特許第6093510号(P6093510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日綜産業株式会社の特許一覧 ▶ 東鉄工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6093510-仮設手摺 図000002
  • 特許6093510-仮設手摺 図000003
  • 特許6093510-仮設手摺 図000004
  • 特許6093510-仮設手摺 図000005
  • 特許6093510-仮設手摺 図000006
  • 特許6093510-仮設手摺 図000007
  • 特許6093510-仮設手摺 図000008
  • 特許6093510-仮設手摺 図000009
  • 特許6093510-仮設手摺 図000010
  • 特許6093510-仮設手摺 図000011
  • 特許6093510-仮設手摺 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093510
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】仮設手摺
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/32 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   E04G21/32 C
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-92942(P2012-92942)
(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公開番号】特開2013-221300(P2013-221300A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227146
【氏名又は名称】日綜産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正人
(72)【発明者】
【氏名】岩間 一仁
(72)【発明者】
【氏名】細貝 明弘
(72)【発明者】
【氏名】小柏 英雄
(72)【発明者】
【氏名】牧野 圭介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 保雄
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 仏国特許出願公開第02941480(FR,A1)
【文献】 特開2004−332412(JP,A)
【文献】 特開2011−163043(JP,A)
【文献】 実開昭49−024024(JP,U)
【文献】 特開平08−232461(JP,A)
【文献】 実開平04−052146(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3093037(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3083493(JP,U)
【文献】 仏国特許出願公開第02934001(FR,A1)
【文献】 仏国特許発明第02217975(FR,A5)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
E04G 3/18
E04G 3/22
E04G 5/00
E04G 5/14
E04D 13/12
E04D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扶壁に着脱自在に設けられる複数の組立支柱と、この組立支柱に着脱自在に架設される手摺とを有してなる仮設手摺において、
上記組立支柱は、上記扶壁の上端部に上記扶壁の内側から上記扶壁の外側に架け渡すように着脱自在に設けられる梁材と、この梁材に当該梁材に沿って移動自在に設けた係止部と、上記梁材に連設したガイド部と、このガイド部に上下動自在に保持されて上記扶壁の高さに応じて高さ位置を調節する支柱と、上記支柱に架設した手摺とを有し、
上記ガイド部が上記梁材の上記扶壁の内側に位置決めされる基端に連設されると共に上記係止部に対向してこの係止部との間に上記扶壁を挟持する固定手段を有し、
さらに、上記ガイド部が横断面角U字状の溝を有すると共に軸線方向の中央部にピン孔を有し、上記溝に上記支柱が上下動自在に挿入され、上記支柱は軸線方向に沿って隔設された複数のピン孔を有し、上記支柱側のいずれかのピン孔と上記ガイド部側のピン孔とにピンを挿入して上記支柱の高さ位置を調整していることを特徴とする仮設手摺。
【請求項2】
上記係止部が上記梁材に移動可能に保持されるスライダと、このスライダに直交状態に連設される受部とを有してなり、この受部が先端部を上記扶壁に当接可能にして上記固定手段に対向させてなる請求項1に記載の仮設手摺。
【請求項3】
上記固定手段が上記係止部に対向して進退し、先端部を上記扶壁に当接可能にするボルトを有してなる請求項1または請求項2に記載の仮設手摺。
【請求項4】
上記固定手段が上記ガイド部に連設されると共に上記梁材の上記扶壁の内側に位置決めされる基端側部に連設のブラケットに連設されてなる請求項1、請求項2または請求項3に記載の仮設手摺。
【請求項5】
