(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電子部品の実装用基板としてガラスエポキシ部材を使用したプリント基板が一般的に使用されている。ガラスエポキシ部材は、ガラス繊維布を重ねたものにエポキシ樹脂を含浸させたものである。そのためガラスエポキシ部材を切断すると、エポキシ樹脂又はガラス繊維からなる細かい塵埃が発生する。このような細かい塵埃は基板回路の接触不良や品位の低下などを引き起こすおそれがある。そのため、基板の切断時に生じた塵埃はプリント基板の製造時に除去しておく必要がある。
しかし、プリント基板の端面から塵埃を取り除いたとしても、プリント基板の端面部分は脆いため、崩壊して更なる塵埃が発生するおそれがあるという課題があった。
【0003】
そこで本発明者は先に、プリント基板の端面に膜形成液を塗布して膜を形成することで、端面部分の崩壊を防止することのできる塗布装置を提案した(特許文献1)。
図23は本発明者が先に提案した塗布装置の要部を示した側面断面図であり、
図24は塗布装置の内部機構を示すために筐体を省略して示した概略正面図である。
【0004】
筐体101の搬入口101a及び搬出口101bにわたって、前後方向に延びるコンベヤ102が配設されている。コンベヤ102は支持部材(図示せず)によって筐体101に支持されている。筐体101には複数の操作スイッチ103aを備えた操作部103が設けられている。操作スイッチ103aが操作されることによってコンベヤ102が駆動及び停止される。
【0005】
筐体101内のコンベヤ102の左右に塗布機構110、110がそれぞれ設けられている。塗布機構110は筐体101の後面に対向して配設された固定板104に固定され、固定板104の下部がボールねじ機構120に連結されている。ボールねじ機構120は支持部材(図示せず)によって筐体101に支持されている。
【0006】
塗布機構110は、塗布円盤111、モータ112、塗布液供給円盤113、及びモータ114を備えている。塗布円盤回転用のモータ112、112は、固定板104に水平に取付けられた支持部材105に固定され、その回転軸112aは鉛直下向きに配設されている。塗布円盤111、111は、水平方向に配設され、上方に延びる軸111aを備えている。モータ112の回転軸112aに塗布円盤111の軸111aが連結され、モータ112の駆動によって塗布円盤111が回転するようになっている。
【0007】
塗布液供給円盤回転用のモータ114、114は、前後方向に延びる枢軸115を介して固定板104に固定され、その回転軸114aが水平方向に配設されている。塗布液供給円盤113、113は、塗布円盤111、111を挟んでコンベヤ102の反対側に、鉛直方向に配設され、水平方向に延びる軸113aを備えている。モータ114の回転軸114aに塗布液供給円盤113の軸113aが連結され、モータ114の駆動によって、塗布液供給円盤113が回転するようになっている。塗布液供給円盤113の軸113aは塗布円盤111の下面よりも下方に位置し、塗布液供給円盤113の塗布円盤111側上部側面は、塗布円盤111の周面に接している。
【0008】
塗布液供給円盤113の下方には、樹脂成分を含む膜形成液116を収容する箱形の液供給容器117が設けられ、塗布液供給円盤113の下端部が、液供給容器117の上方から挿入されて膜形成液116に漬けられている。塗布液供給円盤113の回転に伴い、塗布液供給円盤113の下端部から塗布液供給円盤113の上部に膜形成液116が移動し、塗布円盤111の外周面に供給されるようになっている。
【0009】
固定板104の下端部には、ボールねじ機構120が接続されている。ボールねじ機構120、120は、コンベヤ102の下方に配置されたモータ121、121を備えている。モータ121は、コンベヤ102から離隔する左右水平方向に延びる回転軸(図示せず)を備えており、該回転軸には左右水平方向に延びる雄ねじ122が連結されている。また雄ねじ122には筒状の雌ねじ体123が嵌合され、雌ねじ体123に固定板104の下端中央部が連結されている。モータ121、121の駆動によって、雄ねじ122が回転し、雄ねじ122の回転に伴い雌ねじ体123に連結された固定板104、104が左右に移動可能となっている。
【0010】
上記した塗布装置によるプリント基板130の端面130aへの膜形成液116の塗布方法について説明する。まず、操作部103の操作スイッチ103aを操作して、モータ121を正逆回転させ、プリント基板130の左右幅に整合するように、塗布機構110、110の左右位置を調整する。次に、搬入口101a側のコンベヤ102にプリント基板130を載置し、操作スイッチ103aを操作して、コンベヤ102、モータ112、112及びモータ114、114を駆動させる。
【0011】
コンベヤ102によってプリント基板130は塗布機構110まで搬送され、塗布円盤111、111の周面111b、111bに左右端面130a、130aが当接する。このとき塗布円盤111、111の周面111b、111bに付着している膜形成液116がプリント基板130の左右端面130a、130aに塗布される。そしてプリント基板130の搬送にしたがって、プリント基板130の左右端面130a、130a全体に膜形成液116が塗布され、塗布後、搬出口101bからプリント基板130が搬出され、膜形成液116に含まれる樹脂成分を硬化させる。
【0012】
上記塗布装置によれば、塗布円盤111、111によってプリント基板130の両側端面130a、130aに膜形成液116が塗布され、プリント基板130の両端面130a、130aに塗膜を形成することが可能となった。
【0013】
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、上記塗布装置では、膜形成液116が供給円盤113、113を介して塗布円盤111、111の外周面111b、111bに供給され、塗布円盤111、111の外周面111b、111bに付着している膜形成液116がプリント基板130の端面130a、130aに塗布される構成であるため、これら塗布円盤111の外周面111bに対する膜形成液116の供給状態にバラツキが生じ易い。
【0014】
塗布円盤111の外周面111bに対する膜形成液116の供給状態を安定させるためには膜形成液116の粘度を比較的高め(垂れ落ちない程度)に調整する必要があり、膜厚を薄く且つ均一に塗布することが難しいという課題があった。
【0015】
他方、各種電子機器の薄形化や小型化に対応させるために、近年、厚みが数十μm〜数百μm程度の薄形の銅張積層基板(パッケージ基板とも言う)の需要が高まってきている。
このような薄形基板に対しては、膜形成液を基板端面にのみ塗布することは容易ではなく、基板の端面を含む周縁部に、例えば、額縁状に塗布するような形態が望ましいと考えられる。
【0016】
しかしながら上記塗布装置では、プリント基板130の端面130aにのみ膜形成液116を塗布する構成となっており、基板端面を含む周縁部に膜形成液を額縁状に薄く均一に塗布することができないという課題があった。
【発明の概要】
【0018】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、基板の端面を含む周縁部に膜形成液を薄く且つ均一な膜厚で塗布することができ、膜厚変動が少ない塗膜を安定して形成することができる塗布装置、塗布ヘッド及び塗布方法を提供することを目的としている。
【0019】
上記目的を達成するために本発明に係る塗布装置(1)は、基板の端面を含む周縁部に液体を塗布する塗布装置であって、前記基板を支持する支持手段と、前記基板の端部を挿入し得る隙間を有して対向配置された一対の塗布ヘッドを備えた塗布手段と、該塗布手段を移動させる移動手段と、前記一対の塗布ヘッドに膜形成液を供給する液供給手段と、前記一対の塗布ヘッドの前記隙間に、前記支持手段に支持された前記基板の端部を挿し込んだ状態で、前記一対の塗布ヘッドを前記基板の周縁部に沿って移動させるように前記移動手段を制御する制御手段とを備え、前記一対の塗布ヘッドが、当該一対の塗布ヘッドの対向面に、前記膜形成液を溜める液溜部と、該液溜部を通過させた前記基板の端部に付着した前記膜形成液を薄膜状に塗工する塗工部とを備えていることを特徴としている。
【0020】
上記塗布装置(1)によれば、前記一対の塗布ヘッドの前記隙間に、前記支持手段で支持された前記基板の端部を挿し込んだ状態で、前記一対の塗布ヘッドの前記液溜部に前記膜形成液を供給しつつ、前記一対の塗布ヘッドを前記基板の周縁部に沿って移動させることができる。すなわち、前記液溜部に溜められた前記膜形成液に前記基板の端部を通した後、前記基板の端部に付着した前記膜形成液を前記塗工部で薄膜状に塗工しながら、前記一対の塗布ヘッドを前記基板の周縁部に沿って移動させることができる。
また、前記液溜部に溜められた前記膜形成液に前記基板の端部を通すように構成されているため、該基板の端部に前記膜形成液を十分に付着させることができ、前記基板の端部に前記膜形成液をムラなく付着させた状態とした後、前記塗工部で薄膜状に塗工することができる。
したがって、前記基板の周縁部の上下面及び前記基板の端面(側面)に前記膜形成液を薄く且つ均一に塗布することができる。また、膜厚変動等の塗膜品質のばらつきが少ない塗布を継続して行うことができ、前記基板の周縁部に額縁状の均質な塗膜を精度良く形成することができる。そのため、前記基板の端面部分の崩壊による塵埃の発生を防止できるとともに前記基板の周縁部を前記塗膜により補強することができ、前記基板の取り扱い性を高めることができ、前記基板の不良品発生率を低下させることができる。
【0021】
また本発明に係る塗布装置(2)は、上記塗布装置(1)において、前記塗工部が、前記基板の端部に付着した前記膜形成液をなら(均)すこて(鏝)部と、該こて部を通過させた前記基板の端部に付着した余分な前記膜形成液を掻き取る掻取部とを備えていることを特徴としている。
【0022】
上記塗布装置(2)によれば、前記こて部と前記掻取部とを備えているので、前記液溜部を通過させた前記基板の端部に付着した前記膜形成液を均一な膜厚に塗り広げた後、前記基板に付着した余分な前記膜形成液を確実に掻き取ることができ、前記膜形成液を薄く且つ均一にムラなく塗布することができる。
【0023】
また本発明に係る塗布装置(3)は、上記塗布装置(1)又は(2)において、前記塗布手段が、前記一対の塗布ヘッドを旋回させるための旋回機構部を備えていることを特徴としている。
【0024】
上記塗布装置(3)によれば、前記旋回機構部によって前記一対の塗布ヘッドを旋回させることができるので、例えば、矩形の基板の周縁部に膜形成液を塗布する場合、該基板の端面に対する前記一対の塗布ヘッドの向きを前記基板の各辺共に同じ向きに設定することができ、前記基板の各辺共に同じ状態で安定した塗布を行うことができる。
【0025】
また本発明に係る塗布装置(4)は、上記塗布装置(3)において、前記旋回機構部に、前記一対の塗布ヘッドを水平方向にスライドさせるスライド機構部が装備されていることを特徴としている。
【0026】
