【実施例】
【0018】
排気ガイドアッセンブリAは、特にエンジンの低速回転時において排気ガスGを適宜絞り込んで排気流量を調節するものであり、一例として
図1に示すように、排気タービンTの外周に設けられ実質的に排気流量を設定する複数の可変翼1と、可変翼1を回動自在に保持するタービンフレーム2と、排気ガスGの流量を適宜設定すべく可変翼1を一定角度回動させる可変機構3とを具えて成るものである。以下各構成部について説明する。
【0019】
まず可変翼1について説明する。このものは一例として
図1に示すように、排気タービンTの外周に沿って円弧状に複数(一基の排気ガイドアッセンブリAに対して概ね10〜15個程度)配設され、そのそれぞれが、ほぼ同程度ずつ回動して排気流量を調節するものである。可変翼1は、翼部11と、軸部12とを具えて成り、以下、これらについて説明する。
【0020】
まず翼部11は、主に排気タービンTの幅寸法に応じて一定幅を有するように形成されるものであり、その幅方向における断面が翼形に形成され、排気ガスGが効果的に排気タービンTに向かうように構成されている。なお、ここで
図1(b)に示すように、翼部11の幅寸法を便宜上、翼幅hとする。また
図2に示すように、翼部11の翼形断面において厚肉となる端縁を前縁11a、薄肉となる端縁を後縁11bとし、前縁11aから後縁11bまでの長さを翼弦長Lとする。更にまた、翼部11には、軸部12との境界部(接続部)に、軸部12より幾分大径の鍔部13が形成される。なお鍔部13の底面(座面)は、翼部11の端面と、ほぼ同一平面上に形成され、この平面が可変翼1をタービンフレーム2に取り付けた際の座面となり、排気タービンTにおける幅方向(翼幅hの方向)の位置規制を図る作用を担っている。
【0021】
一方、軸部12は、翼部11と一体的に形成されるものであり、翼部11を動かす際の回動軸となる。なお、本実施例では、主に翼部11の両側に軸部12が形成される、いわゆる両持ちタイプの可変翼1を図示しており、これら両軸部12を区別して示す場合には、その軸長に因み、長軸部12aと短軸部12bとして便宜上区別する。因みに、このような両軸タイプの可変翼1は、翼部11の一方のみに軸部12が形成される、いわゆる片軸タイプ(片持ちタイプ)のものに比べ、可変翼1の作動安定性(回動安定性)や強度等を向上させ得る点で有効である。
【0022】
また長軸部12aと短軸部12bとには、例えば上記
図2(b)に併せ示すように、軸径よりも幾分大径となる摺動段差14が部分的に形成される。これは、可変翼1を回動させる際に、タービンフレーム2の軸受部(後述するタービンフレーム2の受入孔25)と接触する面であり、これにより可変翼1を回動させる際の摺動抵抗(摩擦抵抗)が抑制され、可変翼1の安定した作動(回動)を図るものである。なお可変翼1は、高温・排ガス雰囲気という過酷な環境下で繰り返し使用されるため、摺動段差14による摺動抵抗の抑制は、このような厳しい環境下での開閉作動をより安定化させるものである。
また、摺動段差14は、必ずしも基部となる軸部12よりも大径の凸状に形成される必要はなく、軸受部と部分接触するという観点から見れば、例えば
図3に示すように、軸部12の一部を凹陥状に形成(ここでは短軸部12bにおける鍔部13の根元をクビレ状に形成)し、基部となる軸部12が軸受部と部分接触するように構成しており、このような部分接触部も実質的な摺動段差14となる。因みに、摺動段差14は可変翼1において、必ずしも必須の構成要素ではない。
【0023】
更に長軸部12aの先端側には、可変翼1の取付状態の基準となる基準面15が形成される。この基準面15は、後述する可変機構3に対しカシメ等によって固定される部位であり、一例として
図1、2に示すように、軸部12を対向的に切り欠いた二平面として形成される。しかしながら、基準面15は、必ずしも対向する二平面として形成されるだけでなく、長方形断面や正方形断面を成す四平面として形成されてもよく、要は可変翼1の姿勢(取付姿勢)が規制できれば種々の形態が採り得るものである。
因みに、このような基準面15も、必ずしも必須の構成要素ではなく、可変翼1の可変構造等によっては形成されないこともあり得る(例えば
図3参照)。
【0024】
次に、タービンフレーム2について説明する。このものは、複数の可変翼1を回動自在に保持するフレーム部材として構成されるものであって、一例として
図1に示すように、フレームセグメント21と保持部材22とによって可変翼1(翼部11)を挟み込むように構成される。フレームセグメント21は、可変翼1の長軸部12aを受け入れるフランジ部23と、後述する可変機構3を外嵌めするボス部24とを具えて成る。なお、このような構造からフランジ部23の周縁部分には、可変翼1と同数の受入孔25が等間隔で形成されるものである。
また保持部材22は、
