特許第6093304号(P6093304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6093304神経障害を治療するための免疫原性組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093304
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】神経障害を治療するための免疫原性組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/715 20060101AFI20170227BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20170227BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   A61K37/20
   A61K9/127
   A61P25/28
【請求項の数】4
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2013-535445(P2013-535445)
(86)(22)【出願日】2011年10月27日
(65)【公表番号】特表2013-540800(P2013-540800A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2011068909
(87)【国際公開番号】WO2012055981
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2014年10月17日
(31)【優先権主張番号】1101331.5
(32)【優先日】2011年1月26日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/407,235
(32)【優先日】2010年10月27日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】ハレ,マクシム
(72)【発明者】
【氏名】ラロック,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】パルマンティエ,レミ
(72)【発明者】
【氏名】プリエールズ,ジャン−ポール
(72)【発明者】
【氏名】トリブット−ジョヴァー,パスカル
【審査官】 安藤 公祐
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/075545(WO,A1)
【文献】 特表2009−519309(JP,A)
【文献】 Brain,2006年,129,3006-19
【文献】 FASEB J,2002年,16(6),601-3
【文献】 Mediators Inflamm,2010年 8月,2010,1-12,Article ID 497987
【文献】 Brain Res Rev,2009年,59(2),278-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/715
A61K 9/127
A61P 25/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における空間記憶の改善によって評価される、対象においてアルツハイマー病を予防及び/又は軽減するための、エンドトキシンを含まない
CRX527又は
CRX601であるアミノアルキルグルコサミニドホスフェート(「AGP」)TLR4アゴニストを含む組成物。
【請求項2】
対象における空間記憶の改善によって評価される、対象におけるアルツハイマー病を予防及び/又は軽減するための医薬品の製造におけるエンドトキシンを含まないCRX527又はCRX601であるアミノアルキルグルコサミニドホスフェート(「AGP」)TLR4アゴニストの使用であって、該医薬品がベータアミロイド又はその断片若しくはミモトープを含まない、使用。
【請求項3】
組成物が水中油型エマルションと組み合わせたCRX527又はCRX601からなる、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
医薬品が水中油型エマルションと組み合わせたCRX527又はCRX601からなる、請求項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミロイド-[ベータ]沈着、及び/又はアルツハイマー病若しくは他の疾患の予防及び治療、並びにそのための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)
アルツハイマー病(AD)は、ヒトにおける認知症の最も重要な原因である神経変性障害である。老人斑と呼ばれることが多い、β-アミロイドペプチド(Aβ)の細胞外沈着物、及び高リン酸化タウタンパク質の細胞内神経原線維濃縮体の形成は、この疾患の二つの主要な特徴である。Aβ凝集体は、シナプスの機能障害、脳の海馬領域における長期電位低下を誘発することが知られており、したがって、ADのヒト及びマウスモデルの双方における学習及び記憶の欠陥と結びつけられ、Aβ沈着物がこの障害に対する予防又は治療のための標的となっている。
【0003】
ADは、世界中で全ての人種及び民族において認められており、現在及び今後の主な公衆衛生問題である。450万名ものアメリカ人がADを患っている。この疾患は、通常、60歳より後に始まり、年齢と共にリスクが上がる。より若いヒトもADに罹り得るが、それはかなり稀である。65から74歳の男性及び女性のうちの約5パーセントがADを有し、85歳以上の人々のうちの半分近くがこの疾患を有し得る。しかし、ADは老化の通常の一部ではないことに注意することが重要である。ADは、現在、不治である。ADを有効に予防する又はその症状若しくは経過を逆戻りさせる治療は、現在知られていない。
【0004】
中枢神経系におけるアミロイド斑の形態でのアミロイド-ベータ(本明細書中ではAベータ又はAb又はAβ)ペプチドの沈着は、ADの特徴のうちの一つである(Wisniewskiらに対する米国特許公開第20040214774号; Seubertに対する米国特許第6,114,133号; Dementia: Presentations, Differential Diagnosis & Nosology、89〜120(Emery及びOxman、編、2003)にあるWegielら、「Alzheimer Dementia Neuropathology」。いくつかの系の証拠により、アミロイドベータの蓄積は、脳内のニューロンを破壊して、認知能力における欠陥をもたらすという結論が支持されている。アミロイドベータの蓄積はクリアランスから沈着への平衡のシフトの結果であるようであるので、脳からのアミロイドベータクリアランスを高める機序を特定及び促進することはきわめて望ましい。
【0005】
変異型のヒトAPPを過剰に発現している、若齢トランスジェニックマウスにおけるAβ42ペプチドの筋肉内注射は、Aβ沈着物の形成を効率良く予防した。一方、より高齢の動物に対するその投与は、それらのアミロイド斑負荷量を減少させた。Schenk, D.ら Nature 400、173〜177(1999)。さらに、Aβに対するモノクローナル抗体の脳室内注射は、注射したAβオリゴマーが長期増強(記憶と相関した電気生理学的測定値)を阻害するのを効率良く防ぐ。Klyubin, I.ら Nature medicine 11、556〜561(2005)を参照されたい。したがって、マウスモデルにおいて、ワクチン接種は、ADに関連した表現型の予防において妥当なアプローチである。
【0006】
ワクチン接種は、少なくともADの動物モデルにおいて、疾患プロセスに対する本物の影響力を有することが示された最初の治療アプローチであった(Sadowskiら、「Disease Modifying Approaches for Alzheimer's Pathology」、Current Pharmaceutic Design、13:1943〜54(2007); Wisniewskiら、「Therapeutic Approaches for Prion and Alzheimer's Diseases」、FEBS J.274:3784〜98(2007); Wisniewskiら、「Immunological and Anti-Chaperone Therapeutic Approaches for Alzheimer Disease」、Brain Pathol.15:72〜77(2005))。フロイントアジュバントと共注射されるアミロイドベータ1-42又はAベータ相同ペプチドの、ADトランスジェニック(Tg)マウスへのワクチン接種は、アミロイドベータ沈着の形成を予防した。結果として、このようなワクチン接種はアミロイドベータ沈着に関連した行動障害を排除する(Schenkら、「Immunization with Amyloid-Beta Attenuates Alzheimer-Disease-Like Pathology in the PDAPP Mouse」、Nature 400:173〜77(1999); Sigurdssonら、「Immunization with a Nontoxic/Nonfibrillar Amyloid-beta Homologous Peptide Reduces Alzheimer's Disease-Associated Pathology in Transgenic Mice」、Am. J. Pathol.159:439〜47(2001); Morganら、「A Beta Peptide Vaccination Prevents Memory Loss in an Animal Model of Alzheimer's Disease」、Nature 408:982〜85(2001); Janusら、「A Beta Peptide Immunization Reduces Behavioural Impairment and Plaques in a Model of Alzheimer's Disease」、Nature 408:979〜82(2000))。
【0007】
前臨床試験におけるワクチンの顕著な生物学的効果及びAD Tgマウスにおける副作用の明白な欠如に助長されて、Elan Pharmaceuticals, Inc./Wyeth Researchは、予め凝集されたAベータ1-42及びQS21をアジュバントとして含有した、AN1792と称されるワクチンを用いた臨床試験を開始した。この型のワクチン設計は強い細胞媒介性適応免疫応答を誘導するはずであると考えられた。その理由は、QS21が、1型ヘルパーT(Th-I)リンパ球の強い誘導因子であることが知られているからである。この試験の第二相は、ワクチン接種をした患者の6%が急性髄膜脳炎の症状を表したときに、早期に終了された。影響を受けた患者のうちの1名において行われた剖検により、いくつかの脳血管の周りの広範囲な細胞傷害性T細胞反応が明らかにされた。しかし、脳皮質内に負荷されたA[ベータ]の解析により、Aベータクリアランスが起こっていたことが示唆された(Nicollら、「Neuropathology of Human Alzheimer Disease after Immunization with Amyloid-beta Peptide: A Case Report」、Nature Med. 9:448〜52(2003))。ワクチン接種をして免疫応答が上がった患者の神経精神医学的試験により、中程度ではあるが統計的に有意な認知上の利点が示され、ベースラインと比較したいくつかの認知試験の尺度での改善、及びAベータに対する抗体を産生するようになった患者における疾患進行の速度の低下が実証された(Hockら、「Antibodies Against Beta-Amyloid Slow Cognitive Decline in Alzheimer's Disease」、Neuron 38:547〜54(2003))。これにより、ワクチン接種のアプローチはヒトのAD患者に有益となり得るが、ワクチンの概念は再設計を必要とし得ることが示された。
【0008】
WO2009105641は、上記の背景を認識して、対象においてアミロイド沈着を予防又は軽減する方法に向けられたものである。この方法は、アミロイド沈着物を有する対象を選択すること、及びアミロイド沈着物を減少させるのに有効な条件下で、選択した対象の先天性免疫系を刺激することを伴う。特に、TLR9アゴニストが使用される。
【0009】
Frenkelら(Ann Neurol. 2008 May;63(5):591〜601)は、アミロイド沈着を予防するための経鼻プロテオソームアジュバントの使用を開示している。
【0010】
脳は、それ自体で、疾患及び有毒な過負荷を予防するための特有の免疫学的機序を有する。ミクログリアは、脳の免疫細胞であり、末梢のマクロファージと同様に、これらは食細胞であり、サイトカインを産生し、侵入した病原体に対して脳を保護することによって先天性免疫応答に関与する。ADトランスジェニックマウスにおいて、Aβは、食作用によってアミロイド沈着物を排除することが特別に可能な細胞系列である、血液由来のミクログリアの動員を刺激する。Simard, A.R.ら Neuron 49、489〜502(2006)を参照されたい。リポポリサッカリド(LPS)の海馬内注射も、骨髄由来の活性化されたミクログリアの動員を誘導し、ADのトランスジェニックマウスモデルにおいてAβの負荷量の減少をもたらす。Malm, T.M.ら Neurobiol Dis 18、134〜142(2005)を参照されたい。
【0011】
さらに、LPSと同様に、Aβは、ミクログリアにおいてToll様受容体2(TLR2)の発現を刺激することができる。興味深いことに、APPトランスジェニックマウス(APP Tg/TLR2-/-)におけるTLR2遺伝子の不活性化は、Aβ42産生の増加及び認知障害の加速を引き起こした。Richard, K.L.ら J Neurosci 28、5784〜5793(2008)。したがって、TLR2経路は、AD病変の発生において決定的な役割を果たす。
【0012】