上記塗布装置(4)によれば、前記一対の塗布ヘッドを前記旋回機構部に対して水平方向にスライド移動させることができる。したがって、前記一対の塗布ヘッドの位置の微調整、例えば、前記一対の塗布ヘッドの前記隙間に挿し込む前記基板端部の幅の微調整など、前記基板の端面に対する前記一対の塗布ヘッドの位置制御をより高精度に行うことができる。
【0027】
また本発明に係る塗布装置(5)は、上記塗布装置(1)又は(2)において、前記塗布手段が、前記支持手段の周囲に複数配設され、前記移動手段が、前記支持手段に支持された基板の辺に沿って前記複数の塗布手段を移動させるものであり、前記制御手段が、前記複数の塗布手段を前記基板の辺に沿って移動させるように前記移動手段を制御するものであることを特徴としている。
【0028】
上記塗布装置(5)によれば、前記基板の周縁部を前記複数の塗布手段で塗布することが可能となり、前記基板全周を塗布する時間を大幅に短縮することができ、塗布工程の効率を高めることができる。
【0029】
また本発明に係る塗布装置(6)は、上記塗布装置(5)において、前記移動手段が、前記基板の辺方向と、該辺方向と交差する方向との2方向に移動可能な複数の2軸直動機構を備えていることを特徴としている。
【0030】
上記塗布装置(6)によれば、前記2軸直動機構により前記各塗布手段を2軸方向に移動させることにより前記基板の各辺を安定した動作で繰り返し塗布することができる。
【0031】
また本発明に係る塗布装置(7)は、上記塗布装置(1)〜(6)のいずれかにおいて、前記膜形成液が収容される液収容部と、前記一対の塗布ヘッドの下方に配設される液受け部と、該液受け部で受けた前記膜形成液を前記液収容部に移送する移送手段とを備えていることを特徴としている。
【0032】
上記塗布装置(7)によれば、前記一対の塗布ヘッドから漏れた前記膜形成液が前記液受け部で受け止められ、前記移送手段により前記液収容部に移送されるので、前記膜形成液を循環させて繰り返し使用することができ、前記膜形成液を無駄なく使用することができる。
【0033】
また本発明に係る塗布装置(8)は、上記塗布装置(1)〜(7)のいずれかにおいて、前記一対の塗布ヘッドの前記隙間に当接させるパッド部と、該パッド部の下方に配設される液受け部と、前記パッド部及び前記液受け部を支持する支持部とを備えている塗布ヘッド用保護具をさらに備え、該塗布ヘッド用保護具が、前記一対の塗布ヘッドの退避位置に設置されていることを特徴としている。
【0034】
上記塗布装置(8)によれば、前記一対の塗布ヘッドを所定の退避位置に退避させているときに、前記塗布ヘッド用保護具の前記パッド部に前記一対の塗布ヘッドの前記隙間の部分を当接させることができる。したがって、前記隙間の部分に前記膜形成液の乾燥や、該乾燥による液詰まりが生じるのを防止することができ、前記膜形成液の乾燥や液詰まりのない良好な状態で前記基板への塗布を継続して行うことができる。
【0035】
また本発明に係る塗布装置(9)は、上記塗布装置(1)〜(8)のいずれかにおいて、前記基板の周縁部に塗布された前記膜形成液を乾燥させる乾燥手段を備えていることを特徴としている。
【0036】
上記塗布装置(9)によれば、前記乾燥手段によって、前記膜形成液の塗布後すぐに前記膜形成液を乾燥させることができ、その後の作業性を高めることができ、また前記膜形成液のはがれ等の塗布不良を防止する効果を高めることができる。
【0037】
また本発明に係る塗布装置(10)は、上記塗布装置(1)〜(9)のいずれかにおいて、前記支持手段に支持される前の基板を所定の位置に位置決め配置する位置決め手段と、該位置決め手段で位置決めされた基板を前記支持手段に移載し、前記膜形成液が塗布された基板を前記支持手段から移送する基板移載手段とを備えていることを特徴としている。
【0038】
上記塗布装置(10)によれば、前記位置決め手段により前記基板の位置決めを行った後、該基板を前記基板移載手段で前記支持手段に移載するので、前記支持手段に移載される基板の位置精度が高く、前記膜形成液の塗布幅にバラツキのない精度の高い塗布を行うことができる。
【0039】
また本発明に係る塗布装置(11)は、上記塗布装置(10)において、前記基板移載手段が、第1の移載部と第2の移載部とを備え、前記第1の基板保持部と前記第2の基板保持部とにより、前記基板を前記支持手段へ移載する動作と、前記基板を前記支持手段から移送する動作とが並行して行われるように構成されていることを特徴としている。
【0040】
上記塗布装置(11)によれば、塗布前の基板を前記支持手段へ移載する動作と、塗布後の基板を前記支持手段から移送する動作とを同時に行うので、基板の搬送効率を高めることができる。
【0041】
また本発明に係る塗布ヘッド(1)は、基板の端面を含む周縁部に液体を塗布するための塗布ヘッドであって、前記基板の端部を挿入し得る隙間を有して対向配置される上側ヘッドと下側ヘッドとを備え、前記上側ヘッドが、前記下側ヘッドとの対向面に形成された上側
液溜部と、該上側液溜部に膜形成液を供給するための液供給路と、該上側液溜部に併設された上側こて部と、該上側こて部に併設された上側掻取部とを備え、前記下側ヘッドが、前記上側液溜部と対向する箇所に形成された下側液溜部と、該下側液溜部に併設された下側こて部と、該下側こて部に併設された下側掻取部とを備えていることを特徴としている。
【0042】
上記塗布ヘッド(1)によれば、前記液供給路から前記上側
液溜部に前記膜形成液を供給し、前記上側液溜部と前記下側液溜部とに前記膜形成液を溜めた状態にすることができる。そして、前記上側ヘッドと前記下側ヘッドとの前記隙間に前記基板の端部を挿し込み、前記上側液溜部と前記下側液溜部とに溜めた前記膜形成液に前記基板の端部を通すことで、前記基板の端部に前記膜形成液をムラのないように十分付着させることができる。
その後、前記上側こて部と前記下側こて部とで、前記基板の端部に付着した前記膜形成液をならして均一な膜厚に塗り広げ、その後、前記上側掻取部と前記下側掻取部とで、前記基板に付着した余分な前記膜形成液を掻き取ることができ、膜厚変動等が少ない薄膜状の塗膜を形成することができる。
したがって、前記基板の周縁部の上下面及び前記基板の端面(側面)に前記膜形成液を薄く且つ均一に塗布することができ、前記基板の周縁部に額縁状の均質な塗膜を精度良く形成することができる。
【0043】
また本発明に係る塗布ヘッド(2)は、上記塗布ヘッド(1)において、前記上側こて部及び/又は前記下側こて部のこて面に複数の微小溝が形成されていることを特徴としている。
【0044】
上記塗布ヘッド(2)によれば、前記上側こて部及び/又は前記下側こて部のこて面に複数の微小溝が形成されているので、前記膜形成液の表面張力によって前記こて面に前記膜形成液が広がりやすく、薄くて均一な膜厚を安定して形成することが容易になる。
【0045】
また本発明に係る塗布ヘッド(3)は、上記塗布ヘッド(1)又は(2)において、前記上側こて部が前記上側ヘッドに着脱可能に構成され、前記下側こて部が前記下側ヘッドに着脱可能に構成されていることを特徴としている。
【0046】
上記塗布ヘッド(3)によれば、必要に応じて、前記上側こて部及び前記下側こて部を前記上側ヘッド及び前記下側ヘッドにそれぞれ着脱させることができる。また、塗膜の膜厚等に応じた前記上側こて部及び前記下側こて部を取り付けることができ、膜厚調整を精度良く行うことができ、また、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0047】
また本発明に係る塗布ヘッド(4)は、上記塗布ヘッド(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記上側ヘッドが、前記下側ヘッドに固定される固定部材と、該固定部材に対して上下方向に位置調整可能に取り付けられる移動部材とを備え、前記上側液溜部が前記移動部材に形成され、前記上側こて部と前記上側掻取部とが、前記移動部材に設けられていることを特徴としている。
【0048】
上記塗布ヘッド(4)によれば、前記固定部材に対して前記移動部材を上下方向に移動させて位置調整を行って取り付けることができるので、塗布する基板の厚みや形成する塗膜の厚みに応じて、前記移動部材の高さ位置を任意に調整することができ、様々な厚みの基板に対して、様々な膜厚の塗布を行うことが可能となる。
【0049】
また本発明に係る塗布ヘッド(5)は、上記塗布ヘッド(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記上側ヘッドが、前記下側ヘッドに固定される固定部材と、該固定部材に対して上下方向に位置調整可能に取り付けられる2つの移動部材とを備え、前記上側液溜部が前記固定部材に形成され、前記上側
液溜部に併設された一方の移動部材に前記上側こて部が設けられ、前記一方の移動部材に併設された他方の移動部材に前記上側掻取部が設けられていることを特徴としている。
【0050】
上記塗布ヘッド(5)によれば、前記固定部材に対して、前記一方の移動部材と前記他方の移動部材とを個別に上下方向に移動させて位置調整を行って取り付けることができるので、塗布する基板の厚みや形成する塗膜の厚みに応じて、前記上側こて部が装備された前記一方の移動部材と、前記上側掻取部が装備された前記他方の移動部材の高さ位置を個別に調整することができ、様々な厚みの基板に対して、様々な膜厚の塗布を行うことができる。
【0051】
また本発明に係る塗布ヘッド(6)は、上記塗布ヘッド(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記上側ヘッドが、前記下側ヘッドに固定される固定部材と、該固定部材に対して上下方向に位置調整可能に取り付けられる移動部材とを備え、該移動部材が、付勢手段によって下方向に付勢された状態で前記固定部材に取り付けられ、前記上側液溜部と前記上側こて部と前記上側掻取部とが、前記移動部材に設けられていることを特徴としている。
【0052】
上記塗布ヘッド(6)によれば、前記固定部材に対して前記移動部材を上下方向に位置調整可能に取り付けることができるので、塗布する基板の厚みや形成する塗膜の厚みに応じて、前記移動部材の高さ位置を任意に調整することができ、様々な厚みの基板に対して、様々な膜厚の塗布を行うことが可能となる。さらに、前記移動部材が、前記付勢手段によって下方向に付勢された状態で前記固定部材に取り付けられているので、前記上側ヘッドと前記下側ヘッドとの隙間サイズに一定の幅を持たせることができ、該隙間サイズの範囲内であれば厚みが異なる基板に対しても適切に塗布することが可能となる。
【0053】
また本発明に係る塗布ヘッド(7)は、上記塗布ヘッド(6)において、前記移動部材が、第1の部材と第2の部材とを備え、前記第1の部材が、前記固定部材に対して上下方向に位置調整可能に取り付けられるものであり、前記第2の部材が、前記付勢手段によって下方向に付勢された状態で前記第1の部材に取り付けられるものであり、前記上側液溜部と前記上側こて部と前記上側掻取部とが、前記
第2の部材に設けられていることを特徴としている。
【0054】
上記塗布ヘッド(7)によれば、前記第1の部材により前記固定部材に対する上下方向の取付位置調整を容易に行うことができ、また、前記基板の端部が挿し込まれる前記第2の部材だけを下方に付勢された状態で取り付けることができるので、前記第2の部材に設けられた前記上側こて部と前記上側掻取部とにより、厚みが異なる基板に対しても前記膜形成液を薄く且つ均一に塗布することができる。
