(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記装着部が、前記ラックの上下方向に沿って並べて設けられており、各前記装着部は、装着される前記医用機器の上部側に位置する上側壁と前記医用機器の下部側に位置する下側壁を有し、前記支持部は、前記上側壁から下方に突出されて前記医用機器の背面部側に着脱可能にはめ込まれる上部ポストと、前記下側壁から上方に突出されて前記上部ポストに対面しており前記医用機器の背面部側に着脱可能にはめ込まれる下部ポストとを有することを特徴とする請求項1に記載の医用機器のラック。
前記装着部は、前記医用機器の背面部側にかみ合うことで、前記医用機器を前記装着部に対して着脱可能に固定するロック機構部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の医用機器のラック。
前記装着部には、前記医用機器が前記装着部に装着されると、前記医用機器に設けられているアウトレット受け部に対して挿入されることで前記医用機器と前記ラックとの間の電気的接続を行うアウトレット端子が配置されており、前記医用機器の前記アウトレット受け部が前記支持部を中心として回動する方向に沿うようにして、前記アウトレット端子が前記装着部に配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の医用機器のラック。
前記アウトレット端子は、前記装着部において前記支持部を中心として回動する方向に配置する付勢部材を有し、前記医用機器が前記装着部に装着されると、前記アウトレット端子は、前記支持部を中心として回動する方向に前記付勢部材の力に抗して押されることで、前記アウトレット受け部にはめ込まれることを特徴とする請求項5に記載の医用機器のラック。
前記支持部は、前記医用機器をポールに装着するためのポールクランプに対して、着脱可能にはめ込まれることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の医用機器のラック。
前記医用機器は、本体ケースを有し、前記本体ケースの上部分には情報を表示する表示部と操作ボタンを有する操作パネル部が配置され、前記本体ケースの下部分には薬剤を送液する輸液チューブを装着するためのチューブ装着部と前記チューブ装着部を覆う開閉カバーが配置されている輸液ポンプであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の医用機器のラック。
前記医用機器は、本体ケースを有し、前記本体ケースの上部分には情報を表示する表示部と操作ボタンを有する操作パネル部が配置され、前記本体ケースの下部分には薬剤を送液するためのシリンジを装着するためのシリンジ装着部が配置されているシリンジポンプであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の医用機器のラック。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明の医用機器のラックの好ましい実施形態を示す正面図である。
図2は、
図1に示すラックを右斜め上から見た表側の斜視図である。
図3は、
図2のラックを左斜め上から見た表側の斜視図である。
【0016】
図1に示すように、ラック500は、垂直に立てたポール499に対して着脱可能に取り付けることができる。このポール499は、ベース体498に対して垂直(Z方向)に沿って立てて取り付けられており、ベース体498は、病室や治療室等の床面FWに置かれる。
図1に示す例では、1台のラック500がポール499に取り付けられているが、より長いポール499を選択することで、複数台のラック500、例えば3台のラック500をZ方向に積み重ねるようにして取り付けることもできる。
図1におけるX方向、Y方向、Z方向は互いに直交しており、Z方向は上下方向である。X方向は、水平方向であって、ラック500と輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001の左右方向である。X方向は、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001における薬剤の送液方向(T方向)でもある。Y方向は、ラック500と輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001の前後方向である。
図1に示すラック500は、3台の医用機器を搭載しており、
図1の例では、上から順に、2台の輸液ポンプ1と1台のシリンジポンプ1001を積み重ねるようにして着脱可能に装着している。なお、輸液ポンプ1とシリンジポンプ1001の構造例は、後で説明するが、輸液ポンプ1の本体ケース2の外形形状とシリンジポンプ1001の本体ケース1002の外形形状は、共通化されている。
【0017】
図1に示すラック500は、本体501と、上部の連結部502と、下部の連結部としての連結部受け部540と、ハンドル450と、複数のラック用のポールクランプ400を有している。ラック500の本体501は、複数のラック用のポールクランプ400を用いて、ポール499に対して着脱可能に固定されている。
図2と
図3に示すように、ラック500の本体501と上部の連結部502と下部の連結部受け部540は、好ましくは耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されており、仮に薬剤等がかかっても内部に侵入するのを防ぐことができる防沫処理構造を有している。ラック500の本体501は、フロントケース511とリアケース512を組み合わせることで構成されている。上部の連結部502は、このラック500の上部において、さらに別の同じ構造のラック500を積み上げて連結する際に用いられる部分である。あるいは上部の連結部502は、後で説明する通信ボックスを着脱可能に装着する際に用いられる。下部の連結部受け部540は、このラック500の下部において、さらに別の同じ構造のラック500の上部の連結部502を挿入することで連結するのに用いられる部分である。あるいは下部の連結部受け部540は、通信ボックスを着脱可能に装着する際に用いられる。金属製のU字型のハンドル450は、このラック500を運ぶ際に医療従事者が持つ部分である。このハンドル450は、上部の連結部502に上面に固定されている。
【0018】
図1から
図3に示すラック500の本体501は、上から順に第1装着部C1、第2装着部C2、そして第3装着部C3を有している。第1装着部C1と第2装着部C2と第3装着部C3は、
図1に示す装着例では、輸液ポンプ1、輸液ポンプ1、シリンジポンプ1001をそれぞれ着脱可能に装着している。第1装着部C1と第2装着部C2と第3装着部C3は、同じ構造を有していることから、輸液ポンプ1とシリンジポンプ1001のいずれも着脱可能に装着することができるようになっている。
図2と
図3に示すラック500では、本体501の上部の連結部502とハンドル450が露出されている。しかし、
図4から
図7に示すラック500では、通信ボックス520が本体501の上部の連結部502に対して、着脱可能に装着されている。
図4は、ラック500の本体501と、この本体501に装着された通信ボックス520を左斜めから見た表側の斜視図である。
図5は、ラック500の本体501と通信ボックス520を左斜めから見た裏側の斜視図である。
図6は、ラック500の本体501と通信ボックス520を右斜めから見た裏側の斜視図であり、
図7は、ラック500の本体501と通信ボックス520の裏側を示す斜視図である。
【0019】
図4から
図7に示すように、通信ボックス520は、例えば赤外線等を用いた光通信により、外部の装置、例えば外部のコンピュータ(外部の装置の一例)との間で、必要な情報のやり取りを行うために、ラック500に対して追加して装着される。
図4と
図5に示すように、通信ボックス520は、筐体521と、連結部522と、ポールクランプ400と、凹形状の連結部受け部523を有している。
図4に示す筐体521は、箱型であり、筐体521の上部には連結部522が設けられている。この連結部522は、上述した
図3に示す本体501の連結部502と同じ大きさと構造を有することで、形状の共通化を図っている。
図5に示す通信ボックス520のポールクランプ400は、連結部522の背面に設けられており、通信ボックス520のポールクランプ400は本体501側の2台のポールクランプ400と同じものである。通信ボックス520のポールクランプ400と本体501の上側のポールクランプ400とのZ方向についての間隔は、本体501の2台のポールクランプ400の間隔と同じに設定されている。これにより、本体501と通信ボックス520は、3台のポールクランプ400を用いて、
図1に示すポール499に対して均等間隔でロックして安定して固定することができる。
特に、通信ボックス520の重量が大きくても、通信ボックス420自体にもポールクランプ400が設けられているので、ポール499は、ラック500と、ラック500の上部とラック500の下部の少なくとも一方に装着された通信ボックス520とを、確実に安定して固定することができるメリットがある。通信ボックス420が、ラック500の上部とラック500の下部の少なくとも一方に装着されると、通信ボックス420は、ラック500を通じて、第1装着部C1から第3装着部C3に装着されている2台の輸液ポンプ1と1台のシリンジポンプ1001との間で、電気的に接続される。このため、2台の輸液ポンプ1と1台のシリンジポンプ1001は、外部のコンピュータに対して、通信ボックス420を通じて、必要な情報のやり取りを行うことができる。なお、ポールクランプ400の構造は、後で説明する。
【0020】
図5と
図6に示すように、ラック500の上部の連結部502とハンドル450が、通信ボックス520の連結部受け部523内に、Y1方向(前後方向の向こう側)にスライドして差し込まれている。このため、通信ボックス520は、上部の連結部502とハンドル450を用いて、ラック500の本体501に対して、機械的にしかも電気的に接続して固定されている。これにより、