APP Tgマウスにおけるプロトリン(Protollin)注射は、それらの記憶を有意に改善させ、ミクログリアの活性化を刺激したが、これは、Aβ負荷量の減少と相関していた[Frenkel, D.ら The Journal of clinical investigation 115、2423〜2433(2005); Frenkel, D.ら Ann Neurol 63、591〜601(2008)]。さらに、プロトリン処置後に明らかな毒性は認められなかった。Frenkel, D.ら Ann Neurol 63、591〜601(2008)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許公開第20040214774号
【特許文献2】米国特許第6,114,133号
【特許文献3】WO2009105641
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Dementia: Presentations, Differential Diagnosis & Nosology、89〜120(Emery及びOxman、編、2003)にあるWegielら、「Alzheimer Dementia Neuropathology」
【非特許文献2】Schenk, D.ら Nature 400、173〜177(1999)
【非特許文献3】Klyubin, I.ら Nature medicine 11、556〜561(2005)
【非特許文献4】Sadowskiら、「Disease Modifying Approaches for Alzheimer's Pathology」、Current Pharmaceutic Design、13:1943〜54(2007)
【非特許文献5】Wisniewskiら、「Therapeutic Approaches for Prion and Alzheimer's Diseases」、FEBS J.274:3784〜98(2007)
【非特許文献6】Wisniewskiら、「Immunological and Anti-Chaperone Therapeutic Approaches for Alzheimer Disease」、Brain Pathol.15:72〜77(2005)
【非特許文献7】Schenkら、「Immunization with Amyloid-Beta Attenuates Alzheimer-Disease-Like Pathology in the PDAPP Mouse」、Nature 400:173〜77(1999)
【非特許文献8】Sigurdssonら、「Immunization with a Nontoxic/Nonfibrillar Amyloid-beta Homologous Peptide Reduces Alzheimer's Disease-Associated Pathology in Transgenic Mice」、Am. J. Pathol.159:439〜47(2001)
【非特許文献9】Morganら、「A Beta Peptide Vaccination Prevents Memory Loss in an Animal Model of Alzheimer's Disease」、Nature 408:982〜85(2001)
【非特許文献10】Janusら、「A Beta Peptide Immunization Reduces Behavioural Impairment and Plaques in a Model of Alzheimer's Disease」、Nature 408:979〜82(2000)
【非特許文献11】Nicollら、「Neuropathology of Human Alzheimer Disease after Immunization with Amyloid-beta Peptide: A Case Report」、Nature Med. 9:448〜52(2003)
【非特許文献12】Hockら、「Antibodies Against Beta-Amyloid Slow Cognitive Decline in Alzheimer's Disease」、Neuron 38:547〜54(2003)
【非特許文献13】Frenkelら Ann Neurol. 2008 May;63(5):591〜601
【非特許文献14】Simard, A.R.ら Neuron 49、489〜502(2006)
【非特許文献15】Malm, T.M.ら Neurobiol Dis 18、134〜142(2005)
【非特許文献16】Richard, K.L.ら J Neurosci 28、5784〜5793(2008)
【非特許文献17】Frenkel, D.ら The Journal of clinical investigation 115、2423〜2433(2005)
【非特許文献18】Frenkel, D.ら Ann Neurol 63、591〜601(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
アルツハイマー病(AD)の予防的処置及び治癒的処置の双方に対する緊急の必要性がある。ネズミ科モデルにより、免疫療法又はワクチン接種のアプローチは、AD用のワクチンを開発するのに実行可能であることが示されている[Malm, T.M.ら Neurobiol Dis 18、134〜142(2005)]。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は以下に関する:
エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを含む組成物の有効量を用いた対象の処置を含む、対象においてアミロイド沈着を予防及び/又は軽減する方法。
【0017】
対象においてアミロイド沈着を予防及び/又は軽減するのに使用される、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを含む組成物。
【0018】
対象においてアミロイド沈着を予防及び/又は軽減するための医薬品の製造におけるエンドトキシンを含まないTLR4アゴニストの使用。
【0019】
エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを含む組成物の有効量を用いた対象の処置を含む、対象においてアルツハイマー病を予防及び/又は軽減する方法。
【0020】
アルツハイマー病を予防及び/又は軽減するのに使用するための、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを含む組成物。
【0021】
アルツハイマー病を予防及び/又は軽減するための医薬品の製造におけるエンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを含む組成物の使用。
【0022】
AGP、3D MPL、AS01b、又は水中油型エマルションと組み合わせたAGPからなる、又は本質的になる、医薬組成物を使用する、本発明の前述の全ての態様に記載される、アミロイド沈着及び/又はアルツハイマー病の予防又は軽減のための方法。
【0023】
エンドトキシンを含まないTLR4アゴニスト及び薬学的に許容される添加剤からなる、又は本質的になる、医薬組成物。
【0024】
3D MPL及び薬学的に許容される添加剤からなる、又は本質的になる、医薬組成物。
【0025】
MPL及び薬学的に許容される添加剤からなる、又は本質的になる、医薬組成物。
【0026】
AS01B及び薬学的に許容される添加剤からなる、又は本質的になる、医薬組成物。
【0027】
AGP及び薬学的に許容される添加剤からなる、又は本質的になる、医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストの注射後のTLR2 mRNA転写を示す図である。
図2】エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストの末梢注射後(注射後2時間)のマウス血清中の炎症性サイトカイン(TNFα)を示す図である。
図3】エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストが末梢中でより多数のCD11b+単球を誘発することを示す図である。
図4】種々の用量の3D MPL(5μg、25μg及び50μg)の単回筋肉内注射後の末梢血単球数を示す図である。
図5】種々の用量のAS01B(1/20対1/5対マウスの全用量)の単回筋肉内注射後の末梢血単球数を示す図である。
図6】種々の用量のCRX601(0.2μgから20μg)の単回筋肉内注射後の末梢血単球数を示す図である。
図7】一定用量のAS03と組み合わせた、種々の用量のCRX601(0.2μgから20μg)の単回筋肉内注射後の末梢血単球数を示す図である。
図8】アジュバントされたマウスからの末梢血単球による、エキソビボでのAβ42の取り込みを示す図である。
図9】Aβ斑総負荷量解析を示す図である。
図10】APP/PS1マウスモデルにおける3D-MPL又はCRX527又はCRX601又はAS01Bの12回の週1回の注射により、無処置のマウスと比較して空間記憶の改善が示されることを示す図である。
図11】受動的回避保持試験を示す図である。
図12】APP/PS1マウスを3D MPL及びLPSで処置した後の脳のAb斑の3D組織構造を示す図である。
図13】エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを使用した行動解析の結果を示す図である。
図14】3D MPLを注射したマウスの脳からの細胞外濃縮画分中の単量体Aβの減少を示す図である。
図15】エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストでの処理後のヒトのミクログリア細胞によるベータ-アミロイド1-42ペプチドの食作用を示す図である。
図16】AS01B処理後のリソソーム内でのAβ1-42の局在を示している、ヒトのミクログリア細胞株の蛍光顕微鏡法の代表的な画像を示す図である。
図17】腹腔内の経路を使用してLPS又は3DMPLのいずれかをマウスに注射した後の、注射後2時間又は6時間の時点における血清からの先天性サイトカインプロファイルを示す図である。結果は、PBS及びLPS又は3DMPLを注射したマウスについての2時間又は6時間後の血清中の多様なサイトカイン/ケモカインの相対単位(RU又はpg/ml)で示している。1群につきN=5マウス。バーは平均±SEMを表す; * P<0.05、比較した群と有意に異なる。ANOVA-1解析後に比較のために使用されるTukey事後検定。
図18】筋肉内を使用してAS01B、AS03又はAS04Dのいずれかをマウスに注射した後の、注射後2時間又は6時間の時点における血清からの先天性サイトカインプロファイルを示す図である。結果は、PBS及びLPS又は3D MPLを注射したマウスについての2時間又は6時間後の血清中の多様なサイトカイン/ケモカインの相対単位(RU又はpg/ml)で示している。1群につきN=5マウス。バーは平均±SEMを表す。
図19】単球の数がAS01Bによって4.5倍上方制御されることを示す図である。
図20】AS01B及びQS21+リポソームが筋肉内注射後のC57BL/6マウス末梢血において24時間後に最も有意に単球数増加(パネルA)及び単球活性化状態(Ly6Cが高い)(パネルB)におけるインビボでの増進を刺激することを示す図である。
図21】AS01B及びQS21+リポソームがC57BL/6マウスにおける筋肉内注射の24時間後に最も有意にマウス末梢血単球によるエキソビボでのAβ取り込みを刺激することを示す図である。
【0029】
(図中、MPLに対する全ての言及は、3D-MPLに対する言及である)
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、一般には、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを含む、例えば、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)、3D-MPL又はMPLを含む、組成物を用いた対象の処置を含む、対象において、アミロイド沈着又はアルツハイマー病を予防及び/又は軽減する方法に関する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「アミロイド」とは、体内に沈着されるいかなる不溶性線維性タンパク質凝集体をも包含する。アミロイド沈着は、器官特異的(例えば、中枢神経系、膵臓等)又は全身性であってもよい。本発明のこの態様によれば、沈着しやすいアミロイド形成的タンパク質としては、ベータタンパク質前駆体、プリオン、[アルファ]-シヌクレイン、タウ、ABri前駆体タンパク質、ADan前駆体タンパク質、アミリン、アポリポタンパク質AI、アポリポタンパク質All、リゾチーム、シスタチンC、ゲルソリン、タンパク質、心房性ナトリウム利尿因子、カルシトニン、ケラトエピテリン、ラクトフェリン、免疫グロブリン軽鎖、トランスチレチン、Aアミロイドーシス、[ベータ]2-ミクログロブリン、免疫グロブリン重鎖、フィブリノーゲンアルファ鎖、プロラクチン、ケラチン、及びメジンが挙げられる。アミロイド沈着は、それ自体の実体として又はもう一つの疾患(例えば、多発性骨髄腫、慢性感染、又は慢性炎症性疾患)の結果として生じ得る。
【0032】
したがって、本発明の方法は、アミロイド形成的タンパク質の沈着に関連した、又はその結果として生じる、状態又は疾患を有する対象を治療するためにさらに使用され得る。こうした状態としては、アルツハイマー病、びまん性レビー小体病、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、クロイツフェルト-ヤコブ病、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー病、致死性家族性不眠症、イギリス型家族性認知症、デンマーク型家族性認知症、家族性角膜アミロイドーシス、家族性角膜ジストロフィー、甲状腺髄様癌、インスリノーマ、2型糖尿病、限局性心房アミロイドーシス、下垂体アミロイドーシス、大動脈アミロイドーシス、形質細胞障害、家族性アミロイドーシス、老人性心アミロイドーシス、炎症に関連したアミロイドーシス、家族性地中海熱、透析に関連したアミロイドーシス、全身性アミロイドーシス、及び家族性全身性アミロイドーシスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