【0055】
また本発明に係る塗布ヘッド(8)は、上記塗布ヘッド(1)〜(7)のいずれかにおいて、前記上側ヘッドが、前記膜形成液を排出する液排出路を備えていることを特徴としている。
【0056】
上記塗布ヘッド(8)によれば、前記上側液溜部に供給された余分な前記膜形成液を前記液排出路から適切に排出することができ、前記上側ヘッドと前記下側ヘッドとの前記隙間の部分からの不要な液垂れ等を防止することができる。
【0057】
また本発明に係る塗布方法(1)は、基板の端面を含む周縁部に膜形成液を塗布する塗布方法であって、前記基板の端部を挿入し得る隙間を有して対向配置された一対の塗布ヘッドの前記隙間に前記基板の端部を挿入する工程と、前記一対の塗布ヘッドの対向面に形成された液溜部に前記膜形成液を供給しつつ、前記一対の塗布ヘッドを前記基板の周縁部に沿って移動させて、該基板の周縁部に塗膜を形成する塗布工程とを備え、該塗布工程が、前記液溜部に併設された塗工部で、前記液溜部を通過させた前記基板に付着した前記膜形成液を薄膜状に塗工する工程を備えていることを特徴としている。
【0058】
上記塗布方法(1)によれば、前記基板の周縁部の上下面及び前記基板の端面に前記膜形成液を薄く且つ均一に塗布することができ、前記基板の周縁部に額縁状の塗膜を精度よく形成することができる。そのため、前記基板の端面部分の崩壊による塵埃の発生を防止することができるとともに前記基板の周縁部を塗膜で補強することができ、前記基板の取り扱い性を高めることができる。
【0059】
また本発明に係る塗布方法(2)は、上記塗布方法(1)において、前記基板の各辺を複数の前記塗布ヘッドを用いて同時並行で塗布することを特徴としている。
【0060】
上記塗布方法(2)によれば、前記基板の各辺を複数の前記塗布ヘッドを用いて同時並行で塗布するので、前記基板全周を塗布する時間を大幅に短縮することができ、前記塗布工程の効率を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明に係る塗布装置、塗布ヘッド及び塗布方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施の形態(1)に係る塗布装置の内部機構を示すために筐体を省略して示した側面図であり、
図2は塗布装置の内部機構を示すために筐体を省略して示した正面図である。
【0063】
塗布装置1は、基板2を支持する支持テーブル10、上側ヘッド22と下側ヘッド23とからなる一対の塗布ヘッド21を備えた塗布ユニット20、及び塗布ユニット20を移動させる移動ユニット40を含んで構成されている。
【0064】
また、塗布装置1には、一対の塗布ヘッド21に樹脂成分を含む膜形成液51を供給する液供給ユニット50、基板2に塗布された膜形成液51の乾燥を行う乾燥炉60、装置各部の駆動を制御する制御部70、及び操作部80が装備されている。
【0065】
支持テーブル10は、基板2の搬送方向に平行に配設された搬送レール12の間に配設されている。搬送レール12は、リニア機構などによって、基板2の搬送方向に平行に配設された固定レール11上をスライド移動可能に構成されている。支持テーブル10は昇降機構13によって昇降可能に支持され、昇降機構13は固定レール11の間に設置された支持部材14に取り付けられている。固定レール11は、図示しない筐体に固定されている。
【0066】
搬送レール12が固定レール11上をスライド移動して、搬送レール12に載置された基板2が支持テーブル10の上まで搬送されると、次に昇降機構13が作動して、搬送レール12の上面より下に位置させていた支持テーブル10が上昇し、基板2が支持テーブル10の上に支持された状態で所定の塗布位置まで上昇する。また塗布後、昇降機構13が作動し、支持テーブル10が降下し、基板2が搬送レール12上に載置されるようになっている。
【0067】
また、支持テーブル10には、吸着機構(図示せず)が設けられており、基板2を支持テーブル10の上面に吸着させることが可能となっている。吸着機構としては、支持テーブル10に複数のエア吸気孔を設け、これらエア吸気孔にエアチューブを介して真空ポンプが連結された構成などが採用できる。
【0068】
移動ユニット40は、塗布ユニット20を2軸(XY軸)方向に水平移動させる2軸(XY軸)直動機構で構成され、図示しない筐体に固定されたX軸シリンダ41、X軸シリンダ41に一端側がスライド移動可能に連結されたY軸シリンダ42、Y軸シリンダ42上をスライド移動するY軸スライダ43、及びY軸シリンダ42の他端側を支持する支持ガイド44を含んで構成されている。Y軸スライダ43には塗布ユニット20が取付けられている。支持ガイド44は図示しない筐体に固定されている。Y軸シリンダ42及びY軸スライダ43の動作は制御部70で制御されるようになっている。
【0069】
塗布ユニット20は、旋回機構部30及び一対の塗布ヘッド21を含んで構成されている。旋回機構部30は、Y軸スライダ43に連結された連結部材31、連結部材31に取り付けられた旋回モータ32、鉛直方向に延びた旋回モータ32の回転軸32aと連結された回転軸部33、及び一端が回転軸部33に連結された旋回アーム34を含んで構成され、旋回モータ32の回転軸32aを中心に一対の塗布ヘッド21を旋回させることが可能となっている。
【0070】
回転軸部33は、回転軸33a及び回転軸33aを回転可能に支持する玉軸受(図示せず)を含んで構成され、回転軸33aの上端側が旋回モータ32の回転軸32aに連結され、回転軸33aの下端側が旋回アーム34に連結されている。
【0071】
旋回アーム34は、水平方向に延設された腕部34aを備え、腕部34aの下面中間部には、一対の塗布ヘッド21を腕部34aの長手方向(水平方向)にスライド移動させるためのスライド機構35が設けられている。スライド機構35は、電動式の直動案内機構などで構成され、スライド機構35には、一対の塗布ヘッド21を取り付けるための連結部材36が取り付けられている。
【0072】
また、旋回アーム34の旋回停止位置を検出するためのセンサ(例えばコの字型フォトセンサ)(図示せず)が、回転軸部33の周囲に90度間隔で配設され、旋回アーム34が90度旋回すると、旋回アーム34に設置された遮光板(図示せず)が前記センサの受光部を遮ることで、停止位置が検出されるように構成されている。
【0073】
次に、塗布ユニット20を構成する一対の塗布ヘッド21について説明する。
図3は、
図2における矢印A方向から見た一対の塗布ヘッド21の正面図であり、
図4は、
図3におけるIV−IV線断面図である。
図5は、
図3におけるV−V線断面図であり、上側ヘッドの底面(下側ヘッドとの対向面)を示し、
図6は、上側ヘッドの分解底面図である。また、
図7は、
図3におけるVII−VII線断面図であり、下側ヘッドの上面(上側ヘッドとの対向面)を示している。なお、図中の矢印Bは、塗布ヘッド21の移動方向を示している。
【0074】
塗布ヘッド21は、基板2の端部を挿入し得る隙間を有して上下に対向配置される上側ヘッド22と下側ヘッド23とを含んで構成されている。塗布ヘッド21の下には、下側ヘッド23に固定された液受け部24が配設されている。塗布ヘッド21及び液受け部24は、耐腐食性のあるステンレス鋼等の金属材料で形成されている。また、塗布ヘッド21の表面(少なくとも膜形成液流路面)には、セラミック加工などの表面加工が施されている。
【0075】
図5、6に示すように、上側ヘッド22は、下側ヘッド23に固定される固定部材22Aと、固定部材22Aに対して上下方向に移動可能に固定される移動部材22Bとを含んで構成されている。基板2の端部を挿入し得る隙間は、上側ヘッド22の移動部材22Bと下側ヘッド23との間に形成され、固定部材22Aと下側ヘッド23との対向面は密着させて固定されている。
【0076】
移動部材22Bの底面には、傾斜案内部22aと、上側液溜部22bと、上側こて部材(こて部)22cと、上側スクレーパー部(掻取部)22dとが併設されている(隣り合わせに設けられている)。固定部材22Aの底面には、上側液溜部22bと、上側液溜部22bから固定部材22Aの背面に通じる液排出溝22eと、下側ヘッド23に固定するボルト部材(図示せず)を通すための通孔22fとが形成されている。
【0077】
また、固定部材22Aの背面には、膜形成液51を供給する継手22gの取付孔22hが形成され、取付孔22hは、内部に形成された液供給路22iに接続され、液供給路22iは、移動部材22Bの上側液溜部22bに形成された注入孔22jに接続され、膜形成液51が上側液溜部22bに供給されるように構成されている。
【0078】
傾斜案内部22aは、上側ヘッド22と下側ヘッド23との隙間に基板2の端部を案内しやすくするために設けられ、水平面に対して30度前後傾斜させた構造になっている。
傾斜案内部22aに併設された上側液溜部22bは、移動部材22Bと固定部材22Aとに跨って、すなわち、移動部材22Bの正面側端部から固定部材22Aの中央付近にかけて略矩形の浅い溝状に形成されている。
【0079】
上側液溜部22bに形成された注入孔22jは、図示しないネジ部材で個別に蓋をすることができるようになっており、基板2の端部に塗布する液膜の幅が狭いとき(3mm〜5mmのとき)は、固定部材22A寄りの注入孔22jに蓋(図示せず)をし、基板2の端部に塗布する液膜の幅が広いとき(5mm〜10mmのとき)は、2つの注入孔22jに蓋をせずに使用することができ、基板2の端部に塗布する液膜の幅に応じて、注入量と注入位置を調整することが可能となっている。
【0080】
移動部材22Bの上側液溜部22bの隣りに凹部22kが形成され、凹部22kの上側液溜部22b寄りに上側こて部材22cが配設され、凹部22kの後端の壁部が上側スクレーパー部22dとして機能するように構成されている。
【0081】
上側こて部材22cは、上側液溜部22bに併設され、基板2に付着した膜形成液51に密着させて均一な膜厚に塗り広げる機能を有し、平面視略正方形をした板状金属部材にこて面22lと、ボルト22mの取付孔22nとが形成されたものであり、移動部材22Bの凹部22kにボルト22mで着脱可能に固定されている。
【0082】
こて面22lには、塗布ヘッド21の移動方向Bと平行する方向に複数の微小溝(例えば断面V字状溝)が形成されている。微小溝の間隔や深さは、使用する膜形成液51の粘度等の特性や膜厚等に応じて適宜設定することができる。例えば、10μm〜50μm程度の塗膜を形成する場合、溝の中心間隔を0.2mm〜0.3mm程度、溝の深さを0.05mm〜0.1mm程度に設定したものを使用することが好ましい。
【0083】
上側スクレーパー部22dは、上側こて部材22cを通過させた基板2に付着した余分な膜形成液51を掻き取る機能を有し、凹部22kの後端の壁部を、塗布ヘッド21(移動部材22B)の正面と直交する面に対して後方側に所定角度θ
1(例えば、30度前後)傾斜させた形態となっている。この傾斜により、基板2の端部上面から掻き取った膜形成液51を、基板2の端面側に掻き寄せることができ、膜形成液51の塗布幅を一定に制御することができる。また、上側スクレーパー部22dを構成する刃部の高さは、上側液溜部22bの土手部分の上面よりも100μm程度低くなるように(隙間が広がるように)、前記刃部の削り出し加工がなされている。なお、前記刃部の高さは、塗膜の厚みに応じて設定することができる。