図5に示す通信ボックス520は、ラック500の本体501の第1装着部C1のさらに上部において、Y1方向に差し込むことで取り付けることができる。また、通信ボックス520は、逆に連結部502に対してY2方向(前後方向の手前側)にスライドすることで、ラック500の上部の連結部502とハンドル450から取り外すことができる。
通信ボックス520の連結部522は、
図4に示すように、通信用のコネクタ522Cを有している。
図4に示すように通信ボックス520の筐体521の前面525には、表示部526が設けられている。この表示部526は、例えば電源スイッチ526A、電源プラグ挿入ランプ526B、商用交流電源もしくはバッテリ電源を示すランプ526C、通信レベルを示すランプ群526D等を有している。
【0021】
ここで、
図2と
図3を参照して、ラック500の本体501の第1装着部C1と第2装着部C2と第3装着部C3の構造例を説明する。
図2と
図3に示す第1装着部C1と第2装着部C2と第3装着部C3の構造は、実質的には同じであるので、第1装着部C1を代表して以下に説明することにして、第1装着部C1と第2装着部C2と第3装着部C3の同様の箇所には同じ符号を記す。
図2と
図3に示すように、第1装着部C1は、電源接続用のアウトレット端子530と、ロック機構部531と、IrDA532と、プッシャー533と、トレイ534と、支持部535と、操作レバー536と、インジケータ537を有している。
図2に示す支持部535は、同一軸上において対向し、同一の外径,長さ,材質のポスト535Aと下部ポスト535Bを有している。上部ポスト535Aは、第1装着部C1の上側壁CW1においてZ1方向に向けて下向きに固定され、下部ポスト535Bは、第1装着部C1の下側壁CV1においてZ2方向に向けて上向きに固定されている。これらの上部ポスト535Aと下部ポスト535Bは、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001のポンプ用のポールクランプ(後で説明する。)に対して着脱可能に取り付けることができる。上部ポスト535Aと下部ポスト535Bを通る回転中心軸CLは、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001を回転操作しながら第1装着部C1に取り付ける場合に、回転支持中心になる。
【0022】
図3に示すように、操作レバー536は、
図3に示すようにフロントケース511の左側面部において、医療従事者により手動でRL方向(手前方向)に回転操作できるように取り付けられている。インジケータ537は、フロントケース511の左側面部において、操作レバー536の前側の位置に設けられている。このインジケータ537の構造と機能は後で説明するが、インジケータ537は、例えば青色の表示と赤色の表示を用いることで、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001が第1装着部C1に対して確実に
図2に示すロック機構部531によりロックして本固定されているか、あるいは輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001が第1装着部C1に対してまだ仮ロック状態であるかを、医療従事者に対して表示する役割を有している。上述したのは、第1装着部C1の構造であるが、第2装着部C2と第3装着部C3も同様の構造を有している。
【0023】
図2と
図3に示す上部の連結部502は、AC電源供給用のインレットボックス502Cを有している。
図7に示すように、ラック500の本体501の下部には、別のラック500の上部の連結部502を挿入することで受けるための連結部受け部540が設けられている。この連結部受け部540は、通信ボックス520の凹型形状の連結部受け部523と同じ凹型形状を有している。連結部受け部540は、図示しないが、
図7に示すラック500に下側に、別のラック500の上部の連結部502を電気的に機械的に連結するのに用いられる。あるいは連結部受け部540は、
図7に示す通信ボックス520と同じ形状の別の通信ボックス520の凸型形状の連結部522を電気的に機械的に連結するのに用いられる。
【0024】
ここで、
図1に例示する輸液ポンプ1の構造例を
図8を参照して説明し、そしてシリンジポンプ1001の構造例を、
図9を参照して説明する。
まず、
図8(A)と
図8(B)を参照して、輸液ポンプ1の構造例を説明する。
図8(A)は、本発明の輸液ポンプの好ましい実施形態を示す外観斜視図である。
図8(B)は、
図8(A)に示す輸液ポンプ1をW方向から見た正面図である。
図8(A)と
図8(B)に示す輸液ポンプ1は、ラック500と通信ボックス520を用いて、外部のコンピュータに対して、院内無線または有線LANなどの通信ネットワークで輸液ポンプ1の動作情報,薬剤情報等の情報の交換が可能である。輸液ポンプ1は、例えば集中治療室(ICU、CCU,NICU)等で使用され、患者に対して、例えば抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等の薬剤の注入処置を、高い精度で比較的長時間行うことに用いられる注入ポンプである。この輸液ポンプ1は、
図4に示すラック500と通信ボックス520を用いて、例えば薬剤ライブラリから使用する薬剤情報を選択して得ることで、その選択した薬剤を送液することができる。この薬剤ライブラリは、薬剤ライブラリデータベース(DB)において、予め登録された薬剤名を含む薬剤の投与設定群である薬剤情報である。医療従事者は、この薬剤ライブラリを用いることにより、複雑な投与設定をその都度行わなくても良く、薬剤の選択および薬剤の設定が図れる。
【0025】
図8(B)に示すように、輸液ポンプ1は、薬剤171を充填した薬剤バッグ170から、クレンメ179と輸液チューブ200の上流側200Aと下流側200B、そして留置針172を介して、患者Pに対して正確に送液することができる。輸液ポンプ1は、本体ケース2と取手2Tを有している。この本体ケース2は、耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されており、仮に薬剤等がかかっても輸液ポンプ1の内部に侵入するのを防ぐことができる防沫処理構造を有している。このように、本体ケース2が防沫処理構造を有しているのは、例えば上方に配置されている薬剤バッグ170内の薬剤171がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液等が飛散して付着することがあるためである。
【0026】
輸液ポンプ1の本体ケース2に配置された要素について説明する。
図8(A)と
図8(B)に示すように、本体ケース2の上部分2Aには、表示部3と、操作パネル部4が配置されている。表示部3は、画像表示装置であり例えばカラー液晶,有機ELで形成された表示装置を用いている。表示部3は、本体ケース2の上部分2Aの左上位置であって、開閉カバー5の上側に配置されている。本体ケース2の上部分2Aは、本体ケース2の上半分の部分である。本体ケース2の下部分2Bは、本体ケース2の下半分の部分である。
図8(B)では、表示部3には、一例として薬剤投与の予定量(mL)の表示欄3B、薬剤投与の積算量(mL)の表示欄3C、充電履歴の表示欄3D、流量(mL)の表示欄3E等が表示されている。表示部3は、この他に警告メッセージを表示することもできる。
図8(A)に示すように、操作パネル部4は、本体ケース2の上部分2Aにおいて表示部3の右側に配置され、操作パネル部4には、例えばパイロットランプ4A、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4E等が配置されている。電源スイッチボタンは操作パネル部4とは別の位置に配置されている。
【0027】
図8(A)に示すように、本体ケース2の下部分2Bには、蓋部材としての開閉カバー5が回転軸5Aを中心として、CS方向に開き、CR方向に閉じることが可能である。この開閉カバー5は、閉じることにより下部分2Bのチューブ装着部50と輸液チューブ200を覆うことができ、開けることでチューブ装着部50と輸液チューブ200を露出することができる。
図8(B)に示す下部分2Bのチューブ装着部50には、例えば軟質塩化ビニル等の可撓性の熱可塑性樹脂製の輸液チューブ200が着脱可能に装着できる。この開閉カバー5がCR方向に回転してチューブ装着部50を閉じることで、開閉カバー5は、輸液チューブ200をチューブ装着部50においてX方向に沿って、横方向、特に好ましくはX方向に沿って水平に保持する。
【0028】
図8(B)に示すように、開閉カバー5の表面には、好ましくは必要に応じて、輸液チューブ200をセットする際に、正しい送液方向であるT方向を明確に表示するための輸液チューブ設定方向表示部150が設けられている。輸液チューブ設定方向表示部150は、薬剤バッグ側を表示する薬剤バッグ表示部151と、患者側を表示する患者側表示部152と、薬剤の送液方向を明示する送液方向表示部153を有する。
図8(B)に示すように、薬剤バッグ表示部151は、輸液チューブ200の薬剤バッグ170側が開閉カバー5において向かって右側部分にくることを目視で確認するために配置され、患者側表示部152は、輸液チューブ200の患者P側が開閉カバー5において向かって左側部分に位置されることを目視で確認するために配置されている。そして、送液方向表示部153は、開閉カバー5の内側にセットされた輸液チューブ200による薬剤171の正しい送液方向のT方向を明示するために配置されている。
【0029】
図8(A)と