アルツハイマー病の治療又は予防は、本発明の好ましい特徴である。
【0034】
本発明は、対象において疾患を予防又は治療する方法に関する。一態様において、予防又は治療の対象は、アミロイド沈着を特徴とする疾患の症状を有するとすでに診断されていてもよい。一態様において、治療の対象は、アミロイド沈着を特徴とする疾患の症状を有するとそれまでに診断されていなくてもよい。
【0035】
一態様において、本発明は、アミロイドタンパク質の沈着物に対する効果に関し、他の一態様において、疾患状態に関連した行動に対する効果、及び特にアルツハイマー病に関連した行動の予防又は減少に関する。
【0036】
一態様において、本発明の方法及び組成物は、アミロイドタンパク質の沈着及び、アルツハイマー病に関連した行動などの、疾患に関連した行動の双方に対する効果を有するが、他の一態様において、本発明の方法及び組成物は、アミロイド沈着物のレベル又は行動のレベルのいずれかにおける効果を有する。
【0037】
一態様において、アルツハイマー病の重症度における予防又は軽減は、記憶の喪失の予防又は軽減を含む。さらなる一態様において、本発明は、記憶の改善に関する。該記憶は、空間記憶であってもよい。
【0038】
さらなる一態様において、本発明は、アミロイドベータの食作用の改善のための、本明細書中に開示の組成物の使用、及びアミロイドベータの食作用の改善に使用するための組成物に関する。
【0039】
理論に拘束されることを望むものではないが、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニスト、例えば、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート、3D-MPL又はMPL、の使用は、先天性免疫系の刺激によって本発明に貢献すると考えられる。
【0040】
したがって、一態様において、本発明は、以下を含む、対象においてアミロイド沈着又はアルツハイマー病を予防及び軽減する方法に関する:アミロイド沈着物を有する対象を選択すること、及びアミロイド沈着物を減少させるのに有効な条件下で、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを使用して、選択した対象の先天性免疫系を刺激すること。
【0041】
一態様において、本発明は、ミクログリア細胞活性の刺激のための、本明細書中に開示の組成物の使用に関する。
【0042】
他の一態様において、ミクログリア細胞は、培養中に、アミロイドβクリアランスのために脳に送達される前に、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニスト、又は他の好適な活性化因子によって活性化されてもよい。
【0043】
さらなる態様において、本発明は以下に関する:
本明細書中に開示の本発明の方法において使用するための、即ち、アルツハイマー病の予防若しくは治療、及び/又はBアミロイドの減少において使用するための、特に、記憶の喪失の予防若しくは軽減、又は記憶の改善のように、アルツハイマー病に関連した有害な行動の予防又は治療に使用するための、TLR2アゴニストを含まないTLR4アゴニスト。該記憶は、空間記憶であってもよい。TLR4アゴニストは、本明細書中に記載されるもののうちのいずれであってもよい。
【0044】
記憶の喪失の予防若しくは軽減、及び/又は記憶の改善のように、アルツハイマー病に関連した有害な行動の予防又は治療に使用するためのTLR4アゴニスト。該記憶は、空間記憶であってもよい。TLR4アゴニストは、本明細書中に記載されるものであることができる。
【0045】
好適には、本発明のアゴニストは、好適な対照と比較したときに、T型水迷路、巣作り又は受動的回避の試験などの、本明細書中で行われている動物アッセイのいずれかにおける結果において改善をもたらす。
【0046】
一態様において、本発明は、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニスト、例えば、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)、3D-MPL又はMPLを含む医薬組成物、を利用する。
【0047】
TLR4アゴニストは、エンドトキシンを含まずに合成してもよいし、エンドトキシンを含まないように精製してもよい。一態様において、「エンドトキシンを含まない」TLR4アゴニストの基準は、存在するエンドトキシンが何らかの方法で完全に又は部分的に不活化又は除去されており、したがって、エンドトキシンの活性が本質的にない、TLR4アゴニストを含有する組成物であり得る。一態様において、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを含む組成物は、その中のエンドトキシンレベルが、許容される最高の規制限度よりも低い組成物である。一態様において、エンドトキシンを含まないとは、その組成物がLPSを実質的に含まないことを意味する。一態様において、エンドトキシンを含まない組成物は、投与したときに発熱を引き起こさないものである。
【0048】
一般に、エンドトキシンについて定義されている限度はないが、しかし、医薬品の限度は、一般に、最大0.2〜5EU/製品1kgであり、ここで、FDAは、0.2ngの参照エンドトキシン標準、EC-2又は5EU/ngのエンドトキシン活性として最初にエンドトキシン単位(EU)を定義している。
【0049】
一態様において、エンドトキシンは、LAL試験によって検出されてもよい。もう一つの許容されるアプローチは、ウサギ発熱性物質試験であり、これは、例えば、3D MPL又はAGPに使用されてもよく、そこでは、3D MPL又はAGPの溶液がウサギにiv注射されて、温度の上昇がモニターされる。
【0050】
発熱性物質の除去は、イオン交換クロマトグラフィー又は限外濾過が挙げられる、よく知られている技術によって達成され得る。
【0051】
適切なTLR4アゴニストとしては、MPL及び3D-MPLが挙げられ、これらは、リピドAよりも毒性が低い。いずれもTLR4アゴニストである。米国特許第4,436,727号には、モノホスホリルリピドA[MPL]及びその製造が開示されている。米国特許第4,912,094号及び再審査証明書B1 4,912,094には、3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA[3D MPL]及びその製造の方法が開示されており、これらの双方は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0052】
一態様において、本発明は、エンドトキシンを含まない合成TLR4アゴニストを利用する。合成のTLR4アゴニストの場合、エンドトキシンレベルはゼロであってもよい。
【0053】
一態様において、合成のTLR4アゴニストは、MPL及び3D-MPLと構造が類似した、合成の二糖分子であってもよく、又は、例えば、WO9850399、WO0134617、WO0212258、W03065806、WO04062599、WO06016997、WO0612425、WO03066065、及びWO0190129に開示されているアミノアルキルグルコサミニドホスフェート化合物などの、合成単糖分子であってもよく、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれている。こうした分子は、科学文献及び特許文献にもリピドA模倣体として記載されており、これらも本発明の一態様を形成している。
【0054】
TLR4アゴニストは、リピドA模倣体であってもよい。リピドA模倣体は、いくつかの機能的活性及び/又は構造的活性をリピドAと好適に共有し、一態様において、TLR4受容体によって認識される。本明細書中に記載されるAGPは、時に、当技術分野においてリピドA模倣体と呼ばれる。リピドA模倣体は、一態様において、リピドAよりも毒性が低い。
【0055】
一態様において、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)は、アミノアルキル(アグリコン)基が、2-デオキシ-2-アミノ-a-D-グルコピラノース(グルコサミニド)にグリコシド結合で連結されて、特許請求の範囲に記載されている分子の基本構造を形成しているものである。この化合物は、グルコサミニド環上の4又は6個の炭素においてリン酸化されている。さらに、この化合物は、各炭素鎖が2〜24個の炭素原子から、好ましくは7〜16個の炭素原子からなる、脂肪族アシルの主鎖及び副鎖を含む、3個の3-アルカノイルオキシアルカノイル残基を有する。好ましい一態様において、各主鎖は14個の炭素原子を含有し、各副鎖は10個及び14個の間の炭素原子を有する。
【0056】
一態様において、AGP化合物は、以下の一般式によって記載される:
【化1】
【0057】
こうした化合物は、アミノアルキル(アグリコン)基とのグリコシド結合における2-デオキシ-2-アミノ-a-D-グルコピラノース(グルコサミン)を含む。化合物は、グルコサミン環上の4又は6個の炭素においてリン酸化されており、3個のアルカノイルオキシアルカノイル残基を有する。該化合物は、一般に、式Iによって記載され、式中、Xは、酸素又は硫黄原子を表し、Yは、酸素原子又はNH基を表し、「n」、「m」、「p」及び「q」は、0から6までの整数であり、R1、R2、及びR3は、7から16個の炭素原子を有する直鎖状脂肪族アシル残基を表し、R4及びR5は、水素又はメチルであり、R6及びR7は、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ホスホノ、ホスホノオキシ、スルホ、スルホオキシ、アミノ、メルカプト、シアノ、ニトロ、ホルミル又はカルボキシ並びにこれらのエステル及びアミドであり; R8及びR9は、ホスホノ又は水素である。直鎖状脂肪族アシル残基が付加される3'不斉中心の立体配置は、R又はSであるが、好ましくはRである。R4又はR5が付加される炭素原子の立体化学は、R又はSであり得る。全ての立体異性体、すなわち、エナンチオマー及びジアステレオマーの双方、並びにこれらの混合物は、本発明の範囲内に入るとみなされる。
【0058】
本発明のこうした化合物のヘテロ原子Xは、酸素又は硫黄であり得る。好ましい一実施形態において、Xは酸素である。分子の安定性はXの置換によって生じ得るが、これらの置換を有する分子の免疫調節活性が変化することは予想されない。
【0059】
ヘテロ原子Xとアグリコン窒素原子との間の炭素原子の数は、変数「n」及び「m」によって決定される。変数「n」及び「m」は、0から6までの整数であり得る。好ましい一実施形態において、ヘテロ原子Xとアグリコン窒素原子との間の炭素原子の総数は、約2個から約6個までであり、最も好ましくは約2個から約4個までである。
【0060】
こうした化合物は、リン酸化されたアミノアルキルグルコサミン化合物である。化合物は、グルコサミン環上の4又は6位(R8又はR9)においてリン酸化されていてもよく、これらの部位のうちの少なくとも一つにおいてリン酸化されている場合に最も有効である。好ましい一実施形態において、R8はホスホノであり、R9は水素である。
【0061】
こうした化合物は、ヘキサアシル化されており、即ち、合計6個の脂肪酸残基を含有する。アミノアルキルグルコサミン部分は、グルコサミン単位の2-アミノ基及び3-ヒドロキシル基において並びにアグリコン単位のアミノ基において3-ヒドロキシアルカノイル残基でアシル化される。式Iにおいて、これらの三つの部位は、3-ヒドロキシテトラデカノイル部分でアシル化される。この3-ヒドロキシテトラデカノイル残基は、次いで、直鎖状脂肪酸(R1〜R3)で置換され、合計で3個の3-n-アルカノイルオキシテトラデカノイル残基又は6個の脂肪酸基を提供する。
【0062】
直鎖状脂肪酸R1〜R3の鎖長は、約7から約16炭素であり得る。好ましくは、R1〜R3は、約9から約14炭素である。これらの直鎖状脂肪酸の鎖長は、同一であってもよく、又は異なっていてもよい。直鎖状脂肪酸のみを説明しているが、該化合物上のR1、-R3において置換されている不飽和脂肪酸(即ち、二重結合又は三重結合を有する脂肪酸部分)は、生物学的に活性な分子を生じるはずであることが予想される。さらに、3-ヒドロキシアルカノイル残基の鎖長におけるわずかな変更が生物活性を劇的に生じるとは思われない。
【0063】
AGPの特定の例としては、CRX-527が挙げられ、これは、JBC 2004 279、第6号、4440〜4449ページ(http://www.jbc.org/content/279/6/4440.full.pdf)に開示されている。
【0064】
WO0212258及びW03065806には、一般に「環式AGP」と呼ばれる、2-デオキシ-2-アミノ-a-D-グルコピラノース(グルコサミニド)に連結された環式アミノアルキル(アグリコン)を有するAGPのさらなる実施形態が開示されている。
【0065】
本明細書において一般にAGPに対する言及は、環式及び非環式の双方のAGPを含む。
【0066】
環式AGPは、各炭素鎖が2〜24個の炭素原子から、好ましくは7〜16個の炭素原子からなる、脂肪族アシルの主鎖及び副鎖を含む、3個の3-アルカノイルオキシアルカノイル残基を有する。好ましい一態様において、各主鎖は14個の炭素原子を含有し、各副炭素鎖は鎖当たり10個及び14個の間の炭素原子を有する。
【0067】
環式AGPは、以下の一般式IIによって記載される:
【化2】
【0068】