上記組立支柱が上記扶壁における入隅部を挟んで両方向から近隣配置され、この近隣配置される両組立支柱にあって上記扶壁の内側に位置決めされる両支柱間に補助手摺が架設され、この補助手摺が展開時に平面形状を上記入隅部に相似し、折り畳み自在に形成されてなる請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の仮設手摺。
【請求項6】
上記補助手摺が横方向に伸縮自在とされてなる請求項5に記載の架設手摺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、仮設手摺に関し、特に、扶壁(パラペットあるいは胸壁とも称される)に設けられる仮設手摺の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート造の建築物の屋上には、屋上からの人の落下を防止する扶壁が設けられているが、屋上で防水工事などをする作業者の安全を確保するために扶壁に仮設手摺を設けることがあり、この仮設手摺としては、たとえば、特許文献1に開示の提案がある。
【0003】
この仮設手摺は、扶壁の上端部に扶壁の内側から扶壁の外側に架け渡すように着脱自在に設けられる梁材と、この梁材における扶壁の外に位置決めされる先端に設けられるソケットと、梁材における扶壁の内側となる基端側に移動可能に設けられる支持部材とを有し、ソケットには支柱が着脱可能に装着され、支柱には手摺棒が着脱自在に設けられる。
【0004】
そして、ソケットは、下端部に外側から先端を扶壁に当接させる固定部を有し、支持部材は、下端部に扶壁の内側から固定部に対向して先端を扶壁に当接させる固定ボルトを有してなる。
【0005】
それゆえ、上記の仮設手摺にあっては、梁材を扶壁の上端部に架け渡し、固定部と支持部材における固定ボルトとで扶壁を挟むことで、ソケットを扶壁の外側に位置決めることが可能になると共に、このソケットに装着される支柱に手摺棒を設けることで、仮設の手摺を扶壁に設けることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−332412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の仮設手摺にあっては、建築物の屋上に形成の扶壁に仮設の手摺を設けることを可能にする点で基本的に問題がある訳ではないが、利用に際して些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0008】
つまり、上記の仮設手摺にあって、手摺棒を設ける支柱を装着させるソケットは、扶壁の外側に位置決めされるから、支柱をソケットに装着するのに際して、また、ソケットに装着された支柱に手摺棒を設けるのに際しては、保安上から、支柱および手摺棒が落下することを防止する必要がある。
【0009】
そのため、支柱をソケットに装着する作業および支柱に手摺棒を設ける作業の際には、支柱および手摺棒にロープなどの牽引部材を繋いで落下の危険を排除することが必須になり、仮設手摺を設けたり撤去したりする際の作業性を悪くする。
【0010】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、仮設手摺を設けたり撤去したりする際の作業性を良くする仮設手摺を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するため、この発明の解決手段は、扶壁に着脱自在に設けられる複数の組立支柱と、この組立支柱に着脱自在に架設される手摺とを有してなる仮設手摺において、上記組立支柱は、上記扶壁の上端部に上記扶壁の内側から上記扶壁の外側に架け渡すように着脱自在に設けられる梁材と、この梁材に当該梁材に沿って移動自在に設けた係止部と、上記梁材に連設したガイド部と、このガイド部に上下動自在に保持されて上記扶壁の高さに応じて高さ位置を調節する支柱と、上記支柱に架設した手摺とを有し、上記ガイド部が上記梁材の上記扶壁の内側に位置決めされる基端に連設されると共に上記係止部に対向してこの係止部との間に上記扶壁を挟持する固定手段を有し、さらに、上記ガイド部が横断面角U字状の溝を有すると共に軸線方向の中央部にピン孔を有し、上記溝に上記支柱が上下動自在に挿入され、上記支柱は軸線方向に沿って隔設された複数のピン孔を有し、上記支柱側のいずれかのピン孔と上記ガイド部側のピン孔とにピンを挿入して上記支柱の高さ位置を調整していることを特徴とするものである。
【0012】
それゆえ、この発明にあっては、扶壁の上端部に架け渡した梁材に設けられる係止部と、この係止部に対向するように梁材の基端のガイド部に設けられる固定手段とで扶壁を挟むことで、組立支柱を扶壁に設けることが可能になり、また、ガイド部を梁材の基端が位置決めされる扶壁の内側に位置決めすることが可能になる。
【0013】
固定手段は、扶壁の内側に位置決めされるガイド部に設けられているから、作業者は、固定手段に対する操作を扶壁の内側となる屋上床上で実践し得ることになり、作業を安全に実施できることになる。
【0014】
そして、ガイド部が扶壁の内側に位置決めされるから、ガイド部に保持されている支柱が扶壁の内側に位置決めされることになり、支柱に手摺を連結することで、仮設の手摺を扶壁の内側に設けることが可能になる。
【0015】
支柱が扶壁の内側に位置決めされるから、支柱が扶壁の外に位置決めされ、したがって、保安上の理由から、支柱に架設する手摺の落下を阻止するために、手摺にロープなどの牽引部材を連結する作業が必須になる場合に比較して、手摺にロープなどの牽引部材を連結する作業を要しない。
【0016】