図8(B)に示すように、チューブ装着部50は、輸液ポンプ1の本体ケース2の下部分2B側に設けられており、チューブ装着部50は、表示部3と操作パネル部4の下部においてX方向に沿って設けられている。使用者である医療従事者は、本体ケース2の上部分2Aの表示部3の情報を確認しながら、チューブ装着部50への輸液チューブ200の装着を行って、開閉カバー5を閉じることができる。そして、医療従事者は、本体ケース2の上部分2Aの表示部3の情報を確認しながら、操作パネル部4の操作ボタンを操作できる。
【0030】
次に、
図9を参照して、シリンジポンプ1001の構造例を説明する。
図9は、
図1に示すシリンジポンプ1001の構造例を示す斜視図である。
このシリンジポンプ1001は、輸液ポンプ1と同様に、ラック500と通信ボックス520を用いて、外部のコンピュータに対して、情報の交換が可能である。シリンジポンプ1001は、例えば集中治療室(ICU、CCU,NICU)等で使用され、患者に対して、例えば抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等の薬剤の注入処置を、高い精度で比較的長時間行うことに用いられる注入ポンプである。このシリンジポンプ1001は、
図4に示すラック500と通信ボックス520を用いて、例えば薬剤ライブラリから使用する薬剤情報を選択して得ることで、その選択した薬剤を送液することができる。この薬剤ライブラリは、薬剤ライブラリデータベース(DB)において、予め登録された薬剤名を含む薬剤の投与設定群である薬剤情報である。医療従事者は、この薬剤ライブラリを用いることにより、複雑な投与設定をその都度行わなくても良く、薬剤の選択および薬剤の設定が図れる。
図9に示すように、シリンジポンプ1001は、例えば薬剤を充填したシリンジ1200のシリンジ本体1201を、クランプ1005を用いて動かないようにセットすることができる。モータMが、シリンジ押子駆動部1007の駆動軸を回転することで、シリンジ押子駆動部1007のスライダ1010は、シリンジ1200のシリンジ押子1202をT方向に押圧して、シリンジ本体1201内の薬剤を、チューブ1203と留置針1204を介して、患者Pに対して正確に送液する。シリンジポンプ1001は、本体ケース1002を有し、この本体ケース1002は耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されていることにより、液密性能を有する箱体として構成されている。これにより、後で説明するように、仮に薬剤や水分等がかかってもシリンジポンプ1の内部に侵入するのを防ぐことができる防沫および防滴(防水)処理構造を有している。
【0031】
図9に示すように、シリンジポンプ1は、本体ケース1002と取手1002Tを有している。本体ケース2の上部分1002Aには、表示部1003と、操作パネル部1004が配置されている。本体ケース1002の下部分1002Bには、シリンジ設定部1006と、モータMとシリンジ押子駆動部1007が配置されている。これにより、医療従事者は、本体ケース1002の上部分1002Aの表示部1003にカラー表示される情報内容を目視で確認しながら、シリンジ1200からの薬剤の送液作業を行うことができる。そして、医療従事者は、本体ケース1002の表示部1003にカラー表示される情報内容を確認しながら、操作パネル部1004の操作ボタンを操作することができる。
図9に示すように、表示部1003は、カラーグラフィック表示することができるカラー液晶表示装置(LCD)や有機ELである。この表示部1003は、本体ケース2の上部分2Aの左上位置であって、シリンジ設定部1006とシリンジ押子駆動部1007の上側に配置されている。操作パネル部1004は、本体ケース1002の上部分1002Aにおいて表示部1003の右側に配置され、操作パネル部1004には、操作ボタンとしては、図示例では、パイロットランプ4A、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4E等が配置されている。
【0032】
図9に示す本体ケース1002の上部分1002Aは、本体ケース1002の上半分の部分である。本体ケース1002の下部分1002Bは、本体ケース2の下半分の部分である。シリンジ設定部1006とシリンジ押子駆動部1007は、X方向に沿って並べて配置されている。シリンジ設定部1006は、複数種類の収容量の異なるシリンジの中から必要とする収容量のシリンジ1200を選択して着脱可能にはめ込んで装着することができる。
シリンジ設定部1006は、シリンジ本体1201を収容する収容部1008と、クランプ5と、シリンジ1200の本体フランジ1209をはめ込んで把持するための本体フランジ把持部1500を有している。収容部1008は、凹型のシリンジ本体保持部1008Dを有している。収容部1008の左側の端部の壁部分には、チューブ1203を着脱可能に挟み込むためのチューブ固定部1009が形成されている。このチューブ固定部1009は、
図2に示すようにチューブ203の一部を挟み込んで固定する溝部分である。
【0033】
図9において、医療従事者が、クランプ1005を操作してシリンジ1200をシリンジ設定部1006から取り外す際には、例えばクランプ1005を図示しないスプリングの力に抗してY2方向(手前方向)に引っ張って、しかもR1方向に90度回すことで、クランプ1005はシリンジ本体1201の外周面から離れる。これにより、シリンジ本体1201は、クランプ1005による固定を解除して、収容部1008のシリンジ本体保持部1008Dから取り出すとともに、チューブ1203はチューブ固定部1009内から取り外すことができる。また、このクランプ1005を操作してシリンジ1200をシリンジ設定部1006の収容部1008に取り付ける際には、クランプ1005を図示しないスプリングの力に抗してY2方向に引っ張ってR2方向に90度回して、スプリングの力によりY1方向に戻すことで、シリンジ本体1201は、収容部1008のシリンジ本体保持部1008D内に収容するとともに、チューブ1203をチューブ固定部1009内にはめ込んだ状態で、クランプ1005により固定することができる。
【0034】
図9に示すように、シリンジ本体1201が収容部1008のシリンジ本体保持部1008D内に収容して装着されると、シリンジ押子1202がシリンジ押子駆動部1007内に配置される。このシリンジ押子駆動部1007は、スライダ1010を有している。制御部からの指令によりモータMが駆動すると、このスライダ1010は、シリンジ押子1202の押子フランジ1205を、シリンジ本体1201に対して相対的にT方向に沿って少しずつ押す。これにより、シリンジ本体1201内の薬剤は、チューブ1203と留置針1204を通じて、患者Pに対して高い精度で比較的長時間かけて送液することができる。
【0035】
次に、医療従事者が、
図8に示す輸液ポンプ1あるいは
図9に示すシリンジポンプ1001を、例えば
図1に示す装着例のように、
図2と
図3に示す第1装着部C1、第2装着部C2、そして第3装着部C3に対して着脱可能に装着するための構造について説明する。
図10(A)は、
図2に示す第1装着部C1、第2装着部C2、そして第3装着部C3の内の第1装着部C1を、第1装着部C1、第2装着部C2、第3装着部C3の中から代表して示す斜視図であり、
図10(B)は、
図10(A)に示す第1装着部C1を正面側から見た斜視図である。
図11は、
図10(A)において第1装着部C1をCN方向から見た斜視図である。
図8に示す輸液ポンプ1の本体ケース2と
図9に示すシリンジポンプ1001の本体ケース1002は、一部分を除いて共通の外型形状を有していることで共通化を図っている。これにより、輸液ポンプ1とシリンジポンプ1001は、ラック500の第1装着部C1、第2装着部C2、そして第3装着部C3のいずれに対しても、共通して装着できるようになっている。
【0036】
図10(A)と
図10(B)に示す第1装着部C1は、電源接続用のアウトレット端子530と、ロック機構部531と、IrDA532と、プッシャー533と、支持突起部としてのトレイ534と、支持部535と、操作レバー536と、インジケータ537(
図11を参照)を有している。
図10(A)と
図10(B)を参照して、第1装着部C1についてさらに説明する。ただし、
図2に示す第2装着部C2と第3装着部C3の構造は、第1装着部C1の構造と同様である。
図12は、
図11に示す電源接続用のアウトレット端子530の付近の構造例を、UB方向から見た斜視図である。
図12に示すように、電源接続用のアウトレット端子530は、取り付け基部551に収容して保持されている。バネ552は、取付け基部551内に配置され、アウトレット端子530の後端部530Kと、取付け基部551との間に取り付けられている。
【0037】
この取付け基部551は、第1装着部C1の前面部550に埋め込まれて固定されている。電源接続用のアウトレット端子530は、このバネ552の力により、ラック500のY2方向(前後方向)に対して、予め定めた傾斜角度θ、例えば5度の角度でCLC方向に突出して設けられている。すなわち、ラック500のY2方向は、第1装着部C1の前面部550に対しては垂直方向であるが、電源接続用のアウトレット端子530は、第1装着部C1の前面部550から、CLC方向に沿って斜め方向に突出して設けられている。電源接続用のアウトレット端子530は、バネ552の力に抗してCLC方向に沿って押されることにより、取付け基部551内において後側に後退させることができる。これにより、電源接続用のアウトレット端子530は、後で説明する輸液ポンプ1のアウトレット端子受け部あるいはシリンジポンプ1001のアウトレット端子受け部に対して、確実にしかもスムーズに着脱可能に接続することができる構造になっている。
【0038】
図11と
図12に示す第1装着部C1の前面部550は、
図10(A)に示す第1装着部C1の上側壁CW1と下側壁CV1の間に形成されている。