これらの化合物は、環式アミノアルキル(アグリコン)基にグリコシド結合で連結された2-デオキシ-2-アミノ-p-D-グルコピラノース(グルコサミン)を含む。該化合物は、グルコサミン環の4位又は6位でリン酸化されており、アグリコン窒素並びにグルコサミン環の2位及び3位でアルカノイルオキシテトラデカノイル残基でアシル化されている。該化合物は、一般に、式(II):及び薬学的に許容されるその塩によって記載され、式中、Xは、-O-又はNH-であり、Yは、-O-又は-S-であり; R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に(C2〜C24)アシル基であり、これは、飽和、不飽和及び分枝のアシル基を含み; R4は、-H又は-PO3R7R8であり、式中、R7及びR8は、それぞれ独立に、H又は(C1〜C4)アルキルであり; R5は、-H、-CH3又は-PO3R9R10であり、式中、R9及びR10は、-H及び(Cl〜C4)アルキルからそれぞれ独立に選択され; R6は、H、OH、(Cl-C4)アルコキシ、-PO3R11R12、-OPO3R11R12、-SO3R11、-OSO3R11、-NR11R12、-SR11、-CN、-NO2、-CHO、-CO2R11、及び-CONR11R12から独立に選択され、式中、R11及びR12は、H及び(Cl-C4)アルキルからそれぞれ独立に選択され; R4が-Po3R7R8であるときには、R5は-P0 R9R10以外であるという条件付きで、式中、「*1〜3」及び「**」は、キラル中心を表し; 式中、下付き文字n、m、p及びqは、p及びmの和が0から6までであるという条件付きで、それぞれ独立に0から6までの整数である。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、X及びYにおいて- -O-を含有し、R4はPO3R7R8であり、R5及びR6はHであり、下付き文字n、m、p、及びqは、0から3までの整数である。より好ましい一実施形態において、R7及びR8は-Hである。さらにより好ましい一実施形態において、下付き文字nは1であり、下付き文字mは2であり、下付き文字p及びqは0である。まださらにより好ましい一実施形態において、R1、R2、及びR3は、テトラデカノイル残基である。さらにより好ましい一実施形態において、*1〜3はR立体配置にあり、Yは赤道位にあり、**はS立体配置にある(N-[(R)-3-テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]-(S)-2-ピロリジノメチル2-デオキシ-4-0-ホスホノ-2-[(R)-3-テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-3-0-[(R)-3-テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]-p-D-グルコピラノシド及び薬学的に許容されるその塩。
【0070】
好ましい環式構造としては、以下が挙げられる:
【化3】
【化4】
【化5】
【0071】
式VはCRX590である。
【0072】
他の一態様において、TLR4受容体リガンドは、エステルで連結されるよりもむしろエーテルで連結された1個以上の第一及び/又は第二の脂質基を有するAGPである。この実施形態において、R1〜R3は、直鎖アルキル基を表し、アシル基を表さず、アルカノイルオキシ基ではなくR1O-、R2O-、及びR3O-アルコキシ基を形成し、アシル主鎖への結合を、エステル結合ではなくエーテル結合とする。エーテルで連結された第一の脂質基の場合には、グルコサミン単位の3-ヒドロキシ基に付加される3-アルカノイルオキシアルカノイル残基は、3-アルカノイルオキシアルキル部分又は3-アルコキシアルキル部分のいずれかで置き換えられており、グルコサミン3位への第一の脂質基の結合を、エステル結合ではなくエーテル結合とする。
【0073】
エーテルの一般式は、WO2006016997の式IVのものである。
【0074】
好ましい化合物の一例は、CRX601である。
【化6】
【0075】
他の一態様において、AGP分子は、分子の主鎖及び/又は副鎖中に異なる数の炭素を有していてもよい。こうした化合物は、WO04062599及びWO06016997に開示されている。他のAGPと同様に、各炭素鎖は、2〜24個の炭素原子から、好ましくは7〜16個の炭素原子からなっていてもよい。好ましい一態様において、各主鎖は14個の炭素原子を含有し、各副炭素鎖は鎖当たり10個及び14個の間の炭素原子を有する。
【0076】
こうした化合物は、以下の構造によって表される:
【化7】
【0077】
式中、Xは、軸位又は赤道位においてO及びSからなる群から選択され; Yは、O及びNHからなる群から選択され; n、m、p及びqは、0から6までの整数であり; R1、R2及びR3は、同一であり又は異なり、1個から約20個までの炭素原子を有する脂肪族アシル残基であり、式中、R1、R2又はR3のうちの一つは、場合によっては水素であり; R4及びR5は、同一であり又は異なり、H及びメチルからなる群から選択され; R6及びR7は、同一であり又は異なり、H、ヒドロキシ、アルコキシ、ホスホノ、ホスホノオキシ、スルホ、スルホオキシ、アミノ、メルカプト、シアノ、ニトロ、ホルミル及びカルボキシ、並びにこれらのエステル及びアミドからなる群から選択され; R8及びR9は、同一であり又は異なり、ホスホノ及びHからなる群から選択され、R8及びR9のうちの少なくとも一つはホスホノであり; R10、R11及びR12は、1から10個までの炭素原子を有する直鎖無置換飽和脂肪族基から独立に選択される;又は薬学的に許容されるこれらの塩。
【化8】
【0078】
式中、Xは、軸位又は赤道位においてO及びSからなる群から選択され; Yは、O及びNHからなる群から選択され; n及びmは0であり; R1、R2及びR3は、同一であり又は異なり、1個から約20個までの炭素原子を有する脂肪族アシル残基であり、式中、R1、R2又はR3のうちの一つは、場合によっては水素であり; R4は、H及びメチルからなる群から選択され;pは1であって且つR6はCOOHであるか、又はpは2であって且つR6はOP03H2であり; R8及びR9は、同一であり又は異なり、ホスホノ及びHからなる群から選択され、R8及びR9のうちの少なくとも一つはホスホノであり; R10、R11及びR12は、1から10個までの炭素原子を有する直鎖無置換飽和脂肪族基から独立に選択される;又は薬学的に許容されるこれらの塩。
【化9】
【0079】
式中、Xは、軸位又は赤道位においてO及びSからなる群から選択され; Yは、O及びNHからなる群から選択され; n、m、p及びqは、0から6までの整数であり; R1、R2及びR3は、同一であり又は異なり、1個から約20個までの炭素原子を有する直鎖飽和脂肪族基(即ち、直鎖アルキル基)であり、式中、R1、R2又はR3のうちの一つは、場合によっては水素であり; R4及びR5は、同一であり又は異なり、H及びメチルからなる群から選択され; R6及びR7は、同一であり又は異なり、H、ヒドロキシ、アルコキシ、ホスホノ、ホスホノオキシ、スルホ、スルホオキシ、アミノ、メルカプト、シアノ、ニトロ、ホルミル及びカルボキシ、並びにこれらのエステル及びアミドからなる群から選択され; R8及びR9は、同一であり又は異なり、ホスホノ及びHからなる群から選択され、R8及びR9のうちの少なくとも一つはホスホノであり; R10、R11及びR12は、1個から11個までの炭素原子を有する直鎖無置換飽和脂肪族基から独立に選択される;
又は薬学的に許容されるこれらの塩。
【0080】
この一般式は、上記の式VI中に示しているのと同じ位置に、R5基を含んでいてもよく、このとき、R5は、H及びメチルからなる群から選択される。
【化10】
【0081】
さらにもう一つの型の本発明の化合物は、式(IV)を有する: 式中、Yは、ここでは酸素として固定され; Xは、軸位又は赤道位においてO及びSからなる群から選択され; n及びmは0であり; R1、R2及びR3は、同一であり又は異なり、1個から約20個までの炭素原子を有する脂肪族アシル残基であり、式中、R1、R2又はR3のうちの一つは、場合によっては水素であり; R4は、H及びメチルからなる群から選択され; pは0若しくは1であって且つR6はCOOHであるか、又はpは1若しくは2であって且つR6はOPO3H2であり; R8及びR9は、同一であり又は異なり、ホスホノ及びHからなる群から選択され、R8及びR9のうちの少なくとも一つはホスホノであり; R10、R11及びR12は、1個から10個までの炭素原子を有する直鎖無置換飽和脂肪族基から独立に選択される;又は薬学的に許容されるこれらの塩。
【0082】
したがって、これらの化合物は、アシル化された2本の鎖及びアシル化されていない1本のエーテル鎖を有する。
【0083】
AGPを作製するためのプロセスは、WO0612425にも開示されている。
【0084】
外因性抗原の非存在下でAGPを投与することによって疾患を予防及び治療する方法は、WO03066065及びWO0190129に開示されている。
【0085】
CRX 524等の他のAGP構造は、Infection and Immunity、2005年5月、3044〜3052ページ 第73巻、第5号に開示されている。
【0086】
本発明は、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)、3D-MPL又はMPLなどの、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを含む医薬組成物にさらに関する。
【0087】
組成物は、代替的に、MPL、3D MPL及びAGPなどの、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストからなっているか、又は本質的になっていてもよく、これは、これらの作用剤が、単独で、又は担体、添加剤、緩衝液等のような添加剤との組合せで、それぞれ送達されてもよいという点からである。
【0088】
さらなる態様において、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストは、有効性を高め得る他の成分と共に製剤化されてもよい。
【0089】
エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストは、薬学的に活性のある他の作用剤と組み合わされてもよい。
【0090】
一態様において、3D-MPLを含む医薬組成物は、QS21などの、サポニン及びリポソームと組み合わせた3D MPLからなる、又は本質的になる。一態様において、該組成物は、AS01B(例えば、EP822831を参照されたい)からなる又は本質的になる。一態様において、本発明の前述の態様のいずれかによる、3DMPLを用いた処置又は3DMPLの使用は、AS01Bの使用を含む。
【0091】
一態様において、AGPを含む医薬組成物は、(例えば、EP868918に開示されているような)AS03などの、水中油型エマルションと組み合わせたAGPからなる又は本質的になる。一態様において、本発明の前述の態様のいずれかによる、AGPを用いた処置又はAGPの使用は、水中油型エマルションと組み合わせたAGPの使用を含む。
【0092】
一態様において、本発明の組成物は、アミロイドポリペプチド又はその断片を含まない。一態様において、それは、アミロイドベータ又はその断片などの、アルツハイマー病に特異的な抗原を含まない。それは、アミロイド沈着を特徴としない疾患に特異的な抗原又は作用剤を含んでいてもよい。
【0093】
したがって、一態様において、本発明は、アルツハイマー抗原などの、疾患に特異的な抗原の非存在下で、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート、MPL又は3D MPLなどのエンドトキシンを含まないTLR4アゴニスト及び薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物に関する。
【0094】
一態様において、本発明は、
AGP;
水中油型エマルションと組み合わせたAGP;
3D-MPL;
QS21及びリポソームと組み合わせた3D-MPL
からなる、又は本質的になる、医薬組成物、及び組成物の使用に関する。
【0095】
一態様において、本発明は、ヒト等の個体における使用に好適な、添加剤と組み合わせた、
AGP;
水中油型エマルションと組み合わせたAGP;
3D-MPL;並びに
QS21及びリポソームと組み合わせた3D-MPL
からなる、又は本質的になる、医薬組成物、及び組成物の使用に関する。
【0096】
一般に、医薬組成物は、ヒトへの送達に好適なものである。
【0097】
一態様において、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート、3D MPL又はMPLなどの、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストは、免疫刺激剤と共に製剤化された医薬組成物の形態にある。該免疫刺激剤は、QS21などの、サポニンであってもよく、若しくは、トコフェロールをさらに含むエマルションなどの、水中油型エマルションであってもよく、又は他の任意の好適な免疫刺激剤であってもよい。
【0098】
一態様において、エンドトキシンを含まない該TLR4アゴニストは、CRX601と組み合わせたAS03である。
【0099】
一態様において、該免疫刺激剤は、先天性免疫応答の刺激因子であり、一態様において、特定の疾患に関連した抗原ではない。
【0100】
一態様において、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストは、CpGオリゴデオキシヌクレオチドと共に製剤化されない。
【0101】
一態様において、本発明において使用される組成物は、スクアレン、アルファトコフェロール及びポリソルベート80を含有する、例えば、ヒト用量の10.69mgのスクアレン、11.86mgのDL-α-トコフェロール、4.86mgのポリソルベート80、又はその一般的比率の成分を有する、水中油型エマルションと組み合わせた、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを含む。
【0102】
