特許第6093443号(P6093443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6093443燃料電池の構成要素の接合のための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093443
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】燃料電池の構成要素の接合のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20170227BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20170227BHJP
【FI】
   H01M8/02 E
   !H01M8/10
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-523444(P2015-523444)
(86)(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公表番号】特表2015-522936(P2015-522936A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】EP2013002071
(87)【国際公開番号】WO2014015955
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2015年1月29日
(31)【優先権主張番号】102012014757.0
(32)【優先日】2012年7月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ヴルフ
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−026636(JP,A)
【文献】 特開2007−157387(JP,A)
【文献】 特開2006−202535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の構成要素(1,2,3)の接合方法であって、光化学的に硬化可能な接着剤(5)が、液状で少なくとも部分的に前記燃料電池の少なくとも1つの前記構成要素(1,2,3)に塗布され、光化学的に半硬化され、前記燃料電池の少なくとももう1つの前記構成要素(1,2,3)と接触させられ、そして硬化される方法であって、前記少なくとも1つの前記構成要素(1,2,3)に塗布された前記光化学的に硬化可能な接着剤(5)が、前記少なくとも1つの前記構成要素(1,2,3)の少なくとも2つの構成要素領域(B1,B2)において異なる程度で光化学的に半硬化されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記光化学的に硬化可能な接着剤(5)が少なくとも部分的に、膜・電極接合体(4)の第一のフレーム要素として形成された前記燃料電池の第一の構成要素(1)、及び前記膜・電極接合体(4)の第二のフレーム要素として形成された前記燃料電池の第三の構成要素(3)の上に塗布され、前記光化学的に硬化可能な接着剤(5)の光化学的な半硬化の後、前記膜・電極接合体(4)の触媒被覆膜として形成された第二の前記燃料電池の構成要素(2)が前記第一の構成要素(1)と前記第三の構成要素(3)との間で位置決めされ、前記3つの構成要素(1,2,3)が接合され、前記光化学的に硬化可能な接着剤(5)が硬化されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光化学的に硬化可能な接着剤(5)が、紫外線放射及び/又は赤外線放射によって光化学的に半硬化されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記光化学的に硬化可能な接着剤(5)が、紫外線放射及び/又は赤外線放射によって光化学的に硬化されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記光化学的に硬化可能な接着剤(5)によって被覆された前記構成要素(1,2,3)が、前記光化学的に硬化可能な接着剤(5)の光化学的な半硬化の前に、前記光化学的に硬化可能な接着剤(5)の光化学的な半硬化のために、少なくとも2つの前記構成要素領域(B1,B2)が異なる照射強度で照射されるようにマスキングされることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光化学的に硬化可能な接着剤(5)がシルクスクリーンによって、少なくとも1つの前記構成要素(1,2,3)に塗布されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法の実施のための燃料電池の構成要素(1,2,3)の接合のための装置であって、光化学的に硬化可能な接着剤(5)の液状での前記燃料電池の少なくとも1つの構成要素(1,2,3)への少なくとも部分的な塗布のための塗布ユニットと、前記光化学的に硬化可能な接着剤(5)の光化学的な半硬化のための照射設備(6)と、前記光化学的に硬化可能な接着剤(5)の光化学的な半硬化が少なくとも2つの構成要素領域(B1,B2)を異なる照射強度で照射可能であるような、前記光化学的に硬化可能な接着剤(5)により被覆された前記燃料電池の前記構成要素(1,2,3)の少なくとも部分的なマスキングのためのマスキング部材(7)とを含む装置。
