【文献】
Stougaard et al,JOURNAL OF CELLULAR BIOCHEMISTRY,米国,WILEY-LISS INC,1990年 4月,Vol. 44, No. SUPPLEMENT,p 257, 310,R249
【文献】
駒嶺 他,植物バイオテクノロジー事典,1997年 9月20日,p. xxvii-xxix, 76(「形質転換」の項)
【文献】
TAN S et al,HERBICIDAL INHIBITORS OF AMINO ACID BIOSYNTHESIS AND HERBICIDE-TOLERANT CROPS,AMINO ACIDS,SPRINGER-VERLAG,2006年 3月20日,Vol. 30, No. 2,p. 195-204
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヌクレオチド配列番号1に示されている内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)遺伝子の1705−1707位に対応する位置に突然変異を含むALSインヒビター除草剤耐性ベータ・ブルガリス(Beta vulgaris)植物およびその器官であって、該ALS遺伝子が、ALSポリペプチドの569位にロイシンであるアミノ酸を含有するALSポリペプチドをコードし、内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)遺伝子の突然変異に関してホモ接合である、該ベータ・ブルガリス植物およびその器官。
スルホニル尿素除草剤、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン除草剤、イミダゾリノン除草剤、トリアゾロピリミジン除草剤およびピリミジニル(チオ)ベンゾアート除草剤からなる群に属する1以上のALSインヒビター除草剤に耐性である、請求項1記載のベータ・ブルガリス植物およびその器官。
【背景技術】
【0002】
栽培品種のベータ・ブルガリス(Beta vulgaris)(Ford−Lloyd(2005) Sources of genetic variation,Genus Beta.In:Biancardi E,Campbell LG,Skaracis GN,De Biaggi M(編)Genetics and Breeding of Sugar Beet.Science Publishers,Enfield(NH),USA,pp25−33において定義されてるとおり)は温帯および亜熱帯地方における重要な農業作物である。例えば、世界の糖生産量の約20%はテンサイに基づくものである。ビートの実生およびその一生の最初の6〜8週間における幼若植物は、その若い作物植物を打ち負かす速く成長する雑草により引き起こされる激しい競争にさらされるため、これらの作物の領域においては、信頼しうる雑草防除手段が不可欠である。
【0003】
40年以上も前から、除草剤は、栽培されているテンサイにおける雑草を防除するための好ましい手段である。フェンメジファム、デスメジファンおよびメタミトロンのような、この目的に使用される製品は、該作物を損なうことなくテンサイ圃場における雑草の成長を抑制することを可能にする。それでも、チェノポジウム・アルブム(Chenopodium album)、アマランツス・レトロフレクス(Amaranthus retroflexus)および/またはトリプロイロスペルムム・イノドラタ(Tripleurospermum inodorata)のような有害雑草が長期間にわたって発芽する場合には特に、不利な環境条件下のこれらの製品の効力には改良の余地がある。
【0004】
ビートにおける雑草防除のための選択肢を改良するためには、革新的な除草活性成分が非常に望ましい。そのような化合物は、ビート作物にその発生段階には無関係に悪影響を及ぼすことなく、好ましくは雑草の出芽から雑草植物の完全発育までの広範な雑草スペクトルに対して作用すべきである。古典的な除草剤スクリーニング法では、過去数十年間、農学的に優れた様態で全てのこのような厳しい特性を満足する、ビートに対する選択的除草活性成分は発見されなかった。
【0005】
幾つかの化学物質は酵素「アセトヒドロキシ酸シンターゼ」(AHAS)(「アセト乳酸シンターゼ」(ALS[EC 4.1.3.18])としても公知である)を阻害する。ALSは、(a)スルホニル尿素除草剤(Beyer E.Mら(1988),Sulfonylureas in Herbicides:Chemistry,Degradation,and Mode of Action;Marcel Dekker,New York,1988,117−189)、(b)スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン除草剤(Pontzen,R.,Pflanz.−Nachrichten Bayer,2002,55,37−52)、(c)イミダゾリノン除草剤(Shaner,D.L.ら,Plant Physiol.,1984,76,545−546;Shaner,D.L.およびO’Connor,S.L.(編)The Imidazolinone Herbicides,CRC Press,Boca Rato,FL,1991)、(d)トリアゾロピリミジン除草剤(Kleschick,W.A.ら,Agric.Food Chem.,1992,40,1083−1085)および(e)ピリミジニル(チオ)ベンゾアート除草剤(Shimizu,T.J.,Pestic.Sci.,1997,22,245−256;Shimizu,T.ら,Acetolactate Syntehase Inhibitors in Herbicide Classes in Development,Boger,P.,Wakabayashi.K.,Hirai,K.(編),Springer Verlag,Berlin,2002,1−41)のようなALSインヒビター除草剤のクラスに属する構造的に多様な5つの除草剤ファミリーの作用部位である。
【0006】
ALSは2つのピルビン酸分子からアセト乳酸分子および二酸化炭素への変換に関与する。該反応は、2つのピルビン酸分子を連結するためにチアミンピロリン酸を利用する。この反応の生成物であるアセト乳酸は最終的にバリン、ロイシンおよびイソロイシンになる(Singh(1999)“Biosynthesis of valine,leucine and isoleucine”,Plant Amino Acids,Singh,B.K.編,Marcel Dekker Inc.New York,New York,pp.227−247)。
【0007】
ALSのインヒビターは植物におけるバリン、ロイシンおよびイソロイシンの生合成を遮断する。その結果、直ちにそれぞれのアミノ酸プールの枯渇が生じて、タンパク質生合成が停止し、植物成長の停止、そして最終的には植物の枯死または少なくとも損傷がもたらされる。
【0008】
ALSインヒビター除草剤は、それが適度な施用量で有効であり動物において比較的に無毒性であるため、現代の農業において広く使用されている。ALS活性を阻害することにより、これらの除草剤ファミリーは、多数の雑草種を含む感受性植物の更なる成長および発育を妨げる。十分な雑草防除に要求されうる更に高い濃度のALSインヒビター除草剤に対する増強された耐性を植物に付与するために、作物植物の追加的なALS阻害除草剤耐性育種系および品種、ならびにALS阻害除草剤耐性育種系および品種の製造および使用のための方法および組成物が必要とされている。
【0009】
多種多様なALSインヒビター除草剤が、多種多様な雑草種をそれらの成長段階に無関係に農家が防除することを可能にするが、これらの非常に有効な除草剤はビートには使用できない。なぜなら、通常のビート植物/商業的ビート品種はこれらのALSインヒビター除草剤に対して非常に感受性だからである。それでも、これらのALSインヒビター除草剤は広葉およびイネ科雑草種に対しては優れた除草活性を示す。ALSを阻害する作用様式を有する最初の除草剤は、既に30年前に、農業におけるその使用のために開発された。現在、このクラスの除草剤の有効成分は強力な雑草防除を示し、トウモロコシおよび穀類において並びにビート以外の双子葉作物において広く使用されている。
【0010】
ビートにおいて出芽後施用法で施用される現在公知の唯一のALSインヒビター除草剤はDebut(登録商標)である。この除草剤(有効成分としてのトリフルスルフロン−メチルおよび特定の製剤化化合物を含有する)は、それがビート内因性ALS酵素を阻害しうる前にビートにより分解され、それはビートの成長場所における雑草防除における重大な隔たりを有する。
【0011】
ALSインヒビター除草剤が農業に導入されて以来、天然に存在する雑草を含む感受性植物種は時にはこのクラスの除草剤に対する自然耐性を発達させることが観察された。ALS遺伝子の特定の部位における単一の塩基対の置換が通常、ALSインヒビター除草剤による種々のレベルの阻害を示すいくぶん耐性であるALS酵素変異体を与える。したがって、突然変異ALS対立遺伝子を付与する植物は、ALSインヒビター除草剤の化学構造およびALS遺伝子内の点突然変異の部位に応じて、ALSインヒビター除草剤に対する種々のレベルの耐性を示す。例えば、Hattoriら(1995),Mol.Gen.Genet.246:419−425は、ブラシカ・ナプス(Brassica napus)細胞系におけるTrp557コドン[全ALS/AHAS突然変異体を比較するために該文献において用いられているアラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)配列の番号づけによれば、これは「574」位に相当し、これはビートALS配列の569位に等しい]における単一突然変異を記載している。これらの著者は、スルホニル尿素、イミダゾリノンおよびトリアゾロピリミジンのようなALSインヒビター除草剤のサブクラスの幾つかのメンバーに対する耐性を観察した。
【0012】
