特許第6093298号(P6093298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093298
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】発熱材料用の反応チャンバー
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/44 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   G21C19/44 E
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-514649(P2013-514649)
(86)(22)【出願日】2011年6月9日
(65)【公表番号】特表2013-535008(P2013-535008A)
(43)【公表日】2013年9月9日
(86)【国際出願番号】EP2011059609
(87)【国際公開番号】WO2011157628
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2014年3月20日
(31)【優先権主張番号】1054752
(32)【優先日】2010年6月16日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510163846
【氏名又は名称】コミシリア ア レネルジ アトミック エ オ エナジーズ オルタネティヴズ
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】マザウディエ、ファブリス
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−002420(JP,A)
【文献】 特開平11−267240(JP,A)
【文献】 特開平09−140821(JP,A)
【文献】 特開平08−033730(JP,A)
【文献】 特開2000−276671(JP,A)
【文献】 特開昭55−048691(JP,A)
【文献】 特表2010−536705(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0037549(US,A1)
【文献】 米国特許第5509362(US,A)
【文献】 仏国特許出願公開第2376215(FR,A1)
【文献】 米国特許第6166390(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/44
G21C 3/00
G21C 9/00
G21C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱酸化反応のための固形材料(10)用の反応チャンバーであって、少なくとも:
―下部レベルに対応する、前記固形材料用の集積容器(1)と、
前記集積容器(1)における前記固形材料の酸化反応の間に発熱反応からの熱を受けるように構成され、前記固形材料の酸化反応の間に放出される熱を受けるために前記集積容器(1)の上方に配置された中間レベルであって、前記固形材料の酸化反応の間に前記集積容器(1)から放出される熱を吸収するように、少なくとも1つの分割された形態のアルカリ土類炭酸塩または少なくとも1つのアルカリ土類炭酸塩のスラブを含む反応性負荷(4)を備え、前記アルカリ土類炭酸塩が、吸熱性の反応における熱の影響下で分解する、中間レベルと、
―カバーを備える上部レベルと
を含むマルチレベルの構造を備えることを特徴とするチャンバー。
【請求項2】
前記アルカリ土類炭酸塩がCaCO3であることを特徴とする、請求項1に記載の発熱材料用の反応チャンバー。
【請求項3】
格納される前記材料がプルトニウム及び/又はウランの炭化物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の発熱材料用の反応チャンバー。
【請求項4】
前記反応性負荷の熱分解の温度範囲を調整するように、前記反応性負荷がさらに複数の異なるタイプの炭酸塩を含むことを特徴とする、請求項2または3に記載の発熱材料用の反応チャンバー。
【請求項5】
前記反応性負荷がさらにカーボンを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発熱材料用の反応チャンバー。
【請求項6】
前記チャンバーの前記集積容器が、ステンレス鋼又はインコネルであり得る耐熱金属材料で作られることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発熱材料用の反応チャンバー。
【請求項7】