一態様において、本発明において使用される組成物は、モノホスホリルリピドAなどのエンドトキシンを含まないTLR4アゴニストとサポニン誘導体との組合せ、特に、WO94/00153に開示されているようなQS21と3D-MPLとの組合せ、又はW096/33739に開示されているようにQS21がコレステロールでクエンチされている反応源性がより少ない組成物を含む。水中油型エマルション中にQS21 3D-MPL及びトコフェロールを含む特に強力なアジュバント製剤は、W095/17210に記載されており、好適な製剤である。
【0103】
本発明は、これらの科学的結果において本明細書中に開示の組成物にも関する。
【0104】
上述のように、本発明の組成物は、アミロイドタンパク質の沈着物に対する予防又は減少の効果、ミクログリア細胞を介した先天性免疫の刺激、アミロイド食作用の増大及びアルツハイマー病などの疾患状態に関連した行動の予防又は減少のうちの一つ以上において使用され得る。本明細書中に記載の実施例は、これらのパラメータを評価するのに好適な方法を提供する。
【0105】
ベータアミロイド沈着物は、添付の実施例に記載のように、脳切片中の斑の面積の関数として測定されてもよく、又は全タンパク質濃度によって評価されてもよい。他の好適な方法は、参照により本明細書に組み込まれている、WO2009105641に開示されている。
【0106】
アルツハイマー病に関連した行動に対する本発明の処置及び組成物の効果は、例えば、ヒトの患者において、又は動物モデルにおいて、評価されてもよい。好適な動物モデルとしては、アルツハイマー病のマウスAPPモデル、PS1マウスモデル及びAPP/PS1モデル等が挙げられる。Richard, K.L.ら J Neurosci 28、5784〜5793(2008)を参照されたい。
【0107】
好適な動物(齧歯動物)試験は、本明細書中に記載されるT型水迷路試験、受動的回避試験、又は巣作り行動試験のうちの一つ以上を含む(Filali M,ら Cognitive and non-cognitive behaviours in an APPswe/PS1 bigenic model of Alzheimer's disease. Genes Brain Behav. 2009年3月;8(2):143〜8。Epub 2008年12月3日。PubMed PMID:19077180.)。用いられ得る他の行動試験は、参照により本明細書に組み込まれている、WO2009105641に記載されている。
【0108】
先天性免疫系の刺激は、ミクログリアの刺激によって、達成及び/又は測定されてもよい。他の一態様において、先天性免疫応答は、例えば適切な動物マウスモデルにおいて、脳組織内のTLR2の転写活性化を開始させることによって評価されてもよい。
【0109】
本発明の製剤は、全身又は粘膜の経路を介して投与することによって哺乳動物を保護又は治療するために使用されてもよい。これらの投与は、筋肉内、腹腔内、皮内又は皮下の経路を介した注射;又は口/消化管、気道、尿生殖路への粘膜投与を含み得る。本発明の組成物は、単回投与、又は多回投与として投与されてもよい。さらに、本発明の組成物は、プライミング及びブースティングのために異なる経路によって、例えば、IMのプライミング投与且つブースター投与にはINで、投与されてもよい。
【0110】
本発明の組成物は、単独で又は好適な医薬担体と共に投与されてもよく、例えば、タブレット、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、又はエマルションなどの、固体又は液体の形態であり得る。アミノアルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)、3D MPL若しくはMPL又は本発明のいずれの組成物も、「ワクチン」中に製剤化されて自由溶液で投与されてもよく、又はアジュバント、若しくは添加剤と共に製剤化されてもよい。ワクチン製剤は、Vaccine Design(「The subunit and adjuvant approach」(Powell M.F.&Newman M.J.編)(1995)Plenum Press New York)に一般的に記載されている。リポソーム中へのカプセル化は、Fullerton、米国特許第4,235,877号によって記載されている。本発明のワクチンは、溶液中で又は凍結乾燥して保管されてもよい。
【0111】
アミロイド沈着物又はADを有する対象の治療のための、本発明の組成物の有効用量は、さまざまな因子によって変化し、これには、投与の手段、標的部位、患者の生理的状態、投与される他の薬剤、他の内科的合併症と関連した患者の身体的状態、及び処置が予防的であるか又は治療的であるかどうかなどが挙げられる。治療投与量は、安全性と有効性を最適化するために漸増させることが必要である。アゴニストの量は、アジュバントも投与するかどうかによって決まる。本明細書中に記載のアゴニストの対象用量は、典型的には1回の投与につき約0.1μgから50mgまでの範囲に及び、これは、その用途に依存して、1日1回、週1回、又は月1回及びその間の他のいかなる時間の長さでも投与され得る。より典型的には、粘膜又は局所の用量は、数日又は数週間の間隔をあけて2〜4回の投与で、1回の投与につき約10μgから10mgまで、場合によっては約100μgから1mgまでの範囲に及ぶ。より典型的には、免疫刺激剤用量は、1日1回又は週1回の投与で、1回の投与につき1μgから10mgまで、最も典型的には、10μgから1mgまでの範囲に及ぶ。非経口送達のための、例えば先天性免疫応答を誘導するための、又は特殊な送達ビヒクル中の、本明細書中に記載の化合物の用量は、典型的には1回の投与につき約0.1μgから10mgまでの範囲に及び、これは、その用途に依存して、1日1回、週1回、又は月1回及びその間の他のいかなる時間の長さでも投与され得る。より典型的には、これらの目的のための非経口用量は、数日又は数週間の間隔をあけて2〜4回の投与で、1回の投与につき約10μgから5mgまで、最も典型的には約100μgから1mgまでの範囲に及ぶ。しかし、いくつかの実施形態において、これらの目的のための非経口用量は、上述の典型的な用量よりも5から10,000倍高い範囲内で使用され得る。
【0112】
本出願中の全ての参照の教示は、特許出願及び付与された特許を含め、参照により本明細書に完全に組み込まれている。本出願が優先権を主張するいかなる特許出願も、その全体が参照により刊行物及び参照について本明細書中に記載の様式で本明細書に組み込まれている。
【0113】
本発明のいかなる態様又は特徴も、特定の実施例において開示される場合であっても、文脈から明らかである場合を除き、本発明の他のいかなる態様又は特徴と組み合わせ可能であり得る。
【0114】
疑問を避けるために、本明細書中の「含んでいる(comprising)」及び「含む(comprise(s))」という用語は、全ての事例において、それぞれ、「からなっている(consisting of)」、及び「からなる(consist(s) of)」という用語と場合によっては代替可能であることが本発明者らによって意図されている。本明細書中及び特許請求の範囲中で使用される場合、「含んでいる」(及びあらゆる形態の「含んでいる」、例えば「含む」)、「有している(having)」(及びあらゆる形態の「有している」、例えば「有する(have(has))」)、「挙げられている(including)」(及びあらゆる形態の「挙げられている」、例えば、「挙げられる(include(s))」)又は「含有している(containing)」(及びあらゆる形態の「含有している」、例えば「含有する(contain(s))」)という語は、包括的又は拡張可能であり、記載されていないさらなる要素又は方法ステップを除外しない。
【0115】
本開示の「ワクチン組成物」に関する本明細書中の実施形態は、本開示の「免疫原性組成物」に関する実施形態にも適用可能であり、逆もまた同じである。全ての数値において、「約」(又は「周辺」)という用語は、5%の変動が許容され、即ち、約1.25%の値は、1.19%〜1.31%の間から意味するはずである。
【0116】
「a」又は「an」という用語の使用は、特許請求の範囲及び/又は明細書中で「含んでいる」という用語と併せて使用されるときには、「一つ」を意味し得るが、「一つ以上」、「少なくとも一つ」、及び「一つ又は二つ以上」の意味とも両立する。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、明確に代替のみを指すことが示されない限り、又は代替が相互排他的でない限り、「及び/又は」を意味するように使用されるが、本開示は代替及び「及び/又は」のみを指すという定義を支持する。本出願の全体を通して、「約」という用語は、値が、測定値についての誤差の固有の変動、その値を決定するために用いられている方法、又は試験対象の間に存在する変動を含むことを示すのに使用される。
【0117】
本明細書中で使用される場合、「又はこれらの組合せ」という用語は、その用語に先行する挙げられた項目の全ての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C、又はこれらの組合せとは、以下のうちの少なくとも一つを含むことが意図される:A、B、C、AB、AC、BC、又はABC、特定の状況において順序が重要である場合には、さらに、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCAB。この例を続けると、明白に含まれるのは、1種以上の項目又は用語の反復を含有する組合せ、例えば、BB、AAA、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等である。当業者は、典型的には、それ以外の場合に文脈から明らかでない限り、いかなる組合せにおいても項目又は用語の数に対する制限がないことを理解するであろう。
【0118】
本明細書において開示されている及び特許請求の範囲に記載されている全ての組成物及び/又は方法は、本開示に鑑みて不適当な実験法なしで作製及び実行され得る。本開示の組成物及び方法は、好適な実施形態の観点から説明されているが、該組成物及び/又は方法に、並びに本明細書に記載の方法のステップにおいて又は一連のステップにおいて、本開示の概念、趣旨及び範囲から逸脱することなく変形が適用され得ることは当業者に明らかであろう。当業者に明らかであるこうした類似の代用及び変更の全ては、添付の特許請求の範囲によって定義されているような本開示の趣旨、範囲及び概念に入るものとみなされる。
【0119】
本明細書に記載の特定の実施形態は、実例として示されており、本開示を限定するものとして示されているのではないことが理解されるであろう。本開示の主な特徴は、本開示の範囲から逸脱することなく多様な実施形態において用いられ得る。当業者は、本明細書に記載の特定の手順に対する多数の同等のものを、認識するであろう、又は日常の試験のみを使用して確認できるであろう。こうした同等のものは、本開示の範囲内にあるとみなされ、特許請求の範囲によってカバーされる。本明細書中で言及されている全ての刊行物及び特許出願は、本開示が関連している技術分野の当業者の技能のレベルを示すものである。全ての刊行物及び特許出願は、各個の刊行物又は特許出願が参照により本明細書に組み込まれているものとして具体的且つ個別に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれている。
【0120】
本開示は、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに説明されることになる:
【実施例】
【0121】
以下に記載の実施例及び図において、MPLに対する全ての言及は、3D-MPLに対する言及である。
【0122】
[実施例1]
CRX524又はCRX527、又はCRX601又は3D MPLの単回注射後の脳内への先天性活性化
LPSなどのTLR4リガンドは、付随性のTLR2 mRNAの発現を誘導することが示されている(Fan, J.、Randall, S.F.、Malik, AB.、2003. TLR4 signaling induces TLR2 expression in endothelial cells via neutrophil NADPH oxidase. 112(8):1234. J Clin Invest.)。現在に至るまで、脳内でのこうした先天性活性化を末梢注射から誘導する他のLPS模倣体は、文献に示されていない。TLR4アゴニストによって活性化される脳内の最初の直接の受容体のうちの一つはTLR2 mRNAである(P. A. Carpentier、D. S. Duncan、及びS. D. Miller、「Glial toll-like receptor signaling in central nervous system infection and autoimmunity」、Brain, Behavior, and Immunity、第22巻、第2号、140〜147ページ、2008.)。
【0123】
脳内での先天性活性化を評価するために、本発明者らは、腹腔内経路を使用して3D MPL、CRX524又はCRX527又はCRX601のいずれかの全身注射の24時間後、in situハイブリダイゼーションを行った。
【0124】
特に、GSK Bioは、C57BL/6Jマウスにおいて種々の組成物を注射して、末梢注射の24時後に、脳内のミクログリア細胞活性化を誘発するそれらのアジュバントの効力を評価した。動物試験群は、以下の通りであった:
1. NaCl 0.9%(n=5)、ip注射
2. CRX524(20μg/マウス、130μl、n=5/群)、ip注射
3. CRX527(20μg/マウス、130μl、n=5/群)、ip注射
4. CRX601(20μg/マウス、130μl、n=5/群)、ip注射
5. 3D MPL(50μg/マウス、130μl、n=5/群)、ip注射
6. AS01B(ヒト用量の1/10(μg/kg)、50μl、n=5/群)、im(筋肉内)注射
