【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、本発明は、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia、Ib、IIIまたはV由来の莢膜糖である1または複数のコンジュゲートを用いる。特に、本発明は、これらのコンジュゲートのうちの1または複数を含む免疫原性組成物を提供する。この組成物は、これらのGBS血清型(複数可)による感染を予防するためのワクチンとして用いることができる。
【0007】
第2の態様では、本発明は、GBSによる感染に対して患者を免疫するための方法であって、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体を用いて予備免疫した(pre−immunised)患者に、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖であるコンジュゲートを投与するステップを含む方法を提供する。典型的には、コンジュゲートは、本発明の第1の態様の免疫原性組成物中のGBSコンジュゲートのうちの1種である。
【0008】
免疫原性組成物
一実施形態では、本発明は、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であるコンジュゲートを含む免疫原性組成物を提供する。第2の実施形態では、本発明は、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であるコンジュゲートを含む免疫原性組成物を提供する。第3の実施形態では、本発明は、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であるコンジュゲートを含む免疫原性組成物を提供する。第4の実施形態では、本発明は、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖であるコンジュゲートを含む免疫原性組成物を提供する。
【0009】
免疫原性組成物は、1より多いコンジュゲートを含んでよい。2種、3種または4種のコンジュゲートを含む本発明の実施形態が下に記載されている。これらの組成物に関して、本発明者らは、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であるコンジュゲートを含む組成物により、GBS血清型Ibに加えて、GBS血清型Iaに対する防御を付与することができることを見出した。この知見は、Ib型コンジュゲートではIa型細菌を死滅させることができる抗体を誘導することができないことを示唆している参考文献11の教示とは対照的である。したがって、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であるコンジュゲートを含む下記の実施形態は、それにより、血清型Iaに対する防御が増強され(組成物がキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であるコンジュゲートも含む場合)、また、組成物がキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であるコンジュゲートを含まない場合でさえも防御がもたらされ得るという点で有利であり得る。
【0010】
上記の通り、免疫原性組成物は、2種のコンジュゲートを含んでよい。一実施形態では、第1のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であり、第2のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖である。第2の実施形態では、第1のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であり、第2のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖である。第3の実施形態では、第1のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であり、第2のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖である。第4の実施形態では、第1のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であり、第2のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖である。第5の実施形態では、第1のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であり、第2のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖である。第6の実施形態では、第1のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であり、第2のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖である。
【0011】
同様に、免疫原性組成物は、3種のコンジュゲートを含んでよい。一実施形態では、第1のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であり、第2のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であり、第3のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖である。本発明者らは、そのような組成物(例えば、下に例示されている)が、GBSによる感染を予防するためのワクチンとして用いるために特に適していることを見出した。したがって、この実施形態は本発明の好ましい実施形態である。第2の実施形態では、第1のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であり、第2のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であり、第3のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖である。第3の実施形態では、第1のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であり、第2のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であり、第3のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖である。第4の実施形態では、第1のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であり、第2のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であり、第3のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖である。
【0012】
同様に、免疫原性組成物は、4種のコンジュゲートを含んでよい。一実施形態では、第1のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であり、第2のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であり、第3のコンジュゲートは、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であり、第4のコンジュゲートはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖である。
【0013】
典型的には、上記の免疫原性組成物は、具体的に記載されているもの以外の任意のコンジュゲート、特に、具体的に記載されているもの以外のGBS血清型由来の莢膜糖を含むコンジュゲートは含まない。しかし、いくつかの実施形態では、組成物は、他のGBS血清型由来の莢膜糖を含むコンジュゲートを含めた他のコンジュゲートを含んでよい。例えば、組成物は、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型II由来の莢膜糖であるコンジュゲートを含んでよい。同様に、組成物は、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型VI由来の莢膜糖であるコンジュゲートを含んでよい。別の可能性では、組成物は、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型VIII由来の莢膜糖であるコンジュゲートを含んでよい。
【0014】
上記の免疫原性組成物は、単位用量あたり任意の適切な量の莢膜糖(複数可)を含んでよい。莢膜糖(複数可)の適量は、単位用量あたり0.1μg〜50μgであり得る。典型的には、各GBS莢膜糖は、1μg〜30μg、例えば、2μg〜25μg、特に、5μg〜20μgの量で存在する。莢膜糖(複数可)の適量としては、単位用量あたり5μg、10μgおよび20μgを挙げることができる。本発明者らは、これらの量が、特に、免疫原性組成物がGBS血清型Ia、Ibおよび/またはIII由来の莢膜糖を含む場合に適することを見出した。したがって、上記の実施形態における各莢膜糖の単位用量あたりの適量は、以下の表中の番号を付した選択肢から選択することができ、組成物中の莢膜糖(複数可)が由来する血清型(複数可)を参照することにより関連する実施形態が示されている:
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3-1】
【0018】
【表3-2】
【0019】
【表3-3】
表Cに記載の投薬の選択肢に関して、本発明者らは、選択肢1、14および27が、特に、免疫原性組成物が、a)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、b)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、c)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であるコンジュゲートとを含む場合に有効であることを見出した。したがって、これらの投薬の選択肢は、本発明において用いるため、特に、この実施形態のために好ましい。潜在的な毒性を低下させるために、単位用量あたりの莢膜糖(複数可)の総量を最小限にすることが有利であり得る。したがって、投薬の選択肢1が特に好ましい。
【0020】
単位用量あたりの莢膜糖(複数可)の量をさらに少なくすることが可能であり得る。特に、莢膜糖(複数可)の適量は、単位用量あたり0.1μg〜5μgであり得る。したがって、典型的には、各GBS莢膜糖は、単位用量あたり0.1μg〜5μg、例えば、0.5μg、2.5μgまたは5μgの量で存在してよい。例えば、各GBS莢膜糖は、単位用量あたり0.5μg〜5μg、1μg〜4μg、2μg〜3μg、または約2.5μgの量で存在してよい。本発明者らは、これらの量が、特に、免疫原性組成物が、a)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、b)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、c)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であるコンジュゲートとを含む場合に適切であると想定する。したがって、この実施形態における各莢膜糖の単位用量あたりの適量は、下記の表中の番号を付した選択肢から選択することができる:
【0021】
【表4】
表C’に記載の投薬の選択肢に関して、本発明者らは、特に、選択肢1、14および27を想定する。これらの選択肢では、各GBS莢膜糖の量は同じである(例えば、下に例示されている高用量の組成物の場合と同様に)。
【0022】
【表5-1】
【0023】
【表5-2】
【0024】
【表5-3】
【0025】
【表5-4】
免疫原性組成物が1より多いコンジュゲートを含む上記の実施形態では、所与の莢膜糖の質量と他の莢膜糖(複数可)の質量の比率は変動してよい。したがって、上記の実施形態における各莢膜糖についての適切な比率(w/w)は、以下の表中の番号を付した選択肢から選択することができ、組成物中の莢膜糖(複数可)が由来する血清型(複数可)を参照することにより関連する実施形態が示される:
【0026】
【表6】
【0027】
【表7】
表Fに記載の比率の選択肢に関して、本発明者らは、選択肢1が、特に、免疫原性組成物が、a)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、b)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、c)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であるコンジュゲートとを含む場合に有効であることを見出した。したがって、この比率の選択肢は、本発明において用いるため、特に、この実施形態のために好ましい。
【0028】
【表8】
上記の通り、本発明は、一部において、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖であるコンジュゲートを含む免疫原性組成物に関する。本発明者らは、これらの組成物中のGBS血清型V由来の莢膜糖に対する免疫応答が、免疫原性組成物が1または複数の別の抗原を含む場合に減弱し得ることを見出した。理論に束縛されることを望むものではないが、別の抗原(複数可)が存在することにより「免疫干渉」が生じ、GBS血清型V由来の莢膜糖に対する応答が減弱すると考えられる。
【0029】
本発明者らは、これらの免疫原性組成物中のGBS血清型V由来の莢膜糖に対する応答が、組成物がアジュバントを含む場合に改善され得ることを見出した。この知見は、アジュバントではGBSコンジュゲートに対する免疫応答を改善することができないことを示唆している参考文献12の教示とは対照的である。したがって、別の実施形態では、本発明は、a)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、b)GBS血清型V由来の莢膜糖を含まない1または複数の抗原と、c)アジュバントとを含む免疫原性組成物を提供する。成分b)の抗原(複数可)は、他のGBS血清型(複数可)由来の莢膜糖(複数可)を含むコンジュゲート(複数可)であってよい。例えば、これらのコンジュゲート(複数可)は、キャリアタンパク質(複数可)にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia、Ibおよび/またはIII(複数可)由来の莢膜糖(複数可)であってよい。したがって、本発明のこの実施形態は、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖であるコンジュゲートを含み、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia、Ibおよび/またはIII由来の莢膜糖である1または複数のコンジュゲートをさらに含み、アジュバントをさらに含む本明細書に記載の任意の免疫原性組成物を包含する。あるいは、成分b)の抗原(複数可)は、他の種類(複数可)の抗原、例えば、下で「コンジュゲートと他の抗原の組み合わせ」および「GBSタンパク質抗原」という表題の下で記載されている抗原であってよい。したがって、本発明のこの実施形態は、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖であるコンジュゲート、および他のGBS血清型(複数可)由来の莢膜糖(複数可)を含むコンジュゲートを含まない1または複数の抗原を含み、アジュバントをさらに含む本明細書に記載の任意の免疫原性組成物も包含する。本発明者らは、下記の通り、本発明のこの実施形態におけるアジュバントは、例えばアルミニウム塩であってよいことを見出した。当業者は、これらの組成物において用いることができる他のアジュバントを同定することができるであろう。
【0030】
本発明者らは、この莢膜糖の用量を増加させると、GBS血清型V由来の莢膜糖に対する応答を改善することができることも見出した。特に、免疫原性組成物が、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたV型以外のGBS血清型由来の莢膜糖であるコンジュゲートを含む場合には、V型の莢膜糖の用量が他のGBS血清型由来の莢膜糖の用量よりも多いと、V型の莢膜糖に対する応答を改善することができる。したがって、別の実施形態では、本発明は、a)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、b)それぞれがキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたV型以外のGBS血清型由来の莢膜糖である1または複数のコンジュゲートとを含み、V型の莢膜糖の用量が他のGBS血清型(複数可)由来の莢膜糖(複数可)の総用量(複数可)よりも多い、または他のGBS血清型由来の莢膜糖の用量の少なくとも1つの用量、もしくは平均用量よりも多い免疫原性組成物を提供する。V型の莢膜糖の用量は、1.1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍多くてよい。成分b)が1より多いコンジュゲートを含む場合、V型の莢膜糖の用量は他のGBS血清型由来の莢膜糖の平均用量よりも多いことが典型的である。成分b)のコンジュゲート(複数可)は、V型以外の任意のGBS血清型由来の莢膜糖を含むコンジュゲートであってよい。例えば、これらのコンジュゲート(複数可)は、キャリアタンパク質(複数可)にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia、Ibおよび/またはIII(複数可)由来の莢膜糖(複数可)であってよい。したがって、本発明のこの実施形態は、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖であるコンジュゲートを含み、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia、Ibおよび/またはIII由来の莢膜糖である1または複数のコンジュゲートをさらに含み、V型の莢膜糖の用量が他のGBS血清型(複数可)由来の莢膜糖(複数可)の総用量(複数可)よりも多い、または他のGBS血清型由来の莢膜糖の用量の少なくとも1つの用量、もしくは平均用量よりも多い、本明細書に記載の任意の免疫原性組成物を包含する。本発明者らは、これらの組成物中の他のGBS血清型(複数可)由来の莢膜糖に対する免疫応答が、V型の莢膜糖の用量の方が多いことにより減弱し得ることも見出した。この結果は、上記の通り、組成物がアジュバントを含む場合に軽減され得る。さらに、この知見は、アジュバントではGBSコンジュゲートに対する免疫応答を改善することができないことを示唆している参考文献12の教示とは対照的である。
【0031】
本発明の免疫原性組成物を投与する方法を以下に論じる。簡単に述べると、本発明の免疫原性組成物は、単回用量または複数回用量で投与することができる。本発明者らは、特に、免疫原性組成物がGBS血清型Ia、Ibおよび/またはIII由来の莢膜糖を含む場合、より詳細には、免疫原性組成物が、a)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、b)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、c)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であるコンジュゲートとを含む場合には、本発明の免疫原性組成物を単回用量で投与することが有効であることを見出した。したがって、単回用量で投与することは本発明において、特に、これらの実施形態に好ましい。