前記反応性負荷を支持し、前記負荷の分解中にそれをふるいにかけるために役立つ格子(3)を備え、前記反応性負荷が前記格子と接触して位置することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発熱材料用の反応チャンバー。
【請求項8】
前記反応性負荷が、前記格子上に位置する単体ブロックであることを特徴とする、請求項7に記載の発熱材料用の反応チャンバー。
【請求項9】
前記反応性負荷が、前記格子上に位置する様々なスラブ内に分布していることを特徴とする、請求項7に記載の発熱材料用の反応チャンバー。
【請求項10】
前記反応性負荷が細粒の形で分布し、前記細粒の粒子サイズが前記格子の開口サイズよりも大きいことを特徴とする、請求項7に記載の発熱材料用の反応チャンバー。
【請求項11】
前記反応性負荷と前記上部レベルとの間にシールを提供する化学的に不活性の中間プレート(5)をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の発熱材料用の反応チャンバー。
【請求項12】
前記中間プレートがタングステンで作られることを特徴とする、請求項11に記載の発熱材料用の反応チャンバー。
【請求項13】
前記反応性負荷に均衡圧力を加えるための手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の発熱材料用の反応チャンバー。
【請求項14】
前記反応性負荷に均衡圧力を加えるための前記手段が前記上部レベル内に組み込まれ、間にばねが挿入されている2枚の板の形をとることを特徴とする、請求項13に記載の発熱材料用の反応チャンバー。
【請求項15】
前記反応性負荷に均衡圧力を加えるための前記手段が重り(61)を備えることを特徴とする、請求項13に記載の発熱材料用の反応チャンバー。
【請求項16】
前記中間レベル及び上部レベルが一体にされ、前記チャンバーが、前記集積容器にしっかりと固定されて前記容器を閉じることができる前記上部レベルに配置され、前記カバーと同体の2つの上部シャッター(41、42)を備え、前記シャッターが少なくとも1つのアルカリ土類炭酸塩を含む反応性負荷(4)を含み、前記集積容器(1)は反応性材料(10)が装填され、前記2つのシャッター(41、42)により閉じられることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発熱材料用の反応チャンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、非常に反応しやすい材料の酸化反応の制御に関連する技術的プロセス及び装置のエンジニアリングに関する。それはより直接的に/主として、酸素の存在下で激しく発熱するやり方で反応し、従って熱暴走のリスク管理を必要とする材料用の機能化された反応チャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
固形材料の発熱酸化反応の制御は、貯蔵又は倉入れの前、又は窒素溶解による再処理前、或いはさらにこれらの燃料を生産するためのサイクルにおいて生み出される、製造時の廃棄物の管理との関連で、核燃料をプルトニウム及び/又はウランを含む炭化物又は窒化物の形態で酸化するプロセスに関して、とりわけ核の分野における実際の問題である。これらの酸化されていない窒化物又は炭化物、核燃料は激しく酸素と反応しやすく、潜在的に自然発火性である。それらを酸素物へと転換することは、一定の化学的リスクを未然に防ぎ得る。
【0003】
プルトニウムを含む炭化物燃料(U、Pu)Cは、酸素に対して非常に高い親和性を有し、それは様々な製造作業中の生成物の安定性に影響する可能性があり、これらの燃料の酸化反応は、次の激しく発熱する(ΔrH≒−1250kJ/mol)の反応:MC+O→MO+M+CO (ここでM=U,Pu)
に従って、激しく発熱する熱暴走につながり得る。
【0004】
安全性のために、反応は常時制御されなければならない。
【0005】
純粋な、又は合金の金属プルトニウムは、これらの酸化プロセスに関係する材料であり得る。制御されるべきプルトニウムを含む金属の酸化を可能にする容器は、仏国特許出願公開第2 752 234号明細書に、既に記述されている。より正確には、この先行技術の容器は、溶解しやすい反応システムを含むように特に設計されている、多層容器である。閉じ込めチャンバーは、タンタル、タングステン、及びそれらの合金から選ばれた第一の材料から作られる、少なくとも1枚のシートで構成され、このシートは、使われるプロセスの温度において空気と反応しない、第二の材料で作られた少なくとも2枚のシートの間に挿入されている。この第二の材料はステンレス鋼であると有利であり得る。
【0006】