イミダゾリノンのALSインヒビター除草剤サブクラスに対する或る耐性をもたらすAla 122コドンにおける点突然変異を付与するビート突然変異体が記載されているが(WO 98/02526)、これは農業施用法における雑草防除に十分ではない。この突然変異体を使用することによる他のALSインヒビター除草剤クラスに対する交差耐性は記載されていない。更に、Pro 197コドンにおいて第2の点突然変異を付与するビート植物は、スルホニル尿素除草剤のサブクラスのメンバーに属するALSインヒビター除草剤に対する中等度の耐性を示した。また、これらの2つの二重突然変異体が記載されている(WO 98/02527)。しかし、これらの突然変異体はいずれも、ビート品種の市場導入には使用されなかった。なぜなら、ALSインヒビター除草剤に対する除草剤耐性のレベルが、農業に利用されるほどにはこれらの突然変異体において十分には高くなかったからである。
【0013】
Stougaardら,(1990),J.Cell Biochem.,Suppl.14E,310は四倍体テンサイ細胞培養におけるALS突然変異体の単離を記載している。アミノ酸37位においてのみ異なる2つの異なるALS遺伝子(ALS IおよびALS II)が単離された。突然変異体1はそのALS I遺伝子内に2つの突然変異を含有し、一方、突然変異体2はそのALS II遺伝子内に3つの突然変異を含有していた。どの突然変異がALSインヒビターに対する耐性を付与するのかを決定するために該突然変異が分離された後、組換え大腸菌(E.coli)から合成されたALSが、それが、アミノ酸「Leu」によるアミノ酸「Trp」の置換をもたらすTrp 574コドン[全ALS突然変異体を比較するために文献において用いられているアラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)配列の番号づけによる](これはビートALSアミノ酸配列の569位に等しい)における点突然変異を含有している場合に、除草剤耐性であることが明らかにされた。Stougaardらは、テンサイALS遺伝子のいずれかの569位の突然変異が、ALSインヒビター除草剤に対する許容レベルの耐性を得るために十分であることを、テンサイにおいては示していない。更に、Stougaardらは、テンサイALSの569位におけるTrpからLeuへの突然変異などの突然変異を含むテンサイ植物を再生させておらず、また、扱ってもいない。
【0014】
この知見に基づいて、Stougaardらは、植物形質転換において使用するための、種々のALS遺伝子を含有する植物形質転換ベクターを構築した。しかし、現在までに、特に、ベータ・ブルガリス植物内にこの突然変異を含む植物および/または農業分野に対するALSインヒビター除草剤の施用の効果に関する更なるデータは、遺伝的に操作された植物または突然変異植物のいずれにおいても、これらの又は他の著者により、その後20年以上も開示されていない。
【0015】
WO 99/57965は、一般に、スルホニル尿素耐性テンサイ植物、およびそれをEMS(エチルメタンスルホナート)突然変異誘発により入手するための方法を記載している。しかし、そのような突然変異体を得るのに必要な研究以外では、この公開はそのような植物を記載しておらず、また、ALSインヒビター除草剤耐性突然変異体の入手に関連している可能性のあるALS遺伝子内のいずれの特定の位置をも記載しておらず、また、その相関するいずれの農業用途をも開示していない。更に、EMSのようなそのような強力な突然変異誘発性化合物を使用することにより、ゲノム内の他の位置で種々の他の突然変異が生じうる可能性が高く、これは、そのような得られる植物の不稔および/または成長遅延に至る欠点をもたらしうる。更に、EMSの適用は、DNAとのその化学的相互作用のため、トリプレットTGGからTTGへの変換のような特定の突然変異を誘発する欠点を有しうる。なぜなら、EMSは常にグアノシンからアデノシンへと変換するからである。
【0016】
アマランツス(Amaranthus)のような幾つかの雑草種においては、Trp 574 Leu突然変異が、ALSインヒビター除草剤に繰返しさらされた植物集団において検出されうるであろう。これらのTrp 574 Leu突然変異体は、スルホニル尿素およびスルホニルアミノカルボニルトリアゾリノンからなる群から選択されるもののようなALSインヒビター除草剤の幾つかの化学的クラスに対する高レベルの耐性を示す。
【0017】
WO 2008/124495はALS二重および三重突然変異体を開示している。WO 2009/046334によれば、ALS遺伝子内の特定の突然変異が得られた。しかし、WO 2009/046334によるそのような突然変異を含有する農業に利用されうる除草剤耐性ベータ・ブルガリス突然変異体は現在までに得られていない。
【0018】
更に、例えば、世界の糖生産量の約20%をテンサイが占めることを考慮すると、非常に強力な雑草と比べて成長上の利点を有するテンサイ植物が入手可能となることも非常に望ましいであろう。したがって、ALS遺伝子に関して非トランスジェニックな、ALSインヒビター除草剤に対して耐性であるテンサイ植物などのベータ・ブルガリス植物が入手可能となることが非常に望ましいであろう。したがって、農業に利用されうるALSインヒビター除草剤レベルでALSインヒビター除草剤に対して耐性であるそのような非トランスジェニックなベータ・ブルガリス植物、特にテンサイ植物が必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書中で用いる単数形は、文脈に明らかに矛盾しない限り、複数対象物を含むことに注意する必要がある。したがって、例えば、「試薬」に対する言及は、そのような種々の試薬の1以上を含み、「方法」に対する言及は、本明細書に記載されている方法から修飾または置換されうる当業者に公知の同等の工程および方法に対する言及を含む。
【0024】
本開示において引用されている全ての刊行物および特許の全体を参照により本明細書に組み入れることとする。参照により本明細書に組み入れられる資料が本明細書と矛盾する又は合致しない場合、本明細書がそのようないずれの資料にも優先する。
【0025】
特に示されていない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」なる語は、そのような一連のものにおける各要素に関するものであると理解されるべきである。当業者は、本明細書に記載されている本発明の具体的な実施形態に対する多数の均等物を認識し、または単なる通常の実験を用いて該均等物を確認しうるであろう。そのような均等物は本発明に含まれると意図される。
【0026】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲の全体において、文脈に矛盾しない限り、「含む」なる語ならびに「含み」および「含んでいる」のような派生語は、示されている整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の包含を示唆し、他のいずれの整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の除外をも示唆しないと理解されるであろう。ある態様における「含む」なる語およびその派生語ならびに別の態様における「含有する」なる語およびその類似派生語は、それらのいずれにも優先性が与えられることなく、互換的に用いられうる。
【0027】
本発明において、特異的に選択されたALSインヒビター除草剤に対する数サイクルの選択により得られた点突然変異をTrp 569コドン[配列番号2に示されているベータ・ブルガリスALSアミノ酸参照配列に関するもの;これは、配列番号6に示されている参照アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)配列の574位に等しい]に含有する改変された内因性ALS遺伝子(「AHAS」遺伝子とも称される)を含むビート植物が得られた。
【0028】
本発明のベータ・ブルガリス植物は、自然突然変異植物細胞を単離することにより得られ、これは、本明細書に更に詳細に記載されているとおり、点突然変異を有する完全稔性ビート植物へと直接的に再生された。これらの植物はALS遺伝子に関しては非トランスジェニックである。更に、本発明の植物自体およびその後代は稔性であり、したがって、遺伝的バックグラウンドのストレス誘発性の更なる改変を引き起こしうる更なるいずれの操作も要することなく、育種目的に有用である。本発明において適用される選択方法により得られるそのような植物は、ビート成長場所における革新的な雑草防除手段を可能にするようにALSインヒビター除草剤に対する農業的に有用なレベルの耐性を付与するビート品種および/またはハイブリッドを作製するために直接使用されうる。
【0029】
本明細書中で用いる「トランスジェニック」なる語は、遺伝子(これは同じ又は異なる種のものでありうる)が、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のような適当な生物学的担体により、またはプロトプラスト形質転換もしくは粒子射出のようないずれかの他の物理的手段により、植物内に導入されており、該遺伝子が、新たな宿主環境、すなわち、その遺伝的に修飾された生物(GMO)において発現されうることを意味する。前記定義に従い、「非トランスジェニック」なる語はそれとは正反対を意味し、すなわち、それぞれの遺伝子の導入が適当な生物学的担体またはいずれかの他の物理的手段により行われていないことを意味する。しかし、突然変異遺伝子が天然の又は育種法による受粉により導入されて、この特異的遺伝子に関する別の非トランスジェニック植物を与えうる。
【0030】
「内因性」遺伝子は、遺伝子操作技術により植物内に導入されたのではない、植物の遺伝子を意味する。
【0031】
本明細書中で用いる「配列」なる語は、「配列」なる語が用いられる文脈に応じて、ヌクレオチド配列、ポリヌクレオチド、核酸配列、核酸、核酸分子、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質に関するものである。
【0032】
「ヌクレオチド配列」、「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」、「核酸」、「核酸分子」なる語は本明細書中では互換的に用いられ、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドまたは両方の組合せのいずれかの、任意の長さの重合非分枝形態のヌクレオチドを意味する。核酸配列はセンスおよびアンチセンス鎖の両方のDNA、cDNA、ゲノムDNA、RNA、合成形態および混合重合体を包含し、あるいは当業者に容易に理解されるとおりの非天然または誘導体化ヌクレオチド塩基を含有しうる。