図1に示すように中央部分が開孔された円板状に形成されており、本実施例では可変翼1が両軸タイプであるため、この保持部材22にも可変翼1の短軸部12bを受け入れる受入孔25が等配される。
そしてこれらフレームセグメント21と保持部材22とによって挟み込まれた可変翼1(翼部11)を、常に円滑に回動させ得るように、両部材間の寸法が、ほぼ一定(概ね可変翼1の翼幅h程度)に維持されるものであり、一例として受入孔25の外周部分に、四カ所設けられたカシメピン26によって両部材間の寸法が維持される。ここで、このカシメピン26を受け入れるためにフレームセグメント21及び保持部材22に開孔される孔をピン孔27とする。
【0025】
なお、本実施例では、フレームセグメント21のフランジ部23は、保持部材22とほぼ同径のフランジ部23Aと、保持部材22より幾分大きい径のフランジ部23Bとの二つのフランジ部分から成り、これらを同一部材で形成するものであるが、同一部材での形成が難しい場合等にあっては、径の異なる二つのフランジ部を別体で形成しておき、後にカシメ加工やブレージング加工等によって接合することも可能である。
【0026】
次に可変機構3について説明する。このものはタービンフレーム2のボス部24の外周側に設けられ、排気流量を調節するために可変翼1を回動させるものであり、一例として
図1に示すように、アッセンブリ内において実質的に可変翼1の回動を生起する回動部材31と、この回動を可変翼1に伝える伝達部材32とを具えて成るものである。回動部材31は、図示するように中央部分が開孔された略円板状に形成され、その周縁部分に可変翼1と同数の伝達部材32を等配して成るものである。また、この伝達部材32は、回動部材31に対し回転自在に取り付けられる駆動要素32Aと、可変翼1の基準面15にカシメ等によって固定状態に取り付けられる受動要素32Bとを具えて成るものであり、これら駆動要素32Aと受動要素32Bとが接続された係合状態で、回動が伝達される。具体的には四角片状の駆動要素32Aを、回動部材31に対して回転自在にピン止めするとともに、可変翼1の基準面15を受動要素32Bに圧入し、かしめるものである。ここで受動要素32Bには、予め駆動要素32Aを受け入れ得る略U字状部が形成されており、この部位に四角片状の駆動要素32Aを嵌め込むことにより、双方の係合を図りながら、回動部材31をボス部24に取り付けるものである。
【0027】
なお複数の可変翼1を取り付けた初期状態において、これらを周状に整列させるにあたっては、各可変翼1と受動要素32Bとが、ほぼ一定の角度で取り付けられる必要があり、本実施例においては、主に可変翼1の基準面15がこの作用を担っている。また回動部材31を単にボス部24に嵌め込むだけでは、回動部材31がタービンフレーム2から僅かに離反した際、伝達部材32の係合が解除されてしまうことが懸念される。このため、これを防止すべくタービンフレーム2の対向側から回動部材31を挟むようにリング33等を設け、回動部材31に対してタービンフレーム2側への押圧傾向を付与するものである。
このような構成によって、エンジンが低速回転を行った際には、可変機構3の回動部材31を適宜回動させ、伝達部材32を介して軸部12に伝達するものであり、これにより、可変翼1を
図1(a)に示すように回動させ、排気ガスGを適宜絞り込んで、排気流量を調節するものである。
【0028】
本発明に係る可変翼1を適用した排気ガイドアッセンブリAの一例は、以上のように構成されて成り、以下、この可変翼1の製造方法について
図4に基づき説明する。
本発明に係る可変翼1は、以下に示す(1) 〜(5) の工程によって、素形材Wから最終製品(可変翼1)に加工されるものである。
(1)素形材の準備工程P1
(2)長軸側の切削工程P2(長軸側の翼端切削も含む)
(3)短軸側の切削工程P3(短軸側の翼端切削も含む)
(4)二面切削工程(基準面切削工程)P4
(5)バレル研磨工程
【0029】
(1)素形材の準備工程P1
この工程は、翼部11と軸部12とを合金素材で一体に具えた素形材W(可変翼1の原形)を準備する工程であり
、ロストワックスに代表される精密鋳造法が適用される。もちろん、本工程においては、素形材Wが目的の可変翼1を実現し得るボリューム(体積)を有するように考慮された鋳造が行われるが、その後の切削加工を極力、少なくするように、素形材Wを最終製品状態(いわゆるニヤネットシェイプ状態)に近づけることが好ましい。
なお、素形材Wには、これを鋳型から取り出した段階で、例えば
図4に示すように、翼端エッジに面取りC(ここでは一定傾斜の面取りC)が形成される
ものであり、そのためには素形材Wを鋳造する鋳型(翼端エッジを形成する部位)に面取り加工を施しておく
ものである。これにより、鋳造と同時に素形材Wの翼端エッジに面取りCが形成でき
、鋳造後に別途面取り加工を施す必要がなく、可変翼1をより効率的に製造することができるものである。
