特許第6093377号(P6093377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6093377チタニア光触媒化合物およびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093377
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】チタニア光触媒化合物およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20170227BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20170227BHJP
   B01J 27/24 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   B01J35/02 J
   B01J37/08
   B01J27/24 M
【請求項の数】33
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-553337(P2014-553337)
(86)(22)【出願日】2013年1月14日
(65)【公表番号】特表2015-507537(P2015-507537A)
(43)【公表日】2015年3月12日
(86)【国際出願番号】US2013021480
(87)【国際公開番号】WO2013109507
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2015年12月21日
(31)【優先権主張番号】61/587,889
(32)【優先日】2012年1月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サムバンダン、エカムバラム
(72)【発明者】
【氏名】ムケルジー、ラジェッシュ
(72)【発明者】
【氏名】福村 卓哉
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−063473(JP,A)
【文献】 特開2004−082088(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/041658(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/107028(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/107518(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/099493(WO,A1)
【文献】 特開2009−023887(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/014170(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/009919(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒
(式中、
Mは、Sn、Zn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;
rは、0.0001から0.25の範囲であり;
xは、0.001から0.1の範囲であり;および
yは、0.001から0.1の範囲である)。
【請求項2】
rが0.20以下である、請求項1に記載の光触媒。
【請求項3】
rが0.15以下である、請求項1に記載の光触媒。
【請求項4】
rが0.05以下である、請求項1に記載の光触媒。
【請求項5】
rが、0.0001から0.15の範囲である、請求項1に記載の光触媒。
【請求項6】
rが、0.0001から0.10の範囲である、請求項1に記載の光触媒。
【請求項7】
rが、0.0001から0.05の範囲である、請求項1に記載の光触媒。
【請求項8】
Mが、Snである、請求項1に記載の光触媒。
【請求項9】
rが、少なくとも0.001である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光触媒。
【請求項10】
rが、少なくとも0.01である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光触媒。
【請求項11】
xが、0.001から0.07の範囲である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光触媒。
【請求項12】
yが、0.001から0.05の範囲である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光触媒。
【請求項13】
(Ti0.99Sn0.01)(O2−x−y)、(Ti0.97Sn0.03)(O2−x−y)、(Ti0.95Sn0.05)(O2−x−y)、(Ti0.90Sn0.10)(O2−x−y)、(Ti0.85Sn0.15)(O2−x−y(Ti0.95Zn0.05)(O2−x−y)、および(Ti0.85Zn0.15)(O2−x−y)からなる群より選択される、請求項1に記載の光触媒。
【請求項14】
(Ti0.95Sn0.05)(O2−x−y)、(Ti0.90Sn0.10)(O2−x−y)、および(Ti0.85Sn0.15)(O2−x−y)からなる群より選択される、請求項13に記載の光触媒。
【請求項15】
xが、0.08以下である、請求項13又は14に記載の光触媒。
【請求項16】
yが、0.050以下である、請求項13〜15のいずれか一項に記載の光触媒。
【請求項17】
アナターゼ相を含有する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の光触媒。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の光触媒と、貴金属、Rb、またはこれらの組み合わせとを含有する組成物。
【請求項19】
前記貴金属が、Pt、Ag、Au、Rh、Re、Ir、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記貴金属が、Pt、Ag、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
化合物を光触媒分解する方法であって、
前記化合物と請求項1〜17のいずれか一項に記載の光触媒とを接触させる段階;および
200nmから800nmの間の波長を有する電磁線に前記光触媒を暴露する段階を含む方法。
【請求項22】
(Ti1−r)(O2−x−y)の式(式中、
Mは、Sn、Zn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;
rは、0.0001から0.25の範囲であり;
xは、0.001から0.1の範囲であり;および
yは、0.001から0.1の範囲である)
によって表される光触媒組成物を製造する方法であって、
混合物を100℃から800℃の範囲の第一の温度で少なくとも10秒間の加熱時間の間、加熱して、固体を形成する工程(ここで、前記混合物は、
チタン化合物と、
少なくとも第二の金属元素を含有する少なくとも1つの第二の金属化合物と
を含有し、
前記少なくとも1つの第二の金属元素が、Sn、Zn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものであり、
前記混合物中の前記チタンの前記第二の金属元素に対するモル比は、10,000:1から3:1の範囲である);および
前記固体を150℃から650℃の範囲の第二の温度で少なくとも1分間加熱して光触媒組成物を得る工程