【0032】
あるいは、1つの単位用量の後に第2の単位用量を続けることが有効であり得る。典型的には、第2(または第3、第4、第5など)の単位用量は第1の単位用量と同一である。第2の単位用量は、第1の単位用量の後の任意の適切な時間、特に、1カ月後、2カ月後または3カ月後に投与することができる。例えば、免疫原性組成物が、GBS血清型Ia、Ibおよび/またはIII由来の莢膜糖を含む場合には、第1の単位用量の3カ月後に第2の単位用量を投与することができる。別の例では、免疫原性組成物が、GBS血清型V由来の莢膜糖を含む場合には、第1の単位用量の1カ月後に第2の単位用量を投与することができる。典型的には、本発明の免疫原性組成物は、例えば、下記の通り、大腿または上腕への筋肉内投与により、筋肉内に投与される。
【0033】
下記の通り、本発明の免疫原性組成物は、1または複数のアジュバントを含んでよい。しかし、本発明者らは、特に、免疫原性組成物が、GBS血清型Ia、Ibおよび/またはIII由来の莢膜糖を含む場合、より詳細には、免疫原性組成物が、a)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、b)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、c)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であるコンジュゲートとを含む場合には、アジュバントを含まない組成物を用いることが有効であることを見出した。潜在的な毒性を低下させるために、アジュバントを除くことが有利であり得る。したがって、本発明において用いるため、特に、これらの実施形態には、いかなるアジュバントも含有しない(特に、いかなるアルミニウム塩アジュバントも含有しない)免疫原性組成物が好ましい。
【0034】
莢膜糖
本発明は、Streptococcus agalactiaeの莢膜糖に基づく。莢膜糖は、GBSのペプチドグリカン骨格と共有結合で連結し、また、ペプチドグリカン骨格に結合した別の糖であるB群抗原とは異なる。
【0035】
GBS莢膜糖は化学的に関連するが、抗原性が全く異なる。すべてのGBS莢膜糖が以下の三糖コアを共有する:
β−D−GlcpNAc(1→3)β−D−Galp(1→4)β−D−Glcp
種々のGBS血清型は、このコアの修飾のされ方が異なる。血清型IaとIIIの差異は、例えば、このコアにおいて、連続した三糖コアを連結するためにGlcNAc(Ia)またはGal(III)のいずれかが使用されることから生じる(
図1)。血清型IaおよびIbはどちらも、コア内のGlcNAcに連結した[α−D−NeupNAc(2→3)β−D−Galp−(1→]二糖を有するが、連結は1→4(Ia)または1→3(Ib)のいずれかである。
【0036】
GBS関連疾患は、主に血清型Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VII、およびVIIIから生じ、その85%超が5種の血清型:Ia、Ib、IIIおよびVによって引き起こされる。本発明は、これらの4種の血清型のうちの1または複数由来の糖、特に、血清型:Ia、IbおよびIIIのうちの1または複数由来の糖を用いることが好ましい。
図2に示されている通り、これらの4種の血清型のそれぞれの莢膜糖は、(a)すべての場合においてガラクトース残基に2→3で連結している末端のN−アセチル−ノイラミン酸(NeuNAc)残基(一般にシアル酸と呼ばれる)と、(b)三糖コア内部のN−アセチル−グルコサミン残基(GlcNAc)とを含む。
【0037】
4種の糖のすべてが三糖コア内部のガラクトース残基を含むが、血清型Ia、Ib、IIおよびIIIは、各繰り返し単位内に追加的なガラクトース残基も含有する。
【0038】
本発明に従って使用される糖は、それらの天然の形態であってよく、または修飾されていてよい。例えば、糖は、天然の莢膜糖よりも短くてよく、または化学的に修飾されていてよい。特に、本発明において使用される血清型Vの莢膜糖は、参考文献13および14に記載の通り修飾されていてよい。例えば、参考文献13および14に記載の通り実質的に脱シアル化された血清型Vの莢膜糖(
図3)が、本発明において用いるために具体的に想定される。脱シアル化されたGBS血清型Vの莢膜糖は、参考文献13に記載の通り、精製されたGBS血清型Vの莢膜糖を弱酸性条件下で(例えば、0.1Mの硫酸、80℃で60分間)処理することによって、またはノイラミニダーゼで処理することによって調製することができる。脱シアル化されたGBS血清型Vの莢膜糖を調製するための好ましい方法は、精製された糖を1Mの酢酸を用いて、81℃+/−3℃で2時間処理することによる。したがって、本発明に従って使用される糖は、天然に見出されるような実質的に全長の莢膜多糖であってよく、または、天然の長さよりも短くてよい。全長の多糖は、本発明で用いるために、例えば、弱酸中での加水分解によって、加熱によって、サイズ選別クロマトグラフィー(sizing chromatography)などによって解重合させて、より短い断片を得ることができる。鎖長は、ウサギにおいてGBS糖の免疫原性に影響を及ぼすことが報告されている[4]。特に、本発明において使用される血清型IIおよび/またはIIIの莢膜糖は、参考文献15および16に記載の通り解重合させることができる。これらの文書には、II型およびIII型の莢膜糖を、穏やかな脱アミノ切断により部分的に解重合させて、末端の2,5−アンヒドロ−D−マンノース残基が還元された抗原断片にすることが記載されている。簡単に述べると、莢膜糖を0.5NのNaOHに溶解させ、70℃で約1〜4時間加熱する。このインキュベーションの長さによって解重合の程度を制御し、これは、標準の方法によって(例えば、参考文献15に記載のHPLCによって)決定することができる。試料を氷水浴内で冷却した後、氷酢酸を加えてpH4にする。次いで、部分的にN−脱アシル化された生成物を、5%(wt/vol)のNaNO
2を4℃で2時間にわたって撹拌しながら加えることによって脱アミノ化する。新たに形成された2,5−アンヒドロ−D−マンノース残基の遊離のアルデヒドは、下記の通り、キャリアタンパク質とコンジュゲートするために用いることができる。
【0039】
破傷風トキソイドキャリアとコンジュゲートを形成するために、解重合した材料を用いることを含めた、エンド−β−ガラクトシダーゼによる血清型IIIの莢膜糖の解重合が報告されている[参考文献1&4〜6]。GBS血清型IIIおよびVIII由来の莢膜多糖のオゾン分解も解重合のために用いられている[17]。MW>30kDaの糖を用いることが好ましく、実質的に全長の莢膜多糖を用いることができる。血清型Iaについては、MWが150〜300kDa、特に、175〜275kDaの範囲である多糖を用いることが好ましい。典型的には、MWが約200kDaまたは約260kDaである血清型Iaの糖を用いる。血清型Ibについては、MWが150〜300kDa、特に、175〜250kDaの範囲である多糖を用いることが好ましい。典型的には、MWが約200kDaまたは約230kDaである血清型Ibの糖を用いる。血清型IIIについては、MWが50〜200kDa、特に、80〜150kDaの範囲である多糖を用いることが好ましい。典型的には、MWが約100kDaまたは約140kDaである血清型III糖を用いる。血清型Vについては、MWが最大で約50kDaである多糖を用いることも好ましい。典型的には、MWが約100kDaである血清型Vの糖を用いる。これらの分子質量は、Polymer Standard Serviceから入手可能なものなどのデキストラン標準物質と比較してゲル濾過によって測定することができる[18]。
【0040】
糖は、天然に見出される莢膜糖と比較して化学的に修飾することができる。例えば、糖は、脱O−アセチル化(部分的にまたは完全に)、脱N−アセチル化(部分的にまたは完全に)、N−プロピオン酸化(N−propionated)(部分的にまたは完全に)などをされてよい。脱アセチル化は、コンジュゲートする前、その間、またはその後に起こり得るが、コンジュゲートする前に起こることが好ましい。特定の糖に応じて、脱アセチル化は免疫原性に影響を及ぼす場合と影響を及ぼさない場合がある。種々の血清型のGBS糖に対するO−アセチル化の関連性は参考文献19において論じられており、いくつかの実施形態では、7位、8位および/または9位のシアル酸残基のO−アセチル化が、コンジュゲートする前、その間およびその後で、例えば、保護/脱保護によって、再アセチル化によってなどで保持される。しかし、典型的には、本発明において使用されるGBS糖は、7位、8位および/または9位のシアル酸残基のO−アセチル化を実質的に有さない。特に、GBS糖が、下記の通り塩基抽出によって精製された場合には、O−アセチル化は一般には失われる(参考文献19)。脱アセチル化の作用などは、常套的なアッセイによって評価することができる。
【0041】
莢膜糖は、本明細書の参考文献、例えば、参考文献2および20などに記載の公知の技法によって精製することができる。典型的なプロセスは、塩基抽出、遠心分離、濾過、RNアーゼ/DNアーゼ処理、プロテアーゼ処理、濃縮、サイズ排除クロマトグラフィー、限外濾過、陰イオン交換クロマトグラフィー、およびさらなる限外濾過を伴う。GBS細胞を、細菌の細胞壁を切断して細胞壁成分を遊離させる酵素であるムタノリシン(mutanolysin)で処理することも有用である。
【0042】
代替として、参考文献21に記載の精製プロセスを用いることができる。このプロセスは、塩基抽出、エタノール/CaCl
2処理、CTAB沈殿、および再可溶化を伴う。別の代替のプロセスが参考文献22に記載されている。
【0043】
しかし、本発明は、天然の供給源から精製された糖に限定されず、糖は、全合成または部分合成などの他の方法によって得ることができる。
【0044】
コンジュゲーション
本発明は、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia、Ib、IIIまたはV由来の莢膜糖であるコンジュゲートに関する。一般に、糖とキャリアの共有結合性コンジュゲーションにより、糖の免疫原性がT非依存性抗原からT依存性抗原に変換されるので、糖の免疫原性が増強され、したがって免疫記憶が刺激される。コンジュゲーションは、小児用ワクチンに特に有用であり[例えば、参考文献23]、これは周知の技法である[例えば、参考文献24〜32に概説されている]。したがって、本発明のプロセスは、精製された糖をキャリア分子とコンジュゲートするさらなるステップを含み得る。
【0045】
GBS糖のコンジュゲーションは、広く報告されている。例えば、参考文献1〜9を参照されたい。GBS糖をコンジュゲートするための典型的な先行技術のプロセスは、典型的には、精製された糖の、破傷風トキソイド(TT)またはCRM197などのキャリアタンパク質との還元アミノ化を伴う[2]。還元アミノ化には、キャリアのアミノ酸の側鎖上のアミン基および糖のアルデヒド基が関与する。GBS莢膜糖はそれらの天然の形態ではアルデヒド基を含まないので、典型的には、これを生じさせた後に、糖のシアル酸残基の一部(例えば、5%から40%間、特に、10%から30%間、好ましくは約20%)を酸化することに(例えば、過ヨウ素酸酸化)よってコンジュゲートする[2、33]。GBS血清型Ia、Ib、II、III、およびVのそれぞれについて、このように調製されたコンジュゲートワクチンはヒトにおいて安全かつ免疫原性であることが示されている[10]。典型的には、本発明の免疫原性組成物中のコンジュゲートのすべてがこのように調製されたものである。しかし、本発明において脱シアル化された血清型Vの莢膜糖を用いる場合には、この糖にアルデヒド基を生じさせた後に、糖のガラクトース残基の一部(例えば、5%から40%間、特に、10%から30%間、好ましくは約20%)を酸化すること(例えば、過ヨウ素酸酸化)によってコンジュゲートすることができる[14]。代替のコンジュゲーションプロセスは、参考文献34に記載の通り、糖の−NH
2基(脱N−アセチル化によるものか、またはアミンの導入後のもの)を、二官能性リンカーと併せて用いることを伴う。いくつかの実施形態では、本発明の免疫原性組成物中のコンジュゲートのうちの1または複数はこのように調製されたものである。別の代替のプロセスが参考文献15および16に記載されている。このプロセスでは、穏やかな脱アミノ切断によるII型またはIII型の莢膜糖の解重合に由来する、末端の2,5−アンヒドロ−D−マンノース残基の遊離のアルデヒド基を還元アミノ化によるコンジュゲーションのために用いる。いくつかの実施形態では、本発明の免疫原性組成物中のコンジュゲートのうちの1または複数はこのように調製されたものである。
【0046】
本発明は、一般にはタンパク質であるキャリア分子の使用に関する。有用なキャリアタンパク質としては、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイドなどの、細菌の毒素または類毒素が挙げられる。毒素または類毒素の断片、例えば、破傷風トキソイドの断片Cも用いることができる[35]。ジフテリア毒素のCRM197変異体[36〜38]は、本発明に対して特に有用である。他の適切なキャリアタンパク質としては、N.meningitidisの外膜タンパク質[39]、合成ペプチド[40、41]、熱ショックタンパク質[42、43]、百日咳タンパク質[44、45]、サイトカイン[46]、リンフォカイン[46]、ホルモン[46]、増殖因子[46]、ヒト血清アルブミン(組換え型であることが好ましい)、種々の病原体由来抗原由来の複数のヒトCD4
+T細胞エピトープを含む人工タンパク質[47]例えば、N19[48]、H.influenzae由来のタンパク質D[49、50]、肺炎球菌の表面タンパク質PspA[51]、ニューモリシン[52]、鉄取り込みタンパク質(iron−uptake protein)[53]、C.difficile由来の毒素Aまたは毒素B[54]、組換え型のPseudomonas aeruginosaの細胞外タンパク質(exoprotein)A(rEPA)[55]、GBSタンパク質(下記特にGBS67を参照されたい)[206]などが挙げられる。
【0047】
キャリアへの結合は、例えば、キャリアタンパク質のリジン残基の側鎖の−NH
2基、またはアルギニン残基の側鎖の−NH
2基、またはN末端の−NH
2基を介することが好ましい。結合は、例えば、システイン残基の側鎖の−SH基を介してもよい。
【0048】
例えば、キャリアが抑制される危険性を低下させるために、1より多いキャリアタンパク質を用いることが可能である。したがって、異なるGBS血清型に対して異なるキャリアタンパク質を用いることができ、例えば、血清型Iaの糖をCRM197とコンジュゲートすることができ、その一方で血清型Ibの糖を破傷風トキソイドとコンジュゲートすることができる。特定の糖抗原に対して1より多いキャリアタンパク質を用いることも可能であり、例えば、血清型IIIの糖を2群にし、その一部をCRM197とコンジュゲートし、その他を破傷風トキソイドとコンジュゲートすることができる。しかし、典型的には、すべての糖に対して同じキャリアタンパク質を用いることが好ましい。
【0049】
単一のキャリアタンパク質は、1より多い糖抗原を保有してよい[56、57]。例えば、単一のキャリアタンパク質を、血清型IaおよびIb由来の糖とコンジュゲートすることができる。この目標を実現するために、コンジュゲーション反応の前に異なる糖を混合することができる。しかし、典型的には、各血清群に対してコンジュゲートを別々にし、コンジュゲートした後に異なる糖を混合することが好ましい。別々のコンジュゲートは、同じキャリアに基づいてよい。
【0050】
典型的には、糖:タンパク質比(w/w)が1:5(すなわちタンパク質過剰)から5:1(すなわち糖過剰)の間、特に、1:5から2:1の間の比率であるコンジュゲートを用いる。本発明においてキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であるコンジュゲートを用いる場合には、糖:タンパク質比(w/w)は、典型的には、約1:1から1:2の間、特に、約1:1.3である。同様に、本発明においてキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であるコンジュゲートを用いる場合には、比率は、典型的には、約1:1から1:2の間、特に、約1:1.3である。本発明においてキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であるコンジュゲートを用いる場合には、糖:タンパク質比(w/w)は、典型的には、約3:1から1:1の間、特に、約2:1である。しかし、糖:タンパク質比(w/w)が約1:1〜1:5、特に、約1:3.3である、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型IIIも用いることができる。最後に、本発明においてキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖であるコンジュゲートを用いる場合には、比率は、典型的には、約2:1から1:1の間、特に、約1.1:1である。したがって、特に、長い糖鎖では、糖の重量過剰が典型的である。
【0051】
組成物は、少量の遊離のキャリアを含んでよい[58]。所与のキャリアタンパク質が本発明の組成物中に遊離の形態にコンジュゲートさせた形態の両方で存在する場合、コンジュゲートしていない形態は、全体として、組成物中のキャリアタンパク質の総量の5%以下であることが好ましく、2重量%未満で存在することがより好ましい。
【0052】
コンジュゲートした後、遊離の糖にコンジュゲートさせた糖を分離することができる。疎水性クロマトグラフィー、タンジェンシャル限外濾過、ダイアフィルトレーションなどを含めた多くの適切な方法がある[参考文献59&60なども参照されたい]。好ましい方法は参考文献61に記載されている。
【0053】
本発明の組成物が解重合したオリゴ糖を含む場合、解重合がコンジュゲーションに先行することが好ましい。
【0054】
コンジュゲートと他の抗原の組み合わせ
本発明の免疫原性組成物は、1または複数の別の抗原を含んでよい。
【0055】
別の抗原(複数可)は、別のGBSコンジュゲートを含んでよい。異なるGBSコンジュゲートは同じGBS血清型由来の異なる種類のコンジュゲートおよび/または異なるGBS血清型由来のコンジュゲートを含んでよい。組成物は、典型的には、別々のコンジュゲート(例えば、各血清型に対して異なるコンジュゲート)を調製し、次いでコンジュゲートを組み合わせることによって生成される。
【0056】
別の抗原(複数可)は、下に詳述されているGBSのアミノ酸配列を含んでよい。
【0057】
別の抗原(複数可)は、非GBS病原体由来の抗原を含んでよい。したがって、本発明の組成物は、追加的な細菌性抗原、ウイルス性抗原または寄生生物性抗原を含めた1または複数の非GBS抗原をさらに含んでよい。これらは以下から選択することができる:
−N.meningitidis血清群B由来のタンパク質抗原、参考文献62〜68中のものなど。タンパク質「287」(以下を参照されたい)および誘導体(例えば、「ΔG287」)が特に好ましい。
−N.meningitidis血清群B由来の外膜小胞(OMV)調製物、例えば、参考文献69、70、71、72などに開示されているものなど。
−N.meningitidis血清群A、C、W135および/またはY由来の糖抗原、例えば、参考文献73に開示されている血清群C由来のオリゴ糖または参考文献74のオリゴ糖。