ちなみに、この発明にあっては、組立支柱を扶壁に設けることで、扶壁の内側に位置決めされるガイド部があらかじめ支柱を保持するから、ガイド部に支柱を保持させる作業を必要としない。
【0017】
また、この発明にあっては、係止部が梁材に沿って移動自在とされるから、固定手段との間に挟持する扶壁の厚さ寸法が区々になる場合にも、係止部の梁材に対する定着位置を選択することで対応できる。
【0018】
そして、係止部の梁材に対する定着位置が、たとえば、梁材の中央部寄り位置とされるとき、係止部よりいわゆる先となる言わば余部は、扶壁の外に突出するから、扶壁の内側における障害にならない。
【0019】
さらに、この発明にあっては、支柱がガイド部に上下動自在に保持されるから、ガイド部の高さ位置に応じて、つまり、扶壁の上端の高さ位置に応じて、支柱の高さ位置を高低することが可能になり、上端の高さが異なる扶壁に好ましい高さの手摺を設けることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば次の効果を達成できる。
仮設手摺を設けたり撤去したりする際の作業性を良くすることが可能になる。
のみならず、この発明にあっては、手摺が扶壁の内側に位置決めされるガイド部に保持されている支柱に設けられるから、手摺が扶壁の内側に位置決めされることになり、手摺が扶壁の外側に設けられている支柱に連結されて扶壁の外側に位置決めされる場合に比較して、人が扶壁の上端に立ち入る余地を完全に排除でき、手摺を設けることによる保安性を向上させることが可能になる。
また、この発明にあっては、係止部が梁材に沿って移動自在とされるから、固定手段との間に挟持する扶壁の厚さ寸法が区々になる場合にも、係止部の梁材に対する定着位置を選択することで対応できる。
さらに、この発明にあっては、支柱に手摺が架設され、この支柱はガイド部に上下動自在に保持されて扶壁の高さに応じて高さ位置を調節するから上端の高さが異なる扶壁に好ましい高さの手摺を設けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の仮設手摺を扶壁に設けた状態を示す右側面図である。
図2図1の仮設手摺の立面図である。
図3図1の仮設手摺の平面図である。
図4】この発明の他の実施形態による仮設手摺を扶壁に設けた状態を示す右側面図である。
図5】この発明の他の実施形態による仮設手摺を扶壁に設けた状態を示す右側面図である。
図6】この発明の他の実施形態による仮設手摺を扶壁に設けた状態を示す右側面図である。
図7】この発明の仮設手摺を構成する組立支柱における梁材への係止部の連結状態を示す部分立面図である。
図8】この発明の仮設手摺を構成する組立支柱におけるガイド部の梁材および固定手段への連結状態を示す部分立面図である。
図9】この発明の仮設手摺が出隅部に設けられた状態を示す部分平面図である。
図10】この発明の仮設手摺が入隅部に設けられた状態を示す部分平面図である。
図11図10に示す仮設手摺の部分立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明による仮設手摺は、図示するように、たとえば、コンクリート造の建築物(図示せず)の屋上床Fから上方に突出するように形成される扶壁Wに設けられるのに向く。
【0023】
扶壁Wは、図1および図4に示すように、上端部(符示せず)に傘(符示せず)を有するように形成される場合と、図5に示すように、上端部に傘を有しない一枚壁状態に立ち上がるように形成される場合とがあり、さらには、図6に示すように、一枚壁状態に立ち上がるが、いわゆる車止めのように低く形成される場合があり、これらのいずれの扶壁Wにあっても、この発明の仮設手摺の具現化を可能にする。
【0024】
なお、図1の扶壁Wに対して、図4の扶壁Wにあっては、上端の高さ位置をほぼ同じにするが、図1の扶壁Wにおける図1中で左右方向となる上端部における厚さ寸法を言わば標準とすると、図4の扶壁Wにおける上端部における厚さ寸法は、ほぼ1.5倍になるとする。
【0025】
また、各図中に示さないが、たとえば、屋上床Fは、アスファルトルーフィングなどを有する防水構造に形成され、また、扶壁Wの内壁は、屋上床Fの防水構造に連続する仕上げとされ、さらに、扶壁Wの外壁は、タイルが貼られるなどして防水対策がなされているのが一般的である。
【0026】
ちなみに、扶壁Wの厚さ寸法を言う場合は、図1における左右方向を厚さの方向として指し示し、以下の各実施形態における扶壁Wの厚さ寸法を言う場合に共通する。
【0027】
一方、仮設手摺は、図1図2および図3に示すように、扶壁Wの上端部に着脱自在に設けられる複数の組立支柱Pと、この組立支柱P間に着脱自在に架設される手摺Hとを有してなる。
【0028】
組立支柱Pは、梁材1(図1図3参照)と、係止部2(図1図3参照)と、ガイド部3と、支柱4とを有し、図示するところでは、係止部2が梁材1に沿って移動自在に設けられ、ガイド部3が梁材1の扶壁Wの内側に位置決めされる基端に連設されると共に係止部2に対向してこの係止部2との間に扶壁Wを挟持する固定手段5(図1参照)を有してなる。
【0029】
順次説明すると、梁材1は、図1中で左右方向となり、図3中で上下方向となる軸線方向が、図2中および図3中で左右方向になる扶壁Wの軸線方向を横切る方向とされて、扶壁Wの上端部に扶壁Wの内側からW扶壁の外側に架け渡すように着脱自在に設けられる(図1参照)。
【0030】