【0033】
本明細書中で用いる「ポリペプチド」または「タンパク質」(両方の語は本明細書中では互換的に用いられる)なる語は、ある長さのアミノ酸鎖を含むペプチド、タンパク質またはポリペプチドを意味し、ここで、アミノ酸残基は共有ペプチド結合により連結されている。しかし、20種の遺伝子コード化アミノ酸に加えて、例えばセレノシステインのような機能性類似体によりアミノ酸および/またはペプチド結合が置換されている、そのようなタンパク質/ポリペプチドのペプチド模倣体も、本発明に含まれる。ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質はポリペプチドと称されうる。ポリペプチドなる語は、ポリペプチドの修飾(例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など)されたものをも意味し、それを除外しない。そのような修飾は基本的な教科書およびより詳細なモノグラフならびに研究論文に十分に記載されている。本明細書において好ましく意図されるポリペプチド(またはタンパク質)はベータ・ブルガリスALSポリペプチド(またはALSタンパク質)[配列番号2]である。
【0034】
アミノ酸置換は、天然に存在する異なるアミノ酸残基によりアミノ酸が置換されているアミノ酸変化を含む。野生型ALSタンパク質内のアミノ酸残基が、類似特性を有する天然に存在する別のアミノ酸により置換されている場合(例えば、GlyとAlaとの間の置換、ValとIleとLeuとの間の置換、AspとGluとの間の置換、LysとArgとの間の置換、AsnとGlnとの間の置換、またはPheとTrpとTyrとの間の置換)、そのような置換は「保存的」なものとして分類されうる。本発明に含まれる置換は「非保存的」であることも可能であり、この場合、野生型ALSタンパク質内に存在するアミノ酸残基が、異なる特性を有するアミノ酸、例えば、異なる群の天然に存在するアミノ酸により置換されている(例えば、荷電または疎水性アミノ酸の、アラニンによる置換)。本明細書中で用いる「類似アミノ酸」は、類似アミノ酸側鎖を有するアミノ酸、すなわち、極性、無極性または実質的に中性の側鎖を有するアミノ酸を意味する。本明細書中で用いる「非類似アミノ酸」は、異なるアミノ酸側鎖を有するアミノ酸を意味し、例えば、極性側鎖を有するアミノ酸は、無極性側鎖を有するアミノ酸とは非類似である。極性側鎖は通常、タンパク質の表面上に存在する傾向にあり、この部位で、それは、細胞内で見られる水性環境と相互作用しうる(「親水性」アミノ酸)。一方、「無極性」アミノ酸はタンパク質の中心部に存在する傾向にあり、この部位で、それは類似無極性隣接体と相互作用しうる(「疎水性」アミノ酸)。極性側鎖を有するアミノ酸の例としては、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、セリンおよびトレオニン(疎水性であるシステイン以外は全て親水性)が挙げられる。無極性側鎖を有するアミノ酸の例としては、アラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリンおよびトリプトファン(中性であるグリシン以外は全て疎水性)が挙げられる。
【0035】
一般に、ALS、ALSL、AHASまたはAHASLなる語が用いられる場合、それぞれヌクレオチド配列または核酸が意図されているのか、あるいはアミノ酸配列またはポリペプチドが意図されているのかは、当業者の一般的な知識および文脈により、当業者に理解される。
【0036】
本明細書中で用いる「遺伝子」なる語は、リボヌクレオチドまたはデスオキシリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドの重合形態を意味する。該用語は二本鎖および一本鎖のDNAおよびRNAを含む。それはまた、公知型の修飾、例えばメチル化、「キャップ」、天然に存在するヌクレオチドの1以上の、類似体による置換を含む。好ましくは、遺伝子は、本明細書中で定められているポリペプチドをコードするコード配列を含む。「コード配列」は、適当な調節配列の制御下に配置されている又は該制御下にある場合にmRNAへと転写され及び/又はポリペプチドへと翻訳されるヌクレオチド配列である。コード配列の境界は、5’末端の翻訳開始コドン、および3’末端の翻訳停止コドンにより決定される。コード配列は、mRNA、cDNA、組換え核酸配列またはゲノムDNAを含みうるが、これらに限定されるものではなく、ある状況下ではイントロンも存在しうる。
【0037】
本明細書中で用いる「ベータ・ブルガリス(Beta vulgaris)」なる語は「ビー・ブルガリス(B.vulgaris)」と略される。更に、「ビート」なる語が本明細書中で用いられる。それらの3つの語は互換的に用いられ、Ford−Lloyd(2005) Sources of genetic variation,Genus Beta.In:Biancardi E,Campbell LG,Skaracis GN,De Biaggi M(編) Genetics and Breeding of Sugar Beet.Science Publishers,Enfield(NH),USA,pp 25−33において定義されている栽培品種のベータ・ブルガリスを完全に含むと理解されるべきである。同様に、例えば、「アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)」なる語は「エイ・サリアナ(A.thaliana)」と略される。両方の語は本明細書中で互換的に用いられる。
【0038】
本発明に従い用いられる「位置」なる語は、本明細書に記載されているアミノ酸配列内のアミノ酸の位置、または本明細書に記載されているヌクレオチド配列内のヌクレオチドの位置のいずれかを意味する。また、本明細書中で用いる「対応」なる語は、位置が、先行するヌクレオチド/アミノ酸の番号により決定されるだけではないことを含む意である。置換されうる、本発明における与えられたヌクレオチドの位置は、プロモーターおよび/またはいずれかの他の調節配列または遺伝子(エキソンおよびイントロンを含む)を含むALS 5’−非翻訳領域(UTR)内の他の位置におけるヌクレオチドの欠失または付加により変動しうる。同様に、置換されうる、本発明における与えられたアミノ酸の位置は、ALSポリペプチド内の他の位置におけるアミノ酸の欠失または付加により変動しうる。したがって、本発明における「対応位置」においては、ヌクレオチド/アミノ酸は、示されている番号において異なりうるが、類似する隣接ヌクレオチド/アミノ酸を尚も有しうる、と理解されるべきである。置換、欠失または付加されうる該ヌクレオチド/アミノ酸も、「対応位置」なる語に含まれる。
【0039】
与えられたALSヌクレオチド/アミノ酸配列内のヌクレオチド残基またはアミノ酸残基が、配列番号1のヌクレオチド配列または配列番号2のアミノ酸配列内の或る位置に対応するか否かを決定するために、当業者は、当技術分野でよく知られた手段および方法を用いることが可能であり、例えば、手動での又はコンピュータプログラム、例えばBLAST(Altschulら,(1990),Journal of Molecular Biology,215,403−410)(これはBasic Local Alignment Search Toolを表す)またはClustalW(Thompsonら,(1994),Nucleic Acid Res.,22,4673−4680)または配列アライメントの作製に適したいずれかの他の適当なプログラムを使用することによるアライメントを用いることが可能である。
【0040】
配列番号1は、ベータ・ブルガリス野生型ALSをコードするヌクレオチド配列である。配列番号2は、配列番号1から誘導されたベータ・ブルガリスアミノ酸配列である。したがって、配列番号1のヌクレオチド配列の1705−1707位のコドンは配列番号2の569位のアミノ酸(すなわち、3文字記号によればアミノ酸「Trp」または1文字記号によれば「W」)をコードしている。
【0041】
与えられたALSヌクレオチド/アミノ酸配列内のヌクレオチド残基またはアミノ酸残基が配列番号1のヌクレオチド配列内の或る位置に対応するか否かを決定するための代替手段においては、配列番号5に示されているエイ・サリアナ(A.thaliana)野生型ALSをコードするヌクレオチド配列が使用されうる。配列番号6は、配列番号5から誘導されたエイ・サリアナ(A.thaliana)アミノ酸配列である。したがって、配列番号5のヌクレオチド配列の1720−1722位のコドンは配列番号6の574位のアミノ酸(すなわち、3文字記号によればアミノ酸「Trp」または1文字記号によれば「W」)をコードしている。
【0042】
配列番号5に示されているエイ・サリアナ(A.thaliana)野生型ALSヌクレオチド配列が参照配列として使用される場合(それは関連文献のほとんどにおいて使用されており、したがって、そのような既知配列の、より容易な比較を可能にするために使用される)、配列番号5に示されているエイ・サリアナ(A.thaliana)ALS遺伝子のヌクレオチド配列の1720−1722位に対応する位置には、トリプトファンと異なるアミノ酸をコードするコドンが位置する。
【0043】
しかし、以下の開示の全てにおいては、参照ヌクレオチド配列としては配列番号1が好ましく、参照アミノ酸配列としては配列番号2が好ましい。
【0044】
以下の表は、ヌクレオチド配列内の点突然変異またはアミノ酸配列内の置換の位置を決定する場合の、本明細書中で用いる参照配列の概要を示す。
【0045】
【表1】
したがって、いずれにしても、配列番号1もしくは5(ヌクレオチド配列)または配列番号2もしくは6(アミノ酸配列)のような参照配列とのアライメントにより等価位置が尚も決定されうるであろう。
【0046】
