特許第6093375号(P6093375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093375
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】透明光触媒コーティング
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20170227BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20170227BHJP
   B01J 23/34 20060101ALI20170227BHJP
   B01J 23/85 20060101ALI20170227BHJP
   B01J 27/224 20060101ALI20170227BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20170227BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20170227BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20170227BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   B01J35/02 J
   B01J23/30 M
   B01J23/34 M
   B01J23/85 M
   B01J27/224 M
   B01D53/86 210
   B01D53/86 260
   B01D53/86 275
   B01D53/86 110
   B01D53/86 222
   C09D201/00
   C09D5/16
   C09D7/12
【請求項の数】20
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-552352(P2014-552352)
(86)(22)【出願日】2013年1月11日
(65)【公表番号】特表2015-513306(P2015-513306A)
(43)【公表日】2015年5月7日
(86)【国際出願番号】US2013021318
(87)【国際公開番号】WO2013106776
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2015年12月21日
(31)【優先権主張番号】61/585,732
(32)【優先日】2012年1月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/738,243
(32)【優先日】2013年1月10日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福村 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】サムバンダン、エカムバラム
(72)【発明者】
【氏名】ムケルジー、ラジェッシュ
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−162176(JP,A)
【文献】 特開2011−020009(JP,A)
【文献】 特開2009−106897(JP,A)
【文献】 P. NGAOTRAKANWIWAT et al.,Optimization of energy storage TiO2-WO3 photocatalysts and further modification with phosphotungstic acid,Journal of Electroanalytical Chemistry,2004年,573,263-269.,doi:10.1016/j.jelechem.2004.07.012
【文献】 C. YU-MIN et al.,Photocatalytic Degradation of Bromphenol Blue by WO3/CeO2 as Heterogeneous Photocatalyst,Journal of Henan University of Science and Technology (Natural Science),2007年 6月,28,94-97.,doi: 10.3969/j.issn.1672-6871.2007.03.028
【文献】 P. BORKER et al.,Photocatalytic degradation of textile azo dye over Ce1-xSnxO2 series,Materials Science and Engineering B,2006年,133,55-60.,doi:10.1016/j.mseb.2006.05.007
【文献】 C. ZHANG et al.,Visible-light induced oxo-bridged ZrIV-O-CeIII redox centre in tetragonal ZrO2-CeO2 solid solution for degradation of organic pollutants,Phys. Chem. Chem. Phys.,2011年,13,3896-3905.,doi: 10.1039/c0cp01782e
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/86
C09D 5/16
C09D 7/12
C09D 201/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒と助触媒とを含有する光触媒層であって、
前記光触媒が、酸化タングステンを含有し、
前記助触媒が、酸化セリウムを含有し、
前記酸化タングステンと前記酸化セリウムのモル比が、1:5〜7:3の範囲内である、光触媒層。
【請求項2】
前記光触媒がWOを含む、請求項1に記載の光触媒層。
【請求項3】
前記助触媒が、CeO(x≦2.0)を含む、請求項1または2に記載の光触媒層。
【請求項4】
前記助触媒が、CeOである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光触媒層。
【請求項5】
前記CeOにSnがドープされている、請求項4に記載の光触媒層。
【請求項6】
前記Snが、前記助触媒の1モル%から20モル%である、請求項5に記載の光触媒層。
【請求項7】
前記助触媒が、CeZr(この場合、y/x比=0.001から0.999)を含む、請求項1または2に記載の光触媒層。
【請求項8】
前記光触媒に遷移金属、遷移金属酸化物または遷移金属水酸化物が担持されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光触媒層。
【請求項9】
前記光触媒に貴金属、貴金属酸化物または貴金属水酸化物が担持されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光触媒層。
【請求項10】
前記貴金属が、Au、Ag、Pt、Pd、Ir、RuまたはRhである、請求項9に記載の光触媒層。
【請求項11】
前記貴金属酸化物が、Au、Ag、Pt、Pd、Ir、RuまたはRhを含有する、請求項9に記載の光触媒層。
【請求項12】
前記貴金属水酸化物が、Au、Ag、Pt、Pd、Ir、RuまたはRhを含有する、請求項9に記載の光触媒層。
【請求項13】
基板をさらに含有する光触媒層であって、前記光触媒層の少なくとも一部分がその基板表面と接触している、請求項1に記載の光触媒層。
【請求項14】
空気または水の浄化方法であって、前記空気または水を請求項1〜13のいずれか1項に記載の光触媒層の存在下で光に曝露する工程を含む方法。
【請求項15】
汚染物質の除去方法であって、前記汚染物質を含有する材料を請求項1〜13のいずれか1項に記載の光触媒層の存在下で光に曝露する工程を含む方法。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の光触媒層の存在下で前記空気または水を光に曝露する工程を含む消毒方法。
【請求項17】
空気または水からの臭気除去方法であって、前記空気または水を請求項1〜13のいずれか1項に記載の光触媒層の存在下で光に曝露する工程を含む方法。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の光触媒層を含有するセルフクリーニング材料。
【請求項19】
前記光触媒層が、ガラス、壁板、石、石造物、金属、木材、プラスチック、他の高分子表面、コンクリート、繊維、布地、糸またはセラミックに適用される、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記光触媒層が、蒸着、化学蒸着、物理蒸着、ラミネーション、押圧、ロール塗り、浸漬、溶融、貼り合わせ、ゾル−ゲル堆積、スピンコーティング、ディップコーティング、バーコーティング、刷毛塗りコーティング、スパッタリング、熱溶射、火炎溶射、プラズマ溶射、高速酸素燃料溶射、原子層堆積、コールドスプレー法、またはエアロゾル堆積によって適用される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
可視光活性化光触媒は、セルフクリーニング、空気および水の浄化ならびに多くの他の興味深い用途に展開することができ、通常、展開後の再生不能エネルギーコストは一切ない。これは、光触媒が、利用可能な周辺光、例えば、太陽放射線または屋内および屋外照明を用いて汚染物質(例えば、色素、揮発性有機化合物およびNO)を分解することができるからである。UVなしの屋内照明(例えば、LEDおよびOLED)の急速な普及が予想されるため、屋内での応用に、例えば、住空間、公共空間および商業空間において、特に密閉された空間、例えば航空機、公共建築物などにおいて室内空気をクリーニングするにあたり、可視光活性化光触媒を展開させる方法を見つけることは、至上命令である。さらに、抗菌表面およびセルフクリーニング材料へのさらなる応用は、フードサービス、輸送、ヘルスケアおよび接客部門において幅広い利用可能性を有し得る。