【請求項8】
前記照射設備(6)が、少なくとも1つの発光ダイオードとして形成された照射源、及び/又は少なくとも1つの管状の照射源を有することを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの前記照射源が、紫外線放射を放射する照射源及び/又は赤外線放射を放射する照射源として形成されることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記塗布ユニットがシルクスクリーンユニットとして形成されることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念の特徴に基づく燃料電池の構成要素の接合のための方法と、請求項7の上位概念の特徴に基づく燃料電池の構成要素の接合のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許公開公報第2009/0162734A1号に記載のように、従来技術より、燃料電池の膜・電極接合体の作製のための方法が公知である。この際、光の照射によって硬化する樹脂が触媒被覆膜(CCM)に塗布され、光の照射によって半硬化される。ガス拡散層が膜・電極接合体の形成のために膜に塗布され、半硬化された樹脂と接触させられる。その後、樹脂が熱による硬化プロセスによって完全に硬化される。
【0003】
特許文献1には膜・電極接合体の作製方法が記載されている。膜・電極接合体はアノード触媒層、高分子電解質膜及びカソード触媒層を含む。この方法では、紫外線硬化性の材料からの第一の縁部が高分子電解質膜上に設けられ、この際高分子電解質膜の内部の領域は紫外線硬化性の材料から離れている。ここで触媒層が設置され、この触媒層は高分子電解質膜の内部領域を被覆し、第一の縁部と重なる。紫外線硬化性の材料からなる第二の縁部が第一の縁部上に設けられ、この際第二の縁部が触媒層を取り囲む。紫外線硬化性の材料からなる第三の縁部が第二の縁部上に設けられ、この際第三の縁部が触媒層と重なる。第一、第二、第三の縁部には紫外線が照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 2008/040682 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、燃料電池の構成要素の接合のための改善された方法及び改善された装置を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は本発明に基づき、請求項1の特徴を有する燃料電池の構成要素の接合のための方法によって、また請求項7の特徴を有する燃料電池の構成要素の接合のための装置によって解決される。
本発明の有利な構成は下位クレームの対象である。
【0007】
燃料電池の構成要素の接合のためのある方法では、光化学的に硬化可能な接着剤が液状の形態で少なくとも部分的に燃料電池の少なくとも1つの構成要素に塗布され、光化学的に半硬化され、少なくとも1つの別の燃料電池の構成要素と接触させられ、そして硬化される。
【0008】
本発明に基づき、接着剤は構成要素の少なくとも2つの構成要素領域において、異なる程度で光化学的に半硬化される。この半硬化は接着剤の半接合とも称される。
【0009】
このようにして接着剤の流動学的な特徴を効果的に停止させ、これによって様々な構成要素の構成要素領域におけるそれぞれの要件にこれらを適応させることができ、こうして互いに接合する燃料電池の構成要素の最適な接着接合を確実にすることができる。接着剤のより強力な半硬化によって接着剤の粘度が高まり、こうして構成要素上での接着剤の溶解が回避される。弱い半硬化によって接着剤は半硬化の後にこれに応じて低い粘度、即ち高い流動性を備え、これによって接着剤をよりよく配分することができ、例えば粗い及び/又は多孔質の構造内へ、より好適に浸入することができ、これによって例えば粗さが接着剤により均一化され得る。これによって接着剤は例えばシールとして使用されてもよく、この際、最適で均等な配分によって、特に接着剤が半硬化の後に低い粘度しか有さない構成要素領域において、確実な密閉効果が達成される。
【0010】
従来技術より公知の熱硬化性であり平面状に塗布されるフィルム接着剤と比較して、液状で光化学的に硬化可能な接着剤の使用では無駄が発生せず、このため多量の材料の使用が不要となる。さらに硬化時間が光化学的に硬化可能な接着剤により大幅に削減され、光化学的に硬化可能な接着剤はフィルム接着剤と対照的に接触せずに硬化することができる。さらに、光化学的に硬化可能な接着剤によってコスト削減が達成される。
【0011】
有利な実施形態では、光化学的に硬化可能な接着剤は構成要素領域においてのみ少なくとも1つの構成要素に塗布され、そこでその後光化学的に半硬化もされる。即ち、少なくとも1つの構成要素に塗布された光化学的に硬化可能な全ての接着剤が光化学的に半硬化され、この際接着剤は燃料電池の少なくとも1つの構成要素の異なる構成要素領域において、異なる程度で光化学的に半硬化される。このようにして、燃料電池の少なくとも1つの構成要素上で、半硬化されない、またこれに伴い非常に流動性のある接着剤の制御されない溶解が回避され、即ち、例えば接着剤から離されるべき構成要素の領域の接着剤との接合が回避される。
【0012】