そのため、この梁材1の軸線方向の長さは、扶壁Wにおける上端部の厚さが、たとえば、図4に示すように、図1に示す言わば標準タイプの扶壁Wにおける上端部の厚さのほぼ1.5倍になる場合でも、この梁材1を架け渡すことが可能になる、つまり、この発明の仮設手摺の利用を可能にする長さを有するとする。
【0031】
一方、梁材1は、硬質、たとえば、鉄製あるいはアルミ合金製もしくは硬質合成樹脂製の角パイプからなり、扶壁Wの上端に載置されるとき、転がらないで静止し得るように、また、係止部2を有するとき、この係止部2が梁材1を中心にして回動しない、つまり、揺れないように配慮している。
【0032】
梁材1が扶壁Wの上端で転がらないように配慮することで、また、梁材1に設けられた係止部2の揺動阻止を配慮することで、梁材1を扶壁Wの上端部に架け渡す作業を迅速に実践できることになる。
【0033】
ちなみに、図示するところでは、梁材1は、扶壁Wの上端部に架け渡されて固定的に定着される際に、下面が扶壁Wの上端に接触しないで、扶壁Wの上端の上方に言わば隙間を有して位置決めされるとし、梁材1が使用される、つまり、仮設手摺が扶壁Wに設けられることで、扶壁Wに傷を残すことをあらかじめ回避するとしている。なお、梁材1の下面と扶壁Wの上端との間に緩衝材C(図3参照)を設けることで、梁材1の下面が扶壁Wの上端に接触するとしても良いことはもちろんである。
【0034】
戻って、梁材1は、図7に示すように、軸線方向の両側面に軸線方向を横切るように言わば水平に貫通するピン孔1aを軸線方向に沿って適宜の間隔で複数有してなるとしている。また、梁材1は、図7中で右端部となる扶壁Wの外、つまり、屋外に突出する先端部(符示せず)にボルト11を螺装して、このボルト11を係止部2の抜け止め、つまり、ストッパに設定している。
【0035】
係止部2は、梁材1に移動自在に設けられ、これによって、扶壁Wの上端部の厚さ寸法に応じて係止部2の梁材1に設けられる位置、つまり、固定的に定着される位置を選択できるようにしている。そして、係止部2は、梁材1に対して移動自在となるように、梁材1に移動自在に保持されるスライダ21と、このスライダ21に一体的に連設されて垂下する受部22とを有してなる。
【0036】
スライダ21は、梁材1と同様に、鉄製あるいはアルミ合金製もしくは硬質合成樹脂製の角パイプからなり、梁材1の断面形状に相似する断面形状を有し、図7中で左右方向となる軸線方向を梁材1の軸線方向に一致させて梁材1に対して転動することなく移動自在に保持されている。
【0037】
そして、スライダ21は、図7に示すように、軸線方向の両側面に軸線方向を横切るように言わば水平に貫通するピン孔21aを軸線方向に沿って適宜の間隔で複数有してなるとし、このピン孔21aは、上記した梁材1に形成のピン孔1aに照準されるとしている。
【0038】
それゆえ、スライダ21のピン孔21aを挿通するピン23が梁材1のピン孔1aを挿通するとき、スライダ21の梁材1に対する移動が阻止されて、スライダ21、つまり、係止部2が梁材1に対して固定的に定着された状態になる。
【0039】
ちなみに、スライダ21のピン孔21aは、図示するところでは、二つとされているが、これに代えて、図示しないが、三つ以上とされても良く、また、複数となるピン孔21aの相互間隔は、梁材1に形成の複数のピン孔1aにおける相互間隔より狭くなるとしているが、これに代えて、図示しないが、広くなるとしても良い。そして、スライダ21のピン孔21aを挿通するピン23は、図示しないが、たとえば、前記した梁材1に螺装のボルト11にワイヤなどを利用して連結保持されているのが好ましい。
【0040】
なお、図7では、スライダ21の下面に緩衝材Cが設けられている状態を示すが、緩衝材Cがゴム材からなることを理解し易いように、この図7にあって、緩衝材Cを敢えて断面で表示している。また、図7中には、係止部2におけるピン23を表示するが、図1中および図4中,図5中,図6中では、各図の複雑化を避けるために、ピン23が挿通している個所を黒塗りして、ピン23の表示を省略している。
【0041】
一方、受部22は、スライダ21と同じ材料からなり、図7に示すように、図7中で上下方向となる軸線方向がスライダ21の軸線方向に直交するように、また、図7中で上端部となる基端部(符示せず)が溶接でスライダ21に連設され、図7中で下端部となる先端部(符示せず)に、ゴム材からなり滑り止め機能を発揮する当接部24を一体的に有してなり、当接部24は、扶壁Wの外面に屋外側から当接される(図1参照)。
【0042】
ちなみに、受部22は、図示するところでは、スライダ21の図7中での右端部たる先端部(符示せず)に連設されるとするが、これに代えて、図示しないが、スライダ21の軸線方向の中央部に連設されるとしても良い。
【0043】
それゆえ、以上のように形成された係止部2にあっては、スライダ21のピン孔21aが梁材1のピン孔1aに照準されているときに、このピン孔21a,1aにピン23を挿通することで、係止部2がいわゆる選択された位置で梁材1に固定的に定着されることになる。
【0044】
なお、受部22の先端部に設けられる当接部24は、図示するところではゴム材からなるとするので、このことを理解し易いように、この図7にあって、当接部24を敢えて断面で表示している。
【0045】
ガイド部3は、梁材1と同じ材料からなり、横断面形状を角U字状にして、図1に示すように、内側の溝(符示せず)を扶壁Wの内側となる屋上床F側に対向させて、図1中で上下方向となる軸線方向の中央部の背面に梁材1の図1中で左端となる基端を溶接させてなる(図8参照)。
【0046】