−Streptococcus pneumoniae由来の糖抗原[例えば、参考文献75〜77;参考文献84の第22章および23章]。
−A型肝炎ウイルス由来の抗原、例えば、不活化ウイルス[例えば、78、79;参考文献84の第15章]。
−B型肝炎ウイルス由来の抗原、例えば、表面抗原および/またはコア抗原など[例えば、79、80;参考文献84の第16章]。
−C型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば、81]。
−Bordetella pertussis由来の抗原、例えば、B.pertussis由来の百日咳ホロ毒素(PT)および線維状赤血球凝集素(FHA)、必要に応じてパータクチンならびに/または凝集原2および凝集原3とも組み合わせて[例えば、参考文献82&83;参考文献84の第21章]。
−ジフテリア抗原、例えば、ジフテリアトキソイド[例えば、参考文献84の第13章]。
−破傷風抗原、例えば、破傷風トキソイド[例えば、参考文献84の第27章]。
−Haemophilus influenzae B由来の糖抗原[例えば、参考文献84の第14章]
−N.gonorrhoeae由来の抗原[例えば、62、63、64]。
−Chlamydia pneumoniae由来の抗原[例えば、85、86、87、88、89、90、91]。
−Chlamydia trachomatis由来の抗原[例えば、92]。
−Porphyromonas gingivalis由来の抗原[例えば、93]。
−ポリオ抗原(複数可)[例えば、94、95;参考文献84の第24章]、例えば、IPV。
−狂犬病抗原(複数可)[例えば、96]、例えば、凍結乾燥不活化ウイルス[例えば97、RabAvert(商標)]。
−麻疹抗原、流行性耳下腺炎抗原および/または風疹抗原[例えば、参考文献84の第19章、20章および26章]。
−インフルエンザ抗原(複数可)[例えば、参考文献84の第17章および18章]、例えば、赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質。
−Moraxella catarrhalis由来の抗原[例えば、98]。
−Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)由来の抗原[例えば、99、100、101]。
−Staphylococcus aureus由来の抗原[例えば、102]。
【0058】
糖抗原または炭水化物抗原を用いる場合、免疫原性を増強するために、その抗原をキャリアとコンジュゲートすることが好ましい。H.influenzae B、髄膜炎菌および肺炎球菌の糖抗原のコンジュゲーションが周知である。
【0059】
毒性のタンパク質抗原は、必要な場合、解毒することができる(例えば、化学的手段および/または遺伝的手段による百日咳毒素の解毒[83])。
【0060】
組成物にジフテリア抗原が含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含むことが好ましい。
【0061】
抗原をアルミニウム塩に吸着させることができる。組成物中に1より多いコンジュゲートが存在する場合、すべてのコンジュゲートを吸着させる必要はない。
【0062】
ある種類の好ましい組成物は、ヘルペスウイルス、N.gonorrhoeae、C.trachomatisなどの性感染病原体由来の別の抗原を含む。別の種類の好ましい組成物は、高齢者および/または免疫無防備状態に影響を及ぼす別の抗原を含み、したがって、本発明のGBS抗原を、以下の非GBS病原体由来の1または複数の抗原と組み合わせることができる:インフルエンザウイルス、Enterococcus faecalis、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermis、Pseudomonas aeruginosa、Legionella pneumophila、Listeria monocytogenes、Neisseria meningitidis、およびパラインフルエンザウイルス。
【0063】
組成物中の抗原は、典型的には、それぞれ少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般に、任意の所与の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を惹起するために十分なものである。
【0064】
本発明の組成物にタンパク質抗原を用いる代替として、抗原をコードする核酸を用いることができる[例えば、参考文献103〜111]。したがって、本発明の組成物のタンパク質成分を、そのタンパク質をコードする核酸(例えば、プラスミドの形態のDNAであることが好ましい)で置き換えることができる。
【0065】
実際面で、本発明の組成物に含める抗原の数には上限がある場合がある。本発明の組成物中の抗原(GBS抗原を含む)の数は、20未満、19未満、18未満、17未満、16未満、15未満、14未満、13未満、12未満、11未満、10未満、9未満、8未満、7未満、6未満、5未満、4未満、3未満、または2未満であってよい。本発明の組成物中のGBS抗原の数は、6未満、5未満、4未満、3未満、または2未満であってよい。
【0066】
薬学的方法および使用
本発明の免疫原性組成物は、薬学的に許容されるキャリアをさらに含んでよい。典型的な「薬学的に許容されるキャリア」としては、それ自体は、組成物を受け取る個体に対して有害な、抗体の産生を誘導しない任意のキャリアが挙げられる。適切なキャリアは、典型的には、大きな、ゆっくりと代謝される巨大分子、例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸共重合体、スクロース[112]、トレハロース[113]、ラクトース、および脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソーム)である。そのようなキャリアは当業者に周知である。ワクチンは、例えば、水、食塩水、グリセロールなどの希釈剤も含有してよい。さらに、補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などが存在してよい。滅菌された、発熱物質を含まないリン酸緩衝生理食塩水が典型的なキャリアである。薬学的に許容される賦形剤の詳細な論述は、参考文献114において入手可能である。
【0067】
本発明の組成物は、水性形態(すなわち、溶液または懸濁液)または乾燥した形態(例えば、凍結乾燥したもの)であってよい。乾燥ワクチンを用いる場合には、注射する前に液体媒体中に再構成する。コンジュゲートワクチンの凍結乾燥は当技術分野で公知であり、例えば、Menjugate(商標)製品が凍結乾燥した形態で存在している。本発明の免疫原性組成物が1より多いGBS血清型由来の莢膜糖を含むコンジュゲートを含む場合、コンジュゲートを別々に調製し、混合し、次いで凍結乾燥することが典型的である。このように、本明細書に記載のコンジュゲートを2種、3種または4種などを含む凍結乾燥した組成物を調製することができる。凍結乾燥の間、コンジュゲートを安定化するために、糖アルコール(例えば、マンニトール)および/または二糖(例えば、スクロースまたはトレハロース)を、例えば、1mg/mlから30mg/mlの間(例えば、約25mg/ml)で組成物に含めることが好ましい場合がある。スクロースの使用は、GBSコンジュゲートワクチンの安定剤として推奨されている(参考文献115)。しかし、本発明の安定剤はマンニトールであることが典型的である。乾燥ワクチンを、注射する前に液体媒体中に再構成する場合、残留するマンニトールの濃度は、典型的には、約2〜20mg/ml、例えば、3.75mg/ml、7.5mg/mlまたは15mg/mlになる。マンニトールの使用は、マンニトールがGBS莢膜糖の単糖サブユニットとは化学的に別個であるので有利である。これは、例えば品質管理分析のための莢膜糖の検出は、マンニトールに干渉されない上記糖のサブユニットの存在に基づいてよいことを意味する。対照的に、スクロースのような安定剤は、グルコースを含有し、これは上記糖におけるグルコースサブユニットの検出に干渉し得る。
【0068】
組成物はバイアル中に存在してよく、または組成物は充填済み注射器中に存在してよい。注射器は、針を伴って、または伴わずに供給することができる。注射器は、組成物の単回用量を含み、一方バイアルは、単回用量または複数回用量を含むことができる。
【0069】
本発明の水性組成物は、他のワクチンを凍結乾燥した形態から再構成するためにも適している。本発明の組成物がそのような即時の再構成のために用いるものである場合、本発明は、バイアル2つを含み得るキット、または、充填済み注射器1つとバイアル1つを含み、注射する前に注射器の内容物を用いてバイアルの内容物を再活性化することができるキットを提供する。
【0070】
本発明の組成物は、単位用量形態または複数回用量形態に包装することができる。複数回用量形態には充填済み注射器よりもバイアルの方が好ましい。有効な投与体積は常套的に確立することができるが、組成物の典型的なヒト用量は、例えば、筋肉内注射するためには、体積0.5mlである。
【0071】
組成物のpHは、6から8の間であることが好ましく、約7であることが好ましい。安定なpHは、緩衝液を用いることによって維持することができる。典型的には、本発明の免疫原性組成物はリン酸二水素カリウム緩衝液を含む。リン酸二水素カリウム緩衝液は、約1〜10mM、例えば、1.25mM、2.5mMまたは5.0mMのリン酸二水素カリウムを含んでよい。組成物が、水酸化アルミニウム塩を含む場合、ヒスチジン緩衝液を用いることが好ましい[116]。組成物は、滅菌され得、かつ/または発熱物質が不含であり得る。本発明の組成物は、ヒトに対して等張性であり得る。
【0072】
本発明の組成物は免疫原性であり、ワクチン組成物であることがより好ましい。本発明によるワクチンは、予防的(すなわち、感染を予防するためのもの)または治療的(すなわち、感染を処置するためのもの)のいずれかであり得るが、典型的には、予防的である。ワクチンとして用いる免疫原性組成物は、免疫学的有効量の抗原(複数可)、ならびに必要に応じて、任意の他の成分を含む。「免疫学的有効量」とは、その量を個体に単回用量またはシリーズの一部として投与することが、処置または予防に有効であることを意味する。この量は、処置される個体の健康および身体の状態、処置される個体の年齢、分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、抗体を合成する個体の免疫系の能力、所望の防御の程度、ワクチンの処方、処置にあたる医師による医学的な状況に関する評価、および他の関連因子に応じて変動する。常套的な試行によって決定することができる量は比較的広範囲に入ることが予想される。
【0073】
各用量の中で、個々の糖抗原の量は、一般に、0.1μgから50μgの間(糖の質量として測定する)、特に、1μgから50μgの間または0.5μgから25μgの間、より詳細には、2.5〜7.5μg、例えば、約1μg、約2.5μg、約5μg、約10μg、約15μg、約20μgまたは約25μgになる。各用量の中で、GBS莢膜糖の総量は、一般に≦70μg(糖の質量として測定する)、例えば、≦60μgである。特に、総量は、≦40μg(例えば、≦30μg)または≦20μg(例えば、≦15μg)であってよい。本発明者らは、これらの総量が、特に、免疫原性組成物が、a)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、b)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、c)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であるコンジュゲートとを含む場合に有効であることを見出した。したがって、これらの総量は、本発明において用いるため、特に、この実施形態のために好ましい。潜在的な毒性を低下させるために、単位用量あたりの莢膜糖(複数可)の総量を最小限にすることが有利であり得る。したがって、総量は≦20μg、例えば、≦15μg、≦7.5μgまたは≦1.5μgであることが好ましい。
【0074】
GBSは、体の種々の領域に影響を及ぼし、したがって、本発明の組成物は、様々な形態で調製することができる。例えば、組成物は、注射剤として、液剤または懸濁剤のいずれかとして調製することができる。組成物は、肺への投与のために、例えば、細粉または噴霧剤を用いて吸入器(inhaler)として調製することができる。組成物は、坐薬または膣坐薬として調製することができる。組成物は、鼻、耳または眼に投与するために、例えば、噴霧剤、点滴薬、ゲル剤または散剤として調製することができる[例えば、参考文献117&118]。肺炎球菌の糖[119、120]、Hibの糖[121]、MenCの糖[122]、およびHib糖とMenC糖のコンジュゲートの混合物[123]の経鼻投与での成功が報告されている。
【0075】
本発明の組成物は、特に、複数回用量形式で包装する場合には、抗菌薬を含んでよい。
【0076】
本発明の組成物は、洗浄剤、例えば、Tween80などのTween(ポリソルベート)を含んでよい。洗浄剤は、一般に、低レベルで、例えば、<0.01%で存在する。
【0077】
本発明の組成物は、張度を与えるためにナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含んでよい。10±2mg/mlのNaClの濃度が典型的である。いくつかの実施形態では、4〜10mg/ml、例えば、9.0mg/ml、7.0mg/ml、6.75mg/mlまたは4.5mg/mlのNaClの濃度を用いることができる。
【0078】
本発明の組成物は、一般に、バッファを含む。リン酸バッファが典型的である。
【0079】
本発明の組成物は、他の免疫調節剤と併せて投与することができる。特に、組成物は、1または複数のアジュバントを含んでよい。そのようなアジュバントとしては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:
A.無機物を含有する組成物
本発明においてアジュバントとして用いるのに適した、無機物を含有する組成物としては、無機塩、例えば、アルミニウム塩およびカルシウム塩(またはそれらの混合物)が挙げられる。カルシウム塩としては、リン酸カルシウム(例えば、参考文献124に開示されている「CAP」粒子)が挙げられる。アルミニウム塩としては、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられ、塩は任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶、非晶質など)を取る。これらの塩への吸着が好ましい。無機物を含有する組成物は、金属塩の粒子として処方することもできる[125]。
【0080】
水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムとして公知のアジュバントを用いることができる。これらの名称は慣習的であるが、どちらも、存在する実際の化合物についての正確な記載ではないので、利便性のためだけに使用される(例えば、参考文献126の第9章を参照されたい)。本発明では、アジュバントとして一般に使用される任意の「水酸化物」アジュバントまたは「ホスフェート」アジュバントを用いることができる。「水酸化アルミニウム」として公知のアジュバントは、典型的には、オキシ水酸化アルミニウム塩であり、これは、通常、少なくとも部分的に結晶である。「リン酸アルミニウム」として公知のアジュバントは、典型的には、アルミニウムヒドロキシホスフェートであり、多くの場合、少量の硫酸塩も含有する(すなわち、アルミニウムヒドロキシホスフェートサルフェート(aluminium hydroxyphosphate sulfate))。これらは、沈殿により得ることができ、沈殿の間の反応条件および濃度は、塩中のヒドロキシルのホスフェートによる置換の程度に影響する。
【0081】
繊維状の形態(例えば透過型電子顕微鏡写真で観察されるような)は、水酸化アルミニウムアジュバントに典型的である。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは、典型的に約11であり、すなわち、アジュバント自体は生理的なpHにおいて正の表面電荷を有する。pH7.4でAl
+++1mgあたり1.8〜2.6mgのタンパク質の吸着能力が、水酸化アルミニウムアジュバントについて報告されている。
【0082】
リン酸アルミニウムアジュバントは、一般に、0.3から1.2の間、好ましくは0.8から1.2の間、より好ましくは0.95±0.1のPO
4/Alモル比(molar ratio)を有する。リン酸アルミニウムは、特にヒドロキシリン酸塩については一般に非晶質である。典型的なアジュバントは、0.84〜0.92のPO
4/Alモル比を有する非晶質アルミニウムヒドロキシホスフェートであり、0.6mg Al
3+/mlで含まれる。リン酸アルミニウムは、一般に、粒子状(例えば、透過型電子顕微鏡写真で観察されるような板状の形態)である。粒子の典型的な直径は、任意の抗原が吸着した後に0.5〜20μm(例えば、約5〜10μm)の範囲である。pH7.4でAl
+++1mgあたり0.7から1.5mgの間のタンパク質の吸着能力が、リン酸アルミニウムアジュバントについて報告されている。
【0083】
リン酸アルミニウムのゼロ電荷点(PZC)は、ヒドロキシルのホスフェートによる置換の程度と反比例し、この置換の程度は、沈殿により塩を調製するために用いる反応条件および反応物の濃度に依存して変動し得る。PZCは、溶液中の遊離ホスフェートイオンの濃度を変化させること(より多いホスフェート=より酸性側のPZC)、またはヒスチジンバッファのようなバッファを加えること(PZCをより塩基性にする)によっても変更される。本発明に従って使用されるリン酸アルミニウムは、通常、4.0から7.0の間、より好ましくは5.0から6.5の間、例えば、約5.7のPZCを有する。
【0084】
本発明の組成物を調製するために用いるアルミニウム塩の懸濁液は、バッファ(例えば、リン酸バッファまたはヒスチジンバッファまたはトリスバッファ)を含有してよいが、これは必ずしも必要ではない。懸濁液は、滅菌されており、発熱物質を含まないことが好ましい。懸濁液は、例えば、1.0mMから20mMの間、好ましくは5mMから15mMの間、およびより好ましくは約10mMの濃度で存在する遊離の水性ホスフェートイオンを含んでよい。懸濁液は、塩化ナトリウムも含んでよい。
【0085】
本発明では、水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムの両方の混合物を用いることができる。この場合、リン酸アルミニウムが水酸化物よりも多く、例えば、少なくとも2:1、例えば、≧5:1、≧6:1、≧7:1、≧8:1、≧9:1などの重量比で存在してよい。
【0086】
患者に投与するための組成物中のAl
+++の濃度は、10mg/ml未満、例えば、≦5mg/ml、≦4mg/ml、≦3mg/ml、≦2mg/ml、≦1mg/mlなどであることが好ましい。好ましい範囲は、0.3mg/mlから1mg/mlの間である。最大0.85mg/用量が好ましい。
【0087】
典型的なアジュバントであるリン酸アルミニウムアジュバントは、0.84から0.92の間のPO
4/Alモル比を有する非晶質のアルミニウムヒドロキシホスフェートであり、0.6mg Al
3+/mlで含まれる。低用量のリン酸アルミニウム、例えば、用量あたりコンジュゲートあたり50μgから100μgの間のAl
3+を用いた吸着を用いることができる。
【0088】
B.油エマルジョン
本発明においてアジュバントとして用いるのに適した油エマルジョン組成物としては、MF59(マイクロフルイダイザーを用いてサブミクロンの粒子に処方した5%スクアレン、0.5%Tween80、および0.5%Span85)などのスクアレン−水エマルジョンが挙げられる[参考文献126の第10章; 参考文献127〜129も参照されたい]。MF59は、FLUAD(商標)インフルエンザウイルス三価サブユニットワクチンにおいてアジュバントとして使用される。