【0002】
一般に、光触媒コーティングは、基礎光触媒材料の低い固有活性およびよく用いられるバインダーとのそれらの不相溶性に主として起因して、低い光触媒活性を呈示する。それ故、所望の光触媒レベルおよび透明性を呈示する光触媒コーティングおよび/または層が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光触媒と助触媒とを含む光触媒組成物は、様々な光触媒用途に有用であり得る。加えて、助触媒は、光触媒の光触媒活性を向上させることができるので、光触媒と助触媒の併用は、光触媒単独より活性が高い。さらに、光触媒材料・助触媒の光触媒コーティングへの組み込みは、そのコーティング材料の透明性および光触媒活性の向上に役立つだろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一部の実施形態において、前記光触媒は、Ti系であり得る。一部の実施形態において、前記光触媒は、可視光応答性であり得る。一部の実施形態において、前記光触媒は、二酸化チタン、ドープされた酸化チタンまたは複合酸化チタン材料粉末であり得る。
【0005】
一部の実施形態において、前記光触媒は、W系であり得る。一部の実施形態において、前記光触媒は、可視光応答性であり得る。一部の実施形態において、前記光触媒は、酸化タングステン、ドープされた酸化タングステン粉末、または酸化タングステン複合材料粉末であり得る。
【0006】
一部の実施形態において、前記光触媒は、W系とTi系の両方であり得る。一部の実施形態において、前記光触媒は、可視光応答性であり得る。一部の実施形態において、前記光触媒は、酸化タングステン、ドープされた酸化タングステン粉末または酸化タングステン複合材料粉末のうちの少なくとも1つと、二酸化チタン、ドープされた酸化チタンまたは複合酸化チタン材料粉末のうちの1つとの組み合わせであり得る。
【0007】
一部の実施形態は、上述の光触媒組成物を含む光触媒層を含む。一部の実施形態は、基板をさらに含むことがあり、前記光触媒材料の少なくとも一部分がその基板と接触している。
【0008】
一部の実施形態は、少なくとも1つの光触媒材料と少なくとも1つの助触媒とを含む透明光触媒組成物であって、前記光触媒材料および前記助触媒が互いの約0.75以内の屈折率を有するものである組成物を含む。
【0009】
一部の実施形態は、光触媒層の製造方法であって、上述の組成物を形成する工程;およびその組成物を基板に適用する工程を含む方法を含む。
【0010】
一部の実施形態は、光触媒層の製造方法であって、光触媒とCeOと分散媒とを含有する分散液を作る工程(ここで、それぞれの光触媒およびCeOの屈折率は、互いの0.75以内であり、前記光触媒のCeOに対するモル比は、1〜99モル%光触媒および99〜1モル%CeOの間であり;前記分散液は、約2〜50重量%固形物を有する)と;前記分散液を基板に塗布する工程と;前記分散液および前記基板を、前記分散液から実質的にすべての前記分散媒を蒸発させるために十分な温度および時間長で加熱する工程とを含む方法を含む。
【0011】
一部の実施形態は、空気または水の浄化方法であって、本明細書に記載する光触媒組成物の存在下で前記空気または水を光に曝露する工程を含む方法を含む。
【0012】
一部の実施形態は、汚染物質の除去方法であって、本明細書に記載する光触媒組成物の存在下で前記汚染物質を含有する材料を光に曝露する工程を含む方法を含む。
【0013】
これらおよび他の実施形態を本明細書においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、光触媒コーティングの実施形態の模式図である。
【0015】
図2図2は、光触媒コート面の実施形態の模式図である。
【0016】
図3図3は、T−バインダー性能データを図示するグラフである。
【0017】
図4図4は、実施例5〜7の光触媒組成物についてのアセトアルデヒド分解のプロットである。
【0018】
図5図5は、WOとT−バインダーを様々な比率で含有する光触媒組成物についての1時間の時点でのアセトアルデヒド分解のプロットである。
【0019】
図6図6は、実施例9〜15の光触媒組成物についてのアセトアルデヒド分解のプロットである。
【0020】
図7図7は、455nmにおける様々な光度でのWOおよびWO/T−バインダーについてのアセトアルデヒド分解のプロットである。
【0021】
図8図8は、1:1のモル比での実施例16〜30のWO3と助触媒についての5時間後のアセトアルデヒド分解のグラフである。
【0022】
図9図9は、実施例31〜35の光触媒組成物についてのアセトアルデヒド分解のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
光触媒は、光、例えば紫外線または可視光、への曝露の結果として化学反応を活性化するまたは化学反応速度を変化させることができる任意の材料を含む。一部の実施形態において、光触媒材料は、紫外線または可視光を吸収する無機固体、例えば固体無機半導体、であることがある。一部の材料についての光触媒反応は、前記電磁線吸収によって光触媒の大部分において発生する電子・正孔対から該光触媒の表面で形成される(還元および酸化を行うことができる)反応性化学種に起因することがある。一部の実施形態において、前記光触媒は、標準水素電極と比較して、約1eVから約0eV、約0eVから約−1eV、または約−1eVから約−2eVのエネルギーでの伝導を有する。一部の光触媒は、標準水素電極と比較して、約3eVから約3.5eV、約2.5eVから約3eV、または約2eVから約3.5eV、または約3.5eVから約5.0eVのエネルギーでの価電子帯を有することがある。
【0024】
旧来、UV領域、すなわち380nm未満の波長、の光によってしか光触媒を活性化することができなかった。これは、殆どの半導体の広いバンドギャップ(>3eV)のためである。しかし、近年、材料を適切に選択することにより、または既存の光触媒を改良することにより、可視光光触媒が合成された(Asahiら、Science、293:269−271、2001およびAbeら、Journal of the American Chemical Society、130(25):7780−7781、2008)。可視光光触媒は、可視光、例えば、人間の肉眼により通常目視検出可能である光、例えば少なくとも約380nmの波長の光によって活性化される光触媒を含む。可視光光触媒は、可視波長に加えて、380nm未満の波長のUV線によっても活性化され得る。一部の可視光触媒は、可視領域の光に対応するバンドギャップ、例えば、約1.5eVより大きく約3.5eV未満の、約1.5eVから約3.5eV、約1.7eVから約3.3eV、または1.77eVから3.27eVのバンドギャップを有することがある。
【0025】
一部の光触媒は、約1.2eVから約6.2eV、約1.2eVから約1.5eV、または約3.5eVから約6.2電子eVのバンドギャップを有することがある。
【0026】
一部の光触媒には、酸化物半導体、例えばTiO、ZnO、WO、SnOなど、およびそれらの修飾体が挙げられる。考えられる修飾としては、ドーピングおよび/または担持が挙げられる。他の材料、例えば、複合酸化物(SrTiO、BiVO)および一部の硫化物(CdS、ZnS)、窒化物(GaN)および一部のオキシ窒化物(例えば、ZnO:GaN)も光触媒特性を示し得る。当業者は、固相反応、燃焼、溶媒熱合成、火炎熱分解、プラズマ合成、化学蒸着、物理蒸着、ボールミリングおよび高エネルギー粉砕をはじめとする様々な方法によって、光触媒を合成することができる。
【0027】
一部の実施形態において、前記光触媒は、酸化物半導体であり得る。一部の実施形態において、前記光触媒は、チタン(Ti)化合物、例えば、酸化、オキシ炭化、オキシ窒化、オキシハロゲン化またはハロゲン化チタンであり得、該チタン化合物には、+1、+2、+3、+4、+5もしくは+6酸化状態もしくは形式電荷、または約+1から約+6、約+2から約+4、約+1から約+2、もしくは約+4から約+6の平均酸化状態もしくは形式電荷を有するチタン化合物または酸化チタンが含まれる。
【0028】
一部の実施形態において、前記光触媒は、タングステン(W)化合物、例えば、酸化、オキシ炭化、オキシ窒化、オキシハロゲン化またはハロゲン化タングステンであり得、該タングステン化合物には、+1、+2、+3、+4、+5、+6、+7もしくは+8酸化状態もしくは形式電荷、または約+1から約+8、約+4から約+8、約+6から約+8、もしくは約+1から約+4の平均酸化状態もしくは形式電荷を有するタングステン化合物または酸化タングステンが含まれる。
【0029】
一部の実施形態において、前記それぞれのTiまたはW化合物は、それぞれの酸化物、オキシ炭化物、オキシ窒化物、オキシハロゲン化物、ハロゲン化物、塩、ドープまたは担持化合物であり得る。一部の実施形態において、前記それぞれのTiまたはW化合物は、TiO、WO、Ti(O,C,N):Sn、例えば、Ti:Snのモル比が約90:10から約80:20、約85:15から約90:10、または約87:13であるTi(O,C,N):Snであり得る。一部の実施形態において、前記それぞれのTiまたはW化合物は、ナノ粉末、ナノ粒子、およびまたはそれらを含む層であり得る。一部の実施形態において、前記光触媒には、ZnO、ZrO、SnO、CeO、SrTiO、BaTiO、In、CuO、Fe、ZnS、Bi、またはBiVOを挙げることができる。一部の実施形態において、前記光触媒は、TiOを含む。一部の実施形態において、前記光触媒は、アナターゼTiOを含む。一部の実施形態において、前記光触媒は、TiOを含まない。一部の実施形態において、前記光触媒は、TiOを含まない。
【0030】
