【実施例】
【0011】
<1>前提
本実施例に係る発明は、公知の情報処理装置にプログラムをインストールすることにより、情報処理装置を本発明に係る仮設構造物用の設計支援装置として機能させることを前提とするものである。
【0012】
<1.1>情報処理装置
情報処理装置は、PC、タブレット、スマートフォンなどの端末を想定する。
これらの端末は、CPU(演算処理装置)、データの送受信インターフェース、HDDやSSDなどの記憶装置、ROM、RAMなどのメモリ、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力装置、ディスプレイ、タッチパネルなどの表示装置、などのハードウェア資源を任意に備えている。
【0013】
<1.2>プログラムの態様
本発明に係る仮設構造物用の設計支援装置として機能させるためのプログラムは、市販のCADソフトに機能追加する形で導入する、プラグイン形式のプログラムであってもよいし、別途CAD機能を備えている専用プログラムであってもよい。
【0014】
<2>全体構成(
図1)
次に、本発明に係る仮設構造物用の設計支援装置の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施例に係る仮設構造物用の設計支援装置の構成例を示す概略ブロック図である。
本発明に係る仮設構造物用の設計支援装置は、第1の領域選択手段10、表示線規定手段20、第2の領域選択手段30、および三次元情報生成手段40を少なくとも具備する。
その他、本実施例ではさらに内訳算出手段50、新規図面生成手段60および
組合せ表示手段70を具備しているが、本発明において必須の構成ではない。
【0015】
<2.1>各手段の実行態様
本発明に係るプログラムをインストールしたCADソフトのツールバーには、これらの各手段を実行するためのボタンが配置されている。
ユーザは、CADソフト上で開いた二次元図面に対し、各手段を実行するボタンを適宜選択していきながら、仮設構造物の設計支援作業を進めていく。
以下、各手段の詳細について説明する。
【0016】
<3>第1の領域選択手段(
図1)
第1の領域選択手段10は、複数の二次元図面のうち何れか1つの二次元図面の一部または全部を、仮設構造物の平面図として選択する機能を有する。
【0017】
<3.1>領域の選択方法
第1の領域選択手段10による平面図の選択は、始点と終点を設定し、該二点間の線分を対角線に見立てた矩形枠や、三点以上選択した各頂点を繋ぐ線分からなる多角形枠で、二次元図面を囲む方法などを採用することができる。
【0018】
<3.2>二次元図面の部分選択
第1の領域選択手段10は、二次元図面に対し一部の領域のみを選択することもできる。
すなわち、仮設構造物が完成した状態を示す二次元図面から、一部の領域を選択することで、構築途中の状態の仮設構造物の平面図を領域設定することができる。
【0019】
<4>表示線規定手段(
図1)
表示線規定手段20は、前記第1の領域選択手段10で選択した平面図に対し、表示線を1箇所以上規定する機能を有する。
【0020】
<4.1>表示線について
表示線とは、平面図上の中間部分を選択する際には当該表示線における断面図を示すための断面線に相当し、平面図上の側縁部分を選択する際には、各側面図、正面図または背面図を示すための線に相当する要素である。
また、表示線には、矢視方向が把握できるよう、矢視線を設けておくことが好ましい。
【0021】
<4.2>表示線の描画方法
表示線規定手段20による表示線は、始点と終点を設定する直線式や、その他の中間点を設定しながら複数の直線を組み合わせてなる折曲式を採用することができる。
【0022】
<4.3>矢視線の表示
表示線の矢視方向を設定するにあたり、本発明では、表示線を選択したあと、さらに、表示線で分割される領域のうち何れか一方の領域を入力手段で選択することで、矢視線の向きを設定することができる。
【0023】
<4.4>表示線の設定数
表示線規定手段20は、前記第1の領域選択手段10で選択した平面図に対し、複数本の表示線を規定することもできる。
表示線を複数本規定した場合には、後述する第2の領域選択手段30でも同数の二次元図面を設定することになる。
【0024】
<5>第2の領域選択手段(
図1)
第2の領域選択手段30は、複数の二次元図面のうち何れか1つの二次元図面の一部または全部を、表示線からみた立面図として、それぞれ選択する機能を有する。
【0025】
<5.1>領域の選択方法および二次元図面の部分選択について
第2の領域選択手段30による、領域の選択方法や部分選択方法は、前記第1の領域選択手段10と同様の方法を採用することができる。