そして、ガイド部3は、図8に示すように、軸線方向の中央部の両側面に軸線方向を横切る方向に言わば水平に貫通するピン孔3aを有してなり、このピン孔3aには、ピン31が挿通するとしている。なお、図8中には、ガイド部3におけるピン31を表示するが、図1中および図4中,図5中,図6中では、各図の複雑化を避けるために、ピン31の表示を省略している。
【0047】
それゆえ、ガイド部3にあっては、内側の溝が扶壁Wの内側となる屋上床F側に対向するから、作業者が扶壁Wの内側となる屋上床Fに居る状態でピン31を抜き挿しする動作、つまり、ガイド部3に対する支柱4の高さ位置を変更する動作、あるいは、あらかじめ保持されている支柱4に代えて長さの異なる支柱4をガイド部3に保持させる動作をなすことを可能にする。
【0048】
ところで、支柱4は、たとえば、全長をほぼ93センチメートルとし、この支柱4が屋上床Fに立設されるが如きに立ち上がるとき、この支柱4に架設される手摺Hがいわゆる最適な高さ位置に位置決めされることになるように配慮している(図1図6参照)。
【0049】
そして、支柱4は、図示するところでは、ガイド部3と同じ材料の丸パイプからなるとしており、図8中で上下方向となる軸線方向に沿う両側面に軸線方向を横切る方向に言わば水平に開穿されてガイド部3に形成のピン孔3aに照準される複数のピン孔4aを軸線方向に適宜の間隔で有してなる。
【0050】
また、支柱4は、図8中で左側面となるいわゆる正面、つまり、扶壁Wの内側となる屋上床F側に対向する正面にグラビティピン41を溶接させており、このグラビティピン41は、図8中で左右方向となる軸線方向を支柱4の軸線方向に直交して、先端が扶壁Wの内側の屋上床F側に向くとしている。
【0051】
そしてまた、このグラビティピン41は、図1に示すところでは、支柱4の軸線方向のほぼ中央部寄りに設けられると共に、支柱4の上端部にも設けられるとしており、このグラビティピン41を利用しての手摺Hの架設を可能にしている。
【0052】
支柱4がグラビティピン41を有すると共に、支柱4がガイド部3に対して上下動可能とされることから、このグラビティピン41がガイド部3に干渉しないように、ガイド部3が断面を角U字状にして内側を扶壁Wの内側となる屋上床F側に対向させるとすることになる。
【0053】
ちなみに、支柱4は、図示するところでは、丸パイプからなるが、ガイド部3に対して昇降し得るとする観点からすれば、これに代えて、図示しないが角パイプからなるとしても良い。なお、材質を同じにして長さおよび肉厚を同じにする場合には、支柱4が角パイプからなる場合に比較して、支柱4が丸パイプからなる場合の方が部材重量の軽減の上からは有利になる。
【0054】
また、グラビティピン41にあっては、周知のように、いわゆる本体に対して出没自在とするストッパ41a(図8参照)を有しており、本体がいわゆる孔を挿通するときには、ストッパ41aが本体内に没入し、本体が所定のストロークを移動すると、ストッパ41aが本体の外に飛び出し、本体が逆に移動しても孔から抜け出ることが阻止されるとしている。なお、図2にあっては、グラビティピン41の図示を省略している。
【0055】
一方、ガイド部3が図8中での下端部(符示せず)に有する固定手段5は、図示するところでは、ガイド部3に保持されるソケット51と、このソケット51に螺装されるボルト52とを有してなる。
【0056】
そして、この固定手段5にあっては、ソケット51が筒状体からなり、図8中で左右方向となる軸線方向の一端たる基端がガイド部3に溶接されて固設され、内側に螺装されるボルト52を回動させるときにソケット51が回動せずして、ボルト52のソケット51に対する進退を可能にしている。
【0057】
ちなみに、図8に示す固定手段5にあっては、ガイド部3に溶接されるソケット51の外周には、ブラケット53が溶接され、このブラケット53は、ガイド部3の言わば背面に溶接されると共に、梁材1のガイド部3寄りとなる基端側部の下面にも溶接されて、ソケット51のガイド部3に対する一体性を保障している。
【0058】
一方、この固定手段5にあって、ボルト52は、軸線方向が図8中で左右方向とされ、図8中で左端部となる頭部(符示せず)にゴム材からなり滑り止め機能を発揮する当接部54を有しており、この当接部54が扶壁Wの内面に屋上床F側から当接される(図1参照)。
【0059】
ちなみに、当接部54は、ボルト52の頭部に連設されたベース部材55に連設されて保持されている。また、当接部54は、図示するところではゴム材からなるとするので、このことを理解し易いように、この図8にあって、当接部24を敢えて断面で表示している。
【0060】
組立支柱Pが以上のように形成されるのに対して、手摺Hは、次のように形成されてなる。つまり、手摺Hは、基本的には、たとえば、使用状態たる支柱4への架設状態で、作業者が寄り掛かるなどしても簡単に折れ曲ったり変形したりしない所定の機械的強度を有するように形成されるもので、たとえば、鉄製やアルミ合金製とされる他、硬質合成樹脂製とされても良い。
【0061】
また、手摺Hは、図示するところでは、図2に示すように、上下の一対とされる横材6,6と、左右の一対とされて上下の横材6,6を連結する縦材7,7と、これら横材6および縦材7と別体に形成の斜材8とを有してなる。
【0062】
横材6,6は、縦材7,7が枢着されて使用時の上下方向の寸法が設定され、両端部に有するピン孔6a(図2参照)に支柱4に設けたグラビティピン41(図3参照)が挿通することで、支柱4に、つまり、組立支柱Pに架設される(図1参照)としている。
