(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093494
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置
(51)【国際特許分類】
E02B 7/20 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
E02B7/20 102
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-186695(P2014-186695)
(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-61013(P2016-61013A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2014年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】514232476
【氏名又は名称】有限会社 愛機工業
(74)【代理人】
【識別番号】100140590
【弁理士】
【氏名又は名称】上岡 將人
(72)【発明者】
【氏名】久保 正高
【審査官】
亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−059963(JP,A)
【文献】
特開2013−255468(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3075430(JP,U)
【文献】
特開2014−020064(JP,A)
【文献】
特開2006−257780(JP,A)
【文献】
特開2006−307624(JP,A)
【文献】
特開2006−118299(JP,A)
【文献】
特開2006−225930(JP,A)
【文献】
実開昭63−198622(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/06、3/10、3/12
E02B 5/08、7/20、7/28
E02B 7/30
E06B 5/00、5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置であって、
車輪を有し、堤防上を移動可能な走行装置と、
前記走行装置を移動させるための動力源と、
前記走行装置を移動させるために堤防上に設置された走行レールと、
前記走行装置と前記横引きゲートを連結する扉体取付部とを具備し、
前記走行装置は、前記堤防上に設置された前記走行レール上の、前記走行装置の駆動系であるラックとピニオンとの噛み合いで自走する構造とされていることを特徴とする陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置。
【請求項2】
前記扉体取付部は、ピンを含んで構成され、前記横引きゲートと前記ピンのみで連結されていることを特徴とする請求項1に記載の陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置。
【請求項3】
前記扉体取付部のピン接合部は、長穴の軸穴にピンを差し込むようにされてい ることを特徴とする請求項1又は2に記載の陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置。
【請求項4】
前記動力源は、商用電力又は/及びバッテリーとされていることを特徴とする 請求項1乃至3のいずれかに記載の陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の陸閘又は水門に取付け可能な、陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陸閘又は水門は、河川等の堤防を通常時は生活のため通行出来るよう途切れさせてあり、増水時にはそれをゲート等により塞いで暫定的に堤防の役割を果たす目的で設置された施設である。このゲート等は、電動等の動力で開閉されるようにされているものと、手動で開閉されるようにされているものがある。
【0003】
また、このゲート等は、地震による津波、台風による高波や、夜間の急激な増水などの非常事態に対応して、迅速かつ安全に動作することが求められる。
しかし、ゲート等の開閉作業は、一般的には人手によって行われており、ある程度の時間と労力がかかるため、緊急時に対応ができないことや、危険を伴うことがある。
【0004】
さらに、既存の手動開閉式横引きゲートは、扉体の厚みが薄い場合が多く、走行装置を扉体内部に収納するのが困難である。また、収納した場合には、メンテナンス性が悪くなるという問題がある。
【0005】
この手動開閉式横引きゲートの開閉作業を自動化するため、開閉扉に固定された移動体と、移動体の移動を案内する固定壁状部に固定された移動体用直線ガイドと、固定壁状部に固定された固定ラックと、開閉扉に固定されたシリンダ装置と、シリンダロッドの先端に延長するように固定された移動ラックと、移動ラックの移動を案内する移動ラック用直線ガイドと、移動体に保持され、移動ラックに噛合する起動側ピニオンとそれに連係して固定ラックに噛合する従動側ピニオンを備えて、シリンダ装置の伸長動作を増速するように駆動力を伝達する動力伝達機構を具備する横引き開閉門が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−020064
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような従来の問題点に鑑みて、既存の手動開閉式横引きゲートの開閉作業を容易に自動化することのできる陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1にかかる陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置は、車輪を有し、堤防上を移動可能な走行装置と、前記走行装置を移動させるための動力源と、前記走行装置を移動させるために堤防上に設置された走行レールと、前記走行装置と前記横引きゲートを連結する扉体取付部とを具備し、
前記走行装置は、前記堤防上に設置された前記走行レール上の、前記走行装置の駆動系であるラックとピニオンとの噛み合いで自走する構造とされていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2にかかる陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置は、請求項1の特徴に加えて、
前記扉体取付部は、ピンを含んで構成され、前記横引きゲートと前記ピンのみで連結されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3にかかる陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置は、請求項1又は2の特徴に加えて、前記扉体取付部のピン接合部は、長穴の軸穴にピンを差し込むようにされていることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4にかかる陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置は、請求項1乃至3の特徴に加えて、前記動力源は、商用電力又は/及びバッテリーとされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置は、既存の手動開閉式横引きゲートの開閉作業を容易に自動化することが可能である。また、本発明によれば、地震時にパラペット(堤防)位置が変位した場合、扉体走行への影響を最小限に留めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置の外観を示す正面図である。