任意の有用な量の光触媒を使用することができる。一部の実施形態において、前記光触媒材料は、前記組成物の少なくとも約0.01モル%、かつ100モル%未満である。一部の実施形態において、前記光触媒材料は、前記組成物の約20モル%から約80モル%、約30モル%から約70モル%、約40モル%から約60モル%、または約50モル%である。
【0031】
TiOおよびWO化合物、例えばナノ粉末は、熱プラズマ(直流であって、高周波誘導結合プラズマ(radio frequency inductively−coupled plasma:RF−ICP)を含むもの)、溶媒熱、固相反応、熱分解(スプレーおよび火炎)および燃焼をはじめとする、多くの異なる方法によって調製することができる。米国特許第8,003,563号明細書(該参照資料はその全体が参照により本明細書に援用されている)に記載されているような高周波誘導結合プラズマ(例えば、熱的)方法は、低汚染(電極なし)、および高生産率、および気体、液体または固体形態いずれかでの前駆体の容易な適用のため、有用であり得る。それ故に、高周波誘導結合プラズマプロセスは好ましい。例えば、WOナノ粉末を調製するとき、二流体噴霧器を使用して、水中のメタタングステン酸アンモニウムの分散液(水中5〜20重量%固体)をプラズマ空間にスプレーすることができる。好ましくは、前記前駆体は、水中約20重量%固体まで存在することができる。アルゴン、窒素および/または酸素ガスを用いて、約25kWプレート電力でプラズマを操作することができる。その後、そのプラズマから凝縮した蒸気より形成された粒子をフィルタで回収することができる。一部の実施形態において、前記粒子の表面積は、BETを用いて測定して、約1m/gから約500m/g、約15m/gから30m/g、または約20m/gに及ぶ。一部の実施形態では、得られたWOを約200℃から約700℃、または約300℃から約500℃に加熱することがある。
【0032】
一部の実施形態では、光触媒に少なくとも1つの天然に存在する元素、例えば非貴ガス元素、をドープすることができる。一般に合成中に添加される前駆体としてドープされる元素を供給することができる。ドープされる元素は、TiまたはW化合物の結晶格子中に組み込まれる元素、例えば、その結晶格子中の被定義位置内で置換されるまたは別様にその結晶内の格子間に含まれるような元素であり得る。一部の実施形態では、アルカリ金属、例えばLi、Na、K、Cs;アルカリ土類金属、例えばMg、Ca、Sr、Ba;遷移金属、例えばFe、Cu、Zn、V、Ti(W系化合物のために)、W(Ti系金属のために)、Mo、Zr、Nb、Cr、CoおよびNi;ランタニドおよびアクチニド金属;ハロゲン;(原子番号順に配列されたドミトリー・メンデレーエフ(Dmitri Mendeleev)/ロータル・マイヤー(Lothar Meyer)型の現代の周期表からの)、B、Al、Ga、InおよびTlを含む、第III族元素;Ca、Si、Ge、Snを含む、第IV族元素;第V族元素、例えばN、P、Bi;ならびに第VI族元素、例えばSおよびSe、をはじめとする1つ以上の元素からドーパントを選択することができる。一部の実施形態では、前記光触媒にC、N、S、F、Sn、Zn、Mn、Al、Se、Nb、Ni、Zr、CeおよびFeから選択される少なくとも1つの元素をドープすることができる。一部の実施形態では、前記光触媒は、自己ドープ型であることがあり、例えば、TiOマトリックス中にTi4+の代わりにTi3+があることがある。適切にドープされている光触媒材料の詳細は、米国特許仮出願第61/587,889号明細書に提示されており、該参照資料は、その全体が参照により本明細書に援用されている。
【0033】
一部の実施形態において、前記光触媒材料は、n型UV光触媒材料、n型可視光光触媒材料、p型UV光触媒材料および/またはp型可視光触媒のうちの1つ以上を含むことができる。一部の実施形態において、n型可視バンドギャップ半導体は、場合により、WO、Ti(O,C,N):Sn、またはCeOであり得る。一部の実施形態において、n型UV光触媒材料は、場合により、CeO、TiO、SnO、SrTiO、ATaO、ANbOなどであり得る;A=アルカリ金属イオン(この場合のAは、Ca、Baおよび/またはSrであり得る)。一部の実施形態において、p型可視バンドギャップ半導体は、場合により、SiC、CuMO、M=Al、Crであり得る。一部の実施形態において、p型UV光触媒材料は、場合によりZnIrO、ZnRhO、CuO、NiO、Mn、Co、および/またはFeであり得る。
【0034】
一部の実施形態では、前記光触媒に少なくとも1つの金属を担持させることができる。含浸(Liu,M.、Qiu,X.、Miyauchi,M.、およびHashimoto,K.、「Cu(II) Oxide Amorphous Nanoclusters Grafted Ti3+ Self−Doped Ti0:An Efficient Visible Light Photocatalyst.」、Chemistry of Materials、2011年オンライン発表)、光還元(Abeら、Journal of the American Chemical Society、130(25):7780−7781、2008)およびスパッタリングのような合成後方法論(post synthesis methodologies)によって、担持される元素を供給することができる。好ましい実施形態としては、光触媒への金属の担持を、米国特許出願公開第2008/0241542号明細書に記載されているように行うことができ、該参照資料は、その全体が参照により本明細書に援用されている。一部の実施形態において、前記担持される元素は、貴金属元素から選択される。一部の実施形態では、前記担持される元素を少なくとも1つの貴な元素、酸化物および/または水酸化物から選択することができる。一部の実施形態では、前記貴な元素をAu、Ag、Pt、Pd、Ir、Ru、Rh、またはそれらの酸化物および/もしくは水酸化物から選択することができる。一部の実施形態では、前記担持される元素は、遷移金属、それらの酸化物および/または水酸化物から選択される。一部の実施形態では、前記担持される元素は、FeおよびCuおよびNi、またはそれらの酸化物および水酸化物から選択される。一部の実施形態では、前記担持される元素を、少なくとも1つの遷移金属および少なくとも1つの貴金属またはそれらのそれぞれの酸化物および水酸化物を含む様々な元素群から選ぶことができる。
【0035】
助触媒は、光触媒の光触媒特性を向上させる材料を含む。本書類を通して助触媒を一般にT−バインダーとも呼ぶことがある。一部の実施形態において、助触媒は、触媒性能を向上させることができる。例えば、助触媒は、触媒反応の速度を少なくとも約1.2、少なくとも約1.5、少なくとも約1.8、少なくとも約2、少なくとも約3、または少なくとも約5、増加させることができる。触媒反応速度の1つの定量方法としては、アセトアルデヒドなどの有機化合物の分解速度の判定を挙げることができる。例えば、アセトアルデヒドの濃度が、光触媒により(photocatalyically)1時間後にその元の値の80%に減少された、すなわち20%減少された場合、約2のその触媒反応速度の増加が、結果として、アセトアルデヒドの量を1時間後にその元の値の60%に減少させる、すなわち40%減少させる。触媒反応の速度を、所与の時点、例えば、光触媒反応を開始させた後約0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間または5時間の時点で、組成に起因するアセトアルデヒドなどの化合物の減少として測定することができる。
【0036】
一部の助触媒は、光触媒の伝導帯からの電子移動によって還元されることが可能である化合物または半導体であり得る。例えば、助触媒は、光触媒の伝導帯より低いエネルギーを有する伝導帯を有することがあり、または助触媒は、光触媒の伝導帯より低いエネルギーを有する最低非占有分子軌道を有することがある。「より低いエネルギー」および「より高いエネルギー」などの用語を、半導体のバンドまたは分子軌道と別のバンドまたは分子軌道とを比較するために用いるとき、それは、電子がより低いエネルギーのバンドまたは分子軌道に移動されるとエネルギーを喪失すること、および電子がより高いエネルギーの分子軌道のバンドに移動されるとエネルギーを獲得することを意味する。
【0037】
助触媒である一部の金属酸化物は、Oを還元することが可能であると考えられる。例えば、CeOは、電子移動によってOガスを還元することができると考えられる。そうする場合、Ce3+は、電子をOに移動し、結果としてCe4+に転化されると考えられる。光触媒組成物中の光触媒は、電子をCeOに移動させ、かくしてCe4+をCe3+に転化させることができ、その後、そのCe3+はOを還元することができる。Ce3+は、CeOおよびOと、スーパーオキシドラジカルイオン(O・−)とに関わる平衡プロセスの結果として存在することもある。かかる平衡プロセスにおけるOおよびスーパーオキシドラジカルイオンは、固体CeO表面に吸着されることもあり、または大気中に存在することもある。意図的に添加されることもあり、不純物として存在することもある、異なる酸化状態のセリウム化学種との酸化・還元反応の結果として、Ce3+が存在することもある。
【0038】
一部の助触媒は、大気中のOをスーパーオキシドラジカルイオンに転化させることが可能であり得る。例えば、CeOは、大気中の酸素をスーパーオキシドラジカルイオンに転化させることが可能である。上で説明した平衡および/または電子移動プロセスの一部は、CeOのこの特性の一因になり得ると考えられる。かかる転化は、様々な条件下で、例えば、通常の大気中の酸素濃度、例えば約10%から約30%、約15%から約25%、または約20%酸素のモル濃度;周囲温度、例えば約0℃から約1000℃、約0℃から約100℃、約10℃から約50℃、または約20℃から約30℃;および圧力、例えば約0.5から約2気圧、約0.8気圧から約1.2気圧、または約1気圧を含む、周囲条件下で起こり得る。かかる転化は、上昇したまたは低下した温度、圧力または酸素濃度下でも起こり得る。Oを還元することまたは大気中のOをスーパーオキシドラジカルイオンに転化させることが可能であり得る他の材料としては、様々な他の材料、例えば、CeZr(ここで、x:y=0.99〜0.01)、BaYMn5+δ、およびランタニドドープCeO(CeZrLa、CeZrPr、およびCeSmを含む)が挙げられる。