を含む方法。
【請求項23】
前記チタン化合物が、有機チタン化合物である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記有機チタン化合物が、式I:
【化1】
によって表される化合物、オキソ−オキサラトチタン(IV)酸アンモニウム、ヒドロキシカルボキシラト−ペルオキソチタン、乳酸チタン、マレイン酸チタン錯体、クエン酸チタン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第二の金属元素が、Snである、請求項22〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第二の金属化合物が、オクタン酸第一スズ、スズ(IV)−オキシン錯体、ジブチルスズ、テトラブチルスズ亜鉛酸塩およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項22〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記混合物が、可燃性化合物をさらに含有する、請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記可燃性化合物が、尿素、ヒドラジン系化合物、アミノ酸(グリシン、ロイシン、バリン、セリン、アラニンを含む)、3−メチルピラゾール−5−オン、ジホルミルヒドラジン、およびヘキサメチレンテトラアミンからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記混合物が、酸化剤をさらに含有する、請求項22〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記酸化剤が、硝酸アンモニウム、過酸化水素および硝酸グアニジンからなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記混合物が、貴金属化合物および/またはRbを含有する化合物をさらに含有する、請求項22〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記貴金属化合物が、Pt、Ag、Au、Rh、Reおよび/またはIrを含有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記貴金属化合物が、硝酸銀、硝酸テトラアミン白金(II)、硝酸ロジウム、シュウ酸白金(II)または乳酸銀を含む、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国出願第61/587,889号の優先権の恩典を主張するものであり、前記米国出願はその全体が参照により本明細書に援用されている。
【0002】
本出願は、化学分野、および特に光触媒材料に関する。
【背景技術】
【0003】
チタニアの光触媒活性は、1972年に藤嶋および本多によって最初に発見された。チタニアは、それ以来、水系および大気系における有機汚染物質の光を利用する除染のための第一世代触媒として役立ってきた。多くの研究活動が、紫外または可視線下でのTiOの光触媒作用の向上に向けられてきた。チアニアの光触媒活性を向上させようとして、チタニアは、様々な貴金属および遷移金属、例えば金、銀、白金、鉄および銅で修飾されてきた。一般に、貴金属および遷移金属の費用および伝導帯位置は、チタニアの光触媒活性の向上には適していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示する一部の実施形態は、酸化チタン系光触媒を含む。本明細書に開示する一部の実施形態は、光触媒組成物の製造方法を含む。本明細書に開示する一部の実施形態は、酸化チタン系組成物を使用して材料を光触媒分解する方法を含む。
【0005】
本明細書に開示する一部の実施形態は、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒を含み、この式中のMは、Sn、Ni、Sr、Ba、Fe、Bi、V、Mo、W、Zn、Cu、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;rは、約0.0001から約0.25の範囲であり;xは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。
【0006】
一部の実施形態において、rは、約0.20以下である。一部の実施形態において、rは、約0.15以下である。一部の実施形態において、rは、約0.05以下である。一部の実施形態において、Mは、Sn、Ni、Sr、Ba、Fe、Bi、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。一部の実施形態において、rは、約0.0001から約0.15の範囲である。一部の実施形態において、Mは、Mo、W、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。一部の実施形態において、rは、約0.0001から約0.10の範囲である。一部の実施形態において、Mは、Vである。一部の実施形態において、rは、約0.0001から約0.05の範囲である。一部の実施形態において、Mは、Snである。一部の実施形態において、rは、少なくとも約0.001である。一部の実施形態において、rは、少なくとも約0.01である。一部の実施形態において、rは、少なくとも約0.1である。一部の実施形態において、xは、約0.001から約0.07の範囲である。一部の実施形態において、yは、約0.001から約0.05の範囲である。
【0007】
一部の実施形態において、前記光触媒は、(Ti0.99Sn0.01)(O2−x−y)、(Ti0.97Sn0.03)(O2−x−y)、(Ti0.95Sn0.05)(O2−x−y)、(Ti0.90Sn0.10)(O2−x−y)、(Ti0.85Sn0.15)(O2−x−y)、(Ti0.985Ni0.015)(O2−x−y)、(Ti0.98Ni0.02)(O2−x−y)、(Ti0.97Ni0.03)(O2−x−y)、(Ti0.99Sr0.01)(O2−x−y)、(Ti0.97Sr0.03)(O2−x−y)、(Ti0.95Sr0.05)(O2−x−y)、(Ti0.97Ba0.03)(O2−x−y)、(Ti0.95Ba0.05)(O2−x−y)、(Ti0.94Sn0.05Fe0.01)(O2−x−y)、(Ti0.94Sn0.05Ni0.01)(O2−x−y)、(Ti0.99Fe0.01)(O2−x−y)、(Ti0.95Zn0.05)(O2−x−y)、(Ti0.77Sn0.15Cu0.08)(O2−x−y)、(Ti0.85Zn0.15)(O2−x−y)、(Ti0.90Bi0.10)(O2−x−y)、(Ti0.9960.004)(O2−x−y)、(Ti0.9840.016)(O2−x−y)、(Ti0.9700.03)(O2−x−y)、(Ti0.997Mo0.003)(O2−x−y)、(Ti0.984Mo0.016)(O2−x−y)、(Ti0.957Mo0.043)(O2−x−y)、(Ti0.970.03)(O2−x−y)、および(Ti0.950.05)(O2−x−y)からなる群より選択される。
【0008】
一部の実施形態において、前記光触媒は、(Ti0.95Sn0.05)(O2−x−y)、(Ti0.90Sn0.10)(O2−x−y)、および(Ti0.85Sn0.15)(O2−x−y)からなる群より選択される。
【0009】
一部の実施形態において、xは、少なくとも約0.001である。
【0010】
一部の実施形態において、xは、約0.08以下である。
【0011】
一部の実施形態において、yは、少なくとも約0.001である。