【0063】
そして、横材6,6が支柱4に連結された状態のときに、さらに、斜材8が支柱4に連結されることで、手摺Hが組立支柱P間にいわゆる変形しない状態に、つまり、潰れない状態に架設されることになる。
【0064】
一方、手摺Hは、図示するところでは、横材6,6が伸縮自在に形成されて、使用時に、組立支柱Pの立設間隔が区々になる場合にも、支柱4への架設を可能にすると共に、図2中に二点鎖線図で示すように、折り畳み可能にも形成されて、コンパクト化を可能し、不使用時に搬送性や収納性に優れるとしている。
【0065】
ちなみに、手摺Hは、大径のパイプ(符示せず)内に小径のパイプ(符示せず)が出没自在に挿通されて伸縮自在とされ、伸長状態あるいは収縮状態の維持は、大径のパイプに螺装されて先端が小径のパイプの外周に当接する蝶ボルトなどの締付具(符示せず)で実践するとしている。なお、横材6,6が伸縮自在に形成されることに呼応して、斜材8も横材6,6と同様の構成にして伸縮自在に形成されてなるとしている。
【0066】
また、手摺Hにあって、横材6,6および斜材8は、両端部に有する孔6a,8aにグラビティピン41を挿通させるが、前記したように、グラビティピン41がストッパ41aを有してなるから、一旦グラビティピン41を孔6a,8aに挿通させた横材6,6および斜材8は、ストッパ41aを押し込むいわゆる解除操作しない限り、支柱4から分離されないことになる。
【0067】
以上のように形成された仮設手摺は、以下の手順で扶壁Wに設けられるが、この発明の仮設手摺にあっては、組立支柱Pを扶壁Wに設ける手順と、扶壁Wに設けられた組立支柱Pに手摺Hを架設する手順との二つに大別される。
【0068】
そこで、先ずは、組立支柱Pを扶壁Wに設ける手順から説明すると、たとえば、扶壁Wの内側の屋上床F上に居る作業者は、係止部2を扶壁Wの外に突き出すようにして、梁材1を扶壁Wの上端部に扶壁Wの内側から扶壁Wの外側に向けて架け渡し、その態勢で、係止部2と固定部3とで扶壁Wを挟持する段取りになる。
【0069】
梁材1を扶壁Wの上端部に架け渡す際には、扶壁Wの厚さがあらかじめ判っているので、梁材1における係止部2が定着される位置が選択され、したがって、係止部2は、扶壁Wの厚さに相応するように梁材1における選択された位置に位置決めされる。
【0070】
係止部2を梁材1に位置決めするのには、係止部2のピン孔21aとこれに照準される梁材1のピン孔1aへのピン23の挿通による。また、梁材1を扶壁Wの上端部に架け渡す際には、固定手段5にあって、ボルト52をソケット51に対して最大のストロークに螺入した状態にして、固定手段5と係止部2との間隔を最大限にしておく。
【0071】
梁材1の扶壁Wの上端部への架け渡しが終了した後は、係止部2の受部22における当接部24を扶壁Wの外から扶壁Wに当接し、この状態で固定手段5におけるボルト52を回動して係止部2に向けて前進させ、ボルト52の先端の当接部54を扶壁Wの内側から扶壁Wに当接させ、ボルト52の適宜の工具を利用するなどの締め上げで固定手段5と係止部2とで扶壁Wを挟持し、扶壁Wに組立支柱Pを設ける作業を終了する。
【0072】
この発明にあっては、扶壁Wに組立支柱Pを設ける作業を終了した時点で、支柱4が扶壁Wの内側に立設されているので、たとえば、特許文献1に開示する従前の場合と比較すると、支柱4を立設するまでの作業を迅速に行える。
【0073】
つまり、前記した特許文献1に開示の従前の場合にあっては、扶壁に梁材を架け渡すだけでは、支柱が立設されないので、あらためて支柱をソケットに装着する作業、つまり、支柱を立設する作業をすることになる。
【0074】
それに対して、この発明の場合には、組立支柱Pにあって、支柱4は、あらかじめガイド部3に保持されているから、ガイド部3を設けるだけ、つまり、組立支柱Pを扶壁Wに設けるだけで足り、支柱4そのものを立設する作業を要しない。
【0075】
上記の組立支柱Pは、厳密でなくて良いから、選択された間隔で複数が扶壁Wに設けられ、各組立支柱Pは、手摺Hの架設で連結される。そこで、次には、手摺Hの組立支柱Pへの架設の段取りについて説明するが、支柱4に設けられているグラビティピン41に手摺Hを連結すれば足りる。
【0076】
つまり、たとえば、図2に示すところによれば、手摺Hを形成する上下の横材6,6の図2中で左端部となる一端部の孔6aにグラビティピン41を挿通させれば良く、また、上下の横材6,6の図2中で右端部となる他端部の孔6aにグラビティピン41を挿通させれば良い。斜材8についても同様である。
【0077】
孔6a,8aをグラビティピン41が挿通すれば、ストッパ41aが言わば自動的に作動するから、ストッパ41aを積極的に解除操作しない限り、上下の横材6,6および斜材8が支柱4から分離されることはない。
【0078】
以上のように、この発明の仮設手摺にあっては、組立支柱Pを扶壁Wに設けた時点で、支柱4があらかじめ扶壁Wの内側に位置決めされるから、作業者は、扶壁Wの内側の屋上床F上に居る状態で手摺Hを組立支柱P、つまり、支柱4に架設する作業をなすことが可能になる。
【0079】
ことから、たとえば、前記した特許文献1に開示の場合のように、支柱が扶壁の外に位置決めされ、したがって、保安上の理由から、支柱に架設する手摺の落下を阻止するために、手摺にロープなどの牽引部材を連結する作業が必須になる場合に比較して、手摺Hにロープなどの牽引部材を連結する作業を省略でき、作業性を良くし得る。
【0080】
