(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補間手段は、前記エッジ点Bに関する近似曲線(121)を作成し、その近似曲線上に前記仮想エッジ点を作成することを特徴とする請求項2に記載の境界線認識装置。
前記補間手段は、過去に認識された境界線と平行な曲線(125)で前記欠落区間の両側に位置する前記エッジ点Bの間を結び、その平行な曲線上に前記仮想エッジ点を作成することを特徴とする請求項2に記載の境界線認識装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
境界線の1種として、
図9に示すような破線P1がある。破線P1は、単位線分P3と、欠落区間P5とが、道路の走行方向(
図9における上下方向)に沿って、交互に並んだ構造を有する。ここで、単位線分P3は、一定の幅と、長手方向における有限の長さとを有し、境界線以外の路面とは異なる色(例えば、白色、黄色等)を有する領域である。また、欠落区間P5は、境界線以外の路面と同様の色を有する部分である。
【0005】
破線P1を含む画像においてエッジ点を抽出すると、単位線分P3の長手方向に沿った端部上のエッジ点P7に加えて、欠落区間P5に面する端部上のエッジ点P9も抽出される。エッジ点P9の横方向(道路の走行方向に直交する方向)における位置は、エッジ点P7からずれている。
【0006】
破線P1について認識される境界線は、本来、エッジ点P7を通る線P11となるべきであるが、エッジ点P9が存在すると、破線について境界線を正確に認識することが困難となる。本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、破線を含む境界線を正確に認識できる境界線認識装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の境界線認識装置は、自車両の前方の道路を含む範囲の画像を取得する画像取得手段と、画像においてエッジ点を
水平ライン毎に抽出するエッジ点抽出手段と、エッジ点抽出手段で抽出した
水平ライン毎のエッジ点のうち、破線の欠落区間に面するエッジ点Aを検出するエッジ点A検出手段と、エッジ点抽出手段で抽出したエッジ点のうち、エッジ点Aの少なくとも一部を除いたエッジ点を用いて境界線を認識する境界線認識手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の境界線認識装置は、エッジ点抽出手段で抽出したエッジ点のうち、エッジ点Aの少なくとも一部(一部のエッジ点A又は全部のエッジ点A)を除いたエッジ点を用いて境界線を認識することにより、境界線を正確に認識できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
<第1の実施形態>
1.境界線認識装置1の構成
境界線認識装置1の構成を
図1、
図2に基づき説明する。境界線認識装置1は、車両に搭載され、車線の境界線(連続した白線、破線等)を認識する車載装置である。境界線認識装置1は、
図1に示すように、カメラ3、及び制御部5を備える。
【0011】
カメラ3は、
図2に示すように、境界線認識装置1を搭載する車両(以下、自車両とする)101の車室内のうち、フロントガラス103の上端付近に設置されている。カメラ3は、自車両101の前方の道路105を含む範囲の画像を撮影し、取得することができる。カメラ3は、撮影した画像のデータを制御部5に出力する。
【0012】
制御部5は、CPU、RAM、ROM等を備えた周知のコンピュータであり、カメラ3で撮影した画像を用いて、後述する処理を実行し、車線の境界線を認識する。制御部5は、認識した境界線の情報を、警報生成部106に出力する。
【0013】
なお、警報生成部106は、自車両101に搭載された車載装置であり、境界線認識装置1から入力した境界線の情報を用いて、各種処理を実行する。例えば、自車両101と境界線との距離、境界線の長手方向と自車両101の走行方向との角度、自車両101の速度等に基づき、自車両101が境界線から逸脱する危険の有無を判断する。逸脱する危険があると判断した場合は、自車両101のドライバに対し、音声出力、画像表示等から成る警報を行う。また、境界線からの逸脱を防止するための自動操舵を行う。
【0014】
カメラ3は画像取得手段の一例である。制御部5はエッジ点抽出手段、エッジ点A検出手段、エッジ点B検出手段、補間手段、及び境界線認識手段の一例である。
2.境界線認識装置1が実行する処理
境界線認識装置1が実行する処理を
図3〜
図6に基づき説明する。境界線認識装置1は、