【0012】
一部の実施形態において、yは、約0.050以下である。
【0013】
一部の実施形態において、前記光触媒は、アナターゼ相を含有する。
【0014】
本明細書に開示する一部の実施形態は、本出願において開示する光触媒のいずれかを有する組成物を含む。一部の実施形態において、前記組成物は、貴金属を含む。
【0015】
一部の実施形態において、前記貴金属は、Pt、Ag、Au、Rh、Rb、Re、Irおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0016】
一部の実施形態において、前記貴金属は、Pt、Ag、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0017】
本明細書に開示する一部の実施形態は、化合物を光触媒分解する方法を含み、この方法は、前記化合物と本出願において開示する任意の光触媒とを接触させる段階;および約200nmから約800nmの間の波長を有する電磁線に前記光触媒を暴露する段階を含む。
【0018】
本明細書に開示する一部の実施形態は、光触媒組成物を製造する方法を含み、この方法は、混合物を約100℃から約800℃の範囲の第一の温度で少なくとも約10秒間の加熱時間の間、加熱して、固体を形成する工程(ここで、前記混合物は、チタン化合物と、少なくとも第二の金属元素を含有する少なくとも1つの第二の金属化合物とを含有し、前記混合物中の前記チタンの前記第二の金属元素に対するモル比は、約10,000:1から約3:1の範囲である);および前記固体を約150℃から約650℃の範囲の第二の温度で少なくとも約1分間加熱して光触媒組成物を得る工程を含む。
【0019】
一部の実施形態において、前記チタン化合物は、有機チタン化合物である。
【0020】
一部の実施形態において、前記有機チタン化合物は、式I:
【化1】
によって表される化合物、オキソ−オキサラトチタン(IV)酸アンモニウム、ヒドロキシカルボキシラト−ペルオキソチタン、乳酸チタン、マレイン酸チタン錯体、クエン酸チタン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0021】
一部の実施形態において、前記少なくとも1つの第二の金属元素は、Sn、Ni、Sr、Ba、Fe、Bi、V、Mo、W、Zn、Cu、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0022】
一実施形態において、前記第二の金属元素は、Snである。
【0023】
一実施形態において、前記第二の金属元素化合物は、有機金属化合物である。
【0024】
一部の実施形態において、前記有機金属化合物は、オクタン酸第一スズ、スズ(IV)−オキシン錯体、ジブチルスズ、テトラブチルスズ、メタロセン(フェロセン、ニッケロセンを含む)、鉄酸塩、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、亜鉛酸塩、銅酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0025】
一部の実施形態において、前記混合物は、可燃性化合物をさらに含む。
【0026】
一部の実施形態において、前記可燃性化合物は、尿素、ヒドラジン系化合物、例えばカルボヒドラジド、アミノ酸(グリシン、ロイシン、バリン、セリン、アラニンを含む)、3−メチルピラゾール(methylpyrozole)−5−オン、ジホルミルヒドラジン、およびヘキサメチレンテトラアミンからなる群より選択される。
【0027】
一部の実施形態において、前記混合物は、酸化剤をさらに含有する。
【0028】
一部の実施形態において、前記酸化剤は、硝酸アンモニウム、過酸化水素および硝酸グアニジンからなる群より選択される。
【0029】
一部の実施形態において、前記混合物は、貴金属化合物をさらに含有する。
【0030】
一部の実施形態において、前記貴金属化合物は、Pt、Ag、Au、Rh、Rb、Reおよび/またはIrを含有する。
【0031】
一部の実施形態において、前記貴金属化合物は、硝酸銀、硝酸テトラアミン白金(II)、硝酸ロジウム、シュウ酸白金(II)または乳酸銀を含む。
【0032】
一部の実施形態において、前記混合物の少なくとも約95重量%は、炭素、水素、酸素、スズ、ニッケル、ストロンチウム、バリウム、鉄、ビスマス、バナジウム、モリブデンおよびタングステンからなる群より選択される元素の合量からなる。
【0033】
一部の実施形態において、前記光触媒組成物は、(Ti1ーr)(O2−x−y)の式によって表され、この式中のMは、Sn、Ni、Sr、Ba、Fe、Bi、V、Mo、W、Zn、Cu、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;rは、約0.0001から約0.25の範囲であり;xは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、実施例2および3に従って調製した化合物D、E、FおよびGについての粉末X線回折パターンを示す。
【0035】
図2図2は、実施例2および3に従って調製した化合物D、化合物Gおよび比較化合物Aについての拡散反射スペクトルを示す。
【0036】
図3図3は、実施例7に記載する様々な加熱条件下で調製したスズドープチタニア試料についての粉末X線回折パターンを示す。
【0037】
図4図4は、実施例2および3に従って調製した化合物DおよびGによるメチレンブルーの分解を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
チアニア光触媒、チタニア光触媒組成物、およびそれらの製造方法を本明細書に開示する。前記光触媒を例えば(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表すことができ、この式中のM、r、xおよびyは、下でさらに定義する。前記光触媒は、一部の実施形態では、チタニアに比べて優れた光触媒活性を生じさせることができる。前記光触媒の製造方法も開示する。それらの方法は、前記チタニア光触媒を得るための経済的技法をもたらすことができる。
【0039】
(チタニア光触媒)
本明細書に開示する一部の実施形態は、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒を含み、この式中のMは、Sn、Ni、Sr、Ba、Fe、Bi、V、Mo、W、Zn、Cu、またはこれらの組み合わせであり;rは、約0.0001から約0.25の範囲であり;xは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。一部の実施形態において、Mは、Sn2+、Sn4+、Ni2+、Sr2+、Ba2+、Fe3+、Bi3+、V5+、Mo6+、W6+、Zn2+、Cu2+、またはこれらの組み合わせである。一部の実施形態において、前記光触媒は、紫外および/または可視光線に曝露されたとき有機材料を減成する。
【0040】