【0084】
液排出溝22eは、上側液溜部22bの固定部材22A側の端部から固定部材22Aの背面に通じるように形成され、上側液溜部22bに供給された余分な膜形成液51が液排出溝22eから外部に排出されるようになっている。
【0085】
また、
図3に示すように、上側ヘッド22の移動部材22Bの正面には、縦方向に長い長孔22oが2箇所形成され、長孔22oと対面する固定部材22Aの側面に、それぞれネジ穴(図示せず)が形成され、移動部材22Bが固定部材22Aにボルト22pで固定される。長孔22oによって、移動部材22Bを固定部材22Aに対して上下方向に移動させることが可能となっており、塗布する基板2の厚みに応じた隙間を形成するように、移動部材22Bの固定位置を上下に微調整することが可能となっている。
【0086】
図7に示すように、下側ヘッド23の上面には、傾斜案内部23aと、下側液溜部23bと、下側こて部材23c、下側スクレーパー部23dとが併設され、また、上側ヘッド22の通孔22fに通したボルト(図示せず)を固定するための取付孔23eが形成されている。さらに、下側ヘッド23の上面には、塗布ヘッド21を支持部25に吊設するための吊設部材23gが立設され、下側ヘッド23の背面には、液受け部24を取り付けるための取付孔23hと、液排出溝23fとが形成されている。棒状の吊設部材23gの上部には、連結ボルト26を取り付けるためのネジ穴23iが形成されている。
【0087】
傾斜案内部23aは、上側ヘッド22と下側ヘッド23との隙間に基板2の端部を案内しやすくするために設けられ、水平面に対して30度前後傾斜させた構造になっている。
傾斜案内部23aに併設された下側液溜部23bは、下側ヘッド23の正面側端部から中央付近にかけて略矩形の浅い溝形状に形成され、上側液溜部22bと対向する位置に同じ大きさで形成されている。
【0088】
下側ヘッド23の下側液溜部23bに隣接して孔部23jが形成され、孔部23jの下側液溜部23b寄りに下側こて部材23cが配設され、孔部23jの後端の壁部が下側スクレーパー部23dとして機能するように構成されている。
【0089】
下側こて部材23cは、下側液溜部23bに併設され、基板2に付着した膜形成液51に密着させて均一な膜厚に塗り広げる機能を有し、細板状金属部材にこて面23kと、ボルト23lの取付孔23mとが形成され、下側ヘッド23の上面に形成された凹部23nにボルト23lで着脱可能に固定されている。
【0090】
こて面23kには、塗布ヘッド21の移動方向Bと平行する方向に複数の微小溝(例えば断面V字状溝)が形成されている。微小溝の間隔や深さは、使用する膜形成液51の粘度等の特性や膜厚等に応じて適宜設定することができる。例えば、10μm〜50μm程度の塗膜を形成する場合、溝の中心間隔を0.2mm〜0.3mm程度、溝の深さを0.05mm〜0.1mm程度に設定したものを使用することが好ましい。
【0091】
下側スクレーパー部23dは、下側
液溜部23b及び下側こて部材23cを通過させた基板2に付着した余分な膜形成液51を掻き取る機能を有し、孔部23jの後端の壁部を、塗布ヘッド21(下側ヘッド23)の正面と直交する面に対して後方側に所定角度θ
2(例えば、30度前後)傾斜させた形態となっている。この傾斜により、基板2の端部下面から掻き取った膜形成液51を、基板2の端面側に掻き寄せて、孔部23jから液受け部24に流し込むことができ、膜形成液51の塗布幅を一定に制御することができる。また、下側スクレーパー部23dを構成する刃部の高さは、下側液溜部23bの土手部分の上面よりも100μm程度低くなるように(隙間が広がるように)、前記刃部の削り出し加工がなされている。なお、前記刃部の高さは、塗膜の厚みに応じて設定することができる。
上側こて部材22c、上側スクレーパー部22d、下側こて部材23c、及び下側スクレーパー部23dを含んで塗工部が形成されている。
【0092】
液排出溝23fは、下側ヘッド23の背面略中央に形成され、上側ヘッド22の液排出溝22eから排出された膜形成液51が、液排出溝23fを通って下方の液受け部24に流し込まれるようになっている。
【0093】
液受け部24は、平面視矩形の受け皿24aと、受け皿24aの一側面から上方に延設された取付板24bとを備え、取付板24bの上部が、下側ヘッド23の背面の取付孔23hに、図示しないボルトで取り付けられている。受け皿24aの底面に形成された回収口24cには継手24dを介してチューブ55が接続されている。受け皿24aは、回収口24c側が下になるように、やや傾斜させた状態で下側ヘッド23に取り付けられている。
【0094】
また、塗布ヘッド21の退避位置(
図10のA位置)には、塗布ヘッド用保護具27が設置されている。
図8は、塗布ヘッド用保護具27の位置に塗布ヘッド21を退避させた状態を示した平面図であり、
図9は、
図8のC方向から見た部分正面図である。
【0095】
塗布ヘッド用保護具27は、塗布装置1内の図示しない台部に設置される台座27aと、台座27a上に立設された側面略L字形状をした帯状板27bと、帯状板27bの上部に取り付けられたパッドユニット27cとを含んで構成されている。台座27aの底面には、図示しない磁石が設けられており、該磁石により前記台部に固定されるようになっている。
【0096】
パッドユニット27cは、帯状板27bに取り付けられる帯板状の取付部27dと、取付部27dの一側辺上部から平面視斜め方向に延設された延設片27eと、取付部27dの上部及び延設片27eにそれぞれ取り付けられたパッド保持部27fと、各パッド保持部27fに保持されるパッド部材27gと、取付部27dの下端に配設された平面視矩形の受け皿形状をした液受け部27hとを含んで構成されている。
【0097】
取付部27dの上端部と延設片27eとのなす角度θ
3は、塗布ヘッド21の正面(基板を通す面)とスクレーパー部(22d、23d)とのなす角度θ
4と略同じに設定され、パッド部材27gが、塗布ヘッド21の正面の隙間部分とスクレーパー部(22d、23d)の隙間部分とに当接されるようになっている。
【0098】
パッド保持部27fは、開口部が略コの字形に形成されている。パッド部材27gは、スポンジ等の吸液性のある多孔質体で構成され、パッド保持部27fに着脱可能に嵌め込まれている。パッド部材27gは略直方体形状であるので、パッド保持部27fに嵌め込む面を変えることによって、パッド部材27gの側面の4面を塗布ヘッド21との当接面にすることが可能となっている。
【0099】
液供給ユニット50は、膜形成液51が収容される液収容部52と、液収容部52からチューブ54を介して塗布ヘッド21に膜形成液51を供給する電動式のポンプ53と、液受け部24で受けた膜形成液51を液収容部52にチューブ55を介して移送(回収)する電動式のポンプ56とを含んで構成されている。液供給ユニット50によって、液収容部52の膜形成液51が、ポンプ53及びチューブ54を介して塗布ヘッド21の上側ヘッド22に供給され、液受け部24で受けた膜形成液51が、チューブ55及びポンプ56を介して液収容部52に回収されるようになっている。
【0100】
膜形成液51としては、基板処理工程(エッチング工程やメッキ工程など)で剥がれない特性(酸及び/又はアルカリに対する耐性)があり、基板表面への付着性等に優れるように複数の樹脂成分が混合されたもの、例えば、水系媒体の溶剤に対し、水性ウレタン樹脂、水性スチレン樹脂及び水性増粘剤を含むコーティング剤など、目的用途に応じて調製された液剤を使用することができる。また、膜形成液51を塗布する膜厚に応じて適宜粘度を調整する、例えば、膜厚を薄くする場合は粘度を下げることが好ましい。
【0101】
また、
図1に示すように、塗布ユニット20の後方に乾燥炉60が設けられている。塗布ユニット20によって塗布された基板2が搬送レール12の上に載せられて乾燥炉60内に搬送され、所定の乾燥時間の経過後、乾燥炉60から搬出されるようになっている。
【0102】
乾燥炉60の内壁面には断熱材61が配設され、乾燥炉60内には棒状のフィンヒータ62が井桁状に配設され、乾燥炉60内の内側面には、空気を乾燥炉60内に送り込むための供給孔(図示せず)が所定間隔毎に形成された供給配管63が周設されている。供給配管63は、乾燥炉60外部のエアポンプ64に接続されている。
【0103】
制御部70は、搬送レール12のスライド移動制御、移動ユニット40のXY軸直動制御、塗布ユニット20の旋回・スライド移動制御、昇降機構13による支持テーブル10の昇降制御、吸着制御、液供給ユニット50のポンプ53、56の駆動制御、及び乾燥炉60の温度制御など、塗布装置1各部の制御を行う機能を有しており、マイコン、ドライバ回路、記憶部及び電源部など(いずれも図示せず)を含んで構成されている。なお、制御部70は1つ又は複数の制御ユニットで構成することができる。
【0104】
また、制御部70は、一対の塗布ヘッド21(上側ヘッド22と下側ヘッド23)の隙間に、支持テーブル10に支持された基板2の端部を挿し込み、その状態で一対の塗布ヘッド21を基板2の周縁部に沿って移動させるように移動ユニット40や塗布ユニット20の各部を駆動制御する機能を有している。
【0105】
操作部80は、液晶操作パネル81を備えており、筐体(図示せず)に取り付けられている。液晶操作パネル81を通じて、塗布装置1各部の動作条件の設定、各部の動作指示、動作モード(手動、自動など)の切り替えなどの各種操作を行うことが可能となっている。操作パネル81を介して入力された操作信号や設定信号が制御部70などに送信されるようになっている。
【0106】
例えば、操作部80では、移動ユニット40のXY軸直動機構による塗布ユニット20の水平移動速度、液供給ユニット50のポンプ53による膜形成液51の送り速度などの動作条件の設定、乾燥炉60のフィンヒータ62による炉内温度設定や乾燥時間設定などを行うことができるようになっている。
【0107】
次に、実施の形態(1)に係る塗布装置1を用いた基板2の周縁部への膜形成液51の塗布方法について説明する。なお、被塗布対象として、矩形をした薄形(数十μm〜数百μm)の銅張積層基板を用いた場合について説明するが、被塗布対象は、これに限定されるものではなく、アルミ基板等の種々の基板を被塗布対象とすることができる。また、実施の形態(1)に係る塗布装置1を用いた塗布方法は、基板製造工程の一工程として採用され得る。
【0108】
まず、一対の塗布ヘッド21(上側ヘッド22と下側ヘッド23)の隙間の調整及び設定を行う。すなわち、被塗布対象である基板2の厚み、塗膜の厚み等を考慮して決定した隙間サイズ(例えば、基板厚+10μm)に対応するすきまゲージ(図示せず)を上側ヘッド22の移動部材22Bと下側ヘッド23との間に挟み、ボルト22pで移動部材22Bを固定部材22Aに固定する。その後、前記すきまゲージを引き抜いて、塗布ヘッド21の隙間の調整及び設定を完了し、連結ボルト26で塗布ヘッド21を支持部25に取り付ける。
【0109】
その後、搬入側に移動させた搬送レール12上の所定の位置に基板2を載置し、操作部80を操作して、搬送レール12を塗布ユニット20側にスライド移動させる。