図10(A)に示すように、前面部550は、平坦部分555と凸部分556aと凹部分556bを有している。平坦部分555は左側に位置し、凸部分556aと凹部分556bは右側に位置している。前面部550の平坦部分555と凸部分556aと凹部分556bは、
図8に示す輸液ポンプ1の背面部側の凹凸形状と、
図9に示すシリンジポンプ1001の背面部側の凹凸形状に合わせた形状になっている。
【0039】
図10(A)と
図10(B)に示すように、電源接続用のアウトレット端子530とロック機構部531とプッシャー533と支持部535の上部ポスト535Aと位置決め用の突き当て部557とストッパ558は、上側壁CW1に配置されている。IrDA532は、平坦部分555であって、アウトレット端子530の下部の位置に配置されている。支持部535の下部ポスト535Bは、下側壁CV1に配置されている。支持部535の上部ポスト535Aと下部ポスト535Bは、
図10に示すように、第1装着部C1の最も右側の位置に配置され、プッシャー533とストッパ558は、第1装着部C1の最も左側の位置に配置されている。
図10に示すように、トレイ534は、Y2方向(手前側)に水平に突き出すようにして形成されている板状の支持突起部である。このトレイ534は、
図8の輸液ポンプ1あるいは
図9のシリンジポンプ1001を第1装着部C1に対して装着する時と、取り外す時に、輸液ポンプ1の下部あるいはシリンジポンプ1001の下部を支えて、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001が第1装着部C1から脱落しないようにする役割を果たす。これにより、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001が、装着時あるいは取り外し時にラック500から落下するのを防ぐことができ、安全性を確保できる。
図11に示す位置決め用の突き当て部557は、
図8の輸液ポンプ1あるいは
図9のシリンジポンプ1001を第1装着部C1に対して装着して本固定した時に、輸液ポンプ1の背面あるいは
図9のシリンジポンプ1001の背面部に突き当たることで、予め定めた正確な姿勢で第1装着部C1に装着できる機能を有する。
図11に示すストッパ558は、操作レバー536をRL方向へ回転操作する際に操作レバー536の回転角度を規制する。
【0040】
図12に示すロック機構部531は、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001をクランプするためのポンプ用のポールクランプ(後で説明する。)に対して、着脱可能にロックするようになっている。IrDA532は、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001の背面側にあるIrDA(図示せず)との間で、光無線データ通信を行うことで、情報のやり取りを行う。
図11と
図12に示すプッシャー533は、医療従事者が操作レバー536を
図11に示すRL方向に回転操作すると、
図14に示す収納された状態からY2方向に所定ストロークSTCだけ突出する。このプッシャー533が突出すると、このプッシャー533は装着済みの輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001の背面部側を押し出すことができる。これにより、プッシャー533の突出動作は、第1装着部C1から輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001を取り外す作業を容易にする。
【0041】
図13(A)は、操作レバー536とロック機構部531とを連動させるための第1動作機構部560の構造例を示している。
図13(B)は、操作レバー536とプッシャー533とを連動させるための第2動作機構部559の構造例を示している。
図14(A)は,プッシャー533が収容部533N内に収容されている状態を示している。
図14(B)は、プッシャー533が収容部533Nから所定ストロークSTCだけ突出している状態を示している。
図13(A)に示す第1動作機構部560は、医療従事者が操作レバー536を、回転中心軸SQを中心としてRL方向に回転することで、ロック機構部531の第2爪部562をDF方向に持ち上げる機能を有する。第1爪部561は、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)をラック500側に仮固定するための仮固定部材であり、第2爪部562は、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)をラック500側に本固定するための主固定部材である。仮固定はプレロックともいい、本固定はオンロックともいう。
【0042】
図13(A)に示すように、操作レバー536の軸部563は、フレーム565に取り付けられてRL方向に回転操作できる。この軸部563には、第1カム564が取り付けられている。フレーム565には、第2カム566と第3カム567が取り付けられている第1カム564と第2カム566と第3カム567は順に当接している。第3カム567は、ロック機構部531の第2爪部562に連結軸を用いて連結されているので、第3カム567と第2爪部562は、回転中心軸SHを中心にして一体的に回転することができる。
これにより、医療従事者が操作レバー536をRL方向に、所定角度θ1、例えば10度回転操作すると、第1カム564がSJ方向に回転するので、第2カム566はSG方向に回転して押し上げられる。この第2カム566が押し上げられると、第3カム567はSV方向に押し上げられる。この結果、第2爪部562は、DF方向に持ち上げることができる。第2爪部562をDF方向に持ち上げることで、本固定用の第2爪部56は、輸液ポンプ1の背面部側に対する係合状態、あるいはシリンジポンプ1001の背面部側に対する係合状態を、確実に解除することができる。しかし、第2爪部56による本固定を解除しても、第1爪部561の係合は解除していない。
【0043】
次に、
図13(B)に示す第2動作機構部559は、医療従事者が操作レバー536を、回転中心軸SQを中心として、所定の回転角度θ2、例えば30度、RL方向に回転することで、プッシャー533をY2方向に所定のストロークSTC分だけ押し出す機能を有する。操作レバー536の軸部563は、フレーム569Fに取り付けられ、リンク部材568を固定している。このリンク材568は、操作部材569の下端部569Aにピン568Pを用いて連結されている。操作部材569の上端部569Bは、プッシャー533の後端部533Bに当接されている。操作部材569は、ピン569Pを用いてフレーム569Fにおいて回転可能である。
これにより、医療従事者が
図13(B)に示す操作レバー536をRL方向に回転操作すると、リンク部材568がRL1方向に回転するので、別の操作部材569はRL2方向に持ち上がる。したがって、医療従事者が操作レバー536を所定角度θ2だけRL方向に回転操作することで、
図14(A)から
図14(B)に示すように、プッシャー533の先端部533Aは、Y2方向に所定のストロークSTCだけ突出するようになっている。このプッシャー533の先端部533Aが、Y2方向に所定のストロークSTCだけ突出する。このため、例えば
図11の第1装着部C1に装着されている輸液ポンプ1の背面部あるいはシリンジポンプ1001の背面部を、Y2方向(前方向)に押し出すことで、医療従事者が、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001を第1装着部C1から取り外す際の作業を容易に行うことができる。
【0044】
以上説明したように、
図13において、ロック機構部531の本固定用の第2爪部562は、操作レバー536を所定角度θ1だけRL方向に回転操作することで、DF方向に持ち上げて、第2爪部56は輸液ポンプ1の背面部に対する係合状態あるいはシリンジポンプ1001の背面部に対する係合状態を、確実に解除することができる。しかも、第2爪部56による本固定を解除しても、第1爪部561による輸液ポンプ1の仮固定は解除していない状態ではあるが、医療従事者が操作レバー536を所定角度θ2だけRL方向に回転操作することで、例えば
図11の第1装着部C1に装着されている輸液ポンプ1の背面部あるいはシリンジポンプ1001の背面部を、Y2方向に強制的に押し出すことで、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001の第1爪部561による仮固定を解除できるので、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001の取り外しが容易に行える。
【0045】
次に、
図15(A)と
図15(B)は、
図8に示す輸液ポンプ1の背面部側を示している。
図9に示すシリンジポンプ1001の背面部側の形状もほぼ同じであるので、輸液ポンプ1の背面側の構造を代表して説明する。
図15(A)と
図15(B)に示すように、輸液ポンプ1の背面部側には、ポンプ用のポールクランプ600と、アウトレット端子穴部570を有している。アウトレット端子穴部570は、
図10に示す電源接続用のアウトレット端子530を着脱可能に挿入することで、アウトレット端子穴部570とアウトレット端子530とを、電気的にしかも機械的に接続するために設けられている。
ポンプ用のポールクランプ600は、輸液ポンプ1の背面部に予め設けられている取付け部599を用いて、着脱可能に装着されている。このポールクランプ600は、
図1に示す輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001を、
図1に示すラック500を用いないで、直接別のポンプ取付け用のポール1499に対して着脱可能に固定する場合に用いられる。
【0046】
図15に示すポンプ用のポールクランプ600の構造は、