【0089】
組成物において用いるために特に好ましいアジュバントはサブミクロンの水中油エマルジョンである。本明細書で用いるための好ましいサブミクロンの水中油エマルジョンは、必要に応じて様々な量のMTP−PEを含有するスクアレン/水エマルジョン、例えば、4〜5%w/vのスクアレン、0.25〜1.0%w/vのTween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(polyoxyelthylenesorbitan monooleate))、および/または0.25〜1.0%Span85(ソルビタントリオレエート)、および、必要に応じて、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル(isogluatminyl)−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ(hydroxyphosphophoryloxy))−エチルアミン(MTP−PE)を含有するサブミクロンの水中油エマルジョンである。組成物において用いるためのサブミクロンの水中油エマルジョン、それを作製する方法、およびムラミルペプチドなどの免疫賦活剤は、参考文献127&130〜131に詳しく記載されている。
【0090】
完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA)も、本発明においてアジュバントとして用いることができる。
【0091】
C.サポニン処方物[参考文献126の第22章]
サポニン処方物も、本発明においてアジュバントとして用いることができる。サポニンは、広範囲の植物種の樹皮、葉、茎、根、さらには花において見出されるステロール配糖体およびトリテルペノイド配糖体の不均一な群である。Quillaia saponaria Molinaの木の樹皮から単離されたサポニンがアジュバントとして広く研究されている。サポニンは、Smilax ornata(サルサパリラ)、Gypsophilla paniculata(ブライダルベール)、およびSaponaria officianalis(カスミソウ)から、商業的に得ることもできる。サポニンアジュバント処方物としては、QS21などの精製された処方物、ならびにISCOMなどの脂質処方物が挙げられる。
【0092】
サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを用いて精製されてきた。これらの技法を用いて特異的に精製された画分が同定されており、それらとしては、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが挙げられる。サポニンはQS21であることが好ましい。QS21の生成方法は参考文献132に開示されている。サポニン処方物は、コレステロールなどのステロールも含んでよい[133]。
【0093】
サポニンとコレステロールの組み合わせを用いて、免疫賦活複合体(ISCOM)と呼ばれる独特の粒子を形成することができる[参考文献126の第23章]。ISCOMは、典型的には、リン脂質、例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンも含む。任意の公知のサポニンをISCOMに用いることができる。ISCOMは、QuilA、QHAおよびQHCのうちの1または複数を含むことが好ましい。ISCOMは、参考文献133〜135にさらに記載されている。必要に応じて、ISCOMは、追加的な洗浄剤(複数可)を欠いてよい[136]。
【0094】
サポニンに基づくアジュバントの開発についての総説は、参考文献137&138に見出すことができる。
【0095】
D.ビロソームおよびウイルス様粒子
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)も、本発明においてアジュバントとして用いることができる。これらの構造は、一般に、必要に応じてリン脂質と組み合わされ、またはリン脂質と一緒に処方される、ウイルス由来の1または複数のタンパク質を含有する。これらは、一般に、非病原性、非複製的であり、概して、いかなる天然のウイルスのゲノムも含有しない。ウイルスタンパク質を、組換え生成することができ、またはウイルス全体から単離することができる。ビロソームまたはVLPにおいて用いるのに適したこれらのウイルスタンパク質としては、インフルエンザウイルス(例えば、HAまたはNA)、B型肝炎ウイルス(例えば、コアタンパク質またはカプシドタンパク質)、E型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、シンドビスウイルス、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、レトロウイルス、ノーウォークウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIV、RNA−ファージ、Qβ−ファージ(例えば、コートタンパク質)、GA−ファージ、fr−ファージ、AP205ファージ、およびTy(例えば、レトロトランスポゾンTyタンパク質p1)に由来するタンパク質が挙げられる。VLPは、参考文献139〜144においてさらに論じられている。ビロソームは、例えば、参考文献145においてさらに論じられている。
【0096】
E.細菌誘導体または微生物誘導体
本発明において用いるのに適したアジュバントは、細菌誘導体または微生物誘導体、例えば、腸内細菌のリポ多糖(LPS)の無毒性の誘導体、リピドA誘導体、免疫賦活性オリゴヌクレオチドおよびADP−リボシル化毒素およびその解毒された誘導体を含む。
【0097】
LPSの無毒性の誘導体としては、モノホスホリルリピドA(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、4、5または6のアシル化された鎖を有する3脱O−アシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。好ましい3脱O−アシル化モノホスホリルリピドAの「小粒子」形態は、参考文献146に開示されている。そのような3dMPLの「小粒子」は、0.22μmの膜を通して滅菌ろ過するのに十分小さい[146]。他の無毒性のLPS誘導体としては、モノホスホリルリピドA模倣体、例えば、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体、例えば、RC−529が挙げられる[147、148]。
【0098】
リピドA誘導体としては、Escherichia coli由来のリピドAの誘導体、例えば、OM−174が挙げられる。OM−174は、例えば、参考文献149&150に記載されている。
【0099】
本発明においてアジュバントとして用いるのに適した免疫賦活性オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフを含有するヌクレオチド配列(リン酸結合によってグアノシンと連結した、メチル化されていないシトシンを含有するジヌクレオチド配列)が挙げられる。パリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含有する二本鎖RNAおよびオリゴヌクレオチドも、免疫賦活性であることが示されている。
【0100】
CpGは、ヌクレオチドの修飾/類似体、例えば、ホスホロチオエート修飾を含んでよく、また、二本鎖または一本鎖であってよい。参考文献151、152および153には、可能性のある類似体の置換、例えば、グアノシンの、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンによる置き換えが開示されている。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献154〜159においてさらに論じられている。
【0101】
CpG配列、例えば、GTCGTTモチーフまたはTTCGTTモチーフは、TLR9に向けられ得る[160]。CpG配列は、CpG−A ODNなどの、Th1免疫応答の誘導に特異的であってよく、または、CpG−B ODNなどのB細胞応答誘導により特異的であってよい。CpG−A ODNおよびCpG−B ODNは、参考文献161〜163において論じられている。CpGはCpG−A ODNであることが好ましい。
【0102】
CpGオリゴヌクレオチドは、受容体を認識するために5’末端を利用できるように構築することが好ましい。必要に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列を、それらの3’末端で結合させて、「イムノマー(immunomer)」を形成することができる。例えば、参考文献160&164〜166を参照されたい。
【0103】
細菌性のADP−リボシル化毒素およびその解毒された誘導体を、本発明においてアジュバントとして用いることができる。タンパク質は、E.coli(E.coli熱不安定性エンテロトキシン「LT」)、コレラ(「CT」)、または百日咳(「PT」)に由来することが好ましい。解毒されたADP−リボシル化毒素の、粘膜アジュバントとしての使用は、参考文献167に記載されており、非経口的なアジュバントとしての使用は参考文献168に記載されている。毒素または類毒素は、AサブユニットおよびBサブユニットの両方を含むホロ毒素の形態であることが好ましい。Aサブユニットは、解毒性変異を含有することが好ましく、Bサブユニットは変異していないことが好ましい。アジュバントは、解毒されたLT変異体、例えば、LT−K63、LT−R72、およびLT−G192であることが好ましい。ADP−リボシル化毒素およびその解毒された誘導体、特にLT−K63およびLT−R72の、アジュバントとしての使用は、参考文献169〜176に見出すことができる。アミノ酸置換についての数値での参照は、その全体が参照により具体的に本明細書に組み込まれる参考文献177に記載のADP−リボシル化毒素のAサブユニットとBサブユニットのアラインメントに基づくことが好ましい。
【0104】
F.ヒト免疫調節物質
本発明においてアジュバントとして用いるのに適したヒト免疫調節物質としては、サイトカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12[178]など)[179]、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子が挙げられる。
【0105】
G.生体接着剤(bioadhesive)および粘膜接着剤(mucoadhesive)
生体接着剤および粘膜接着剤も、本発明においてアジュバントとして用いることができる。適切な生体接着剤としては、エステル化されたヒアルロン酸ミクロスフェア[180]または粘膜接着剤、例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖およびカルボキシメチルセルロースの架橋した誘導体が挙げられる。キトサンおよびそれらの誘導体も、本発明においてアジュバントとして用いることができる[181]。
【0106】
H.微小粒子
微小粒子も、本発明においてアジュバントとして用いることができる。ポリ(ラクチド−co−グリコリド)を用いて、生分解性かつ無毒性の材料(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリカプロラクトンなど)から形成された微小粒子(すなわち、直径約100nm〜約150μm、より好ましくは直径約200nm〜約30μm、最も好ましくは直径約500nm〜約10μmの粒子)が好ましく、必要に応じて、それを、負に荷電した表面を有するように処理する(例えば、SDSを用いて)または正に荷電した表面を有するように処理する(例えば、CTABなどの陽イオン洗浄剤を用いて)。
【0107】
I.リポソーム(参考文献126の第13章&第14章)
アジュバントとして用いるのに適したリポソーム処方物の例は、参考文献182〜184に記載されている。
【0108】
J.ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル処方物
本発明において用いるのに適したアジュバントは、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル[185]を含む。そのような処方物としては、さらに、オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤[186]ならびに少なくとも1つの追加的な非イオン性界面活性剤、例えば、オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤[187]が挙げられる。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリオキシエチレン−9−ステアリル(steoryl)エーテル、ポリオキシエチレン(polyoxytheylene)−8−ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0109】
K.ポリホスファゼン(PCPP)
PCPP処方物は、例えば、参考文献188および189に記載されている。
【0110】
L.ムラミルペプチド
本発明においてアジュバントとして用いるのに適したムラミルペプチドの例としては、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル(normuramyl)−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)が挙げられる。
【0111】
M.イミダゾキノロン(Imidazoquinolone)化合物
本発明においてアジュバントとして用いるのに適したイミダゾキノロン化合物の例としては、イミキモド(Imiquamod)およびその同族化合物「レシキモド(Resiquimod)3M」)が挙げられ、参考文献190および191にさらに記載されている。
【0112】
N.チオセミカルバゾン化合物
すべてが本発明においてアジュバントとして用いるのに適したチオセミカルバゾン化合物、ならびに化合物を処方、製造、およびスクリーニングする方法の例としては、参考文献192に記載のものが挙げられる。チオセミカルバゾンは、ヒト末梢血単核細胞を、TNF−αなどのサイトカイン産生について刺激することにおいて特に有効である。
【0113】
O.トリプタントリン化合物
すべてが本発明においてアジュバントとして用いるのに適したトリプタントリン化合物、ならびに化合物を処方、製造、およびスクリーニングする方法の例としては、参考文献193に記載のものが挙げられる。トリプタントリン化合物は、ヒト末梢血単核細胞を、TNF−αなどのサイトカイン産生について刺激することにおいて特に有効である。
【0114】
本発明は、上記で同定したアジュバントの1または複数の態様の組み合わせも含んでよい。例えば、以下の組み合わせを本発明においてアジュバント組成物として用いることができる:(1)サポニンおよび水中油エマルジョン[194];(2)サポニン(例えば、QS21)+無毒性のLPS誘導体(例えば、3dMPL)[195];(3)サポニン(例えば、QS21)+無毒性のLPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えば、QS21)+ 3dMPL + IL−12(必要に応じて、+ステロール)[196];(5)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油エマルジョンの組み合わせ[197];(6)サブミクロンのエマルジョンに微小流動化した、またはボルテックスしてより大きな粒子サイズのエマルジョンを生じさせたかのいずれかの、10%スクアラン、0.4%Tween80(商標)、5%プルロニック−ブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含有するSAF。(7)2%スクアレン、0.2%Tween80、ならびに、モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁の骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))からなる群からの1または複数の細菌の細胞壁成分を含有するRibi(商標)アジュバント系(RAS)、(Ribi Immunochem);および(8)1または複数の無機塩類(例えば、アルミニウム塩など)+LPSの無毒性の誘導体(例えば、3dMPL)。
【0115】
免疫賦活剤としての機能を果たす他の物質は、参考文献126の第7章に開示されている。
【0116】
アルミニウム塩アジュバントの使用が特に好ましく、一般に、抗原はそのような塩に吸着される。本発明の組成物では、いくつかの抗原は水酸化アルミニウムに吸着させるが、他の抗原はリン酸アルミニウムと会合させることが可能である。しかし、一般には、単一の塩、例えば、水酸化物またはリン酸塩を用いるがその両方は用いないことが好ましい。すべてのコンジュゲートが吸着する必要はない、すなわち、一部またはすべてが溶液中で遊離していてよい。
【0117】
処置方法
本発明は、哺乳動物における免疫応答を上昇させるための方法であって、本発明の薬学的組成物を哺乳動物に投与する工程を含む方法も提供する。免疫応答は、防御的であることが好ましく、抗体を伴うことが好ましい。この方法により、追加免疫応答を生じさせることができる。
【0118】
哺乳動物はヒトであることが好ましい。ワクチンが予防的に使用するためのものである場合、ヒトは、子(例えば、幼児または乳児)またはティーンエイジャーであることが好ましく、ワクチンが治療的に使用するためのものである場合、ヒトは、成人であることが好ましい。例えば、安全性、投与量、免疫原性などを評価するために小児用ワクチンを成人に投与することもできる。処置するために好ましいヒトのクラスは、妊娠可能な年齢の女性(例えば、ティーンエイジャー以上)である。別の好ましいクラスは妊婦である。高齢の患者(例えば、50歳超、60歳超、70歳超、80歳超または90歳超など、特に、65歳超の高齢の患者)、特に、GBS感染の危険性が増す可能性があるナーシングホームで生活している高齢の患者([198])は、処置するために好ましい別のヒトのクラスである。いくつかの実施形態では、ヒトは、薬学的組成物を投与する前にGBS血清型Ia由来の莢膜糖に対する抗体を検出不可能なレベルで有する。他の実施形態では、ヒトは、薬学的組成物を投与する前に、GBS血清型Ib由来の莢膜糖に対する抗体を検出不可能なレベルで有する。他の実施形態では、ヒトは、薬学的組成物を投与する前に、GBS血清型III由来の莢膜糖に対する抗体を検出不可能なレベルで有する。特に、ヒトは、薬学的組成物を投与する前に、GBS血清型Ia由来の莢膜糖に対する抗体を検出不可能なレベルで有し、GBS血清型Ib由来の莢膜糖に対する抗体を検出不可能なレベルで有する可能性がある。その代わりに、またはそれに加えて、ヒトは、薬学的組成物を投与する前に、GBS血清型III由来の莢膜糖に対する抗体を検出不可能なレベルで有し得る。莢膜糖(複数可)に対する抗体のレベル(複数可)は、下のヒト試験(1)において記載されているELISAを用いて決定することができる。抗体のレベル(複数可)は、投与する1カ月前、特に、投与する1カ月前以内(例えば、2週間以内、1週間以内または投与当日)のレベルと同様であってよい。これらの検出不可能なレベル(複数可)の莢膜糖(複数可)に対する抗体を有する女性の新生児のGBS感染率はより高い可能性がある。これは、この母系のGBS莢膜糖に対する抗体のレベルが高いことが、新生児における疾患リスクの低下と相関するからである[参考文献199および200]。したがって、これらの女性への投与が本発明において具体的に想定される。
