特許第6093517号(P6093517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6093517撮像装置の調整方法、撮像装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093517
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】撮像装置の調整方法、撮像装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20170227BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20170227BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20170227BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   G06T1/00 330B
   G08G1/04 C
   H04N5/225 C
   H04N5/232 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-154681(P2012-154681)
(22)【出願日】2012年7月10日
(65)【公開番号】特開2014-16878(P2014-16878A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年6月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】小島 洋平
(72)【発明者】
【氏名】塘中 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中山 博之
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 真由美
(72)【発明者】
【氏名】張 凱
【審査官】 ▲広▼島 明芳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−090826(JP,A)
【文献】 特開2008−269139(JP,A)
【文献】 特開平05−037937(JP,A)
【文献】 特開2003−123197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
H04N 5/225 − 5/232
G08G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置の調整方法であって、
前記撮像装置の撮像部が、路面上の矩形領域の一部を含む画像を撮像する撮像ステップと、
前記撮像装置の座標特定部が、前記撮像部が撮像した画像に基づいて前記矩形領域の各頂点の座標を特定する座標特定ステップと、
前記撮像装置のパラメータ特定部が、前記座標特定部が特定した座標を結ぶ閉区間の形状に基づいて前記撮像装置のパラメータを特定するパラメータ特定ステップと、
前記パラメータ特定部が特定したパラメータを参照し、当該パラメータを目標パラメータに近づけるように、前記撮像装置の調整部を調整する調整ステップと
を有し、
前記矩形領域の一辺は、車両番号の認識対象となる車線のうち、予め定められた長さを有する破線で道路上にペイントされた車線境界線であり、
前記矩形領域の前記一辺に直交する辺の長さは、予め定められた幅を有する前記車線の幅と等しく、
前記パラメータ特定部は、前記車線境界線の長さの辺と前記車線の幅と等しい長さの辺とを有する矩形領域を撮像したときに、前記座標特定部が特定した各頂点の座標を結ぶ閉区間の形状となるようなパラメータを特定する
ことを特徴とする撮像装置の調整方法。
【請求項2】
前記矩形領域は、車線の両端の線及び当該線に直交する線を辺とする
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置の調整方法。
【請求項3】
前記撮像ステップの前に、前記撮像部が撮像する画像に前記矩形領域の全部が含まれるよう前記撮像装置の調整部により画角を調整する広角化ステップを有し、
前記調整ステップでは、前記パラメータのうち方向角及び俯角を目標パラメータに近づける調整を行った後に、画角を前記目標パラメータに近づける調整を行う
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置の調整方法。
【請求項4】
路面上の矩形領域の一部を含む画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部の撮像範囲を決定するパラメータを調整する調整部と、
前記撮像部が撮像した画像に基づいて前記矩形領域の各頂点の座標を特定する座標特定部と、