【0039】
一部の助触媒は、光触媒の価電子帯より高いエネルギーの価電子帯または最高占有分子軌道を有することがある。これは、前記助触媒の最高占有分子軌道または価電子帯への前記光触媒の価電子帯における正孔の移動を可能にし得る。その場合、前記助触媒の価電子帯または最高占有分子軌道における正孔は、HOまたはOHをOHに酸化することができる。例えば、WOを光触媒として選ぶ場合、かかる助触媒の例には、アナターゼTiO、SrTiO、KTaO、SiCまたはKNbOを挙げることができる。
【0040】
一部の実施形態において、前記助触媒は、無機性であり得る。一部の実施形態において、前記無機助触媒は、バインダーであり得る。一部の実施形態において、前記助触媒は、酸化物、例えば、CeO、TiOまたはこれらに類するものをはじめとする金属二酸化物であり得る。
【0041】
一部の実施形態において、前記助触媒は、CuO、MoO、Mn、Y、Gd、TiO、SrTiO、KTaO、SiC、KNbO、SiO、SnO、Al、ZrO、Fe、Fe、NiO、Nb、In、Ta、またはCeOを含み得る。一部の実施形態において、前記助触媒は、In、Ta、アナターゼTiO、ルチルTiO、アナターゼTiOとルチルTiOの組み合わせ、またはCeOを含む。一部の実施形態において、前記助触媒は、TiOを含む。一部の実施形態において、前記助触媒は、アナターゼTiOを含む。一部の実施形態において、前記助触媒は、Cr、CeO、Al、およびSiOを含まない。一部の実施形態において、前記助触媒は、Crを含まない。一部の実施形態において、前記助触媒は、CeOを含まない。一部の実施形態において、前記助触媒は、Alを含まない。一部の実施形態において、前記助触媒は、SiOを含まない。
【0042】
一部の実施形態において、前記助触媒は、Re、ReO、またはReであり得、この場合、Reは、希土類元素であり、Eは、元素または元素の組み合わせであり、およびOは、酸素であり;ならびにrは、1から2、例えば約1から約1.5、または約1.5から約2であり;sは、2から3、例えば約1または約2であり;およびtは、0から3、例えば約0.01から約1、約1から約2、または約2から約3である。一部の実施形態において、前記助触媒は、Reであり、ここでのReは、希土類金属であり得、およびrは、1以上かつ2以下であり得、または1と2の間であり得、およびsは、2以上かつ3以下であり得、または2と3の間であり得る。適する希土類元素の例としては、スカンジウム、イットリウムならびにランタニドおよびアクチニド系列元素が挙げられる。ランタニド元素は、原子番号57から71を有する元素を含む。アクチニド元素は、原子番号89から103を有する元素を含む。一部の実施形態において、前記助触媒は、CeZr(この場合、y/x比=0.001〜0.999)であり得る。一部の実施形態において、前記光触媒は、セリウム、例えば、酸化セリウムを含むことがあり、この酸化セリウムには、+1、+2、+3、+4、+5もしくは+6の酸化状態もしくは形式電荷、または約+1から約+6、約+2から約+4、約+1から約+2、もしくは約+4から約+6の平均酸化状態もしくは形式電荷を有する酸化セリウムが含まれる。一部の実施形態において、前記助触媒は、CeO(a≦2)であり得る。一部の実施形態において、前記助触媒は、CeOであり得る。一部の実施形態において、前記助触媒は、酸化セリウム(CeO)であり得る。
【0043】
一部の実施形態において、前記助触媒は、Snが、例えば、助触媒の全モル数に基づき約1モル%から約50モル%、約5モル%から約15モル%、または約10モル%のSnが、ドープされたCeOである。
【0044】
一部の実施形態において、前記光触媒は、WOであり得、および前記助触媒は、CeO(a≦2)であり得る。
【0045】
一部の実施形態において、前記助触媒は、ケギン(Keggin)単位、例えば、リンモリブデン酸アンモニウム((NH[PMo1240])、12−リンタングステン酸、ケイタングステン酸およびリンモリブデン酸であることがある。ケギン単位の総合安定性は、アニオン状態の金属の容易な還元を可能にする。溶媒、溶液の酸性度およびα−ケギンアニオンの電荷に依存して、それは一または多電子段階で可逆的に還元され得る。
【0046】
一部の実施形態では、前記光触媒層を本明細書に記載する材料で形成することができる。
【0047】
理論により限定されることを望まないが、本発明者らは、酸化タングステンと併用でのCeOは、これらの材料の相対バンド位置のため、有用であるだろうと考える。さらに、CeOの屈折率が酸化タングステンと実質的に同じ、約90%から約110%、であることは、注目に値する。別の実施形態では、約95%から約105%である。一部の実施形態では、前記光触媒組成物の高い透明度により、約50%、60%、65%および/または70%より高い透明度の組成物/層/要素を得ることができる。屈折率整合による低い散乱損失は、透明組成物に直接寄与する。
【0048】
光触媒の助触媒に対するいずれの有用な比を用いてもよい。一部の実施形態において、光触媒組成物は、約1:5から約5:1、約1:3から約3:1、約1:2から約2:1または約1:1のモル比(光触媒:助触媒)を有し得る。
【0049】
一部の実施形態において、組成物は、酸化タングステンおよび希土類酸化物を約0.5:1から2:1または約1:1(酸化タングステン:希土類酸化物)のモル比で含有することができる。一部の実施形態において、前記希土類酸化物は、酸化セリウム(CeO)である。一部の実施形態において、前記光触媒組成物は、約1:5から約5:1、約1:3から約3:1、約1:2から約2:1、または約1:1のモル比(WO:CeO)を有する、WOとCeOを含み得る。
【0050】
図1は、本明細書に記載する要素の一部の実施形態の構造の模式図である。透明光触媒組成物100は、光触媒材料102および助触媒104で構成される。光波106は、透明光触媒組成物100の外部の光源108から透明光触媒組成物100を通り抜ける方向に放射される。一部の実施形態では、光触媒要素であって、上述の透明光触媒組成物100を含有するものである要素を提供する。一部の実施形態において、前記要素は、層であり得る。一部の実施形態において、前記要素は、基板の上に堆積されるコーティングであり得る。
【0051】
一部の実施形態において、前記光源108は、光ルミネセンス(リン光もしくは蛍光)、白熱、エレクトロ−またはケモ−またはソノ−またはメカノ−または熱−ルミネセンス材料のうちの少なくとも1つを含む、透明光触媒組成物100であり得る。リン光材料としては、ZnSおよびケイ酸アルミニウムを挙げることができ、これに対して蛍光材料としては、蛍光体、例えば、YAG−Ce、Y−Eu、様々な有機色素などを挙げることができる。白熱材料としては、炭素、タングステンを挙げることができ、その一方で、エレクトロルミネセンス材料としては、ZnS、InP、GaNなどを挙げることができる。任意の他の種類の光発生メカニズム、例えば、太陽光、蛍光灯、白熱灯、発光ダイオード(light−emitting diode:LED)系照明、ナトリウム灯、ハロゲン灯、水銀灯、貴ガス放電および火炎が、光触媒反応を開始させるためのエネルギーの供給に十分であることは、当業者には明らかであろう。
【0052】
図2は、本明細書に記載する要素の一部の実施形態のシステム200の模式図である。一部の実施形態では、透明光触媒要素202であって、基板204と透明光触媒組成物100とを含み、該組成物が、基板204と少なくとも一部は接触している、少なくとも1つの光触媒材料102および助触媒104を含むものである要素を提供する。一部の実施形態では、透明光触媒組成物100の少なくとも一部分が基板204の表面206またはその一部分と接触するように、透明光触媒組成物100を基板204に適用するまたは基板204上に堆積させることができる。一部の実施形態において、光触媒材料102および助触媒104は、互いの約0.75、約0.50、約0.20または約0.05以内の屈折率を有することができる。例えば、1つの実施形態において、前記少なくとも1つの光触媒材料102がWOであり得、助触媒104がCeOであり得る場合、それぞれの屈折率は、2.20および2.36である。
【0053】
一部の実施形態では、前記光触媒組成物が、光および分解すべき物質と接触することができるように、前記光触媒組成物を基板にコーティングする。
【0054】
前記基板上に堆積させることにより、前記光触媒組成物は、その基板への堆積前に形成された、別々に形成された層であることができる。もう1つの実施形態では、光触媒組成物100を、例えば、蒸着、例えば化学蒸着(CVD)または物理蒸着(PVD)のいずれか;ラミネーション、押圧、ロール塗り、浸漬、溶融、貼り合わせ、ゾル−ゲル堆積、スピンコーティング;ディップコーティング;バーコーティング;スロットコーティング;刷毛塗りコーティング、スパッタリング;熱溶射(火炎溶射、プラズマ溶射(DCもしくはRF)を含む);高速酸素燃料溶射(HVOF)、原子層堆積(ALD);コールドスプレー法、またはエアロゾル堆積によって、前記基板の表面に形成することができる。もう1つの実施形態では、前記光触媒組成物を前記基板の表面に組み込む、例えば、前記表面の中に部分的に埋め込むことができる。
【0055】
一部の実施形態において、前記光触媒組成物は、基板204を実質的に被覆する。一部の実施形態において、前記光触媒組成物は、基板表面206の少なくとも約75%、少なくとも約85%、または少なくとも約95%と接触する、またはそれを被覆する。
【0056】