のみならず、前記した特許文献1に開示の場合には、扶壁の外にあるソケットに支柱を装着することになるから、作業者は、扶壁の上端に上らないまでも、扶壁の上方に身を乗り出すよう体勢になることが考えられ、このことからすると作業者の保安を確保することが必要になるが、この発明にあっては、作業者が屋上床Fの上に居るので、その配慮が不要になる利点がある。
【0081】
図4図5および図6は、この発明の仮設手摺が他の形状の扶壁Wに設けられた状態を図1と同様に示すものであって、以下には、これについて説明するが、各図において、その構成が図1に示すところと同様となる場合には、図中に同一の符号を附するのみとして、要する場合を除き、その説明を省略する。
【0082】
先ず、図4は、前記した図1に示すところと比較して、厚さ寸法が大きくなる扶壁Wに仮設手摺を設けた状態を示すもので、仮設手摺における組立支柱Pにあっては、梁材1に移動自在に設けられる係止部2が梁材1の図4中で右端部となる先端部に位置決めされて固定的に定着されてなるとする。
【0083】
係止部2が梁材1の先端部に位置決めされることで、ガイド部3に設けた固定手段5との間隔が広くなり、厚さ寸法が大きくなる扶壁Wにこの発明の仮設手摺を設けることが可能になる。なお、扶壁Wの高さは、図1に示すところと同様なので、梁材1に連結のガイド部3に対する支柱4の高さ位置、および、支柱4に架設される手摺Hの高さ位置は、同様になる。
【0084】
図5に示すところにあっては、扶壁Wが、前記した図1および図4に示すところと比較して、上端部に傘を有せずして一枚壁状態に形成され、しかも、上端の高さ位置を高くするとしている。ちなみに、扶壁の厚さ寸法は、図1に示す扶壁Wの厚さ寸法よりやや小さくなるとしている。
【0085】
それゆえ、この図5に示す仮設手摺における組立支柱Pにあっては、梁材1に移動自在に設けられる係止部2が、前記した図1に示す場合にほぼ近似するように、梁材1の中央部寄りに位置決めされて固定的に定着されてなるとする。
【0086】
その一方で、この図5に示す組立支柱Pにあっては、梁材1の高さ位置が、前記した図1および図4に示すところと比較して、高くなるから、これに伴ってガイド部3の高さが高くなり、したがって、手摺Hの高さを適正にするために支柱4のガイド部3に対する高さ位置を低くする。
【0087】
なお、図5に示すところにあっては、扶壁Wの上端の上方に笠木Bが設けられるとしており、したがって、組立支柱Pにあっては、梁材1の下面が笠木Bに干渉しないとしている。
【0088】
図6に示すところにあっては、前記した図5に示すところと比較して、扶壁Wの厚さ寸法をやや小さくする一方で、扶壁Wの高さを大幅に低くするもので、この扶壁Wは、たとえば、屋上床Fに溜まる雨水が外壁を伝って落下する不具合の招来を回避するためにいわゆる壁を形成する。
【0089】
そして、この発明の仮設手摺は、このような高さの低い扶壁Wにも設け得るとするもので、組立支柱Pにあっては、係止部2が梁材1のガイド部3寄り位置に位置決めされて固定的に定着されてなるとする。
【0090】
そして、この組立支柱Pにあっては、ガイド部3が屋上床Fに起立するが如くに設けられることになるから、手摺Hを架設させる支柱4がガイド部3に対して言わば最大限に上昇されてなるとし、手摺Hが好ましい高さ位置に位置決められるとしている。なお、図6に示すところにあっても、扶壁Wの上端の上方に笠木Bが設けられるとしており、したがって、組立支柱Pにあって、梁材1の下面が笠木Bに干渉しないとしている。
【0091】
図9および図10は、この発明の仮設手摺が建築物の屋上における出隅部(符示せず)に設けられる場合(図9)、および、入隅部(符示せず)に設けられる場合(図10)を示すもので、以下には、これについて少し説明する。
【0092】
ちなみに、出隅部および入隅部は、一般的には、直角に構成されるので、以下の説明でも、出隅部および入隅部は、直角に構成されているとする。また、組立支柱Pは、前記した図1に示す組立支柱Pと同じ構成からなり、また、扶壁Wについても、前記した図1図4図5および図6のいずれかと同様に構成されてなる。
【0093】
先ず、図9に示すところにあって、仮設手摺における組立支柱Pは、いわゆる両方向となる図9中で右側からおよび下方から出隅部を挟む体勢にして扶壁Wの上端部に設けられる。そして、各組立支柱Pにいわゆる一端側が架設される手摺Hの図9中にあって図示されない他端側は、扶壁Wに設けられた同じく図示しない組立支柱Pに架設されてなる。
【0094】
一方、出隅部を両方向から挟む体勢にして扶壁Wの上端部に設けられる両方の組立支柱Pにあっては、扶壁Wの内側となって屋上床Fの上方に位置決めされる屋上床F側端部が、図示するように、近隣されることで、この両方の間を作業者が摺り抜けることを阻止し得るから、この両方の屋上床F側端部を連結部材で連結する必要はないと言える。
【0095】
それに対して、図10に示す実施形態にあっては、仮設手摺が入隅部に設けられることから、上記の組立支柱Pにおける屋上床F側端部を連結する必要がある。つまり、入隅部に仮設手摺を設ける場合にも、図10に示すように、組立支柱Pは、入隅部を両方向から挟む体勢にして扶壁Wの上端部に設けられるから、両方の組立支柱Pにおける屋上床F側端部間は、言わばアングル状に大きく開いて、作業者が扶壁Wに近づき、あるいは、扶壁Wの上端に上ることを許容することになる。
【0096】
両方の組立支柱Pにおける屋上床F側端部間が大きく開いて、作業者が扶壁Wに近づき、あるいは、扶壁Wの上端に上ることを許容する状態は、保安上からは好ましくないので、図11にも示すように、上記の空きを閉鎖する補助手摺H1を設けることが必要になる。
