(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093251
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】蒸着源
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
C23C14/24 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-122131(P2013-122131)
(22)【出願日】2013年6月10日
(65)【公開番号】特開2014-237885(P2014-237885A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年3月7日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「次世代高効率・高品質照明の基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】591097632
【氏名又は名称】長州産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094581
【弁理士】
【氏名又は名称】鯨田 雅信
(72)【発明者】
【氏名】田尾 鋭司
(72)【発明者】
【氏名】福田 圭司
【審査官】
伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−111873(JP,A)
【文献】
特開2006−104513(JP,A)
【文献】
特開2011−162846(JP,A)
【文献】
特表2013−519787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24− 14/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着材料が入れられた坩堝と、
前記坩堝の外側に配置され、後記第1冷却機構を介して前記坩堝に熱を伝導して加熱する加熱部と、
前記坩堝を冷却するために前記坩堝と前記加熱部との間に配置された第1冷却機構であって、前記坩堝に接する内筒部、前記内筒部と所定距離を介して対向しその外壁面が前記加熱部に接する外筒部、及び前記外筒部と内筒部との間に配置された冷媒流路を含み、前記外筒部と内筒部との間には前記加熱部からの熱を前記外筒部側から前記内筒部側に伝導する複数の熱伝導部材が介設されている第1冷却機構と、
を備えたことを特徴とする蒸着源。
【請求項2】
前記加熱部の外側に配置され、前記加熱部により前記坩堝が加熱されているとき、前記加熱部からの熱をそれが前記加熱部の外側の周囲に及ばないように遮断するための第2冷却機構を、さらに備えた請求項1に記載の蒸着源。
【請求項3】
前記第1冷却機構は前記加熱部による加熱が終了して前記坩堝を冷却するときに作動されるものであり、前記第2冷却機構は前記加熱部により前記坩堝が加熱されるときから前記加熱が終了して前記坩堝が冷却されるときに渡って連続的に作動されるものである、請求項1又は2に記載の蒸着源。
【請求項4】
前記加熱部は、それぞれ互いに独立に動作可能な少なくとも7個以上の各ヒーターにより構成され、前記各ヒーターは前記坩堝の上下方向に沿って区分される少なくとも7個以上の各領域にそれぞれ対向するように配置されており、さらに、
前記坩堝の前記各領域又は前記各領域内の蒸着材料の温度をそれぞれ検出する熱電対などの温度センサと、
前記各領域にそれぞれ対応する各温度センサからの出力に基づいて前記各領域に対応する各ヒーターの温度をそれぞれ制御する制御部と、
を備えた請求項1から3までのいずれかに記載の蒸着源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着装置に使用される、基板に被着させる蒸気を発生させるための蒸着源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より基板に成膜するための真空蒸着装置が使用されており、この真空蒸着装置には、成膜材料を加熱して蒸発させるための蒸着源が備えられている。
図5は坩堝の加熱用ヒーターを坩堝の外側に配置するタイプにおける従来の蒸着源を示す断面図である。
図5において、7は成膜材料6を入れた坩堝、8は坩堝7の外側に設置されたヒーター、9は外部の熱を遮断するための水冷パイプを備えた水冷機構(水冷ジャケット)である(特許文献1参照)。
【0003】
