(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093380
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】加圧装置および加圧方法
(51)【国際特許分類】
B21D 1/06 20060101AFI20170227BHJP
B30B 15/24 20060101ALI20170227BHJP
B21D 37/16 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
B21D1/06 A
B30B15/24 B
B21D37/16
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-557178(P2014-557178)
(86)(22)【出願日】2013年1月18日
(86)【国際出願番号】JP2013000236
(87)【国際公開番号】WO2014111974
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】503322607
【氏名又は名称】岡谷熱処理工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】西澤 邦治
(72)【発明者】
【氏名】藤森 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】御子柴 厚
【審査官】
石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−132300(JP,A)
【文献】
実開昭63−056607(JP,U)
【文献】
特開2012−166263(JP,A)
【文献】
特開2007−203304(JP,A)
【文献】
特開2000−343287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 1/06
B21D 37/16
B30B 15/24
B30B 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク載置面を備えたテーブルと、
前記ワーク載置面に対向する加圧ヘッドと、
該加圧ヘッドの中央を背面側から前記ワーク載置面に向けて加圧するメイン加圧軸と、
該メイン加圧軸の周りで前記加圧ヘッドの背面側を前記ワーク載置面に向けて加圧する複数のサブ加圧軸と、
前記メイン加圧軸による加圧条件、および前記複数のサブ加圧軸による加圧条件を制御する制御部と、
を有し、
前記加圧ヘッドは、
前記ワーク載置面に対向する第1プレートと、
該第1プレートに背面側で対向し、前記メイン加圧軸および前記複数のサブ加圧軸によって背面側から加圧される第2プレートと、
該第2プレートと前記第1プレートとを連結する複数本の連結軸と、
を有していることを特徴とする加圧装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加圧装置において、
前記メイン加圧軸は、前記サブ加圧軸より大径であることを特徴とする加圧装置。
【請求項3】
請求項1に記載の加圧装置において、
前記サブ加圧軸は、前記メイン加圧軸を中心とする仮想の長方形または正方形の4つの角に相当する位置の各々に配置されていることを特徴とする加圧装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の加圧装置において、
前記制御部は、前記メイン加圧軸の加圧力が前記サブ加圧軸の加圧力に比して大となるように制御することを特徴とする加圧装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の加圧装置において、
前記制御部は、前記メイン加圧軸に前記加圧ヘッドの加圧を開始させた後、前記複数のサブ加圧軸に前記加圧ヘッドの加圧を開始させることを特徴とする加圧装置。
【請求項6】
請求項5に記載の加圧装置において、
前記メイン加圧軸の下端部は、前記加圧ヘッドの背面側に連結されて一体化しており、
前記複数のサブ加圧軸の下端部は、前記加圧ヘッドと分割されていることを特徴とする加圧装置。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の加圧装置において、