前記座標特定部が特定した座標を結ぶ閉区間の形状に基づいて前記パラメータを特定するパラメータ特定部と
を備え、
前記矩形領域の一辺は、車両番号の認識対象となる車線のうち、予め定められた長さを有する破線で道路上にペイントされた車線境界線であり、
前記矩形領域の前記一辺に直交する辺の長さは、予め定められた幅を有する前記車線の幅と等しく、
前記パラメータ特定部は、前記車線境界線の長さの辺と前記車線の幅と等しい長さの辺とを有する矩形領域を撮像したときに、前記座標特定部が特定した各頂点の座標を結ぶ閉区間の形状となるようなパラメータを特定する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
目標パラメータで決定される撮像範囲を撮像したときに認識精度が最も良くなるよう設計された設定情報を用いて、前記撮像部が撮像した画像から車両情報を認識する認識部
を備えることを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記矩形領域は、車線の両端の線及び当該線に直交する線を辺とする
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記パラメータ特定部が特定したパラメータと所定の目標パラメータとを比較し、その比較結果を提示する提示部
を備えることを特徴とする請求項4から請求項6の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
撮像装置を、
路面上の矩形領域の一部を含む画像を撮像する撮像部、
前記撮像部が撮像した画像に基づいて前記矩形領域の各頂点の座標を特定する座標特定部、
前記座標特定部が特定した座標を結ぶ閉区間の形状に基づいて前記撮像装置のパラメータを特定するパラメータ特定部
として機能させ、
前記矩形領域の一辺は、車両番号の認識対象となる車線のうち、予め定められた長さを有する破線で道路上にペイントされた車線境界線であり、
前記矩形領域の前記一辺に直交する辺の長さは、予め定められた幅を有する前記車線の幅と等しく、
前記パラメータ特定部は、前記車線境界線の長さの辺と前記車線の幅と等しい長さの辺とを有する矩形領域を撮像したときに、前記座標特定部が特定した各頂点の座標を結ぶ閉区間の形状となるようなパラメータを特定する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置の調整方法、撮像装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のERP(Electronic Road Pricing:電子道路課金)システムは、通路に設けられた第1ガントリ装置に撮像装置を備え、第1ガントリ装置より通路の車両進行方向前方に設けられた第2ガントリ装置に車両検知器を備えている。このようなERPシステムでは、車両検知器が車両を検知したときに、撮像装置が車両を撮像し、CCS(Central Computer System:中央コンピュータシステム)が当該撮像した画像に対してナンバープレートの認識処理を行っている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、近年、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)や第3世代移動体通信を用いたERPシステム(以下、次世代ERPシステムと呼ぶ)の開発が計画されている。次世代ERPシステムでは、GPSや移動体通信を用いて車両の認識処理を行うことから、従来のERPシステムで通路に設置していたアンテナ及びガントリ装置が不要となる。
【0004】
次世代ERPシステムでは、ガントリ装置が不要となることから、従来のERPシステムで第2ガントリ装置に備えていた車両検知器を用いない構成とすることが検討されている。そのため、不正車両の取り締まり等のために車両のナンバープレートに記載された車両番号(車両情報)を認識する車両情報認識装置は路側に設置されることとなる。この場合、車両情報認識装置をカンチレバーやポールなどの路側設備に固定設置することが考えられるが、メンテナンスや使い回しを容易にするため、三脚などに設置することで車両情報認識装置を可搬型にしたいという要望がある(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−260165号公報
【特許文献2】特開平08−055296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のような可搬型の車両情報認識装置を設置しても、撮像した画像に写った車両が車両情報の認識のために適切な角度や大きさとなるようにするには、カメラの水平な面内の撮像方向や鉛直な面内の撮像俯角や画角などのパラメータを微妙に調整する必要があるが、これらを現場で適正に調整することは容易ではない。