より大きい表面積は、より高い光触媒活性と言い換えることができる。1つの実施形態において、前記光触媒のブルナウアー(Brunner)−エメット(Emmett)−テラー(Teller)BET比表面積は、0.1〜500m/gの間である。もう1つの実施形態において、前記光触媒のBET比表面積は、10〜50m/gである。
【0057】
もう1つの実施形態では、酸化タングステンの希土類酸化物に対する上述の組成を有する光触媒層を提供する。
【0058】
もう1つの実施形態には、光触媒組成物の製造方法であって、光触媒とCeOと分散媒とを含有する分散液を作る工程(ここで、それぞれの光触媒およびCeOの屈折率は、互いの少なくとも0.75以内であり、前記光触媒のCeOに対するモル比は、1〜99モル%光触媒および99〜1モル%CeOの間であり;前記分散液は、約2〜50重量%固形物を有する)と;前記分散液を基板に塗布する工程と;前記分散液および前記基板を、前記分散液から実質的にすべての前記分散媒を蒸発させるために十分な温度および時間長で加熱する工程とを含む方法がある。一部の実施形態では、前記分散液を、前記基板を全部もしくは一部被覆するように塗布するか、前記基板の表面にコーティングまたは表面層を作るように塗布する。
【0059】
もう1つの実施形態には、光触媒組成物の製造方法であって、可視光光触媒およびCeOの水性分散液を混合する工程(前記光触媒のCeOに対する比は、40〜60モル%光触媒および60〜40モル%CeOである)と;約10〜30重量%固形物の分散液を獲得するために十分な分散媒、例えば水、を添加する工程と;前記分散液を基板に塗布する工程と;前記基板を、前記分散液および前記基板から実質的にすべての水を蒸発させるために十分な温度および時間長で加熱する工程とを含む方法がある。一部の実施形態において、前記CeOは、ゾルであり得る。一部の実施形態では、前記光触媒材料を前記CeOゾルに添加する。一部の実施形態では、前記CeOを光触媒分散液に添加する。一部の実施形態では、前記光触媒分散液とCeOゾルまたは分散液の両方を別々に調製し、その後、互いに混合して分散液を作る。
【0060】
もう1つの実施形態において、前記光触媒のCeOに対する比は、約2:3から約3:2、例えば、40〜60モル%光触媒および60〜40モル%CeOの間であり得る。もう1つの実施形態において、前記光触媒のCeOに対する比は、約1:1[50モル%対50モル%]である。一部の実施形態において、前記CeOは、ゾルである。
【0061】
もう1つの実施形態において、添加する分散媒、例えば水、の量は、約2〜50重量%、約10〜30重量%、約15〜25重量%固形物の分散液を獲得するために十分なものである。もう1つの実施形態において、添加する分散媒、例えば水、の量は、約20重量%固形物の分散液を獲得するために十分なものである。
【0062】
もう1つの実施形態では、前記混合物被覆基板を、前記分散媒を実質的に除去するために十分な温度および/または十分な時間長で加熱する。一部の実施形態では、前記分散媒の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%を除去する。もう1つの実施形態では、前記分散液被覆基板をほぼ室温と500℃の間の温度で加熱する。もう1つの実施形態では、前記分散液被覆基板を約90℃と約150℃の間の温度に加熱する。もう1つの実施形態では、前記分散液被覆基板を約120℃の温度に加熱する。理論により限定されることを望まないが、前記温度を500℃未満で保持することで、例えば、光触媒材料相のより活性の低い相へ(高活性アナターゼTiOから、より活性の低いルチルへ)の変化、ドーパント拡散、ドーパント不活性化、担持材料分解または凝集(全活性表面積の低減)に起因する、前記光触媒材料の熱不活性化の可能性を低下させることができると考えられる。
【0063】
もう1つの実施形態では、前記分散液被覆基板を約10秒と約2時間の間の時間、加熱する。もう1つの実施形態では、前記混合物被覆基板を、約1時間の時間、加熱する。
【0064】
本明細書に記載する分散液を事実上、任意の基板に適用することができる。前記分散液の基板への他の適用方法としては、基板への前記分散液のスロット/ディップ/スピンコーティング、刷毛塗り、ロール塗り、浸漬、溶融、貼り合わせまたはスプレーを挙げることができる。適当な噴射剤を使用して分散液を基板にスプレーすることができる。
【0065】
一部の実施形態において、前記基板は、光を透過することが可能である必要はない。例えば、前記基板は、分散液を直接適用することができる一般的な工業用または家庭用表面であってよい。基板としては、ガラス(例えば、窓)、壁(例えば、乾式壁)、石(例えば、花崗岩カウンタートップ)、石造物(例えば、レンガ壁)、金属(例えば、ステンレス鋼)、木材、プラスチック、他の高分子表面、セラミック、およびこれらに類するものを挙げることができる。かかる実施形態における分散液を、塗料として、テープに塗布されている、壁紙に塗布されている、ドレープに塗布されている、ランプのかさに塗布されている、電燈カバーに塗布されている、テーブルまたはカウンター表面カバーに塗布されている液状接着剤として、およびこれらに類するものとして配合することができる。
【0066】
光触媒組成物は、有機化合物、例えば、アルデヒド(アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどを含む);炭化水素、例えば、アルカン(メタン、エタン、プロパン、ブタンなどを含む);芳香族炭化水素、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセンなど;原油、またはその留分;色素、例えば、アントシアニン、メチレンブルー、塩基性青41;揮発性有機化合物、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ベンゼン、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ホルムアルデヒド、酢酸エチル、キシレンなど;NO、例えば、NO、NO、NO、HONO;SO、例えば、SO、SO、など;CO、O;など、小有機分子、例えば、カフェイン、ジクロフェナク、イブプロフェン、ゲオスミン、フルメキンなど、細菌、例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌、アシネトバクター(Acinetobactor)、緑膿菌など、ウイルス、例えば、MS2、インフルエンザ、ノロウイルスなど、細菌胞子、例えば、クロストリジウム・ディフィシル、原生動物、例えば、ジアルジア属など、および真菌、例えば、カンジダ属などを光触媒分解することが可能であり得る。光触媒分解は、固相で起こることもあり、液相で起こることもあり、または気相で起こることもある。
【0067】
光触媒組成物の光触媒能力を試験するために、アセトアルデヒドの気相分解を用いた。光触媒試料を水に、またはメタノールもしくはエタノールをはじめとする他の溶媒に分散させる。バインダーをこの分散液に、10〜50%固形分を有する最終分散液を生成するように、添加してもよい。超音波プローブを使用して、その分散試料を均質化することができる。その後、その分散液を基板に塗布することができる。その後、その基板と塗布分散液の組み合わせを約120℃に加熱し、それによってその分散剤の実質的にすべてを蒸発させることができる。その後、無垢な光触媒表面を生成するために、それを約1時間、強力なUV照明に付すことができる。
【0068】
この光触媒組成物/基板をテドラーバッグ(5L)に入れることができ、その後、圧縮空気源から約3Lの空気をそのバッグに充満させることができる。その後、高感度水素炎イオン化検出器を装備した校正済みガスクロマトグラフ(GC−FID)を使用して測定して約80ppmの最終アセトアルデヒド濃度を達成するように、校正グレードの源からのアセトアルデヒドを添加することができる。
【0069】
このガスバッグ試料を暗所で約1時間平衡させることができ、ガスクロマトグラフィーおよび水素炎イオン化検出(gas chromatography and flame ionization detection:GC−FID)を用いて、アセトアルデヒドの安定濃度を確認することができる。その後、露光面で200mW/cmの照度を有する単色青色発光ダイオードアレイ(455nm)を使用して、そのバッグを照射することができる。自動システムを使用してそのバッグからガス試料を回収し、GC−FIDを用いて分析することができる。アセトアルデヒドの濃度の経時的変動を、そのクロマトグラムの対応するピーク下面積から決定することができる。他の適するガス検知機構、例えば、Gastecガス検知管を、前記バッグ内のアセトアルデヒド濃度の判定に使用してもよい。
【0070】
ガス分解率(%)を式[(X−Y)/X・100]に基づいて計算した値として設定することができ、この式中のXは、光照射前のガス濃度を表し、およびYは、そのガス濃度を測定したときのガス濃度を表す。
【0071】
1つの実施形態において、所望の光触媒活性レベルによって与えられるアセトアルデヒド分解率は、上述の照明を用いて約1時間に少なくとも約10%である。好ましい実施形態において、前記分解率は、約1時間に少なくとも約30%である。より好ましい実施形態において、前記率は、約1時間に50%である。もう1つの実施形態において、前記分解率は、約1時間に少なくとも約80%である。
【0072】
1つの実施形態において、光触媒材料は、光触媒粉末を含有し、この実施形態によると、この粉末の含有量は、0.1モル%以上かつ99モル%以下の範囲内に入る。もう1つの実施形態において、光触媒コーティング材料は、光触媒材料を含有し、この実施形態によると、この材料の含有量は、1モル%以上かつ90モル%以下の範囲内に入る。
【0073】