前記加圧ヘッドおよび前記テーブルの各々に、温度調節装置が設けられていることを特徴とする加圧装置。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の加圧装置において、
前記ワーク載置面には、板状のワークが配置されることを特徴とする加圧装置。
【請求項9】
テーブルのワーク載置面上にワークを配置した後、前記ワークを加圧ヘッドによって加圧する加圧方法であって、
前記加圧ヘッドの中央を背面側から前記ワーク載置面に向けて加圧するメイン加圧軸と、該メイン加圧軸の周りで前記加圧ヘッドの背面側を前記ワーク載置面に向けて加圧する複数のサブ加圧軸と、を設け、
前記加圧ヘッドには、前記ワーク載置面に対向する第1プレートと、該第1プレートに背面側で対向し、前記メイン加圧軸および前記複数のサブ加圧軸によって背面側から加圧される第2プレートと、該第2プレートと前記第1プレートとを連結する複数本の連結軸と、を設けておき、
前記メイン加圧軸によって前記加圧ヘッドを前記ワークに向けて加圧するとともに、前記複数のサブ加圧軸によって前記加圧ヘッドを前記ワークに向けて加圧することを特徴とする加圧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板等を適正に加圧するのに適した加圧装置、および加圧方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金型等は、鋼材を機械加工した後、必要な硬さと靱性とを得ることを目的に焼入れや焼戻し等の熱処理が行われる。その際、熱処理条件を最適化しても、形状変化等の歪みが発生することを回避することができない。そこで、本願発明者は、
図5に示すように、テーブル2xのワーク載置面21xに配置された板状のワーク10(金型等)を加圧ヘッド3xによって全面的に加圧し、歪みを除去することを検討している。しかしながら、
図5に示す構成では、加圧軸4xから加圧ヘッド3xに荷重が加わって加圧ヘッド3xの厚さ方向に荷重が伝達される際、荷重は、加圧軸4xによる加圧個所から各方向に伝達されることになるため、ワーク10の全面を適正な荷重で加圧することが困難である。すなわち、加圧ヘッド3xにおいて、荷重は、加圧軸4xによる加圧個所から、矢印P1に示すように、加圧軸4xによる加圧方向と平行に伝達されるとともに、矢印P2に示すように、加圧軸4xによる加圧方向に対して斜めの方向に伝達されるため、加圧ヘッド3xの端部では、ワーク10の厚さ方向に加わる荷重が、加圧ヘッド3xの中心部より小さくなってしまう。
【0003】
一方、加圧装置に関しては、計6本の加圧軸を3列×2列に等間隔に配置し、これらの加圧軸を各々独立して制御しながら加圧ヘッドを加圧することにより、ワークを均等に加圧しようとする加圧装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−343287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成のように、単に、加圧軸を増やして加圧ヘッドに対する加圧力の伝達個所を増やしただけでは、ワークの全面を適正に加圧することができないという問題点がある。すなわち、加圧軸を増やすと、加圧ヘッドの各部位には、複数の加圧軸による加圧個所から各方向に伝達される荷重(
図5に矢印P1、P2で示す荷重)を加算した荷重が加わることになるので、複数本の加圧軸の各加圧力の制御がかなり複雑なものとなり、かかる制御を誤ると、ワークに対する加圧力のバランスが逆に悪くなってしまう。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ワークの全面を適正に加圧することのできる加圧装置、および加圧方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る加圧装置は、ワーク載置面を備えたテーブルと、前記ワーク載置面に対向する加圧ヘッドと、該加圧ヘッドの中央を背面側から前記ワーク載置面に向けて加圧するメイン加圧軸と、該メイン加圧軸の周りで前記加圧ヘッドの背面側を前記ワーク載置面に向けて加圧する複数のサブ加圧軸と、前記メイン加圧軸による加圧条件、および前記複数のサブ加圧軸による加圧条件を制御する制御部と、を有