Mは、Sn、Ni、Sr、Ba、Fe、Bi、V、Mo、W、Zn、Cu、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。一部の実施形態において、Mは、Sn2+、Sn4+、Ni2+、Sr2+、Ba2+、Fe3+、Bi3+、V5+、Mo6+、W6+、Zn2+、Cu2+、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。一部の実施形態において、Mは、Sn、Ni、Sr、Ba、Fe、Bi、またはこれらの組み合わせであり得る。一部の実施形態において、Mは、Sn2+、Sn4+、Ni2+、Sr2+、Ba2+、Fe3+、Bi3+、またはこれらの組み合わせであり得る。一部の実施形態において、Mは、Mo、W、およびこれらの組み合わせから選択される。一部の実施形態において、Mは、Mo6+、W6+、およびこれらの組み合わせから選択される。一部の実施形態において、Mは、Snであり得る。一部の実施形態において、Mは、Sn2+、Sn4+、およびこれらの組み合わせであり得、Mは、少なくとも2つの元素(例えば、2、3、4、5以上の元素)の組み合わせであってよい。一例として、Mは、Sn、Ni、Sr、Ba、Fe、Bi、V、Mo、W、ZnおよびCuから各々選択される、第一の元素と第二の元素の組み合わせであってもよい。一例として、Mは、Sn2+、Sn4+、Ni2+、Sr2+、Ba2+、Fe3+、Bi3+、V5+、Mo6+、W6+、Zn2+およびCu2+から各々選択される、第一の元素と第二の元素の組み合わせであってもよい。前記第一の元素の前記第二の元素に対するモル比は、例えば、少なくとも約10対90;少なくとも約20対80;少なくとも約40対60;または少なくとも約1対1であり得る。前記第一の元素の前記第二の元素に対するモル比は、例えば、約90対10以下;約80対20以下;約60対40以下、または約1対1以下であり得る。一部の実施形態において、Mは、第一の元素がSnである組み合わせである。一部の実施形態において、Mは、第一の元素がSn2+および/またはSn4+である組み合わせである。一部の実施形態において、Mは、第一の元素がSnであり、および第二の元素がNi、FeおよびCuならびにこれらの組み合わせから選択される、組み合わせである。一部の実施形態において、Mは、第一の元素がSn4+であり、および第二の元素がNi2+、Fe3+およびCu2+ならびにこれらの組み合わせから選択される、組み合わせである。一部の実施形態において、Mは、第一の元素がSn2+であり、および第二の元素がNi2+、Fe+およびCu2+ならびにこれらの組み合わせから選択される、組み合わせである。一部の実施形態において、Mは、1つのみの元素である。例えば、Mは、Snのみであり得る。例えば、Mは、Sn4+のみであり得る。
【0041】
前記光触媒中のMの量は、特に限定されない。rは、例えば、約0.25以下;約0.20以下;約0.15以下;約0.10以下;約0.08以下;または約0.05以下であり得る。rはまた、例えば、少なくとも約0.0001;少なくとも約0.001;少なくとも約0.005;少なくとも約0.001;少なくとも約0.03;少なくとも約0.05;または少なくとも約0.10であり得る。一部の実施形態において、rは、約0.0001から約0.25の範囲であり得る。一部の実施形態において、rは、約0.0001から約0.15の範囲であり得る。一部の実施形態において、rは、約0.0001から約0.05の範囲であり得る。一部の実施形態において、Mは、Vであり、およびrは、約0.0001から約0.05の範囲である。一部の実施形態において、Mは、V5+であり、およびrは、約0.0001から約0.05の範囲である。一部の実施形態において、Mは、MoまたはWであり、およびrは、約0.0001から約0.10の範囲である。一部の実施形態において、Mは、Mo6+またはW6+であり、およびrは、約0.0001から約0.10の範囲である。rの値の非限定的な例としては、約0.05、約0.10、約0.15または約0.20が挙げられる。
【0042】
前記光触媒中の炭素の量もまた様々であり得る。xは、例えば、少なくとも約0.001;少なくとも約0.008;少なくとも約0.01;少なくとも約0.02;少なくとも約0.03;少なくとも約0.04;または少なくとも約0.05であり得る。xはまた、例えば、約0.10以下;約0.08以下;約0.07以下;約0.06以下;約0.05以下;約0.04以下;約0.03以下;または約0.02以下であり得る。一部の実施形態において、xは、約0.001から約0.1の範囲であり得る。一部の実施形態において、xは、約0.008から約0.07の範囲であり得る。一部の実施形態において、xは、約0.004から約0.08の範囲であり得る。xの値の非限定的な例としては、約0.08、約0.01、約0.02、約0.04および約0.05が挙げられる。
【0043】
前記光触媒中の窒素の量も特に限定されない。yは、例えば、少なくとも約0.001;少なくとも約0.005;少なくとも約0.01;少なくとも約0.02;少なくとも約0.025;少なくとも約0.03;または少なくとも約0.04であり得る。yはまた、例えば、約0.1以下;約0.08以下;約0.05以下;約0.04以下;約0.03以下;約0.02以下;または約0.01以下であり得る。一部の実施形態において、yは、約0.005から約0.05の範囲であり得る。一部の実施形態において、yは、約0.001から約0.1の範囲であり得る。yの値の非限定的な例としては、約0.005、約0.01および約0.04が挙げられる。
【0044】
非常に多くの光触媒が本出願の範囲内である。一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがSnであり;rが約0.01、約0.03、約0.05、約0.10または約0.15から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがSn2+であり;rが約0.01、約0.03、約0.05、約0.10または約0.15から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがSn4+であり;rが約0.01、約0.03、約0.05、約0.10または約0.15から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。例えば、前記光触媒は、(Ti0.99Sn0.01)(O2−x−y)、(Ti0.97Sn0.03)(O2−x−y)、(Ti0.95Sn0.05)(O2−x−y)、(Ti0.90Sn0.10)(O2−x−y)、または(Ti0.85Sn0.15)(O2−x−y)であり得、これらの式中のxは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。
【0045】
一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがNiであり;rが約0.015、約0.02または約0.03から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがNi2+であり;rが約0.015、約0.02または約0.03から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。例えば、前記光触媒は、(Ti0.985Ni0.015)(O2−x−y)、(Ti0.98Ni0.02)(O2−x−y)、または(Ti0.97Ni0.03)(O2−x−y)であり得、これらの式中のxは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。
【0046】
一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがSrであり;rが約0.01、約0.03または約0.05から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがSr2+であり;rが約0.01、約0.03または約0.05から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。例えば、前記光触媒は、(Ti0.99Sr0.01)(O2−x−y)、(Ti0.97Sr0.03)(O2−x−y)、または(Ti0.95Sr0.05)(O2−x−y)であり得、これらの式中のxは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。