図1に示すラック500用のポールクランプ400の構造とは異なる。ポンプ用のポールクランプ600は、プラスチックの基部601と、金属製の取り付け用の固定具602と、金属製の取付け用の移動具603と、操作部604を有している。
基部601は、輸液ポンプ1の背面部にある取付け部599に対してはめ込むことで装着することができる。固定具602は、基部601に対して固定されている。固定具602は、第1突出部分602Aと、第1突出部分602Aに間隔をおいて対向して配置されている第2突出部分602Bを有している。第1突出部分602Aには、操作部604の一部が固定されており、操作部604は、回転部605と、移動部材606を有している。移動部材606の先端部には、移動具603が固定されている。操作部604は、X方向に沿って配置されており、医療従事者が回転部605を回転することにより、移動部材606の移動具603を、X方向に沿って進めて、移動具603と第2突出部分60Bの間にポール1499を挟み込むことで、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001を着脱可能に保持できる。
【0047】
図15に示すように、第1突出部分602Aには、第1挿入用穴部611と第2挿入用穴部612が設けられている。第1挿入用穴部611と第2挿入用穴部612は、X2方向に開いた開口部分611A,612Aをそれぞれ有している。これらの開口部分611Aと開口部分612Aは、上部ポスト535Aと下部ポスト535Bを、側方から第1挿入用穴部611と第2挿入用穴部612内にそれぞれ確実にしかも容易に挿入させるために形成されている。
第1挿入用穴部611は第1突出部分602Aの上面側に形成され、第2挿入用穴部612は第1突出部分602Aの下面側に形成されており、第1挿入用穴部611と第2挿入用穴部612は中心軸MNに沿っている。第1挿入用穴部611は、
図15と
図10に示す支持部535の上部ポスト535Aを着脱可能に挿入する。同様にして、第2挿入用穴部612は、
図15と
図10に示す支持部535の下部ポスト535Bを着脱可能に挿入する。すなわち、
図10に示す回転中心軸CLは、
図15に示す中心軸MNに一致することになる。
【0048】
一方、第2突出部分602Bの上面側には、係合部620が設けられている。この係合部620は、
図14に示すロック機構部531の第1爪部561と第2爪部562をそれぞれ別々に係合する役割を有している。係合部620は、第1段部621と、第2段部622と、凹部623を有している。
凹部623はZ1方向(下方向)に窪むように形成された部分であり、この凹部623の端部には、第1段部621と第2段部622がZ2方向に突き出るように形成されている。第1段部621は第2段部622に隣接して形成されているが、第1段部621は第2段部622よりも、よりY1方向(後ろ方向)にずれた位置に形成されている。つまり、第1段部621は、Y1方向よりに形成され、第2段部622は、Y2方向よりに形成されている。
図16(B)に示すように、第1段部621が凹部623からのZ2方向に形成されている形成高さHK1は、第2段部622が凹部623から形成されているZ2方向の形成高さHK2に比べて、小さく設定されている。これにより、第1爪部561が第1段部621に係合している仮固定状態は、第2爪部562が第2段部622に係合している本固定状態に比べて、容易に解除できるようになっている。
【0049】
図16および
図17は、
図14に示すロック機構部531の第1爪部561と第2爪部562が、第2突出部分602Bの第1段部621と第2段部622に対してそれぞれかみ合う様子を示している。
図16(A)は、第1爪部561と第2爪部562が、第1段部621と第2段部622にそれぞれかみ合う前の状態を示す斜視図である。
図16(B)は、第1爪部561だけが、第1段部621に対して係合されているが、第2爪部562が第2段部622には係合されてはいないことにより、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)が、第1装着部C1側に仮固定された状態を示している。
図17は、第2爪部562だけが、第2段部622に係合された本固定状態を示している。つまり、第1爪部561は、第1段部621から離れていて係合されてはいないことにより、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)が、第1装着部C1側に本固定された状態を示している。
【0050】
図16(A)と
図17に示すように、第1爪部561はL字型の先端部561Fを有し、第2爪部562はL字型の先端部562Fを有している。
図16(A)に示すように、医療従事者が
図15に示すポールクランプ600を有する輸液ポンプ1を持った状態で、回転中心軸CLを中心としてSS方向に回すようにして輸液ポンプ1をラック500の第1装着部C1に対して装着する場合に、
図16(A)に示すように第1爪部561の先端部561Fは、第1段部621に向かって、
図16(B)に示すように第1段部621に対して先にかみ合う。これにより、輸液ポンプ1は、第1爪部561の先端部561Fと第1段部621とのかみ合いにより、第1装着部C1側に仮固定できる。
ただし、第1爪部561のL字型の先端部561Fの形状は、
図16(B)に示すように、90度を超えた形成角度Fθになっており、しかも第1段部621は、Y1寄りに傾斜して形成されている。このため、
図16(B)に示すように、輸液ポンプ1が第1装着部C1に対して仮固定された状態であると、医療従事者が輸液ポンプ1とともにポールクランプ600をSS1方向に引くと、第1爪部561の先端部561Fは第1段部621から容易に持ち上がって外れる。このため、輸液ポンプ1はSS1方向に容易にしかもスムーズに取り出すことができる。
【0051】
さらに、
図16(B)に示すように、医療従事者が
図15に示す輸液ポンプ1を持った状態で、回転中心軸CLを中心としてSS方向に、さらに回すと、
図17に示すように、第2爪部562が、第2段部622にかみ合う。これにより、輸液ポンプ1は、第2爪部562の先端部562Fと第2段部622とのかみ合い状態により本固定できるようになっている。
ただし、第2爪部562の先端部562Fと第2段部622は、輸液ポンプ1とともにポールクランプ600をSS1方向に引いても、第2爪部562の先端部562Fは第2段部622から持ち上がらないような形状になっている。つまり、先端部562Fは、90度未満の形成角度Gθになっており、しかも第2段部622は、Z2方向に向けて垂直に形成されている。このため、第2爪部562の先端部562Fは第2段部622からは容易に外れないようになっており、輸液ポンプ1が本固定された状態であると、輸液ポンプ1はSS1方向に取り外すことができないようになっている。
【0052】
次に、
図18は、輸液ポンプ1を、支持部535を中心としてSS方向に回動することで、輸液ポンプ1をラック500の第1装着部C1に対して装着する様子を示している。ただし、シリンジポンプ1001は、輸液ポンプ1と同様にラック500の第1装着部500に対して装着することができる。
図18(A)に示すように、医療従事者は、輸液ポンプ1の右側を右手で支えるとともに輸液ポンプ1の左側を左手で支え、輸液ポンプ1側の第1挿入用穴部611には、上部ポスト535Aをはめ込み、輸液ポンプ1側の第2挿入用穴部612には、下部ポスト535Bをはめ込む。この状態では、輸液ポンプ1のアウトレット端子穴部570は、電源接続用のアウトレット端子530に対面している。
【0053】
このように、輸液ポンプ1のアウトレット端子穴部570は、第1装着部C1側のアウトレット端子530に対面しているのは、
図12に示すように、アウトレット端子530が、このバネ552の力により、ラック500のY2方向に対して、予め定めた傾斜角度θで、CLC方向に突出して設けられているからである。CLC方向は、輸液ポンプ1のアウトレット端子穴部570が回転中心軸CLを中心として回動する方向である。
これにより、輸液ポンプ1を第1装着部C1に対して装着しようとする際には、輸液ポンプ1のアウトレット端子穴部570は、第1装着部C1側のアウトレット端子530に対して正対することができ、
図18(A)から
図18(B)に示すように、輸液ポンプ1を、回転中心軸CLを中心として、SS方向に回転するだけで、輸液ポンプ1のアウトレット端子穴部570には、第1装着部C1側のアウトレット端子530を確実にしかもスムーズにはめ込んで電気的に接続できる。
【0054】
図19は、インジケータ537の動作機構部640を示している斜視図である。
図19に示すインジケータ537の動作機構部640は、ラック500の第1装着部C1の内部に配置されており、スライド板641と、リンク部材642と、連結部材643を有している。主固定部材である第2爪部562が、DF方向に持ち上がると、リンク642がDH方向に回転して、連結部材643が中心軸CLRを中心にしてDU方向に回転する。これにより、スライド板641はY2方向に所定ストローク分スライドするようになっている。
図17に示すように、主固定部材である第2爪部562が、第2段部622にかみ合っている本固定状態であると、第2爪部562はDF方向には持ち上がっておらず、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)はラック500側に本固定されている。この場合には、本固定されている旨を示すため、インジケータ537の窓部650には、スライド板641の青色領域641Bが表示される。このため、医療従事者は、この青色領域641Bを見ることで、輸液ポンプ1が第1装着部C1において安全に本固定されていることを目視で確認できる。なお、ラック500には輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)が未装着である場合にも、インジケータ537の窓部650には、未装着である旨を示すため、スライド板641の青色領域641Bが表示される。これにより、輸液ポンプ1が未装着であることを、目視で確認できる。スライド板641の青色領域641Bは、輸液ポンプ1が確実に本固定されている状態を示す本固定表示である。本固定されている旨を示すために、インジケータ537の窓部650において、青色領域641Bの表示に代えてキャラクタ表示,シンボルマーク表示等で表示するようにしてもよい。
