる。
【0043】
混合物成分の総重量の例えば約60〜約95重量%、または約70〜約90重量%の量で溶媒を選択することのできる中間転写部材組成物の形成のために選択される該溶媒の例としては、塩化メチレンなどのハロゲン化アルキレン、テトラヒドロフラン、トルエン、モノクロロベンゼン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メチルイソブチルケトン、ホルムアミド、アセトン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、アセトアニリド、これらの混合物、およびそれらに類するものが挙げられる。希釈剤は、該中間転写部材混合物のために選択された溶媒と混合することができる。該溶媒および該希釈剤の重量を基にした約1〜約25重量%、および1〜約10重量%の量で該溶媒に添加される希釈剤の例は、芳香族炭化水素、酢酸エチル、アセトン、シクロヘキサノン、およびアセトアニリドのような公知の希釈剤である。
【0044】
(任意の支持基材)
所望の場合、支持基材を、生成したフッ素化ポリアミド酸含有層の真下など、中間転写部材の中に含むことができる。任意の支持基材は、高い剛性または強度を中間転写部材に提供するために含むことができる。
【0045】
より具体的には、中間転写部材支持基材の例は、Richard Blaine International社(米国ペンシルバニア州レディング市)からすべて入手可能なVTEC(商標)PI1388、080−051、851、302、203、201、およびPETI−5など、低温でかつ迅速に硬化する公知のポリイミドポリマー、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ならびにこれらに類するものを含むポリイミドである。該熱硬化性ポリイミドは、約180℃〜約260℃の温度で約10〜約120分間、または約20〜約60分間などの短い時間で硬化することができ、一般的には、数平均分子量約5,000〜約500,000または約10,000〜約100,000、かつ重量平均分子量約50,000〜約5,000,000または約100,000〜約1,000,000を有する。また、該支持基材のために、Industrial Summit Technology社(米国ニュージャージー州パーリン)からすべて市販されているPYRE M.L.(登録商標)RC−5019、RC−5057、RC−5069、RC−5097、RC−5053、およびRK−692、Unitech LLC(米国バージニア州ハンプトン市)から両方とも市販されているRP−46およびRP−50、FUJIFILM Electronic Materials U.S.A.社(米国ロードアイランド州ノースキングスタウン市)から市販されているDURIMIDE(登録商標)100、ならびに、E.I.DuPont社(米国デラウェア州ウィルミングトン市)からすべて市販されているKAPTON(登録商標)HN、VN、およびFNなど、300℃を超える温度で硬化することのできる熱硬化性ポリイミドを選択することができる。
【0046】
本明細書に開示されている中間転写部材のための支持基材として選択することのできるポリアミドイミドの例は、日本の東洋紡社からすべて市販されているVYLOMAX(登録商標)HR−11NN(N−メチルピロリドンにおける15重量%溶液、T=300℃およびM=45,000)、HR−12N2(N−メチルピロリドン:キシレン:メチルエチルケトン=50:35:15における30重量%溶液、T=255℃、およびM=8,000)、HR−13NX(N−メチルピロリドン:キシレン=67:33における30重量%溶液、T=280℃、およびM=10,000)、HR−15ET(エタノール:トルエン=50:50における25重量%溶液、T=260℃およびM=10,000)、HR−16NN(N−メチルピロリドンにおける14重量%溶液、T=320℃およびM=100,000)、およびSolvay Advanced Polymers,LLC社(米国ジョージア州アルファレッタ市)から市販されているTORLON(登録商標)Al−10(T=272℃)である。
【0047】
本明細書に開示されている中間転写部材のために選択することのできる具体的なポリエーテルイミド支持基材の例は、Sabic Innovative Plastics社からすべて市販されているULTEM(登録商標)1000(T=210℃)、1010(T=217℃)、1100(T=217℃)、1285、2100(T=217℃)、2200(T=217℃)、2210(T=217℃)、2212(T=217℃)、2300(T=217℃)、2310(T=217℃)、2312(T=217℃)、2313(T=217℃)、2400(T=217℃)、2410(T=217℃)、3451(T=217℃)、3452(T=217℃)、4000(T=217℃)、4001(T=217℃)、4002(T=217℃)、4211(T=217℃)、8015、9011(T=217℃)、9075、および9076である。