【0119】
いくつかの実施形態では、患者は、例えば、予備免疫した患者のセクションで本発明の第2の態様に関して下に記載されている通り、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体を用いて予備免疫されている。これらの実施形態では、免疫原性組成物中の少なくとも1つのコンジュゲートは、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖であることが好ましい。本発明者らは、患者がジフテリアトキソイドまたはその誘導体を用いて予備免疫されている場合、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体上に糖が提示されることによって莢膜糖に対する免疫応答が改善され得ることを見出した。組成物中の、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせた莢膜糖は、例えば、GBS血清型Ia、IbまたはIII由来であってよい。特に、莢膜糖は、GBS血清型III由来であってよい(下に例示されている通り)。これらの実施形態では、組成物中のGBS由来の莢膜糖のすべてがジフテリアトキソイドまたはその誘導体とコンジュゲートしていることが典型的である。キャリアまたは予備免疫抗原がジフテリアトキソイドの誘導体である場合には、その誘導体は、Dtと免疫学的に交差反応性のままであることが好ましく、CRM197であることが好ましい。
【0120】
他の実施形態では、患者は、例えば、予備免疫した患者および破傷風トキソイドキャリアのセクションで本発明の第2の態様に関して下に記載されている通り、破傷風トキソイドまたはその誘導体を用いて予備免疫されている。これらの実施形態では、免疫原性組成物中の少なくとも1つのコンジュゲートは、破傷風トキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖であることが好ましい。莢膜糖に対する免疫応答は、患者が、破傷風トキソイドまたはその誘導体を用いて予備免疫されている場合、破傷風トキソイドまたはその誘導体上に糖が提示されることによって改善され得る。組成物中の、破傷風トキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせた莢膜糖は、例えば、GBS血清型Ia、IbまたはIII由来であってよい。特に、莢膜糖は、GBS血清型III由来であってよい。これらの実施形態では、組成物中のGBS由来の莢膜糖のすべてが破傷風トキソイドまたはその誘導体とコンジュゲートしていることが典型的である。
【0121】
本発明は、医薬品として使用するための本発明の組成物も提供する。医薬品は、哺乳動物における免疫応答を生じさせることができること(すなわち、免疫原性組成物である)が好ましく、ワクチンであることがより好ましい。
【0122】
本発明は、哺乳動物における免疫応答を上昇させるための医薬品の製造における本発明の組成物の使用も提供する。
【0123】
これらの使用および方法は、S.agalactiaeによって引き起こされる疾患、例えば、新生児敗血症または菌血症、新生児肺炎、新生児髄膜炎、子宮内膜炎、骨髄炎、化膿性関節炎などを予防および/または処置するためのものであることが好ましい。
【0124】
疾患を予防する被験体は、本発明のコンジュゲートを受ける被験体と同じでなくてよい。例えば、子を保護するために、女性(妊娠前または妊娠中の)にコンジュゲートを投与することができる(いわゆる「母体免疫」[201〜203])。
【0125】
治療的処置の効力を調査する1つの方式は、本発明の組成物を投与した後に、GBS感染をモニターすることを包含する。予防的処置の効力を調査する1つの方式は、組成物を投与した後に、GBS抗原に対する免疫応答をモニターすることを包含する。
【0126】
本発明の好ましい組成物は、各抗原性成分に対する抗体保有率(seroprotection)の基準よりも優れている抗体価を、ヒト被験体の許容できる百分率でヒトに付与することができる。関連する抗体価が、宿主が抗原に対して抗体陽転すると考えられる抗体価を超える抗原は周知であり、そのような力価は、WHOなどの組織により公開されている。被験体の統計的に有意な試料の80%超、より好ましくは90%超、さらに好ましくは93%超、最も好ましくは96〜100%が抗体陽転することが好ましい。
【0127】
本発明の組成物は、一般に、患者に直接投与される。直接的な送達は、非経口的な注射(例えば、皮下に、腹腔内に、静脈内に、筋肉内に、もしくは組織の間質腔へ)、または直腸投与、経口投与、膣への投与、局所投与、経皮投与、鼻腔内投与、眼への投与、耳への投与、肺への投与は他の粘膜投与によって実現することができる。大腿または上腕への筋肉内投与が好ましい。注射は、針(例えば、皮下針)を介してよいが、その代わりに無針注射を用いることができる。典型的な筋肉内用量は0.5mlである。
【0128】
本発明は、全身免疫および/または粘膜免疫を惹起するために用いることができる。
【0129】
投薬処置は、単回用量スケジュールまたは複数回用量スケジュールであってよい。複数回用量は、一次免疫スケジュールおよび/または追加免疫スケジュールで用いることができる。一次用量スケジュールの後に、追加免疫用量スケジュールを続けることができる。初回刺激用量の間(例えば、4〜16週の間)、および初回刺激と追加免疫との間の適切なタイミングは、常套的に決定することができる。
【0130】
GBSタンパク質抗原
上記の通り、GBSタンパク質を本発明の組成物に含めることができる。GBSタンパク質は、本発明のコンジュゲートのためのキャリアタンパク質、他のコンジュゲートのためのキャリアタンパク質、またはコンジュゲートしていないタンパク質抗原として用いることができる。
【0131】
本発明で用いるためのGBSタンパク質抗原としては、参考文献99および204〜206に開示されているものが挙げられる。本発明で用いるための2種の好ましいGBSタンパク質抗原はGBS67およびGBS80として公知である[参考文献99を参照されたい]。本発明で用いるためのさらに好ましいGBSタンパク質抗原は、Spb1として公知である[参考文献207を参照されたい]。これらの3つの抗原のさらなる詳細は下に示されている。
【0132】
これらの3種のGBSタンパク質の全長配列は、本明細書の配列番号1〜3である。したがって、本発明の組成物は、(a)配列番号1〜3から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、ならびに/または(b)(i)配列番号1〜3のうちの1または複数に対する配列同一性を有するアミノ酸配列および/もしくは(ii)配列番号1〜3の断片を含むポリペプチドを含んでよい。
【0133】
本発明の組成物は、これらのGBSタンパク質抗原の混合物も含んでよい。
【0134】
特に、本発明の組成物は、
(a
1)配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド、ならびに/または(b
1)(i)配列番号1に対して配列同一性を有するアミノ酸配列および/もしくは(ii)配列番号1の断片を含むポリペプチドと、
(a
2)配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド、ならびに/または(b
2)(i)配列番号2に対して配列同一性を有するアミノ酸配列および/もしくは(ii)配列番号2の断片を含むポリペプチドと
を含んでよい。
【0135】
同様に、本発明の組成物は、
(a
1)配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド、ならびに/または(b
1)(i)配列番号1に対して配列同一性を有するアミノ酸配列および/もしくは(ii)配列番号1の断片を含むポリペプチドと、
(a
2)配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド、ならびに/または(b
2)(i)配列番号3に対して配列同一性を有するアミノ酸配列および/もしくは(ii)配列番号3の断片を含むポリペプチドと
を含んでよい。
【0136】
同様に、本発明の組成物は、
(a
1)配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド、ならびに/または(b
1)(i)配列番号2に対して配列同一性を有するアミノ酸配列および/もしくは(ii)配列番号2の断片を含むポリペプチドと、
(a
2)配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド、ならびに/または(b
2)(i)配列番号3に対して配列同一性を有するアミノ酸配列および/もしくは(ii)配列番号3の断片を含むポリペプチドと
を含んでよい。
【0137】
本発明の組成物は、
(a
1)配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド、ならびに/または(b
1)(i)配列番号1に対して配列同一性を有するアミノ酸配列および/もしくは(ii)配列番号1の断片を含むポリペプチドと、
(a
2)配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド、ならびに/または(b
2)(i)配列番号2に対して配列同一性を有するアミノ酸配列および/もしくは(ii)配列番号2の断片を含むポリペプチドと、
(a
3)配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド、ならびに/または(b
3)(i)配列番号3に対して配列同一性を有するアミノ酸配列および/もしくは(ii)配列番号3の断片を含むポリペプチドと
を含んでよい。
【0138】
本発明で用いるために好ましい他の3種のGBSタンパク質抗原が、GBS104、GBS276、およびGBS322として公知である[参考文献99を参照されたい]。血清型Vの2603V/R分離株由来の野生型GBS104のアミノ酸配列が、参考文献21において配列番号3としてその中に示されている。本明細書において、配列番号1を参照することによって本発明の実施形態が定義されている場合、配列番号1への参照は、参考文献21の配列番号3への参照で置き換えることができる。血清型Vの2603V/R分離株由来の野生型GBS276のアミノ酸配列が、参考文献21において配列番号4としてその中に示されている。本明細書において、配列番号2を参照することによって本発明の実施形態が定義されている場合、配列番号2への参照は、参考文献21の配列番号4への参照で置き換えることができる。血清型Vの2603V/R分離株由来の野生型GBS322のアミノ酸配列が、参考文献21において配列番号5としてその中に示されている。本明細書において、配列番号3を参照することによって本発明の実施形態が定義されている場合、配列番号3への参照は、参考文献21の配列番号5への参照で置き換えることができる。
【0139】
特定の配列番号に応じて、(i)における配列同一性の程度は、50%(例えば、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)を超えることが好ましい。これらのポリペプチドは、ホモログ、オルソログ、対立遺伝子バリアントおよび機能的変異体を含む。典型的には、2つのポリペプチド配列間の50%以上の同一性が、機能的同等性の指標になると考えられる。ポリペプチド間の同一性は、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular)で実行されるSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムにより、ギャップオープンペナルティ(gap open penalty)=12およびギャップ伸長ペナルティ(gap extension penalty)=1のパラメータを用いたアフィンギャップ検索を用いて決定することが好ましい。
【0140】
特定の配列番号に応じて、(ii)の断片は、該配列由来の少なくともn個の連続したアミノ酸を含むべきであり、特定の配列に応じて、nは、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100以上)である。断片は、該配列の少なくとも1つのT細胞エピトープ、または、好ましくはB細胞エピトープを含んでよい。T細胞エピトープおよびB細胞エピトープは経験的に同定することができる(例えば、PEPSCAN[208、209]または同様の方法を用いて)、またはT細胞エピトープおよびB細胞エピトープは、予測することができる(例えば、Jameson−Wolf抗原性指標[210]、マトリックスベースの手法[211]、TEPITOPE[212]、ニューラルネットワーク[213]、OptiMer&EpiMer[214、215]、ADEPT[216]、Tsites[217]、親水性[218]、抗原性指標[219]または参考文献220に開示されている方法などを用いて)。他の好ましい断片は、配列番号1〜3の、それらのN末端のアミノ酸残基を有さない、またはそれらのN末端のシグナルペプチドを有さない断片である。リーダー配列領域もしくはシグナル配列領域、膜貫通領域、細胞質領域または細胞壁アンカリングモチーフなどの1または複数のドメインの除去を用いることができる。特定のタンパク質の好ましい断片を、全長の特定のタンパク質に結合させることができる抗体に結合させることができ、例えば、配列番号1、2または3に結合する抗体に結合させることができる。いくつかの有用な断片が下に示されている(配列番号4〜13)。
【0141】
これらのポリペプチドは、配列番号1〜3と比較して、1または複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の保存されたアミノ酸の置き換え、すなわち、1つのアミノ酸の、関連する側鎖を有する別のアミノ酸との置き換えを含んでよい。遺伝子にコードされるアミノ酸は、一般に、4つのファミリー:(1)酸性、すなわち、アスパルテート、グルタメート;(2)塩基性、すなわち、リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性、すなわち、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性、すなわち、グリシン、アスパラギン、グルタミン、シスチン、セリン、トレオニン、チロシンに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時には、一緒に芳香族アミノ酸に分類される。一般に、これらのファミリー内の単一のアミノ酸の置換は、生物活性に対して主要な影響を有さない。ポリペプチドは、配列番号1〜3と比較して、1または複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の単一のアミノ酸の欠失を含んでもよい。ポリペプチドは、配列番号1〜3と比較して、1または複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の挿入(例えば、1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸または5アミノ酸のそれぞれ)を含んでもよい。
【0142】
本発明のポリペプチドは、多くの方式で、例えば、化学合成によって(全体的または部分的に)、長いポリペプチドを、プロテアーゼを用いて消化することによって、RNAからの翻訳によって、細胞培養物から(例えば、組換え発現体から)、生物体自体から(例えば、細菌培養後に、もしくは患者から直接)精製することによってなどで調製することができる。<40アミノ酸長のペプチドを生成するための好ましい方法は、in vitro化学合成を伴う[221、222]。tBocまたはFmoc[223]化学に基づく方法などの固相ペプチド合成が特に好ましい。酵素的合成[224]も一部または全部に用いることができる。化学合成の代替として、生物学的合成を用いることができ、例えば、ポリペプチドを翻訳によって生成することができる。これは、in vitroまたはin vivoで行うことができる。生物学的方法は、一般に、L−アミノ酸に基づくポリペプチドの生成に限られるが、翻訳機構(例えば、アミノアシルtRNA分子の)の操作を用いて、D−アミノ酸(または他の非天然アミノ酸、例えば、ヨードチロシンまたはメチルフェニルアラニン、アジドホモアラニン(azidohomoalanine)など)の導入を可能にすることができる[225]。しかし、D−アミノ酸が含まれる場合、化学合成を用いることが好ましい。本発明のポリペプチドは、C末端および/またはN末端に共有結合による修飾を有してよい。
【0143】
これらのGBSタンパク質が本発明の組成物に含まれる場合には、これらのGBSタンパク質は種々の形態をとることができる(例えば、天然の形態、融合形態、グリコシル化された形態、グリコシル化されていない形態、脂質付加された形態、脂質付加されていない形態、リン酸化された形態、リン酸化されていない形態、ミリストイル化された形態、ミリストイル化されていない形態、単量体の形態、多量体の形態、粒子形態、変性した形態など)。これらのGBSタンパク質は、精製された形態または実質的に精製された形態、すなわち、他のポリペプチドを実質的に含まない(例えば、天然に存在するポリペプチドを含まない)、特に、他のGBSポリペプチドまたは宿主細胞ポリペプチドを含まない)形態で用いることが好ましい。
【0144】
GBS67
血清型Vの2603V/R株から配列決定されたGBS67のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、参考文献99に配列番号3745&3746として記載されている。このアミノ酸配列は、本明細書では配列番号1である:
【0145】
【化1】
GBS67は、C末端の膜貫通領域を含有し、それは、上記の配列番号1のC末端に最も近い下線が引かれている領域によって示されている。膜貫通領域から1または複数のアミノ酸を除去することができ、またはアミノ酸を膜貫通領域の前で切断することができる。そのようなGBS67断片の例は、配列番号4として下に記載されている。
【0146】
【化2】
GBS67は、細胞壁アンカーを示すアミノ酸モチーフを含有し、それは上記の配列番号1においてイタリック体で示されている。いくつかの組換え型の宿主細胞系では、宿主細胞からの組換えGBS67タンパク質の分泌を容易にするために、このモチーフを除去することが好ましい場合がある。したがって、本発明において用いるためのGBS67の1つの好ましい断片では、上記膜貫通および上記細胞壁アンカーモチーフをGBS67から除去する。そのようなGBS67断片の例は下に配列番号5として記載されている。
【0147】
【化3】
あるいは、いくつかの組換え型の宿主細胞系では、組換えによって発現させたタンパク質を細胞壁に係留するために、細胞壁アンカーモチーフを用いることが好ましい場合がある。発現されたタンパク質の細胞外ドメインは、精製中に切断することができ、または組換えタンパク質は、最終の組成物中に、不活化した宿主細胞または細胞膜のいずれかに結合させたまま残すことができる。
【0148】
保存されたリジン残基を含有する3つのピリンモチーフがGBS67において同定されている。保存されたリジン残基は、アミノ酸残基478および488、アミノ酸残基340および342、およびアミノ酸残基703および717にある。ピリン配列、特に、保存されたリジン残基は、GBS67のオリゴマーのピリ線毛様構造の形成に重要であると考えられている。GBS67の好ましい断片は、少なくとも1つの保存されたリジン残基を含む。保存されたグルタミン酸残基を含有する2つのEボックスもGBS67において同定されている。GBS67の好ましい断片は、少なくとも1つの保存されたグルタミン酸残基を含む。GBS67は、アルファヘリックス構造を形成することが予測されるいくつかの領域を含有する。そのようなアルファヘリックス領域は、コイルドコイル構造を形成する可能性があり、また、GBS67のオリゴマー形成に関与する可能性がある。GBS67は、S.aureusコラーゲン結合表面タンパク質(pfam05738)のCna_Bドメインと相同な領域も含有する。この領域は、ベータサンドイッチ構造を形成し得る。 GBS67は、フォンウィルブランド因子(vWF)型Aドメインと相同な領域を含有する。