酸化反応の間、この多層チャンバーは非常に僅かしか酸化されず、プルトニウムが溶解し次に誤って漏れた場合、及びステンレス鋼に穴が開いた場合、タンタルはプルトニウムを保持し、結果的に製造されたチャンバーは安全である。
【0007】
例えば内部に非常に燃えやすい化学物質又は燃料が格納され、或いは作用する、倉庫又は工場もしくはキャビネット用の、機能化されそして潜在的に活性の屋根又は天井における、建設分野又は産業用建物の分野のような領域で、同じタイプの問題に遭遇し得る。
【0008】
一般的に、プロセス管理において、相当な過熱と関連する−又はその結果の−化学反応の潜在的な暴走は、センサー及びフィードバックのグループを用いて、手動で又は自動的に従来から管理されている。このタイプの管理は、効果的ではあるが、その代わりに1つ以上の期待される動作が行われるように、第一に、反応のシステムが問題の1つ以上のセンサーに対して見出される、原子炉からの情報の伝達に依存し、次に制御/指令モジュールに依存する。是正処置が行われることを確実にする、この情報の流れ及びその管理は、瞬間的ではあり得ない。それらはまた、正しく動作する情報チェーン内のセンサー及び全ての要素にも依存する。最後に、これらのプロセスは、暴走の場合に原子炉心の中性子反応性のフェールセーフ管理用に、すなわち制御棒及び、中性子を吸収するように、それらを非常に速く降ろすことを可能にするシステム用に、先験的に用意されるシステムと同様、例えそれが公称の動作におけるプロセスの電源から有利なことに切り離されているとしても、信頼性があり利用可能でなければならない電源を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
出願者は、化学的プロセスを管理する従来のシステムに、そのままの状態で反応において介入する、設計的にロバストで、複雑な又は工場で作られたセンサー、或いはさらに情報ネットワークを含まず、そして自給自足できる、すなわち電源を必要としない、直接的で素早い手段を加えることが適切であり得ると信じる。
【0010】
このために出願者は、その役割が処理されるべき生成物用の集積容器に限らない、(例えば酸化及び発熱性である、反応を制御するために求められる反応体を含む)反応チャンバーを提案する。温度に関して、この容器は暴走又は過熱の場合に、熱の除去を助ける一方で酸化反応を遅くして更に停止まで可能にし、そして温度を低減できる、特別な機能に関与している。
【0011】
この機能は、チャンバーを作り上げる材料の特別な性質、及び前記容器内に存在する様々な活性成分の構成に依存する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
より正確には、本発明の主題はチャンバーの真にその構造が、堅固で自給自足できる方法で、とりわけプルトニウム−又はウラン−を含有する炭化物の酸化反応の間、管理されるべき激しい発熱性に関する効果を可能にする、発熱材料用の反応チャンバーである。
【0013】
より正確には、本発明の主題は発熱材料用の反応チャンバーであって、少なくとも:
―下部レベルに対応する、前記材料用の集積容器と、
―前記材料の酸化反応の間に放出される熱を吸収するように、少なくとも1つのアルカリ土類炭酸塩を含む反応性負荷を備え、前記アルカリ土類炭酸塩が、吸熱性の逆反応における熱の影響下で分解する、中間レベルと、
―カバーを備える上部レベルと
を含むマルチレベルの構造を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の1つの実施形態によれば、アルカリ土類炭酸塩はCaCOである。
【0015】
本発明の1つの実施形態によれば、この酸化プロセスにおいて処理される材料は、プルトニウム及び/又はウランの炭化物である。
【0016】
本発明の1つの実施形態によれば、反応性負荷の熱分解の温度範囲を調整するように、反応性負荷はさらに複数の異なるタイプの炭酸塩を含む。
【0017】
本発明の1つの実施形態によれば、反応性負荷はさらにカーボンを含む。
【0018】
本発明の1つの実施形態によれば、チャンバーの集積容器はステンレス鋼又はインコネル・タイプであり得る耐熱金属材料で作られる。
【0019】
本発明の1つの実施形態によれば、チャンバーは反応性負荷を支持し、前記負荷の分解中にそれをふるいにかけるために役立つ格子を備え、反応性負荷は前記格子と接触して位置する。
【0020】
本発明の1つの実施形態によれば、反応性負荷は前記格子上に位置する単体ブロックである。
【0021】
本発明の1つの実施形態によれば、反応性負荷は前記格子上に位置する、様々なスラブ内に分布している。
【0022】
本発明の1つの実施形態によれば、反応性負荷は細粒の形で分布し、細粒の粒子サイズは前記格子の開口サイズよりも大きい。