好ましくは、光化学的に硬化可能な接着剤は少なくとも部分的に、膜・電極接合体の第一のフレーム要素として形成された燃料電池の第一の構成要素と、膜・電極接合体の第二のフレーム要素として形成された燃料電池の第三の構成要素に塗布され、この際、光化学的に硬化可能な接着剤の光化学的な半硬化の後、膜・電極接合体の触媒被覆膜として形成された燃料電池の第二の構成要素が、第一の構成要素と第三の構成要素との間で位置決めされ、3つの構成要素が接合され、光化学的に硬化可能な接着剤が硬化される。3つの構成要素の接合の間、接着剤は第二の構成要素とも接触させられ、こうして第一の構成要素も第三の構成要素と接着され、第二の構成要素が両方の他の構成要素と接着される。
【0013】
この際接着剤は3つの構成要素の接合の前に、例えば膜・電極接合体の流入及び/又は流出領域においてより強力に半硬化され、これは、膜・電極接合体の接合連結が独立の構造であることから、ここでは高い形状の正確性が必要であるためである。接着剤のより強力な半硬化によって接着剤は必要とされる硬度を維持し、これによってこの構成要素領域において接着剤の溶解が回避される。
【0014】
例えばそれぞれポリプロピレン等の高分子膜から形成された両方のフレーム要素の間の触媒被覆膜の封入領域では、接着剤は弱い半硬化によって、ここで触媒被覆膜の多孔質の上面の最適な接合を確実にするために、また両方の互いに接着されるフレーム要素との間の内部のシールを形成するために十分な流動性を維持する。触媒被覆膜は例えばプラスチック・フィルムとして形成され、これは例えば炭粉末の形状のカーボンにより被覆される。膜は多孔質であり、広い上面を有する。特にこの多孔性のため比較的流動性のある接着剤が必要とされ、これによって両方のフレーム要素と接合される触媒被覆膜の端部領域における孔を満たし、これによって両方のフレーム要素との最適な接着、及び接着剤の密閉効果を確実にすることができる。
【0015】
光化学的に硬化可能な接着剤が、紫外線放射及び/又は赤外線放射によって光化学的に半硬化されると有利である。このために接着剤が紫外線放射及び/又は赤外線放射により照射される。これは例えば1つ又は好ましくは複数の発光ダイオード、即ち紫外線又は赤外線を放射するダイオードとして形成されるか、又は、管状に形成された照射源により、即ち管状の紫外線放射体又は赤外線放射体によりなされる。管状の紫外線放射体が使用される場合、これらは例えばそれぞれ低圧放射体、中圧放射体又は高圧放射体として形成することができる。複数のこの種の照射源によって、接着剤により被覆された構成要素の広範囲の照射が達成される。紫外線放射及び/又は赤外線放射による硬化によって、特に接着剤の硬化が可視光のみによってなされ、これによって接着剤の制御されない硬化が回避される。このためには当然光化学的に硬化可能な、これに応じて紫外線放射及び/又は赤外線放射によって硬化される接着剤を使用する必要がある。本発明の枠組みにおいては、しかしながら紫外線照射の使用が好ましい。
【0016】
有利な実施形態では光化学的に硬化可能な接着剤が光化学的に硬化され、即ち光化学的に硬化可能な接着剤の硬化が、互いに接合する構成要素が接合されて光化学的に半硬化された接着剤と接触させられた後、同様に光化学的に行われる。このようにして接着剤の半硬化だけではなく、接着剤の完全な硬化も接触せずに行うことができる。即ち、構成要素又は互いに接合される構成要素の発熱体との接触、及びさらなる加熱の必要はない。これによって、強力すぎる熱作用による構成要素の損傷が回避される。この接着剤の硬化もまた、好ましくは紫外線放射及び/又は赤外線放射によりなされる。このために、接着剤の半硬化用と同様の照射設備を使用することができる。
【0017】
しかしながら、代替的に接着剤の硬化を別のやり方で行うことも可能である。この場合、光化学的に硬化可能な接着剤はこれに応じて光化学的に硬化可能であり、他のやり方で硬化可能な接着剤である必要があり、例えば少なくとも1つの加熱装置を用いた加熱により、即ち少なくとも光化学的にも硬化可能な接着剤である。この方法のこの実施形態では、少なくとも光化学的にも硬化可能な接着剤がまず光化学的に半硬化され、そして他のやり方で、例えば加熱によって硬化される。
【0018】
好ましくは、光化学的に硬化可能な接着剤によって被覆された構成要素は光化学的な接着剤の半硬化の前に、接着剤の光化学的な半硬化のために少なくとも2つの構成要素領域が異なる照射強度で照射されるようにマスキングされる。このようにして異なる程度での接着剤の半硬化が達成される。接着剤がより強力に半硬化されるべき構成要素領域がマスキングされないか、又は、マスキング部材がこの領域でそれぞれ使用される照射、好ましくは紫外線放射及び/又は赤外線放射について、接着剤がより弱く半硬化されるべき領域におけるよりも高い透過性で形成されるかの、いずれかである。マスキング部材はこの際、接着剤の半硬化がなされるべき弱さに応じて強力に照射を吸収及び/又は反射するように形成されてもよい。より多量の照射がマスキング部材によって吸収及び/又は反射されるほど、より少量の照射がマスキング部材を通過し、この照射はマスキング部材によって反射も吸収もされず、このため接着剤に到達してこれを光化学的に半硬化することができる。
【0019】
構成要素が接合された後、光化学的に硬化可能な接着剤の硬化のためにもこの種のマスキング部材を使用してもよく、これによってここでも、異なる構成要素領域において異なる照射と、これにより接着剤の異なる硬化動作が達成される。硬化が半硬化と同様になされる場合は、半硬化に使用されたものと同一のマスキング部材が再び使用されてもよい。
【0020】