【0149】
血清型IbのH36B株から配列決定されたGBS67のアミノ酸配列が参考文献226に配列番号20906として記載されている。このアミノ酸配列は、本明細書では配列番号24である:
【0150】
【化4】
いくつかの実施形態では、GBS67のこのバリアントを用いることができる。したがって、本明細書において、配列番号1を参照することによって本発明の実施形態が定義されている場合、配列番号1への参照は、配列番号24への参照で置き換えることができる。
【0151】
血清型Vの2603V/R株から配列決定されたGBS67と同様に、血清型IbのH36B株から配列決定されたGBS67は、C末端の膜貫通領域を含有し、それは、上記の配列番号24のC末端に最も近い下線が引かれている領域によって示されている。膜貫通領域から1または複数のアミノ酸を除去することができ、またはアミノ酸を膜貫通領域の前で切断することができる。そのようなGBS67断片の例は下に配列番号25として記載されている。
【0152】
【化5】
血清型Vの2603V/R株から配列決定されたGBS67と同様に、血清型IbのH36B株から配列決定されたGBS67は、細胞壁アンカーを示すアミノ酸モチーフを含有し、それは上記の配列番号24においてイタリック体で示されている。したがって、本発明において用いるためのGBS67の1つの好ましい断片では、上記膜貫通および上記細胞壁アンカーモチーフをGBS67から除去する。そのようなGBS67断片の例は下に配列番号26として記載されている。
【0153】
【化6】
GBS80
GBS80とは、推定上の細胞壁表面アンカーファミリータンパク質をいう。血清型Vの2603V/R分離株から配列決定されたGBS80のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、参考文献99において配列番号8779&8780として記載されている。このアミノ酸配列は下に配列番号2として記載されている:
【0154】
【化7】
GBS80は、N末端のリーダー配列領域またはシグナル配列領域を含有し、それは、上記の下線が引かれている配列によって示されている。GBS80のリーダー配列領域またはシグナル配列領域から1または複数のアミノ酸を除去することができる。そのようなGBS80断片の例は下に配列番号6として記載されている:
【0155】
【化8】
GBS80は、C末端の膜貫通領域を含有し、それは、上記の配列番号2の末端近くの下線が引かれている配列によって示される。1または複数のアミノ酸を膜貫通領域および/または細胞質領域から除去することができる。そのような断片の例は下に配列番号7として記載されている:
【0156】
【化9】
GBS80は、細胞壁アンカーを示すアミノ酸モチーフを含有し、それは上記の配列番号2においてイタリック体で示されている。いくつかの組換え型の宿主細胞系では、宿主細胞からの組換えGBS80タンパク質の分泌を容易にするために、このモチーフを除去することが好ましい場合がある。したがって、膜貫通領域および/または細胞質領域ならびに細胞壁アンカーモチーフを、GBS80から除去することができる。そのような断片の例は下に配列番号8として記載されている。
【0157】
【化10】
あるいは、いくつかの組換え型の宿主細胞系では、組換えによって発現させたタンパク質を細胞壁に係留するために、細胞壁アンカーモチーフを用いることが好ましい場合がある。発現されたタンパク質の細胞外ドメインは、精製中に切断することができ、または組換えタンパク質は、最終の組成物中に、不活化した宿主細胞または細胞膜のいずれかに結合させたまま残すことができる。
【0158】
一実施形態では、リーダー配列領域もしくはシグナル配列領域、膜貫通領域および細胞質領域および細胞壁アンカーモチーフをGBS80配列から除去する。そのようなGBS80断片の例は下に配列番号9として記載されている:
【0159】
【化11】
GBS80の特定の免疫原性断片はタンパク質のN末端に向かって位置し、本明細書では配列番号10として示される:
【0160】
【化12】
Spb1
血清型IIIのCOH1株由来の野生型SpbI配列は、本明細書では配列番号3である:
【0161】
【化13】
野生型SpbIは、N末端のリーダー配列領域またはシグナル配列領域を含有し、それは、上記の下線が引かれた配列によって示されている(アミノ酸1〜29)。SpbIのリーダー配列領域またはシグナル配列領域由来の1または複数のアミノ酸を除去することができる。そのようなSpbI断片の例は下に配列番号11として記載されている:
【0162】
【化14】
野生型SpbI配列は、細胞壁アンカーを示すアミノ酸モチーフ(LPSTG)を含有する。いくつかの組換え型の宿主細胞系では、宿主細胞からの組換えSpbIタンパク質の分泌を容易にするために、このモチーフを除去することが好ましい場合がある。したがって、細胞壁アンカーモチーフおよびこのモチーフのC末端側の配列を、SpbIから除去することができる。そのような断片の例は下に配列番号12として記載されている:
【0163】
【化15】
あるいは、いくつかの組換え型の宿主細胞系では、組換えによって発現されたタンパク質を細胞壁に係留するために、細胞壁アンカーモチーフを用いることが好ましい場合がある。発現されたタンパク質の細胞外ドメインは、精製中に切断することができ、または組換えタンパク質は、最終の組成物中に、不活化した宿主細胞または細胞膜のいずれかに結合させたまま残すことができる。
【0164】
一実施形態では、リーダー配列領域もしくはシグナル配列領域、細胞壁アンカーモチーフおよびこのモチーフのC末端側の配列をSpbIから除去する。そのようなSpbI断片の例は下に配列番号13として記載されている:
【0165】
【化16】
保存されたグルタミン酸残基を含有するEボックスもSpbIにおいて同定されており(下線が引かれている)、残基423(太字)に保存されたグルタミン酸を有する。Eボックスモチーフは、オリゴマーのピリ線毛様構造の形成に重要である可能性があり、したがって、SpbIの有用な断片は保存されたグルタミン酸残基を含んでよい。
【0166】
野生型Spb1配列は、シャイン−ダルガルノ配列のコア配列(下線が引かれている)を含む上流の12merの
【0167】
【化17】
配列(配列番号14)を有する内部メチオニンコドン(Met−162)を含む。このシャイン−ダルガルノ配列には、切断されたSpb1配列の翻訳が開始されることが見出されている。この部位における翻訳の開始を妨げるために、シャイン−ダルガルノ配列を、発現のために用いられるSpb1−コード配列において攪乱することができる。任意の適切なヌクレオチドを変異させてリボソームの結合を妨げることができるが、この配列は、シャイン−ダルガルノコアおよび内部メチオニンコドンを有するインフレームの両者の一部であるGGAグリシンコドンを含む。コードされるグリシンを変化させず、それにより、Spb1配列のいかなる変化も回避しながら、このコドンの3番目の塩基をC、GまたはTに変異させることができる。
【0168】
本発明の組成物は、参考文献[227]においてアミノ酸配列NH
2−W−X−L−Y−Z−CO
2H(式中:Xは、Spb1配列であり、Lは任意選択のリンカーであり、Yは、GBS80配列であり、Wは任意選択のN末端配列であり、Zは任意選択のC末端配列である)で定義済みのポリペプチドを含んでもよい。このポリペプチドのさらなる詳細は、下に示されている。
【0169】
これらの組成物は、上記のGBSタンパク質抗原のうちの1または複数も含んでよい。特に、本発明の組成物は、(a)アミノ酸配列NH
2−W−X−L−Y−Z−CO
2Hのポリペプチドと、(b
1)上記の配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドならびに/または(b
2)(i)上記の配列番号1に対して配列同一性を有するアミノ酸配列および/もしくは(ii)上記の配列番号1の断片を含むポリペプチドとを含んでよい。
【0170】
ポリペプチドNH
2−W−X−L−Y−Z−CO
2H
典型的には、ポリペプチドは、アミノ酸配列X−L−Yを含み、式中、XはSpb1配列であり、Lは任意選択のリンカーであり、Yは、GBS80配列である。
【0171】
X:Spb1配列
X部分はSpb1配列である。このSpb1配列は、被験体に投与されると、野生型Spb1タンパク質、例えば、配列番号3のアミノ酸配列を有するS.agalactiaeタンパク質(COH1株の全長の野生型配列)に結合する抗体を含む抗体応答を惹起する。
【0172】
Spb1配列は、配列番号13に対して少なくともa%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでよい。aの値は、50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99以上から選択することができる。Spb1配列は、配列番号13を含み得る。
【0173】
Spb1配列は、配列番号3の断片および/または配列番号13の断片を含み得る。断片は、通常、配列番号3/13の少なくともbアミノ酸を含み、bは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、175、200以上から選択される。断片は、通常、配列番号3/13の少なくとも1つのT細胞エピトープ、または、好ましくはB細胞エピトープを含む。T細胞エピトープおよびB細胞エピトープは、上記の方法によって同定することができる。上で説明した通り、配列番号13はそれ自体が配列番号3の断片である。
【0174】
Spb1配列は、上で定義された配列番号13に対する少なくともa%の同一性も有し、配列番号13の断片も含むアミノ酸配列を含み得る。
【0175】
X部分は、通常、少なくともcアミノ酸長であり、cは、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400以上から選択される。
【0176】
X部分は、通常、dアミノ酸長以下であり、dは、500、480、460、440、420、400、380、360、340、320、300、280、260、240、220、200、またはそれ未満から選択される。
【0177】
X部分は、通常、300〜500の間のアミノ酸長、例えば、350〜480アミノ酸長、400〜460アミノ酸長、430〜450アミノ酸長である。
【0178】
血清型IIIのCOH1株由来の野生型SpbI配列は上記の配列番号3である。上記の「SpbI」セクションに記載のそれらの特定の誘導体を本発明のこの実施形態のSpb1配列に適用することができる。
【0179】
Y:GBS80配列
Y部分は、GBS80配列である。このGBS80配列は、被験体に投与されると、野生型GBS80タンパク質、例えば、配列番号2のアミノ酸配列(2603V/R株由来の全長の野生型配列)を有するS.agalactiaeタンパク質に結合する抗体を含む抗体応答を惹起する。
【0180】
GBS80配列は、配列番号9に対して少なくともe%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。eの値は、50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99以上から選択することができる。GBS80配列は、配列番号9を含み得る。
【0181】
GBS80配列は、配列番号2の断片または配列番号9の断片を含み得る。断片は、通常、配列番号2/9の少なくともfアミノ酸を含み、fは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、175、200以上から選択される。断片は、通常、配列番号2/9の少なくとも1つのT細胞エピトープ、または、好ましくはB細胞エピトープを含む。上で説明した通り、配列番号9はそれ自体が配列番号2の断片である。
【0182】
GBS80配列は、上で定義された、配列番号9に対する少なくともe%の同一性も有し、配列番号9の断片も含むアミノ酸配列を含み得る。
【0183】
Y部分は、通常、少なくともgアミノ酸長であり、gは、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、420、440、460、480、500、520、540、560、580、600以上から選択される。
【0184】
Y部分は、通常、hアミノ酸長以下であり、hは、600、580、560、540、520、500、480、460、440、420、400、380、360、340、320、300、280、260、240、220、200、またはそれ未満から選択される。
【0185】
Y部分は、通常350〜550の間のアミノ酸長、例えば、400〜520アミノ酸長、450〜500アミノ酸長、470〜490アミノ酸長である。
【0186】
血清型Vの2603V/R分離株由来の野生型GBS80配列は上記の配列番号2である。上記の「GBS80」セクションに記載のそれらの特定の誘導体を本発明のこの実施形態のGBS80配列に適用することができる。
【0187】
L:リンカー
ポリペプチドは、必要に応じて、X部分とY部分を連結するためのL部分を含む。L部分は、典型的には、短いアミノ酸配列、例えば、2〜40アミノ酸の範囲のアミノ酸配列であり、例えば、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、11アミノ酸、12アミノ酸、13アミノ酸、14アミノ酸、15アミノ酸、16アミノ酸、17アミノ酸、18アミノ酸、19アミノ酸、20アミノ酸、21アミノ酸、22アミノ酸、23アミノ酸、24アミノ酸、25アミノ酸、26アミノ酸、27アミノ酸、28アミノ酸、29アミノ酸、30アミノ酸、31アミノ酸、32アミノ酸、33アミノ酸、34アミノ酸、35アミノ酸、36アミノ酸、37アミノ酸、38アミノ酸、39アミノ酸または40アミノ酸からなる。
【0188】
リンカーは、通常、少なくとも1つのグリシン残基を含有し、それにより、構造的な柔軟性が高まる。リンカーは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多くのグリシン残基を含有してよい。グリシンは、少なくとも2つの連続したグリシンを、Gly−Glyジペプチド配列、またはそれよりも長いオリゴGly配列、すなわち、Gly
n(n=2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多くの)、例えば、配列番号15で含むように配置されていてよい:
GGGG 。
【0189】
リンカーは、制限酵素の認識配列に見出されるコドンにコードされ得る。例えば、特定の制限酵素の標的である6merの配列がジペプチドをコードし得る。したがって、BamHI(GGATCC)の認識配列がGly−Serをコードし、したがって、リンカーは、Gly−Serジペプチド配列を含み得る。そのような配列により、クローニングおよび操作が容易になる。
【0190】
有用なリンカー配列としては、上記の配列番号15および下記の配列番号16、17および18が挙げられる:
GGGGSGGGGSGGGG(配列番号16)
GGGGSGGGGSGGGGSEL(配列番号17)
GSGGGG(配列番号18) 。
【0191】
しかし、好ましいリンカーは、ヒトポリペプチド配列に共通する10以上連続したアミノ酸を共有する配列を含まない。例えば、本発明で用いることができる1つのグリシンリッチリンカー配列は、14merの配列番号16である。しかし、この14merは、ヒトRNA結合性タンパク質(gi:8051631)にも見出され、したがって、L部分内では避けることが好ましい。
【0192】
W:N末端配列
X部分はポリペプチドのN末端にあってよいが、Xの上流にアミノ酸を有することも可能である。これらの任意選択のアミノ酸がW部分を形成する。
【0193】
W部分は、典型的には、短いアミノ酸配列、例えば、2〜40アミノ酸の範囲のアミノ酸配列であり、例えば、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、11アミノ酸、12アミノ酸、13アミノ酸、14アミノ酸、15アミノ酸、16アミノ酸、17アミノ酸、18アミノ酸、19アミノ酸、20アミノ酸、21アミノ酸、22アミノ酸、23アミノ酸、24アミノ酸、25アミノ酸、26アミノ酸、27アミノ酸、28アミノ酸、29アミノ酸、30アミノ酸、31アミノ酸、32アミノ酸、33アミノ酸、34アミノ酸、35アミノ酸、36アミノ酸、37アミノ酸、38アミノ酸、39アミノ酸または40アミノ酸からなる。
【0194】
W部分の例は、タンパク質の輸送を導くリーダー配列であり、または、クローニングまたは精製を容易にする短いペプチド配列(例えば、ヒスチジンタグ、すなわち、His
n(n=3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多くの)を含む。他の適切なN末端アミノ酸配列は、当業者には明らかである。
【0195】
新生ポリペプチドのW部分には、ポリペプチドのN末端メチオニン(細菌におけるホルミル−メチオニン、fMet)がもたらされ得る。しかし、1または複数のアミノ酸を新生W部分のN末端から切断し、本発明のポリペプチドのW部分が必ずしもN末端メチオニンを含まないようにすることができる。
【0196】
有用なW部分としては、配列番号19:
MAS
が挙げられる。
【0197】
Z:C末端配列
Y部分はポリペプチドのC末端にあってよいが、Yの下流のアミノ酸を有することも可能である。これらの任意選択のアミノ酸がZ部分を形成する。
【0198】
Z部分は、典型的には、短いアミノ酸配列、例えば、2〜40アミノ酸の範囲のアミノ酸配列であり、例えば、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、11アミノ酸、12アミノ酸、13アミノ酸、14アミノ酸、15アミノ酸、16アミノ酸、17アミノ酸、18アミノ酸、19アミノ酸、20アミノ酸、21アミノ酸、22アミノ酸、23アミノ酸、24アミノ酸、25アミノ酸、26アミノ酸、27アミノ酸、28アミノ酸、29アミノ酸、30アミノ酸、31アミノ酸、32アミノ酸、33アミノ酸、34アミノ酸、35アミノ酸、36アミノ酸、37アミノ酸、38アミノ酸、39アミノ酸または40アミノ酸からなる。
【0199】
Z部分の例としては、タンパク質の輸送を誘導する配列、クローニングまたは精製を容易にする短いペプチド配列(例えば、ヒスチジンタグ、すなわち、His
n(n=3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多くの)を含む)、またはタンパク質の安定性を増強する配列が挙げられる。他の適切なC末端アミノ酸配列、例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、チオレドキシン、S.aureusプロテインAの14kDaの断片、ビオチン化したペプチド、マルトース結合タンパク質、エンテロキナーゼフラグなどは、当業者には明らかである。1つの有用なZ部分は、配列番号20:
HHHHHH
を含む。
【0200】
有用な組み合わせ
種々のX部分、Y部分およびL部分の有用な組み合わせとしては以下が挙げられるが、これに限定されない:
【0201】
【化18】
ポリペプチドは、配列番号21に対して少なくともi%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでよい。iの値は、50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99以上から選択することができる。ポリペプチドは、配列番号21を含み得る。