図5に示すように、ヒーター8を坩堝7の外側に配置するタイプにおける従来の蒸着源においては、ヒーター8により加熱した坩堝7を冷却するときは、水冷機構9がヒーター8を介して坩堝7を冷却するようにしていた。また、このような従来の蒸着源においては、坩堝7の外側に配置した一つのヒーター8で坩堝7を加熱するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−10118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蒸着源のメンテナンス、例えば坩堝内の蒸着材料の交換等のメンテナンスは蒸着源の温度を下げて大気に開放してから行っていることから、メンテナンスによる装置の稼働率の低下を防ぐためには、蒸着源の温度が下がるまでの待機時間を短縮化させることが必要である。しかしながら、特に真空空間では熱の逃げが小さく上昇した温度はなかなか冷め難い。そして、前述のようなヒーターを坩堝の外側に配置するタイプにおける従来の蒸着源においては、水冷機構は、自らと坩堝との間に介設されているヒーターを介して坩堝を冷却するしかないため、冷却効率が低く、短時間内に坩堝を冷却することができないという問題があった。
【0006】
また、装置の稼働率を上げるためには、坩堝内の蒸着材料が飽和状態となる温度付近まで均等に昇温させるための待機時間を短縮化させることが必要である。しかしながら、前述のように坩堝の外側に配置した一つの(一系統の)ヒーターで蒸着材料を加熱する従来の蒸着源による場合は、特に最近増えている大型で縦長タイプの坩堝を一つのヒーターで加熱するときに上下間での熱ムラが生じ易くなる結果、蒸着材料の全体が均等に昇温するまでに長い待機時間が必要となり、このような長い待機時間のために装置稼働率の低下をもたらしていた。さらに、前記の蒸着材料の全体が昇温するまでの長い待機時間の間に、蒸着材料の温度ムラが生じて、蒸着材料の一部が蒸発して蒸着材料の利用効率の低下をもたらしてしまう、蒸着材料の温度ムラの高温部において材質劣化(蒸発速度低下などから推測される材質劣化)が生じてしまう、などの問題があった。
【0007】
本発明はこのような従来技術の問題点に着目してなされたものであって、ヒーターを坩堝の外側に配置するタイプの蒸着源において蒸着源のメンテナンス時にそれまでに加熱されていた坩堝を十分に降温させるまでの待機時間を短縮化させることにより、メンテナンス時における長い冷却待機時間による装置の稼働率の低下を防ぐことができる蒸着源を提供することを目的とする。また、本発明の他の発明は、特に最近増えている大型で縦長タイプの坩堝内に収容された蒸着材料についても全体をムラなく均等に加熱できるようにして、装置稼働率を上昇させることができ、従来のように加熱のための長い待機時間中に生じる蒸着材料の温度ムラによる一部の蒸発とこれによる蒸着材料の利用効率の低下や蒸着材料の温度ムラの高温部における材質劣化などの不都合が生じることを防止することができる蒸着源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述のような課題を解決するための本発明による蒸着源は、蒸着材料が入れられた坩堝と、前記坩堝を冷却するために前記坩堝の外側に配置された第1冷却機構と、前記第1冷却機構の外側(前記坩堝と反対側)に配置され、前記第1冷却機構を介して前記坩堝に熱を伝導して加熱する加熱部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明による蒸着源においては、前記加熱部の外側(前記坩堝と反対側)に配置され、前記加熱部により前記坩堝が加熱されているときに、前記加熱部からの熱をそれが前記加熱部の外側の周囲に及ばないように遮断するための第2冷却機構をさらに備えていてもよい。
【0010】
また、本発明による蒸着源においては、前記第1冷却機構は前記加熱部による加熱が終了して前記坩堝を冷却するときに作動されるものであり、前記第2冷却機構は前記加熱部により前記坩堝が加熱されるときから前記加熱が終了して前記坩堝が冷却されるときに渡って連続的に作動されるものであってもよい。
【0011】
また、本発明による蒸着源においては、前記加熱部は、それぞれ互いに独立に動作可能な少なくとも7個以上の各ヒーターにより構成され、前記各ヒーターは前記坩堝の上下方向に沿って区分される少なくとも7個以上の各領域にそれぞれ対向するように配置されており、前記坩堝の前記各領域又は前記各領域内の蒸着材料の温度をそれぞれ検出する熱電対などの温度センサと、前記各領域にそれぞれ対応する各温度センサからの出力に基づいて前記各領域に対応する各ヒーターの温度をそれぞれ制御する制御部と、をさらに備えていてもよい。
【0012】
