(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、押しボタン式のシフト装置では、いずれの押しボタンを選択するにせよ、操作が単純であるが故に、操作性に優れる反面、別の押しボタンを押圧する等の誤操作が懸念される。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、誤操作による不本意なレンジへの切り換えを抑制することが可能なシフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、変速機のレンジを指定するシフト装置において、後進レンジを指定するR位置の割り当てられた第1の操作部材と、前進レンジを指定するD位置の割り当てられた第2の操作部材とを備え、前記第1の操作部材が当該第1の操作部材の基準位置から前記R位置まで変位するときの操作方向と、前記第2の操作部材が当該第2の操作部材の基準位置から前記D位置まで変位するときの操作方向とが、互いに異なる方向であ
って、それらは互いに逆の向きであり、前記第1の操作部材には、当該第1の操作部材の基準位置を挟んで前記R位置の反対側に、ニュートラルレンジを指定するN位置が割り当てられるとともに、前記第2の操作部材には、当該第2の操作部材の基準位置を挟んで前記D位置の反対側に、ニュートラルレンジを指定するN位置が割り当てられていることをその要旨としている。
【0008】
同構成によると、後進(R)レンジ又は前進(D)レンジの指定について、操作部材が区別されていることに加え、操作の向きが区別されている。このため、双方のレンジについて、互いのレンジへの切り換えが抑制される。したがって、誤操作による不本意なレンジへの切り換えを抑制することができる。
特に、第1の操作部材を当該第1の操作部材の基準位置からR位置まで特定の方向に操作して後進(R)レンジを指定するところ、誤って第2の操作部材を当該第2の操作部材の基準位置から上記特定の方向に操作しても、この第2の操作部材は前進(D)レンジを指定するD位置に変位されない。同様に、第2の操作部材を当該第2の操作部材の基準位置からD位置まで特定の方向に操作して前進(D)レンジを指定するところ、誤って第1の操作部材を当該第1の操作部材の基準位置から上記特定の方向に操作しても、この第1の操作部材は後進(R)レンジを指定するR位置に変位されない。いずれにせよ、双方のレンジについて、互いのレンジへの切り換えが効果的に抑制される。したがって、誤操作による不本意なレンジへの切り換えを確実に抑制することができる。
しかも、第1の操作部材を当該第1の操作部材の基準位置からR位置まで特定の方向に操作して後進(R)レンジを指定するところ、誤って第2の操作部材を当該第2の操作部材の基準位置から上記特定の方向に操作すると、この第2の操作部材はN位置に向かう。同様に、第2の操作部材を当該第2の操作部材の基準位置からD位置まで特定の方向に操作して前進(D)レンジを指定するところ、誤って第1の操作部材を当該第1の操作部材の基準位置から上記特定の方向に操作すると、この第1の操作部材はN位置に向かう。いずれにせよ、N位置に到達すると、ニュートラル(N)レンジが指定される。したがって、誤操作による後進(R)レンジ又は前進(D)レンジへの切り換えを抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシフト装置において、前記第1の操作部材には、当該第1の操作部材の基準位置から前記R位置への変位を許容する予備操作手段が
押圧操作可能に設けられるとともに、その基準位置を挟んで前記R位置の反対側には、ニュートラルレンジを指定するN位置が割り当てられ、また、前記第2の操作部材には、当該第2の操作部材の基準位置から前記D位置への変位を許容する予備操作手段が
押圧操作可能に設けられるとともに、その基準位置を挟んで前記D位置の反対側には、ニュートラルレンジを指定するN位置が割り当てられ、前記第1の操作部材の予備操作手段が
押圧操作されたことを条件に、当該第1の操作部材の基準位置から前記R位置への変位が許容されるとともに、前記第2の操作部材の予備操作手段が
押圧操作されたことを条件に、当該第2の操作部材の基準位置から前記D位置への変位が許容され、さらに、前記第1の操作部材の予備操作手段が