し、前記加圧ヘッドは、前記ワーク載置面に対向する第1プレートと、該第1プレートに背面側で対向し、前記メイン加圧軸および前記複数のサブ加圧軸によって背面側から加圧される第2プレートと、該第2プレートと前記第1プレートとを連結する複数本の連結軸と、を有していることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、テーブルのワーク載置面上にワークを配置した後、前記ワークを加圧ヘッドによって加圧する加圧方法であって、前記加圧ヘッドの中央を背面側から前記ワーク載置面に向けて加圧するメイン加圧軸と、該メイン加圧軸の周りで前記加圧ヘッドの背面側を前記ワーク載置面に向けて加圧する複数のサブ加圧軸と、
を設け、前記加圧ヘッドには、前記ワーク載置面に対向する第1プレートと、該第1プレートに背面側で対向し、
前記メイン加圧軸および前記複数のサブ加圧軸によって背面側から加圧される第2プレートと、該第2プレートと前記第1プレートとを連結する複数本の連結軸と、を設けておき、前記メイン加圧軸によって前記加圧ヘッドを前記ワークに向けて加圧するとともに、前記複数のサブ加圧軸によって前記加圧ヘッドを前記ワークに向けて加圧することを特徴とする。
【0009】
本発明では、メイン加圧軸が加圧ヘッドの中央を背面側から加圧した際、ワークの中央には大きな荷重が加わる一方、ワークの端部には小さな荷重が加わることになるが、複数のサブ加圧軸がメイン加圧軸の周りで加圧ヘッドを背面側から加圧するため、ワークの中央と端部とにおける荷重のバランスを適正化することができる。従って、ワークの全面を均等に加圧することができる等、ワークの全面を適正に加圧することができる。また、メイン加圧軸によってワークを加圧した際の荷重のバランスを複数のサブ加圧軸によって補正する方式であるため、メイン加圧軸の加圧力およびサブ加圧軸の加圧力等の設定が容易である。
また、加圧ヘッドは、ワーク載置面に対向する第1プレートと、第1プレートに背面側で対向し、メイン加圧軸および複数のサブ加圧軸によって背面側から加圧される第2プレートと、第2プレートと第1プレートとを連結する複数本の連結軸とを有しているため、第2プレートで受けた荷重を第1プレートに適正に伝達することができる。また、ワーク側の第1プレートと、加圧軸側の第2プレートとが複数本の連結軸で連結されているので、第1プレートと第2プレートとの間の熱伝導性を低下させることができる。
【0010】
本発明において、前記メイン加圧軸は、前記サブ加圧軸より大径であることが好ましい。かかる構成によれば、メイン加圧軸から加圧ヘッドに加圧力が伝達される領域が広いので、メイン加圧軸の加圧力がワークの端部にも十分伝達される。従って、サブ加圧軸による加圧力で補正する領域が狭くなるので、サブ加圧軸による加圧力の設定が容易である。
【0011】
本発明において、前記サブ加圧軸は、前記メイン加圧軸を中心とする仮想の長方形または正方形の4つの角に相当する位置の各々に配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、少ない数のサブ加圧軸によって、ワークの全面を適正に加圧することができる。
【0012】
本発明において、前記制御部は、前記メイン加圧軸の加圧力が前記サブ加圧軸の加圧力に比して大となるように制御することが好ましい。かかる構成によれば、メイン加圧軸によってワークに大きな荷重を印加し、複数のサブ加圧軸によって、メイン加圧軸によってワークに加わる荷重のバランスを補正するので、メイン加圧軸の加圧力、およびサブ加圧軸の加圧力の設定が容易である。
【0013】
本発明において、前記制御部は、前記メイン加圧軸に前記加圧ヘッドの加圧を開始させた後、前記複数のサブ加圧軸に前記加圧ヘッドの加圧を開始させる構成を採用することができる。かかる構成によれば、メイン加圧軸によってワークに大きな荷重を印加し、複数のサブ加圧軸によって、メイン加圧軸によってワークに加わる荷重のバランスを補正するのが容易である。
【0014】
本発明において、前記メイン加圧軸の下端部は、前記加圧ヘッドの背面側に連結されて一体化しており、前記複数のサブ加圧軸の下端部は、前記加圧ヘッドと分割されていることが好ましい。かかる構成によれば、メイン加圧軸に加圧ヘッドの加圧を開始させた後、複数のサブ加圧軸に加圧ヘッドの加圧を開始させるのが容易である。
【0016】
本発明において、前記加圧ヘッドおよび前記テーブルの各々に、温度調節装置が設けられていることが好ましい。
【0017】
本発明において、前記ワーク載置面には、例えば、板状のワークが配置される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明が適用される鋼製のワークとしての金型の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明では、鋼製のワークとして機械加工済の金型を例に説明する。