すなわち、仮設構造物が完成した状態を示す二次元図面から一部の領域を選択することで、構築途中の状態の仮設構造物の立面図を領域設定することができる。
【0026】
<5.2>立面図を複数設定する場合
前記したとおり、表示線規定手段20で、複数本の表示線を設定した場合には、それぞれの表示線に対応する立面図を、二次元図面から適宜選択していく必要がある。
この場合、立面図の選択方法は、表示線規定手段20で選択した順番と同じ順番で二次元図面を立面図として選択していく方法や、選択対象の表示線を指定してから、対応する二次元図面を該表示線における立面図として選択する方法など、種々の方法を採用することができる。
【0027】
<6>三次元情報生成手段(
図1)
三次元情報生成手段40は、前記平面図および立面図に基づいて、仮設構造物の三次元情報を生成する機能を有する。
【0028】
<6.1>三次元情報の内容
前記した仮設構造物の三次元情報には、仮設構造物の三次元データに対し、どの箇所にどの構成部材を用いるかについての情報が少なくとも含まれている。
【0029】
<6.2>三次元情報の生成方法
三次元情報の生成にあたり、第1の領域選択手段で選択した平面図からは、水平材および筋交関連の構成部材を把握することができ、第2の領域選択手段で選択した立面図からは、垂直材関連の構成部材を把握することができる。
その他、平面図および立面図から明確に把握することができない領域については、自動的に構成部材の配置を行うことができる。
この自動配置作業は、周囲の構成部材の配置情報に基づき、予め規定してあるルールや、人工知能による推測作業でもって実施することができる。
【0030】
<6.3>三次元情報の生成時期
三次元情報生成手段40は、前記したとおり、CADソフトのツールバーに配置したボタンの選択によって実行する態様であってもよいし、前記した第2の領域選択手段30によって立面図が適切に設定された段階で、バックグランド上で自動実行する態様であってもよい。
【0031】
<7>内訳算出手段(
図1)
内訳算出手段50は、前記三次元情報に基づいて、使用する仮設構造物の構成部材の内訳情報を算出する機能を有する。
【0032】
<7.1>内訳情報の出力方法
内訳情報は、二次元図面のデータが格納されたCADファイルとは別に、csvファイルやテキストファイル等のデータとして、情報処理装置上に保存するように構成することができる。
【0033】
<7.2>内訳情報の生成時期
内訳算出手段50は、前記したとおり、CADソフト上のツールバーに配置したボタンの選択によって実行する態様であってもよいし、前記した三次元情報生成手段40による三次元情報の生成に併せて自動実行する態様であってもよい。
【0034】
<8>新規図面生成手段(
図1)
新規図面生成手段60は、前記三次元情報に基づいて、新規の二次元図面を生成する機能を有する。
【0035】
<8.1>新規二次元図面の生成態様
前記した三次元情報生成手段40によって三次元情報が生成されると、仮設構造物の構成部材が三次元的に把握できており、あらゆる切断線に基づく断面図を生成できる状態である。
よって、新規図面生成手段60は、奥行き方向(正面から背面側)、横方向(左側面側から右側面側)、または上下方向(平面から底面側)に順次切断した立面図または断面図を、新規の二次元図面として生成することができる。
【0036】
<8.2>三次元情報の更新
新規図面生成手段40により、新たに生成した二次元図面は、前記した表示線規定手段20および第2の領域選択手段30で用いる新たな立面図として追加選択することができる。
例えば、三次元情報生成手段40による三次元情報に一部誤りを発見した場合には、誤りのある二次元図面をユーザで修正してから新たな立面図として設定すれば、誤りが修正された態様に更新された三次元情報を得ることができる。
【0037】
<9>
組合せ表示手段(
図1)
組合せ表示手段70は、
組合せ図および
組合せ一覧表を生成する機能を有する。
【0038】
<9.1>
組合せ図
組合せ図とは、平面図とは別に新規に生成され、平面図を領域分割し、該分割領域毎に組合せ番号を付してなる図面である。
【0039】
<9.2>
組合せ一覧表
組合せ一覧表とは、前記
組合せ図に付してある組合せ番号毎の
構成部材(支柱(垂直材)
など)の一覧表を示したものであり、新規に生成される表である。
【0040】
<9.3>
組合せ一覧表の表示箇所
組合せ図および
組合せ一覧表は、各二次元図面と組み合わせるようにCADソフトの画面上に表示することで、一覧性の高い設計図を作成することができる。