さらに、本発明による蒸着源においては、前記第1冷却機構は、前記坩堝に接する内筒部と、前記内筒部と所定距離を介して対向しその外壁面が前記加熱部に接する外筒部と、前記内筒部又は外筒部との間に配置された冷媒流路とを含み、前記外筒部と内筒部との間に、前記加熱部からの熱を前記外筒部側から前記内筒部側に伝導する複数の熱伝導部材が介設されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明による蒸着源においては、坩堝とこの坩堝の外側に配置されたヒーターとの間に、坩堝を冷却するための第1冷却機構が介設されており、第1冷却機構により坩堝を従来のようにヒーターを介してではなく直接に冷却することができるので、坩堝のメンテナンス時においてそれまでに加熱されていた坩堝を冷却するための待機時間を従来と比較して大幅に短縮化することができる。
【0014】
また、本発明による蒸着源において、第2冷却機構を、加熱部の外側(前記坩堝と反対側)に配置するようにしたときは、加熱部からの熱が加熱部の外側の近傍に居る作業者に火傷を生じさせたり、同外側の近傍に在る他の坩堝その他の装置に悪影響を与えたりすることを、有効に防止することができる。
【0015】
また、本発明による蒸着源において、第1冷却機構は加熱部により坩堝が加熱された後にその坩堝を冷却するときに作動され、且つ第2冷却機構は加熱部により坩堝を加熱するときから加熱後に坩堝を冷却するときに渡って連続的に作動されるようにしたときは、前記第1及び第2冷却機構をそれぞれ効率的に作動させることができる。
【0016】
また、本発明による蒸着源において、加熱部を、それぞれ互いに独立に動作可能な少なくとも7個以上の各ヒーターにより構成し、各ヒーターを前記坩堝の上下方向に沿って区分される少なくとも7個以上の領域にそれぞれ対向するように配置し、前記各温度センサにより坩堝の各領域又は前記各領域内の蒸着材料の温度をそれぞれ検出して出力し、制御部により温度センサからの出力などに基づいて前記各領域に対応する各ヒーターの温度を制御するようにしたときは、特に最近の大型で縦長タイプの坩堝内に収容された蒸着材料についても全体をムラなく均等に加熱できるようになり、その結果、装置稼働率を上昇させることができ、さらに、従来のような加熱のための長い待機時間中における蒸着材料の温度ムラによる一部の蒸発とそれによる蒸着材料の利用効率の低下や蒸着材料の温度ムラの高温部における材質劣化(蒸発速度低下などから推測される材質劣化)などの不都合を、回避できるようになる。
【0017】
さらに、本発明による蒸着源において、第1冷却機構の外筒部と内筒部との間に加熱部からの熱を前記外筒部側から内筒部側に伝導する複数の熱伝導部材を介設するようにしたときは、加熱部と坩堝との間に第1冷却機構が存在していても、加熱部からの熱を第1冷却機構(外筒部、熱伝導部材、及び内筒部)を介して効率的に坩堝に伝導して坩堝を加熱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)は本発明の実施形態1による蒸着源に使用される水冷ジャケットを示す横断面図、(b)はその縦断面図である。
【
図2】本実施形態1による蒸着源を示す縦断面図である。
【
図3】本実施形態1による効果確認実験の結果を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施形態2による蒸着源を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の実施形態1を図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る蒸着源に使用される水冷ジャケットを示す図で、(a)はその横断面図、(b)はその縦断面図である。
図1において、11は例えばステンレス製の水冷ジャケット、11aは前記水冷ジャケット11を構成する外筒部、11bは前記水冷ジャケット11を構成する内筒部であって前記外筒部11aの内側にこれと所定距離だけ離れるように配置された内筒部、12は前記外筒部11aの内壁面に接するように配置されている水路、13は前記外筒部11aと内筒部11bとを後述の接続部により接続するために使用される接続穴である。
【0020】
前記水路12は、
図1(b)に示すように、前記外筒部11aの外周面に対向するように例えばジクザグ状に配置されている。また前記水路12には、図示しない外部の循環装置などから供給される冷却水が、前記水冷ジャケット11の下端部の冷却水導入口12aから導入される。そして、この導入された冷却水は、前記水路12を通過した後、前記水冷ジャケット11の下端部の冷却水排出口12bから外部に排出される。また、前記接続穴13は、ヒーター(後述)からの熱を前記外筒部11aから内筒部11bに伝導するために前記外筒部11aと内筒部11bとを接続する例えば金属などの高熱伝導性材料から成る接続部(後述)を、挿通するためのものである。
【0021】
次に、
図2は本実施形態1に係る、真空蒸着装置に使用される蒸着源を模式的に示す断面図である。
図2において、14は前記水冷ジャケット11の外筒部11aの接続穴13(