有利な実施形態では、光化学的に硬化可能な接着剤はシルクスクリーンによって燃料電池の少なくとも1つの構成要素に塗布される。これによって非常に正確な接着剤の塗布が可能となる。これによって特に接着剤の選択的な塗布が可能となり、即ち接着剤は例えば部分的にのみ、及び全範囲ではなく構成要素に塗布され、また様々な領域において様々な強度でも塗布される。代替的に、接着剤は例えば噴霧もしくは噴射、もしくは塗り広げることもでき、又は他の公知のプレス技術もしくは接着剤の塗布技術により塗布されてもよい。
【0021】
燃料電池の構成要素の接合のための方法を実施することができる本発明に基づく燃料電池の構成要素の接合のための装置は、燃料電池の少なくとも1つの構成要素への光化学的に硬化可能な接着剤の少なくとも部分的な塗布のための塗布ユニットと、光化学的に硬化可能な接着剤の光化学的な半硬化のための照射設備と、光化学的に硬化可能な接着剤の光化学的な半硬化のために少なくとも2つの構成要素領域が異なる照射強度で照射可能であるような、光化学的に硬化可能な接着剤により被覆される燃料電池の構成要素の少なくとも部分的なマスキングのためのマスキング部材を有する。また構成要素の接合の後の、即ち互いに接合される構成要素の接着剤との接触の後の光化学的に硬化可能な接着剤の光化学的な硬化も、この装置によって、特にこの装置の照射設備によって行うことができる。
【0022】
この装置によってここに述べた方法の実施が可能となり、これによってこの方法から導かれる既に述べた有利な点がもたらされる。このようにして接着剤の流動学的な特徴が効果的に止められ、これによって構成要素の異なる構成要素領域におけるそれぞれの必要条件に対して適応され、こうして互いに接合される燃料電池の構成要素の最適な接着接合を確実にすることができる。接着剤のより強力な半硬化によって接着剤の粘度が高められ、これによって構成要素上での接着剤の溶解が回避される。より弱い半硬化によって接着剤は半硬化の後、これに応じて低い粘度、即ち高い流動性を有し、このため接着剤はより好適に分配されることができ、例えば粗い及び/又は多孔質の構造により好適に浸入でき、これによって例えば粗さが接着剤によって均一にされ得る。これによって接着剤は例えばシールとしても使用することができ、この際最適かつ均等な配分によって、特に半硬化の後に接着剤がまだ低い粘度を有している構成要素領域において、確実な密閉効果が達成される。
【0023】
マスキング部材によって、異なる程度での接着剤の半硬化が達成される。接着剤がより強力に半硬化されるべき構成要素領域はマスキングされないか、又はマスキング部材はこの領域において、接着剤がより弱く半硬化されるべき領域よりも照射についてより透過性が高くなるように形成することができる。マスキング部材はこの際、接着剤の半硬化がなされるべき弱さに応じて強力に照射を吸収及び/又は反射するように形成することができる。
【0024】
好ましくは、照射設備は少なくとも1つの発光ダイオードとして形成された照射源及び/又は少なくとも1つの管状の照射源を有する。有利には、照射設備は複数のこの種の照射源を有する。これらの照射源によって、特に、接着剤によって被覆された構成要素の広範囲の照射が達成される。
【0025】
有利にはこの少なくとも1つの照射源が、紫外線放射を照射する照射源及び/又は赤外線放射を照射する照射源として形成される。これによって、紫外線放射及び/又は赤外線放射による、光化学的に硬化可能な接着剤の光化学的な硬化が可能となる。これによって、特に可視光のみによる接着剤の硬化と、これによる接着剤の制御されない硬化が回避される。
【0026】
好ましくは、塗布ユニットはシルクスクリーンユニットとして形成される。これによって、光化学的に硬化可能な接着剤の非常に正確な塗布が可能となる。特に、これによって接着剤の選択的な塗布が可能となり、即ち、接着剤は例えば部分的にのみ、及び全範囲にではなく、構成要素に塗布されることができ、また様々な領域において異なる程度で塗布される。
【0027】
本発明の実施例を以下に図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】燃料電池の構成要素の接合方法の概略的なフローチャートを示す。
図2】光化学的に硬化可能な接着剤によって湿らせた燃料電池の構成要素の概略的な平明図である。
図3】燃料電池の構成要素、マスキング部材、及び照射設備の図2の切断線III−IIIに対応する概略的な断面図を示す。
図4】膜・電極接合体、マスキング部材、及び照射設備の概略的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
互いに対応する部分には全ての図において同じ参照番号を付す。
【0030】
図1は、ここでは詳細には示していない燃料電池の構成要素1,2,3の接合方法の概略的なフローチャートを示す。図2〜4にはこの方法の工程が例を用いて概略的に示され、この際、この方法によって燃料電池の膜・電極接合体4が形成される。さらに3つの構成要素1,2,3が互いに接合され、これらは、膜・電極接合体4の第一のフレーム要素として形成された第一の構成要素1、膜・電極接合体4の触媒被覆膜として形成された第二の構成要素2、及び膜・電極接合体4の第二のフレーム要素として構成された第三の構成要素3である。
【0031】