本明細書に記載する光触媒材料、組成物および分散液を、消毒剤、臭気除去剤、汚染物質除去剤、セルフクリーナー、抗微生物剤およびこれらに類するものとして使用することができる。前記材料、組成物および分散液を使用して、空気、液体、微生物および/または固形物質と相互作用させることができる。1つの実施形態では、それらを使用して、空気、例えば、密閉された環境における空気、例えば航空機胴体の中の空気、またはより汚染された環境、例えば自動車ガレージの中の空気をクリーニングすることができる。他の実施形態では、抗微生物特性のために、例えば、給食施設または食品生産施設または病院または診療所などの消毒を必要とする表面をコーティングするために、それらを使用することができる。
【0074】
一部の実施形態では、汚染された空気を光および本明細書に記載の光触媒材料、組成物または分散液に曝露し、それによって汚染物質を空気から除去する方法を用いる。
【0075】
一部の実施形態において、光および光触媒材料、組成物または分散液は、前記空気の汚染の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%以上を除去することができる。
【0076】
もう一つの実施形態では、汚染された水を光および本明細書に記載の光触媒材料、組成物または分散液に曝露し、それによって水中の汚染物質の量を低減させる方法を用いる。
【0077】
一部の実施形態において、光および光触媒材料、組成物または分散液は、前記水から汚染の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%以上を除去することができる。
【0078】
他の実施形態では、生物学的汚染物質を光および本明細書に記載の光触媒材料、組成物または分散液に曝露し、それによってその生物材料を消毒する方法を用いる。一部の実施形態において、生物材料としては、食品を挙げることができる。
【0079】
一部の実施形態において、光および光触媒材料、組成物または分散液は、空気中の前記生物材料からの汚染の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%以上を除去することができる。
【0080】
以下は、本明細書において特に企図される実施形態のリストである。
実施形態1.光触媒と助触媒とを含有する光触媒組成物。
実施形態2.前記助触媒が、前記光触媒の触媒性能を、アセトアルデヒドの光触媒的分解率によって測定して少なくとも約2向上させる、実施形態1の光触媒組成物。
実施形態3.前記光触媒および前記助触媒が、互いの約0.75以内である屈折率を有する、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態4.前記光触媒が、約1.5eVから約3.5eVのバンドギャップを有する、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態5.前記光触媒が、WO、TiO、またはTi(O,C,N):Snを含む、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態6.前記助触媒が、前記光触媒の伝導帯からの電子移動によって還元されることが可能な金属酸化物である、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態7.前記助触媒が、電子移動によってOを還元することが可能な金属酸化物である、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態8.前記助触媒が、大気中のOをスーパーオキシドラジカルイオンに転化させることが可能である、実施形態7の光触媒組成物。
実施形態9.前記助触媒が、大気中のOを周囲条件下でスーパーオキシドラジカルイオンに転化させることが可能である、実施形態8の光触媒組成物。
実施形態10.前記助触媒が、アナターゼTiO、SrTiO、KTaO、またはKNbOを含む、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態11.前記助触媒が、In、Ta、アナターゼTiO、ルチルTiO、アナターゼTiOとルチルTiOの組み合わせ、またはCeOを含む、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態12.前記助触媒が、金属二酸化物である、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態13.前記助触媒が、CeOである、実施形態12の光触媒組成物。
実施形態14. 前記CeOにSnがドープされている、実施形態12の光触媒組成物。
実施形態15.前記Snが、前記助触媒の約1モル%から約20モル%である、実施形態14の光触媒組成物。
実施形態16.前記助触媒が、TiOである、実施形態12の光触媒組成物。
実施形態17.前記助触媒が、前記光触媒の価電子帯より高い価電子帯または最高占有分子軌道を有する、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態18.前記光触媒が、正孔を該光触媒に移動させることが可能である、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態19.少なくとも約0.01モル%の光触媒、かつ100モル%未満の光触媒を含有する、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態20.前記光触媒が、酸化物半導体である、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態21.前記光触媒が、チタン(Ti)を含有する、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態22.前記光触媒が、タングステン(W)を含有する、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態23.前記光触媒に少なくとも1つの天然に存在する元素がドープされている、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態24.前記光触媒に遷移金属、遷移金属酸化物または遷移金属水酸化物が担持されている、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態25.前記遷移金属が、Cu、FeまたはNiである、実施形態24の光触媒組成物。
実施形態26.前記遷移金属酸化物が、Cu、FeまたはNiを含有する、実施形態24の光触媒組成物。
実施形態27.前記遷移金属水酸化物が、Cu、FeまたはNiを含有する、実施形態24の光触媒組成物。
実施形態28.前記光触媒に貴金属、貴金属酸化物または貴金属水酸化物が担持されている、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態29.前記貴金属が、Au、Ag、Pt、Pd、Ir、RuまたはRhである、実施形態28の光触媒組成物。
実施形態30.前記貴金属酸化物が、Au、Ag、Pt、Pd、Ir、RuまたはRhを含有する、実施形態28の光触媒組成物。
実施形態31.前記貴金属水酸化物が、Au、Ag、Pt、Pd、Ir、RuまたはRhを含有する、実施形態28の光触媒組成物。
実施形態32.前記助触媒が、無機のものである、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態33.前記無機助触媒が、バインダーを含む、実施形態32の光触媒組成物。
実施形態34.前記助触媒が、SiO、SnO、Al、ZrO、Fe、Fe、NiO、またはNbである、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態35.前記助触媒が、Re(この場合、Reは希土類金属であり、および1≦r≦2、2≦s≦3、Eは元素であり、および0≦t≦3)を含む、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態36.前記助触媒が、CeZr(この場合、y/x比=0.001から0.999)をさらに含む、実施形態35の光触媒組成物。
実施形態37.前記助触媒が、Re(この場合、Reは希土類金属であり、および1≦r≦2、1≦s≦2)を含む、実施形態35の光触媒組成物。
実施形態38.前記助触媒が、セリウムを含有する、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態39.前記助触媒が、酸化セリウムを含む、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態40.前記光触媒が、WOを含み、および前記助触媒が、CeO(x≦2.0)を含む、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態41.前記組成物が、アセトアルデヒドを光触媒分解することが可能である、前記いずれかの実施形態の光触媒組成物。
実施形態42.実施形態1〜41のいずれかの前記光触媒組成物を含有する光触媒層。
実施形態43.基板をさらに含有する光触媒層であって、前記光触媒組成物の少なくとも一部分がその基板表面と接触している、実施形態42の光触媒層。
実施形態44.光触媒層の製造方法であって、実施形態1〜41のいずれかの組成物を形成する工程;および前記組成物を基板に適用する工程を含む方法。
実施形態45.光触媒層の製造方法であって、
光触媒とCeOと分散媒とを含有する分散液を作る工程(ここで、
それぞれの光触媒およびCeOの屈折率は、互いの少なくとも0.75以内であり、前記光触媒のCeOに対するモル比は、1〜99モル%光触媒および99〜1モル%CeOの間であり;
前記分散液は、約2〜50重量%固形物を有する)と;
前記分散液を基板に塗布する工程と;
前記分散液および前記基板を、前記分散液から実質的にすべての前記分散媒を蒸発させるために十分な温度および時間長で加熱する工程と
を含む方法。
実施形態46.光触媒のCeOに対する前記モル比が、約1:1[50%対50%]である、実施形態45の方法。
実施形態47.光触媒のCeOに対する前記モル比が、約4:1[80%対20%]である、実施形態45の方法。