【0202】
ポリペプチドは、配列番号23に対して少なくともi%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。iの値は、50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99以上から選択することができる。ポリペプチドは、配列番号23を含んでよい。
【0203】
本発明で使用するポリペプチドは、
(a)配列番号21または23と同一(すなわち、100%同一)であり、
(b)配列番号21または23と配列同一性を共有し、
(c)(a)または(b)の配列と比較して、別々の位置にあってよく、または連続してよい、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10(またはそれを超える)単一のアミノ酸の変更(欠失、挿入、置換)を有し、かつ
(d)配列番号21または23を、ペアワイズアラインメントアルゴリズムを用いてアラインメントすると、xアミノ酸のN末端からC末端まで動くウィンドウのそれぞれが(pアミノ酸(p>x)まで伸長するアラインメントについて、そのようなウィンドウがp−x+1存在するような)少なくともx・y同一のアラインメントされたアミノ酸を有する(xは、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200から選択され、yは、0.50、0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99から選択され、x・yが整数でない場合には、最も近い整数に切り上げる)アミノ酸配列を含んでよい。好ましいペアワイズアラインメントアルゴリズムは、Needleman−Wunschグローバルアラインメントアルゴリズム[228]であり、そこでは初期状態のパラメータ(例えば、ギャップ開始ペナルティ(gap opening penalty)=10.0、およびギャップ伸長ペナルティ(gap extension penalty)=0.5を用いてEBLOSUM62スコアリング行列を用いる)を用いる。このアルゴリズムは、EMBOSSパッケージ内のニードル(needle)ツールにおいて都合よく実行される[229]。
【0204】
群(c)の中で、欠失または置換はN末端および/またはC末端におけるものであってよく、または、2つの末端の間におけるものであってよい。したがって、切断(truncation)は欠失の例である。切断は、N末端および/またはC末端における40(またはそれより多くの)アミノ酸に至るまでの欠失を伴ってよい。
【0205】
ポリペプチド内のSpb1配列およびGBS80配列は、1または複数のGBS株から得ることができる。例えば、配列番号21および23は、COH1株由来のSpb1配列と2603V/R株由来のGBS80配列を含む。
【0206】
ポリペプチド
ポリペプチド、または個々の部分は、配列番号2、3、9、10、13、21または23と比較して、1または複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の保存されたアミノ酸の置き換え、すなわち、1つのアミノ酸の、関連する側鎖を有する別のアミノ酸での置き換えを含み得る。遺伝子にコードされるアミノ酸は、一般に、4つのファミリー:(1)酸性、すなわち、アスパルテート、グルタメート;(2)塩基性、すなわち、リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性、すなわち、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性、すなわち、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時には、一緒に芳香族アミノ酸に分類される。一般に、これらのファミリー内の単一のアミノ酸の置換は、生物活性に対して主要な影響を有さない。ポリペプチドは、参照配列と比較して、1または複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の単一のアミノ酸の欠失を有し得る。ポリペプチドは、参照配列と比較して、1または複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の挿入(例えば、1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸または5アミノ酸のそれぞれ)も含み得る。
【0207】
ポリペプチドは、上記の通り、多くの方式で調製することができる。ポリペプチドは、上記の通り、種々の形態(例えば、天然の形態、融合形態、グリコシル化された形態、グリコシル化されていない形態、脂質付加された形態、脂質付加されていない形態、リン酸化された形態、リン酸化されていない形態、ミリストイル化された形態、ミリストイル化されていない形態、単量体の形態、多量体の形態、粒子形態、変性された形態など)を取ることができる。ポリペプチドは、上記の通り、精製された形態または実質的に精製された形態で提供されることが好ましい。
【0208】
「ポリペプチド」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖状または分岐状であってよく、ポリマーは、修飾されたアミノ酸を含んでよく、また、ポリマーは、非アミノ酸により乱されていてよい。この用語は、自然に修飾された、または介入;例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質付加、アセチル化、リン酸化、または標識化成分とのコンジュゲーションなどの任意の他の操作もしくは改変により修飾されたアミノ酸のポリマーも包含する。この定義には、例えば、アミノ酸の1または複数の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含めた)、ならびに当技術分野で公知の他の修飾を含有するポリペプチドも含まれる。ポリペプチドは、単鎖または会合した鎖として生じ得る。ポリペプチドは、自然にまたは人為的にグリコシル化され得る(すなわち、ポリペプチドが、対応する天然に存在するポリペプチドに見出されるグリコシル化パターンとは異なるグリコシル化パターンを有する)。
【0209】
ポリペプチドは、少なくとも40アミノ酸長(例えば、少なくとも40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、350、400、450、500以上)であり得る。ポリペプチドは1100アミノ酸よりも短くてよい。
【0210】
予備免疫
第2の態様では、本発明は、GBSによる感染に対して患者を免疫するための方法であって、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体を用いて予備免疫した患者に、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖であるコンジュゲートを投与するステップを含む方法を提供する。典型的には、コンジュゲートは、上記の通り、本発明の第1の態様の免疫原性組成物中のGBSコンジュゲートのうちの1つである。言い換えれば、少なくとも1つのコンジュゲートが、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖である本発明の第1の態様の免疫原性組成物を、本発明の第2の態様において用いることができる。組成物中の、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせた莢膜糖は、例えば、GBS血清型Ia、IbまたはIII由来であってよい。特に、莢膜糖は、GBS血清型III由来であってよい(下に例示されている通り)。この態様では、組成物中のGBS由来の莢膜糖のすべてがジフテリアトキソイドまたはその誘導体とコンジュゲートしていることが典型的である。キャリアまたは予備免疫抗原がジフテリアトキソイドの誘導体である場合には、その誘導体は、Dtと免疫学的に交差反応性のままであることが好ましく、CRM197であることが好ましい。本発明者らは、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖であるコンジュゲートは、キャリア誘導性エピトープ抑制(または一般に公知の通り「キャリア抑制」)、特に、キャリアによる初回刺激から生じる抑制を受けないようであることを見出した。以下に論じるように、「キャリア抑制」とは、動物を、キャリアタンパク質を用いて予備免疫することにより、その動物において後に、そのキャリア上に提示される新しい抗原エピトープに対する免疫応答が惹起されることが妨げられる現象である[230]。この公知の現象とは対照的に、本発明者らは、GBS莢膜糖とジフテリアトキソイドまたはその誘導体のコンジュゲートに対する免疫応答を、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体を用いた予備免疫により実際に改善することができることを見出した。
【0211】
参考文献231において報告されている通り、いくつかのワクチン抗原が同じタンパク質成分(コンジュゲート中の免疫原および/またはキャリアタンパク質として用いられる)を含有する場合には、それらの抗原間で干渉が潜在的に存在する。参考文献231では、破傷風トキソイド(Tt)キャリアにコンジュゲートさせた抗原に対する免疫応答は、Ttに対する既存の免疫によって抑制された。
【0212】
参考文献232では、HibコンジュゲートのためのキャリアがD−T−Pワクチン由来の破傷風抗原と同じである場合に、D−T−PワクチンとHibコンジュゲートワクチンの組み合わせがどのように悪影響を及ぼしたかが報告されている。その著者らは、複数のコンジュゲートを含むワクチンを導入する場合には、一般的なキャリアタンパク質による干渉から生じるこの「キャリア抑制」現象を考慮に入れるべきであると結論づけている。
【0213】
参考文献231および232とは対照的に、参考文献233では、破傷風トキソイドを用いた初回刺激には、その後に投与されたHib−Ttコンジュゲートに対する免疫応答に対する負の影響はなかったが、母体から獲得した抗Tt抗体を有する患者において抑制が認められたことが報告されている。しかし、参考文献234では、破傷風ワクチン接種によって生じた既存の抗Tt抗体を有する患者においてTtベースのペプチドコンジュゲートについての「エピトープ抑制」作用が報告された。
【0214】
参考文献235では、キャリアとしてCRM197(ジフテリア毒素の解毒された変異体)を有するコンジュゲートは、以前にジフテリア毒素をワクチンの一部として(例えば、D−T−PワクチンまたはD−Tワクチンの一部として)受けたことのない小児では効力がない可能性があることが示唆された。この研究は、参考文献236においてさらに発展され、そこでは、D−T免疫により、キャリアによる初回刺激作用がその後のHibコンジュゲートを用いた免疫にわたって持続することが認められた。
【0215】
参考文献237では、その著者らは、ジフテリアトキソイドキャリアタンパク質または破傷風トキソイドキャリアタンパク質を用いた予備免疫により、これらのキャリアにコンジュゲートさせたHib莢膜糖を用いたその後の免疫後の抗Hib抗体レベルの上昇が低下し、IgG1およびIgG2が同等に影響を受けたことを見出した。コンジュゲートのキャリア部分に対する応答も抑制された。さらに、1種のコンジュゲートを用いた予備免疫が、4週間後に投与した第2のコンジュゲートのキャリア部分および糖部分の両方に対する免疫応答に影響を及ぼすことが認められたので、より一般的な非エピトープ特異的抑制が認められた。
【0216】
異なるキャリアタンパク質の、単一の多価肺炎球菌コンジュゲートワクチンへの使用が参考文献238に報告されており、そこでは、キャリア抑制を回避するために複数のキャリアが用いられている。その著者らは、多価のコンジュゲートワクチンにおいて、負の干渉が生じることなく許容され得るキャリアタンパク質の最大負荷量が存在すると予測している。参考文献239では、混合キャリアタンパク質を含む肺炎球菌コンジュゲートワクチンにより、抗肺炎球菌への応答と並行して、キャリアに対する意図しない追加免疫応答が惹起されたことが報告された。
【0217】
参考文献240では、ジフテリアおよび破傷風による追加免疫を、一価の髄膜炎菌血清群Cコンジュゲートと一緒に施すことができるかどうかの調査であり、キャリアが破傷風トキソイドキャリアであり、患者が破傷風を含有するワクチンを用いた予備免疫を受けている場合に、髄膜炎菌コンジュゲートに対する力価が低下したことが見出された。
【0218】
糖コンジュゲートに対する免疫応答への負の影響を有するキャリアを用いた初回刺激の問題に加えて、逆も起こり得る、すなわち、コンジュゲートを用いた免疫がキャリアに対する免疫応答への負の影響を有する場合がある[241]。
【0219】
したがって、この本発明の第2の態様は、GBSによる感染に対して患者を免疫するための方法であって、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体を用いて予備免疫した患者に、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖であるコンジュゲートを投与するステップを含む方法を提供する。この態様は、GBSによる感染に対してジフテリアトキソイドまたはその誘導体を用いて予備免疫した患者を免疫することに用いるためのジフテリアトキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖であるコンジュゲートも提供する。この態様は、さらに、GBSによる感染に対して、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体を用いて予備免疫した患者を免疫するための医薬品の製造における、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖であるコンジュゲートの使用を提供する。
【0220】
予備免疫した患者
免疫されるこの患者は、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体で予備免疫されている。ジフテリアトキソイドまたはその誘導体は、GBS以外の生物体の莢膜糖とジフテリアトキソイドまたはその誘導体のコンジュゲート中のキャリアとして投与することができる。典型的な予備免疫は、ジフテリアトキソイド抗原;ジフテリアトキソイドキャリアまたはCRM197キャリアを用いたHib莢膜糖コンジュゲート;および/またはジフテリアトキソイドキャリアまたはCRM197キャリアを用いた肺炎球菌の莢膜糖コンジュゲートを含む。
【0221】
患者は、予備免疫抗原(複数可)の少なくとも1回の(例えば、1回、2回、3回またはそれより多くの)用量を受け、その用量(または複数回用量の最初)を、患者に、GBSコンジュゲートを用いて免疫する少なくとも6カ月前(例えば、6カ月前、9カ月前、12カ月前、15カ月前、18カ月前、21カ月前、24カ月前、36カ月前、48カ月前、60カ月前、120カ月前、180カ月前、240カ月前、300カ月前、またはそれよりも前)に、本発明のこの態様に従って投与する。患者の好ましい群では、予備免疫は、出生後3年以内、例えば、出生後2年以内、出生後1年以内、出生後6カ月以内、または、さらには出生後3カ月以内、出生後2カ月以内または出生後1カ月以内に行われる。本発明のこの態様に従って免疫される適切な患者については、上の処置方法のセクションにおいて記載されている。
【0222】
予備免疫抗原がジフテリアトキソイドである場合には、患者は、典型的には、トキソイドをD−T−P予備免疫またはD−T予備免疫において「D」抗原として受ける。そのような免疫は、典型的には、2カ月齢、3カ月齢、および4カ月齢の新生児に与えられる。免疫が百日咳ワクチンを含む場合、そのワクチンは、細胞全体または細胞性の百日咳ワクチン(「Pw」)であってよいが、無細胞の百日咳ワクチン(「Pa」)であることが好ましい。予備免疫Paワクチンは、一般に、以下の周知かつよく特徴付けられたB.pertussis抗原:(1)化学的手段または部位特異的変異誘発のいずれかによって解毒された百日咳トキソイド(「PT」)、例えば、「9K/129G」変異体[242];(2)線維状赤血球凝集素(「FHA」);(3)パータクチン(「69キロダルトンの外膜タンパク質」としても公知)のうちの1つ、2つまたは3つを含む。無細胞の百日咳ワクチンは、凝集原2および/または凝集原3を含んでもよい。D−T−P予備免疫における「T」抗原は、典型的には、破傷風トキソイドである。
【0223】
予備免疫抗原がジフテリアトキソイドである場合には、患者は、同様に、またはその代わりに、トキソイドをタンパク質−糖コンジュゲートのキャリアタンパク質として受けることができる。そのようなコンジュゲートとしては、「PRP−D」Hibコンジュゲート[参考文献[243]の表14−7を参照されたい、例えば、ProHIBIT(商標)製品が挙げられる。
【0224】
予備免疫抗原がCRM197である場合には、患者は、典型的には、Hibコンジュゲートおよび/または多価の肺炎球菌コンジュゲートを用いて予備免疫されている。そのような免疫は、典型的には、2カ月齢、3カ月齢、および4カ月齢の新生児に与えられる。CRM197キャリアを用いるHibコンジュゲートとしては、「HbOC」コンジュゲート[参考文献243の表14−7]、例えば、HibTITER(商標)製品が挙げられる。CRM197キャリアを用いる肺炎球菌コンジュゲートとしては、7価のPCV7混合物、例えば、PrevNar(商標)ワクチン[244]が挙げられる。患者は、血清群C髄膜炎菌(「MenC」)コンジュゲートを用いて予備免疫されていてもよい。CRM197キャリアを用いるMenCコンジュゲートとしては、Meninvact(商標)/Menjugate(商標)[245]およびMeningitec(商標)が挙げられる。
【0225】
予備免疫が、コンジュゲートした抗原を用いたものであった場合には、患者は、ほぼ必然的に、コンジュゲートの低レベルのコンタミネーション(例えば、保管している間にコンジュゲートが加水分解することによって引き起こされる)の結果として少量の遊離のジフテリアトキソイド(または誘導体)も受けているが、この少量では、典型的には、有意な免疫応答をもたらすためには適していない。
【0226】
ジフテリアトキソイドは、周知のよく特徴付けられたタンパク質であり[例えば、参考文献243の第13章を参照されたい]、Corynebacterium diphtheriaeのADPリボシル化外毒素を、ホルマリンまたはホルムアルデヒドなどの不活性化する化学物質で処理することによって得ることができる。CRM197も周知であり、よく特徴付けられており[246〜249]、コンジュゲートさせた糖ワクチン中のキャリアとして広く用いられている。CRM197およびDtは多くのキャリアエピトープを共有する。
【0227】
予備免疫の結果は、患者の免疫系が予備免疫抗原に曝露されているということである。ジフテリアトキソイド(Dt)を用いた予備免疫については、これは一般に、患者が抗Dt抗体応答を生じ(典型的には、抗Dt力価>0.01IU/mlが得られるまで)、Dtに特異的な記憶Bリンパ球および/またはTリンパ球を保有することになることを意味する、すなわち、Dtを用いた予備免疫は、典型的には、患者における既往性の抗Dt免疫応答を惹起するために適している。Dt(または誘導体)がコンジュゲート中の糖のキャリアである場合の予備免疫については、予備免疫により抗糖応答が生じ、患者は糖に特異的な記憶Bリンパ球および/またはTリンパ球を保有することになる、すなわち、予備免疫は、典型的には、患者における既往性の抗糖免疫応答を惹起するために適している。予備免疫は、好ましくは、患者において、例えば、ジフテリア疾患に対して防御免疫を惹起するために適していた。