ビー・ブルガリス野生型ALS遺伝子と、本発明のビー・ブルガリス植物に含まれるALS遺伝子との間の相違を考慮して、本発明のビー・ブルガリス植物に含まれるALS遺伝子(またはポリヌクレオチドまたはヌクレオチド配列)は「突然変異ALS遺伝子」、「突然変異ALS対立遺伝子」、「突然変異ALSポリヌクレオチド」などともみなされうる。したがって、本明細書の全体において、「突然変異対立遺伝子」、「突然変異ALS対立遺伝子」、「突然変異ALS遺伝子」または「突然変異ALSポリヌクレオチド」なる語は互換的に用いられる。
【0047】
本明細書中に特に示されていない限り、これらの語は、配列番号1に示されているビー・ブルガリスALS遺伝子のヌクレオチド配列の1705−1707位に対応する位置においてトリプトファンとは異なるアミノ酸をコードするコドンを含むヌクレオチド配列を意味する。配列番号5に示されているエイ・サリアナ(A.thaliana)参照配列に関して示されている場合には、該コドンの位置は1720−1722である。
【0048】
同様に、これらの語は、配列番号2に示されているベータ・ブルガリスALSタンパク質のアミノ酸配列の569位に対応する位置に、トリプトファンとは異なるアミノ酸を有するALSタンパク質をコードするヌクレオチド配列を意味する。配列番号6に示されているエイ・サリアナ(A.thaliana)参照配列に関して示されている場合には、該位置は574である。「トリプトファンとは異なるアミノ酸」(3文字記号の「Trp」、または同等に用いられる1文字記号の「W」により示される)は、トリプトファンとは異なるいずれかの天然に存在するアミノ酸を含む。これらの天然に存在するアミノ酸はアラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リシン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、チロシン(Y)またはバリン(V)を含む。
【0049】
しかし、好ましくは、(中性極性アミノ酸の群に属する)トリプトファンとは異なるアミノ酸は、トリプトファンとは異なる物理化学的特性を有するアミノ酸、すなわち、中性無極性、酸性または塩基性特性を示すアミノ酸のいずれかに属するアミノ酸である。より好ましくは、トリプトファンとは異なるアミノ酸は、アラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、バリンおよびアルギニンからなる群から選択される。より一層好ましくは、該アミノ酸は中性無極性アミノ酸、例えばアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリンまたはバリンである。特に好ましくは、該アミノ酸はアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、バリンである。より一層好ましいのはグリシンおよびロイシンである。最も好ましくは、それはロイシンである。
【0050】
これに対して、特に示さない限り、「野生型対立遺伝子」、「野生型ALS対立遺伝子」、「野生型ALS遺伝子」または「野生型ALSポリヌクレオチド」なる語は、配列番号2に関するW569置換(または配列番号6に関するW574置換)を欠くALSタンパク質をコードするヌクレオチド配列を意味する。これらの語は、配列番号1に示されているビー・ブルガリスALS遺伝子のヌクレオチド配列の1705−1707位に対応する位置に、トリプトファンとは異なるアミノ酸をコードするコドンを含むヌクレオチド配列をも意味する。そのような「野生型対立遺伝子」、「野生型ALS対立遺伝子」、「野生型ALS遺伝子」または「野生型ALSポリヌクレオチド」は、W569置換を引き起こす突然変異以外の突然変異を含んでいても、含んでいなくてもよい。本質的には、ALS遺伝子に関しては、野生型ビー・ブルガリス植物と本発明のビー・ブルガリス植物との間の唯一の相違は、好ましくは(そして特異的には)、本明細書に特定されている位置において(特に、配列番号1に示されているビー・ブルガリスALS遺伝子のヌクレオチド配列の1705−1707位に対応する位置において)、本発明のビー・ブルガリス植物は、トリプトファンとは異なるアミノ酸をコードするコドンを含み、好ましくは、該コドンは、本明細書中の他の箇所において特定されているアミノ酸をコードしている。しかし、前記のとおり、追加的な突然変異のような他の相違が野生型および突然変異ALS対立遺伝子(本明細書に特定されているもの)間に存在しうる。しかし、これらの他の相違は、前記相違が存在する限り、重要ではない。
【0051】
したがって、W569置換(または配列番号6のエイ・サリアナ(A.thaliana)ALSアミノ酸配列が参照体として使用された場合にはW574置換)は、配列番号1に示されているヌクレオチド配列の1705−1707位に対応する位置(またはそれぞれ配列番号5に示されているヌクレオチド配列の1720−1722位に対応する位置)におけるコドンの変化の結果である。好ましくは、569位の置換はWからLへの置換であり、ここで、「L」はコドン「CTT」、「CTC」、「CTA」、「CTG」、「TTA」または「TTG」のいずれかによりコードされる。最も好ましくは、配列番号1に示されているヌクレオチド配列の1706位に対応する位置(またはそれぞれ配列番号5に示されているヌクレオチド配列の1721位に対応する位置)の「G」ヌクレオチドの、「T」ヌクレオチドへのトランスバージョンによる、569位の置換WからLへの置換である。したがって、配列番号1に示されているヌクレオチド配列の1705−1707に対応する位置(またはそれぞれ配列番号5に示されているヌクレオチド配列の1720−1722位に対応する位置)のコドンが「TGG」から「TTG」に変化している。コドン「TGG」はトリプトファンをコードするが、コドン「TTG」はロイシンをコードする。
【0052】
したがって、最も好ましい実施形態においては、本発明は、内因性ALS遺伝子のヌクレオチド配列内に、配列番号1に示されているベータ・ブルガリスALS突然変異遺伝子のヌクレオチド配列の1705−1707位に対応する位置のコドンTTG(ロイシンをコードする)を含むベータ・ブルガリス植物を提供し、ここで、該ヌクレオチド配列は配列番号3を含む(またはそれほどは好ましくないが配列番号3からなる)。
【0053】
配列番号2に示されているベータ・ブルガリスALSタンパク質のアミノ酸配列の569位に対応する位置に、トリプトファンとは異なるアミノ酸を有する、ALSポリペプチドをコードするビー・ブルガリス植物は、好ましくは、配列番号1に示されているビー・ブルガリスALS遺伝子のヌクレオチド配列の1705−1707位に対応する位置に、トリプトファンとは異なるアミノ酸をコードするコドンを、内因性ALS遺伝子のヌクレオチド配列内に含む。
【0054】
ビー・ブルガリス「ALS」または「AHAS」遺伝子なる語はまた、配列番号1または3のビー・ブルガリスALSヌクレオチド配列に対して少なくとも90、95、97、98または99%同一であるビー・ブルガリスヌクレオチド配列を含み、ここで、これらの60、70、80、90、95、97、98または99%同一であるヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド配列の1705−1707に対応する位置に、トリプトファンとは異なるアミノ酸をコードするコドンを含む。同様に、これらの少なくとも90、95、97、98または99%同一であるヌクレオチド配列は、配列番号2の569位に対応する位置に、トリプトファンとは異なるアミノ酸を含むALSポリペプチドをコードしている。該同一ヌクレオチド配列は、本明細書に記載されているとおりの活性を保有するALSタンパク質をコードしており、より好ましくは、このようにしてコードされるALSポリペプチドは、本明細書に記載されているとおり、1以上のALSインヒビター除草剤に耐性である。該用語はまた、ALSポリペプチドをコードする対立遺伝子変異体およびホモログを含み、該ALSポリペプチドは、好ましくは、本明細書に記載されているとおりの1以上のALSインヒビター除草剤に耐性である。核酸配列が本発明のヌクレオチド配列に対して或る度合の同一性を有するかどうかを決定するために、当業者は、当技術分野でよく知られた手段および方法を用いることが可能であり、例えば、手動の又はコンピュータプログラム(例えば、「ハイブリダイゼーション」および相同性の度合なる語の定義に関して後記で更に詳しく記載されているもの)を使用することによるアライメントを用いることが可能である。
【0055】
例えば、Basic Local Alignment Search Toolを表すBLAST(Altschul,Nucl.Acids Res.25(1997),3389−3402;Altschul,J.Mol.Evol.36(1993),290−300;Altschul,J.Mol.Biol.215(1990),403−410)が、局所配列アライメントを検索するために使用されうる。BLASTは、配列類似性を決定するために、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列の両方のアライメントを生成する。該アライメントの局所性のため、BLASTは、厳密なマッチを決定するのに又は類似配列を特定するのに特に有用である。BLASTアルゴリズム出力の基本単位はハイ・スコアリング・セグメント・ペア(High−scoring Segment Pair)(HSP)である。HSPは、任意だが等しい長さの2つの配列断片からなり、そのアライメントは局所的に最大であり、該配列断片に関するアライメントスコアは、使用者により設定された閾値またはカットオフスコアを満足し又はそれを超える。BLAST法は、問合せ配列とデータベース配列との間のHSPを探して、見出されたいずれかのマッチの統計的有意性を評価し、使用者により選択された有意性閾値を満足するマッチのみを報告するためのものである。パラメータEは、データベース配列マッチを報告するための統計的に有意な閾値を確定する。Eは全データベース検索のコンテクスト内のHSP(またはHSPの組合せ)の予想偶然出現頻度(expected frequency of chance occurrence)の上限と解釈される。マッチがEを満足するいずれかのデータベース配列がプログラム出力において報告される。ヌクレオチドデータベース、例えばGenBankまたはEMBLにおける同一または関連分子を検索するために、BLASTを使用する類似コンピュータ技術(Altschul(1997),前記引用文中;Altschul(1993),前記引用文中;Altschul(1990),前記引用文中)が使用される。この解析は、複数の膜に基づくハイブリダイゼーションより遥かに速い。また、該コンピュータ検索の感度は、いずれかの特定のマッチが完全(exact)または類似として分類されるかどうかを決定するために修飾されうる。該検索の基本は、