搬送レール12が移動して基板2が支持テーブル10の上の位置に運ばれて来ると、搬送レール12の移動が停止し、次に昇降機構13が作動して、支持テーブル10が上昇してゆき、支持テーブル10上に基板2が支持され、さらに所定の位置(塗布ユニット20の一対の塗布ヘッド21の隙間の高さ位置)まで支持テーブル10が上昇する。また、吸着機構(図示せず)も作動して、支持テーブル10上に基板2が吸着された状態で支持される。
【0110】
次の塗布工程は、一対の塗布ヘッド21の隙間に基板2の端部を挿し込んだ状態のまま、一対の塗布ヘッド21の液溜部(上側液溜部22bと下側液溜部23b)に膜形成液51を供給しつつ、一対の塗布ヘッド21を基板2の4辺の周縁部に沿って移動させる工程である。
【0111】
図10は、基板2の周縁部を一対の塗布ヘッド21で塗布する工程を説明するための図である。図中の破線は、一対の塗布ヘッド21の移動軌跡を示している。
塗布ヘッド21は、所定の退避位置であるAの位置に、基板2の端面(右辺2a)の向きと、塗布ヘッド21の進行方向とが一致するようにセットされている。
【0112】
まず、移動ユニット40のY軸シリンダ42をX軸シリンダ41に沿ってa方向に移動させることにより、一対の塗布ヘッド21をa方向に移動させて、
図10における基板2の右辺2aの周縁部に膜形成液51を塗布していく。
【0113】
すなわち、ポンプ53を駆動させて上側ヘッド22の液供給路22iに膜形成液51を供給しつつ、基板右辺2aの端部を一対の塗布ヘッド21の隙間に挿し込み、上側液溜部22bと下側液溜部23bとに膜形成液51を満たした状態で一対の塗布ヘッド21を移動させる。なお、塗布時には、基板2の端部が一対の塗布ヘッド21の隙間からはみ出さないように、一対の塗布ヘッド21の位置が制御されている。
【0114】
一対の塗布ヘッド21がB位置(基板2の角部手前)に到達すると、塗布ユニット20の旋回アーム34に設けられたスライド機構35を作動させて、一対の塗布ヘッド21を基板2から離す方向(d方向)に数mm程度スライド移動させ、一対の塗布ヘッド21を基板2から離して、基板右辺2aの塗布を終える。なお、B位置で一対の塗布ヘッド21を基板2から離すのは、基板角部への膜形成液51の2度塗りを防止するためであるが、B位置で一対の塗布ヘッド21を基板2から離さずに、基板右辺2a全体を塗布することも可能である。
【0115】
その後、移動ユニット40のY軸シリンダ42及びY軸スライダ43を駆動させて一対の塗布ヘッド21をC位置まで移動させた後、スライド機構35でスライド移動させた一対の塗布ヘッド21をもとの位置に戻し、旋回機構部30の旋回モータ32を駆動させて、旋回アーム34を90度左回りに旋回させ、基板2の端面(上辺2b)の向きと、一対の塗布ヘッド21の進行方向とを一致させる。
【0116】
その後、移動ユニット40のY軸シリンダ42及びY軸スライダ43を駆動させて一対の塗布ヘッド21をD位置にセットし、Y軸スライダ43をY軸シリンダ42に沿ってb方向に移動させることにより、一対の塗布ヘッド21をb方向に移動させて、基板右辺2aと同様の動作で基板上辺2bの周縁部に膜形成液51を塗布する。
【0117】
一対の塗布ヘッド21がE位置(基板2の角部手前)に到達すると、上記したB位置における動作と同様に、塗布ユニット20の旋回アーム34に設けられたスライド機構35を作動させて、一対の塗布ヘッド21を基板2から離す方向に数mm程度スライド移動させ、一対の塗布ヘッド21を基板2から離して、基板上辺2bの塗布を終える。
【0118】
その後、移動ユニット40を駆動させて一対の塗布ヘッド21をF位置まで移動させた後、スライド機構35でスライド移動させた一対の塗布ヘッド21をもとの位置に戻し、旋回機構部30の旋回モータ32を駆動させて、旋回アーム34を90度左回りに旋回させ、基板2の端面(左辺2c)の向きと、一対の塗布ヘッド21の進行方向とを一致させる。
【0119】
その後、移動ユニット40を駆動させて一対の塗布ヘッド21をG位置にセットし、Y軸シリンダ42をX軸シリンダ41に沿ってc方向に移動させることにより、一対の塗布ヘッド21をc方向に移動させて、基板上辺2bと同様の動作で基板左辺2cの周縁部に膜形成液51を塗布する。
【0120】
一対の塗布ヘッド21がH位置(基板2の角部手前)に到達すると、上記したB位置における動作と同様に、塗布ユニット20の旋回アーム34に設けられたスライド機構35を作動させて、一対の塗布ヘッド21を基板2から離す方向に数mm程度スライド移動させ、一対の塗布ヘッド21を基板2から離して、基板左辺2cの塗布を終える。
【0121】
その後、移動ユニット40を駆動させて一対の塗布ヘッド21をI位置まで移動させた後、スライド機構35でスライド移動させた一対の塗布ヘッド21をもとの位置に戻し、旋回機構部30の旋回モータ32を駆動させて、旋回アーム34を90度左回りに旋回させ、基板2の端面(下辺2d)の向きと、塗布ヘッド21の進行方向とを一致させる。
【0122】
その後、移動ユニット40を駆動させて一対の塗布ヘッド21をJ位置にセットし、Y軸スライダ43をY軸シリンダ42に沿ってd方向に移動させることにより、一対の塗布ヘッド21をd方向に移動させて、基板左辺2cと同様の動作で基板下辺2dの周縁部に膜形成液51を塗布する。
【0123】
一対の塗布ヘッド21がK位置(基板2の角部手前)に到達すると、上記したB位置における動作と同様に、塗布ユニット20の旋回アーム34に設けられたスライド機構35を作動させて、一対の塗布ヘッド21を基板2から離す方向に数mm程度スライド移動させ、一対の塗布ヘッド21を基板2から離して、基板下辺2dの塗布を終え、その後、移動ユニット40を駆動させて一対の塗布ヘッド21をL位置まで移動させた後、スライド機構35でスライド移動させた塗布ヘッド21をもとの位置に戻し、基板2の4辺の塗布作業を終える。
【0124】
そして、塗布ユニット20の旋回モータ32を駆動させて、基板2の端面(右辺2a)の向きと、塗布ヘッド21の進行方向とが一致するように塗布ヘッド21を旋回させ、移動ユニット40のY軸シリンダ42及びY軸スライダ43を駆動させて一対の塗布ヘッド21をAの位置にセットする。
【0125】
A位置には、塗布ヘッド用保護具27が設置されている。塗布ヘッド21の正面(基板2が通される面)及びスクレーパー部22d、23dの隙間に塗布ヘッド用保護具27のパッド部材27gが当接し、前記隙間からの液の漏れ及び乾燥が防止できるようになっている。
【0126】
上記した塗布工程の終了後、次に乾燥工程に進む。まず、塗布終了後、昇降機構13が作動して、支持テーブル10が降下してゆき、基板2が搬送レール12上に載置される。その後、搬送レール12が乾燥炉60方向にスライド移動し、所定の温度に設定された乾燥炉60内に基板2が搬送される。所定の乾燥時間が経過すると、搬送レール12が移動し、基板2が乾燥炉60から搬出され、乾燥工程を終える。
【0127】
図11は、実施の形態(1)に係る塗布装置1を用いて塗布された基板2の周縁部付近を示した図であり、(a)は部分斜視図、(b)は(a)におけるb−b線断面図である。
基板2の周縁部には、樹脂成分からなる塗膜51aが額縁状(端面及び上下面)に形成されている。一対の塗布ヘッド21の隙間の設定、上側こて部材22c及び下側こて部材23cのこて面の溝形状、上側スクレーパー部22d及び下側スクレーパー部23dの刃部の高さ位置、一対の塗布ヘッド21の移動速度、膜形成液51の粘度などを調整することにより、塗膜51aの乾燥後の膜厚が、10μm〜60μm程度になるように制御することが可能となっている。また、上下面の塗布幅は、一対の塗布ヘッド21と基板2の端部との重ね幅で調整することができ、1mm〜10mm程度に調整可能となっている。
【0128】
上記実施の形態(1)に係る塗布装置1によれば、一対の塗布ヘッド21の隙間に、支持テーブル10で支持された基板2の端部を挿し込んだ状態で、一対の塗布ヘッド21の液溜部22b、23bに膜形成液51を供給しつつ、一対の塗布ヘッド21を基板2の周縁部に沿って移動させることができる。すなわち、液溜部22b、23bに溜められた膜形成液51に基板2の端部を通した後、基板2の端部に付着した膜形成液51を塗工部であるこて部材22c、23c及びスクレーパー部22
d、23
dで薄膜状に塗工しながら、一対の塗布ヘッド21を基板2の周縁部に沿って移動させることができる。
【0129】
また、液溜部22b、23bに溜められた膜形成液51に基板2の端部を通すように構成されているため、ポンプ53の脈動等による供給量の変動による影響を受けることなく基板2の端部に膜形成液51を十分に付着させることができ、基板2の端部に膜形成液51をムラなく付着させた状態で、こて部材22c、23cにより薄くて均一な膜厚にならした後、スクレーパー部22d、23dで、余分に付着した膜形成液を掻き取ることができる。
【0130】
したがって、基板2の周縁部の上下面及び基板2の端面(側面)に膜形成液51を薄く且つ均一に塗布することができる。また、膜厚変動等の塗膜品質のばらつきが少ない塗布を継続して行うことができ、基板2の周縁部に額縁状の均質な塗膜を精度良く形成することができる。そのため、基板2の端面部分の崩壊による塵埃の発生を防止できるとともに、基板2の周縁部を塗膜により補強することができ、後工程における基板2の取り扱い性を高めることができ、基板2の不良品発生率を低下させることができる。
【0131】
また、酸やアルカリに耐性のある膜形成液51を使用することで、基板処理工程(エッチング工程やメッキ工程など)における作業性の向上やコストダウンを図ることができる。例えば、めっき耐性を備えた膜形成液51を使用することにより、基板2の周縁部にめっきが付着することを防止でき、基板周縁部のマスキングを行うことができ、マスキングの作業効率の向上を図ることができる。
【0132】
また、塗布装置1によれば、旋回機構部30によって一対の塗布ヘッド21を旋回させることができるので、矩形の基板2の周縁部に膜形成液51を塗布する場合、基板2の端面に対する一対の塗布ヘッド21の向きを基板2の各辺共に同じ向きに設定することができ、基板2の各辺共に同じ状態で安定した塗布を行うことができる。
【0133】
また、スライド機構35によって一対の塗布ヘッド21を旋回機構部30に対して水平方向にスライド移動させることができる。したがって、一対の塗布ヘッド21の位置の微調整、例えば、一対の塗布ヘッド21の隙間に挿し込む基板2端部の幅の微調整など、基板2の端面に対する一対の塗布ヘッド21の位置制御をより高精度に行うことができる。
【0134】
また、塗布ヘッド21の下に液受け部24が設けられているので、塗布ヘッド21から漏れた膜形成液51が液受け部24で受け止められ、受け皿24aに溜まった膜形成液51は、チューブ55を介して液収容部52に回収されるので、膜形成液51を循環させて繰り返し使用することができ、膜形成液51を無駄なく使用することができる。
【0135】
また、一対の塗布ヘッド21の退避位置に塗布ヘッド用保護具27が設置されているので、退避位置において、塗布ヘッド用保護具27のパッド部材27gに一対の塗布ヘッド21の隙間の部分を当接させることができる。したがって、一対の塗布ヘッド21の隙間部分で膜形成液51の乾燥や液詰まりが生じるのを防止することができ、基板2への塗布を継続して行うことができる。