【0055】
これに対して、第2爪部562がDF方向に持ち上がり、
図16に示すように、仮固定部材である第1爪部561が、第1段部621にかみ合っているだけの仮固定状態であると、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)はラック500側に仮固定されている。この場合には、
図19に示すように第2爪部562が、中心軸CDFを中心にしてDF方向に持ち上がるので、リンク642がDH方向に回転して、連結部材643が中心軸CLRを中心にしてDU方向に回転する。これにより、スライド板641はY2方向に所定ストローク分スライドする。このため、スライド板641がY2方向にスライドして、インジケータ537の窓部650には、本固定または未装着状態を示す青色とは異なる色で、スライド板641の赤色領域641Rが表示される。スライド板641の赤色領域641Rは、輸液ポンプ1が確実に仮固定されている状態を示す仮固定表示である。
これにより、医療従事者は、インジケータ537に表示されるスライド板641の赤色領域641Rを見ることで、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)がラック500に対して仮固定状態であることを目視で確認することができ、安全面で有効である。このように、インジケータ537が設けられていることにより、医療従事者は輸液ポンプ(あるいはシリンジポンプ1001)が第1装着部C1(第2装着部C2、第3装着部C3)に対して、仮固定状態であるか、本固定状態であるかを、目視で確認でき、輸液ポンプ(あるいはシリンジポンプ1001)の着脱作業を安全に行える。
また、仮固定されている旨を示すために、インジケータ537の窓部650において、赤色領域641Rの表示に代えてキャラクタ表示,シンボルマーク表示等で表示するようにしてもよい。
【0056】
図20(A)は、
図5に示すラック500の2つのポールクランプ400と通信ボックス520用の1つのポールクランプ400の構造を斜め上から見た斜視図である。
図20(B)は、1つのポールクランプ400を示す斜視図である。
図20と
図5を参照すると、ポールクランプ400は、プラスチック製の基部701と、金属製の取り付け用の固定具702と、金属製の取付け用の移動具703と、操作部704を有している。基部701は、ラック500のリアケース512の左右方向(X方向9の中央位置に固定されている。固定具702は、基部701に固定されており、固定具702は、第1突出部分702Aと、第1突出部分702Aに間隔をおいて対向して配置されている第2突出部分702Bを有している。第1突出部分702Aのメネジ702Cには、操作部704のオネジ704Nがかみ合っており、オネジ704Nの先端部には移動具703が取り付けられている。医療従事者が操作部704を回転することにより、移動具703が第2突出部分702Bに向けて軸方向VBに沿って進むので、移動具703と第2突出部分702Bの間には、ポール499を挟み込むことができる。これにより、3つのポールクランプ400は、ラック500と通信ボックス520をポール499に対して着脱可能に固定できるようになっている。
【0057】
図20に示すように、固定具702はほぼC字型を有しているが、第2突出部分702Bの内面には、第1当接部720が形成されている。また、移動具703の内側には、第2当接部730が形成されており、第1当接部720と第2当接部730は、ポール499の外周部を両側から確実にクランプするために、ほぼC字型あるいは円弧型を有しており、対面している。第1当接部720と第2当接部730は、ポール499の外周囲に対して当接して押圧されることにより、ポールクランプ400は、ポール499を挟み込んでクランプする。
図20(A)に示すように、第1当接部720は、外側突出部721と、複数の段差部分722と、内側突出部733を有している。同様にして、第2当接部730は、外側突出部731と、複数の段差部分732と、内側突出部733と、ガイド突起部734を有している。
【0058】
図20(A)に示すように、操作部704の軸方向VBは、X方向に対して、所定の角度DGだけ傾けて設定されている。この角度DGは、例えば15度程度であるが、特に限定されない。これにより、医療従事者が、ラック500の2つのポールクランプ400と通信ボックス520のポールクランプ420をポール499に対して取り付けるために、ラック500と通信ボックス520をY1方向に沿ってポール499に向けて動かす。つまり、ポール499を第1当接部720の外側突出部721と第2当接部730の外側突出部731との間を通過させて、第1当接部720と第2当接部730の間に入れ込む時に、第1当接部720の外側突出部721と第2当接部730の外側突出部731の存在が、ポール499に対して邪魔にならないようにしている。このため、第1当接部720の外側突出部721と第2当接部730の外側突出部731は、ポール499をY1方向に通過させて装着する作業の邪魔にならず、ポール499をスムーズに入れ込むことができる。
【0059】
これに対して、
図21は、本発明の実施形態におけるポールクランプ400に対する比較例として、通常行われているポールクランプ2400の取付け構造を示している。
図21(A)に示すように、ポールクランプ2400がラック2401の背面部に平行に取り付けられているので、操作具2406の移動方向が、ラック2401の背面部に平行になっている。移動具2398の当接部2402の外側突出部2404と突出部分2399の当接部2403の外側突出部2405が、互いにX方向に沿って向かい合う方向に突出している。このため、
図21(A)から
図21(B)に示すように、医療従事者が、ラック2401をY1方向に沿ってポール499に対して近づけて、当接部2402の外側突出部2404と当接部2403の外側突出部2405との間に通そうとすると、当接部2402の外側突出部2404と当接部2403の外側突出部2405が、ポール499の外周部に突き当たってしまう。このため、ポール499自体が移動具2398の当接部2402の外側突出部2404と第2突出部分2399の当接部2403の外側突出部2405に押されて、ポール499が後ろ側に下がってしまうことがある。このようにポール499が動いてしまうと、これらの外側突出2404と外側突出部2405の間にうまくポール499を通すことができない。
【0060】
したがって、
図21(B)に示すように、医療従事者が、ラック2401をポール499に対してY1方向に沿ってスムーズに取り付けようとすると、医療従事者は、予め操作部2406を回転して移動具2398をX2方向に予め移動しておき、
図21(A)に示す外側突出部2404と外側突出部2405との間隔DD1を,
図21(B)に示す間隔DD2に拡大しておく必要がある。しかし、このように外側突出部2404と外側突出部2405との間隔を間隔DD2にまで拡大すると、ポール499が外側突出部2404と外側突出部2405との間に入った後に、医療従事者は再び操作部2406を回転して、移動具2398の当接部2402の外側突出部2404を、突出部分2399の当接部2403の外側突出部2405に対して,間隔DD1から間隔DD2に拡げた分だけ余計に、X1方向に戻さないと、ポール499にクランプすることができない。このため、医療従事者がラック2401をポール499に取り付ける作業には、余計な時間がかかってしまう。特に、ラックや通信ボックスに予め取り付けられているポールクランプの数が多いと、さらに余計な作業時間がかかってしまう。
【0061】
図20に示す本発明の実施形態のラック500では、医療従事者がポール499の外周部に対面するように第1当接部720と第2当接部730を位置させた後、医療従事者が操作部704を手動で回転させることで、移動具703をポール499に押し付けることで、短い作業時間で第1当接部720と第2当接部730はポール499の外周部にかみ合わせることができる。ラック500は、ポール499に対して短時間で容易にクランプすることができる。したがって、医療従事者が、複数のポールクランプ400を用いて、ラック500と通信ボックス520をポール499に対して固定する作業、あるいはラック500と通信ボックス520をポール499から取り外す作業を容易に行うことができる。
【0062】
次に、
図5に示す通信ボックス520が、ラック500の上部と下部に装着される例を、
図22と
図23を参照して説明する。
図22(A)は,通信ボックス520を斜め後ろ側から見た斜視図であり、
図22(B)は、通信ボックス520がラック500の下部の連結部受け部540に対して着脱可能に装着されている状態を示す斜視図である。
図23は、ラック500の下部の連結部受け部540と、この下部の連結部受け部540に装着されている通信ボックス520を背面部側から示す斜視図である。
図22(A)に示すように、通信ボックス520の背面部には、すでに説明したポールクランプ400が取り付けられている。この通信ボックス520は、
図3に示すラック500の上部の連結部502に対して、
図4に例示するように着脱可能に装着することができる。しかも、
図22(B)と
図23に例示するように、通信ボックス520は、ラック500の下部の連結部受け部540に対しても、着脱可能に装着することができるようになっている。
このように、医療従事者は、必要に応じて、通信ボックス520をラック500の上部の連結部502と、下部の連結部受け部540との一方もしくは両方に対して装着することができる。また、