【0020】
(ワークの具体例)
図1は、本発明が適用される鋼製のワークとしての金型の構成例を示す説明図である。
図1に示すように、本形態において、ワーク10として用いられる鋼製の金型は、機械加工により、円形孔10aや四角形孔10b等の孔が形成された板状であり、かかるワーク10(金型)は、焼入れ、焼戻し等の熱処理が施される。また、ワーク10は、以下に説明する加圧装置および加圧方法によって、全面が適正に加圧されたため、歪みが修正されている。例えば、縦400mm×横200mm×厚さ15mmのワーク10において、歪みの大きさd1は0.03mm程度まで修正されている。
【0021】
(加圧装置)
図2は、本発明を適用した加圧装置の説明図であり、
図2(a)、(b)は、加圧装置の要部を示す説明図、および加圧ヘッドの平面構造を示す説明図である。
【0022】
図2において、本形態の加圧装置1は、ワーク載置面21を備えたテーブル2と、ワーク載置面21に対向する加圧ヘッド3と、加圧ヘッド3の中央を背面側からワーク載置面21に向けて加圧する1本のメイン加圧軸4と、メイン加圧軸4の周りで加圧ヘッド3の背面側をワーク載置面21に向けて加圧する複数のサブ加圧軸5とを有している。また、加圧装置1は、メイン加圧軸4による加圧条件、および複数のサブ加圧軸5による加圧条件を制御する制御部6を有しており、制御部6は、メイン加圧軸4による加圧条件(荷重や上下位置)を制御するメイン加圧軸用制御部61と、サブ加圧軸5による加圧条件(荷重や上下位置)を制御するサブ加圧軸用制御部62とを有している。本形態において、メイン加圧軸4は、流体圧シリンダ装置40のピストンロッドとして構成されており、メイン加圧軸用制御部61は、流体圧シリンダ装置40への流体の供給を制御する。また、サブ加圧軸5は、流体圧シリンダ装置50のピストンロッドとして構成されており、サブ加圧軸用制御部62は、流体圧シリンダ装置50への流体の供給を制御する。ここで、サブ加圧軸用制御部62は、複数の流体圧シリンダ装置50に対して共通の制御部として構成されているため、複数のサブ加圧軸5は同一の加圧条件で作動する。これに対して、サブ加圧軸用制御部62を複数の流体圧シリンダ装置50に対して1対1の関係をもって設けてもよく、この場合、複数のサブ加圧軸5の加圧条件を独立して制御することができる。また、本形態では、流体圧シリンダ装置50が複数のサブ加圧軸5に対して1対1の関係をもって構成されているが、流体圧シリンダ装置50が複数のサブ加圧軸5に対して共通の流体圧シリンダ装置として構成されることもある。この場合、複数のサブ加圧軸5は同一の加圧条件で作動する。
【0023】
本形態の加圧装置1において、ワーク10およびワーク載置面21は、四角形の平面形状であり、かかる形状に合わせて、加圧ヘッド3も、長方形や正方形等の四角形の平面形状を有している。また、サブ加圧軸5は、メイン加圧軸4を中心とする仮想の長方形または正方形の4つの角に相当する位置の各々に配置され、サブ加圧軸5の数は4本である。サブ加圧軸5が、メイン加圧軸4を中心とする仮想の長方形の4つの角に相当する位置の各々に配置されている場合、4つのサブ加圧軸5は、メイン加圧軸4から等距離の位置に配置される。これに対して、サブ加圧軸5が、メイン加圧軸4を中心とする仮想の正方形の4つの角に相当する位置の各々に配置されている場合、4つのサブ加圧軸5は、メイン加圧軸4から等距離の位置、かつ、等角度間隔に配置される。また、メイン加圧軸4は、サブ加圧軸5より大径である。
【0024】
メイン加圧軸4の下端部は、加圧ヘッド3の背面側に連結されて一体化している。これに対して、複数のサブ加圧軸5の下端部は、加圧ヘッド3と分割されている。加圧ヘッド3は、ワーク載置面21に対向する第1プレート31と、第1プレート31に背面側で対向する第2プレート32と、第2プレート32と第1プレート31とを連結する複数本の連結軸33とを有しており、第2プレート32が、メイン加圧軸4および複数のサブ加圧軸5によって背面側から加圧される。このため、メイン加圧軸4の下端部は、加圧ヘッド3の第2プレート32の背面側に連結されて一体化している。本形態において、連結軸33は、4列×4列の計16本が設けられている。但し、連結軸33の数については、4列×4列より多い数、あるいは4列×4列より少ない数に設定してもよい。
【0025】