【0136】
また塗布装置1は、乾燥炉60を備えているので、乾燥炉60によって、膜形成液51の塗布後すぐに膜形成液51を乾燥させることができ、その後の作業性を高めることができ、また膜形成液51のはがれ等の塗布不良を防止する効果を高めることができる。なお、塗布装置1で対応できる被塗布対象となる基板の種類は特に限定されないが、厚さ数百μm〜数十μm程度の薄板状又はフィルム状の各種材質から構成される基板に好適に適用することができる。
【0137】
なお、実施の形態(1)に係る塗布装置1では、移動ユニット40が、X軸シリンダ41、Y軸シリンダ42、Y軸スライダ43、及び支持ガイド44を含む2軸(XY軸)直動機構で構成されている形態について説明したが、移動ユニット40の形態は、この形態に限定されるものではなく、別の実施の形態に係る塗布装置では、例えば、XY軸ロボット式の直動機構、又は多関節式ロボット機構などを備えた各種の移動ユニット(移動手段)を採用することができる。
【0138】
また、上記実施の形態(1)に係る塗布方法によれば、基板製造工程において、基板2の周縁部の上下面及び前記基板の端面(側面)に膜形成液51を薄く且つ均一に塗布することができ、基板2の周縁部に額縁状の塗膜を精度よく形成することができる。そのため、基板製造工程において基板2の端面部分の崩壊による塵埃の発生を防止することができるとともに基板2の周縁部を塗膜で補強することができ、後工程での基板2の取り扱い性を高めることができ、基板の不良品発生率を低下させることができる。
【0139】
なお、上記実施の形態(1)に係る塗布ヘッド21では、上側ヘッド22の移動部材22Bが固定部材22Aに対して上下方向に移動可能に構成されていたが、
上側ヘッド22の構成は、この形態に限定されるものではなく、固定部材22Aに対して移動部材22Bを固着した構成とすることもできる。また、
図12に示した構造を採用することもできる。
【0140】
図12は、別の実施の形態に係る塗布ヘッドを構成する上側ヘッド22Cの構造を示した図であり、(a)は低面図、(b)は平面図である。なお、上記した実施の形態(1)に係る塗布ヘッド21の上側ヘッド22と同一機能を有する構成部品には同一符号を付し、ここではその説明を省略する。
【0141】
別の実施の形態に係る塗布ヘッドの上側ヘッド22Cは、固定部材22Dと、2つの移動部材22E、22Fとを含んで構成され、固定部材22Dに対して、2つの移動部材22E、22Fを個別に上下方向に移動させて固定することが可能な構成になっている。
【0142】
固定部材22Dの底面には、傾斜案内部22aと、上側液溜部22bとが形成され、固定部材22Dの上側
液溜部22bに併設された一方の移動部材22Eの底面には、上側こて部22qが形成され、移動部材22Eに併設された他方の移動部材22Fの底面には、上側スクレーパー部22rが形成されている。
【0143】
上側こて部22qが形成された移動部材22Eは、固定部材22Dにボルト22sで上下方向に移動可能に固定され、上側スクレーパー部22rが形成された移動部材22Fは、移動部材22Eにボルト22tで上下方向に移動可能に固定されている。上側ヘッド22Cに対応する下側ヘッドには、上記した下側ヘッド23と同様の構成のものが採用され得る。
【0144】
上記した別の実施の形態に係る塗布ヘッドによれば、上側ヘッド22Cが、固定部材22Dと、2つの移動部材22E、22Fを備えているので、固定部材22Dに対して、上側こて部22qを有する移動部材22Eと、上側スクレーパー部22rを有する移動部材22Fとを個別に上下方向に移動させて固定することができる。したがって、塗布する基板2の厚みや塗膜の厚みに応じて、移動部材22Eと、移動部材22Fとの高さ位置を個別に調整することができ、様々な厚みの基板に対して、様々な膜厚の塗布を行うことが可能となる。
【0145】
また、上記実施の形態(1)に係る塗布ヘッド21では、上側ヘッド22と下側ヘッド23との隙間が、塗布する基板に応じて予め固定されているが、別の実施の形態では、操作部80を介して制御部70に、塗布する基板の厚み等の条件を入力し、基板2への挿入タイミングに合わせて、上側ヘッド22と下側ヘッド23との間に所定の隙間(入力された基板の厚みに応じた隙間)が形成されるように、塗布ヘッド21に上側ヘッド22の移動部材22Bを昇降させる機構を設け、機械的に上側ヘッド22の移動部材22Bを上下動させて、前記隙間を形成する隙間開閉式機構を採用することもできる。
【0146】
図13は、実施の形態(2)に係る塗布装置の内部機構を示すために筐体を省略して示した平面図であり、
図14は、塗布装置の内部機構を示すために筐体を省略して示した側面図である。なお、
図1〜9に示した実施の形態(1)に係る塗布装置と同一機能を有する構成部品には同一符号を付し、ここではその説明を省略することとする。
【0147】
実施の形態(1)に係る塗布装置1では、塗布ユニット20が1つ配設されている形態、すなわち、1つの塗布ユニット20で基板2の4辺を塗布する形態について説明した。実施の形態(2)に係る塗布装置1Aでは、塗布ユニットが複数配設され、具体的には、4台の塗布ユニット20A、20B、20C、20Dが支持テーブル10Aの周囲に配設され、基板2の4辺が4台の塗布ユニット20A、20B、20C、20Dによって同時並行で塗布される形態となっている。
【0148】
塗布装置1Aは、位置決め部90、塗布部200、及び乾燥部600を備えている。
位置決め部90は、塗布部200の支持テーブル10A上に基板2を移載する前段で基板2の位置決めを行うために設けられている。位置決め部90は、基板2を所定位置まで搬送するコンベア部91と、所定位置まで搬送されてきた基板2の位置決め(位置調整)を行う位置決めガイド部92とを備えている。
【0149】
位置決め部90における基板2の位置決め工程は、コンベア部91で基板2を所定位置まで搬送(搬入)した後、コンベア部91のローラ91aの間に昇降可能に配設された基板持上げ部91bで基板2をローラ91aから一旦持ち上げた状態にする。その後、コンベア部91の両側に設けられた位置決めガイド部92を、基板2を挟み込む方向に移動させて、位置決めガイド部92で基板2を挟み、基板2を所定位置に位置決め配置して終了する。位置決めガイド部92の内側面には、基板2を傷つけることなく把持するための部材が配設されている。
【0150】
位置決め部90で位置決めされた基板2は、複数の吸着保持具305を備えた基板移載部300により、位置決め部90から支持テーブル10Aに移載され、吸着保持具305に基板2が吸着保持された状態のまま支持テーブル10A上に載置されるようになっている。
【0151】
塗布部200は、基板2を支持する支持テーブル10Aと、支持テーブル10Aの周囲に配設された4台の塗布ユニット20A、20B、20C、20Dと、塗布ユニット20A、20B、20C、20Dを支持テーブル10Aの辺に沿ってそれぞれ移動させる4台の移動ユニット40A、40B、40C、40Dとを備えている。各塗布ユニット20A、20B、20C、20Dには、上側ヘッド22G及び下側ヘッド23Aを備えた一対の塗布ヘッド21Aが装備されている。
【0152】
また、塗布部200には、塗布ユニット20A、20B、20C、20Dの各塗布ヘッド21Aに樹脂成分を含む膜形成液51を供給する液供給ユニット50A、50B、50C、50Dが装備されている。
【0153】
乾燥部600は、塗布部200から移送されてきた基板2を搬送するコンベア部12Aと、基板2に塗布された膜形成液51の乾燥を行う乾燥炉60Aとを備えている。乾燥炉60Aは、
図1に示した乾燥炉60と同様の機能を備えている。コンベア部12Aには、例えば、スラットコンベアが採用され、基板2をスラット(板子)上に載置したときに、基板2の周縁部がスラットに触れないように、各スラットの幅及び間隔が設定されている。
【0154】
また、塗布装置1Aは、位置決め部90、塗布部200、基板移載部300、乾燥部600などの装置各部の駆動を制御する制御部70Aと、各部を操作するための操作部80Aとを備えている。
【0155】
基板移載部300は、基板2を位置決め部90から塗布部200に移載するとともに塗布部200から乾燥部900に移送する機能を備えている。基板移載部300は、第1の基板保持部301と、第2の基板保持部302と、第1
の基板保持部301及び第2の基板保持部302を基板搬送方向に往復移動させる水平移動機構303と、第1
の基板保持部301及び第2の基板保持部302を垂直方向に往復移動させる垂直移動機構304とを備えている。また、第1の基板保持部301及び第2の基板保持部302には、基板2を吸着保持する吸着保持具305が配設されている。吸着保持具305は、吸着ノズルなどで構成され、図示しないエアチューブを介して真空ポンプに連結されている。
【0156】
第1の基板保持部301及び第2の基板保持部302は、水平移動機構303及び垂直移動機構304により、位置決め部90から基板2を支持テーブル10Aへ移載する動作と、基板2を支持テーブル10Aから乾燥部600へ移送する動作とが並行して行われるように構成されている。
【0157】
次に塗布部200の構成について説明する。支持テーブル10Aは、台部3に支柱4で支持されている。移動ユニット40A、40B、40C、40Dは、支持テーブル10Aを取り囲む態様で配設されている。移動ユニット40A、40B、40C、40Dは、塗布ユニット20A、20B、20C、20Dを2軸(XY軸)方向に水平移動させる2軸(XY軸)直動機構で構成されている。
【0158】
移動ユニット40A、40B、40C、40Dは、支持テーブル10Aの辺と平行に配設されたX軸シリンダ46と、X軸シリンダ46上をスライド移動するX軸スライダ47と、X軸スライダ47に取り付けられたY軸シリンダ48と、Y軸シリンダ48上をスライド移動するY軸スライダ49とをそれぞれ備えている。移動ユニット40A、40B、40C、40DのY軸スライダ49に塗布ユニット20A、20B、20C、20Dがそれぞれ取付けられている。X軸スライダ47及びY軸スライダ49の動作は制御部70Aによって制御される。
【0159】
塗布ユニット20A、20B、20C、20Dは、Y軸スライダ49に取り付けられた塗布ヘッド取付部材37と、塗布ヘッド取付部材37に取付けられた塗布ヘッド21Aとをそれぞれ備えている。
【0160】
次に、塗布ユニット20A、20B、20C、20Dにそれぞれ設けられた塗布ヘッド21Aについて説明する。
図15は、
図14における矢印A1方向から見た塗布ヘッド21Aの正面図であり、
図16は、
図15におけるXVI−XVI線断面図であり、
図17は、
図15におけるXVII−XVII線断面図である。
図18は、
図15におけるXVIII−XVIII線断面図であり、上側ヘッドの底面(下側ヘッドとの対向面)を示し、
図19は、上側ヘッドの分解底面図である。
図20は、上側ヘッドの分解正面図である。また、
図21は、
図15におけるXXI−XXI線断面図であり、下側ヘッドの上面(上側ヘッドとの対向面)を示している。なお、
図15、