【0007】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、撮像装置のパラメータを適正に容易に設定することができる撮像装置の調整方法、撮像装置、及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、撮像装置の調整方法であって、前記撮像装置の撮像部が、路面上の矩形領域の一部を含む画像を撮像する撮像ステップと、前記撮像装置の座標特定部が、前記撮像部が撮像した画像に基づいて前記矩形領域の各頂点の座標を特定する座標特定ステップと、前記撮像装置のパラメータ特定部が、前記座標特定部が特定した座標を結ぶ閉区間の形状に基づいて前記パラメータを特定するパラメータ特定ステップと、前記パラメータ特定部が特定したパラメータを参照し、当該パラメータを目標パラメータに近づけるように、前記撮像装置の調整部を調整する調整ステップとを有し、前記矩形領域の一辺は、車両番号の認識対象となる車線のうち、予め定められた長さを有する破線で道路上にペイントされた車線境界線であり、前記矩形領域の前記一辺に直交する辺の長さは、予め定められた幅を有する前記車線の幅と等しく、前記パラメータ特定部は、前記車線境界線の長さの辺と前記車線の幅と等しい長さの辺とを有する矩形領域を撮像したときに、前記座標特定部が特定した各頂点の座標を結ぶ閉区間の形状となるようなパラメータを特定することを特徴とする。
なお、「パラメータ」(カメラパラメータ)とは、撮像画像を調整するためのカメラ側の各種設定項目であり、水平面上における撮像方向(左右の撮影方向)、鉛直面上における撮像方向(上下の撮影方向)、画角、カメラの設置位置、焦点距離、フォーカスの状態、絞りの状態、カメラのシャッター速度、カメラの感度、光学フィルタの特性などが含まれる。
【0009】
また、本発明においては、前記矩形領域は、車線の両端の線及び当該線に直交する線を辺とすることが好ましい。
【0010】
また、本発明においては、前記撮像ステップの前に、前記撮像部が撮像する画像に前記矩形領域の全部が含まれるよう前記撮像装置の調整部により画角を調整する広角化ステップを有し、前記調整ステップでは、前記パラメータのうち方向角及び俯角を目標パラメータに近づける調整を行った後に、画角を前記目標パラメータに近づける調整を行うことが好ましい。
【0011】
また、本発明は、路面上の矩形領域の一部を含む画像を撮像する撮像部と、前記撮像部の撮像範囲を決定するパラメータを調整する調整部と、前記撮像部が撮像した画像に基づいて前記矩形領域の各頂点の座標を特定する座標特定部と、前記座標特定部が特定した座標を結ぶ閉区間の形状に基づいて前記パラメータを特定するパラメータ特定部とを備え、前記矩形領域の一辺は、車両番号の認識対象となる車線のうち、予め定められた長さを有する破線で道路上にペイントされた車線境界線であり、前記矩形領域の前記一辺に直交する辺の長さは、予め定められた幅を有する前記車線の幅と等しく、前記パラメータ特定部は、前記車線境界線の長さの辺と前記車線の幅と等しい長さの辺とを有する矩形領域を撮像したときに、前記座標特定部が特定した各頂点の座標を結ぶ閉区間の形状となるようなパラメータを特定することを特徴とする撮像装置である。
【0012】
また、本発明においては、前記目標パラメータで決定される撮像範囲を撮像したときに認識精度が最も良くなるよう設計された設定情報を用いて、前記撮像部が撮像した画像から車両情報を認識する認識部を備えることが好ましい。
【0013】
また、本発明においては、前記矩形領域は、車線の両端の線及び当該線に直交する線を辺とすることが好ましい。
【0014】
また、本発明においては、前記パラメータ特定部が特定したパラメータと所定の目標パラメータとを比較し、その比較結果を提示する提示部を備えることが好ましい。
なお、「提示部」の例としては、比較結果を示す文字や画像等を表示するディスプレイや、比較結果を示す音声を出力するスピーカー等が挙げられる。
【0015】
また、本発明は、撮像装置を、路面上の矩形領域の一部を含む画像を撮像する撮像部、前記撮像部が撮像した画像に基づいて前記矩形領域の各頂点の座標を特定する座標特定部、前記座標特定部が特定した座標を結ぶ閉区間の形状に基づいて前記パラメータを特定するパラメータ特定部として機能させ、前記矩形領域の一辺は、車両番号の認識対象となる車線のうち、予め定められた長さを有する破線で道路上にペイントされた車線境界線であり、前記矩形領域の前記一辺に直交する辺の長さは、予め定められた幅を有する前記車線の幅と等しく、前記パラメータ特定部は、前記車線境界線の長さの辺と前記車線の幅と等しい長さの辺とを有する矩形領域を撮像したときに、前記座標特定部が特定した各頂点の座標を結ぶ閉区間の形状となるようなパラメータを特定するプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撮像装置のパラメータ特定部が、現在のパラメータを特定するため、利用者は、現在のパラメータと目標パラメータとがほぼ一致するように調整部の調整を行うことで、撮像装置のパラメータを適正に容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による車両情報認識装置の外観図である。