図23に示すように、連結用の凹部590が、通信ボックス520の裏面のポールクランプ400の下の位置に設けられている。この連結用の凹部590には、さらに例えば追加のAC電源供給用のインレットボックス502Sを着脱可能に装着できる。
【0063】
図22に示す通信ボックス520は、ラック500に装着された輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001から外部のコンピュータとの間で情報通信を行うことができる。例えば、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001は、通信ボックス520を介して、外部のコンピュータの薬剤ライブラリから使用する薬剤情報を選択して、その選択した薬剤情報に基づいて、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001は薬剤を送液することができる。この薬剤ライブラリは、薬剤ライブラリデータベース(DB)において予め登録された薬剤名を含む薬剤の投与設定群である薬剤情報である。医療従事者は、この薬剤ライブラリを用いることにより、複雑な投与設定をその都度行わなくても良く、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001を用いて薬剤の選択および薬剤の設定を図ることができる。
【0064】
図24は、すでに説明した
図5に示すラック500と、ポール499と、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)の機械的な連結関係を示すブロック図である。
図24に示すように、ラック500は、ポール499に対して複数のポールクランプ400を用いて着脱可能に固定される。このラック500には、複数台の輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001が、支持部535とポールクランプ600とロック機構部531を用いて着脱可能に固定される。
ラック500の上部の連結部502には、通信ボックス520や別のラック500の下部の連結部受け部540を着脱可能に装着できる。同様にして、ラック500の下部の連結部受け部540には、通信ボックス520の連結部522や、別のラック500の上部の連結部502を着脱可能に装着できる。ラック500の上部の連結部502と下部の連結部受け部540にそれぞれ別のラック500を連結することにより、例えば9つの装着部C1からC3を重ねることができるので、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001が9つの装着部C1からC3に対して、任意に装着できる。
【0065】
次に、上述したラック500の使用例を説明する。
まず、医療従事者は、
図1に示すポール499を床面FWに置いて、1つのラック500を複数のポールクランプ400を用いて、このポール499に対して装着する。このラック500の第1装着部C1から第3装着部C3には、輸液ポンプ1あるいはシリンジポンプ1001はまだ装着されていない。
図20に示すように、操作部704の軸方向VBは、X方向に対して、所定の角度DGだけ傾けて設定されていることから、ポール499を、Y1方向に沿って第1当接部720の外側突出部721と第2当接部730の外側突出部731との間を通過させて第1当接部720と第2当接部730の間に位置させる時に、第1当接部720の外側突出部721と第2当接部730の外側突出部731の存在が、ポール499に当たらず、ラック500をY1方向に沿ってポール499に向けて真っ直ぐ近づけて、ポール499を通過させて装着する作業の邪魔にならない。
【0066】
これにより、ラック500については、医療従事者がポール499の外周部に対面するように第1当接部720と第2当接部730を位置させた後、医療従事者が操作部704を手動で回転させることで、移動具703をポール499に押し付ける。これにより、第1当接部720と第2当接部730はポール499の外周部にかみ合わせることができる。ラック500は、ポール499に対して容易に短時間でクランプすることができる。したがって、医療従事者は、複数のポールクランプ400を用いてラック500をポール499に対して固定する作業を、短時間で容易にしかも確実に行うことができる。
【0067】
次に、医療従事者は、例えば
図1に示すように、第1装着部C1と第2装着部C2には、輸液ポンプ1を装着し、第3装着部C3には、シリンジポンプ1001を装着する。具体的には、
図18(A)に示すように、医療従事者は、輸液ポンプ1の右側を右手で支えるとともに輸液ポンプ1の左側を左手で支えながら、輸液ポンプ1の下部をトレイ534に載せる。このように、輸液ポンプ1の下部をトレイ534に載せることで、この後に行う輸液ポンプ1を回動させて行う装着作業は、輸液ポンプ1を落下させる心配がなく、安心して行える。
図18(A)に示すように、輸液ポンプ1側の第1挿入用穴部611には、上部ポスト535Aをはめ込み、輸液ポンプ1側の第2挿入用穴部612には、下部ポスト535Bをはめ込む。この状態では、輸液ポンプ1のアウトレット端子穴部570は、第1装着部C1側のアウトレット端子530に対して予め対面している。このように、アウトレット端子穴部570は、アウトレット端子530に予め対面しているのは、
図12に示すように、アウトレット端子530がバネ552の力により、ラック500のY2方向(前後方向)に対して、予め定めた傾斜角度θでCLC方向に突出して設けられているからである。これにより、アウトレット端子穴部570は、アウトレット端子530に対して正対する。
【0068】
図18(A)から
図18(B)に示すように、医療従事者は、輸液ポンプ1の左側部分を左手で持ったまま、上部ポスト535Aと下部ポスト535Bの回転中心軸CLを中心として、左手でSS方向に回転するだけで、輸液ポンプ1のアウトレット端子穴部570には、第1装着部C1側のアウトレット端子530を確実にしかもスムーズにはめ込んで電気的にしかも機械的に接続できる。なお、輸液ポンプ1を第2装着部C2に装着する動作と、シリンジポンプ1001を第3装着部C3に装着する動作は、上述した輸液ポンプ1を第1装着部C1に装着する動作と同じように行えば良い。
図18(A)と
図18(B)に示すように、医療従事者が
図15に示すポールクランプ600を備えた輸液ポンプ1を持った状態で、回転中心軸CLを中心としてSS方向に回すようにして輸液ポンプ1をラック500の第1装着部C1に対して装着する場合に、
図16(A)に示すように第1爪部561の先端部561Fは、第1段部621に向かって、
図16(B)に示すように第1段部621に対して先にかみ合う。
【0069】
これにより、
図16(B)に示すように輸液ポンプ1は、第1爪部561の先端部561Fと第1段部621とのかみ合い状態により仮固定できることから、医療従事者が、回転中心軸CLを中心としてSS方向に回すようにして輸液ポンプ1をラック500の第1装着部C1に対して装着する時にこのSS方向への回動量が少なく中途半端にSS方向に回しただけであっても、第1爪部561の先端部561Fが第1段部621に必ずかみ合う。このため、第1装着部C1からの輸液ポンプ1の脱落を確実に防止できる。
図16(B)に示すように、輸液ポンプ1が仮固定された状態では、
図19に示すインジケータ537の窓部650には、スライド板641の赤色領域641Rが表示される。これにより、医療従事者は、インジケータ537に表示される色を目視で確認することで、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)がラック500に対して仮固定状態であることを目視で確認することができ、安全面で有効である。
【0070】
さらに、
図16(B)に示すように、医療従事者が
図15に示す輸液ポンプ1とポールクランプ600を持った状態で、回転中心軸CLを中心としてSS方向に、さらに回すと、
図17に示すように、第2爪部562が、第2段部622にかみ合う。これにより、輸液ポンプ1は、第2爪部562の先端部562Fと第2段部622とのかみ合い状態により、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)がラック500に対して本固定できる。第2爪部562の先端部562Fと第2段部622は、輸液ポンプ1とともにポールクランプ600をSS1方向に引いても、第2爪部562の先端部562Fは第2段部622から持ち上がらない。つまり、輸液ポンプ1が本固定された状態であると、輸液ポンプ1はSS1方向に取り出すことができないことから、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)の脱落が無く安全面で有効である。
【0071】
図15に示すように、第1挿入用穴部611の開口部分611Aと第2挿入用穴部612の開口部分612Aは、X2方向に開いている形状に形成されている。このため、
図18(B)に示すように、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)を第1装着部C1(第2装着部C2あるいは第3装着C3)に本固定すると、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)側の第1挿入用穴部611から上部ポスト535Aが外れることは全く無く、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)側の第2挿入用穴部612から下部ポスト535Bが外れることは全く無い。
このように、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)を第1装着部C1(第2装着部C2あるいは第3装着C3)に本固定すると、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)を第1装着部C1(第2装着部C2あるいは第3装着C3)に対して、支持部535の上部ポスト535Aと下部ポスト535Bと、ロック機構部531と、アウトレット端子530を用いて安全にしかも確実に固定することができる。