【0041】
<10>使用例1(三次元情報および内訳情報の生成)(
図2〜
図7)
まず、本発明に係る設計支援装置の使用例として、既存の二次元図面から、仮設構造物の一種である仮設足場の構成部材の三次元情報を生成するまでの手順について説明する。
【0042】
<10.1>情報処理手順の概略(
図2)
各ステップにおける工程は以下の通りである。
(S110)複数の二次元図面のうち何れか1つの二次元図面の一部または全部を、仮設足場の平面図として選択する。
(S120)平面図に対し、表示線を1箇所以上規定する。
(S130)複数の二次元図面のうち何れか1つの二次元図面の一部または全部を、表示線からみた立面図として、それぞれ選択する。
(S140)平面図および立面図に基づいて、仮設足場の三次元情報を生成する。
以下、各ステップの詳細について説明する。
【0043】
<10.2>初期状態(
図3)
本実施例では、CADソフト上で仮設足場の二次元図面Aが三図(A1〜A3)作成された状態である。
この二次元図面Aは、既にデータベース化されている仮設足場の構成部材のライブラリを組み合わせて配置することで作成されており、各線分や連結要素には、仮設足場の構成部材の情報が既に埋め込まれている状態である。
【0044】
<10.3>平面図の選択(
図4)(S110)
次に、第1の領域選択手段10を実行して、作成済みの二次元図面A1〜A3の中から一図を、仮設足場の平面図として選択する。
図4では、ユーザが入力手段を用いて描画した平面選択枠Bで囲まれた二次元図面A1を、平面図としている。
【0045】
<10.4>表示線の設定(
図5)(S120)
次に、表示線規定手段20を実行して、平面図として選択した二次元図面A1内に、表示線Cを規定する。
図5では、平面図において、上から二段目を横断してなる直線であり、矢視方向を上方向とした表示線C1を規定している。
【0046】
<10.5>立面図の設定(
図6)(S130)
次に、第2の領域選択手段30を実行して、平面図に規定した前記表示線C1に対応する立面図を、その余の二次元図面A2,A3から設定する。
図6では、ユーザが入力手段を用いて描画した立面選択枠D1で囲まれた二次元図面A2を、表示線に対応する立面図(a−a断面図)として選択している。
【0047】
<10.6>その他の表示線および立面図の設定(
図7)(S130)
前記<10.4><10.5>と同様、その他の表示線と該表示線に対応する立面図を適宜設定する。
図7では、平面図において、右縁に沿うように配した直線であって矢視方向を左方向とした、表示線C2を規定するとともに、ユーザが入力手段を用いて描画した立面選択枠D2で囲まれた二次元図面A3を、前記表示線C2に対応する立面図(b−b矢視図)として選択している。
【0048】
<10.7>三次元情報の設定(図示無し)(S140)
次に、三次元情報生成手段40により、選択された平面図および立面図から、仮設足場の三次元情報を生成する。
三次元情報には、ジャッキベース、水平材、垂直材、ジョイント、大引材などの各部材の種類や本数、配置情報などが含まれる。
また、三次元情報の生成にあたり、平面図および立面図から明確に把握することができない領域については、予め定めたルールや人工知能等によって自動的に構成部材の配置を行っている。
本実施例では、三次元情報の生成は、生成に必要な平面図および立面図が選択された段階で、自動的に実施される態様としている。
【0049】
<10.8>内訳情報の生成(図示無し)
情報処理装置内で三次元情報が生成された後は、適宜仮設足場の構成部材の内訳情報を任意に生成・出力することができる。
本実施例では、三次元情報の生成と並行して、第1の領域選択手段10および第2の領域選択手段20で選択されている箇所からなる領域の仮設足場の構成部材の内訳情報をcsvファイルとして、情報処理装置上に自動保存される態様としている。
【0050】
<10.9>作用効果
以上の通り、本使用例によれば、CADソフト上の二次元図面から、仮設足場の三次元情報を自動生成し、使用する構成部材の内訳を簡単に取得することができる。
【0051】
<11>使用例2(三次元情報の更新)(
図8,
図9)
次に、生成した三次元情報を修正する手順について説明する。
<11.1>情報処理手順の概略(
図8)
図2に、使用手順の概略フローチャートを示す。
各ステップにおける工程は以下の通りである。
(S210)三次元情報に基づいて、新規の二次元図面を生成する
(S220)新規の二次元図面を必要に応じて修正する。
以下、各ステップの詳細について説明する。