【0023】
本発明の1つの実施形態によれば、チャンバーは反応性負荷と上部レベルとの間にシールを提供する、化学的に不活性の中間プレートをさらに備える。
【0024】
本発明の1つの実施形態によれば、中間プレートはタングステンで作られる。
【0025】
本発明の1つの実施形態によれば、チャンバーは反応性負荷に均衡圧力を加えるための手段をさらに備える。
【0026】
本発明の1つの実施形態によれば、反応性負荷に均衡圧力を加えるための手段は上部レベル内に組み込まれ、間にばねが挿入されている2枚の板の形をとる。
【0027】
本発明の1つの実施形態によれば、反応性負荷に均衡圧力を加えるための手段は重りを備える。
【0028】
本発明の1つの実施形態によれば、中間レベル及び上部レベルは一体にされ、チャンバーは、集積容器にしっかりと固定されて前記チャンバーを閉じることができる2つの上部シャッターを備え、前記シャッターはアルカリ土類炭酸塩を含む。
【0029】
本発明は、制限されない例のために与えられている以下の記述を読み、そして図面を参照することでより良く理解され、その他の利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】華氏における温度の関数としての、炭酸塩の吸熱性の化学分解逆反応の進行を例証する。
図2】炭酸塩の分解速度論の温度依存性を説明している、ln k=f(1/T)のアレニウス線図を示す。
図3a】本発明の第一の例示的チャンバーの、図3bと類似の変形を図解する。
図3b】本発明の第一の例示的チャンバーの、図3aと類似の変形を図解する。
図4】本発明による第二の例示的チャンバーを図解する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の物理化学的原理は、制御することが求められる反応において「安全のための」反応と呼ばれる、選ばれた化学反応の効果の使用にある。
【0032】
選ばれた化学反応、又は「安全のための」化学反応は、CaCO(方解石又はさらに石灰石或いは白亜)のようなアルカリ土類炭酸塩の熱分解:
CaCO→CaO+CO
である。
【0033】
CaCOの分解は沢山の文献の主題である。それは特に、例えば論文:J of Thermal Analysis 5 (1973), 43−49; J of Materials Science 39 (2004), 5189−5193; Ceramica 54 (2008), 268−272; C. R. Chimie 7 (004) 559−568; J of Thermal Analysis 45 (1995), 303−310; 及びThermochimica Acta 388 (2002) 115−128の文献において、方解石又はカルシウム炭酸塩CaCOは温度の影響下で分解し、異なる物理的及び化学的性質の2つの種類である、酸化カルシウムCaO及び二酸化炭素COを生じさせることが記述されている。
【0034】
CaOは、その融点が2570℃の、耐熱性の不燃性固形物である。その化学反応は吸熱性であり、すなわちそれはエネルギーを消費し、熱量:ΔH=200〜233kJ/molが継続することを必要とする。カルシウム炭酸塩CaCOに関して、図1に説明され、そして特に温度の関数としての、CaCOとMgCOの反応の速度論に関する、Ceramica 54 (2008), 268−272に記述されているように、約700℃〜950℃超における分解速度の急速な増大(S字形)と共に、反応が一般的に400〜1000℃の間で生じる。著者によれば、見掛けの活性化エネルギーEaは、試験条件に応じて170〜200kJ/molの間で変化する。
【0035】
これは、相当に激しく温度的に活性化された反応である。言い換えれば、温度とその上昇は反応速度に対して強い活性化効果を有する。
【0036】
CaCOは、熱源の赤外線による照射特性の範囲において、非常に高い放射率ε=0.96を有する。この放射率は、1の放射率を持つ黒体(仮想の放射体)に近い。この特性は、外部熱源の温度上昇を調べるために、そこから放射される熱を効果的に吸収し、そして従って熱分解用のしきい値に達するために、生成物の容量を部分的に調節する。
【0037】
炭酸塩の分解は、気体が窒素、不活性ガス、又はさらに空気であろうと、気体の化学的性質には殆ど依存しないことが更に知られている。相当な量(数十%)のCOだけは、化学反応におけるその直接的な役割のために、大きな影響を持つ(CaCOの熱分解は、しかしながらむしろ不可逆的となる傾向と均衡を保つ)。
【0038】
この熱分解反応は吸熱性である。それは従ってエネルギーを消費する。その割合は温度と共に大きく増加する。それは相当に激しく温度的に活性化される。
