(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、前記コンバイナ回転軸に押圧接触して摩擦力を与えるコンバイナブレーキ部と、前記カバー回転軸に押圧接触して摩擦力を与えるカバーブレーキ部とを更に備えることを特徴とする、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態においての構成の一部のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することが出来る。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりでなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることが出来る。
【0014】
(第一実施形態)
図1は、本実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置1のうち、コンバイナ12とカバー13の収納展開機構の構成を示した斜視図である。本実施形態における、ヘッドアップディスプレイ装置1は底部10を備えている。そして、ヘッドアップディスプレイ装置1には、底部10上に、コンバイナ軸受け12a、12b、カバー軸受け13a、カバー軸受け13b、ギア軸受け123、ギア軸受け133及びモータ14が設けられている。モータ14は、回転軸を介して、継手15、中央ギア16と一体回転可能となるように接続されている。そのため、モータ14の回転に伴って、中央ギア16は回転する。
【0015】
駆動側コンバイナギア121と中間コンバイナギア122とは、一体回転可能となるように、底部同士が接続されている。また、駆動側カバーギア131と中間カバーギア132とは、一体回転可能となるように、底部同士が接続されている。また、駆動側コンバイナギア121、中間コンバイナギア122、駆動側カバーギア131、中間カバーギア132は、ギア軸受け123及びギア軸受け133に支持されたギア回転軸17によって一体回転可能に接続されている。そして、駆動側コンバイナギア121及び駆動側カバーギア131は、それぞれ中央ギア16とかみ合っている。そのため、中央ギア16の回転に伴って、駆動側コンバイナギア121が回転し、その結果中間コンバイナギア122は回転する。また、中央ギア16の回転に伴って、駆動側カバーギア131が回転し、その結果中間カバーギア132は回転する。
【0016】
従動側コンバイナギア124の底部とコンバイナ駆動部材125aの一端側とは、一体回転可能となるように接続されている。そして、従動側コンバイナギア124及びコンバイナ駆動部材125aは、ギア軸受け123によって支持されている。また、従動側コンバイナギア124と中間コンバイナギア122とは傘歯歯車であり、互いの回転軸が直交するようにかみ合っている。そのため、中間コンバイナギア122の回転に伴って、従動側コンバイナギア124が回転し、その結果、コンバイナ駆動部材125aも回転する。
【0017】
コンバイナ駆動部材125aは、従動側コンバイナギア124と固定された一端側とは逆側の他端側に穴部を有している。また、コンバイナ中間部材125bは両端側に穴部を有している。そして、コンバイナ駆動部材125aとコンバイナ中間部材125bの一端側とは各穴部に挿入されたピンによって、接続されている。つまり、コンバイナ駆動部材125aとコンバイナ中間部材125bとは相対回転可能に接続されている。
【0018】
コンバイナ従動部材125cは一端側に穴部を有している。そして、コンバイナ中間部材125bとコンバイナ従動部材125cとは各穴部に挿入されたピンによって接続されている。そのため、コンバイナ中間部材125bとコンバイナ従動部材125cとは相対回転可能である。
【0019】
コンバイナボス部12sは、図示しないスプリングを介して、コンバイナ回転軸127と接続されている。また、コンバイナ従動部材125cは、コンバイナ中間部材125bと接続された一端側とは逆側の他端側を、コンバイナ回転軸127と一体回転可能に接続されている。そして、コンバイナ回転軸127及びコンバイナボス部12sは、コンバイナ軸受け12a及びコンバイナ軸受け12bに、回転可能となるように支持されている。
【0020】