図3のフローチャートに示す処理を、所定時間ごとに繰り返し実行し、境界線を認識する。
図3のステップ1では、カメラ3を用いて、自車両101の前方の道路を含む範囲の画像を取得する。
【0015】
ステップ2では、まず、前記ステップ1で取得した画像において、水平ライン(縦方向の座標値が全て等しい全ての画素)毎に、微分フィルタを使用して微分値を算出する。つまり、水平ラインを構成する複数の画素において、隣接する画素間における輝度値の変化率を算出する。次に、算出した微分値が、所定の閾値以上であるか否かを判定し、微分値が閾値以上であれば隣接する画素間で輝度値が大きく変化したものとして、その画素の座標値をエッジ点として抽出し、登録する。画像中の全ての画素について上記の処理を実行する。
【0016】
図4Aに、連続する(欠落区間がない)境界線107が画像中に存在する場合に抽出されたエッジ点109を示す。エッジ点109は、境界線107の端部107A上に抽出される。
【0017】
また、
図4Bに、破線113が画像中に存在する場合に抽出されたエッジ点115を示す。破線113は、単位線分114と、欠落区間117とから成る。単位線分114は、一定の幅と、長手方向における有限の長さとを有し、境界線以外の路面とは異なる色(例えば、白色、黄色等)を有する領域である。また、欠落区間117とは、境界線以外の路面と同様の色を有する部分である。破線113において、単位線分114と、欠落区間117とは、道路の走行方向に沿って、交互に並んでいる。
【0018】
エッジ点115は、単位線分114の外周の端部に沿って抽出される。エッジ点115は、2種類に分類できる。一つは、欠落区間117に面する端部120上のエッジ点115Aである。もう一つは、単位線分114の長手方向(
図4Bにおける上下方向であって、車線の走行方向)に沿った端部119上のエッジ点115Bである。
【0019】
なお、欠落区間117に面する端部120は、必ずしも、エッジ点の抽出に用いる水平ラインと平行ではなく、端部120と水平ラインとが交差することがある。この場合、この交差点で輝度値が大きく変化し、エッジ点115Aが抽出される。エッジ点115Aは、
図4Bに示すように、エッジ点115B上を通る曲線からは外れた位置に存在する。
【0020】
ステップ3では、画像中に破線が存在するか否かを判断する。具体的には、前記ステップ2で抽出したエッジ点の配列に、破線に特有のパターンがあれば、破線が存在すると判断し、そのパターンが無ければ、破線が存在しないと判断する。ここで、破線に特有のパターンとは、
図4Bに示すように、車線の走行方向に沿う曲線上で、エッジ点が小さい間隔で並んでいる区間(一つの単位線分114における端部119に相当する区間)と、所定の長さ以上にわたってエッジ点が存在しない区間(欠落区間117に相当する区間)とが交互に並んでいるパターンである。破線が存在する場合はステップ4に進み、破線が存在しない場合はステップ8に進む。
【0021】
ステップ4では、前記ステップ2で抽出したエッジ点のうち、上述した特有のパターンを構成するエッジ点を、エッジ点115Bとして検出する。
ステップ5では、前記ステップ2で抽出したエッジ点のうち、エッジ点115Aを検出する。具体的には、まず、エッジ点115Bが所定の長さ以上にわたって存在しないことを手がかりとして、欠落区間117の位置を特定する。次に、欠落区間117に面しているエッジ点を、エッジ点115Aとして検出する。
【0022】
ステップ6では、欠落区間117の両側に位置するエッジ点115Bの間を、仮想エッジ点により補間する処理を実行する。この処理を
図5、
図6に基づき説明する。
図5のステップ11では、まず、
図6に示すように、最も多くのエッジ点115Bを通る近似曲線121を作成する。
【0023】
ステップ12では、
図6に示すように、近似曲線121のうち、欠落区間117を通る部分上に、所定の間隔で仮想エッジ点123を作成する。
図3に戻り、ステップ7では、エッジ点115B及び仮想エッジ点123を用いて境界線を認識する。具体的には、エッジ点115B及び仮想エッジ点123をハフ変換し、最も多くのエッジ点115B及び仮想エッジ点123を通る線を、境界線として認識する。よって、本ステップ7では、前記ステップ2で抽出したエッジ点のうち、エッジ点115Aを除いたエッジ点を用いて境界線を認識する。
【0024】
一方、前記ステップ3で否定判断した場合はステップ8に進む。ステップ8では、前記ステップ2で抽出した全てのエッジ点を用いて境界線を認識する。すなわち、前記ステップ2で認識した全エッジ点をハフ変換し、最も多くのエッジ点を通る線を、境界線として認識する。