【0047】
一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがBaであり;rが約0.03または約0.05から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがBa2+であり;rが約0.03または約0.05から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。例えば、前記光触媒は、(Ti0.97Ba0.03)(O2−x−y)、または(Ti0.95Ba0.05)(O2−x−y)であり得、これらの式中のxは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。
【0048】
一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがFeであり;rが約0.01であり;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがFe3+であり;rが約0.01であり;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。例えば、前記光触媒は、(Ti0.99Fe0.01)(O2−x−y)であり得、これらの式中のxは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。
【0049】
一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがZnであり;rが約0.05または約0.15から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがZn2+であり;rが約0.05または約0.15から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。例えば、前記光触媒は、(Ti0.95Zn0.05)(O2−x−y)、または(Ti0.85Zn0.15)(O2−x−y)であり得、これらの式中のxは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。
【0050】
一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがBiであり;rが約0.1であり;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがBi3+であり;rが約0.1であり;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。例えば、前記光触媒は、(Ti0.9Bi0.1)(O2−x−y)であり得、これらの式中のxは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。
【0051】
一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがVであり;rが約0.004、約0.016または約0.03から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがV5+であり;rが約0.004、約0.016または約0.03から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。例えば、前記光触媒は、(Ti0.996Vr0.004)(O2−x−y)、(Ti0.9840.016)(O2−x−y)、または(Ti0.9700.03)(O2−x−y)であり得、これらの式中のxは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。
【0052】
一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがMoであり;rが約0.003、約0.016または約0.043から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがMo6+であり;rが約0.003、約0.016または約0.043から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。例えば、前記光触媒は、(Ti0.997Mo0.003)(O2−x−y)、(Ti0.984Mo0.016)(O2−x−y)、または(Ti0.957Mo0.043)(O2−x−y)であり得、これらの式中のxは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。
【0053】
一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがWであり;rが約0.03または約0.05から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがW6+であり;rが約0.03または約0.05から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。例えば、前記光触媒は、(Ti0.970.03)(O2−x−y)、または(Ti0.950.05)(O2−x−y)であり得、これらの式中のxは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。
【0054】
一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがSnとFe、NiおよびCuから選択される第二の元素とであり;rが約0.06または約0.23から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがSn4+とFe3+、Ni2+およびCu2+から選択される第二の元素とであり;rが約0.06または約0.23から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。例えば、前記光触媒は、(Ti0.94Sn0.05Fe0.01)(O2−x−y)、(Ti0.94Sn0.05Ni0.01)(O2−x−y)、または(Ti0.77Sn0.15Cu0.08)(O2−x−y)であり得、これらの式中のxは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。
【0055】
一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがSnとFe、NiおよびCuから選択される第二の元素とであり;rが約0.06または約0.23から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。一部の実施形態では、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される酸化チタン系光触媒、式中のMがSn2+とFe3+、Ni2+およびCu2+から選択される第二の元素とであり;rが約0.06または約0.23から選択され;xが約0.001から約0.1の範囲であり;およびyが約0.001から約0.1の範囲である。例えば、前記光触媒は、(Ti0.94Sn0.05Fe0.01)(O2−x−y)、(Ti0.94Sn0.05Ni0.01)(O2−x−y)、または(Ti0.77Sn0.15Cu0.08)(O2−x−y)であり得、これらの式中のxは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。
【0056】