そのため、コンバイナ従動部材125cがコンバイナ回転軸127を支点にして、回転往復運動を行なうと、コンバイナ回転軸127が回転する。そして、コンバイナ回転軸127が回転すると、図示しないスプリングを介して動力が伝達され、コンバイナボス部12sが回転する。そして、コンバイナボス部12sの回転に伴って、コンバイナ12の面は底部10に対して様々な角度をなす。また、機械的なロックなどが原因により、コンバイナ回転軸127が回転しても、コンバイナボス部12sが回転しない場合、図示しないスプリングが弾性変形することにより収納展開機構に対して過度な負荷が加わって破損することを未然に防ぐことが出来る。
【0021】
また、コンバイナブレーキ部128は、円環状の部材であり、環状部の内側にはウレタン等の弾性部材が設けられている。そして、バネ129は底部10に固定されたアンカーと、コンバイナブレーキ部128とを連結している。そのため、コンバイナブレーキ部128は、バネ129によって生じるアンカー方向への引っ張り力によって、コンバイナ回転軸127に押し付けられている。そのため、コンバイナブレーキ部128はコンバイナ回転軸127に摩擦力を与える。
【0022】
つまり、中央ギア16の回転に伴って、コンバイナ12は展開、収納動作を行なわれる。
【0023】
次に、カバー13が展開される様子について説明する。従動側カバーギア134の底部とカバー駆動部材135aの一端側とは、一体回転可能となるように固定されている。そして、従動側カバーギア134及びカバー駆動部材135aは、ギア軸受け133によって支持されている。また、従動側カバーギア134と中間カバーギア132とは傘歯歯車であり、互いの回転軸が直交するようにかみ合っている。そのため、中間カバーギア132の回転に伴って、従動側カバーギア134が回転し、その結果、カバー駆動部材135aも回転する。
【0024】
カバー駆動部材135aは、従動側カバーギア134と固定された一端側とは逆側の他端側に穴部を有している。また、カバー中間部材135bは両端側に穴部を有している。そして、カバー駆動部材135aとカバー中間部材135bの一端側とは各穴部に挿入されたピンによって接続されている。つまり、カバー駆動部材135aとカバー中間部材135bとは相対回転可能である。
【0025】
カバー従動部材135cは一端側に穴部を有している。そして、カバー中間部材135bとカバー従動部材135cとは各穴部に挿入されたピンによって接続されている。そのため、カバー中間部材135bとカバー従動部材135cとは相対回転可能である。
【0026】
カバーボス部13sは、図示しないスプリングを介して、カバー回転軸137と接続されている。また、カバー従動部材135cは、カバー中間部材135bと接続された一端側とは逆側の他端側を、カバー回転軸137と一体回転可能に接続されている。そして、カバー回転軸137は、カバー軸受け13a及びカバー軸受け13bに、回転可能となるように支持されている。
【0027】
そのため、カバー従動部材135cがカバー回転軸137を支点にして、回転往復運動を行なうと、カバー回転軸137が回転する。そして、カバー回転軸137が回転すると、図示しないスプリングを介して動力が伝達され、カバーボス部13sが回転する。そして、カバーボス部13sの回転に伴って、カバー13の面は底部10に対して様々な角度をなす。また、機械的なロックなどが原因により、カバー回転軸137が回転しても、カバーボス部13sが回転しない場合、図示しないスプリングが弾性変形することにより収納展開機構に対して、過度な負荷が加わって破損することを未然に防ぐことが出来る。
【0028】
また、カバーブレーキ部138は、円環状の部材であり、環状部の内側にはウレタン等の弾性部材が設けられている。そして、バネ139は底部10に固定されたアンカーと、カバーブレーキ部138とを連結している。そのため、カバーブレーキ部138は、バネ139によって生じるアンカー方向への引っ張り力によって、カバー回転軸137に押し付けられて支持される。そのため、カバーブレーキ部138はカバー回転軸137に摩擦力を与える。
【0029】
つまり、中央ギア16の回転に伴って、カバー13は展開、収納動作を行なわれる。
【0030】
次に、中央ギア16に設けられた欠損部16aについて説明する。
図1に示す通り、中央ギア16は欠損部16aを備えている。そのため、欠損部16aにおいて駆動側コンバイナギア121と中央ギア16とはかみ合わない。従って、一時的にコンバイナ12の動きをとめたまま、カバー13を展開または収納させることが可能となる。
【0031】