押圧操作されないことを条件に、当該第1の操作部材の基準位置から前記N位置への変位が許容されるとともに、前記第2の操作部材の予備操作手段が
押圧操作されないことを条件に、当該第2の操作部材の基準位置から前記N位置への変位が許容されることをその要旨としている。
【0014】
同構成によると、第1の操作部材の予備操作手段を
押圧操作しつつ当該第1の操作部材の基準位置からR位置まで特定の方向に操作して後進(R)レンジを指定するところ、誤って第2の操作部材の予備操作手段を
押圧操作しつつ当該第2の操作部材の基準位置から上記特定の方向に操作しようとしても、この操作は行えない。同様に、第2の操作部材の予備操作手段を
押圧操作しつつ当該第2の操作部材の基準位置からD位置まで特定の方向に操作して前進(D)レンジを指定するところ、誤って第1の操作部材の予備操作手段を
押圧操作しつつ当該第1の操作部材の基準位置から上記特定の方向に操作しようとしても、この操作は行えない。
【0015】
しかも、第1の操作部材の予備操作手段を
押圧操作せずに当該第1の操作部材の基準位置からN位置まで特定の方向に操作してニュートラル(N)レンジを指定するところ、誤って第2の操作部材の予備操作手段を
押圧操作せずに当該第2の操作部材の基準位置から上記特定の方向に操作しようとしても、この操作は行えない。同様に、第2の操作部材の予備操作手段を
押圧操作せずに当該第2の操作部材の基準位置からN位置まで特定の方向に操作してニュートラル(N)レンジを指定するところ、誤って第1の操作部材の予備操作手段を
押圧操作せずに当該第1の操作部材の基準位置から上記特定の方向に操作しようとしても、この操作は行えない。
【0016】
いずれにせよ、予備操作手段の
押圧操作の有無が操作許容の条件とされているため、操作に矛盾が生じた際には当該操作は許容されない。したがって、誤操作による不本意なレンジへの切り換えを抑制できることは勿論、誤操作自体を生じ難くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、誤操作による不本意なレンジへの切り換えを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るシフト装置の実施の形態について説明する。このシフト装置は、運転席と助手席との間のフロアコンソールに設けられる。
(第1の実施の形態)
図1に示すように、シフト装置1は、第1の操作部材であるスライドスイッチ10と、第2の操作部材であるスライドスイッチ20とを備え、スライドスイッチ10が車両前側に、また、スライドスイッチ20が車両後側に配置されている。
【0020】
スライドスイッチ10は、略平板状のスイッチ本体11を備え、このスイッチ本体11の上面前寄りの位置には、スイッチ本体11よりも一段高いスイッチノブ12が一体的に設けられている。スライドスイッチ10は、図示しない復帰機構によって、通常、基準位置に弾性的に保持される。この基準位置に対し車両前側にはR位置が、また、車両後側にはN位置が割り当てられている。R位置は後進(R)レンジを指定するシフト位置として規定され、N位置はニュートラル(N)レンジを指定するシフト位置として規定される。そして、スイッチノブ12を摘みつつ基準位置からR位置までスライドすることで後進(R)レンジを指定でき、また、基準位置からN位置までスライドすることでニュートラル(N)レンジを指定できるようになっている。スイッチノブ12の操作を解除すると、基準位置に自動復帰する。尚、こうしたモーメンタリ方式に代えて、新たな操作がなされるまで操作ポジションが保持されるステーショナリ方式が採用されてもよい。
【0021】
スライドスイッチ20は、略平板状のスイッチ本体21を備え、このスイッチ本体21の上面後寄りの位置には、スイッチ本体21よりも一段高いスイッチノブ22が一体的に設けられている。スライドスイッチ20は、図示しない復帰機構によって、通常、基準位置に弾性的に保持される。この基準位置に対し車両前側にはN位置が、また、車両後側にはD位置が割り当てられている。D位置は前進(D)レンジを指定するシフト位置として規定される。そして、スイッチノブ22を摘みつつ基準位置からN位置までスライドすることでニュートラル(N)レンジを指定でき、また、基準位置からD位置までスライドすることで前進(D)レンジを指定できるようになっている。スイッチノブ22の操作を解除すると、基準位置に自動復帰する。尚、スライドスイッチ20について、スライドスイッチ10と同様、ステーショナリ方式が採用されてもよい。