【0030】
因みに、翼部11の翼端エッジに形成する面取りCとしては、必ずしも一定傾斜の面取りC(例えば45度の傾斜面)に限定されるものではなく、他にも
図5(b)に示すように、断面視でR形状の面取りCを形成しても構わない。ここで、本明細書で「R形状」と記載したのは、翼端エッジに丸みを帯びた面取り加工を施す場合、面取りとしての丸み(ラウンド形状)が常に一定の径寸法に形成されるものだけでなく、例えば断面視で楕円形(長円形)のように徐々に径寸法が変化するものも含むためである。また、翼端エッジに形成する面取りCとしては、例えば一定の傾斜面(断面視では傾斜状の直線)から徐々にR形状に変化するもの、つまりC面とR面とを組み合わせたものなども含まれるものである。
【0031】
(2)長軸側の切削工程P2
この工程は、主に長軸部12aの径寸法を所望の寸法に切削する工程であるが、長軸側の翼端切削も行う工程である。具体的には、可変翼1を回転させながら、バイトCTを長軸部12aの軸方向に沿って動かし、長軸部12aを所望の径寸法に切削する。このとき可変翼1が摺動段差14を有するものであれば、この摺動段差14も併せて形成される。その後、回転する可変翼1に対し、バイトCTを翼端面に沿って動かし、長軸側の翼端面を切削するものである。なお、本発明では、この翼端切削を行う際、既に素形材Wの段階で翼端エッジに一定傾斜やR形状の面取りCが形成されているため、翼端エッジにバリBが発生しないものである。従って、従来、本工程後に行っていたバリ除去工程(バフ研磨など)を廃止することができる。
【0032】
因みに、翼部11の翼端エッジに形成する面取りCとしては、R形状の面取りCよりも一定傾斜の面取りCの方が好ましく、以下、これについて説明する。
例えば素形材Wの翼端エッジに一定傾斜の面取りCを形成した場合には、一例として
図5(a)に示すように、切削位置(切削代)が変わっても、面取りCの傾斜角度(ここでは45度)が一定のため極めてバリBが発生し難いものである。これに対し、素形材Wの翼端エッジにR形状の面取りCを形成した場合には、一例として
図5(b)に示すように、切削位置(切削代)が変わると、R面(R形状の面取りC)における接線方向と切削面との成す角度が変化するため(ばらつくため)、バリBの抑制効果も幾らか低下し得るものである。しかしながら、翼端エッジにR形状の面取りCを形成した場合であっても、切削位置の設定を適正に行えば、上記一定傾斜の面取りCを形成した場合と同様のバリ抑制効果が得られるものである。
【0033】
(3)短軸側の切削工程P3
この工程は、一例として
図4に併せ示すように、主に短軸部12bの径寸法を所望の寸法に切削する工程であるが、短軸側の翼端切削も行う工程である。また、本工程では、短軸部12bの先端の切削も行い、短軸部12bを所望長さに形成するものである。具体的には、例えば回転させたエンドミルEMに短軸部12bの先端を当てて、短軸部12bを所望長さに切削し、その後、可変翼1を回転させながら、バイトCTを短軸部12bの軸方向に沿って動かし、短軸部12bを所望の径寸法に切削する。このとき可変翼1が摺動段差14を有するものであれば、この摺動段差14も併せて形成される。その後、回転する可変翼1に対し、バイトCTを翼端面に沿って動かし、短軸側の翼端面を切削するものである。なお、本発明では、この翼端切削においても長軸側と同様に、素形材Wの段階で既に翼端エッジに一定傾斜やR形状の面取りCが形成されているため、翼端エッジにバリBが発生しないものである。従って、ここでも従来、本工程後に行っていたバリ除去工程を廃止することができる。
【0034】
(4)二面切削工程(基準面切削工程)P4
この工程は、可変翼1が軸部12(長軸部12a)の先端に基準面15を具備する場合に行われる工程(切削工程)である。なお、ここでは基準面15の形成(切削)に伴い、長軸部12aの先端も切削するものであり、これにより長軸部12aが所望の長さ寸法に形成される。因みに、可変翼1がもともと基準面15を有しない場合には、上述した長軸側の切削工程P2において、長軸部12aの先端も切削され、当該部位を所望長さに形成するものである。
また、ここでは基準面15を、長軸部12aにおける対向する二平面として形成しているが、基準面15は先に述べたように必ずしもこれに限定されるものではなく、長方形断面や正方形断面を成す四平面として形成されてもよく、その場合には本工程は四面切削工程となる(基準面切削工程であることは変わらない)。
【0035】
(5)バレル研磨工程
この工程は、二面切削工程P4を終了した可変翼1(素形材W)を全体的に表面研磨する工程であり、例えば可変翼1とメディアと呼ばれる添加剤とをバレル容器に入れ、バレル容器を回転もしくは振動させることによって、可変翼1とメディアとを衝突させて、可変翼1の表面を仕上げるものである。