換言すれば、上記欠損部16aが設けられているため、本実施形態のヘッドアップディスプレイ装置1は、コンバイナ12またはカバー13のうち、どちらかのみを動かし、どちらか一方を一時的に動かさないように、角度領域を設定することが出来る。特に、本実施形態における欠損部16aは、コンバイナの収納状態から中央ギア16が回転し出した直後に、駆動側コンバイナギア121との接触箇所を通過するように設けられている。そのため、中央ギア16が回転されると、カバー13が先に展開され始め、少し遅れた状態で、コンバイナ12が展開され始める。そのため、コンバイナ12とカバー13とが接触してしまうことを防ぐことが出来る。
【0032】
このため、本実施形態のヘッドアップディスプレイ装置1は、1つのモータ14により、コンバイナ12及びカバー13の展開、収納を制御することが出来る。
【0033】
次に、コンバイナブレーキ部128、カバーブレーキ部138について述べる。欠損部16aが駆動側コンバイナギア121を通過する際に、コンバイナ回転軸127には、中央ギア16の回転力が伝わらなくなる。そのため、コンバイナ12の自重により、コンバイナ回転軸127には、コンバイナ12を収納する方向への回転力が加わってしまう。従って、欠損部16aが駆動側コンバイナギア121を通過する際に、コンバイナ12の展開時には、コンバイナ12が収納する方向へ動いてしまったり、コンバイナ12の収納時には、コンバイナ12が収納される速度が上昇してしまう可能性がある。
【0034】
このことを防ぐために、コンバイナブレーキ部128は、コンバイナ12の自重によりコンバイナ回転軸127に生じる回転力と釣り合う摩擦力を、コンバイナ回転軸127に与える。そのため、欠損部16aが駆動側コンバイナギア121を通過する際に生じる上記回転力と摩擦力とが釣り合うため、コンバイナ12の予期せぬ動きを抑制することが出来る。また、上記摩擦力の大きさは、モータ14の回転により生じる、コンバイナ回転軸127の回転を妨げない程度に抑えられている。
【0035】
同様に、欠損部16aが駆動側カバーギア131を通過する際に、カバー回転軸137には、中央ギア16の回転力が伝わらなくなる。そのため、カバー13の自重により、カバー回転軸137には、カバー13を収納する方向への回転力が加わってしまう。従って、カバー13の展開時において、欠損部16aが駆動側カバーギア131を通過すると、カバー13が収納する方向へ動いてしまう。また、カバー13の収納時において、欠損部16aが駆動側カバーギア131を通過すると、カバー13が収納される速度が上昇してしまう。
【0036】
このことを防ぐために、カバーブレーキ部138は、カバー13の自重によりカバー回転軸137に生じる回転力と釣り合う摩擦力を、カバー回転軸137に与える。そのため、欠損部16aが駆動側カバーギア131を通過する際には、上記回転力と摩擦力とが釣り合うため、カバー13の予期せぬ動きを抑制することが出来る。また、上記摩擦力の大きさは、モータ14の回転により生じる、カバー回転軸137の回転を妨げない程度に抑えられている。
【0037】
図2は、コンバイナ12及びカバー13が収納されている状態の、ヘッドアップディスプレイ装置1を示している。ヘッドアップディスプレイ装置1は、このように非使用時において、筐体2の中に、表示器11、モータ14、コンバイナ12及び、カバー13が収納されている。そのため、本実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置1は、非使用時の場合、使用時に比べて、スペースをとらない構成となっている。
【0038】
図1に戻って、
図1は、コンバイナ12が展開される途中の様子を示している。本実施形態において、コンバイナ12が半分展開されているときに、カバー13は、完全に展開されている。
【0039】
図3は、コンバイナ12が完全に展開されている様子を示している。この時、コンバイナ12は、筐体2の外側にある。そして、カバー13は、筐体2の中に完全に収納されている。そして、表示器11は、コンバイナ12に光を投射することで、その光を運転手に反射させ、画像を認識させることが出来る。
【0040】
この後、
図3の状態から、コンバイナ12が収納される際には、
図1のように再度カバー13が完全に展開される。この時、コンバイナ12は、半分収納された状態となる。そして、コンバイナ12が完全に収納されると、
図2のようにカバー13も完全に収納される。
【0041】
また、
図3の状態から、コンバイナ12が収納される際は、中央ギア16は展開時とは反対方向に回転する。
【0042】
また、本実施形態では、中央ギア16のギアの歯の数や欠損部16aを調整することで、コンバイナ12とカバー13とが衝突しないように調整している。
【0043】
次に、
図4を用いて、コンバイナ12及びカバー13の展開が行われる様子と中央ギア16の回転角度との関係を説明する。
【0044】