【0022】
スライドスイッチ10、20の操作は、図示しないポジションセンサで検出され、同センサによる検出信号が図示しない制御装置によって電気的に処理されつつ、変速機のレンジが切り換えられる。
【0023】
次に、シフト装置1の作用について説明する。
後進(R)レンジを指定する場合、スライドスイッチ10、20のうちスライドスイッチ10を選択し、スイッチノブ12を摘みつつ基準位置から車両前方にスライドする。これによりR位置に到達すると、このR位置での滞在時間が閾値以上であることを条件に、変速機が後進(R)レンジに切り換えられる。後進(R)レンジの指定後にスイッチノブ12から手を離して操作を解除すると、基準位置に自動復帰する。
【0024】
前進(D)レンジを指定する場合、スライドスイッチ10、20のうちスライドスイッチ20を選択し、スイッチノブ22を摘みつつ基準位置から車両後方にスライドする。これによりD位置に到達すると、このD位置での滞在時間が閾値以上であることを条件に、変速機が前進(D)レンジに切り換えられる。前進(D)レンジの指定後にスイッチノブ22から手を離して操作を解除すると、基準位置に自動復帰する。
【0025】
スイッチノブ12を基準位置から車両前方にスライドして後進(R)レンジを指定するところ、誤ってスイッチノブ22を基準位置から車両前方にスライドした場合を想定する。この場合、スライドスイッチ20がN位置に到達すると、このN位置での滞在時間が閾値以上であることを条件に、変速機がニュートラル(N)レンジに切り換えられる。言い換えると、こうした誤操作が仮に行われようとも、スライドスイッチ20はD位置に到達しないため、前進(D)レンジへの切り換えが回避される。
【0026】
スイッチノブ22を基準位置から車両後方にスライドして前進(D)レンジを指定するところ、誤ってスイッチノブ12を基準位置から車両後方にスライドした場合を想定する。この場合、スライドスイッチ10がN位置に到達すると、このN位置での滞在時間が閾値以上であることを条件に、変速機がニュートラル(N)レンジに切り換えられる。言い換えると、こうした誤操作が仮に行われようとも、スライドスイッチ10はR位置に到達しないため、後進(R)レンジへの切り換えが回避される。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)スライドスイッチ10にR位置が割り当てられつつ、スライドスイッチ20にD位置が割り当てられ、スライドスイッチ10が基準位置からR位置まで変位するときの操作方向と、スライドスイッチ20が基準位置からD位置まで変位するときの操作方向とが、互いに異なる方向である。このように、後進(R)レンジ又は前進(D)レンジの指定について、操作部材が区別されていることに加え、操作の向きが区別されている。このため、双方のレンジについて、互いのレンジへの切り換えが抑制される。したがって、誤操作による不本意なレンジへの切り換えを抑制することができる。
【0028】
(2)スライドスイッチ10が基準位置からR位置まで変位するときの操作方向と、スライドスイッチ20が基準位置からD位置まで変位するときの操作方向とが、互いに逆の向きである。尚、前者は車両前方に向かい、後者は車両後方に向かうため、互いのなす角度は略180度となる。このため、スライドスイッチ10を基準位置から車両前方に操作して後進(R)レンジを指定するところ、誤ってスライドスイッチ20を基準位置から車両前方に操作しても、このスライドスイッチ20は前進(D)レンジを指定するD位置に変位されない。同様に、スライドスイッチ20を基準位置から車両後方に操作して前進(D)レンジを指定するところ、誤ってスライドスイッチ10を基準位置から車両後方に操作しても、このスライドスイッチ10は後進(R)レンジを指定するR位置に変位されない。いずれにせよ、双方のレンジについて、互いのレンジへの切り換えが効果的に抑制される。したがって、誤操作による不本意なレンジへの切り換えを確実に抑制することができる。
【0029】