図2】本発明の一実施形態で用いる矩形領域の指定方法を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による車両情報認識装置のパラメータの調整方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態による車両情報認識装置100の外観図である。
車両情報認識装置100(撮像装置)は、図1に示すように、主要構成として、動画像を撮像するカメラ110、カメラ110の画角(ズーム量)を調整するズームレンズ120、カメラ110を固定する三脚130を有する。
【0019】
ズームレンズ120及び三脚130には、カメラ110の撮像範囲を決定するパラメータ(俯角・方向角・画角など)を調整するための調整部が設けられる。具体的には、ズームレンズ120には、画角を調整する調整部であるズーム機構121が設けられており、画角を無段階に調節することができる。また、三脚130は、地面に立設される三本の脚部131と、カメラ110が装着されるカメラ支持部132とを有し、脚部131とカメラ支持部132は、方向角を調整する調整部である水平回動機構133、俯角を調整する調整部である鉛直回動機構134、及び高さを調整する調整部である鉛直伸縮機構135とで連結されている。水平回動機構133は、カメラ支持部132に装着されたカメラ110を略水平な面内で回動させ、鉛直回動機構134は、カメラ支持部132に装着されたカメラ110を略鉛直な面内で回動させる。
【0020】
カメラ110には、当該カメラ110による撮像を制御するためのコンピュータが搭載されている。コンピュータは、所定のプログラムを実行することで、撮像部111、認識部112、I/F部113、座標特定部114、パラメータ特定部115、目標パラメータ記憶部116、提示部117を備える。
【0021】
撮像部111は、カメラ110により動画像の撮像を行う。
認識部112は、撮像部111が撮像した動画像に対して、基準となる文字画像である比較用テンプレート(設定情報)と動画像に含まれる文字画像とを比較するアルゴリズムにより車両情報の認識を行う。
I/F部113は、ディスプレイやスピーカーなどの出力装置を介して利用者に情報を出力し、入力装置を介して利用者から情報の入力を受け付ける。I/F部113は、例えばタッチパネルなどによって実現される。
座標特定部114は、I/Fを介して、利用者から撮像部111が撮像した動画像における、車線の一部を示す矩形領域の4つの頂点の座標の入力を受け付ける。なお、撮像部111が撮像した画像上における矩形領域の形状は必ずしも矩形とならない。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態で用いる矩形領域の指定方法を示す図である。
本実施形態では、矩形領域として、図2に示すように、車両情報の認識対象となる車両が通行する車線の両端の線A、Bと車線に直交する線C、Dとを辺とする四角形であって、奥行き方向(A、B)の長さを、路面に破線でプリントされた車線境界線の1つの線分の長さとする領域を用いる。つまり、矩形領域は、約12メートル(車線境界線の1つの線分の長さ)×約3.6メートル(車線の幅の長さ)となる。
【0023】
パラメータ特定部115は、座標特定部114が入力を受け付けた頂点に基づいて現在のパラメータの値を特定する。
目標パラメータ記憶部116は、認識部112が実施する車両情報認識のアルゴリズムに適した撮像範囲を撮像するためのパラメータである目標パラメータを記憶する。
提示部117は、パラメータ特定部115が特定したパラメータと目標パラメータ記憶部116が記憶する目標パラメータとの差分値(比較結果)を、I/F部113を介して利用者に提示する。
【0024】
ここで、目標パラメータ及び比較用テンプレートについて説明する。予め利用者は、ナンバープレートの文字が読みやすくなるようにカメラの撮像条件を調整し、その条件での各種カメラパラメータを、「目標パラメータ」として設定しておく。また、その目標パラメータにて撮像されたナンバープレート画像から切り出された文字画像が、「比較用テンプレート」(標準的な文字画像)となる。これらは記憶部116に記録される。
例えば、撮影された画像全体に対する、ナンバープレートの大きさ(範囲)、プレート上の文字の大きさ(高さ、幅、線の太さ)、文字間隔が、比較用テンプレートのものに近いほど、比較用テンプレートと撮影された文字画像の一致度が高くなるため、車両情報(ナンバープレートに記載された情報)の認識精度が高くなる。