(%配列同一性×%最大BLASTスコア)/100
として定義される積スコアであり、それは、2つの配列間の類似性の度合および配列マッチの長さの両方を考慮する。例えば、40の積スコアにおいて、該マッチは1〜2%の誤差内で完全であり、70においては、該マッチは完全であろう。類似分子は通常、15〜40の積スコアを示すものを選択することにより特定されるが、より低いスコアが関連分子を特定することもある。
【0056】
ビー・ブルガリス「ALS」または「AHAS」ポリペプチドなる語はまた、配列番号2または4のALSアミノ酸配列に対して少なくとも90、95、97、98または99%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、これらの少なくとも90、95、97、98または99%同一であるアミノ酸配列は、配列番号2の569位に対応する位置に、トリプトファンとは異なるアミノ酸を含む。該同一アミノ酸配列は、本明細書に記載されているとおりのALSの活性を保有し、より好ましくは、該ALSポリペプチドは、本明細書に記載されているとおり、ALSインヒビター除草剤に耐性である。
【0057】
ALS活性は、必要に応じて、Singh(1991),Proc.Natl.Acad.Sci.88:4572−4576に記載されているアッセイにより測定されうる。
【0058】
しかし、ALSポリペプチドをコードする本明細書中で言及されているALSヌクレオチド配列は、好ましくは、本明細書に記載されているとおり、1以上のALSインヒビター除草剤に対する耐性(または、逆に言えば、ALSインヒビター除草剤に対する、より低い感受性)を付与する。これは、本明細書に記載されているとおりのアミノ酸置換をもたらす点突然変異によるものである。したがって、ALSインヒビター除草剤に対する耐性(または、逆に言えば、ALSインヒビター除草剤に対する、より低い感受性)は、Singhら(1988)[J.Chromatogr.,444,251−261]に記載されているとおり、ALSインヒビター除草剤の存在下、突然変異ALS配列を含有する植物からの又は突然変異ALS配列を欠く植物からの細胞抽出物から得られるALS活性の比較により測定されうる。
【0059】
しかし、配列番号1に示されているビー・ブルガリスALS遺伝子のヌクレオチド配列の1705−1707位に対応する位置にトリプトファンとは異なるアミノ酸をコードするコドンを含むヌクレオチド配列によりコードされるALSポリペプチドに関する、より好ましい活性アッセイは、以下のとおりに行われうる。
【0060】
ベータ・ブルガリス野生型および突然変異ビー・ブルガリス植物のコード配列を、例えばNovagen pET−32a(+)ベクター内にクローニングし、該ベクターを、例えば大腸菌(Escherichia coli)AD494内に、該製造業者の説明に従い形質転換する。細菌を、好ましくは、100mg/ml カルベニシリンおよび25mg/l カナマイシンを含有するLB−培地におけるような選択圧下の培地内で37℃で増殖させ、例えば1mM イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドで、好ましくは約0.6のOD
600で誘導し、好ましくは18℃で約16時間培養し、遠心分離により回収する。細菌ペレットを、0.1mM チアミン−ピロリン酸、1mM MgCl
2および1μM FADを含有する100mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)に、25mlのバッファー当たり1グラムの湿潤重量の濃度で再懸濁させ、音波処理により破壊する。遠心分離後に得られた粗タンパク質抽出物をALS活性の測定に使用する。
【0061】
ついで、例えば、Ray(1984),Plant Physiol.,75,827−831に記載されている方法の変法を用いて、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて、ALSアッセイを行う。該反応混合物は、好ましくは、20mM リン酸カリウムバッファー(pH7.0)、20mM ピルビン酸ナトリウム、0.45mM チアミン−ピロリン酸、0.45mM MgCl
2、9μM FAD、ALS酵素および種々の濃度のALSインヒビターを約90μlの最終容量中に含有する。
【0062】
アッセイを、酵素を加えることにより開始し、好ましくは、40μlの0.5M H
2SO
4の添加により、30℃で75分間のインキュベーションの後で終了する。室温で約60分後、0.7M NaOH中の1.4% α−ナフトールおよび0.14% クレアチンの溶液約80μlを加え、室温で更に約45分間のインキュベーションの後、540nmで吸光度を測定する。ALSの阻害に関するpI50値を、ID Business Solutions Limited,Guildford,UKのXLFit Excel アドイン バージョン4.3.1曲線フィッティングプログラムを使用して、Ray(1984)),Plant Physiol.,75,827−831に記載されているとおりに決定した。
【0063】
植物を使用する場合、ALS活性は、好ましくは、野生型の細胞抽出物または葉抽出物、および得られた突然変異体のビー・ブルガリス細胞抽出物または葉抽出物において、種々の濃度のALSインヒビター除草剤、好ましくはスルホニル尿素除草剤またはスルホニルアミノ−カルボニルトリアゾリノン除草剤の存在下、より好ましくは、種々の濃度のALSインヒビター除草剤「ホラムスルフロン(foramsulfuron)」の存在下で測定される。例えば、ALSは、Ray(1984),Plant Physiol 75:827−831に記載されているとおりに、好ましくは、テンサイ葉またはテンサイ組織培養から抽出される。
【0064】
本発明のビー・ブルガリス植物は、ALSインヒビターに対する、より低い感受性を有することが好ましく、より好ましくは、それは少なくとも100倍低い感受性を有し、より好ましくは500倍、より一層好ましくは1000倍、最も好ましくは2000倍低い感受性を有する。本明細書中で用いる低い感受性は、逆に言えば、「より耐性」または「より抵抗性」と理解されうる。同様に、「より耐性」または「より抵抗性」は、逆に言えば、「より低い感受性」と理解されうる。例えば、本発明のビー・ブルガリス植物、特に、後記実施例に記載されているビー・ブルガリス植物は、該野生型酵素と比較して、ALSインヒビター除草剤ホラムスルフロン(ALSインヒビターサブクラス「スルホニル尿素除草剤」のメンバー)に対する少なくとも2000倍低い感受性を有する。
【0065】
好ましくは、本発明のビー・ブルガリス植物は、スルホニル尿素除草剤、スルホニルアミノ−カルボニルトリアゾリノン除草剤およびイミダゾリノン除草剤のようなALSインヒビター除草剤の種々のメンバーに対する、より低い感受性を有する。好ましくは、該植物がより低い感受性を示すスルホニル尿素除草剤およびスルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン除草剤が選択される。特定の好ましい実施形態においては、本発明のビー・ブルガリス植物は、ALSインヒビター除草剤ホルマスルフロン(スルホニル尿素除草剤)の単独体に対する、またはそれと組合された、スルホニル尿素除草剤のサブクラスもしくはいずれかの他のサブクラスのALSインヒビター除草剤からの1以上の他のALSインヒビター除草剤に対する、より低い感受性を有する。
【0066】
したがって、ALSインヒビター除草剤に対する、好ましくはより低い感受性を有する、本発明のビー・ブルガリス植物は、同様に、ALSインヒビターに対して「より耐性」(すなわち、ALSインヒビター耐性植物)であることにより特徴づけられうる。
【0067】
したがって、「ALSインヒビター耐性」植物は、正常または野生型植物の成長を通常に阻害するレベルで、少なくとも1つのALSインヒビター除草剤(好ましくは、該ALSインヒビター除草剤は正常または野生型植物を防除する)に対して、より耐性である植物、特にビー・ブルガリス植物を意味する。該正常または野生型植物は、配列番号1に示されているビー・ブルガリス(B.vulgaris)ALS遺伝子のヌクレオチド配列の1705−1707位に対応する位置でトリプトファンとは異なるアミノ酸をコードするコドンを、内因性ALS遺伝子のいずれかの対立遺伝子のヌクレオチド配列内に含まない。
【0068】
該ヌクレオチド配列は、一般に、「ALSインヒビター除草剤耐性」ヌクレオチド配列であることによっても特徴づけられうる。「ALSインヒビター除草剤耐性ヌクレオチド配列」は、配列番号2に示されているビー・ブルガリスALSタンパク質のアミノ酸配列の569位に対応する位置にトリプトファンとは異なるアミノ酸を有さないALSタンパク質と比較した場合にトリプトファンとは異なるアミノ酸をコードするコドンを与える少なくとも1つの突然変異を含むヌクレオチド配列を含む核酸分子を意味し、ここで、そのような少なくとも1つの突然変異は、ALSインヒビター除草剤ALSタンパク質に対する、より低い感受性の発現をもたらす。「除草剤耐性ALSタンパク質」は、そのようなALSタンパク質が、ALS活性を阻害することが知られている少なくとも1つのALSインヒビター除草剤の存在下、野生型ALSタンパク質のALS活性を阻害することが知られている該除草剤の濃度またはレベルで、野生型ALSタンパク質のALS活性より高い活性を示すことを意味する。
【0069】