実施形態48.添加される分散媒の量が、約20重量%固形物の分散液を獲得するために十分なものである、実施形態45の方法。
実施形態49.前記基板が、室温と500℃の間の温度で加熱される、実施形態45の方法。
実施形態50.前記基板が、10秒と2時間の間の時間、加熱される、実施形態45の方法。
実施形態51.空気または水の浄化方法であって、前記空気または水を実施形態1〜41のいずれかの光触媒組成物の存在下で光に曝露する工程を含む方法。
実施形態52.前記光触媒組成物が、前記空気または水中の汚染の約50%より多くを除去する、実施形態51の方法。
実施形態53.汚染物質の除去方法であって、前記汚染物質を含有する材料を実施形態1〜41のいずれかの光触媒組成物の存在下で光に曝露する工程を含む方法。
実施形態54.実施形態1〜41のいずれかの光触媒組成物の存在下で前記空気または水を光に曝露する工程を含む消毒方法。
実施形態55.空気または水からの臭気除去方法であって、前記空気または水を実施形態1〜41のいずれかの光触媒組成物の存在下で光に曝露する工程を含む方法。
実施形態56.実施形態1〜41のいずれかの光触媒組成物を含有するセルフクリーニング材料。
実施形態57.前記光触媒組成物が、ガラス、壁板、石、石造物、金属、木材、プラスチック、他の高分子表面、コンクリート、繊維、布地、糸またはセラミックに適用される、実施形態51〜55のいずれかの方法。
実施形態58.前記光触媒組成物が、蒸着、例えば、化学蒸着(CVD)もしくは物理蒸着(PVD);ラミネーション;押圧;ロール塗り;浸漬;溶融;貼り合わせ;ゾル−ゲル堆積;スピンコーティング;ディップコーティング;バーコーティング;スロットコーティング;刷毛塗りコーティング;スパッタリング;熱溶射、例えば、火炎溶射、プラズマ溶射(DCもしくはRF);高速酸素燃料溶射(HVOF);原子層堆積;コールドスプレー法;またはエアロゾル堆積によって適用される、実施形態57の方法。
試料調製
【0081】
別段の指示がない限り、すべての材料をさらに精製せずに使用した。別段の指示がない限り、すべての材料をSigma Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)から購入した。
(実施例1)
【0082】
WO光触媒(200mg)を、本開示の中で前に説明した方法に従って調製して、水に添加した。次に、その得られた分散液を740mgのCeOゾル(日産化学工業株式会社(Nissan Chemical)NanoUse CE−20B)に添加した。CeOとWOのモル比を1:1(50モル%対50モル%)であるように選択した。その後、十分な量のRO(逆浸透処理)水(800mg)をその得られた分散液に添加して、水中で約20重量%固形物であるコーティング溶液を作製した。超音波ホモジナイザーを使用して、その得られた分散液を均質化した。その調製の結果として生じたものをガラス基板(50mm×75mm)に、スピンコーター(1200rpm/40秒)を使用することによってコーティングした。そのコーティングされた基板を約2分間、約120℃で加熱した。その結果として得たコーティングされた基板は、透明(約555nmで約86%)であった。1時間の青色発光ダイオード(LED)(455nm、200mW/cm)照射後、アセトアルデヒド分解率をモニターすることにより、光触媒活性を約81%と判定した。
(実施例2)
【0083】
SiOゾル(日産化学工業株式会社SNOWTEX O、258mg)をCeOゾルの代わりに添加したことを除き、実施例1と同様の手法でコーティングされた基板2を作製した。その結果として得たコーティングされた基板は、透明(約555nmで90%)であった。実施例1と同様の条件下での照射後、アセトアルデヒド分解率によって判定して、光触媒活性は約50%であった。
(実施例3)
【0084】
SiOゾル(日産化学工業株式会社SNOWTEX 20L、258mg)をCeOゾルの代わりに添加したことを除き、実施例1と同様の手法でコーティングされた基板3を作製した。その結果として得られた基板は、透明(555nmで91%)であった。実施例1と同様の条件下での照射後、アセトアルデヒド分解率によって判定して、光触媒活性は約67%であった。
(比較例1)
【0085】
シリコーン樹脂(信越化学工業株式会社(Shin−Etsu Chemical)、SCR−1012)をCeOゾルの代わりに添加したことを除き、実施例1と同様の手法で比較例1を作製した。WOの比率は、シリコーン樹脂中約20重量%であった。調製した溶液をガラス基板(50mm×75mm)にドクターブレードによってコーティングした。硬化のための120℃加熱の後、得られた基板は、半透明であった。その結果として得た基板は、555nmで約75%の透明度を呈示した。実施例1と同様の条件下での照射後、アセトアルデヒド分解率によって判定して、光触媒活性は、約1%であった。
(比較例2)
【0086】
ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)をアセトンに分散させたことを除き、実施例1と同様の手法で比較例2を作製した。WOの比率は、PMMA中約20重量%であり、水を添加しなかった。調製した溶液をガラス基板(50mm×75mm)にドクターブレードによってコーティングした。硬化のための120℃加熱の後、得られた基板は、半透明であった。その結果として得た基板は、555nmで約78%の透明度を呈示した。実施例1と同様の条件下での照射後、アセトアルデヒド分解率は、0.5%であった。
(比較例3)
【0087】
WO(0.8g)をAlゾル(日産化学工業株式会社Alumina−sol200、5g)に添加した。AlとWOのモル比を重量で1:1になるように選択した。その後、RO水(5.8g)を添加して、水中で14重量%固形物であるコーティング溶液を作製した。その調製した溶液をガラス基板(50mm×75mm)にスピンコーター(1200rpm/40秒)によってコーティングした。液体を蒸発させるための約120℃での加熱後、得られた基板は、半透明であった。その結果として得た基板は、透明(555nmで91%)であった。実施例1と同様の条件下での照射後、アセトアルデヒド分解率は、約0%であった。
(実施例4)
【0088】
30mLの5mMタングステン酸(WO・HO)および30mLのHF2%溶液(例えば、WO前駆体)を40mLのホウ酸(HBO)に添加した。結果として生じた溶液に2枚の75mm×25mmシリコンウェーハを浸漬し、約6時間、約30℃で撹拌した。その積層された基板をその溶液から取り出し、約400℃で約1時間アニールし、その結果、コーティングされたスライドガラス(実施例4)を得た。コーティング溶液は、CeOとWOの約1:1(50モル%対50モル%)のモル比を達成するために十分なCeOゾル(日産化学工業株式会社NanoUse CE−20B)を用いて調製した。その後、実施例1に関して説明したのと同様の手法でCeOコーティング溶液を用いて、上で論じたように実施例4の基板をスピンコーティングすることにより実施例4aを作製した。
【0089】
上の実施例4および4aに従って調製した、スピンコーティングされたスライドガラスを、Xeランプ(ランプ電力出力約300W)によるフルスペクトル照射下、約1時間、ホットプレートにより約120℃で加熱した。その後、各スライドを真空下で別々の5Lテドラーバッグ内に密封し、その後、約3Lの周囲空気および約80mLの3500ppmのアセトアルデヒドを注入した。各バッグを約2分間、手で軽くマッサージし、その後、暗所に約15分間置いた。ガスクロマトグラフィー−水素炎イオン化検出器(GC−FID)によってアセトアルデヒド濃度を80±2ppmであると推定した。試料が入っている各テドラーバッグを暗所に戻して約1時間置いた。そのスライド/テドラーバッグを50mW/cmの光度を有する455nmの青色LEDアレイに曝露した。GC−FIDの自動注入口により30分ごとに試料を採集し、残存アセトアルデヒドの量をそれ以後30分間隔で推定した。図3は、T−バインダー性能データを図示するグラフである。このグラフは、一般に、T−バインダーをWOと併用したとき単なるWOと比較して性能が向上されることを示す。
(実施例5〜7)
【0090】
5gのWO(Global Tungsten & Power、米国ペンシルバニア州トワンダ[GTP])を、直径約3mmのZrOボール約50gが入っている高純度アルミナボールミルジャーに添加し、ボールミル(SFM−1モデルDesktop Planetary Ball Miller(MTI Corp.所在))により25mLメタノール中で約4時間粉砕して、より小さい粒径を有する粉砕WO(GTP)を得た。米国特許第8,003,563号明細書(該参照資料は、その全体が参照により本明細書に援用されている)に記載されているものと同様の手法でプラズマ−WOを作製した。
【0091】
CeOを各々伴うおよび伴わない、WO(GTP)(実施例5:伴う、実施例5a:伴う/伴わない)、粉砕WO(GTP)(実施例6:伴う、実施例6a:伴う/伴わない)およびプラズマ−WO(実施例7:伴う、実施例7a:伴う/伴わない)の各々200mgを、LPD−WOの代わりに、ガラス基板にスピンコーティングしたことを除き、実施例4に関して説明したのと同様の手法でさらなるスライドガラスを作製し、テドラーバッグに入れた。CeOを使用したとき、各タイプのWOのCeOに対するモル比は、1:1であった。
【0092】
実施例4に関して説明したように、スピンコーティングされたスライドWO、粉砕WO、findおよびプラズマ−WO(各々、CeOを伴うおよび伴わない)を調製し、アセトアルデヒド分解について試験した。結果を図4に示す。
(実施例8A〜8J)
【0093】
もう1つの実施例(実施例8)では、添加するCeOゾルの量を変えて様々なWO:CeOモル比(例えば0%、0.1%、5%、10%、30%、50%、75%、90%、95%、100%)((100−x)WO+(x)T−バインダー)を達成したことを除き、実施例1のものと同様の手法でさらなるスライドを作製した。図5は、270mW/cm青色LEDアレイ光への1時間の曝露後に推定したアセトアルデヒド分解を示す。