図21に示した矢印B1は、塗布ヘッド21Aの移動方向を示している。
【0161】
一対の塗布ヘッド21Aは、基板2の端部を挿入し得る隙間を有して上下に対向配置される上側ヘッド22Gと下側ヘッド23Aとを含んで構成されている。塗布ヘッド21Aの下に液受け部24Aが配設されている。塗布ヘッド21A及び液受け部24Aは、耐腐食性のあるステンレス鋼等の金属材料で形成されている。なお、下側ヘッド23A及び液受け部24Aの構成は、
図7に示した下側ヘッド23及び液受け部24と略同様であるため、同一機能を有する構成部品には同一符号を付し、ここではその説明を省略する。
【0162】
また、塗布ヘッド21Aの表面(少なくとも膜形成液流路面)には、セラミック加工などの表面加工が施されている。この表面加工によって、塗布時に塗布ヘッド21Aへの膜形成液51の固着防止効果が高められ、また塗布後に、塗布ヘッド21Aから膜形成液51の剥離や洗浄作業を容易に行うことができ、メンテナンス性を向上させることが可能となっている。
【0163】
上側ヘッド22Gは、
図18、19、20に示すように、下側ヘッド23Aに固定される固定部材22Hと、固定部材22Hに対して上下方向に位置調整(スライド移動)可能に取り付けられる移動部材22Iとを含んで構成されている。
【0164】
移動部材22Iは、第1の部材22Jと第2の部材22Kとを備えている。第1の部材22Jは、固定部材22Hに対して上下方向に位置調整(スライド移動)可能に取り付けられている。第2の部材22Kは、付勢手段としての板バネ部材28e(
図16参照)によって下方向に付勢(押圧)された状態で第1の部材22Jに取り付けられている。第1の部材22Jと第2の部材22Kとの間には略凹形状の座金部材(金属板)22Lが配設されている。
【0165】
第2の部材22Kの底面には、傾斜案内部28a、上側液溜部28b、上側こて部材(こて部)28c、及び上側スクレーパー部(掻取部)28dが併設されている。上側スクレーパー部28dが形成された側に、板バネ部材28eにより付勢(押圧)される押圧部28fが延設されている。押圧部28fの平面(上面)には、板バネ部材28eにより押圧される突起部28g(
図16参照)が設けられている。突起部28gは、ネジ部材で構成され、ねじ込み量により突起部28gの高さ調整を行うことが可能となっている。突起部28gの高さ調整により、板バネ部材28eによる押圧力、上側ヘッド22Gと下側ヘッド23Aとの隙間を調整することが可能となっている。
【0166】
第1の部材22Jの底面には、上側液溜部28hと、吊設部材23gを通すための通孔28iとが形成され、通孔28iが形成された側に板バネ取付部28jが延設(屈曲形成)されている。板バネ取付部28jの平面(上面)に、板バネ部材28eの一端部がネジ部材28k(
図16参照)で取り付けられ、板バネ部材28eの他端が、第2の部材22Kの押圧部28fの突起部28gを押圧するように構成されている。板バネ部材28eのバネ乗数は、上側ヘッド22Gと下側ヘッド23Aとの隙間、基板2の厚さ、塗膜の厚さなどを考慮して、所望とする塗膜が形成され得るように適宜設定される。
【0167】
固定部材22Hの底面略中央部には、固定部材22Hの正面側から背面側に通じる液排出溝28lが形成され、固定部材22Hの両端部に通孔28mが形成されている。通孔28mにボルト28nが挿着され、ボルト28nにより固定部材22Hが下側ヘッド23Aに固定される。
【0168】
図20に示すように、固定部材22Hの正面略中央部には、膜形成液51を第2の部材22Kに供給するための管状の接続部材28o(
図17参照)が配置される凹部28pが形成されている。固定部材の正面(第1の部材22Jとの対面)には、上下方向に凸部28qが形成され、凸部28qの高さ方向中央部にボルト穴29aが形成され、また、凹部28pを跨いだ側の正面上部にボルト穴29bが形成されている。
【0169】
第1の部材22Jの正面略中央部には、接続部材28oが配置される凹部28rが形成されている。また、第1の部材22Jの背面(固定部材22Hとの対面)には、固定部材22Hの凸部28qと嵌合させる溝部28sが形成されている。溝部28sの高さ方向中央部に縦長の長孔29cが、固定部材22Hのボルト穴29aと対面する位置に形成されている。長孔29cの上にボルト取付穴29dが形成され、また、凹部28rを跨いだ側の上部に縦長の長孔29eが、固定部材22Hのボルト穴29bと対面する位置に形成されている。
【0170】
第2の部材22Kの背面側には、接続部材28oの先端部が挿着される挿着部28tが形成されている。挿着部28tは、第2の部材22Kの内部に形成された液供給路28uに接続され、液供給路28uは、上側液溜部28bに形成された注入孔28vに接続されている。液供給路28u及び注入孔28vを介して、膜形成液51が上側液溜部28bに供給されるようになっている。
【0171】
また、第2の部材22Kの正面には、傾斜案内部28aの上方に形成された縦長の長孔29fが、第1の部材22Jの長孔29cと対面する位置に形成され、上側こて部材28cの上方に形成された縦長の長孔29hが、第1の部材22Jの長孔29eと対面する位置に形成されている。また、長孔29fの上にボルト取付孔29gが第1の部材22Jのボルト取付穴29dと対面する位置に形成されている。
【0172】
座金部材22Lの正面左右2箇所に、ボルト挿通孔29i、29jが第1の部材22Jの長孔29c、29eと対面する位置に形成されている。
【0173】
第2の部材22Kの傾斜案内部28aは、上側ヘッド22Gと下側ヘッド23Aとの隙間に基板2の端部を案内しやすくするために設けられ、水平面に対して30度前後下方に傾斜させた構造になっている。
【0174】
傾斜案内部28aに併設された上側液溜部28bは浅い溝状に形成され、第1の部材22Jの上側液溜部28hと連結されるように形成されている。上側液溜部28bに形成された注入孔22vは、図示しないネジ部材で個別に蓋をすることができる。基板2の端部に塗布する液膜の幅が狭いとき(3mm〜5mmのとき)は、第1の部材22J寄りの注入孔22vに蓋(図示せず)をし、基板2の端部に塗布する液膜の幅が広いとき(5mm〜10mmのとき)は、2つの注入孔22vに蓋をせずに使用することができる。この構造により、基板2の端部に塗布する液膜の幅に応じて、注入量と注入位置を調整することが可能となっている。
【0175】
第2の部材22Kの上側液溜部28bの隣りに凹部28wが形成され、凹部28wの上側液溜部28b寄りに上側こて部材28cが配設され、凹部28wの後端の壁部が上側スクレーパー部28dとして機能するように構成されている。
【0176】
上側こて部材28cは、上側液溜部28bに併設され、基板2に付着した膜形成液51に密着させて均一な膜厚に塗り広げる機能を有し、平面視略正方形をした板状金属部材にこて面28xと、ボルト28yの取付孔28zとが形成され、第2の部材22Kの凹部28wにボルト28yで着脱可能となっている。こて面28xは、平坦面で形成されているが、塗布ヘッド21Aの移動方向B1と平行する方向に複数の微小溝(例えば断面V字状溝)が形成されたものを適用することができる。
【0177】
上側スクレーパー部28dは、上側こて部材28cを通過させた基板2に付着した余分な膜形成液51を掻き取る機能を有し、凹部28wの後端の壁部を、塗布ヘッド21A(第2の部材22K)の正面と直交する面に対して後方側に所定角度θ
1(例えば、30度前後)傾斜させた形態となっている。また、上側スクレーパー部28dを構成する刃部の高さは、上側液溜部28bの土手部分の上面よりも100μm程度低くなるように(隙間が広がるように)、前記刃部の削り出し加工がなされている。なお、前記刃部の高さは、塗膜の厚みに応じて設定することができる。
【0178】
上記した上側ヘッド22Gの各部の組み付け構造は、第2の部材22Kが第1の部材22Jにボルト29kで軸着され、第1の部材22Jが固定部材22Hにボルト29l、29mで固定される構造となっている。
【0179】
第2の部材22Kを第1の部材22Jに取り付ける手順は、第2
の部材22Kのボルト取付孔29gに正面側からボルト(例えば、頭部と円柱状胴部と先端ネジ部とを備えた外ネジ式ストリッパボルト)29kを挿し込み、ボルト29kの先端ネジ部を第1の部材22Jのボルト取付穴29dに螺着する。
【0180】
第1の部材22Jを固定部材22Hに取り付ける手順は、第2の部材22Kと第1の部材22Jとの間(第1の部材22Jの正面側)に座金部材22Lを配設し、ボルト29lを、第2の部材22Kの長孔29f、座金
部材22Lの通孔29i、及び第1の部材22
Jの長孔29cに通し、第1の部材22
Jの溝部28sに固定部材22Hの凸部28qを嵌め合わせ状態で、ボルト29lの先端部を固定部材22Hのボルト穴29aに軽くねじ込む。次にボルト29mを、第2の部材22Kの長孔29h、座金部材22Lの通孔29j、及び第1の部材22
Jの長孔29eに通し、ボルト29mの先端部を固定部材22Hのボルト穴29bに軽くねじ込む。
【0181】
次に、固定部材22Hに対する第1の部材22J(移動部材22I)の取り付け位置を決め(なお、位置調整量は、長孔29c、29eの長さで規制される)、位置決め後、ボルト29l、29mをさらにねじ込み、第1の部材22J(移動部材22I)を固定部材22Hに固定する。座金部材22Lを設けることで、第1の部材22Jを固定部材22Hにボルト29l、29mで固定するときに、第1の部材22Jの位置ずれを防止することができる。
【0182】
上記した上側ヘッド22Gの組み付け構造によれば、第1の部材22Jの長孔29c、29eにより、移動部材22I(第1の部材22J及び第2の部材22K)を固定部材22Hに対して上下方向に移動させることができ、上側ヘッド22Gと下側ヘッド23Aとの隙間の調整を行うことが可能となっている。
【0183】
また、第2の部材22Kは、第1の部材22Jにボルト29kで軸着(回動可能に軸支)され、長孔29f、29hの上部にボルト29l、29mの頭部がそれぞれ位置し、押圧部28fが板バネ部材28eにより下方に付勢された状態(換言すれば、第2
の部材22Kの下端面が、上側液溜部28bから上側スクレーパー部28dに向けて僅かに下方に傾斜している状態)となっている。
【0184】
したがって、ボルト29kを支点として、長孔29f、29hで規制される範囲で、第2の部材22Kを板バネ部材28eの付勢力に抗して(上方向に)回動させることできるため、上側ヘッド22Gと下側ヘッド23Aとの隙間サイズに一定の幅を持たせることができ、厚さの異なる基板にも対応させることができる。
【0185】
下側ヘッド23Aは、
図21に示すように、上面に、傾斜案内部23aと、下側液溜部23bと、下側こて部材23c、下側スクレーパー部23dとが併設されている。また、下側ヘッド23Aの上面には、固定部材22Hの通孔28mに通したボルト28nを固定するための取付孔23eが形成され、さらに、下側ヘッド23Aの上面には、塗布ヘッド21Aを取付部材37に吊設するための吊設部材23gが立設されている。また、下側ヘッド23Aの背面には、液受け部24Aを取り付けるための取付孔23hと、液排出溝23fとが形成されている。棒状の吊設部材23gの上部には、連結ボルト26(
図14参照)を取り付けるためのネジ穴23iが形成されている。