つまり、認識部112は、目標パラメータ記憶部116が記憶する目標パラメータで決定される撮像範囲を撮像部111が撮像したときに、最も精度良く車両情報を認識することができる。
【0025】
次に、本発明の一実施形態による車両情報認識装置100のパラメータの調整方法について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による車両情報認識装置100のパラメータの調整方法を示すフローチャートである。
【0026】
まず、利用者は、三脚130の水平回動機構133及び鉛直回動機構134によって方向角及び俯角が目標パラメータになるように調整して路側に設置する(ステップS1)。このとき、方向角及び俯角は、目標パラメータにぴったり合致している必要は無い。次に利用者は、撮像部111によって撮像される動画像を監視しながら、三脚130の鉛直伸縮機構135とズームレンズ120のズーム機構121により、所定の矩形領域の全部が動画像中に収まるように、高さと画角とを互いに調整する(ステップS2)。
【0027】
次に、利用者は、車両情報認識装置100のI/F部113が表示する画像を参照し、当該画像上における矩形領域の4つの頂点の2次元座標を入力する(ステップS3)。利用者は、例えば、タッチパネル上の該当する点をタッチすることで座標の入力を行っても良いし、方向キーの押下により座標の入力を行っても良い。
【0028】
利用者が矩形領域の全ての頂点の座標を入力すると、車両情報認識装置100の座標特定部114は、I/F部113を介して当該頂点の座標の入力を受け付ける。このとき、利用者は、まず車両番号の認識対象となる車線のうち、破線で道路上にペイントされた車線境界線の両端の座標を入力し、その後、他方の車両境界線の対応する点の座標を入力することで、容易に矩形領域の指定を行うことができる。
【0029】
次に、パラメータ特定部115は、座標特定部114が特定した4つの座標に基づいて、矩形領域の中心点を基準としたときのカメラ110のパラメータを特定する(ステップS4)。すなわち、パラメータ特定部115は、12メートル×3.6メートルの矩形領域を撮像したときに、座標特定部114が特定した4つの座標を結ぶ閉区間の形状となるようなパラメータを算出する。
【0030】
具体的には、パラメータ特定部115は、矩形領域の中心点を基準(原点)としたときの矩形領域の各頂点の相対位置(x座標、y座標、z座標)を特定する。次に、パラメータ特定部115は、パラメータを示す3×4行列であるカメラ行列Pε、特定した相対位置のベクトルXε、及び座標特定部114が特定した画面上の座標(x座標、y座標)のベクトルuを用いて、式(1)に示す方程式を解くことで、パラメータの値を特定する。ここで、カメラ行列Pεとは、画角(焦点距離)、アスペクト比、非直交歪み、画像中心、カメラ110の位置を示すX方向、Y方向及びZ方向の平行移動量、カメラ110の姿勢を示す俯角及び方向角を含む行列である。なお、カメラ行列Pεのうち、俯角及び方向角、X方向、Y方向及びZ方向の平行移動量、並びに画角が、不明な(値の特定が必要な)パラメータとなる。
また、x座標、y座標、z座標は、それぞれ3次元ユークリッド空間である仮想空間の座標軸を基準とする座標を示すものであり、X方向、Y方向、Z方向は、それぞれ実空間の座標軸を基準とする移動方向を示す。
【0031】
εε×u=0 ・・・(1)
但し、「×」は外積の演算子である。
【0032】
式(1)は、カメラ行列Pεにより実空間上の参照点であるベクトルXεを仮想空間に投影したベクトルと、その仮想空間上の対応であるベクトルuとが一致している状態を示す式である。
【0033】
ステップS4でパラメータ特定部115がカメラ110のパラメータを特定すると、提示部117は、パラメータ特定部115が特定したパラメータと目標パラメータ記憶部116が記憶する目標パラメータとの差分値を算出し、I/F部113を介して利用者に当該差分値を提示する(ステップS5)。次に、利用者は、I/F部113に表示された方向角及び俯角の差分値を参照し、その値が誤差範囲内であるか否かを判定する(ステップS6)。例えば、方向角及び俯角の差分値が2度以内である場合に誤差範囲内であると判定することができる。
【0034】
利用者は、方向角の差分値及び俯角の差分値の少なくとも何れかの値が誤差範囲内にないと判定した場合(ステップS6:NO)、三脚130の水平回動機構133及び鉛直回動機構134によって、目標パラメータに近づけるよう方向角及び俯角の微調整を行う(ステップS7)。そして、再度ステップS3に戻り、矩形領域の座標の入力を行う。
【0035】