GSK Bioは、the Centre de biologie experimentale de l'INRS-IAFにおいてIACUC承認プロトコルの下でC57BL6マウスにおける注射を行った。注射24時間後、塩酸ケタミンとキシラジンとの混合物の腹腔内注射を介してマウスを深麻酔して、次いで、氷冷した0.9%の生理食塩水、その後、0.1Mのホウ砂緩衝液、pH9.5中の4%のパラホルムアルデヒド(PFA)、4℃を用いて心臓内に潅流させた。脳を頭蓋から迅速に摘出して、4℃のPFA中で1-3d後固定し、CHULに送った。次いで、これらを、PFA中に希釈した10%のショ糖中で一晩凍結保護した。凍結した脳を、ミクロトーム(Reichert-Jung、Cambridge Instruments Company)を使用して25μmの厚さの冠状切片に切断して、切片を、冷却した凍結保護溶液(0.05M リン酸ナトリウム緩衝液、pH7.3、30% エチレングリコール、及び20% グリセロール、-20℃で保管される)中に収集した。
【0125】
in situハイブリダイゼーション及び免疫組織化学法
嗅球の端から始めて大脳皮質の終わりまで、12枚目の切片毎に脳切片を、Colorfrost/Plus顕微鏡スライド(Fisher Scientific)上に載せた。TLR2転写産物のin situハイブリダイゼーション組織化学的局在を、35S標識cRNAプローブを使用して行った。リボプローブの合成及び調製並びにin situハイブリダイゼーションを、以前に記載されているプロトコルに従って行った(Laflammeら、1999(Neuroscience 1999年1月;88(1):223〜40); Laflamme及びRivest、2001(FASEB Journal. 2001;15:155〜163); Nadeau及びRivest、2000(Neurosci 20:3456〜3468); Naertら、2009)。
【0126】
デュアル標識結合型免疫細胞化学及びin situハイブリダイゼーションを、以前に記載されているように行い(Laflamme及びRivest、2001; Nadeau及びRivest、2000 下掲)、ミクログリア内にTLR2転写産物を局在化させた(iba-1 染色)。本発明者らは、ポリクローナルウサギ抗イオン化カルシウム結合アダプター分子1(iba-1、1:3000、Wako Chemicals)を使用して、ミクログリアを染色した。全ての画像は、デジタルカメラ(QImaging)を備えたNikon Eclipse 80i顕微鏡を使用して取り込み、コントラスト及び鮮鋭度を上げるためにAdobe Photoshop7(Adobe Systems)を使用して加工し、次いで、Adobe Illustrator(Adobe Systems)を使用して集結させた。異なるパネルによって表されている画像は、各群のマウスについてのスライド上で検出されたシグナルの代表例である。
【0127】
本明細書において、(図1)、本発明者らは、CRX524(パネルb)、CRX527(パネルc)及びCRX601(パネルd)の注射後に、TLR2 mRNAが脳室領域及び脈絡叢において明らかに活性化されることを示している。より小さい程度で、本発明者らは、3D MPLがTLR2 mRNA転写を活性化することを示している(パネルe及びf)。TLR2転写産物の局在を決定するために、本発明者らは、ミクログリア細胞マーカー(Iba1)を使用して対比免疫染色を行った(パネルgを参照されたい)。
【0128】
[実施例2]
図2
3D MPL又はエンドトキシン分子を含まない他のTLR4アゴニストの末梢注射後(注射後2時間)のマウス血清においてサイトカイン(TNFα)を測定した。図2に結果を示している。
【0129】
[実施例3]
図3〜7
3D MPL、AS01B、AS15、CRX527又はCRX601などの、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを含む組成物の注射後の循環している単球数の上方制御
単球は、ミクログリアの末梢血前駆細胞である(Rezaie, P.,ら 1999. Microglia in the human fetal spinal cord-patterns of distribution, morphology and phenotype. Brain Res. Dev. Brain Res. 115:71〜81: Mildnerら Nat Neurosci. 2007年12月;10(12):1544〜53. Epub 2007年11月18日. PubMed PMID:18026096.)。胚発生の間に、ミクログリアは、骨髄内のミエロイド系列の前駆体からCNSに集合する。これらの細胞は、それらの浸潤組織内でマクロファージ(例えば、脳の場合はミクログリア)になるまで末梢血中を循環している。CD11b及びLy6Cなどのマーカーは、末梢血単球上に存在して、それらが脳に浸潤しているときに残存する免疫学的マーカーである(Mildnerら、2007 下掲、Lebson L,ら Trafficking CD11b-positive blood cells deliver therapeutic genes to the brain ofamyloid-depositing transgenic mice. J Neurosci. 2010年7月21日;30(29):9651〜8. PubMed PMID:20660248.)。アジュバントを含有する3D MPL及びsが末梢血中の単球の数を誘導するのに貢献するかどうかを調べるために、本発明者らは、それらの分子の単回注射を行い、(注射後)24時間後にフローサイトメトリー法によってCD11b+単球数を測定した(Mildner A,ら Microglia in the adult brain arise from Ly-6ChiCCR2+ monocytes only under defined host conditions. Nat Neurosci. 2007年12月;10(12):1544〜53。Epub 2007年11月18日. PubMed PMID:18026096)。図3に記載のように、本発明者らは、3D MPL又はAS15又はAS01B又はCRX527又はCRX601の注射後における、CD11b+、系列混合(lineage cocktail)陰性(CD3-、B220-、NK1.1-、Ly6G-)のマーカー表現型組成を有するCD11b+単球数の増加を示している。末梢血における通常の単球数計数と比較すると、これは5%であるのに対して、AS01B、及びAS15の筋肉内(i.m.)注射は循環している単球の数を最高20%まで増加させることを示している。さらに、腹腔内経路を使用した3D MPL又はCRX601又はCRX601の注射も、末梢血中の全単球のうちの22%を示す。より低い程度で、CRX601又は3D MPLの筋肉内注射は、単球数の増加を実証した(それぞれ最高12%及び13%まで)。
【0130】
結果
本明細書中の図4において、5ugの用量の3D MPLは、末梢血におけるCD11b+単球の2倍の増加を誘発するのに十分である。より高用量(50ug)の筋肉内の3D MPLは、24時間後にその末梢血単球計数の減少を示している。
【0131】
図5において、AS01Bの1/20の希釈物は、末梢血中の単球計数の増加を誘発するのに十分である。一定の増加がマウス全用量まで認められ、即ち、AS01Bマウス全用量は5μgの3D MPL及び5μgのQS21を含有している。
【0132】
図6において、本発明者らは、CRX601の徹底的な希釈解析を行い、CD11b+単球数を誘発するCRX601の最適用量を特定している。漸増している六つのCRX601用量を試験することによって、本発明者らは、1μgのCRX 601の量が、末梢血中の単球計数の増加を誘発するのに十分であることを示している。一定の増加が10μg用量の最大反応まで認められ、その効果は20ug用量で下方変調された。
【0133】
図7において、本発明者らは、一定用量のAS03と組み合わせたCRX601の希釈解析を行っている。種々の用量のCRX601(0.2μgから20μg)の単回筋肉内注射後に、末梢血単球数を算出した。
【0134】
方法:
フローサイトメトリー解析:
TLRアジュバントの注射の24時間後に、抗凝固剤としてリチウム-ヘパリンを用いて心臓穿刺によってC57BL/6マウスから末梢血を抜いた。プールした血液において塩化アンモニウムベースの緩衝液(Sigma、Steinheim、Germany)を用いて赤血球溶解を2回行い、細胞をEasyCount(商標)システム(Immunicon)で計数した。1回の洗浄ステップの後に、500,000細胞を、ラット抗マウスCD16/CD32(BD BiosciencesによるBD Fc Block(商標))と共に氷上で10分間インキュベートし、細胞を、Mildnerら、2007年によって記載されているように予め決定された各最適濃度の以下の直接に結合された抗体の組合せと共にさらに30分間インキュベートした: PerCP標識ストレプトアビジン、PE-ハムスター抗マウスCD3、ラット抗マウスCD45R/B220、ラット抗マウスLy-6G、マウス抗マウスNK1.1 APC結合型ラット抗マウスCD11b、PE-Cy7結合型ハムスター抗マウスCD11c、FITC-ラット抗マウスLy-6C(全てBD Biosciencesから)及びPacific Blue(商標)ラット抗マウスCD62L(BioLegend、San Diego、CA)。細胞を、最後に3回洗浄し、PBS中の2%のパラホルムアルデヒド溶液で15分間固定した。1種引いた蛍光(FMO)の対照を、蛍光補正設定のためにこのアッセイに常に含めた。
【0135】
試料をフローサイトメーター(BD FACSCanto II)上で獲得して、データをFACSDivaソフトウェア(BD Biosciences)で解析した。
【0136】
単球を、それらの側方/前方散乱特性によって識別して、CD3-/CD45R/B220-/Ly-6G-/NK1.1-(Lineage-)/CD11b+細胞としてゲートをかけた。CD11b+単球出現頻度が、デブリを除外した全細胞のうちの百分率として報告された。
【0137】
[実施例4]
図8
末梢血中の単球の増加の機能を調べ始めるために、本発明者らは、試験管内でAβ42を取り込むそれらの単球の能力を調べた。その食作用活性を測定するために、本発明者らは、蛍光HiLyteFluo Aβ42 (Anaspec Inc)を使用している。フローサイトメトリー解析により、AS01B(マウス全用量)又はCRX601(2μg用量)の筋肉内注射は、アジュバントされていないマウス単球(PBS群)と比較して、単球を始動させてより多量のAβ42を取り込めるようにすることが実証された。
【0138】
[実施例5]
図9〜12
エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストがAPP/PS1マウスにおいて認知障害及びAβのクリアランスを改善することになるかどうかの決定
注射
五つの群のAPPSwe/PS1マウスに、1週間に1回、12週間、以下の処置を行った:
・群1: APPSwe/PS1+NaCl 0.9%n(=20)、i.p.注射
・群4: APPSwe/PS1+CRX527(20μg/マウス、130μl、n=10)、i.p.注射
・群5: APPSwe/PS1+CRX601(20μg/マウス、130μl、n=10)、i.p.注射
・群6: APPSwe/PS1+3D MPL(50μg/マウス、130μl、n=10)、i.p.注射
・群8: APPSwe/PS1+AS15
・群9: APPSwe/PS1+AS01B(ヒト用量の1/10(μg/kg)、50μl、n=10)、i.m.注射
【表1】
【0139】
1.2 行動解析
T型水迷路
昼の「点灯」期の間にマウスを試験した。行動の実験者は、動物の遺伝的な状況及び処置の状況について盲検化された。海馬依存的な空間学習及び記憶を評価するために、T型水迷路課題においてマウスを訓練させた。このパラダイムにおいて、本発明者らは、沈水したプラットフォームの空間的位置を記憶するマウスの能力を評価する。T-迷路装置(基部の長さ、64cm;アームの長さ、30cm;幅、12cm;壁の高さ、16cm)を透明なファイバーガラスで作製して、水(23±1℃)で12cmの高さに満たした。プラットフォーム(11×11cm)を目標アームの終端に配置し、表面より1cm下に沈水させた。習得期に、左右の空間学習について動物を評価することができる。最初の2回の試験中に、プラットフォームを迷路のそれぞれのアーム上に置いて、マウスが自発的に曲がる優先度を試験した。これらの2回の試験の後に、最も少なく選択されたアームを逃避プラットフォームによって補強した。マウスをT迷路の基部に配置して、それらが沈水したプラットフォームを見つけてそこに逃避するまで、最高60秒間、左又は右のいずれかに泳ぐように選択させた。プラットフォームに到達した後に、マウスを、20秒間その上に残し、次いで、直ちに迷路に戻して配置した。動物が制限時間内にプラットフォームを見つけなかった場合には、それらをその上に優しく導いた。反復試験を最高48試験まで同日に行った。10回の試験のブロック毎の間に少なくとも10〜15分間の休憩時間入れた。マウスは、それが5回の連続した試験のブロックにおいて間違いをしなかったときに、タスクを学んだとみなされた。次いで、反転学習期を48時間後に行った。この期間中、マウスが習得期に学習したのと反対側にある逃避プラットフォームを見つけ出すようにマウスを訓練させたことを除き、同一のプロトコルを再度行った。基準に到達した(連続した試験における5回中5回正しい選択がされた)試験の数並びに逃避プラットフォームを見つけるまでの潜時を測定した。
【0140】
受動的回避試験
暗い環境を好むこの動物の自然の傾向に基づき、これらの動物を、一つの試験的な受動的回避課題についての非空間記憶の保持においても評価した。受動的回避装置(Ugo Basile)を二つの区分に分けて、一方を照明し(開始区画)、一方を暗くした(逃避区画)。それぞれの区画の床は、格子を含有し、暗い区画のみに発電機によって電流が流されている。訓練日に、マウスを、60秒間の環境順化期間の間、点灯した区画内に配置した。次いで、ギロチンドアを開けて、暗い方に入るまでの潜時を記録した。暗い区画に入った直後に、ドアが閉鎖されて、電気ショック(0.5mA、2秒間)が与えられた。このマウスは、自分のケージに戻される前に暗い区画に10秒間維持された。翌日に、これらのマウスを再び明区画に入れて、暗い方に入るまでの潜時を通してのステップである、時間を最長300秒間測定した。