前記光触媒は、固体であり得る。一部の実施形態において、前記固体光触媒は、結晶形態を含むことができる。例えば、前記光触媒は、ルチル結晶相を有することがあり、またはアナターゼ結晶相を有することもある。一部の実施形態において、前記組成物は、ルチル結晶相とアナターゼ結晶相の組み合わせを含むことがある。一部の実施形態において、前記光触媒の少なくとも約10%は、アナターゼ相を有する。一部の実施形態において、前記光触媒の少なくとも約30%は、アナターゼ相を有する。一部の実施形態において、前記光触媒の少なくとも約50%は、アナターゼ相を有する。一部の実施形態において、前記光触媒の少なくとも約50%は、アナターゼ相を有する。一部の実施形態において、前記光触媒の少なくとも約50%は、アナターゼ相を有する。
【0057】
一部の実施形態において、前記光触媒の少なくとも約60%は、アナターゼ相を有する。一部の実施形態において、前記光触媒の少なくとも約75%は、アナターゼ相を有する。一部の実施形態において、前記光触媒の少なくとも約80%は、アナターゼ相を有する。一部の実施形態において、前記光触媒の少なくとも約90%は、アナターゼ相を有する。一部の実施形態において、前記光触媒の少なくとも約95%は、アナターゼ相を有する。一部の実施形態において、前記光触媒の少なくとも約99%は、アナターゼ相を有する。一部の実施形態において、本出願の光触媒は、紫外および/または可視光線に曝露されたとき有機材料を減成する。例えば、本出願の光触媒は、約200nmから約800nmの範囲の発光波長を有する光に曝露されたとき有機材料を減成する。
【0058】
チタニア光触媒は、一部の実施形態では、高い表面積を有し得る。本出願は、高い表面積が前記光触媒の触媒活性を向上させることができることを高く評価する。前記チタニア光触媒は、例えば、約500m/g以下;約300m/g以下;約200m/g以下;約100m/g以下;約75m/g以下;約50m/g以下;約40m/g以下;約30m/g以下;約20m/g以下;約10m/g以下;または約5m/g以下の比表面積を有し得る。一部の実施形態において、前記チタニア光触媒は、約2m/gから約30m/gの範囲の比表面積を有する。
【0059】
本明細書に開示する一部の実施形態は、チタニア光触媒組成物を含む。前記組成物は、本出願において開示する光触媒のいずれか1つ以上を含むことができる。例えば、前記組成物は、(Ti1−rSn)(O2−x−y)の式によって表される光触媒を含むことができ、この式中のrは、約0.0001から約0.25の範囲であり;xは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。前記組成物中の光触媒の量は、例えば、少なくとも約0.1重量%;少なくとも約1重量%;少なくとも約5重量%;少なくとも約10重量%;少なくとも約25重量%;少なくとも約50重量%;少なくとも約80重量%;少なくとも約90重量%;少なくとも約95重量%;または少なくとも約99重量%であることがある。
【0060】
前記チタニア光触媒組成物は、1つ以上の貴金属も場合により含むことがある。前記貴金属は、例えば、Pt、Ag、Au、Rh、Rb、Re、Ir、またはこれらの組み合わせであり得る。一部の実施形態において、前記貴金属は、Ptおよび/またはAgである。下でさらに論ずるように、前記チタニア光触媒の製造プロセス中に貴金属化合物を使用することにより、前記組成物に貴金属を含めることができる。前記組成物中の前記貴金属の重量は、その組成物の光触媒特性を増加させるために有効であり得る。前記組成物中の前記貴金属の前記チタン系光触媒に対する重量は、一部の実施形態では、約0.001重量%から約10重量%、約0.5重量%から約7.5重量%、例えば、約1重量%、約2重量%、約3重量%および/または約5重量%であり得る。前記貴金属は、前記組成物中で分離相を形成することがある。例えば、前記貴金属は、チタニア光触媒相に分散されたナノ粒子(例えば、約100nm以下の平均直径を有する粒子)を形成することがある。
【0061】
本明細書に開示する一部の実施形態は、化合物を分解する方法を含む。この方法は、前記化合物と本出願に記載する光触媒の1つ以上とを接触させる段階、および約200nmから約800nmの間の波長を有する電磁線、例えば、紫外および/または可視線に前記光触媒を曝露する段階を含み得る。一部の実施形態において、前記化合物は、有機化合物である。一部の実施形態において、前記方法は、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される光触媒を含み、この式中のMは、Sn、Ni、Sr、Ba、Fe、Bi、V、Mo、W、Zn、Cu、またはこれらの組み合わせであり;rは、約0.0001から約0.25の範囲であり;xは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である。
【0062】
(チタニア光触媒の製造方法)
本明細書に開示する一部の実施形態は、チタニア光触媒の製造方法を含む。一部の実施形態において、前記方法は、少なくとも1つの液相成分、好ましくは混合物、を有する混合物を第一の温度で加熱して、固体を形成する工程、および前記固体を第二の温度で加熱して、光触媒組成物を得る工程を含み、この場合、少なくとも1つの液相成分、好ましくは混合物、を有する前記混合物は、チタン化合物と、第二の金属元素を含有する少なくとももう1つの金属含有化合物とを含み得る。一部の実施形態において、前記金属含有化合物は、少なくとも第二および第三の金属元素を含むことができる。一部の実施形態において、前記液相成分は、水、例えば水性混合物、であり得る。一部の実施形態において、前記液相成分は、他の極性溶媒、例えば、C−Cアルコール(メタノール、エタノール、ブタノール、tert−ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)であり得る。一部の実施形態において、前記チタン化合物は、有機チタン化合物であり得る。一部の実施形態において、前記混合物は、有機チタン化合物と、第二の金属元素を含む少なくとも1つの有機金属化合物とを含むことがある。一部の実施形態において、前記混合物は、反応条件を変更および/または助長するために非金属のみを含有する化合物を含むことがある。一部の実施形態において、かかる非金属化合物は、硝酸アンモニウム;尿素;ヒドラジン系化合物、例えばカルボヒドラジン;アミノ酸、例えばグリシン、ロイシン、バリン、セリン、アラニン;過酸化水素;硝酸グアニジン;3−メチルピラゾール(methylpyrozole)−5−オン;ジホルミルヒドラジン;およびヘキサメチレンテトラアミンのうちの1つ以上を含むことがある。一部の実施形態において、前記混合物は、水を含有することがある。
【0063】
いずれの特定の理論にも拘束されないが、前記混合物の加熱が前記成分を分解して光触媒を生じさせると考えられる。様々なプロセス条件、例えば、加熱条件、ならびに前記混合物に使用されるチタン、金属および非金属含有化合物の量を調整することによって、前記光触媒中のチタン、第二の金属元素、炭素および窒素の量を変えることができることは、本出願の教示により導かれて、当業者には理解されるであろう。
【0064】