図4は、中央ギア16の回転角度とコンバイナ12及びカバー13との開度を示している。破線1201は、中央ギア16の回転角度とコンバイナ12の開度との関係を示している。実線1301は、中央ギア16の回転角度とカバー13の開度との関係を示している。領域Aは、中央ギア16の欠損部16aがコンバイナギア122を通過する角度範囲を示している。そして、領域Bは、中央ギア16の欠損部16aがカバーギア132を通過する角度範囲を示している。本実施形態では領域A及び領域Bの回転角度の範囲は30°である。
【0045】
本実施形態ではコンバイナ12及びカバー13の収納が完了している時の中央ギア16の回転角度を0°とする。また、コンバイナ12の展開が完了した直後の回転角度を360°する。
【0046】
次に、具体的にコンバイナ12及びカバー13が収納されている状態から、一旦展開され、再度収納されていく一連の流れを説明する。
【0047】
まず、回転角度0°〜30°における、コンバイナ12及びカバー13の動きを説明する。中央ギア16の回転に伴い、駆動側カバーギア132が回転された結果、カバー13は展開を開始する。一方、この時、欠損部16aは駆動側コンバイナギア122との噛み合い箇所を通過する。そのため、コンバイナ12は、中央ギア16の回転に伴い展開されず、静止したままである。
【0048】
次に、回転角度30°〜165°における、コンバイナ12とカバー13との動きについて説明する。この時、欠損部16aは、コンバイナ駆動ギア122との噛み合い箇所及びカバー駆動ギア132との噛み合い箇所のうちどちらも通過しない。そのため、中央ギア16の回転に伴い、コンバイナ12及びカバー13は展開されていく。そして、回転角度165°において、カバー13の展開は完了する。
【0049】
次に回転角度165°〜180°における、コンバイナ12及びカバー13の動きについて説明する。この回転角度の範囲において、欠損部16aは、コンバイナ駆動ギア122との噛み合い箇所及びカバー駆動ギア132との噛み合い箇所のうちどちらも通過しない。そのため、コンバイナ12は、中央ギア16の回転に伴い展開されていく。また、カバー13は、中央ギア16の回転に伴い、収納が行なわれていく。
【0050】
次に、回転角度180°〜210°における、コンバイナ12及びカバー13の動きについて説明する。この回転角度の範囲において、欠損部16aは、カバー駆動ギア132との噛み合い箇所を通過する。そのため、カバー13は、中央ギア16の回転に伴った収納は行なわれない。また、カバーブレーキ部138はカバー13の自重によってカバー回転軸137に生じる力と釣り合うように、カバー回転軸137に対して摩擦力を与える。そのため、この回転角度の範囲において、カバー13は一定の開度を維持することが可能となる。一方、コンバイナ12は、中央ギア16の回転に伴って、展開が行なわれる。
【0051】
次に、回転角度210°〜360°における、コンバイナ12及びカバー13の動きについて説明する。この回転角度の範囲において、欠損部16aは、駆動側コンバイナギア122との噛み合い箇所及び駆動側カバーギア132との噛み合い箇所のうち、どちらの噛み合い箇所も通過しない。そのため、コンバイナ12は、中央ギア16の回転に伴い、展開が行なわれる。また、カバー13は、中央ギア16の回転に伴い、収納が行なわれる。また、この回転角度の範囲において、コンバイナ12とカバー13との開度が等しくなる回転角度が存在する。開度が等しくなる位置は、比較的高い位置であるので、コンバイナ12とカバー13とが衝突することはない。また、回転角度360°において、コンバイナ12は展開を完了する。
【0052】
なお、コンバイナ12の収納時に中央ギア16を逆回転させても良いし、同じ方向に回転させ続けても良い。
【0053】
なお、本実施形態において、駆動側コンバイナギア121の歯の数は、駆動側カバーギア131の歯の数の約2倍である。
【0054】
(その他の実施形態)
上記実施形態1において、コンバイナ12とカバー13との展開、収納速度を変更するために駆動側コンバイナギア121と駆動側カバーギア131との歯の数を異ならせたが、これに限るものではない。例えば、コンバイナ中間部材125bとカバー中間部材135bとの長さを異なるようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態1において、中央ギア16の欠損部16aは1箇所であるが、複数箇所設けるようにしても良い。
【0056】
また、欠損部16aは、中央ギア16に設けたが、駆動側コンバイナギア121や駆動側カバーギア131に設けるようにしても良い。