これらの構成要素1,2,3を互いに接合するために、第一のプロセスS1において、光化学的に硬化可能な液状の接着剤5が部分的に第一の構成要素1と第三の構成要素3、即ち、第一と第二のフレーム要素に塗布される。続いて接着剤5が第二のプロセスにおいて、光化学的に半硬化される。第三のプロセスS3では3つの構成要素1,2,3が規定の手法によって互いに位置決めされ、これによって第二の構成要素2、即ち触媒被覆膜が、第一の構成要素1と第三の構成要素3に塗布された接着剤5と接触させられる。続いて接着剤5が第四のプロセスS4で硬化される。
【0032】
燃料電池の膜・電極接合体4の両方のフレーム要素、即ち第一と第三の構成要素1,3は、例えばそれぞれ高分子膜として、例えばポリプロピレンから形成される。これらのフレーム要素は図2に示すように、それぞれ中心領域において広範囲の第一の凹部A1を有する。この際、図2では第一の構成要素1、即ち第一のフレーム要素のみを示す。第三の構成要素3、即ち第二のフレーム要素は、これに対応して形成される。したがって以下の説明は、それぞれ両方のフレーム要素と類似した形で適用され、即ち図2に示す第一の構成要素1にもこれに相応して形成された第三の構成要素3にも適用される。
【0033】
第一と第三の構成要素1,3における第一の凹部A1の領域では、第二の構成要素2、即ち触媒被覆膜が構成される。このようにして触媒被覆膜がフレーム要素によって取り囲まれ、即ち端部において包囲される。触媒被覆膜は例えばプラスチック・フィルムとして形成され、これは例えば炭粉末の形でカーボンにより被覆されている。触媒被覆膜は多孔質であり、広い表面を有する。
【0034】
フレーム要素、即ち第一と第三の構成要素1,3はさらに、側端部領域において第二の凹部A2を有し、これは膜・電極接合体4の流入及び/又は流出領域として、即ち、いわゆるポートとして機能する。この第二の凹部A2を通って反応ガスが燃料電池の活性領域に供給されるか、又は反応生成物がそこから排出される。さらに、一つ以上の第二の凹部A2によって、調節媒体も燃料電池の調節媒体領域を通って流される。即ち、この領域に供給されて再び排出される。
【0035】
従来技術より、このフレーム要素と触媒被覆膜をフィルム接着剤によって接合させることが公知であり、この接着剤は熱硬化性であり平面状に塗布することができる。しかしながらこのフィルム接着剤では大量の無駄が生じ、これにより相応して多量の材料の投入が必要となり、これに応じたコスト増に繋がる。フィルム接着剤は長い硬化時間がかかり、硬化は加熱要素の適用によって、即ちこの加熱要素のフレーム要素及び/又は触媒被覆膜との接触によってなされる。これによって、大きすぎる熱の適用により損傷が生じる可能性がある。
【0036】
従来技術より、液状の接着剤を使用し、これを光化学的に硬化させることが公知である。しかしながら、接着剤が全ての領域で均等に半硬化されるために、この硬化は均等な全領域の照射によってなされる。接着剤の完全な硬化は、接合する部分の接合の後再び熱によってなされ、この際上述のような欠点が生じる。
【0037】
ここに示す方法では、第一のプロセスS1において光化学的に硬化可能な接着剤5が液体状で、明確に第一の構成要素1と第三の構成要素3の既定の構成要素領域B1,B2、即ちフレーム要素に対して塗布される。これは両方の構成要素1,3に対して同時になされても、又は連続してなされてもよい。この際、明確な塗布とは、接着剤5を塗布する各構成要素領域B1,B2も、それぞれ塗布される接着剤5の量も規定されることを意味する。この明確な塗布は、例えばシルクスクリーン工程によって非常に正確に実行することができる。この目的のために、この方法の実行のためのここには詳細に示していない装置の塗布ユニットがシルクスクリーンユニットとして構成される。接着剤5が同時に第一と第三の構成要素1,3に塗布される場合は、これに応じた大きさに形成された1つの塗布ユニットが必要となるか、又は2つの塗布ユニットが必要となる。
【0038】
この例では接着剤5は、図2に示すように、端部領域において凹部A1,A2を取り囲む第一の構成要素1と第三の構成要素3に塗布され、即ち、第一又は第三の構成要素1,3の第一の凹部A1を包囲する第一の構成要素領域B1と、それぞれ第一又は第三の構成要素1,3の第二の凹部A2を包囲する第二の構成要素領域B2に塗布される。上述のように、図2では、明瞭な図示のために第一の構成要素1のみを示す。しかしながら、第三の構成要素3への接着剤の塗布は、上述の通り同様になされる。接着剤5はこの際各構成要素1,3の表面側のみに塗布される。この表面側の上に両方の構成要素1,3が互いに、及び第二の構成要素2とそれぞれ接合される。
【0039】
塗布の直後、接着剤5は、第一の構成要素1と第三の構成要素3に塗布された全ての構成要素領域B1,B2において同じ稠度を有し、即ち接着剤5は液状であり、このため非常に低い粘度を有する。接着剤5は光化学的に硬化可能であり、即ち一つ以上の規定の波長の光の照射が接着剤5において化学反応を引き起こし、これは継続的な接着剤5の硬化又は接合をもたらし、これによってこの粘度は継続される照射のもとで、接着剤5が完全に硬化されるまで増加する。どの程度の速度でこの光化学的なプロセスが進行するかは接着剤5に対して作用する照射強度に左右され、即ち、照射強度が高いほど接着剤5が早く硬化する。場合によっては、接着剤5は使用される接着剤の種類に依存して、硬化の開始前に照射によってまず活性化され、それから次第に硬化される。
【0040】