【0228】
したがって、本発明のこの態様に従って免疫される患者は、一般の患者とは区別可能である。なぜなら、彼らは、その免疫系がすでに予備免疫抗原に対する免疫応答を開始している一般集団のサブセットのメンバーであり、したがって、ジフテリアトキソイド(またはその誘導体)キャリアを含むGBSコンジュゲートを用いたこの態様による免疫により、このサブセットでは、以前に予備免疫抗原に対する免疫応答が開始されていない患者における免疫応答とは異なる免疫応答が惹起されるからである。Dt(または誘導体)をコンジュゲート(特に、Hibコンジュゲート)のキャリアとして用いて予備免疫されている患者が好ましい。特に好ましい患者は、Dt(または誘導体)をコンジュゲートのキャリアとして、そして、また、Dtをコンジュゲートしていない免疫原として用いて予備免疫されている。
【0229】
ジフテリアトキソイド(または誘導体)をコンジュゲートした形態またはコンジュゲートしていない形態で用いて予備免疫されているだけでなく、患者は、他の抗原を用いて予備免疫されていてもよい。そのような抗原としては、これらに限定されないが、百日咳抗原(複数可)−上記を参照されたい;破傷風トキソイド−上記を参照されたい;Haemophilus influenzaeB型−上記を参照されたい;B型肝炎表面抗原(HBsAg);ポリオウイルス、例えば、不活化ポリオウイルスワクチン(IPV);Streptococcus pneumoniae−上記を参照されたい;インフルエンザウイルス;BCG;A型肝炎ウイルス抗原;麻疹ウイルス;流行性耳下腺炎ウイルス;風疹ウイルス;水痘ウイルスなどが挙げられる。
【0230】
患者は、1または複数のGBSコンジュゲートを用いて予備免疫されていてもされていなくてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、患者が最初にGBSコンジュゲートに受けた時点で、その患者はすでにDt(または誘導体)を用いて予備免疫されている。他の実施形態では、GBSコンジュゲートを、すでに(i)Dtまたは誘導体および(ii)GBSコンジュゲートの両方を用いて予備免疫されている患者に投与する。
【0231】
破傷風トキソイドキャリア
この本発明の第2の態様は、ジフテリアトキソイドキャリア(およびそれらの誘導体)との関連で、破傷風トキソイドは用いないことが好ましいことが上記されているが、この態様の代替的な実施形態では、破傷風トキソイド(または誘導体)キャリアを用い、ジフテリアトキソイドは用いないことが好ましい。したがって、これらの代替的な実施形態では、上記の定義をそのように改変することができる。
【0232】
例えば、本発明の第2の態様は、GBSによる感染に対して患者を免疫するための方法であって、破傷風トキソイドまたはその誘導体を用いて予備免疫した患者に、破傷風トキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖であるコンジュゲートを投与するステップを含む方法を提供する。この態様は、GBSによる感染に対して、破傷風トキソイドまたはその誘導体を用いて予備免疫した患者を免疫することにおいて用いるための、破傷風トキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖であるコンジュゲートも提供する。この態様は、さらに、GBSによる感染に対して、破傷風トキソイドまたはその誘導体を用いて予備免疫した患者を免疫するための医薬品の製造における、破傷風トキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖であるコンジュゲートの使用を提供する。破傷風トキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖であるコンジュゲートは、キャリア抑制、特に、キャリアによる初回刺激から生じる抑制を受けない可能性がある。GBS莢膜糖−破傷風トキソイドまたはその誘導体のコンジュゲートに対する免疫応答を、破傷風トキソイドまたはその誘導体を用いた予備免疫により、実際に改善することができる。
【0233】
典型的には、コンジュゲートは、上記の通り、本発明の第1の態様の免疫原性組成物中のGBSコンジュゲートのうちの1つである。言い換えれば、少なくとも1つのコンジュゲートが、破傷風トキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖である本発明の第1の態様の免疫原性組成物を、本発明の第2の態様において用いることができる。組成物中の、破傷風トキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせた莢膜糖は、例えば、GBS血清型Ia、IbまたはIII由来であってよい。特に、莢膜糖は、GBS血清型III由来であってよい。この態様では、組成物中のGBS由来の莢膜糖のすべてが破傷風トキソイドまたはその誘導体とコンジュゲートしていることが典型的である。
【0234】
破傷風トキソイドは、周知のタンパク質であり[例えば、参考文献243の第27章を参照されたい]、Clostridium tetaniのADPリボシル化外毒素を不活性化することによって得ることができる。患者は、典型的には、破傷風トキソイドをD−T−P予備免疫またはD−T予備免疫において「T」抗原として、またはコンジュゲート中のキャリアタンパク質として受けている。そのようなコンジュゲートとしては、「PRP−T」Hibコンジュゲート[参考文献243の表14−7を参照されたい]、例えば、ActHIB(商標)製品、OmniHIB(商標)製品およびHIBERIX(商標)製品が挙げられる。
【0235】
一般
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、Xから独占的になり、または、追加的な何か、例えば、X+Yを含んでよい。
【0236】
「約」という用語は、数値xとの関連では、例えば、x±10%を意味する。
【0237】
「実質的に」という単語により、「完全に」は排除されず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてよい。必要な場合、「実質的に」という単語を本発明の定義から除くことができる。
【0238】
糖環は、開いた形態および閉じた形態で存在できること、ならびに、本明細書の構造式において閉じた形態が示されていても、開いた形態も本発明に包含されることが理解されよう。同様に、糖は、ピラノース型およびフラノース型で存在できること、ならびに、本明細書の構造式においてピラノース型が示されていても、フラノース型も包含されることが理解される。糖の異なるアノマー形態も包含される。
【0239】
具体的に規定されていない限り、2つまたはそれより多くの成分を混合するステップを含むプロセスは、いかなる特定の混合の順序も必要としない。したがって、成分を任意の順序で混合することができる。3つの成分が存在する場合には、2つの成分を互いに組み合わせることができ、次いでその組み合わせ物を、第3の成分と組み合わせることができるなどである。
【0240】
抗体は、一般に、それらの標的に特異的である。したがって、抗体は、標的に対して、無関連の対照タンパク質、例えば、ウシ血清アルブミンに対する親和性よりも高い親和性を有する。
【0241】
別段の指定のない限り、ポリペプチド配列間の同一性は、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular)において実行されるSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって、ギャップオープンペナルティ(gap open penalty)=12およびギャップ伸長ペナルティ(gap extension penalty)=1のパラメータを用いたアフィンギャップ検索を用いて決定することが好ましい。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
a)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、b)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、c)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であるコンジュゲートとを含む免疫原性組成物。
(項目2)
GBS莢膜糖の総量が≦70μgである、項目1に記載の免疫原性組成物。
(項目3)
各GBS莢膜糖が単位用量あたり1μg〜30μgの量で存在する、項目1または項目2に記載の免疫原性組成物。
(項目4)
各GBS莢膜糖が単位用量あたり5μg、10μgまたは20μgの量で存在する、項目3に記載の免疫原性組成物。
(項目5)
単位用量あたりの前記GBS血清型Ia、IbおよびIIIの莢膜糖の量が、表Cの2列目に記載の投薬の選択肢のうちの1つに対応する、項目4に記載の免疫原性組成物。
(項目6)
単位用量あたりの前記GBS血清型Ia、IbおよびIIIの莢膜糖の量が、20μg、20μgおよび20μg;10μg、10μgおよび10μg;ならびに5μg、5μgおよび5μgからなる群から選択される、項目5に記載の免疫原性組成物。
(項目7)
単位用量あたりの前記GBS血清型Ia、IbおよびIIIの莢膜糖の量が5μg、5μgおよび5μgである、項目6に記載の免疫原性組成物。
(項目8)
各GBS莢膜糖が単位用量あたり0.1μg〜5μgの量で存在する、項目1または項目2に記載の免疫原性組成物。
(項目9)
各GBS莢膜糖が単位用量あたり0.5μg、2.5μgまたは5μgの量で存在する、項目8に記載の免疫原性組成物。
(項目10)
単位用量あたりの前記GBS血清型Ia、IbおよびIIIの莢膜糖の量が、表C’に記載の投薬の選択肢のうちの1つに対応する、項目9に記載の免疫原性組成物。
(項目11)
前記GBS血清型Ia、IbおよびIIIの莢膜糖の質量比が、表Fの2列目に記載の比率の選択肢のうちの1つに対応する、項目1から10のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目12)
前記GBS血清型Ia、IbおよびIIIの莢膜糖の質量比が1:1:1である、項目11に記載の免疫原性組成物。
(項目13)
1つの単位用量を投与し、その後、該第1の単位用量の3カ月後に第2の単位用量を投与するためのものである、項目1から12のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目14)
d)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型V由来の莢膜糖であるコンジュゲートをさらに含む、項目1から12のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目15)
1つの単位用量を投与し、その後、該第1の単位用量の1カ月後に第2の単位用量を投与するためのものである、項目14に記載の免疫原性組成物。
(項目16)
単回用量で投与するためのものである、項目1から12および14のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目17)
アルミニウム塩アジュバントを含有しない、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目18)
いかなるアジュバントも含有しない、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目19)
前記a)、b)および/またはc)中のキャリアタンパク質が、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドまたはCRM197である、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目20)
前記a)、b)およびc)中のキャリアタンパク質がCRM197である、項目19に記載の免疫原性組成物。
(項目21)
前記コンジュゲート(複数可)が、コンジュゲーション前に糖(複数可)のシアル酸残基の10%〜30%を酸化することによって生じたアルデヒド基の還元アミノ化によって得ることができる、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目22)
前記GBS莢膜糖(複数可)が、7位、8位および/または9位のシアル酸残基のO−アセチル化を実質的に有さない、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目23)
前記GBS血清型Ia由来の莢膜糖が、150〜300kDaの範囲のMWを有し、前記GBS血清型Ib由来の莢膜糖が、150〜300kDaの範囲のMWを有し、かつ/または前記GBS血清型III由来の莢膜糖が50〜200kDaの範囲のMWを有する、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目24)
キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であるコンジュゲートが、約1:1から1:2の間の糖:タンパク質比(w/w)を有し、キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であるコンジュゲートが、約1:1から1:2の間の糖:タンパク質比(w/w)を有し、かつ/またはキャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であるコンジュゲートが、約3:1から1:1の間の糖:タンパク質比(w/w)を有する、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目25)
筋肉内に投与するためのものである、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目26)
(a)配列番号1〜3から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、ならびに/または(b)(i)配列番号1〜3のうちの1または複数に対する配列同一性を有するアミノ酸配列および/もしくは(ii)配列番号1〜3の断片を含むポリペプチドをさらに含む、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目27)
注射可能な液剤または懸濁剤である、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目28)
凍結乾燥されている、項目1から26のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目29)
前記コンジュゲート(複数可)を安定化するためにマンニトールを含む、項目28に記載の免疫原性組成物。
(項目30)
リン酸二水素カリウムバッファを含む、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目31)
塩化ナトリウムを含む、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目32)
ワクチンである、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目33)
ヒトに投与するためのものである、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目34)
妊娠可能な年齢の女性、妊婦および高齢の患者から選択されるヒトに投与するためのものである、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目35)
妊婦に投与するためのものである、項目34に記載の免疫原性組成物。
(項目36)
投与前に、前記ヒトが、検出不可能なレベルの、GBS血清型Ia由来の莢膜糖に対する抗体、GBS血清型Ib由来の莢膜糖に対する抗体、および/またはGBS血清型III由来の莢膜糖に対する抗体を有する、項目33から35のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目37)
医薬品として用いるためのものである、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目38)
S.agalactiaeによって引き起こされる疾患を予防および/または処置するためのものである、項目37に記載の免疫原性組成物。
(項目39)
前記疾患が新生児敗血症、菌血症、新生児肺炎、新生児髄膜炎、子宮内膜炎、骨髄炎または化膿性関節炎である、項目38に記載の免疫原性組成物。
(項目40)
前記組成物がジフテリアトキソイドまたはその誘導体を用いて予備免疫した患者に投与するためのものであり、前記免疫原性組成物中の少なくとも1つのコンジュゲートがジフテリアトキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖である、前記項目のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
(項目41)
GBSによる感染に対して患者を免疫するための方法であって、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体を用いて予備免疫した患者に、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖であるコンジュゲートを投与するステップを含む方法。
(項目42)
前記コンジュゲートが、a)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、b)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、c)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であるコンジュゲートとを含む免疫原性組成物中に存在し、前記GBS由来の莢膜糖が、該GBS血清型Ia、IbまたはIII由来の莢膜糖である、項目41に記載の方法
(項目43)
前記GBS由来の莢膜糖が前記GBS血清型III由来の莢膜糖である、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記免疫原性組成物が項目1から39のいずれか一項に記載の特徴を有する、項目42または項目43に記載の方法。
(項目45)
GBSによる感染に対して患者を免疫するための方法であって、破傷風トキソイドまたはその誘導体を用いて予備免疫した患者に、破傷風トキソイドまたはその誘導体にコンジュゲートさせたGBS由来の莢膜糖であるコンジュゲートを投与するステップを含む方法。
(項目46)
前記コンジュゲートが、a)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ia由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、b)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型Ib由来の莢膜糖であるコンジュゲートと、c)キャリアタンパク質にコンジュゲートさせたGBS血清型III由来の莢膜糖であるコンジュゲートとを含む免疫原性組成物中に存在し、前記GBS由来の莢膜糖が、前記GBS血清型Ia、IbまたはIII由来の莢膜糖である、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記GBS由来の莢膜糖が前記GBS血清型III由来の莢膜糖である、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記免疫原性組成物が項目1から39のいずれか一項に記載の特徴を有する、項目46または項目47に記載の方法。