図1参照)から挿入されて外筒部11aと内筒部11bとを熱伝導可能に接続する接続部(例えば金属などの高熱伝導性材料から構成されている)、15は蒸着材料16が入れられた坩堝である。前記接続部14により、前記水冷ジャケット11の外筒部11aから内筒部11bへ熱伝導が容易に行なわれるようになっている。
【0022】
また本実施形態1では、
図2に示すように、前記坩堝15の外周側には、
図1に示す水冷ジャケット11が取り付けられている。そして、この水冷ジャケット11の外筒部11aの外側には各ヒーター17a〜17gが配置されている。これらの各ヒーター17a〜17gは、前記坩堝15又はその内部が図示上下方向に沿って例えば7個に分割される各領域A〜Gにそれぞれ対応するように、上下に多段的に配置されている。また、
図2において、18a〜18gは前記坩堝15の各領域A〜Gに対応する各温度を測定するために前記各領域A〜Gにそれぞれ配置された熱電対である。また、20は、前記各熱電対18a〜18gからの出力を受信して、前記各ヒーター17a〜17gをそれぞれ個別に制御する制御部である。
【0023】
次に本実施形態1を使用した成膜時の動作を説明する。前記蒸着材料16を加熱し蒸発させるために前記坩堝15を加熱するとき、前記各ヒーター17a〜17gを作動させると、前記各ヒーター17a〜17gからの熱は、前記水冷ジャケット11(この段階では作動されていない)の外筒部11aから前記接続部14を介して内筒部11bへ、さらに前記坩堝15に効率的に伝導される。また、上記の加熱の間、前記制御部20は、例えば所定時間毎に、前記各熱電対18a〜18gからの出力を受けて前記坩堝15の前記各領域A〜G毎の温度を取得する。そして、前記制御部20は、前記取得した各領域A〜G毎の温度に基づいて、前記坩堝15内の蒸着材料16が全体として均等に加熱されるように、前記各ヒーター17a〜17gの加熱状態を個別に制御する。これにより、本実施形態1では、従来と比較して短時間内に前記坩堝15内の蒸着材料16が加熱されて蒸発し、これにより発生した蒸発分子が同じ真空容器内の基板上に付着、堆積することにより薄膜が形成される。
【0024】
次に、前記の加熱又は成膜工程が終了した後に前記坩堝15内の蒸着材料16を交換する等の蒸着源のメンテナンス時の動作を説明する。この場合は、前記坩堝15を冷却してから大気に開放するため、まず、外部からの冷却水を、前記冷却水導入口12aから連続的に導入し、前記水冷ジャケット11の前記水路12中を流通させる。前記水路12中を流通して熱交換に使われた水は前記冷却水排出口12bから連続的に排出される。このとき、前述のように、前記水冷ジャケット11は前記坩堝15の外側に直接に(従来のようにヒーターを介することなく)接触するように配置されているので、前記水冷ジャケット11からの冷熱が直接に前記坩堝15に対して効率的に伝導され、前記坩堝15が短時間内に冷却される。
【0025】
図3(a)は前述のような本実施形態1に係る蒸着源を使用したときの坩堝のZone1〜7(前記各領域A〜G)毎の降温時制御温度を示すグラフであって、ヒーターの電源を切ってから1.5時間後に冷却水を水冷ジャケット11の水路12中に流通させたときの降温時制御温度を示すグラフである。
図3(a)に示すように、ヒーターの電源を切った直後から緩やかに坩堝の温度が下がり始めているが、このようなグラフの傾きからは、本実施形態1を使用しないときは、坩堝の温度を約400℃から100℃以下に下げるためには約8時間を要することが推測される。これに対して、本実施形態1を使用して、ヒーターの電源を切ってから1.5時間後に冷却水を水冷ジャケット11の水路12中に流通させたときは、
図3(a)に示すように、坩堝の温度は急激に下がり、非常に僅かな時間で坩堝の温度を約300℃から100℃以下まで下げることができた。
【0026】
また
図3(b)は前述のような本実施形態1に係る蒸着源の各ヒーター17a〜17gを使用して坩堝を加熱したときの坩堝のZone1〜7(前記各領域A〜G)毎の昇温時制御温度を示すグラフである。
図3(b)に示すように、本実施形態1による各領域毎の各ヒーター17a〜17gを各領域毎の各熱電対18a〜18gからの測定温度に基づいて個別に制御しながら加熱したときは、坩堝のZone1〜7(前記各領域A〜G)の全てをほぼ均等に昇温させることができた。
【0027】
以上のように、本実施形態1によれば、前記水冷ジャケット11が前記坩堝15に直接に(従来のようにヒーターを介することなく)接触するように配置されているので、前記水冷ジャケット11からの冷熱により前記坩堝15が短時間内に冷却されるようになる結果、蒸着源のメンテナンスのための冷却待機時間を従来より大幅に短縮化して装置の稼働率を大きく向上させることができる。
【0028】