【0025】
3.境界線認識装置1が奏する効果
(1)境界線認識装置1は、破線である境界線を認識するとき、抽出したエッジ点のうち、エッジ点115Aを除いたエッジ点を用いて境界線を認識する。エッジ点115Aは、
図4Bに示すとおり、エッジ点115B上を通る曲線から外れた位置にあるので、仮に、エッジ点115Aを含むエッジ点を用いて境界線を認識すれば、その認識が不正確になってしまうおそれがあるが、上記のように、エッジ点115Aを除くことにより、境界線を正確に認識できる。
【0026】
(2)境界線認識装置1は、破線である境界線を認識するとき、欠落区間117の両側に位置するエッジ点115Bの間を、仮想エッジ点123により補間し、エッジ点115B及び仮想エッジ点123を用いて境界線を認識する。そのことにより、境界線を一層正確に認識できる。
【0027】
特に、自車両から遠く、エッジ点115Bの数が少ない場所や、道路がカーブしている場所においても、境界線を一層正確に認識できる。
<第2の実施形態>
1.境界線認識装置1の構成
本実施形態の境界線認識装置1は、前記第1の実施形態と同様の構成を有する。
【0028】
2.境界線認識装置1が実行する処理
本実施形態の境界線認識装置1は、基本的には、前記第1の実施形態と同様の処理を実行する。ただし、欠落区間補間処理(前記ステップ6参照)において相違する。以下では、この相違点を中心に
図7及び
図8を用いて説明する。境界線認識装置1は、
図7のフローチャートに示す欠落区間補間処理を実行する。
【0029】
図7のステップ21では、まず、
図8に示すように、前回認識された境界線と平行な曲線125により欠落区間117の両側に位置するエッジ点115Bの間を結ぶ。
ステップ22では、
図8に示すように、前回認識された境界線と平行な曲線125上に、所定の間隔で仮想エッジ点127を作成する。
【0030】
本実施形態では、欠落区間補間処理において、エッジ点115B及び仮想エッジ点127を用いて境界線を認識する。具体的には、エッジ点115B及び仮想エッジ点127をハフ変換し、最も多くのエッジ点115B及び仮想エッジ点127を通る線を、境界線として認識する。
【0031】
3.境界線認識装置1が奏する効果
(1)本実施形態の境界線認識装置1は、前記第1の実施形態と同様の効果を奏する。
(2)本実施形態の境界線認識装置1は、仮想エッジ点127を作成する処理において、前回認識された境界線と平行な曲線125を用いる。そのため、近似曲線121を作成する必要がない。その結果、制御部5の処理負担を軽減できる。
<第3の実施形態>
1.境界線認識装置1の構成
本実施形態の境界線認識装置1は、前記第1の実施形態と同様の構成を有する。
【0032】
2.境界線認識装置1が実行する処理
本実施形態の境界線認識装置1は、基本的には、前記第1の実施形態と同様の処理を実行する。ただし、本実施形態では、破線である境界線を認識するとき、仮想エッジ点123による補間を行わず、エッジ点115Bを用いて境界線を認識する。すなわち、エッジ点115Bをハフ変換し、最も多くのエッジ点115Bを通る線を、境界線として認識する。
【0033】
3.境界線認識装置1が奏する効果
(1)本実施形態の境界線認識装置1は、前記第1の実施形態と略同様の効果を奏する。
【0034】
(2)本実施形態の境界線認識装置1は、仮想エッジ点123を作成する処理を行わないので、制御部5の処理負担を軽減できる。
<その他の実施形態>
(1)前記第1〜第3の実施形態において、破線の境界線を認識するとき、エッジ点115Aの一部(例えば、エッジ点115Bに近いもの)を、境界線の認識に用いてもよい。
【0035】
(2)前記第2の実施形態において仮想エッジ点127の作成のために使用する平行な曲線125は、過去に認識された境界線であればよく、前回よりもさらに前に認識された境界線(例えば、n回前の処理で認識された境界線(nは2、3、4・・・))であってもよい。
【0036】
(3)前記第1〜第3の実施形態において、エッジ点に基づき境界線を認識する処理には、カルマンフィルタを用いてもよい。また、前記第1の実施形態において、近似曲線121を作成する処理には、カルマンフィルタを用いてもよい。
【0037】
(4)前記第1〜第3の実施形態において、各エッジ点の尤度(境界線らしさの確信度)を算出し、尤度が所定の閾値以上であるエッジ点を用いて境界線を認識してもよい。この場合、エッジ点115Aの尤度が低くなるようにして、境界線の認識にはエッジ点115Aが使用されないようにすることができる。
【0038】
(5)前記第1〜第3の実施形態における構成の全部又は一部を適宜組み合わせてもよい。