【0039】
連続する反応プロセスを通じて消費されるエネルギー量は、周囲の環境の温度に比例する。
【0040】
安全のためのスラブ(security slab)と呼ばれるものへと形成される、炭酸塩の吸熱性の熱分解反応は、制御することが求められる偶発的な発熱酸化反応がそこで生じるベッドの上方で起きる。吸熱反応は、酸化反応により解放されたエネルギーの一部を吸収する。
【0041】
それはさらに2つの異なる物理的状態における2つの種類:CaO(その融点が非常に高い耐熱性の固形物)及びCO(ガス)を生み出す。炭酸塩は酸化反応が生じるレベルよりも高く配置される。第二の技術的効果が得られる:生み出されたCOガスは熱を除去するために作用するのに対して、固形物のCaOは白熱するベッド上へと落下し、それは砂が火の上に投げられる時のように、覆って窒息させることにより酸素を奪う、第三の技術的効果に相当する。事実上、酸素を奪われて、酸化反応は停止するか又は大幅に遅くされる。
【0042】
一般的に1〜20%の間の量で、例えばハロゲン化物(NaCl)又はアルカリ−炭酸塩(NaCO、KCO)である、調整塩類がCaCOスラブに加えられても良く、その塩類は生成物の熱分解の温度範囲が、数十℃以内に仕上げられ/調整されることを可能にする。
【0043】
この温度範囲は、混合されたウランとプルトニウムの炭化物を酸化物へと転換するプロセスにおいて対象とする温度範囲に、正確に相当する。
【0044】
一般に、この吸熱反応の速度論は化学的に制御される(分解の間に、界面反応がCaCOスラブの表面で生じる)。定常反応領域に関して、等温形態における挙動(COの離脱に関連する重量減少)を支配する法則は線形である(拡散律速又は速度の減少は無い)。
【0045】
一定の条件下では、生成されたCaOが分解しない場合、界面への熱伝導は限定的となる。その除去を助け/容易にするために、あらゆる関心が持たれ、それは白熱するベッドを覆って窒息させる/消火する有用な技術的効果をさらに有する。
【0046】
上記の理由から、本発明は、その或る実施形態において、(例示的実施形態に関して、以下でより詳細に記述されるように)重り又はばねを通じて、カバー内に生成される荷重の効果を可能にし、CaOが白熱するベッド上に落下すること(期待される技術的効果)を可能にする、CaOの除去を促進する最適化されたチャンバー構造を提案する。
【0047】
出願者は、機械的動作がCaOの除去を大いに容易化し、その一方で当然、当初の炭酸塩の土台の形を持つシェル又は骨組みは所定の位置に留まることを観察した。固形物のCaOは非常にもろく、非常に容易に崩壊する。
【0048】
CaOの除去を確実にすることは、安定した不動の線形の型が、界面の化学的制御を通じて連続的に観察され、そして吸熱反応の速度論が維持されるであろうことを保証し、その反応は温度及び反応領域に直接比例する、持続的かつ連続的な速度で続く。
【0049】
CaCOスラブの凝集力及び見掛け密度は、しかしながら熱の影響下で、材料が効果的かつ徐々に崩壊するように選ばれねばならない。材料が余りに高密度である場合(自然石灰石、さらに大理石)、熱分解は崩壊無しで更にゆっくりと生じ、そして処理後に多孔質の骨組みを残し得る。その反対に、材料が十分に密ではない場合、それは余りに速く、或いは望ましくないやり方で崩壊し得る。原子力用セラミックに関して、選ばれた調整塩類の割合にとりわけ依存する事前に設定されたサイクルにおいて、従来から約100〜600MPaの圧力を伴う均衡圧縮又は単軸圧縮により、望ましくはCaCOを形成することが推奨される。
【0050】
CaCOの物理的形態もまた重要である。保護されることが求められる白熱するベッドの領域に、それを適合させることが必要である。
【0051】
熱的に活性化された化学プロセスの速度は、ほぼアレニウスの法則:
k(T)=A・exp(−Ea/RT)
に従うことが良く知られており、ここでAは振動数因子と呼ばれる頻度因子であり、k(T)は反応速度定数である。
【0052】
(U,Pu)C炭化物の酸化の見掛け活性化エネルギーは、出願者により実施された研究の結果によれば、それは10〜30kJ/molの間にあるため、比較的には大幅に低い。
【0053】
ln k=f(1/T)のアレニウス線図を用いると、酸化反応の温度上昇は酸化速度論に対して大きな影響を持たず(暴走に対する低い傾向の実験的実証)、そして比例的に、図2に例証されるように、分解の活性化を通じて大きな吸熱効果を持つことを推測するのは容易である。
【0054】
曲線C2aは弱く活性化された(U,Pu)Cの酸化の場合の吸熱反応に関し、曲線C2bは激しく温度的に活性化された「安全のための」吸熱反応に関する。
【0055】