【0072】
輸液ポンプ1が、本固定されると、
図19に示すインジケータ537の窓部650には、仮固定を示す色(赤色)領域とは異なる色領域である、スライド板641の青色領域641Bが表示される。これにより、輸液ポンプ1が本固定されていることを、目視で確認することができる。
なお、
図22(A)に示すように、この通信ボックス520は、
図3に示すラック500の上部の連結部502に対して、
図4に例示するように着脱可能に装着することができる。しかも、
図22(B)と
図23に例示するように、通信ボックス520は、ラック500の下部の連結部受け部540に対しても、着脱可能に装着することができる。このたに、医療従事者は、必要に応じて、ラック500の上部と下部の少なくとも一方に、通信ボックス520を装着できる。
【0073】
次に、
図1に示すように、装着された輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)を、ラック500の第1装着部C1から第3装着部C3から取り外す際の動作例を説明する。
医療従事者が、
図11(A)と
図13(A)に示す操作レバー536を、RL方向に所定角度θ1回転操作すると、
図17に示すようにロック機構部531の本固定用の第2爪部562がDF方向に持ち上がる。このため、第2爪部562と係合部620の第2段部622との係合が外れて、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)の本固定状態は解除されるのであるが、
図16(B)に示すように第1爪部561と係合部620の第1段部621による仮固定状態は解除されない。
この状態で、医療従事者が、
図11(A)の操作レバー536をRL方向に、
図13(B)に示す所定角度θ2まで回転操作すると、
図13(B)に示すプッシャー533の先端部533Aは、Y2方向に所定のストロークSTCだけ、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)の背面部側をY2方向に押し出す。これにより、プッシャー533は、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)の背面部を、
図16(B)に示すSS1方向に強制的に押す。輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)の背面部がSS1方向に押されると、第1爪部561が係合部620の第1段部621から持ち上がって、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)の仮固定状態が解除できる。
以上のようにして、輸液ポンプ1は、
図17に示す本固定状態から
図16(B)から
図16(A)に示すように仮固定状態の解除を経て取り外すことができる。このように輸液ポンプ1をSS1方向に回動して取り外す際には、輸液ポンプ1の下部は、
図10に示すトレイ534の上に載っているので、輸液ポンプ1が不用意に落下するのを防いでいる。
【0074】
その後、医療従事者は、左手で輸液ポンプ1の左側部分を持ち、右手で輸液ポンプ1の右側部分を持ち、
図15に示す輸液ポンプ1側の第1挿入用穴部611から上部ポスト535Aを外すとともに、輸液ポンプ1側の第2挿入用穴部612から下部ポスト535Bを外す。これにより、医療従事者は、輸液ポンプ1(あるいはシリンジポンプ1001)の取り外しを容易にしかも安全に行うことができる。
以上説明した、輸液ポンプ1をラック500の第1装着部C1ないし第3装着部C3に装着する動作は、シリンジポンプ1001をラック500の第1装着部C1ないし第3装着部C3に装着する動作と同じである。
【0075】
図18に示すように、本発明の実施形態の医用機器のラック500は、本体501と、本体501に設けられて、横方向に向けた姿勢で使用される医用機器を着脱可能に装着するための装着部C1、C2、C3を有し、装着部C1、C2、C3は、医用機器側にはめ込んで医用機器を回動可能に支持する支持部535を有する。これにより、装着部C1、C2、C3の支持部535は、医用機器を回動可能に支持できるので、医療従事者は医用機器を装着部C1、C2、C3に装着できる。また、医療従事者が医用機器を装着部C1、C2、C3から取り外す場合には、医用機器の一部を支持部535に支持させて、医療従事者は片手で医用機器を回しながら装着部C1、C2、C3から取り外すことができる。すなわち、医療従事者が比較的重い医用機器を常時両手で支えながらラックに対して装着したり取り外す必要がなくなるので、医用機器を、容易にしかも確実に脱着することができる。
【0076】
図1に示すように、複数の装着部C1、C2、C3が、ラック500の上下方向(Z方向)に沿って並べて設けられており、各装着部C1、C2、C3は、装着される医用機器の上部側に位置する上側壁CW1と医用機器の下部側に位置する下側壁CV1を有し、支持部535は、上側壁から下方に突出されて医用機器の背面部側に着脱可能にはめ込まれる上部ポスト535Aと、下側壁から上方に突出されて上部ポスト535Aに対面しており医用機器の背面部側に着脱可能にはめ込まれる下部ポスト535Bを有する。このため、支持部535の上部ポスト535Aと下部ポスト535Bが医用機器の背面部側にはめ込まれることで、医用機器を回動可能に支持できるので、簡単な構造でありながら、医用機器を装着部C1、C2、C3に装着したり、医用機器を装着部C1、C2、C3から取り外す場合に、医用機器の一部を支持部535により支持させて、片手で医用機器を回しながら装着部C1、C2、C3に装着したり、逆に医用機器を装着部C1、C2、C3から取り外すことができる。
【0077】
図10に示すように、装着部C1、C2、C3は、医用機器の背面部側にかみ合うことで、医用機器を装着部C1、C2、C3に対して着脱可能に固定するロック機構部531を有する。このため、ロック機構部531は、装着部C1、C2、C3に位置する医用機器の背面部側にかみ合うので、医用機器は、装着部C1、C2、C3において確実に機械的にロックして安全に固定できる。
図10に示すように、下側壁CV1には、医用機器の下部を支える支持突起部としてのトレイ534を有する。このため、トレイ534は、支持部535を中心にして医用機器を回して装着部C1、C2、C3に装着したり、支持部535を中心にして医用機器を回して装着部C1、C2、C3から取り外す場合に、医用機器の下部を支持することができるので、比較的重い医用機器の装着および取り外し作業を安全に行うことができる。
【0078】
図18に示すように、装着部C1、C2、C3には、医用機器が装着部C1、C2、C3に装着されると、医用機器に設けられているアウトレット端子受け部570に対して挿入されることで医用機器とラック500との間の電気的接続を行うアウトレット端子530が配置されている。このアウトレット受け部570が支持部535を中心として回動する方向(CLC方向)に沿うようにして、アウトレット端子530が装着部C1、C2、C3に配置されている。このため、医用機器のアウトレット端子受け部570が支持部535を中心として回動する方向(CLC方向)に沿うようにして、アウトレット端子530が装着部C1、C2、C3に配置されている。したがって、支持部535を中心にして医用機器を回して装着部C1、C2、C3に装着する際に、医用機器側のアウトレット端子受け部570は、装着部C1、C2、C3側のアウトレット端子530に確実に接続することができる。
【0079】
アウトレット端子530は、装着部C1、C2、C3において支持部535を中心として回動する方向に配置する付勢部材であるバネ552を有している。医用機器が装着部C1、C2、C3に装着されると、アウトレット端子530は、支持部535を中心として回動する方向にバネ552の力に抗して押されることで、アウトレット端子受け部570にはめ込まれる。このため、支持部535を中心にして医用機器を回して装着部C1、C2、C3に装着する際に、装着部C1、C2、C3側のアウトレット端子530は、バネ552の力を利用して、医用機器側のアウトレット端子受け部570に確実に接続することができる。そして、支持部535を中心にして医用機器を回して装着部C1、C2、C3から取り外すと、装着部C1、C2、C3側のアウトレット端子530は、バネ552の力を利用して、再び支持部535を中心として回動する方向(CLC方向)に復帰させることができる。
支持部535は、医用機器をポール499に装着するためのポールクランプ600に対して、着脱可能にはめ込まれる。このため、装着部C1、C2、C3側の支持部535は、医用機器側のポールクランプ600を利用して、医用機器を着脱可能に支持することができる。
【0080】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
図8に示す輸液チューブ200と
図9に示すシリンジ1200は、チューブ装着部50において水平方向(X方向)に沿って配置されており、向かって右側が薬液の上流側で、向かって左側が薬液の下流側である。しかし、これに限らず、
図8に示す輸液チューブ200と
図9に示すシリンジ1200は、横方向ではあるが、やや上流側が上で下流側が下になるように傾けて配置しても良い。本発明において、
図8の輸液チューブ200と
図9に示すシリンジ1200が配置されている横方向は、水平方向と、水平方向に対してやや傾いている傾斜方向をも含んでいる。
医用機器としては、輸液ポンプ1やシリンジポンプ1001に限らず、他の種類の機器であっても良い。
図示のラック500は、装着部C1、C2、C3を有しているが、これに限らず、2つの装着部あるいは、4つ以上の装着部を有する構造にしても良い。
上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。