【0048】
一旦形成されると、前記支持基材は、何らかの所望のかつ好適な厚さを有することができる。例えば、前記支持基材は、約50〜約150ミクロン、約75〜約125ミクロン、または約80ミクロンなど、約10〜約300ミクロンの厚さを有することができる。
【0049】
本明細書に説明される中間転写部材は、乾式複写印刷系を含む多くの印刷系および複写系のために利用することができる。例えば、開示された中間転写部材は、多重撮像乾式複写機へと組み込むことができ、そこで、転写されるべき顕色した各トナー像は像形成ステーションにおいて撮像ドラムまたは光導電性ドラム上に形成され、かつそこで、これらの各像は次に、顕色ステーションにおいて顕色され、中間転写部材に転写される。該像は、光導電体上に形成されて連続的に顕色されて、次に中間転写部材へと転写されてもよい。代替的な方法においては、各像は、光導電性ドラムまたは光受容性ドラム上に形成された後に、中間転写部材への位置合わせにおいて転写されてもよい。一実施形態においては、この多像システムはカラー複写系であり、この中で、複写中の像の各色は光受容性ドラム上に形成され、顕色され、該中間転写部材へと転写される。
【0050】
トナー潜像が光受容性ドラムから前記中間転写部材へと転写された後、前記中間転写部材は、熱および圧力の下で紙などの像受容基材と接触してもよい。中間転写部材上のトナー像は次に、像の形態において、紙などの基材へと転写および固定される。
【0051】
(比較例1)
約16重量固体のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)における、初期混合供給量を基にした15:85比のEvonik−DeGussa社から得た特殊カーボンブラック4とIndustrial Summit Technology社(米国ニュージャージー州パーリン)から得ることのできるピロメリト酸二無水物/4,4−オキシジアニリンのポリアミド酸(Pyre−M.L.RC5083(メチル−2−ピロリドンとN,N−ジメチルアセトアミドの溶媒混合物(NMP:DMAc比15:85)における約18〜約19重量%))の混合物を撹拌することによって、被膜組成物を調製した。得られた中間転写部材分散液で厚さ0.5mmのステンレス鋼基材を被覆した後、該混合物を125℃で30分間、190℃で30分間、および320℃で60分間加熱することによって硬化させた。示された比における先の成分から構成された、結果と生じる中間転写部材フィルムは、ステンレス基材から自己放出せず、むしろこの基材に接着した。水中で3分間浸漬した後、得られた中間転写部材フィルムは最終的に、この基材から自己放出した。
【0052】
また、先の調製した中間転写部材は、10°のヘキサデカン接触角度を有してわずかに疎油性であるに過ぎなかった。
【0053】
(実施例1)
ボールミルを使用して撹拌しながら、初期混合物供給量を基にした70:30の重量比で、Industrial Summit Technology社(米国ニュージャージー州パーリン)からPyre−M.L.RC5083の商品名で市販されているピロメリト酸二無水物/4,4−オキシジアニリンのポリアミド酸と、カルボン酸官能化PFPEであるSolvay Solexis製のFLUOROLINK(登録商標)C10との反応から生成されるPFPE修飾したポリアミド酸被膜組成物、および約16重量固体のN−メチル−2−ピロリドンにおけるEvonik−Degussa社から得られる特殊カーボンブラック4を混合することによって調製した。PFPE修飾したポリアミド酸とカーボンブラックとの重量比は約85:15であった。結果として生じる混合物を次に、55℃に4時間加熱した後、約25℃に冷却して、PFPE修飾したポリアミド酸/カーボンブラック被膜を得た。
【0054】
ATR−FTIRスペクトルは、カルボン酸官能化ペルフルオロポリエーテルのカルボン酸基がすべて、ポリアミド酸と反応することを示した。FLUOROLINK(登録商標)C自体については、1782.3/cmでの明瞭なピークが−COOHについて観察された。PFPE修飾したポリアミド酸のFTIRスペクトルは、1782.3/cmピークが消失することを明確に示しており、このことは、該ペルフルオロポリエーテルが該ポリアミド酸に化学的に結合することを示した。
【0055】