本形態では、加圧ヘッド3の第1プレート31に、加熱機能301および冷却機能302を備えた温度調節装置30が設けられ、テーブル2にも、加熱機能201および冷却機能202を備えた温度調節装置20が設けられている。温度調節装置20、30としては各種のものを用いることができるが、本形態では、テーブル2および第1プレート31の内部に流路を形成しておき、かかる流路に水やオイル等の流体を通す構成が採用されている。かかる温度調節装置20、30では、テーブル2および第1プレート31の流路に加熱した流体を通すことにより、ワーク10を加熱することができるとともに、テーブル2および第1プレート31の流路に冷却した流体を通すことにより、ワーク10を冷却することもできる。また、温度調節装置20、30の加熱機能201、301についてはヒーターによって実現することが好ましく、この場合、ワーク10を高い温度まで加熱することができる。
【0026】
なお、加圧ヘッド3の第2プレート32には、冷却装置320が設けられており、第1プレート31を加温した状態とした際や、加熱されたワーク10を加圧した際、第1プレート31やワーク10の熱が流体圧シリンダ装置40や流体圧シリンダ装置50に伝達されにくいようになっている。また、加圧ヘッド3と流体圧シリンダ装置40、50の本体部分との間には断熱用のプレート7が配置されており、メイン加圧軸4およびサブ加圧軸5は各々、プレート7の穴70を貫通した状態で上下動可能である。本形態では、プレート7に冷却装置75が内蔵されており、加圧ヘッド3を加温した状態とした際や、加熱されたワーク10を加圧した際、加圧ヘッド3の熱やワーク10の熱が流体圧シリンダ装置40や流体圧シリンダ装置50に伝達されにくいようになっている。
【0027】
(加圧方法)
図3は、本発明を適用した加圧方法の説明図である、
図3において、
図3(a)は、メイン加圧軸4によって加圧を開始した様子を示す説明図であり、
図3(b)は、サブ加圧軸5によって加圧を開始した様子を示す説明図である。
【0028】
本形態では、
図2(a)に示すように、円形孔10aや四角形孔10b等が形成されたワーク10をテーブル2のワーク載置面21に載置する。
【0029】
次に、メイン加圧軸4によって加圧ヘッド3をワーク10に向けて加圧するとともに、複数のサブ加圧軸5によって加圧ヘッド3をワーク10に向けて加圧し、ワーク10を加圧ヘッド3によって加圧する。その際、
図3(a)に示すように、制御部6(
図2参照)は、メイン加圧軸4を下降させてメイン加圧軸4による加圧を開始した後、
図3(b)に示すように、複数のサブ加圧軸5を下降させてサブ加圧軸5による加圧を開始する。ここで、制御部6は、メイン加圧軸4の加圧力がサブ加圧軸5の加圧力に比して大となるように制御する。また、制御部6は、4つのサブ加圧軸5の加圧力については同等となるように制御する。
【0030】
このような状態を一定時間、保持した後、サブ加圧軸5を上昇させるとともに、メイン加圧軸4および加圧ヘッド3を上昇させ、その後、ワーク10を取り出す。
【0031】
なお、テーブル2および加圧ヘッド3には温度調節装置20、30が設けられているため、ワーク10に加圧を行う際、テーブル2および加圧ヘッド3において加熱または冷却を行い、ワーク10の温度を調節してもよい。
【0032】
(ワーク10を加圧した際の部位毎の変位)
図4は、本発明を適用した効果の説明図である。
図4において、
図4(a)は、本発明を適用した加圧装置1においてワーク10を加圧した際の部位毎の変位を解析するためのモデルの説明図であり、
図4(b)〜(e)は、各種条件でワーク10を加圧した際の変位分布を弾性解析モデルに基づいてシミュレーションした結果を示す説明図である。ここで、
図4(b)は、メイン加圧軸4のみで加圧する第1参考条件でのシミュレーション結果を示す説明図であり、
図4(c)は、本発明を適用した第1加圧条件でのシミュレーション結果を示す説明図であり、
図4(d)は、本発明を適用した第2加圧条件でのシミュレーション結果を示す説明図であり、
図4(e)は、サブ加圧軸5のみで加圧する第2参考条件でのシミュレーション結果を示す説明図である。
図4(b)〜(e)において、各部位の変位量は、加圧後の高さ位置の等高線で示してあり、maxは、テーブル2から最も離間した部位を示し、minはテーブル2に最も接近した部位を示す。また、変位量は、テーブル2側に向かう変位には−を付し、テーブル2側とは反対側に向かう変位に+を付してある。
【0033】
本発明の効果を評価するにあたっては、