(3)スライドスイッチ10には、基準位置を挟んでR位置の反対側にN位置が割り当てられるとともに、スライドスイッチ20には、基準位置を挟んでD位置の反対側にN位置が割り当てられている。このため、スライドスイッチ10を基準位置から車両前方に操作して後進(R)レンジを指定するところ、誤ってスライドスイッチ20を基準位置から車両前方に操作すると、このスライドスイッチ20はN位置に向かう。同様に、スライドスイッチ20を基準位置から車両後方に操作して前進(D)レンジを指定するところ、誤ってスライドスイッチ10を基準位置から車両後方に操作すると、このスライドスイッチ10はN位置に向かう。いずれにせよ、N位置に到達すると、ニュートラル(N)レンジが指定される。したがって、誤操作による後進(R)レンジ又は前進(D)レンジへの切り換えを抑制することができる。
【0030】
(4)スライドスイッチ10、20のうち前側のスライドスイッチ10を車両前方にスライドすることで後進(R)レンジを指定でき、また、後側のスライドスイッチ20を車両後方にスライドすることで前進(D)レンジを指定できる。このように、後進(R)レンジ又は前進(D)レンジを指定する場合には、前側のスライドスイッチ10を車両前方に、また、後側のスライドスイッチ20を車両後方にスライドすればよいため、感覚的に操作を行い易い。したがって、目視を伴わないブラインドタッチによる操作性の向上を図ることができる。また、ユーザによる意識のもと、誤操作を抑制することができる。
【0031】
尚、上記第1の実施の形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・
図1を援用して、スライドスイッチ10について、R位置とN位置とを入れ換え、基準位置に対し車両前側にN位置を、また、車両後側にR位置を割り当ててもよい。この場合、スライドスイッチ20について、N位置とD位置とを入れ換え、基準位置に対し車両前側にD位置を、また、車両後側にN位置を割り当てる。
【0032】
・
図2に示すように、スライドスイッチ10が基準位置からN位置まで変位されることと同時に、スライドスイッチ20が基準位置からN位置まで変位されたとき、駐車(P)レンジが指定されるロジックを組んでもよい。
【0033】
・
図3に示すように、スライドスイッチ10、20とは独立して駐車(P)レンジを指定する専用スイッチ30を設け、この専用スイッチ30が操作されたとき、駐車(P)レンジが指定される構成を採用してもよい。
【0034】
・
図4に示すように、スライドスイッチ10が基準位置からR位置まで変位される第1の操作と、スライドスイッチ20が基準位置からD位置まで操作される第2の操作とが同時に行われたとき、後進(R)レンジ及び前進(D)レンジのいずれの指定も電気的にキャンセルするロジックを組んでもよい。この場合、例えば、ニュートラル(N)レンジが指定されるロジックであってもよい。同構成によると、第1の操作と第2の操作とが同時に行われると、後進(R)レンジ及び前進(D)レンジのいずれの指定も制御装置によって電気的にキャンセルされる。したがって、同時操作による後進(R)レンジ又は前進(D)レンジへの切り換えを抑制することができる。
【0035】
・
図5に示すように、スライドスイッチ10が基準位置からR位置まで変位される第1の操作と、スライドスイッチ20が基準位置からN位置まで変位される第2の操作とが同時に行われたとき、ニュートラル(N)レンジの指定を電気的に優先するロジックを組んでもよい。同構成によると、第1の操作と第2の操作とが同時に行われると、ニュートラル(N)レンジの指定が制御装置によって電気的に優先される。したがって、同時操作による後進(R)レンジへの切り換えを抑制することができる。尚、後進(R)レンジ及びニュートラル(N)レンジのいずれの指定も電気的にキャンセルするロジックを組んでもよい。
【0036】
・
図6に示すように、スライドスイッチ10が基準位置からN位置まで変位される第1の操作と、スライドスイッチ20が基準位置からD位置まで変位される第2の操作とが同時に行われたとき、ニュートラル(N)レンジの指定を電気的に優先するロジックを組んでもよい。同構成によると、第1の操作と第2の操作とが同時に行われると、ニュートラル(N)レンジの指定が制御装置によって電気的に優先される。したがって、同時操作による前進(D)レンジへの切り換えを抑制することができる。尚、ニュートラル(N)レンジ及び前進(D)レンジのいずれの指定も電気的にキャンセルするロジックを組んでもよい。