前記プロセスで使用するチタン化合物のタイプは、特に限定されない。一部の実施形態において、前記チタン化合物は、有機チタン化合物を含む。さらに、前記プロセスにおいて使用する有機チタン化合物のタイプは、特に限定されない。一部の実施形態において、前記有機チタン化合物は、水溶性であり得る。前記チタン化合物は、例えば、金属硝酸塩、金属アンモニウム塩、または有機金属含有化合物であり得る。一部の実施形態において、前記有機チタン化合物は、エステルまたはキレートである。一部の実施形態において、前記有機チタン化合物は、有機チタン酸塩である。使用することができる有機チタン化合物の非限定的な例としては、TYZOR(商標、DuPont)、有機チタン酸塩、例えば、ビス(乳酸アンモニウム)チタン(V)ジヒドロキシド、オキソ−オキサラトチタン(IV)酸アンモニウム、ヒドロキシカルボキシラト−ペルオキソチタン、乳酸チタン、マレイン酸チタン錯体、シュウ酸チタンおよびクエン酸チタンが挙げられる。これらの有機チタン化合物を単独で使用してもよく、または併用してもよい。一部の実施形態において、前記有機チタン化合物は、式I:
【化1】
によって表される。
【0065】
金属化合物のタイプも、それがチタン以外の第二の金属元素を含む限り、特に限定されない。一部の実施形態において、前記金属化合物は、有機金属である。一部の実施形態において、前記有機金属化合物は、水溶性である。前記有機金属化合物は、例えば、Sn、Ni、Sr、Ba、Fe、Bi、V、Mo、W、Zn、Cuおよびこれらの組み合わせから選択される第二の金属元素を含むことができる。一部の実施形態において、前記第二の金属元素は、Snである。金属化合物の非限定的な例としては、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、金属アンモニウム錯体、例えばメタバナジン酸アンモニウム、クエン酸塩、酢酸塩、アセチルアセトナート、オクタン酸塩、およびヘキサン酸塩が挙げられる。有機金属化合物の非限定的な例としては、オクタン酸第一スズ、スズ(IV)−オキシン錯体、ジブチルスズ、テトラブチルスズ、メタロセン(フェロセン、およびニッケロセンを含む)、鉄酸塩、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、亜鉛酸塩および銅酸塩が挙げられる。個々の金属化合物の選択が、その化合物中に含有されるその金属のみに左右され、その化合物自体の性質には左右されないことは、本出願の教示により導かれて、当業者には理解されるであろう。これらの第二の金属化合物を単独で使用してもよく、併用してもよい。一部の実施形態では、チタンと1つ以上の二次金属が同じ前駆体に含有される。
【0066】
前記チタン化合物と前記第二の金属化合物の相対量は、チタンのその他の金属元素に対する所望の比率に基づいて選択することができる。一部の実施形態では、前記チタン化合物の前記金属化合物に対する相対量を、前記水性混合物中の前記チタンの前記第二の金属元素に対するモル比が、約10,000:1から約3:1の範囲になるように選択することができる。前記有機チタン化合物の前記有機金属化合物に対する相対量を、前記水性混合物中の前記チタンの前記第二の金属元素に対するモル比が、例えば、約10,000以下:1;約5,000以下:1;約1,000以下:1;約500以下:1;約250以下:1;約100以下:1;約50以下:1;約20以下:1;約10以下:1;または約5以下:1になるように選択することができる。前記有機チタン化合物の前記有機金属化合物に対する相対量を、前記水性混合物中の前記チタンの前記第二の金属元素に対するモル比が、例えば、少なくとも約3:1;少なくとも約5:1;少なくとも約10:1;少なくとも約50:1;少なくとも約100:1;または少なくとも約200:1になるように選択することができる。
【0067】
前記混合物は、生成される光触媒の組成を調整するために、または前記化合物の前記光触媒への分解を助長するために、他の有機または無機化合物も場合により含むことがある。一部の実施形態において、前記場合により含まれる他の有機または無機化合物は、可燃性化合物および/または酸化剤であり得る。前記混合物中の任意選択の可燃性化合物の非限定的な例には、尿素、ヒドラジン系化合物、例えばカルボヒドラジド、アミノ酸(グリシン、ロイシン、バリン、セリン、アラニンを含む)、3−メチルピラゾール(methylpyrozole)−5−オン、ジホルミルヒドラジン;およびヘキサメチレンテトラアミンのうちの1つ以上が含まれる。前記混合物中の任意選択の酸化化合物の非限定的な例には、硝酸アンモニウム、過酸化水素および硝酸グアニジンのうちの1つ以上が含まれる。一部の実施形態において、前記混合物は、水を含有することがある。一部の実施形態において、前記場合により含まれる化合物は、前記光触媒組成物のCおよび/またはN源になり得る。
【0068】
前記混合物は、一部の実施形態では、本明細書に開示するプロセスを用いて前記光触媒と前記貴金属とを有する固体混合物(例えば、合金)を形成するために使用することができる貴金属化合物を含むことがある。前記貴金属化合物は、前記チタニア光触媒の製造方法中に加熱により貴金属に分解するように、構成することができる。前記貴金属化合物は、有機化合物である場合もあり、または無機化合物である場合もある。前記貴金属化合物は、1つ以上の貴金属、例えば、Pt、Ag、Au、Rh、Rb、Reおよび/またはIrを含む場合がある。一部の実施形態において、前記貴金属化合物は、Ptおよび/またはAgを含有する。貴金属化合物の非限定的な例としては、硝酸銀、硝酸テトラアミン白金(II)、硝酸ロジウム、シュウ酸白金(II)および乳酸銀が挙げられる。一部の実施形態において、前記貴金属化合物は、硝酸塩またはシュウ酸塩である。前記貴金属化合物の量は、最終組成物中の所望の貴金属量に基づいて選択することができる。
【0069】
前記混合物を固体に変化させるための加熱条件は、特に限定されず、その加熱により固体が得られるように選択することができる。一部の実施形態において、前記混合物の加熱条件は、前記有機チタン化合物および有機金属化合物が燃焼するために十分なものである。前記混合物を、例えば、少なくとも約100℃、少なくとも約150℃、少なくとも約250℃、少なくとも約300℃、または少なくとも約350℃の温度で加熱することができる。前記混合物を、例えば、約800℃以下、約700℃以下、約600℃以下、約500℃以下、約450℃以下、約400℃以下、または約350℃以下の温度で加熱することができる。一部の実施形態では、前記混合物を約150℃から約500℃の範囲の温度で加熱することができる。
【0070】
前記水性混合物を加熱する期間も様々であり得る。前記混合物を、例えば、少なくとも約10秒、少なくとも約1分、少なくとも約3分、少なくとも約5分、少なくとも約10分、少なくとも約15分、または少なくとも約20分の間、加熱することがある。前記混合物を、例えば、約10時間以下、約5時間以下、約1時間以下、約30分以下、約25分以下、約20分以下、約15分以下、または約10分以下の間、加熱することがある。一部の実施形態では、前記混合物を約5分から約30分の範囲の期間、加熱することがある。一部の実施形態では、前記混合物を少なくとも約5分の期間、加熱することがある。一部の実施形態において、加熱すべき混合物は、水性混合物である。
【0071】
前記混合物を固体に変化させた後、その固体をさらに加熱して、前記光触媒中の炭素および窒素含有量を調整することができる。前記固体を、例えば、少なくとも約150℃、少なくとも約250℃、少なくとも約350℃、少なくとも約400℃、少なくとも約425℃、または少なくとも約450℃の温度で加熱することができる。前記固体を、例えば、約650℃以下、約550℃以下、約500℃以下、または約450℃以下の温度で加熱することができる。一部の実施形態では、前記固体を約250℃から約500℃の範囲の温度で加熱することができる。
【0072】