同様に、「ALSインヒビター除草剤」または略して「ALSインヒビター」なる語は互換的に用いられる。本明細書中で用いる「ALSインヒビター除草剤」または「ALSインヒビター」は、ALS酵素の活性を阻害する単一の除草剤には限定されないと意図される。したがって、特に示されていない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、「ALSインヒビター除草剤」または「ALSインヒビター」は、ALS酵素の活性をそれぞれが阻害する好ましくは本明細書中に特定されている当技術分野で公知の1つの除草剤または2つ、3つ、4つ若しくはそれ以上の除草剤の混合物でありうる。
【0070】
驚くべきことに、本発明による単一の点突然変異でさえも、ビー・ブルガリス植物およびその後代において、特にホモ接合が確立されている場合に、農業に有用な且つ安定なレベルのALSインヒビター除草剤耐性をもたらすことが見出された。そのような突然変異が専らヘテロ接合で存在する同じ遺伝的バックグラウンドの除草剤耐性ベータ・ブルガリス植物と比較して、該突然変異に関してホモ接合である除草剤耐性ベータ・ブルガリス植物は、より良好な農業的レベルのALSインヒビター除草剤耐性を示した。
【0071】
したがって、本発明は、内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)遺伝子の突然変異を有するALSインヒビター除草剤耐性ベータ・ブルガリス植物に関するものであり、ここで、該ALS遺伝子は、ALSポリペプチドの569位にトリプトファンとは異なるアミノ酸を含有するALSポリペプチドをコードしている。それぞれの突然変異はヘテロ接合で存在することが可能であり、好ましくは、ALS遺伝子の唯一の突然変異でありうる。より好ましくは、それぞれの突然変異はホモ接合で存在することが可能であり、最も好ましくは、それぞれの突然変異は内因性ALS遺伝子の唯一の突然変異としてホモ接合で存在する。
【0072】
また、WO 2010/037061は、農業に有用なALSインヒビター除草剤耐性を付与するためにはALS遺伝子内の二重または三重突然変異体が必要だと教示しているため、ベータ・ブルガリスにおけるALS遺伝子のただ1つの単一突然変異で十分であるとは予想され得ないであろう。
【0073】
したがって、突然変異に関してヘテロ接合であるビー・ブルガリス植物およびその部分はそれほど好ましくはないが、本発明に尚も含まれ、或る施用法および/または或る環境条件には十分でありうる。また、内因性ALS遺伝子内に1以上の他の突然変異を有する1つ(2倍性の場合)またはそれ以上(倍数性の場合)の他の対立遺伝子を含有し、配列番号1に示されているビー・ブルガリスALS遺伝子のヌクレオチド配列の1705−1707に対応する位置にトリプトファンとは異なるアミノ酸、好ましくはロイシンをコードするコドンを、少なくとも内因性ALS遺伝子の対立遺伝子の1つに含有する植物も、本発明に含まれる。
【0074】
したがって、本明細書中で用いる「ヘテロ接合」または「ヘテロ接合で」なる語は、本発明の植物が、特定の遺伝子座、特にALS遺伝子座に異なる対立遺伝子を有することを意味する。
【0075】
「ホモ接合」または「ホモ接合で」は、本発明の植物が、異なるDNA鎖上、特にALS遺伝子座に同一対立遺伝子の2つのコピーを有することを意味する。
【0076】
そうでないと明らかに示されていない限り、本明細書中で用いる「植物」なる語は任意の発生段階の植物を意味すると意図される。
【0077】
本発明のベータ・ブルガリス植物は正倍数体または非正倍数体であることが好ましい。正倍数体植物は、好ましくは、半数体、2倍体、4倍体、6倍体、8倍体、10倍体または12二倍体であることが可能であり、一方、非正倍数体植物は、好ましくは、3倍体または5倍体であることが可能である。
【0078】
植物の部分は完全植物の全体に付着している、またはそれから分離していることが可能である。植物のそのような部分には、植物の器官、組織および細胞、好ましくは種子が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
したがって、本発明のビー・ブルガリス植物は内因性ALS遺伝子に関して非トランスジェニックである。もちろん、遺伝的操作により、または交配のような通常の方法により、該植物に外来遺伝子が導入されることが可能である。該遺伝子は、除草剤耐性を付与する遺伝子、好ましくは、ALSインヒビター除草剤耐性とは異なる除草剤耐性を付与する遺伝子、収量を改善する遺伝子、生物学的生物に対する抵抗性を改善する遺伝子、および/または含有物修飾に関する遺伝子でありうる。
【0080】
もう1つの態様においては、本発明は、以下の工程:
(a)カルス、好ましくはテンサイ由来のカルスを、約10
−7M〜10
−9MのALSインヒビター除草剤、好ましくはホラムスルフロン(foramsulfuron)にさらし、
(b)3×10
−6MまでのALSインヒビター除草剤、好ましくはホラムスルフロン[CAS RN 173159−57−4]の存在下で成長しうる細胞コロニーを選択し、
(c)ALSインヒビター除草剤、好ましくはホラムスルフロンの存在下でシュートを再生させ、
(d)ALSインヒビター除草剤、好ましくはホラムスルフロン、ヨードスルフロン(iodosulfuron)−メチル−ナトリウム[CAS RN 144550−36−7]および/またはそれらの両方の混合物(ここで、ホルムスルフロンの用量は、好ましくは、7〜70g a.i./haと同等であり、ヨードスルフロン−メチル−ナトリウムの用量は、好ましくは、1〜10g a.i./haと同等である)で、再生された小植物を選択することを含む、ベータ・ブルガリス植物およびその部分の製造方法に関する。
【0081】
もう1つの態様においては、前記の工程(a)〜(d)により得られた再生小植物を、以下の工程(e)〜(m)を適用することにより、ベータ・ブルガリス植物の更なる製造に使用することが可能である:
(e)各ALSインヒビター除草剤耐性小植物細胞系(クローン)を樹立することによる、種々の陽性変異体をレスキューするための、工程(d)の個々の小植物の栄養微小繁殖(vegetative micropropagation)、
(f)栄養(vegetative)状態における各樹立クローンの長期貯蔵、
(g)該長期貯蔵からの各クローンのクローン化植物の、温室内への移動、
(h)開花を誘導するための春化室内での春化および適応、
(i)成長室(制御された温度および光)への春化植物の移動、
(j)工程(d)の小植物の生殖稔性(generative fertility)(雄および雌)に対する体細胞クローン変異の負の影響に対処するための、優良(elite)であるがALSインヒビター除草剤感受性である系の除雄植物との交配のための、最良開花クローンの最良花粉放出植物の選択、
(k)稔性が回復するまでは優良系への、そして最終的には、ホモ接合状態を得るための自家ヘテロ接合植物への戻し交配、
(l)圃場評価のための各戻し交配系の自殖種子およびALSインヒビター除草剤感受性相手との検定交雑、
(m)最良性能系(好ましくは、そのホモ接合状態のもの)を選択するための、農業的に適切な用量の種々のALSインヒビター除草剤の施用。
【0082】
対立遺伝子の少なくとも1つに本発明のW569突然変異を含有するヘテロ接合植物の適切な選択を行うための、ALSコード化内因性遺伝子の種々の位置に1以上の突然変異を含有する場合、またはホモ接合形態で突然変異を得るための植物の適切な選択を確保するための、および該方法を加速させるための分子育種技術(標識支援育種(marker assisted breeding)または標識支援選択のような分子育種技術)により支持される育種業界で公知の方法に従う商業的品種の開発のための基礎を、前記工程(a)〜(m)により得られた系は構成する(総説としては、Bertrand C.Y.ら,(2008),Phil.Trans.R.Soc,B.,363,557−572を参照されたい)。
【0083】
カルスは、当技術分野で一般に公知の手段および方法により、例えば後記実施例に記載されているとおりに得られる。
【0084】
前記工程(m)により得られた種子はNCIMB,Aberdeen,UKに番号NCIMB 41705として寄託されている。
【0085】
もう1つの態様においては、本発明は、(i)内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)遺伝子の突然変異(ここで、該ALS遺伝子は、ALSポリペプチドの569位にトリプトファンとは異なるアミノ酸を含有するALSポリペプチドをコードしている)、および(ii)該内因性ALS遺伝子内の追加的な突然変異を含む、除草剤耐性ベータ・ブルガリス植物およびその部分の製造方法に関するものであり、該製造方法は、以下の工程を含む:
(a)内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)遺伝子の突然変異を含むALSインヒビター除草剤耐性ベータ・ブルガリス植物(親A)を得(ここで、該ALS遺伝子は、ALSポリペプチドの569位にトリプトファンとは異なるアミノ酸を含有するALSポリペプチドをコードしている)、
(b)アミノ酸569位とは異なる位置における内因性ALS遺伝子内の1以上の他の突然変異を含有するベータ・ブルガリス植物(親B)と親Aを交配させ、
(c)アミノ酸569位のALS遺伝子突然変異に関して、および親Bによりコードされるいずれかの他のALS遺伝子突然変異の1以上に関してヘテロ接合であるベータ・ブルガリス後代を得、
(d)ここで、該育種法は、
(i)標識支援育種および/もしくはミクロシークエンシング技術の適用、ならびに/または
(ii)工程(c)により得られた後代が耐性である1以上のALSインヒビター除草剤の農業的に適切な用量の施用により制御される。
【0086】
したがって、本発明はまた、前記製造方法により得られるビー・ブルガリス植物に関するものであると予想される。
【0087】
非限定的な例においては、以下の非限定的な方法により、本発明のテンサイ植物を得た。理論により束縛されるものではないが、テンサイ以外のビー・ブルガリス(B.vulgaris)植物を得るために同じ方法が用いられうる。
【0088】