接着剤5の制御されない硬化を回避するために、好ましくは、可視光のもとでは硬化しないか少なくとも極めて僅かにのみ硬化し、紫外線放射及び/又は赤外線放射により光化学的に硬化可能な接着剤5が使用される。このようにして膜・電極接合体4の作製は、通常の環境条件のもとでの接着剤5の硬化を除いて、接着剤5の制御されない硬化の危険を冒すことなく行うことができ、これは接着剤5の硬化が紫外線放射及び/又は赤外線放射の制御された適用によってなされることができるためである。
【0041】
接着剤5が第一のプロセスS1において第一の構成要素1と第三の構成要素3、即ち両方のフレーム要素に塗布された後、接着剤5は第二のプロセスS2において光化学的に半硬化される。しかしながらこれは、従来技術より公知のように、全領域の均等な照射によってではなく、明確な照射によってなされる。即ち、接着剤5は第一の構成要素1又は第三の構成要素3の異なる構成要素領域B1,B2において、異なる硬度で半硬化されるか又は半接合される。これは、接着剤5に対する、これらの異なる構成要素領域B1,B2において異なる照射強度で作用する照射によって達成される。
【0042】
さらに、図3に示すように各構成要素1,3の上に、即ち、各構成要素1,3の接着剤5によって被覆された側とこの方法の実施のための装置の照射設備6との間に、マスキング部材7が構成される。図3では、明瞭な図示のために図2の切断線III−IIIに対応する第一の構成要素1の断面図のみを示す。マスキング部材7についてもこれに応じて主要な部分のみ、ここに示す第一の構成要素1の領域を被覆する領域の断面を示す。
【0043】
このマスキング部材7によって各構成要素1,3が部分的にマスキングされる。この際、同様にこの方法の実施のための装置の一部であるマスキング部材7は、第一のマスキング領域7.1と第二のマスキング領域7.2を有し、この際第一のマスキング領域7.1と第二のマスキング領域7.2は、これらが照射設備6から放射される照射を異なる程度で各構成要素1,3上の接着剤5に対して照射するように形成される。
【0044】
即ち、第一のマスキング領域7.1と第二のマスキング領域7.2は、例えば異なる程度で照射設備6から放射される照射について吸収するように及び/又は反射するように形成される。マスキング領域7.1,7.2が照射設備6から放射される照射を強力に吸収及び/又は反射するほど、マスキング部材7を通過して各マスキング領域7.1,7.2の下の接着剤5に到達することで接着剤5を光化学的に半硬化させる照射は少なくなり、即ち、各マスキング領域7.1,7.2の下に構成された構成要素領域B1,B2における接着剤5に作用する照射強度は少なくなる。マスキング領域7.1,7.2の間に存在するマスキング部材7の領域は重要ではなく、この下には接着剤5が存在しないため、即ち、これらの領域は例えば完全に透明に、もしくは部分的又は完全に不透明に形成され得る。
【0045】
図3もまた、明瞭な図示のために第一の構成要素1、即ち第一のフレーム要素によってのみ示されているが、第三の構成要素3、即ち第二のフレーム要素について同様に実施される。これは同時又は連続してなされる。連続した実施の際は、同一のマスキング部材7と同一の装置の照射設備6によって行われ、接着剤5の同時の半硬化についてはこれに応じて、この種の2つのマスキング部材7と、2つの照射設備6又は十分に大きい照射設備6のいずれかが必要であり、これによって同時に両方のマスキングされたフレーム要素が照射され得る。
【0046】
ここに示す例では、第一のマスキング領域7.1は、照射設備6から放射される照射について第二のマスキング領域7.2よりも強力に反射及び/又は吸収するように形成され、即ち、第二のマスキング領域7.2は、照射設備6から放射される照射について第一のマスキング領域7.1よりも透過性が高く形成される。これによって、照射設備6から放射される照射は第一のマスキング領域7.1よりも強力に、第二のマスキング領域7.2を通過する。マスキング部材7は、図3に示すように、第一のマスキング領域7.1が第一の構成要素領域B1を照射設備6から放射された照射に対して覆い、また第二のマスキング領域7.2が第二の構成要素領域B2を照射設備6から放射された照射に対して覆うように、照射設備6と第一の構成要素1又は第三の構成要素3の接着剤5によって被覆された側との間で位置決めされる。
【0047】
続いて第一の構成要素1又は第三の構成要素3に、照射設備6によって紫外線放射及び/又は赤外線放射が照射される。紫外線放射及び赤外線放射による照射は、例えば連続して、又は、紫外線照射又は赤外線放射から始めて何度も交互に行うことができる。それぞれの照射時間は、例えばそれぞれ使用される接着剤5及び/又は照射設備6で使用される照射源の性能に応じて規定される。
【0048】
これらの照射源は例えば発光ダイオード又は管状の照射源として形成することができ、この照射源は紫外線放射及び/又は赤外線放射を放射し、即ちこの照射源は接着剤5の光化学的な硬化に必要な照射に応じて選択される。発光ダイオード(LED)は例えば紫外線及び/又は赤外線を放射するダイオードとして形成される。管状の照射源、特に紫外線照射のための照射源は、例えばいわゆる低圧水銀蒸気管、中圧水銀蒸気管、高圧水銀蒸気管、又は超高圧水銀蒸気管として形成される。好ましくは、照射設備6における照射源は平面状に構成され、これによって広範囲で均等な照射が可能となる。このようにしてマスキング部材7は完全かつ均等に照射される。第一の構成要素1又は第三の構成要素3の異なる構成要素領域B1,B2における接着剤5のための異なる照射強度は、マスキング部材7によって達成される。
【0049】