<11.2>新規の二次元図面の生成(
図9)
三次元情報の生成以降は、当該三次元情報に基づき、あらゆる断面図を生成できる状態となる。
本実施例では、新規図面生成手段60を実行すると、平面図において、下から上に向かって横断した仮想の表示線(図示せず)からなる立面図である二次元図面(新たな二次元図面E1〜E6)を自動で生成・描画している。
このように新規図面生成手段によって新たに生成された断面図は、第2の領域選択手段で選択される新たな立面図として使用することができる。
なお、本実施例では、新規図面生成手段60が新たな二次元図面E1〜E6を自動生成しているが、第2の領域選択手段30で設定済みの立面図と同一構図の図面(
図9における二次元図面A2に相当する新たな二次元図面E4)は自動生成しないように構成してもよい。
<11.3>新規二次元情報の修正・三次元情報の更新(図示せず)
新たに生成された二次元図面E1〜E6を参照して一部誤りを発見した場合には、誤りのある二次元図面を適宜ユーザが修正した上で、表示線規定手段20および第2の領域選択手段30を用いて、新たな立面図として設定してから三次元情報生成手段40を再実行すれば、誤りが修正された態様に更新された三次元情報を得ることができる。
【0052】
<11.4>作用効果
以上の通り、本使用例によれば、三次元情報から新たな二次元図面を自動生成することで、新たな二次元図面の修正による、三次元情報の更新も簡単に実施することができる。
【0053】
<12>使用例3(
組合せ一覧表の生成)(
図10,
図11)
次に、生成した三次元情報から、
組合せ一覧表を生成する手順について説明する。
【0054】
<12.1>情報処理手順の概略(
図10)
各ステップにおける工程は以下の通りである。
(S310)平面図を領域分割し、該分割領域毎に組合せ番号を付してなる、
組合せ図を生成する。
(S320)組合せ番号毎の支柱の一覧表である、
組合せ一覧表を生成する。
以下、各ステップの詳細について説明する。
【0055】
<12.2>
組合せ図の生成(
図11(a))(S310)
組合せ表示手段70を実行すると、まず平面図として選択した二次元図面A1をコピーして、
組合せ図71を作成する。
組合せ図は、
図11(a)に示すように、コピーした平面図を支柱毎に領域分割するように区分けして、各分割領域711に組合せ番号を付したものである。
組合せ番号712が同じ領域は、垂直方向において構成部材の組合せが同じであることを示している。
【0056】
<12.3>
組合せ一覧表の生成(
図11(b))(S320)
次に、
組合せ一覧表72を作成する。
組合せ一覧表72とは、
図11(b)に示す様に、
組合せ図71に付してある組合せ番号712毎に、構成部材の内訳を記した一覧表である。
この
組合せ図71と、
組合せ一覧表72を参照することにより、作業員は、平面視してどの場所およびどの段数に如何なる構成部材を用いるのを視覚的に把握することができる。
【0057】
<12.4>作用効果
以上の通り、本使用例によれば、
組合せ図や
組合せ一覧表を自動生成することにより、作業員が把握しやすい図面を提供することができ、仮設足場の作業効率性の向上に寄与する。
【0058】
<13>使用例4(構築途中における必要な構成部材の把握方法)(
図12)
前記したとおり、仮設足場は周囲の躯体の構築に合わせて増設されていくため、仮設足場の構成部材を、どの時期にどの程度用意して現場に搬入しなければならないかを把握できると好ましい。
本発明に係る設計支援装置では、完成状態の仮設足場の二次元図面から、第2の領域選択手段30による立面図の選択を部分的に行って三次元情報を生成することができる。
【0059】
<13.1>算出対象の決定方法
図12では、a−a断面図(二次元図面A2)やb−b断面図(二次元図面A3)において、立面選択枠D1,D2を部分的に選択している。
なお、二次元図面を部分的に選択した場合、構成部材の一部分のみが立面選択枠Dに含まれるため、当該構成部材を、三次元情報や内訳情報の算出対象とするか否かの判断を行う必要が生じる。
この際には、構成部材の中心点が、立面選択枠D内に位置する場合に算出対象に含めるように構成するなど、適宜の方法を採用することができる。
【0060】
<13.2>作用効果
以上の通り、本使用例によれば、第1の領域選択手段10や第2の領域選択手段30で選択する領域を変えることにより、最終形の仮設足場を示す平面図および立面図から、仮設足場の最終段階や構築途中段階において必要とする仮設足場の三次元情報や、構成部材の内訳情報および各構成部材の組合せの一覧表を、簡易に生成することができる。