テンサイ細胞培養を2倍体テンサイ遺伝子型7T9044の実生から開始した(例えば、Alexander Dovzhenko,PhD Thesis,題名:“Towards plastid transformation in rapeseed(Brassica napus L.)and sugarbeet(Beta vulgaris L.)”,Ludwig−Maximilians−Universitat Munchen,Germany,2001に記載されているとおり)。テンサイ種子を70% エタノール中に60秒間浸漬し、ついで、0.01% 界面活性剤を含有する無菌水で2回洗浄し、ついで1% NaOCl漂白剤中で1〜4時間インキュベートした。ついで該種子を無菌水で3回洗浄し、該種子を無菌水中、4℃で一晩保存した。ついで、鉗子および外科用メスを使用して、胚を単離した。新たに調製した胚を0.5% NaOCl中に30分間浸漬し、ついで無菌水で3回洗浄した。最後の洗浄工程の後、それらをホルモン非含有MS寒天培地(MurashigeおよびSkoog(1962),Physiol.Plantarum,15,473−497)上に配置した。無菌実生へと発育した胚を、再生可能なテンサイ培養の開始に使用した。子葉および胚軸を長さ2〜5mmの断片に切断し、ついで、1mg/l ベンジルアミノプリン(BAP)または0.25mg/l チジアズロン(TDZ)を含有する寒天(0.8%)固化MS培地上で培養した。4週間後、発育中のシュート培養を同じ組成の新鮮寒天培地上に移し、ついで1カ月間隔で継代培養した。該培養を12時間/12時間の明/暗周期で薄明下で25℃に維持した。7〜10回の継代培養の後、チジアズロン含有培地上で成長したシュート培養は特徴的なカルス型を形成し、これは、速い成長を示し、軟らかく、脆かった。このカルス型の色は黄色から淡緑色であった。これらの脆いカルスの幾つかは胚様構造体からクロロフィル含有シュート原基を一貫して生成した。これらの速く成長する再生可能カルスをALSインヒビター除草剤耐性テンサイ突然変異体の選択に使用した。このカルス型を10
−9Mのスルホニル尿素ホラムスルフロン(CAS RN 173159−57−4)にさらしたところ、該細胞は生存したが、該インヒビターを欠く培地上のそれらの同胞のバイオマスの50%未満を与えたに過ぎなかった。3×10
−8M ホラムスルフロンを含有する培地上では、成長は全く検出されなかった。大規模突然変異体選択実験のために、10
−7M ホラムスルフロンを選択した。生存し成長している細胞コロニーを計数し、4〜6週間後、3×10
−7Mの該インヒビターを含有する新鮮培地上に移した。これらの細胞コロニーの1つは、該インヒビターのこの濃度だけでなく、3×10
−6Mのホラムスルフロンの存在下でさえも成長することが可能であった。このクローン(SB574TL)から、該ALSインヒビター除草剤の存在下でシュートを再生させ、ついで該シュートを、0.05mg/l ナフタレン酢酸(NAA)を含有するMS培地に移した。4〜12週間以内に、該シュートは根を形成し、ついでそれらを、湿潤滅菌パーライトで満たされた無菌植物容器内に移し、半分の強度のMS無機成分と共に給水した。あるいは、該小植物を該寒天固化培地から温室内のパーライト含有土壌混合物に直接的に移した。土壌含有基質中に移した後の最初の10〜15日間は、該植物を、高い湿度を有する環境中に維持した。それらを通常の温室湿度形態に切り換える途中および切り換えた後、該植物を、20+−3℃/15+−2℃の昼/夜温度で人工光(12時間)下の温室内で維持した。
【0089】
3〜5週間後、前記で得られたホラムスルフロン耐性細胞培養(SB574TL)からの及び野生型細胞培養からの再生植物をホラムスルフロン、ヨードスルフロン−メチル−ナトリウム(CAS RN 144550−3−7)、および両方の活性成分の混合物で処理した。試験された除草剤の用量はホラムスルフロンに関しては7〜70g a.i./ha、そしてヨードスルフロン−メチル−ナトリウムに関しては1〜10g a.i./haと同等であった。この耐性細胞系からの再生植物は、最高の除草剤の用量(ホラムスルフロン、ヨードスルフロン−メチル−ナトリウムおよび7:1の比のそれらの混合物)にも耐えたが、該野生型植物は最低の用量でも枯死した。
【0090】
後代を(非限定的に)以下のとおりに試験した。SB574TLに基づいて、ヘテロ接合状態で耐性対立遺伝子を付与する実験的ハイブリッドのF2およびF3種子、ならびにホモ接合状態で突然変異対立遺伝子を付与するF4〜F6種子を圃場に播種し、該植物が3〜5個のロセット葉を生成したら、ホラムスルフロン、ヨードスルフロン−メチル−ナトリウムおよび両方のALSインヒビター除草剤の混合物で処理した。該ホモ接合実生は、成長遅延または視認可能な損傷のいずれの徴候をも伴うことなく、35gのホラムスルフロン/ha+7gのヨードスルフロン−メチル−ナトリウム/haの混合物に耐えた。幾つかの場合には、ヘテロ接合系は、これらの比率において遅延成長および何らかの葉クロロシスの徴候を示したが、それらは3〜5週間以内に回復した。一方、通常のテンサイ実生は該ALSインヒビター除草剤により枯死した。
【0091】
該ALS突然変異体は以下のとおりに特徴づけられた。得られた突然変異体の抽出および核酸配列解析は、修正された標準的プロトコールに従いLGC Genomics GmbH,Berlin,Germanyにより行われた。
【0092】
テンサイ突然変異体SB574TLから得られた核酸配列を配列番号3に示す。配列番号4は対応アミノ酸配列を表す。一方、配列番号1は、出発物質として採用された野生型テンサイ植物を配列決定した後で得られた。配列番号2は野生型テンサイの対応アミノ酸配列を表す。全てのこれらの配列の比較は、574位の突然変異のみが存在し、この内因性ALS遺伝子のいずれの他の部分においても他の変化が生じなかったことを示している。
【0093】
【化1】
しかし、本発明のビー・ブルガリス植物およびその部分は農業に利用されうることが一般に好ましい。「農業に利用されうる」は、該ビー・ブルガリス植物およびその部分が農業目的に有用であることを意味する。例えば、該ビー・ブルガリス植物は、糖製造、生物燃料(例えば、バイオガス、バイオブタノール)、エタノール製造、ベタインおよび/またはウリジン製造に有用となるという目的に役立つはずである。本明細書中で用いる「農業に利用されうる」なる語はまた、本発明のビー・ブルガリス植物が、好ましくは、ALSインヒビター除草剤に対する、より低い感受性を有すること、より好ましくは、それが少なくとも100倍低い感受性を有すること、より好ましくは500倍、より一層好ましくは1000倍、最も好ましくは2000倍低い感受性を有することを含む意である。該ALSインヒビター除草剤は、本明細書に記載されている1以上のものであり、好ましくは、それはホラムスルフロンの単独体、またはそれと組合された、スルホニル尿素除草剤のサブクラスもしくはいずれかの他のサブクラスのALSインヒビター除草剤からの1以上の他のALSインヒビター除草剤であり、最も好ましくは、それはホラムスルフロンと、他のスルホニル尿素除草剤および/またはスルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン除草剤サブクラスのALSインヒビターとの組合せである。
【0094】
好ましくは、本発明の、農業に利用されうるビー・ブルガリス植物、最も好ましくはテンサイ植物は、完全稔性であり、より好ましくは、野生型稔性を有する。稔性は、本発明のビー・ブルガリス植物が農業に利用されうるためには、この上なく重要である。
【0095】
農業に利用されうるビー・ブルガリス植物の一例はテンサイである。1ヘクタールの面積で栽培される本発明のテンサイ植物(約80,000〜90,000のテンサイ)は、好ましくは、少なくとも4トンの糖の製造に役立つはずである。
【0096】
あるいは、本発明のテンサイ植物は、農業に利用されうるためには、好ましくは、15〜20%、好ましくは少なくとも17%の糖含量を含有するべきである。したがって、15〜20%、好ましくは少なくとも17%の糖含量を含有するテンサイ植物は本発明の好ましい実施形態である。
【0097】
本発明の植物はいずれかの遺伝子型分析法により特定されうる。植物の遺伝子型評価は、アイソザイム電気泳動、制限断片長多形(RFLP)、ランダム増幅多形DNA(RAPD)、任意プライム化(Arbitrarily Primed)ポリメラーゼ連鎖反応技術(AP−PCR)、対立遺伝子特異的PCR(AS−PCR)、DNA増幅フィンガープリンティング(DAF)、配列特徴づけ増幅領域(Sequence Characterized Amplified Regions)(SCAR)、増幅断片長多形(AFLP)、単一配列反復(Simple Sequence Repeats)(SSR)(これは「マイクロサテライト」とも称される)を用いることを含む。本発明において提供される植物の遺伝子型を分析するための追加的な組成物および方法には、米国公開第2004/0171027号、米国公開第2005/02080506号および米国公開第2005/0283858号に開示されている方法が含まれる。
【0098】
本発明のもう1つの態様は、本明細書に記載されているベータ・ブルガリス植物および/または本明細書に記載されている収穫可能部分もしくは繁殖物質の、ベータ・ブルガリス植物の製造/育種のための使用である。ビー・ブルガリス植物の製造/育種のための方法は本明細書に記載されている。そのような製造/育種方法は、干ばつ、高温、低温または塩ストレス(これらに限定されるものではない)のようなストレスに対する耐性のような新規植物形質を更に含む本発明のビー・ブルガリス植物を作製するために使用されうる。
【0099】
更にもう1つの態様においては、本発明は、ALSインヒビター除草剤の選択のためのスクリーニング方法における、本明細書に記載されている除草剤耐性ベータ・ブルガリス植物および/またはそれに由来する収穫可能部分もしくは繁殖物質の使用を含む。
【実施例】
【0100】
本発明の及びその多数の利点の更に深い理解が以下の実施例から得られるであろう。該実施例は例示目的で記載されているに過ぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0101】
実施例1:突然変異体の単離