【
図2】本発明の陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置の外観を示す上面図である。
【
図3】本発明の陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置の外観を示す側面図である。
【
図4】本発明の陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置の外観を示す側面図である。
【
図5】本発明の陸閘又は水門の横引きゲートの扉体取付部のピン接合部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置を例示するものであって、本発明は陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置を以下のものに特定しない。
【0015】
特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
[実施例]
【0016】
図1〜
図5に、本発明の実施例に係る基本的な使用形態の陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置を示す。
図1は陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置の外観を示す正面図、
図2は陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置の外観を示す上面図、
図3及び
図4は陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置の外観を示す側面図であり、
図1の正面図の走行装置12の左側の側面を
図3、右側の側面を
図4で表している。
図5は陸閘又は水門の横引きゲートの扉体取付部のピン接合部の構成を示す模式図である。
【0017】
図1に示すように、陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置10は、走行装置12と、走行装置12が自走する走行レール14と、走行装置12と連結された扉体取付部16と、走行装置12を走行レール14上で移動させるための動力源からなる。なお、
図1の右側に陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置10の操作盤が配置されている。
【0018】
走行装置12は、車輪を有し、車輪が走行レール14に接して回転することにより走行レール14上を自走することができ、また、扉体取付部16と連結されている。走行レール14は、堤防上に設置され、走行装置12が堤防上を移動可能となるようにされている。
【0019】
また、
図5に示すように、扉体取付部16のピン接合部は、長穴の軸穴20と、ピン18とを含んで構成され、横引きゲート30と連結するようにされている。
【0020】
既存の陸閘又は水門に陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置10を取り付ける際には、パラペット(堤防)上に走行レール14を設置し、走行装置12と横引きゲート30とを扉体取付部16の軸穴20にピン18を挿して連結して固定し、走行レール14上を自走する走行装置12にて手動開閉式の横引きゲート30を開閉操作させる。このようにすることで、既存の手動開閉式横引きゲート30の開閉作業を容易に自動化することが可能である。
【0021】
また、既設扉体である横引きゲート30との連結に用いられているのはピン18と軸穴20からなるピン接合部を有する扉体取付部16のみのため、横引きゲート30を取り外すことなく、連結用金具の取付けだけで、陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置10と横引きゲート30とを連結可能である。さらに、扉体取付部16の構造は、長穴タイプの軸穴20にピン18を差し込む方式のため、扉体走行時の上下左右の振れに影響されない。従って、地震時等に地面に高低差が生じ、横引きゲート30とパラペット(堤防)の位置が変位したとしても、横引きゲート30の開閉作業に与える影響を最小限度にすることができ、横引きゲート30を開閉することが可能である。また、既設扉体である横引きゲート30との連結を外す際は、ピン18を取り外すだけであるため容易であり、非常時等に素早く陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置10を取り外すことができ、手動による開閉作業が可能となる。
【0022】
走行レール14上を移動する走行装置12は、走行レール14上のラックとピニオンとの噛み合いで自走する構造であり、既設扉体である横引きゲート30の駆動系には、
走行装置12の駆動系を繋げない構造である。このように、ラックとピニオンの噛み合いで走行するため、走行装置12の車輪が空転することなく自走することが可能である。
【0023】
陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置10は、パラペット(堤防)上に、既設扉体である横引きゲート30の走行距離分以上の走行レール14の設置スペースがあれば、横引きゲート30の日常的な稼動を妨げることなく設置可能である。また、構造がシンプルなため、不具合が発生しにくいものの、仮に陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置10に不具合が生じた場合には、横引きゲート30と容易に切り離すことが出来るので横引きゲート30を手動操作にて稼動させつつ、陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置10のメンテナンスが可能である。さらに、不具合が発生した場合にも、各機器類に一般汎用品を使用しているため迅速に代替品の入手が可能である。また、コスト面でも汎用品を使うことにより経済設計が可能である。
【0024】
なお、図示しない動力源は、商用電力又は/及びバッテリーであり、バッテリーを含んで陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置10が構成される場合は、停電時にも横引きゲートを開閉することが可能である。
【0025】
本発明の動力源は、実施例以外にも、石油系の燃料を用いたエンジンでもよいし、ガスエンジンでもよい。また、走行装置及び走行レールを覆うようにカバーを設けて、雨風を防ぐようにしてもよい。さらに、無線やインターネットによって、横引きゲートの開閉のための動作が、走行装置に搭載された制御装置を介して遠隔操作されるようにしてもよい。
【0026】
また、本発明の横引きゲートが使用されるのは、陸閘又は水門に限られず、陸閘又は水門以外の門にも使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置は、既設の陸閘又は水門の手動の横引きゲートに利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10…陸閘又は水門の横引きゲートの開閉装置
12…走行装置
14…走行レール
16…扉体取付部
18…ピン
20…軸穴
30…横引きゲート