他方、利用者は、方向角及び俯角の差分値が何れも誤差範囲内にあると判定した場合(ステップS6:YES)、I/F部113に表示された画角の差分値を参照し、ズームレンズ120のズーム機構121により目標パラメータに近づけるよう画角を調整する(ステップS8)。画角の調整が完了すると、利用者は、認識部112による車両情報認識処理の実行を開始させる(ステップS9)。具体的には、認識部112は、撮像部111が撮像した動画像の各フレームに対してパターンマッチングなどの既存の画像処理を行うことにより車両が含まれるフレームを抽出し、当該フレーム画像から車両部分を抽出する。そして、認識部112は、抽出した車両部分からナンバープレート位置を特定し、比較用テンプレートを用いたOCR処理により当該ナンバープレートに記載されている車両情報を認識する。
【0036】
このように、本実施形態によれば、車両情報認識装置100のパラメータ特定部115が、現在のパラメータを特定するため、利用者は、現在のパラメータと目標パラメータの差分値が示す通りに調整部の調整を行うことで、車両情報認識装置100のパラメータを適正に容易に設定することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、ステップS2で矩形領域が動画像中に収まるように高さと画角を調整し、ステップS6において方向角及び俯角が目標パラメータの誤差範囲になった後に、ステップS8で画角の調整を行う。これにより、目標パラメータによって車線を撮像したときに、撮像した画像の中に車線境界線の一方が写らなくなってしまう場合にも、方向角及び俯角並びに画角の調整を行うことができる。
【0038】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施形態では、ステップS2で矩形領域が動画像中に収まるように高さと画角を調整してからパラメータの調整を行う場合について説明したが、これに限られない。例えば、ステップS2で矩形領域の一部が動画像に収まらない場合でも、I/F部113が動画像外の座標の入力も受け付けることで、同様の処理を行うことができる。I/F部113が動画像外の座標の入力も受け付ける方法としては、例えば撮像された画像を縮小してタッチパネルに表示する方法などが挙げられる。
【0039】
また、本実施形態では、調整対象となるパラメータが、俯角、方向角、画角、高さである場合について説明したが、これに限られず、撮像画像を調整するためのカメラ側の各種設定項目であれば、他のパラメータを調整対象としても良い。パラメータの例としては、水平面上における撮像方向(左右の撮影方向)、鉛直面上における撮像方向(上下の撮影方向)、画角、カメラの設置位置、焦点距離、フォーカスの状態、絞りの状態、カメラのシャッター速度、カメラの感度、光学フィルタの特性などが挙げられる。
【0040】
また、本実施形態では、提示部117が現在のパラメータと目標パラメータの差分値を提示する場合について説明したが、これに限られず、例えば現在のパラメータと目標パラメータとを並べて提示しても良いし。現在のパラメータのみを提示しても良い。また、提示部117は、現在のパラメータと目標パラメータとの比較結果を、調整すべき方向や量を矢印や文章によって提示しても良い。
【0041】
また、本実施形態では、認識部112が車両情報の認識に用いる設定情報として、目標パラメータにて撮像されたナンバープレート画像から切り出された文字画像である比較用テンプレートを用いる場合について説明したが、これに限られない。例えば、目標パラメータにてナンバープレートを撮像したときの文字の大きさを示す値であっても良いし、複数の比較用テンプレートを用いて機械学習したOCRの設定情報であっても良い。
【0042】
また、本実施形態では、座標特定部114が矩形領域の4点の2次元座標を特定する場合を説明したが、これに限られず、3次元座標を特定しても良い。具体的には、I/F部113が矩形の3次元CADデータを表示し、撮像画像中の矩形領域と一致するように利用者が当該CADデータを回転・移動・拡大縮小させることで、座標特定部114は、その頂点の3次元座標を特定することができる。
【0043】
また、本実施形態では、本発明による撮像装置を車両情報認識装置100に実装する場合を説明したが、これに限られず、例えば測量用の撮像装置など、所定のパラメータでの設置を要する撮像装置に適用しても、同様に効果を得ることができる。
【0044】
上述の各処理部の動作は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されている。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0045】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0046】
100…車両情報認識装置 110…カメラ 111…撮像部 112…認識部 113…I/F部 114…座標特定部 115…パラメータ特定部 116…目標パラメータ記憶部 117…提示部 120…ズームレンズ 121…ズーム機構 130…三脚 131…脚部 132…カメラ支持部 133…水平回動機構 134…鉛直回動機構 135…鉛直伸縮機構
図1
図2
図3