【0141】
巣作り行動
その後、巣作り行動を用いて、情動的状態(例えば、感情鈍麻)における変化について試験した。巣作りの減少は、海馬が損傷されたマウス及びアルツハイマー病のマウスモデルにおいて認められている(Deacon、2006)。おがくずを含有するケージ内に動物を個別に収容し、巣作り行動ができるようにその中に5×5cmの綿片を導入した。1日後、Deacon(2006)によって記載されている以下の五点の尺度に従って巣の質を決定した:1-外見上手がつけられていないネストレット、2-部分的に引き裂かれたネストレット、3-主として細かく切られたネストレット、しかし、営巣地の明らかな存在はない、4-観察可能な平らな巣、5-観察可能な(ほぼ)完全な巣。
【0142】
組織解析
マウスを、イソフルオラン下で麻酔して、心臓穿刺によって血液を抜き、その後、断頭した。脳を頭蓋から迅速に摘出して、冷却したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液に入れた。次いで、二つの脳半球(hemibrain)を分離して、嗅球及び小脳を摘出した。一方の脳半球を、液体窒素中で急速に凍結させて、タンパク質解析用に-80℃で保存した。他の一方を、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)、4℃でpH9.5中で2〜4日間、後固定し、次いで、10%のショ糖を含有するPFA溶液中に4℃で一晩入れた。凍結した脳を、ミクロトーム(Reichert-Jung)上に取り付けて、25μmの冠状切片に切断した。切片を、冷却した凍結保護溶液(0.05M リン酸ナトリウム緩衝液、pH7.3、30% エチレングリコール、及び20% グリセロール)中に回収して、免疫細胞化学又はin situハイブリダイゼーション組織化学まで-20℃で保管した。
【0143】
立体解析学的解析
材料の処置状況について盲検化された観察者が全ての定量的組織学的解析を行った。Aβ斑を計数するために、以前に報告されているように(Richardら、2008; Simardら、2006)、APPSwe/PS1マウスの切片をAβについて免疫染色した(ポリクローナルマウス抗Aβ 6E10、1:3000; Covariance)。定位アトラス(Paxinos及びFranklin、第2版)に従ってブレグマから+2.34及び+2.10mmで前頭前野についての二つの切片及び-1.70、-1.94、-2.46及び-2.92mmで海馬/大脳皮質についての四つの切片を選択した。不偏性立体解析学的解析を、以前に記載されているように(Boissonneaultら、2009; Richardら、2008; Simardら、2006)行った。簡単に説明すると、前頭前野、海馬及び皮質領域の輪郭をスチーム画像(steamed image)上での仮想的オーバーレイとして追跡して、面積を算出した。Aβ標識された全ての斑によって占有されている面積を決定した。電動式ステージ(Ludl)及びMicrofireCCDカラーカメラ(Optronics)の双方を備えたNikon C80i顕微鏡を使用して、リアルタイム画像(1600_1200ピクセル)を得た。こうした装置は、Microbrightfieldによって設計されたStereo Investigatorソフトウェアを使用して作動させた。Cintiq 18S interactive pen display(Wacom)を使用して皮質及び海馬領域の双方を追跡した。
【0144】
タンパク質抽出、及びウエスタンブロットによる全Aβレベルの検出
Lesneら(Lesneら、2006)によって公表された手順を変更した方法を使用して、前脳半球からのタンパク質を抽出した。タンパク質分解を最小限に抑えるために、全ての操作を氷上で行った。一つの前脳半球を、20Gの針で1mlのシリンジに入れた。500 lの緩衝液A(50mM Tris-HCl pH7.6、0.01% NP-40、150mM NaCl、2mM EDTA、0.1% SDS、1mM フッ化フェニルメチルスルフォニル(PMSF)、プロテアーゼ阻害剤カクテル)を添加して、10回上下させて組織をホモジナイズした後に、3 000RPM、4℃で5分間の遠心分離を行った。次いで、その上清(細胞外タンパク質が濃縮された画分)を回収して、-80℃で凍結させた。不溶性のペレットを、500μlのTNT-緩衝液(緩衝液B; 50mM Tris-HCl pH7.6、150mM NaCl、0.1% Triton X-100、1mM PMSF、プロテアーゼ阻害剤カクテル)中に懸濁して、その後、13 000RPM、4℃で90分間の遠心分離を行った。次いで、その上清(細胞質タンパク質が濃縮された画分)を回収して、-80℃で凍結させた。ペレットを、500μlの緩衝液C(50mM Tris-HCl pH7.4、150mM NaCl、0.5% Triton X-100、1mM EGTA、3% SDS、1% デオキシコレート、1mM PMSF、プロテアーゼ阻害剤カクテル)中に懸濁して、4℃、50RPMで1時間インキュベートした。これらの試料を、13 000RPM、4℃で90分間遠心分離して、その上清(膜タンパク質が濃縮された画分)を回収して、-80℃で凍結させた。Quantipro BCAアッセイキット(Sigma)を製造業者のプロトコルに従って使用して、各画分のタンパク質濃度を決定した。
【0145】
全Aβ検出のために、10〜30μgの細胞外、細胞質及び膜のタンパク質画分を、プレキャスト10〜20%SDSポリアクリルアミドTris-Tricineゲル(BioRad)上で分離した。次いで、分離したタンパク質を、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)メンブレン(PerkinElmer Life and Analytical Sciences)上に転写して、ウエスタンブロッティングによって検出した。ブロットを、1MのTris-HCl、pH8.0、5MのNaCl、5%のスキムミルク、及び0.05%のTween20中、マウス抗アミロイドベータタンパク質モノクローナル抗体クローン6E10(1:1000、Covariance)でプローブした。ブロットを、ホースラディッシュペルオキシダーゼでタグ付けされた抗マウス二次抗体(1:1000; Jackson Immuno-Research)及び増強された化学発光(PerkinElmer Life and Analytical Sciences)を使用して可視化した。メンブレンを、1%のSDSを含有する、25mMのグリシン-HCl、pH2.0中でストリップして、第一のマウスアクチン抗体(MAB1501、1:5000; Millipore Bioscience Research Reagents)、及び、次いで、ヤギ抗マウスペルオキシダーゼ結合二次抗体(1:1000; Jackson ImmunoResearch)を使用して、アクチンの顕色(revelation)を可能にした。
【0146】
ゲル画像化システム(スキャナーAgfa Arcus II; NIHImage Jソフトウェア バージョン1.32j)を使用してバンドの統合的な密度を決定することによって定量を行い、バックグラウンドの値を除いた。光学的な値を、アクチン負荷量対照によって標準化した。結果は、平均±SEMとして表される。
【0147】
結果
図9にAβ斑総負荷量についての結果を示している。Aβ斑総負荷量解析は、免疫蛍光法によるAベータ斑負荷量測定の観点からPBS対照群対3D MPL群の間の有意な差を明らかにする。*は、ANOVA、P=0.05対PBS群を示す。
【0148】
行動解析についての結果は、図10及び11に提供されている。
【0149】
図10において、APP/PS1マウスモデルにおける3D MPL又はCRX527又はCRX601又はAS01Bの12回の週1回の注射により、無処置のマウスと比較して空間記憶の改善が示される。
【0150】
図11において、AS01Bで処置した動物は、無処置の動物と比較して有意な保持スコアを示す。12回目の週1回の注射後の受動的回避中に、潜時を通してのステップを測定した。データは、平均(+/-SEM(一元配置ANOVA))として表される。
【0151】
脳組織構造についての結果は、図12に提供されている。
【0152】
3D-MPLは、アミロイドベータ斑の数における統計的に有意な減少をもたらす。
【0153】
3D-MPL、CRX527、CRX601及びAS01Bは全て、T型水迷路試験によって評価されるように、行動における有意な改善をもたらす。
【0154】
[実施例6]
図13
以下の群を使用してさらなる実験を行った。
【0155】
群1: PBS i.m.-12×週1回、陰性対照[n=10(雌2匹)]
群2: CRX-601 i.m.(マウス1匹につき0.2ug)[n=10(雌2匹)]
群3: CRX-601 i.m.(マウス1匹につき2ug)、12×週1回[n=10(雌2匹)]
群5: AS03-CRX601(CRX601については2ugの用量、AS03についてはヒト用量の1/10、i.m. 12×週1回[n=10(雌2匹)]
群6: AS01B i.m(ヒト用量の1/10)、12×週1回[n=10(雌2匹)]
群7: AS01B i.m(ヒト用量の1/50)、12×週1回[n=10(雌2匹)]
群9: 3D 3D MPL 腹腔内(目的1にあるため)、マウス1匹につき50ug、12×週1回[n=10(雌2匹)]
群10: 3D MPL i.m. (マウス1匹につき5ug)、12×週1回[n=10(雌2匹)]
結果により、T型迷路反転試験において、群3、5、9及び10は、群1と比較して有意に改善されたことが示される。
【0156】
[実施例7]
図14
3D MPL及びPBSをマウスに注射して、細胞内アミロイドベータの単量体化状態をImmunoblot:抗Aβ1-16抗体を使用して免疫ブロットによって行った。3D MPLを注射したマウスの脳からの細胞外濃縮画分中の単量体Aβの減少があった。
【0157】
[実施例8]
図15
本発明のさまざまな化合物の添加後、ヒトのミクログリア細胞によるベータ-アミロイド1-42ペプチドの食作用を観察した。使用される化合物の大部分は、ヒトのミクログリア細胞によるベータ-アミロイド1-42ペプチドの食作用の百分率を上昇させる。この実験において、食作用の最も高い上昇は、AS01B及びAS15で認められる。
【0158】
図15において、ヒトのミクログリア細胞株(CHME)は、細胞をアジュバントと18時間プレインキュベーションすることによってそのAβ42食作用活性が上昇することを示している。そのインビトロ食作用アッセイのためのアジュバント用量は、MPL含有量に基づいていた(すなわち、1mlにつき2ug)。Cpg7909アジュバントは、Invivogenから購入し、1mlにつき79ugで使用した。Aβ42は、DMEM完全培地(Invitrogen)中、1mlにつき1ugで使用した。
【0159】
[実施例9]
図16
ヒトのミクログリア細胞を、1μg/mlのHiLyteFluo Aβ1-42の存在下で、1μg/mlの3D MPLを有するAS01Bで18時間処理した。Lysotracker赤色染色を行い、スライドにDAPIを載せてスライドをDAPIで共染色して核(青色)を示した。
【0160】
ヒトのミクログリア細胞株の蛍光顕微鏡法の代表的な画像により、AS01B処理後のリソソーム内でのAβ1-42の局在が示される。
【0161】
ヒトのミクログリア細胞株は、リピドAを含有するアジュバントでの刺激後により高いアミロイド食作用活性を有する。アミロイドは、リソソームへ標的化される。図15に記載されるようなこれまでの実験の代表的な画像。本発明者らは、二重免疫蛍光法を行い、CHMEヒトミクログリア細胞株内のリソソーム区画内のAベータを検出した。CHME細胞を、1mlにつき1ugのAベータ42蛍光(HiLyte Fluo 488、Anaspec)及び1mlにつき1ugのMPLと共にインキュベートした。Lysotracker赤色試薬を、Invitrogenから購入して、製造業者の推奨のように使用した。
【0162】
[実施例10]
図17及び18
ミクログリアは、多くの場合アルツハイマー病の脳内のアミロイドβ斑の周囲に、且つより低い程度でその内部に認められ、それらの斑を取り除こうと努めている。ミクログリア活性化のこの現象は、CNS免疫細胞を活性化し過ぎるという有害な効果を回避するために、制御された様式で調節されることが必要とされ得る。最も強力なミクログリアの活性化剤は、リポポリサッカリド(LPS)などのToll様受容体4アゴニストである。LPSは、脳細胞、例えば、ミクログリア、及び末梢血中のそれらの前駆体、例えば、骨髄ミエロイド細胞由来の単球の迅速で強い先天性の活性化を引き起こす。しかし、大腸菌(E. coli)、サルモネラ及びごく少数の他のグラム陰性細菌からのLPSは、強いエンドトキシンであって、毒性であり、マウスにおいて末梢血で注射したときに既存の神経病理を悪化させることが示されている。LPSは、毒性が高いために、臨床レベルで使用することができなかった。したがって、それらの有害作用を回避するために、本発明者らは、本明細書において、グラム陰性菌サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)R595株から単離される3D MPL(3-O-デスアシル-4'-モノホスホリルリピドA)と呼ばれるリポポリサッカリドの無毒化された誘導体分子を評価した。本発明者らは、腹腔内経路によって送達された3DMPLが、LPSと比較して弱毒化されたサイトカインプロファイルを促進すると同時に、食細胞及び食作用における増大を活性化し得ることを示す。これにより、3DMPLは、神経変性病変を悪化させるリスクがある炎症誘発性サイトカインのバーストを引き起こすことなく、食細胞、例えばミクログリア細胞の活性化を誘導するのにより適していることが示唆される。
【0163】
同様に、本発明者らは、筋肉内の経路によって注射された、3D MPLを含有するリポソーム製剤である、AS01Bが、サイトカイン産生に対して3DMPLと同様の生物活性までさらに弱毒化されることを示すことを証明し、それにより、同等の全身の先天性の活性化を達成するためにMPLの代わりにそれが使用され得ることが示唆される。