【0097】
この補助手摺H1は、基本的には、前記した手摺Hと同様に、つまり、伸縮可能に構成されて、上記の空きの幅が区々になる場合にも対応できるように、展開時に平面形状が入隅部に相似してなるとしている。
【0098】
また、この補助手摺H1は、上下で一対となる横材61,61と、左右の一対とされて上下の横材61,61を連結する縦材71,71とを有してなり、横材61,61は、縦材71,71が連結されることで使用時の上下方向の寸法が設定されて立面形状を矩形にする(図11参照)と共に、折り畳み自在に形成されて折り畳み時に、二本の棒状の体勢になるとしている。
【0099】
そして、この補助手摺H1において、組立支柱P側の端部に有する孔(符示せず)に支柱4に設けたグラビティピン41(図3参照)を挿通させることで、支柱4に、つまり、組立支柱Pに架設されるとしている。
【0100】
また、この補助手摺H1にあっては、上記の孔を有する端部と反対側となる端部同士が枢着されてなるとして、組立支柱Pから取り外されたとき、その折り畳みを可能にするとしている。
【0101】
なお、言わば左右で一対となる補助手摺H1を折り畳み可能に構成するのにあっては、任意の構造が採用されて良いが、図10および図11に示すところにあっては、符示しないが、ヒンジ構造で両方の補助手摺H1が連結されてなるとしている。
【0102】
それゆえ、以上のように、建築物の屋上における出隅部(図10)に設けられる仮設手摺(図10)、および、建築物の屋上における入隅部に設けられる仮設手摺(図11)にあっても、組立支柱Pが前記した図1に示す実施形態の場合と同様に構成されるから、扶壁Wの上端部に架け渡した梁材1に設けられる係止部2と、梁材1の基端のガイド部3に設けられる固定手段5とで扶壁Wを挟むことで、組立支柱Pを扶壁Wに設けることが可能になり、また、ガイド部3を梁材1の基端が位置決めされる扶壁Wの内側に位置決めすることが可能になる。
【0103】
そして、ガイド部3が扶壁Wの内側に位置決めされるから、ガイド部3に保持されている支柱4が扶壁Wの内側に位置決めされることになり、支柱4に手摺H1を連結することで、仮設の手摺を出隅部あるいは入隅部の扶壁Wの内側に設けることが可能になる。
【0104】
また、支柱4が扶壁Wの内側に位置決めされるから、支柱4が扶壁Wの外に位置決めされ、したがって、保安上の理由から、支柱に架設する手摺の落下を阻止するために、手摺にロープなどの牽引部材を連結する作業が必須になる場合に比較して、手摺H,H1にロープなどの牽引部材を連結する作業を要しない。
【0105】
ちなみに、この実施形態にあっても、組立支柱Pを扶壁Wに設けることで、扶壁Wの内側に位置決めされるガイド部3が支柱4を保持するから、ガイド部3に支柱4を保持させる作業を必要としない。
【0106】
また、この実施形態にあっても、係止部2が梁材1に沿って移動自在とされるから、固定手段5との間に挟持する扶壁Wの厚さ寸法が区々となる場合にも、係止部2の梁材1に対する定着位置を選択することで対応できる。
【0107】
そして、係止部2の梁材1に対する定着位置が、たとえば、梁材1の中央部寄り位置とされるとき、係止部2よりいわゆる先となる言わば余部は、扶壁Wの外に突出するから、扶壁Wの内側の障害にならない。
【0108】
さらに、この実施形態にあっても、支柱4がガイド部3に上下動自在に保持されるから、ガイド部3の高さ位置に応じて、つまり、扶壁Wの上端の高さ位置に応じて、支柱4の高さ位置を高低することが可能になり、上端の高さが異なる扶壁Wに好ましい高さの手摺H,H1を設けることが可能になる。
【0109】
その結果、この実施形態によれば、仮設手摺を設けたり撤去したりする際の作業性を良くすることが可能になるのはもちろんのこと、この実施形態にあっても、手摺H,H1が扶壁Wの内側に位置決めされたガイド部3に保持されている支柱4に設けられるから、手摺H,H1が扶壁Wの内側に設けられることになり、手摺が扶壁の外側に位置決めされている支柱に設けられて、手摺が扶壁の外側に設けられる場合に比較して、人が扶壁Wの上端に立ち入る余地を完全に排除でき、手摺H,H1を設けることによる保安性を向上させることが可能になる。
【0110】
前記した図1および図4に示すところでは、扶壁Wが上端部に傘を有し、したがって、組立支柱Pは、係止部2と固定部3とで傘を挟持するとしたが、これに代えて、図示しないが、傘の下方のいわゆる壁部を係止部2と固定部3とで挟持するとしても良いことはもちろんである。
【0111】
そして、前記したところでは、この発明による仮設手摺がコンクリート造の建築物における屋上に形成の扶壁Wに具現化される場合を例にして説明したが、この発明が意図するところからすると、扶壁Wが屋上に形成されるのに代えて、図示しないが、扶壁Wがベランダに形成とされるとしても良く、その場合の作用効果が異ならないのはもちろんである。
【符号の説明】
【0112】
1 梁材
1a,3a,4a,21a ピン孔
2 係止部
3 ガイド部
4 支柱
5 固定手段
6 横材
6a,8a 孔
7 縦材
8 斜材
21 スライダ
22 受部
23,31 ピン
24,54 当接部
41 グラビティピン
41a ストッパ
51 ソケット
52 ボルト
53 ブラケット
55 ベース部材
B 笠木
C 緩衝材
F 屋上床
H 手摺
P 組立支柱
W 扶壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11