前記固体を加熱する期間も様々であり得る。一部の実施形態において、前記固体の加熱は、金属元素の総量に対して約5モル%以下の炭素を有する光触媒組成物を生じさせるために十分なものであり得る。いずれの特定の理論にも拘束されないが、前記固体の加熱は前記光触媒の炭素および窒素成分を分解すると考えられる。この加熱段階はまた、前記固体の相構造を修飾すること(例えば、アナターゼ相のルチル相への少なくとも部分的な転化)ができる。前記固体を、例えば、少なくとも約1分、少なくとも約10分、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約90分、または少なくとも約2時間の間、加熱することがある。前記固体を、例えば、約10時間以下、約3時間以下、約2時間以下、約90分以下、約1時間以下、または約45分以下加熱することがある。一部の実施形態では、前記固体を約30分から約3時間の範囲の期間、加熱することがある。一部の実施形態では、前記混合物を少なくとも約30分の期間、加熱することがある。1つの非限定的な例として、前記固体を約475℃で約1時間加熱することがある。
【0073】
前記混合物を加熱する段階と前記固体を加熱する段階を組み合わせて単一操作にすることができることは、本出願の教示に導かれて、当業者には理解されるであろう。例えば、前記混合物を、その混合物を固体に変化させるために十分な時間約350℃で加熱し、その後、その温度で、その光触媒中の所望の炭素および窒素量を達成するために十分な期間、維持することができる。この組み合わせ操作における全加熱期間は、例えば、約65分であり得る。一部の実施形態では、前記混合物を前記固体とは異なる条件で加熱する。
【0074】
本出願において開示する方法は、本明細書に開示する光触媒のいずれかを生成することができる。一部の実施形態において、前記方法は、(Ti1−r)(O2−x−y)の式によって表される光触媒(式中、Mは、Sn、Ni、Sr、Ba、Fe、Bi、V、Mo、W、Zn、Cu、またはこれらの組み合わせであり;rは、約0.0001から約0.25の範囲であり;xは、約0.001から約0.1の範囲であり;およびyは、約0.001から約0.1の範囲である)を生成した。一部の実施形態において、前記光触媒は、アナターゼ相を含むこともあり、またはルチル相を含むこともある。
【実施例】
【0075】
さらなる実施形態を以下の実施例においてさらに詳細に開示する。これらの実施例は、いかなる点においても本請求項の範囲を制限するためのものではない。
【0076】
(実施例1:化合物A合成)
TYZOR LAの50重量%水溶液(25mL、Sigma Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス)を、燃焼および大量の黒色粉末の形成のために炉(Barnstead Thermolyne 47900、米国アイオワ州ドゥビューク)において約20〜30分間、350℃に予熱した。さらなるガスが認められなくなった後、得られた粉末を圧潰することなく大きいガラスペトリ皿(100×50)に移し、475℃に加熱し、この温度で約1時間維持した。その後、そのペトリ皿を室温に冷却して、帯黄色粉末を得た。その帯黄色粉末(化合物A)を特性評価および光触媒作用評価のために手で乳棒および乳鉢で圧潰した。
【0077】
(実施例2:化合物B、CおよびDの合成)
比較化合物A(P25チタニア)は、Evonik(Evonik Degussa Corp.、米国ニュージャージー州パーシッパニー)から入手した。化合物B、CおよびDは、下の表1に示すような様々なレベルのTYZOR LAおよび追加の前駆体を燃焼前にTYZOR LAに添加したことを除き、実施例1と同様の手法で調製した。
【表1】
【0078】
(実施例3:化合物EからABまでの合成)
化合物EからADまでは、下の表2に示すような様々なレベルのTYZOR LAおよび追加の前駆体を燃焼前に添加したことを除き、実施例1と同様の手法で調製した。化合物ACおよびADについては、貴金属を有する触媒組成物を得るために、貴金属化合物を追加の前駆体として含めた。
【表2】
【0079】
(実施例4:光触媒の窒素および炭素含有量)
上の実施例1および2において説明したプロセスに従って生成した4つのチタニア組成物(化合物A〜D)についての炭素および窒素含有量を、Leco Corp.(米国ミシガン州セントジョセフ)、CS600およびTC600をそれぞれ使用し、Lecoからの標準操作手順を用いて決定した。それらの結果を下の表3に示す。それらの結果は、前記混合物中の成分を変更することで前記光触媒中の炭素および窒素含有量を調整できることの証拠となる。
【0080】
Cu Kα線(Rigaku Miniflex II、Rigaku Americas、米国テキサス州ウッドランド)を使用する粉末X線回折を用いることでも前記試料を分析した。アナターゼ相の(101)平面の反射に対応する、25.281°2θにおける特性ピークの半値全幅(full−width at half−maximum:FWHM)を、下の表3に示す。比較組成物Aについての結果を比較のために示す。
【0081】
標準窒素吸着BET(Micromeritics Gemini V、Micrometrics Instruments Corp.、米国ジョージア州ノークロス)を使用して、前記試料についての比表面積(specific surface area:SSA)も決定した。これらの結果も下の表3に提供する。
【表3】
【0082】
(実施例5:粉末X線回折)
光触媒化合物D、E、FおよびGの結晶構造を、粉末X線回折を用いて分析した。結果を図1に示す。これらの結果は、それらの光触媒がアナターゼ結晶構造を含むことを示す。
【0083】
(実施例6:拡散反射分光法(Diffuse Reflectance Spectroscopy:DRS))
実施例2において説明したように調製した化合物D、Gおよび比較化合物Aを、拡散反射分光法(DRS)を用いて分析した。それらの結果を図2に示す。それらの結果は、スズドーピングが可視スペクトル(400nmから800nm)での吸収を増進することを示す。
【0084】
(実施例7:加熱条件の効果)
TYZOR LA(10mLの水中50重量%、Sigma Aldrich)とオクタン酸第一スズ液(1.262g、Spectrum Chemicals)の混合物を調製し、その後、約100℃で約20分間加熱した。この混合物に5gの硝酸アンモニウムを添加し、その後、350℃に予熱した炉(Barnstead Thermolyne 47900)に入れた。この温度で約20分後、大量の泡沫状黒色粉末が生成された。得られた材料をPYREX(登録商標)ペトリ皿に移し、様々な温度および時間でアニールした:(i)400℃、約2時間;(ii)475℃、約1時間;(iii)475℃、約2時間;および(iv)475℃、約3時間。
【0085】
図3は、上記の条件(i)から(iv)のもとで加熱した4つの光触媒、および比較例A(チタニアP25、Evonik)についての拡散反射分光法結果を示す。
【0086】
(実施例8:メチレンブルーの光触媒特性)
化合物DおよびGの光触媒特性を、メチレンブルーの減成を測定することによって比較した。150mgの各試料を、一切光のない35mLのメチレンブルー(MB)の溶液の中に約3時間置き、その後、青色発光ダイオード(455nm、3.5mW/cm)に約5時間曝露した。メチレンブルーの減成を、UV−Vis吸収分光法(Cary−50、Spectrophotometer Agilent Technologies、米国カリフォルニア州サンタクララ)を用いてその濃度を約1時間おきにモニターすることによって測定した。濃度は、400nmと800nmの間のVU−Vis吸収スペクトル下面積として計算した。それらの結果を、メチレンブルー溶液を一切光触媒なしで同様の照明に曝露した対照とともに、図4に示す。
【0087】
(実施例9:メチレンブルーの光触媒特性)
前記光触媒特性を、P25をはじめとする市販の光触媒とも比較した。一般に実施例8と同じ条件下で試験を完了した。5時間後のメチレンブルーの全減成を表4に示す。
【表4】
図1
図2
図3
図4