図4(a)に示すように、メイン加圧軸4およびサブ加圧軸5によって平板状の加圧ヘッド3を加圧して平板状のワーク10にプレスを行うモデルを用いた。ここで、テーブル2、加圧ヘッド3およびワーク10をいずれも、ヤング率が200GPaの鋼製とし、ポアソン比を0.3に設定した。加圧ヘッド3のサイズは、450mm(縦)×450mm(横)×50mm(厚さ)とし、ワーク10のサイズは、400mm(縦)×300mm(横)×20.5mm(厚さ)とした。メイン加圧軸4については100mm(直径)×50mm(長さ)とし、サブ加圧軸5については50mm(直径)×50mm(長さ)とした。また、メイン加圧軸4およびサブ加圧軸5をいずれも、ヤング率が1000GPaの鋼製とし、ポアソン比を0.3に設定した。
【0034】
また、
図4(b)〜(e)に示す条件のいずれにおいても、メイン加圧軸4およびサブ加圧軸5による全荷重Pを一定として、ワーク10の変位量を求めた。
【0035】
今回の評価結果においては、
図4(b)に示すように、メイン加圧軸4への荷重P1をPとし、サブ加圧軸5への荷重P2を0としたとき、変位の最小値は、ワーク10の中央での−24.6μmである一方、変位の最大値は、ワーク10の角での+15.5μmであり、その差は40.1μmであった。
【0036】
図4(c)に示すように、メイン加圧軸4への荷重P1を(1/2)Pとし、サブ加圧軸5への荷重P2を1つ当たり(1/8)Pとしたとき、変位の最小値は、ワーク10の角での−14.1μmである一方、変位の最大値は、ワーク10の辺の中央での+2.52μmであり、その差は16.62μmであった。
【0037】
図4(d)に示すように、メイン加圧軸4への荷重P1を(1/4)Pとし、サブ加圧軸5への荷重P2を1つ当たり(3/16)Pとしたとき、変位の最小値は、ワーク10の角での−23.0μmである一方、変位の最大値は、ワーク10の辺の中央での+3.18μmであり、その差は26.18μmであった。
【0038】
図4(e)に示すように、メイン加圧軸4への荷重P1を0とし、サブ加圧軸5への荷重P2を1つ当たり(1/4)Pとしたとき、変位の最小値は、ワーク10の角での−34.1μmである一方、変位の最大値は、ワーク10の辺の中央での+11.4μmであり、その差は45.5μmであった。
【0039】
それ故、
図4(c)、(d)に示す加圧条件のように、メイン加圧軸4が加圧ヘッド3の中央を背面側から加圧した際、複数のサブ加圧軸5がメイン加圧軸4の周りで加圧ヘッド3を背面側から加圧すれば、ワーク10の中央と端部とにおける荷重のバランスを適正化することができる。
【0040】
また、
図4(c)、(d)に示す加圧条件のうち、
図4(c)に示す加圧条件のように、メイン加圧軸4への荷重P1と、サブ加圧軸5への荷重P2の和が等しいとき、ワーク10の中央と端部とにおける荷重のバランスをより効果的に適正化することができる。
【0041】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、メイン加圧軸4が加圧ヘッド3の中央を背面側から加圧した際、
図5を参照して説明したように、ワーク10の中央には大きな荷重が加わる一方、ワーク10の端部には小さな荷重が加わることになる。しかるに本形態では、複数のサブ加圧軸5がメイン加圧軸4の周りで加圧ヘッド3の背面側から加圧するため、ワーク10の中央と端部とにおける荷重のバランスを補正し、適正化することができる。従って、ワーク10の全面を均等に加圧することができる等、ワーク10の全面を適正に加圧することができる。また、メイン加圧軸4によってワーク10を加圧した際の荷重のバランスを複数のサブ加圧軸5によって補正する方式である。このため、ワーク10に必要な加圧力についてはメイン加圧軸4の加圧力によって設定し、かかるメイン加圧軸4の加圧力によって発生する荷重のバランスを補正するように、サブ加圧軸5の加圧力を設定すればよい。従って、メイン加圧軸4の加圧力、およびサブ加圧軸5の加圧力等の設定が容易である。
【0042】
また、サブ加圧軸5は、メイン加圧軸4を中心とする仮想の長方形または正方形の4つの角に相当する位置の各々に配置されているため、少ない数のサブ加圧軸5によって、ワーク10の全面を適正に加圧することができる。
【0043】