照射設備6から放射される照射がより少なく通過する第一のマスキング領域7.1が第一の構成要素領域B1を覆うため、また、照射設備6から放射される照射がより強力に通過する第二のマスキング領域7.2が第二の構成要素領域B2を覆うため、第二の構成要素領域B2とそこに塗布された接着剤5に作用する照射強度は、第一の構成要素領域B1とそこに塗布された接着剤5に作用する照射強度よりも強い。これによって、接着剤5によって被覆された第一の構成要素1又は第三の構成要素3の全ての構成要素領域B1,B2について1つの照射設備6のみによる照射を行う場合、異なる構成要素領域B1,B2における異なる程度での接着剤5の半硬化が達成される。この例では第一の構成要素領域B1における接着剤5はより弱い照射強度のためより弱く半硬化され、第二の構成要素領域B2ではより強い照射強度のためより強力に半硬化される。この結果、第一の構成要素領域B1において接着剤5が半硬化の後、第二の構成要素領域B2におけるよりも低い粘度を有することになり、即ち、接着剤5は第一の構成要素領域B1において第二の構成要素領域B2におけるよりも高い流動性を有し、つまりより液状である。このようにして、接着剤5のレオロジーがそれぞれの特別な必要条件と材料の特徴に適応される。
【0050】
第三のプロセスS3では第二の構成要素2、即ち触媒被覆膜が、上述のやり方で接着剤5によって被覆された第一の構成要素1と上述のやり方で接着剤5により被覆された第三の構成要素3との間に、即ちフレーム要素の間に配置され、これによって、図4に示すように第四のプロセスS4における構成要素1,2,3が接着剤5の硬化によって互いに接合される。図4においても、図3と同様に、明瞭な図示のために構成要素1,2,3の部分的な断面図のみ示す。
【0051】
上述のような構成要素1,2,3の構成によって、両方のフレーム要素、即ち第一の構成要素1と第三の構成要素3は第二の構成要素領域B2において直接重なり、接着剤5によって互いに接着される。接着剤5はこの第二の構成要素領域B2において高い粘度を有するため、ここでは接着剤5の溶解又は流出が回避される。これによって第一の構成要素1と第三の構成要素3における接着剤の構成の高い形状正確性と輪郭正確性が可能となり、ここで形成された流入及び/又は流出領域では膜・電極接合体4の接合連結における独立した構造となっているため、輪郭正確性は第二の構成要素領域B2において必要である。
【0052】
第一の構成要素領域B1において第二の構成要素2の固定のために、第二の構成要素2、即ち触媒被覆膜の端部領域が構成され、これによってこの端部領域が接着剤5によって第一の構成要素1及び第三の構成要素3と接着されることができる。触媒被覆膜の端部領域が接合するこの第一の構成要素領域B1において、接着剤5は膜・電極接合体4の接着の後に、これに加えて構成要素1,2,3の接合機能のためにさらに密閉機能を備え、即ち接着剤5はここで触媒被覆膜を両方のフレーム要素から形成された枠に対して密封するシールを形成し、これによって2つのフレーム要素の間を通った、即ち第一の構成要素1と第三の構成要素3との間を通った側部での反応ガスの漏れが回避される。
【0053】
これを達成するために、接着剤5は第二の構成要素2の、即ち多孔質の触媒被覆膜の端部領域に浸入し、端部領域の側部を完全に包囲し、またこの端部領域における触媒被覆膜の上側と下側を十分に接合する必要があり、これによって第二の構成要素2の第一の構成要素1及び第三の構成要素3との密閉的な接着を確実にすることができる。さらに接着剤5は、必要な密閉効果を得るために、触媒被覆による膜の端部領域の起伏のある、粗い多孔質の上面を均一にする必要があり、これによってこの領域における構成要素1,2,3の間に開口部が残らなくなる。これは第一の構成要素1と第三の構成要素3の第一の構成要素領域B1における接着剤5の低い粘度によって可能となり、確実にされる。
【0054】
上述のとおり、図2と3ではそれぞれ第一の構成要素1のみが示されているが、ここに記載のこの方法の実施形態では第一の構成要素1と第三の構成要素3、即ち両方のフレーム要素が同様に接着剤5によって被覆され、接着剤5が同様に半硬化される。しかしながらここには示していないこの方法の他の実施形態においても、接着剤5を異なるやり方で両方のフレーム要素、即ち第一の構成要素1と第三の構成要素3に塗布及び/又は半硬化することができる。例えば接着剤の塗布は、この方法の第三の構成要素3におけるこの種の他の実施形態では第一の構成要素領域B1でのみ行うことができ、これによって第三の構成要素3の第二の構成要素2との適切な接着を確実にすることができる。第三の構成要素3の第二の構成要素領域B2では、例えばこの種の接着剤の塗布は行うことができず、これは、第二の構成要素領域B2において第一の構成要素1に塗布された接着剤5は第一の構成要素1と第三の構成要素3、即ち両方のフレーム要素を確実に互いに接合するために既に十分であるためである。
【0055】
膜・電極接合体4を形成するための構成要素1,2,3の完全な相互的な接着のために、ここに記載の、また図4に示すやり方で重なって構成された構成要素1,2,3は再びこの方法の実施のための装置の照射設備6によって照射され、これによって接着剤5が完全に硬化される。代替的に、例えば接着剤5の硬化のために半硬化のため以外の照射源が必要な場合、これはここに示さない他の装置照射設備によってなされてもよい。例えば半硬化を紫外線放射によって行い、硬化を赤外線放射によって、又はこれとは逆に行うこともできる。紫外線放射と赤外線放射による硬化のための照射は、ここでも半硬化と同様に、例えば連続して、又は、紫外線照射もしくは赤外線放射から始めて何度も交互に行うことができる。それぞれの照射時間はここでも例えばそれぞれ使用される接着剤5及び/又は照射設備6で使用される照射源の性能に応じて規定される。