調整塩類に加えて、その(僅かに発熱性の)酸化温度が特別な処理を用いて変更され得る活性炭を、CaCOと併せて用意することは有利であり得る。
【0056】
カーボン粉末を用いる利点は、それがプルトニウムを含む炭化物の代わりに酸素を消費することである。消火する/覆って窒息させる技術的効果は、従ってこの酸素の消費を通じて高められる。
【0057】
さらに、CaCOスラブの熱伝導率が高められ、それは熱をより容易に伝導することを意味し、従って生成されるガスの体積膨張を通じたスラブの崩壊と同時の、そのままでのCO発生が容易になる。
【0058】
本発明による反応チャンバーの第一の例示的実施形態:
図3a及び3bは、酸化されることを目的とする反応性プルトニウム及び/又はウラン炭化物材料10が、その内部に置かれている集積容器1を備えた、本発明による第一の例示的な機能化された負荷反応チャンバーを図解する。この集積容器は、より上方のレベルへの調整を可能にする支柱2を装備している。
【0059】
チャンバーは2つのレベルを備え、その1つは調整可能な高さを有する。中間レベルはCaCO(安全反応)を含む。
【0060】
上部は反応チャンバーのベッド上方に設置され、銃眼形状を含む脚2を用いて高く上げられている。
【0061】
反応チャンバーは、プルトニウムを含む炭化物を酸化するプロセスの温度(一般に500〜700℃の間)に耐えるように十分に耐熱性であり、熱を壁に排出すると共に熱を炭酸塩に伝導するために良好な熱導体である、インコネル又は別の金属材料で作られる。
【0062】
炭化物のスラブの、全て金属製の周囲は、スラブが周囲の要素の良好な熱伝導率及びそれらの熱負荷を通じて間接的に加熱されることを可能にし、一方で放射は、それが吸熱反応に直接関係するため、炭酸塩を直接加熱する。
【0063】
有利なことに、反応チャンバーはCaCO材料、又はCaCOと調整塩類と呼ばれるものとの混合物を含み、これらは一般に別の炭酸塩を含み、混合物の分解温度及び吸熱反応の特性が調整されることを可能にする。カーボンの非常に良好な熱伝導特性のために、それを炭酸塩又は炭酸塩の混合物に加えることもまた有益であり得るが、それはCaCOのスラブを通じて熱がより均等に分布するのを確実にする。
【0064】
格子3は、炭酸塩の単体スラブ4又は様々な個々のスラブ、或いはさらに炭酸塩の細粒のような分割された形態の炭酸塩を支持するために用意される。事実、反応に対して求められる素早さに応じて、材料を分割された、又は塊の形態で使うことは、多かれ少なかれ有益であり得る。細粒が使用される場合、格子における開口のサイズは、細粒が分解前に含まれるように、前記細粒のサイズに適応させられる。
【0065】
その組立品はカバー60で閉じられる。このカバーは、図3aに図解される如く、CaCO負荷に圧力を加えるように、その間にばねの構造体が挿入されている2枚の板で構成され得る。それは一般に2枚のステンレス鋼の板を備え得る。
【0066】
図3bに図解されている類似の変形によれば、板とばねの構造は、タングステンのような高密度を有する材料で作られた一枚板61によって置き換えられ得る。
【0067】
「化学的」障壁機能を提供する中間板5が、カバーと、CaCO負荷を含む中間レベルとの間に挿入されている。この板は、一般にステンレス鋼又はインコネルのような不活性材料で作られる。
【0068】
従って、カバーは崩壊を助ける機能を有する。ばねにより及ぼされる荷重又は応力を用いて、カバーの板は安全のためのスラブを圧力下に置く。その結果、熱分解に対するしきい値に達したとき、及び(結晶の破壊を通じて、必然的に密度のより低いCaOへと変わる)スラブの機械的性質が付随して減少したとき、CaOは白熱するベッド上に大量に降り注ぎ、それをすっかり覆うように、強制的に格子を通過させられる。
【0069】
スラブが完全に分解されたとき、格子は直接カバーを支持する。
【0070】
従ってこの例示的実施形態に従って、本発明は2つの設計を提案する。
―例えばタングステンのような、一般的に高密度金属である非常に密な材料で作られる板の上に乗っており、この密な部分がCaCOスラブと接触する板に対して支えている、特定の平行六面体形状、又は他の任意の組合せと、
―同じ動作が発揮されることを可能にする、ばねを含む装置。
【0071】
板は、スラブの別々の領域上に(ここで反対に、スラブ全体にわたって連続的に)応力を及ぼし、そして応力を集中させることによって、その崩壊を推進するために、多かれ少なかれマークされた表面(例えば溝付き)を持ち得る。
【0072】
本発明による反応チャンバーの第二の例示的実施形態:
反応チャンバーは、図4に図解されるように、CaCO材料を含む2つのシャッター41及び42により閉じられ、反応性材料10が装填された集積容器部分1を備える。
図1
図2
図3a
図3b
図4