テンサイ細胞培養を2倍体テンサイ遺伝子型7T9044の実生から開始した(例えば、Alexander Dovzhenko,PhD Thesis,題名:“Towards plastid transformation in rapeseed(Brassica napus L.)and sugarbeet(Beta vulgaris L.)”,Ludwig−Maximilians−Universitat Munchen,Germany,2001に記載されているとおり)。
【0102】
テンサイ種子を70% エタノール中に60秒間浸漬し、ついで、0.01% 界面活性剤を含有する無菌水で2回洗浄し、ついで1% NaOCl漂白剤中で1〜4時間インキュベートした。ついで該種子を無菌水で3回洗浄し、該種子を無菌水中、4℃で一晩保存した。ついで、鉗子および外科用メスを使用して、胚を単離した。新たに調製した胚を0.5% NaOCl中に30分間浸漬し、ついで無菌水で3回洗浄した。最後の洗浄工程の後、それらをホルモン非含有MS寒天培地(MurashigeおよびSkoog(1962),Physiol.Plantarum,15,473−497)上に配置した。無菌実生へと発育した胚を、再生可能なテンサイ培養の開始に使用した。
【0103】
子葉および胚軸を長さ2〜5mmの断片に切断し、ついで、1mg/l ベンジルアミノプリン(BAP)または0.25mg/l チジアズロン(TDZ)を含有する寒天(0.8%)固化MS培地上で培養した。4週間後、発育中のシュート培養を同じ組成の新鮮寒天培地上に移し、ついで1カ月間隔で継代培養した。該培養を12時間/12時間の明/暗周期で薄明下で25℃に維持した。7〜10日後(継代培養)、チジアズロン含有培地上で成長したシュート培養は特徴的なカルス型を形成し、これは、速い成長を示し、軟らかく、脆かった。このカルス型の色は黄色から淡緑色であった。これらの脆いカルスの幾つかは胚様構造体からクロロフィル含有シュート原基を一貫して生成した。これらの速く成長する再生可能カルスをALSインヒビター除草剤耐性テンサイ突然変異体の選択に使用した。このカルス型を10
−9MのALSインヒビター除草剤ホラムスルフロン(スルホニル尿素サブクラスに属する;前記参照)にさらしたところ、該細胞は生存したが、該インヒビターを欠く培地上のそれらの同胞のバイオマスの50%未満を与えたに過ぎなかった。3×10
−8M ホラムスルフロンを含有する培地上では、成長は全く検出されなかった。大規模突然変異体選択実験のために、10
−7M ホラムスルフロンを選択した。生存し成長している細胞コロニーを計数し、4〜6週間後、3×10
−7Mの該インヒビターを含有する新鮮培地上に移した。これらの細胞コロニーの1つは、該インヒビターのこの濃度だけでなく、3×10
−6Mのホラムスルフロンの存在下でさえも成長することが可能であった。このクローン(SB574TL)から、該ALSインヒビター除草剤の存在下でシュートを再生させ、ついで該シュートを、0.05mg/l ナフタレン酢酸(NAA)を含有するMS培地に移した。
【0104】
4〜12週間以内に、該シュートは根を形成し、ついでそれらを、湿潤滅菌パーライトで満たされた無菌植物容器内に移し、半分の強度のMS無機成分と共に給水した。あるいは、該小植物を該寒天固化培地から温室内のパーライト含有土壌混合物に直接的に移した。土壌含有基質中に移した後の最初の10〜15日間は、該植物を、高い湿度を有する環境中に維持した。それらを通常の温室湿度形態に切り換える途中および切り換えた後、該植物を、20+−3℃/15+−2℃の昼/夜温度で人工光(12時間)下の温室内で維持した。
【0105】
3〜5週間後、前記で得られたホラムスルフロン耐性細胞培養(SB574TL)からの及び野生型細胞培養からの再生植物をホラムスルフロン、ヨードスルフロン−メチル−ナトリウム(CAS RN 144550−3−7)、および両方の活性成分の混合物で処理した。試験された除草剤の用量はホラムスルフロンに関しては7〜70g a.i./ha、そしてヨードスルフロン−メチル−ナトリウムに関しては1〜10g a.i./haと同等であった。この耐性細胞系からの再生植物は、最高の除草剤の用量(ホラムスルフロン、ヨードスルフロン−メチル−ナトリウムおよび7:1の比のそれらの混合物)にも耐えたが、該野生型植物は最低の用量でも枯死した。
【0106】
実施例2:後代の試験
SB574TLに基づいて、ヘテロ接合状態で耐性対立遺伝子を付与する実験的ハイブリッドのF2およびF3種子、ならびにホモ接合状態で突然変異対立遺伝子を付与するF4〜F6種子を圃場に播種し、該植物が3〜5個のロセット葉を生成したら、ホラムスルフロン、ヨードスルフロン−メチル−ナトリウムおよび両方のALSインヒビター除草剤の混合物で処理した。該ホモ接合実生は、成長遅延または視認可能な損傷のいずれの徴候をも伴うことなく、35gのホラムスルフロン/ha+7gのヨードスルフロン−メチル−ナトリウム/haの混合物に耐えた。ヘテロ接合系は、これらの比率において遅延成長および何らかの葉クロロシスの徴候を示したが、それらは3〜5週間以内に回復した。一方、通常のテンサイ実生は該ALSインヒビター除草剤により枯死した。
【0107】
実施例3:得られたテンサイ突然変異体(SB574TL)の分子的特徴づけ
得られた突然変異体の抽出および核酸配列解析は、修正された標準的プロトコールに従いLGC Genomics GmbH,Berlin,Germanyにより行われた。
【0108】
テンサイ突然変異体SB574TLから得られた核酸配列を配列番号3に示す。配列番号4は対応アミノ酸配列を表す。一方、配列番号1は、出発物質として採用された野生型テンサイ植物を配列決定した後で得られた。配列番号2は野生型テンサイの対応アミノ酸配列を表す。
【0109】
全てのこれらの配列の比較は、574位の突然変異のみが存在し、この内因性ALS遺伝子のいずれの他の部分においても他の変化が生じなかったことを明らかに示している。
【0110】
実施例4:酵素活性測定
ベータ・ブルガリス野生型およびW574L−突然変異体(SB574TL)ALS遺伝子のコード配列をNovagen pET−32a(+)ベクター内にクローニングし、該ベクターを、大腸菌(Escherichia coli)AD494内に、該製造業者の説明に従い形質転換した。細菌を、100mg/ml カルベニシリンおよび25mg/l カナマイシンを含有するLB−培地(ルリア−ブロス−培地)内で37℃で増殖させ、1mM イソプロピル−b−D−チオガラクトピラノシドで0.6のOD
600で誘導し、18℃で16時間培養し、遠心分離により回収した。細菌ペレットを、0.1mM チアミン−ピロリン酸、1mM MgCl
2および1μM FADを含有する100mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)に、25mlのバッファー当たり1グラムの湿潤重量の濃度で再懸濁させ、音波処理により破壊した。遠心分離後に得られた粗タンパク質抽出物をALS活性の測定に使用する。
【0111】
Ray(1984)に記載されている方法の変法を用いて、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて、ALSアッセイを行った。該反応混合物は20mM リン酸カリウムバッファー(pH7.0)、20mM ピルビン酸ナトリウム、0.45mM チアミン−ピロリン酸、0.45mM MgCl
2、9μM FAD、ALS酵素および種々の濃度のALSインヒビターを90μlの最終容量中に含有していた。アッセイを、酵素を加えることにより開始し、40μlの0.5M H
2SO
4の添加により、30℃で75分間のインキュベーションの後で終了させた。室温で60分後、0.7M NaOH中の1.4% α−ナフトールおよび0.14% クレアチンの溶液80μlを加え、室温で更に約45分間のインキュベーションの後、540nmで吸光度を測定した。ALSの阻害に関するpI50値を、ID Business Solutions LimitedのXLFit Excel アドイン バージョン4.3.1曲線フィッティングプログラムを使用して、Ray(1984)に記載されているとおりに決定した。
【0112】
総合すると、該突然変異酵素は、ALSインヒビターホラムスルフロンに対する、該野生型酵素より少なくとも2000倍低い感受性を示した。
【0113】
実施例5:酵素活性測定(植物からのもの)
Ray(1984),Plant Physiol 75:827−831に記載されているとおりに、テンサイ葉またはテンサイ組織培養からALSを抽出した。
【0114】
野生型テンサイの葉抽出物および得られたSB574TLの葉抽出物において、種々の濃度のホラムスルフロンの存在下、実施例4に記載されているとおりにALS活性を測定した。
【0115】
総合すると、該突然変異酵素は、ALSインヒビターホラムスルフロンに対する、該野生型酵素より少なくとも2000倍低い感受性を示した。
【0116】
実施例6:ホモ接合ALSインヒビター除草剤耐性テンサイ植物を使用することによる圃場試験
SB574TLに基づいて、ホモ接合状態で内因性ALS遺伝子の突然変異対立遺伝子を付与するF4〜F6種子を更なる試験のために施用した。ホモ接合SB574TL突然変異植物の植物種子ならびに伝統品種KLARINA(ALSタンパク質の569位にそれぞれの突然変異を有さない、一般的に入手可能なALSインヒビター感受性基準テンサイ品種)の種子を圃場に播き、BBCH標準(monographie“Entwicklungsstadien mono− und dikotyler Pflanzen”,2nd edition,2001,Uwe Meier編,Biologische Bundesanstalt fur Land und Forstwirtschaftに定義されているとおり)に従い種々の成長段階まで成長させた。ついで該植物を、選択法において使用されてる以下の表1に特定されているそれぞれのALSインヒビター除草剤で試験した。種々の施用において施用した水量は200 l/haに等しかった。それぞれのALSインヒビター除草剤の施用の8、14および28日後(DAA)(表1に示されているとおり)、種々のテンサイ植物に対する損傷(植物毒性)を0%から100%までの尺度に従い評価した。この場合、「0%」は「植物毒性無し」を意味し、「100%」は、植物が完全に枯死したことを意味する。
【0117】
【表2】