【0056】
接着剤5の光化学的な硬化を可能にするために、少なくとも第一の構成要素1及び/又は第三の構成要素3が照射設備6から放射される照射について十分に高い透過性をもって形成される必要があり、即ち、紫外線放射及び/又は赤外線放射の使用の場合、それぞれの照射について透明又は少なくとも十分に半透明である必要があり、これによって照射が接着剤5に到達しこれを硬化することができる。第一の構成要素1も第三の構成要素3も、照射設備6から放射される照射について十分に高い透過性をもって形成されると特に好ましい。
【0057】
図4に示す例では接着剤5の硬化のための同じ照射設備6が使用され、これは既に接着剤5の半硬化のために使用されており、ここでは、ここに示す構成要素の構成の一つの側のみが照射され、これによって接着剤5の硬化によって構成要素1,2,3を互いに接合し、これによって膜・電極接合体4が完成する。しかしながら、接着剤5の最適な硬化を構成要素の構成の全ての領域で確実にするために、両方の側から、構成要素の構成及び/又は照射設備6の位置変更によって連続して、又は同時のいずれかで照射を実施することもできる。
【0058】
しかしながら同時の照射のためには、照射設備6が構成要素の構成の両方の側に、即ち第一の構成要素1が構成されている側と第二の構成要素2が構成されている側の両方にこれに応じた照射源を備えるか、又は、この方法の実施のための装置が2つの照射設備6を有し、これらの間に、図4に示す構成要素の構成を形成するここに記載のやり方で重なって構成された構成要素1,2,3が接着剤5の硬化のために構成される必要がある。
【0059】
図4に示す例では第三の構成要素3上に、即ち第三の構成要素3と照射設備6との間に再びマスキング部材7が配置される。この際この例では、既に第一の構成要素1と第三の構成要素3上での接着剤5の半硬化のために使用されたものと同じマスキング部材7を示している。このマスキング部材7はこのため同じ効果を有し、即ち、照射設備6から放射される照射がより弱く通過する第一のマスキング領域7.1が、同時に第一の構成要素1と第三の構成要素3の第一の構成要素領域B1を照射設備6から放射された照射に対して覆い、また、照射設備6から放射される照射がより強力に通過する第二のマスキング領域7.2が、同時に第一の構成要素1と第三の構成要素3の第二の構成要素領域B2を照射設備6から放射された照射に対して覆う。
【0060】
これによって、第二の構成要素領域B2とそこに塗布された接着剤5に作用する照射強度が,第一の構成要素領域B1とそこに塗布された接着剤5に作用する照射強度よりも高くなる。これによって、接着剤5によって被覆された全ての構成要素領域B1,B2についての1つの照射設備6のみによる照射の場合も、異なる構成要素領域B1,B2における異なる程度での接着剤5の硬化が達成される。この例では第一の構成要素領域B1における接着剤5は弱い照射強度によってより弱く硬化され、第二の構成要素領域B2では高い照射強度によってより強力に硬化される。これによって、例えば第一の構成要素領域B1、即ち第二の構成要素2の第一の構成要素1及び第三の構成要素3との接合領域では、強力すぎる硬化、及びこれに伴う例えば接着剤5の脆化を回避することができ、このため接着剤5が例えば引き続き規定の弾性を有し、この領域でのその密閉機能を確実にすることができる。
【0061】
代替的に、この方法の別の実施形態では、例えば異なって形成された別のマスキング部材を使用することもでき、これは照射設備6から放射される照射についてそれぞれ他の透過性を有する他のマスキング領域を備え、このため例えば接着剤5は第一の構成要素領域B1において第二の構成要素領域B2においてよりも高い照射強度で照射され、これによって先の異なる接着剤5の半硬化を再び均等にし、これによって均等な接着剤5の硬化を確実にすることができ、即ち弱めに半硬化された第一の構成要素領域B1における接着剤5が第四のプロセスS4においてより強力に硬化され、強力に半硬化された第二の構成要素領B2における接着剤5が第四のプロセスS4において弱めに効果されることが考えられ、このため硬化の後の接着剤5の最終的な稠度が全ての構成要素領域B1,B2において同一となる。
【0062】
図4に示す例では構成要素の構成は、上述の通り、一方の側からのみ照射設備6によって照射され、このためこの側にのみマスキング部材7が構成されている。構成要素の構成が代替的に両側から照射される場合は、同様に既に述べたとおり、またこの種のマスキング部材7が使用される場合は、これに応じて構成要素の構成の両方の側にそれぞれこの種のマスキング部材7が必要になるか、又は構成要素の構成の両側が連続して照射されてもよく、ここでは1つのマスキング部材7で十分である。この場合は、マスキング部材7は構成要素の構成のそれぞれ照射される側と照射設備6との間に構成されるだけでよい。
【符号の説明】
【0063】
1 第一の構成要素
2 第二の構成要素
3 第三の構成要素
4 膜・電極接合体
5 接着剤
6 照射設備
7 マスキング
7.1 第一のマスキング領域
7.2 第二のマスキング領域
A1 第一の凹部
A2 第二の凹部
B1 第一の構成要素領域
B2 第二の構成要素領域
S1 第一のプロセス
S2 第二のプロセス
S3 第三のプロセス
S4 第四のプロセス
図1
図2
図3
図4