【0186】
液受け部24Aは、平面視矩形の受け皿24aと、受け皿24aの一側面から上方に延設された取付板24bとを備え、取付板24bの上部が、下側ヘッド23Aの背面の取付孔23hに、図示しないボルト等で取り付けられている。受け皿24aの底面に形成された回収口24cには、継手24dを介してチューブ55が接続されている。受け皿24aは、回収口24c側が下になるように、やや傾斜させた状態で下側ヘッド23に取り付けられている。
【0187】
また、各塗布ヘッド21Aの退避位置には、塗布ヘッド用保護具27Aがそれぞれ配置されている。塗布ヘッド用保護具27Aの要部は、
図8、9に示した形態と略同様であるため、ここではその説明を省略するが、塗布ヘッド用保護具27Aは、昇降機構27i(
図14参照)によって、塗布時は支持テーブル10Aの下方に降下し、退避時に塗布ヘッド21Aの位置まで上昇して、パッドユニット27cのパッド部材27gが、塗布ヘッド21Aの正面の隙間部分とスクレーパー部(28d、23d)の隙間部分とに当接されるようになっている。
【0188】
液供給ユニット50A、50B、50C、50Dは、膜形成液51が収容される液収容部52と、液収容部52からチューブ54を介して各塗布ヘッド21Aに膜形成液51を供給する電動式のポンプ53と、各液受け部24Aで受けた膜形成液51を液収容部52にチューブ55を介して移送(回収)する電動式のポンプ56とを含んで構成されている。液供給ユニット50A、50B、50C、50Dによって、液収容部52の膜形成液51が、ポンプ53及びチューブ54を介して各塗布ヘッド21Aの上側ヘッド22Gに供給され、各液受け部24Aで受けた膜形成液51が、チューブ55及びポンプ56を介して液収容部52に回収されるようになっている。
【0189】
また、各塗布ユニット20A、20B、20C、20Dによって塗布された基板2は、基板移載部300によりコンベア部12A上に移送され、その後、乾燥炉60A内に搬送され、所定の乾燥時間の経過後、乾燥炉60Aから搬出されるようになっている。乾燥炉60Aには、乾燥炉60と同様の構成のものが採用され得る。
【0190】
制御部70Aは、位置決め部90における搬送・位置決め制御、基板移載部300による基板2の移載制御、移動ユニット40A、40B、40C、40DのXY軸直動制御、液供給ユニット50A、50B、50C、50Dのポンプ53、56の駆動制御、及び乾燥炉60Aの温度制御など、塗布装置1A各部の制御を行う機能を有しており、マイコン、ドライバ回路、記憶部及び電源部など(いずれも図示せず)を含んで構成されている。なお、制御部70Aは1つ又は複数の制御ユニット(例えば、搬入・位置決め制御用、塗布部制御用、乾燥炉用等)で構成することができる。
【0191】
また、制御部70Aは、各塗布ヘッド21A(上側ヘッド22Gと下側ヘッド23A)の隙間に、支持テーブル10Aに支持された基板2の4辺の端部をそれぞれ挿し込み、その状態で各塗布ヘッド21Aを基板2の周縁部に沿って移動させるように移動ユニット40A、40B、40C、40Dを駆動制御する機能を有している。
【0192】
操作部80Aは、液晶操作パネル81を備えており、筐体(図示せず)に取り付けられている。液晶操作パネル81を通じて、塗布装置1Aの各部の動作条件の設定、各部の動作指示、動作モード(手動、自動など)の切り替えなどの各種操作を行うことが可能となっている。操作パネル81を介して入力された操作信号や設定信号が制御部70Aなどに送信されるようになっている。
【0193】
例えば、操作部80Aでは、移動ユニット40A、40B、40C、40DのXY軸直動機構による塗布ユニット20A、20B、20C、20Dの水平移動速度、液供給ユニット50A、50B、50C、50Dの各ポンプ53による膜形成液51の送り速度などの動作条件の設定、乾燥炉60Aのフィンヒータ62による炉内温度設定や乾燥時間設定などを行うことができるようになっている。
【0194】
次に、実施の形態(2)に係る塗布装置1Aを用いた基板2の周縁部への膜形成液51の塗布方法について説明する。なお、被塗布対象として、矩形をした薄形(数十μm〜数百μm)の銅張積層基板を用いた場合について説明するが、被塗布対象は、これに限定されるものではなく、アルミ基板、ガラス基板等の種々の基板を被塗布対象とすることができる。また、実施の形態(2)に係る塗布装置1Aを用いた塗布方法は、基板製造工程の一工程(インライン)として採用され得る。
【0195】
まず、塗布ヘッド21A(一対の上側ヘッド22Gと下側ヘッド23A)の隙間の調整及び設定を行う。すなわち、被塗布対象である基板2の厚み、塗膜の厚み等を考慮して決定した隙間サイズ(例えば、基板厚+10〜500μm)に対応するすきまゲージ(図示せず)を上側ヘッド22Gの移動部材22I(第2の部材22K)と下側ヘッド23Aとの間に挟み、ボルト29l、29mで第1の部材22Jを固定部材22Hに固定する。その後、前記すきまゲージを引き抜いて、塗布ヘッド21Aの隙間の調整及び設定を完了し、連結ボルト26で塗布ヘッド21Aを取付部材
37に取り付ける。上側ヘッド22Gの押圧部28fが板バネ部材28eによって下方に付勢(押圧)されているので、上側ヘッド22Gの第2の部材22Kの下端面は、上側液溜部28bから上側スクレーパー部28dに向けて僅かに下に傾斜した状態となっている。
【0196】
基板搬入工程では、まず、位置決め部90のコンベア部91で基板2を所定位置まで搬送し、基板持上げ部91bを作動(上昇)させてローラ91a上の基板2を一旦持ち上げた後、位置決めガイド部92を作動させて、基板2の側面を軽く挟むようにして位置決めを行い、その後、基板持上げ部91bを作動(降下)させて基板2をローラ91a上に載置する。次に、基板移載部300の垂直移動機構304を作動させて、吸着保持具305で基板2を吸着した状態で上方に持ち上げ、水平移動機構303を作動させて、支持テーブル10Aの上まで水平移動させた後、垂直移動機構304を作動させて、吸着保持具305で基板2を吸着保持した状態のまま支持テーブル10Aの上に基板2を載置する。
【0197】
次の塗布工程は、塗布ヘッド21Aの隙間に基板2の端部を挿し込んだ状態のまま、4台の塗布ヘッド21Aの液溜部(上側液溜部28b、28hと下側液溜部23b)に膜形成液51を供給しつつ、4台の塗布ヘッド21Aを基板2の各辺の周縁部に沿って移動させる工程である。
【0198】
図22は、基板2の周縁部を4台の塗布ヘッド21Aで塗布する工程を説明するための模式図である。図中の破線は、各塗布ヘッド21Aの移動軌跡を示している。いずれの塗布ヘッド21Aも同様な動作を行うように制御されるので、ここでは塗布ユニット20Aに設けられた塗布ヘッド21Aの動作について説明する。
【0199】
塗布ヘッド21Aは、所定の退避位置であるAの位置に、基板2の端面(右辺2a)の向きと、塗布ヘッド21Aの進行方向とが一致するようにセットされている。
まず、移動ユニット40AのX軸スライダ47を駆動させて、Y軸シリンダ48をX軸シリンダ46に沿ってa方向に移動させることにより、塗布ヘッド21Aをa方向に移動させて、
図22における基板2の右辺2aの周縁部に膜形成液51を塗布していく。
【0200】
すなわち、ポンプ53を駆動させて上側ヘッド22Gの液供給路28uに膜形成液51を供給しつつ、基板右辺2aの端部を塗布ヘッド21Aの隙間に挿し込み、上側液溜部28bと下側液溜部23bとに膜形成液51を満たした状態で塗布ヘッド21Aを水平移動させる。なお、塗布時には、基板2の端部が塗布ヘッド21Aの隙間からはみ出さないように、塗布ヘッド21Aの位置が制御されている。また、X軸スライダ47を駆動させる際に、昇降機構27iを駆動させて塗布ヘッド用保護具27Aを降下させる制御が行われる。
【0201】
塗布ヘッド21AがB位置(基板2の角部通過位置)に到達すると、移動ユニット40AのY軸スライダ49を作動させて、塗布ヘッド21Aを基板2から離す方向(d方向)にC位置までスライド移動させる。
【0202】
その後、移動ユニット40AのX軸スライダ47を駆動させて塗布ヘッド21AをD位置までスライド移動させた後、Y軸スライダ49を駆動させて塗布ユニット20Aを退避位置(A位置)までスライド移動させる。塗布ユニット20Aが退避位置に移動するまでに、昇降機構27iを駆動させて塗布ヘッド用保護具27Aを上昇させる制御が行われ、塗布ユニット20Aが退避位置に到着すると、塗布ヘッド21Aにパッド部材27gが当接されるようになっている。
【0203】
塗布ユニット20Aによる基板右辺2aの塗布作業と同時並行で、塗布ユニット20Bにより基板上辺2b、塗布ユニット20Cにより基板左辺2c、塗布ユニット20Dにより基板下辺2dの塗布作業が行われるように、移動ユニット40A、40B、40C、40D等の各部の駆動制御が行われる。
【0204】
上記した塗布工程で基板2の4辺への塗布作業終了後、次に乾燥工程に進む。
塗布終了後、基板移載部300の吸着保持具305で基板2を吸着した状態のまま基板2を持ち上げ、コンベア部12Aの上方に水平移動させたのち、コンベア部12Aに載置する。その後、コンベア部12Aにより基板2が乾燥炉60A内に搬送される。所定の乾燥時間が経過すると、基板2が乾燥炉60Aから搬出され、乾燥工程を終える。基板2の周縁部には、樹脂成分からなる塗膜が額縁状(端面及び上下面)に形成される。
【0205】
上記実施の形態(2)に係る塗布装置1Aによれば、4台の塗布ヘッド21Aにより、基板2の4辺を同時並行で塗布することができ、塗布時間を短縮することができる。したがって、基板製造ラインにインラインで組み込むことが可能となり、高い生産効率を維持することができる。また、基板2の周縁部に塗膜が形成されることにより、その後の基板加工工程での取扱性を高めることができ、また、不良品の発生も低下させることができ、塗布装置1Aの使用により基板製造コストを低減させることが可能となる。
【0206】
また、実施の形態(2)に係る塗布ヘッド21Aによれば、上側ヘッド22Gが、固定部材22Hと第1の部材22Jと第2の部材22Kとを含んで構成され、第1の部材22Jの長孔29c、29eにより、移動部材22I(第1の部材22J及び第2の部材22K)を固定部材22Hに対して上下方向に移動(位置調整)させることができ、上側ヘッド22Gと下側ヘッド23Aとの隙間の調整を容易に行うことができる。また、上側ヘッド22Gの組み付け構造によれば、ボルト29kを支点として、長孔29f、29hで規制される範囲で、第2の部材22Kを板バネ部材28eの付勢力に抗して(上方向に)回動させることできるため、上側ヘッド22Gと下側ヘッド23Aとの隙間サイズに一定の幅を持たせることができ、厚さの異なる基板にも対応させることができる。
【0207】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は、上記した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、本発明の実施の形態に対して種々の変形や変更を施すことができ、そのような変形や変更もまた本発明の技術的範囲に含まれる。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。