また、メイン加圧軸4は、サブ加圧軸5より大径である。このため、メイン加圧軸4から加圧ヘッド3に加圧力が伝達される領域が広いので、メイン加圧軸4の加圧力がワーク10の端部にも十分伝達される。従って、サブ加圧軸5による加圧力の設定が容易である。また、制御部6は、メイン加圧軸4の加圧力がサブ加圧軸5の加圧力に比して大となるように制御する。また、制御部6は、メイン加圧軸4に加圧ヘッド3の加圧を開始させた後、複数のサブ加圧軸5に加圧ヘッド3の加圧を開始させる。このため、メイン加圧軸4によってワーク10に大きな荷重を印加し、複数のサブ加圧軸5によって、メイン加圧軸4によってワーク10に加わる荷重のバランスを補正することになるので、メイン加圧軸4の加圧力、およびサブ加圧軸5の加圧力の設定が容易である。
【0044】
また、メイン加圧軸4の下端部は、加圧ヘッド3の背面側に連結されて一体化しており、複数のサブ加圧軸5の下端部は、加圧ヘッド3と分割されている。このため、メイン加圧軸4に加圧ヘッド3の加圧を開始させた後、複数のサブ加圧軸5に加圧ヘッド3の加圧を開始させるのが容易である。
【0045】
さらに、加圧ヘッド3は、ワーク載置面21に対向する第1プレート31と、第1プレート31に背面側で対向する第2プレート32と、第2プレート32と第1プレート31とを連結する複数本の連結軸33とを有している。このため、第2プレート32で受けた荷重を第1プレート31に適正に伝達することができる。また、ワーク10側の第1プレート31と、加圧軸側の第2プレート32とが複数本の連結軸33で連結されているので、第1プレート31と第2プレート32との間の熱伝導性を低下させることができる。
【0046】
(他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでもない。
【0047】
例えば、上記実施の形態では、ワーク10や加圧ヘッド3の四角形状に合わせて、サブ加圧軸5を、メイン加圧軸4を中心とする仮想の長方形または正方形の4つの角に相当する位置の各々に配置したが、サブ加圧軸5を、例えば、メイン加圧軸4を中心とする仮想の円上の等角度間隔の位置に3つ以上配置してもよい。また、サブ加圧軸5については、軸線方向と直交する方向に移動可能にしておき、メイン加圧軸4に対するサブ加圧軸5の相対位置を調整可能にしてもよい。さらには、メイン加圧軸4およびサブ加圧軸5を各々、軸線方向と直交する方向に移動可能にしておき、メイン加圧軸4に対するサブ加圧軸5の相対位置を調整可能にしてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、第1プレート31、第2プレート32および連結軸33を備えた加圧ヘッド3を用いたが、全体が一体の板状の加圧ヘッド3を用いた場合に本発明を適用してもよい。また、テーブル2についてはスライド式にしてもよい。また、上記実施の形態では、テーブル2および加圧ヘッド3が矩形であったが、テーブル2および加圧ヘッド3が円形等の場合に本発明を適用してもよい。
【0049】
また、ワーク10を加圧する雰囲気に関しては、大気中、真空雰囲気中、不活性ガス雰囲気中のいずれであってもよい。
【0050】
また、ワーク10を加圧する手段として、流体圧シリンダ装置を例示したが、カム機構等、機械的な他の装置を用いて、メイン加圧軸4および複数のサブ加圧軸5を駆動してもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、ワーク10として板状の金型を例示したが、工作機械の板状のベースプレート等、板状の金型以外の平板状の部材の加圧に本発明を適用してもよい。また、ワーク10については平板状に限らず、凹凸がある形状や湾曲した形状のワークであってもよく、かかる構成の場合、ワーク載置面21、および加圧ヘッド3においてワークを押圧する面をワークの形状に対応させれば、平板状のワーク10以外のワークを加圧することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明では、メイン加圧軸が加圧ヘッドの中央を背面側から加圧した際、ワークの中央には大きな荷重が加わる一方、ワークの端部には小さな荷重が加わることになるが、複数のサブ加圧軸がメイン加圧軸の周りで加圧ヘッドを背面側から加圧するため、ワークの中央と端部とにおける荷重のバランスを適正化することができる。従って、ワークの全面を均等に加圧することができる等、ワークの全面を適正に加圧することができる。また、メイン加圧軸によってワークを加圧した際の荷重のバランスを複数のサブ加圧軸によって補正する方式であるため、メイン加圧軸の加圧力およびサブ加圧軸の加圧力等の設定が容易である。