また、特に、本実施形態1においては、前記水冷ジャケット11の外筒部11aと内筒部11bとの間に、金属等の高熱伝導性材料から成る複数の接続部14を介設し、この接続部14により前記各ヒーター17a〜17gからの熱が外筒部11aから内筒部11bに伝導されるようにしている。よって、本実施形態1によれば、前記各ヒーター17a〜17gと前記坩堝15との間に前記水冷ジャケット11が介設されていても、前記各ヒーター17a〜17gからの熱が効率的に前記坩堝15に伝導されて前記坩堝15が短時間内に加熱されるようになる。
【0029】
また、特に、本実施形態1においては、前記坩堝15の上下方向に沿って分けられる例えば7つの領域A〜Gにそれぞれ互いに独立に動作可能な各ヒーター17a〜17gを多段的に配置すると共に、各熱電対18a〜18gから各領域A〜Gの温度が前記制御部20に出力され、前記制御部20により各ヒーター17a〜17gの温度が個別に制御される。よって、本実施形態1によれば、特に最近増えている大型で縦長タイプの坩堝内に収容された蒸着材料を加熱するような場合でも、前記坩堝15内の蒸着材料16の全体を短時間内に均等に加熱して装置の稼働率を向上させることができると共に、従来のように加熱のために長い待機時間が必要であった場合において生じていた材料の一部の蒸発や材質劣化などの不都合を、防止することができる。
【0030】
〔第2の実施形態〕
次に
図4は本発明の実施形態2に係る蒸着源を模式的に示す断面図である。本実施形態2は、前記実施形態1と基本的な構成は同一であるので、以下では異なる部分を中心に説明する。また
図4において
図2と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
本実施形態2では、
図4に示すように、坩堝15の外側に配置された水冷ジャケット11と各ヒーター17a〜17gの外側に、さらに水冷ジャケット21が配置されている。この水冷ジャケット21の構成は前記水冷ジャケット11と略同様に、外筒部21a、内筒部21b、前記外筒部21aの内壁面側に設置された水路22などにより構成されている(但し前記水冷ジャケット21においては前記水冷ジャケット11と異なって外筒部と内筒部とを熱伝導可能に接続する接続部などは備えられていない)。
【0032】
また本実施形態2では、前記水冷ジャケット11と前記水冷ジャケット21とは別系統で制御されており、前記水冷ジャケット11は前記各ヒーター17a〜17gにより加熱された坩堝15を冷却するときに使用され、前記水冷ジャケット21は前記各ヒーター17a〜17gにより坩堝15を加熱するときと前記加熱された坩堝15を冷却するときとに渡って連続的に使用されるようになっている。
【0033】
以上のように、本実施形態2では、前記実施形態1の構成に加えて、前記各ヒーター17a〜17gの外側にさらに水冷ジャケット21を配置するようにしたので、前記坩堝15を前記各ヒーター17a〜17gにより加熱する場合でも、前記各ヒーター17a〜17gの熱がその近傍の作業者に火傷を負わせたりその近傍の他の坩堝などに影響を与えることを、防止することができる。なお上記以外については、本実施形態2の構成及び作用効果は前記実施形態1と基本的に同様であるので、説明を省略する。
【0034】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は前記の各実施形態として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記実施形態1においては、前記各領域A〜G毎の温度を測定する各熱電対18a〜18gを前記各ヒーター17a〜17gと前記水冷ジャケット11との間に配置するようにしたが、本発明においてはこれに限られるものではなく、例えば各熱電対18a〜18gを前記坩堝15と前記水冷ジャケット11との間に配置したり、前記坩堝15の内部に配置することも可能である。また、前記実施形態1の坩堝冷却用の水冷ジャケット11においては冷却水が流れる水路12を外筒部11aの内壁面側に配置するようにしたが、本発明においては前記水路12を内筒部11bの外筒部11aと対向する壁面側に配置するようにしてもよい。さらに、前記実施形態1,2においては前記坩堝15を冷却するなどのための機構として冷却水を内部で流動させる水冷ジャケット11,21を使用するようにしたが、本発明においてはこれらに限られるものではなく、前記坩堝15を冷却するなどのための機構として、水以外の様々な液体や気体を冷媒として使用する冷却機構を採用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
11,21 水冷ジャケット
11a,21a 外筒部
11b,21b 内筒部
12,22 水路
12a 冷却水導入口
12b 冷却水排出口
13 接続穴
14 接続部
15 坩堝
16 蒸着材料
17a〜17g ヒーター
18a〜18g 熱電対
20 制御部