先に得た中間転写部材被膜分散液で厚さ0.5mmのステンレス鋼基材を公知の画線棒コーターを使用して被覆し、その後、該混合物を125℃で30分間、190℃で30分間、250℃で30分間、および290℃で60分間加熱することによって硬化させた。結果として生じる中間転写部材は、PFPE修飾したポリアミド酸と特殊カーボンブラック4に関するかつ示される比での先の成分から構成されており、1秒未満で即時ステンレス鋼から何ら外的過程の支援なしに自己放出した。85のPFPE修飾したポリアミド酸と15の特殊カーボンブラックの重量比における上記成分からなる厚さ80ミクロンの滑らかなフィルムが結果として生じた。
【0056】
(実施例2)
中間転写部材を、実施例1の過程を反復することによって調製するが、例外は、ポリアミド酸のために、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸(UBE America社から得たU−VARNISH A)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/フェニレンジアミンのポリアミド酸(HD MicroSystems社から得たPI−2610)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸(Unitech社から得たRP50)、またはベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリン/フェニレンジアミンのポリアミド酸(HD MicroSystems社から得たPI−2525)が選択されることである。
【0057】
(測定)
高抵抗率メーターを使用して測定された先の実施例1の抵抗率は、約6.4×1010Ω/平方であった。
【0058】
また、実施例1および比較実施例1の上記の中間転写部材を、公知のASTM D882−97過程に従ってヤング率について測定した。各中間転写部材の試料(0.5インチ×12インチ)をInstron Tensile Tester測定装置の中に静置し、次に、試料を破壊するまで定常引っ張り速度で伸長させた。この間、結果として生じる負荷対試料の伸長を記録した。記録した曲線結果の初期線形部分に正接するいずれかの地点を採取して、引張応力をそれに対応する応力によって除することによって、ヤング率を算出した。引張応力を、各試験試料の平均横断面積によって除した負荷によって算出した。破壊強度を、試料が破壊する場合の引張応力によって測定した。
【0059】
実施例1および比較実施例1の中間転写部材をさらに、熱機械分析装置(TMA)を使用して熱膨張係数(CTE)について試験した。中間転写部材試料をレーザー刃および金属ダイスを使用して4mm幅の片に切断し、これを次に、測定された8mmの空間を使用してTMAクランプの間に載せた。試料に0.05ニュートン(N)の力をあらかじめ課した。データを第二の熱周期から分析した。CTE値を、TMAソフトウェアを使用して−20℃〜約50℃の領域の関心対象の複数の温度地点の間のデータを通じての直線的な適合として得た。
【0060】
実施例1の部材についてのCTEは約40ppm/°Kであり、比較実施例1の部材については、CTEは約30ppm/°Kであった。
【0061】
ステンレス鋼基材から放出した後、得られた実施例1の中間転写フィルムは、中間転写部材として使用することができ、または任意の放出層で実施例1の中間転写層の上部を被覆することができる。
【0062】
疎油性特徴の程度と解釈されるヘキサデカン接触角度は、大気温(約23℃)で、Contact Angle System OCA(Dataphysics Instruments GmbH,OCA15モデル)を使用することによって測定した。少なくとも10回の測定を実施したので、その平均値を報告する。例えば、実施例1の部材の疎油性特徴は、PTFEフィルム単独の約45°よりも高い約66°のヘキサデカン接触角度を測定し、約5〜10°の公知のポリイミド中間転写部材についてのヘキサデカン接触角度よりも56〜61°高く、比較実施例1の部材よりも56°高かった。
【0063】
開示された中間転写部材についてのヘキサデカン接触角度は、約50〜約120°、約55〜約90°、約50〜約90°、または約60〜約70°であることができる。
【0064】
上記の結果のすべてを以下の表1に要約する。
【表1】
【0065】
また、実施例1の中間転写部材は、ステンレス鋼を追加的な放出層で塗布する必要なく、ステンレス基材から迅速に自己放出したのに対し、比較実施例1は、自己放出せず、ステンレス鋼基材上に残存し、3か月間水中に浸漬した後でしか自己放出しなかった。
【0066】
実施例1の中間転写部材が初期的に調製される場合に、ステンレス鋼基材上への追加的な放出層の被覆を必要としないので、該部材を、フッ素化ポリアミド酸を含んでいない公知の中間転写部材の多くよりも約50%低い、より低コストで得た。
図1
図2
図3