(実施例9〜15)
【0094】
もう1つの実施例(実施例9)は、さらなるスライドを次の手法で作製した:プラズマWO粉末(130mg)およびCeO粉末(96.5mg)(約1:1モル比)を先ずRO水に分散させ(20重量%の固体)、約10分間、浴音波処理(VWR B3500A−MT)し、その後、約5分間、プローブ音波処理(Sonic dismembrator Model 100、連続モード)した。その後、その混合物/複合材/ブレンドを、実施例4に関して説明したように、75mm×50mmスライドガラスにスピンコーティングし、アニールした。
【0095】
表1に示すように様々な他の材料をCeOの代わりに使用したことを除き、同様の手法でさらなるスライドを作製した:
【表1】
【0096】
各スライドガラスを、印加光度が約270mW/cmであったことを除き、実施例4に関して記載したものと同様の手法で、アセトアルデヒド分解について試験した。結果を図6に示す。
【0097】
もう1つの実施例では、上で作製した各々スライドガラスを、各々のスライドを様々な光度(約50mW/cmから約350mW/cm)に曝露したことを除き、すぐ上で説明したものと同様の手法で試験した。結果を図7に示す。
(実施例16〜30)
【0098】
加えて、もう1つの実施例では、様々な化合物(表2参照)からの約130mgの粉末試料を各々別々に最小量のRO水に溶解し、約5分間、均質化した。その後、実施例1に関して説明したプロセスに従ってそれらの化合物をWOと1:1モル比で併せた。
【表2】
【0099】
清浄なペトリ皿をエタノールで拭き、その皿の内面をコロナデバイスで約1から2分間イオン化した。各化合物の均質試料をその処理済みペトリ皿に注入し、その後、約120℃で加熱し、その間、乾燥したときにその試料の均一な分布を実現するために渦撹拌した。試料を乾燥させた後、そのペトリ皿をUV灯(300W)下に約1時間置いた。その後、ペトリ皿をテドラーバッグに挿入し、実施例4について説明したものと同様の手法で試験した。結果を図8に示す。
(実施例31〜35)
【0100】
もう1つの実施形態では、3.78gの2−エチルヘキサン酸スズ(II)[オクタン酸スズ(II)および/またはオクタン酸第一スズとしても公知](Spectrum Chemicals、米国カリフォルニア州ガーディナー)、5gのCe(NO・6HO(Sigma Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス)および3.0gの硝酸アンモニウム(NHNO)(Sigma Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス)を約25mLのRO処理水に溶解した。その後、1.129gのマレイン酸ヒドラジドを添加し、その直後にその混合物を約150℃に加熱し、約20分間撹拌した。
【0101】
その後、その結果として生じた前駆体混合物を、予熱したマッフル炉において周囲大気および圧力条件下、約450℃で約40分間加熱した。その結果として生じた粉末を約500℃で約20分間アニールした。その結果として生じた粉末をWOと1:1のモル比で混合し、実施例1に関して説明したものと同様の手法を用いてコーティングされたスライドガラスを作製し、その後、実施例4に関して説明した手順に従ってアセトアルデヒドを分解するその能力に関して試験した。
【0102】
表3に示したような材料の量および/または他のパラメータの量を使用したことを除き、同様の手法で他の粉末を作製した。
【表3】
【0103】
燃焼合成粉末を、実施例3に関して説明したのと同様の手法でスライドガラス上に組み込み、実施例4に関して説明したように試験した。結果を図9に示す。図9から分かるように、SnドープCeOと併用したWOは、アンドープCeOと併用したWOと比較してアルデヒド分解増進を示した。
(実施例36)
アルデヒド分解に向けての燃焼Ti(O,C,N):SnおよびプラズマCeOの併用
【0104】
もう1つの実施例では、Ti(O,C,N):Sn粉末をWO粉末の代わりに使用したことを除き、実施例1に関して説明したものと同様の手法でTi(O,C,N):SnをプラズマCeO粉末と併せ(1:1モル比)、マイクロスライドガラス上に、実施例1に関して説明したようにスピンコーティングした。前記Ti(O,C,N):Snは、2012年3月8日に出願された同時係属の米国特許仮出願第61/608,754号明細書(該参照資料は、その全体が参照により本明細書に援用されている)に記載されているように、300℃にてビス(乳酸アンモニウム)チタン(IV)・二水酸化物(7mLの50重量%水溶液)、オクタン酸スズ(0.883g)および硝酸アンモニウム(3.5g)に加えて完全分解性燃料としてグリシン(1.4g)を用い、その後、箱型炉において400℃で30分間アニールする水性燃焼法によって合成した。前の実施例のものと同様の手法で作製したスライドガラスを、より前に実施例4に関して説明したように(270mW/cmの光度で)アセトアルデヒド分解について試験した。テドラーバッグの中で5時間の曝露後、Ti(O,C,N):Sn光触媒をコーティングしたスライドガラスについて7%アセトアルデヒド分解が観察された。Ti(O,C,N):SnとCeOとの両方(1:1モル比)を有するスライドガラスをテドラーバッグの中で同様の手法で試験したとき、5時間の曝露後、アセトアルデヒド分解は、22%に増加した。
(実施例37)
定期旅客機における臭気の低減
【0105】
本明細書に記載の光触媒組成物を含む分散液を薄い接着フィルム上にコーティングとして施した。この接着フィルムを使用して、ボーイング737の天井をコーティングした。前記光触媒組成物は、荷物入れの上の発光ダイオード照明器具からの周囲光と反応して反応性空中浮遊種を生成することができ、該反応性空中浮遊種は、空気中の臭気を低減させることができる。
(実施例38)
食品調理用表面の消毒
【0106】
スプレーとして塗布することが可能な光触媒樹脂を食品調理工場に提供して、その調理台をコーティングする。その樹脂を加熱状態または非加熱状態で塗布して、調理台と適切に接着させることができる。工場内の食品と接触することになるすべての表面に前記樹脂をスプレーする。
【0107】
前記工場は、一般照明用に有機発光ダイオード照明器具を備えている。この周囲光は、前記樹脂表面と反応することができ、それによってその表面上で酸素ラジカルを生成することができる。これらのラジカルは、食品汚染物質と反応することができ、それによって食品に安全性を持たせることができる。前記樹脂の作業台への塗布の結果として、食品供給に拡大する細菌の事例が50%低減した。
【0108】
別段の指示がない限り、本明細書および請求項の中で用いる成分、特性、例えば分子量、反応条件などの量を表すすべての数は、すべての場合、用語「約」によって修飾されていると解さなければならない。したがって、相反する指示がない限り、本明細書および添付の請求項の中で示す数値パラメータは、得ようと努める所望の特性に依存して変わることがある近似値である。最低でも、および請求項の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータを、少なくとも、報告する有効数字の数に照らしておよび通常の丸め法を適用することによって、解釈すべきである。
【0109】
本発明を説明する文脈で(特に、後続の請求項の文脈で)用いる用語「a」、「an」、「the」および類似の指示対象は、本明細書の中で別段の指示がない限り、または文脈との明らかな矛盾がない限り、単数形と複数形の両方を包含すると解釈すべきである。本明細書に記載するすべての方法は、本明細書の中で別段の指示がない限り、または文脈との明らかな矛盾がない限り、任意の適する順序で行うことができる。本明細書に提供する任意のおよびすべての例または例示的な言葉(例えば、「などの」)の使用は、単に本発明をより十分に明らかにすることを意図したものであり、いずれの請求項の範囲に対しても制限を課さない。本明細書には、本発明の実施に不可欠な何らかの請求項不記載要素を示すと解釈すべき言葉はない。
【0110】
本明細書に開示する代替要素または実施形態の群化は、限定と解釈すべきでない。個々に、または本明細書中で見つけられる他の群構成単位または他の要素との任意の組み合わせで、各群構成単位に言及することおよび各群構成単位を請求項に記載することがある。ある群の1つ以上の構成単位が、便宜および/または特許性の理由で、ある群に含まれることもあり、またはある群から削除されることもある。いずれかのかかる包含または削除があるとき、本明細書は、添付の請求項で用いるすべてのマーカッシュ群の記述説明を満たすように修飾してその群を含有すると考えられる。
【0111】
本発明を実施するための本発明者らが知る最良の様式を含む一定の実施形態を本明細書に記載する。もちろん、記載するこれらの実施形態に対する変形実施形態は、上述の説明を読むことで通常の当業者には明らかになるだろう。本発明者らは、かかる変形形態を適宜用いることを当業者に期待し、および本発明者らは、本明細書に具体的に記載するのとは別様に本発明が実施されることを意図している。したがって、本請求項は、特許法によって許される、本請求項の中で列挙する主題のすべての改変実施形態および等価物を含む。さらに、本明細書の中で別段の指示がない限り、または文脈との明らかな矛盾がない限り、上記要素の、それらのすべての可能な変形形態での、任意の組み合わせを企図している。
【0112】
締めくくりに、本明細書に開示する実施形態は、本請求項の原理の例証となるものであることを理解しなければならない。用いることができる他の改変実施形態は、本請求項の範囲内である。それ故、限定としてではなく例として、代替実施形態を本明細書における教示に従って用いることができる。したがって、本請求項は、示すおよび記載するまさにその通りの実施形態に限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9