【0164】
結果:
図17-3DMPLは、マウスにおいて低い炎症反応を誘導する
本発明者らは、MPL又はLPSのいずれかの単回腹腔内注射の2及び6時間後にC57BL/6マウスの血清中の数種のサイトカイン及びケモカインを測定した。本発明者らは、3DMPLを注射したマウスにおいてほとんどのサイトカイン及びケモカインのレベルが上昇したことを見出したが、これらのレベルは、LPSで処置した動物のそれらよりも実質的に低かった(図17aからk)。TNF-α及びIL-6のレベルは、LPS注射後2時間においてきわめて高かったのに対して、3DMPLを注射したマウスでは中等度の上昇が認められたが、それは6時間後に本質的に消えた。興味深いことに、注射2時間後、CXCL-1及びCCL2のように単球及びミクログリアの活性化とより関連があるケモカインは、MPLで処置したマウスにおいてLPS群と比較してそれぞれ同様のレベル又はより高いレベルまで変調された。
【0165】
図18-3DMPLは、マウスにおいて低い炎症反応を誘導する
筋肉内の経路を使用してAS01B、AS03又はAS04Dのいずれかをマウスに注射した後の血清からの先天性サイトカインプロファイル、試料は、注射後2時間又は6時間の時点で採取された。結果は、PBS及びLPS又はMPLを注射されたマウスについての2時間又は6時間後の血清中の多様なサイトカイン/ケモカインの相対単位(RU又はpg/ml)で示されている。1群につきN=5マウス。バーは平均±SEMを表す。
【0166】
[実施例11]
マウスにおけるアジュバント注射後の単球の解析及び計数
TLRアジュバントを、末梢単球を刺激するそれらの能力について試験した。
【0167】
TLRアジュバントの注射の24時間後に、抗凝固剤としてリチウム-ヘパリンを用いて心臓穿刺によってC57BL/6マウスから末梢血を抜いた。プールした血液において塩化アンモニウムベースの緩衝液(Sigma、Steinheim、Germany)を用いて赤血球溶解を2回行い、細胞をEasyCount(商標)システム(Immunicon)で計数した。1回の洗浄ステップの後に、500,000細胞を、ラット抗マウスCD16/CD32(BD BiosciencesによるBD Fc Block(商標))と共に氷上で10分間インキュベートし、細胞を、Mildnerら、2007年によって記載されているように予め決定された各最適濃度の以下の直接に結合された抗体の組合せと共にさらに30分間インキュベートした:PerCP標識ストレプトアビジン、PE-ハムスター抗マウスCD3、ラット抗マウスCD45R/B220、ラット抗マウスLy-6G、マウス抗マウスNK1.1 APC結合型ラット抗マウスCD11b、PE-Cy7結合型ハムスター抗マウスCD11c、FITC-ラット抗マウスLy-6C(全てBD Biosciencesから)及びPacific Blue(商標)ラット抗マウスCD62L(BioLegend、San Diego、CA)。細胞を、最後に3回洗浄し、PBS中の2%のパラホルムアルデヒド溶液で15分間固定した。1種引いた蛍光(FMO)の対照を、蛍光補正設定のためにこのアッセイに常に含めた。試料をフローサイトメーター(BD FACSCanto II)上で獲得して、データをFACSDivaソフトウェア(BD Biosciences)で解析した。単球を、それらの側方/前方散乱特性によって識別して、CD3-/CD45R/B220-/Ly-6G-/NK1.1-(Lineage-)/CD11b+細胞としてゲートをかけた。CD11b+単球出現頻度が、デブリを除外した全細胞のうちの百分率として報告された。
【0168】
[実施例11(図19)]
種々の組成物を使用して、末梢単球の刺激について試験した。
【0169】
AS01Bは、単球の上方制御において3D MPL単独よりも良好である。
【0170】
[実施例12]
図20
図20に示した各単一成分の筋肉内注射の24時間後に試料を採取した。
【0171】
それぞれの免疫調節物質又はアジュバントの注射の24時間後に、抗凝固剤としてリチウム-ヘパリンを用いて心臓穿刺によってC57BL/6マウスから末梢血を抜いた。プールした血液において塩化アンモニウムベースの緩衝液(Sigma、Steinheim、Germany)を用いて赤血球溶解を2回行い、細胞をEasyCount(商標)システム(Immunicon)で計数した。1回の洗浄ステップの後に、500,000細胞を、ラット抗マウスCD16/CD32(BD BiosciencesによるBD Fc Block(商標))と共に氷上で10分間インキュベートし、細胞を、Mildnerら、2007年によって記載されているように予め決定された各最適濃度の以下の直接に結合された抗体の組合せと共にさらに30分間インキュベートした: PerCP標識ストレプトアビジン、PE-ハムスター抗マウスCD3、ラット抗マウスCD45R/B220、ラット抗マウスLy-6G、マウス抗マウスNK1.1 APC結合型ラット抗マウスCD11b、PE-Cy7結合型ハムスター抗マウスCD11c、FITC-ラット抗マウスLy-6C(全てBD Biosciencesから)及びPacific Blue(商標)ラット抗マウスCD62L(BioLegend、San Diego、CA)。細胞を、最後に3回洗浄し、PBS中の2%のパラホルムアルデヒド溶液で15分間固定した。1種引いた蛍光(FMO)の対照を、蛍光補正設定のためにこのアッセイに常に含めた。試料をフローサイトメーター(BD FACSCanto II)上で獲得して、データをFACSDivaソフトウェア(BD Biosciences)で解析した。単球を、それらの側方/前方散乱特性によって識別して、CD3-/CD45R/B220-/Ly-6G-/NK1.1-(Lineage-)/CD11b+細胞としてゲートをかけた。CD11b+単球出現頻度が、デブリを除外した全細胞のうちの百分率として報告された。
【0172】
AS01B及びQS21+リポソームは、単回注射後のC57BL/6マウス末梢血において24時間後に最も有意な単球数増加(パネルA)及び単球活性化状態(Ly6Cが高い)(パネルB)を示す。
【0173】
[実施例13]
図21
本発明者らは、試験管内でAβ42を取り込む単球の能力を調べた。その食作用活性を測定するために、本発明者らは、蛍光HiLyteFluo Aβ42(Anaspec Inc)を使用している。フローサイトメトリー解析により、DQ(QS21+リポソーム)の筋肉内注射は、PBS又はQS21(5μg)を注射したマウス又はリポソーム型MPL(5μgのSUV MPL)又は本明細書中で使用される5μg用量のMPL自体と比較して、単球を始動させてより多量のAβ42を取り込めるようにすることが実証された。これは、QS21はAβの取り込みを促進せず、リポソーム+QS21は最後に記載した効果を促進するのに必要であることを我々に示唆している。
【0174】
全ての実験及びアッセイは、カナダ動物管理協会(CCAC)の動物実験法のためのガイドラインに従って行った。8週齢の雌のC57BL/6マウスを、Charles-Rivers研究所(St-Constant、Quebec)から得た。APP-PS1マウスモデルを、Jackson研究所、ストック5866(Savonenkoら、2005)から得た。マウスにおける筋肉内注射を、いずれかの前側腓腹筋上で実験に応じて50又は25μLで行った。静脈内注射(100μL)を尾静脈において行った。アジュバント組成物は、以下の通りであった:
アジュバント組成物:
AS01B、AS03及びAS15について。マウスの用量は、ヒトの1/10の用量と等しい。
【0175】
AS01Bは、3D-MPL及びQS21を含有するリポソームから成る。AS01Bのマウス用量は、中性リポソーム中に共製剤化された5μgのMPL 3D、5μgのQS21を含有する。それらの用量は、マウス1匹当たりであり、筋肉内経路(i.m.)のマウス1匹当たり25μlのAS01B+25ulのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)又は25μlの適切なペプチドを使用して注射された。
【0176】
エキソビボでのAb42の取り込みアッセイ
細胞の調製:本明細書中で使用されるアジュバントの注射の24時間後に、抗凝固剤としてリチウム-ヘパリンを用いて心臓穿刺によってC57BL/6マウスから末梢血を抜いた。プールした血液において塩化アンモニウムベースの緩衝液(Sigma、Steinheim、Germany)を用いて赤血球溶解を2回行い、細胞をEasyCount(商標)システム(Immunicon)で計数した。
【0177】
細胞刺激/Aβ食作用:細胞を、24ウェルの組織培養プレート上に106細胞/mLで播種して、1μg/mlのAβ1-42 HiLyte Fluor(商標)488(Anaspec、Fremont、CA)の存在下又は非存在下で2又は24時間刺激した。これは、1μg/mlの抗アミロイドβ抗体(例えば、抗-Aβ1-17 IgG1、クローン6E10、Signet Laboratories、Dedham、MA)と共に又は、対照として、マウス血清から精製されたIgG(Sigma)と共に、予め1時間インキュベートしていたか、又はしていなかった。
【0178】
FACS解析:細胞を、トリプシン/EDTA及び冷却したPBSを用いて蛍光Aβペプチドと共にインキュベートした後に回収して3回洗浄した。500,000細胞を、96ウェルプレート中、ラット抗マウスCD16/CD32(クローン2.4G2-BD Fc Block(商標))の存在下で氷上で10分間インキュベートし、予め決定された各最適濃度の以下の直接に結合された抗体の組合せを用いてさらに30分間染色した: PE-ハムスター抗マウスCD3(クローン145-2C11)、ラット抗マウスCD45R/B220(クローンRA3-6B2)、ラット抗マウスLy-6G(クローン1A8)、マウス抗マウスNK1.1(クローンPK136)、APC結合型ラット抗マウスCD11b(クローンM1/70)、PE-Cy7結合型ハムスター抗マウスCD11c(クローンHL3)、(全てBD PharMingenから)。細胞を、最後に2回洗浄し、PBS中の2%のパラホルムアルデヒド溶液で15分間固定した。FMO対照を、このアッセイに常に含めた。
【0179】
試料をフローサイトメーター(BD FACSCanto II)上で獲得して、データをFACSDivaソフトウェア(BD Biosciences)で解析した。
【0180】
単球を、それらの側方/前方散乱特性によって識別して、デブリを除外し、CD3-/CD45R/B220-/Ly-6G-/NK1.1-(Lineage-)/CD11b+細胞としてゲートをかけた。ゲートをかけた単球のうちの陽性HiLyte fluor488 Aβ1-42細胞の百分率及び平均蛍光強度(幾何平均(GeoMean))を報告することによってAβの取り込みを評価した
[1] エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを含む組成物を用いた対象の処置を含む、対象においてアミロイド沈着を予防及び/又は軽減する方法。
[2] 対象においてアミロイド沈着を予防及び/又は軽減するための、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを含む組成物。
[3] 対象においてアミロイド沈着を予防及び/又は軽減するための医薬品の製造におけるエンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを含む組成物の使用。
[4] エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストを含む組成物を用いた対象の処置を含む、対象においてアルツハイマー病を予防及び/又は軽減する方法。
[5] アルツハイマー病を予防及び/又は軽減するための、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニスト。
[6] アルツハイマー病を予防及び/又は軽減するための医薬品の製造におけるエンドトキシンを含まないTLR4アゴニストの使用。
[7] 処置した対象における空間記憶の改善によって評価される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用又は方法。
[8] アミロイドベータ斑の減少及び行動試験の双方によって評価される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用又は方法。
[9] 処置が3D-MPL又はMPLを用いたものである、請求項8に記載の使用又は方法。
[10] MPL又は3D-MPLが水中油型エマルションと組み合わせたものである、請求項9に記載の方法又は使用。
[11] 組成物が3D MPL、QS21及びリポソーム、例えばAS01Bを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法又は使用。
[12] 組成物がベータアミロイド又はその断片若しくはミモトープを含有しない、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法又は使用。
[13] 組成物がアミノアルキルグルコサミニドホスフェート(「AGP」)、3D-MPL、AS01B又は水中油型エマルションと組み合わせたAGPからなる、又は本質的になる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法又は使用。
[14] アミノアルキルグルコサミニドホスフェート(「AGP」)、3D-MPL、AS01B又は水中油型エマルションと組み合わせたAGPからなる、又は本質的になる、医薬組成物。
[15] 脳内のミクログリアの活性化を増加させるための、エンドトキシンを含まないTLR4アゴニストの使用。
[16] アミロイド沈着若しくはアルツハイマー病の予防及び/又は軽減が、アミロイドベータの食作用の増加によるものである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法又は使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21