【0037】
・
図4〜
図6を援用して、第1の操作と第2の操作とのうち一方が先に開始された後に他方が開始され、やがて双方同時の状況となったとき、先に開始された方の操作を優先するロジックを組んでもよい。或いは、ユーザによる操作やり直しの可能性を考慮して、後で開始された方の操作を優先するロジックを組んでもよい。
【0038】
・
図4〜
図6を援用して、同時操作を電気的に対策する構成に代えて、メカ的に対策する構成を採用してもよい。例えば、第1の操作と第2の操作とのうち一方が先に開始されたとき、他方の操作をメカ的にロックしてもよい。また、双方の操作が完全同時に行われようとしたとき、いずれの操作もメカ的にロックしてもよい。
【0039】
・
図7に示すように、スライドスイッチ10、20を車幅方向に並設しつつ、スライドスイッチ10を車両前方にスライドすることで後進(R)レンジを指定でき、また、スライドスイッチ20を車両後方にスライドすることで前進(D)レンジを指定できるようにしてもよい。
【0040】
・
図8に示すように、スライドスイッチ10を前側に、また、スライドスイッチ20を後側に設定しつつ、スライドスイッチ10に対し車幅方向にオフセットされた位置にスライドスイッチ20を設けてもよい。スライドスイッチ20が右側にオフセットされた例では、スライドスイッチ20の左側であって、スライドスイッチ10の後側に、ユーザの手を置くスペースが確保され、この手によるブラインドタッチが可能となる。
【0041】
・
図9に示すように、スライドスイッチ10を前側に、また、スライドスイッチ20を後側に設定しつつ、スライドスイッチ10に対し車両高さ方向にオフセットされた位置にスライドスイッチ20を設けてもよい。
【0042】
・車両前後方向にスライドスイッチ10の操作軸を設定しつつ、車幅方向にスライドスイッチ20の操作軸を設定してもよい。尚、スライドスイッチ10が基準位置からR位置まで変位するときの操作方向と、スライドスイッチ20が基準位置からD位置まで変位するときの操作方向とが、互いに異なる方向であれば、互いのなす角度θは0度<θ<360度の範囲で任意に設定可能である。ちなみに、スライドスイッチ10、20の少なくとも一方の操作軸を曲線的に設定することで、上記各操作方向を互いに異ならせてもよい。
【0043】
・スライドスイッチ10、20の操作をポジションセンサで検出するにあたり、例えば、可動側であるスイッチ本体11、21に磁石を設け、この磁石による磁束の変化を固定側の磁気センサで検出する非接触方式を採用してもよい。これとは逆に、磁石を固定側に、また、磁気センサを可動側に設けてもよい。また、非接触方式として、光源と光センサとによる光学式を採用してもよい。さらに、非接触方式に代えて、可動接点と固定接点とが導通される接触方式を採用してもよい。
【0044】
・
図10に示すように、スイッチ10、20間に回転子40を介在させ、スイッチ10がN位置に変位されるとき同スイッチ10の押出片41で回転子40が反時計回りに回転され、また、スイッチ20がN位置に変位されるとき同スイッチ20の押出片42で回転子40が反時計回りに回転されつつ、各スイッチ10、20の操作が検出されてもよい。これとは逆に、回転子40が時計回りに回転されつつ、各スイッチ10、20の操作が検出される構成であってもよい。いずれにせよ、ニュートラル(N)レンジを指定する操作を1つのポジションセンサで検出することができる。尚、磁気式或いは光学式による非接触方式であってもよいし、接触方式であってもよい。
【0045】
・スライドスイッチ10、20の形状は上記第1の実施の形態による形状に限定されない。
・本発明のシフト装置は、インストルメントパネルに配置してもよいし、ステアリングホイール上に配置してもよい。
【0046】
(第2の実施の形態)
本発明に係るシフト装置の第2の実施の形態について、上記第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0047】
図11に示すように、シフト装置1は、第1の操作部材であるスライドスイッチ10と、第2の操作部材であるスライドスイッチ20とを備え、スライドスイッチ10が車両前側に、また、スライドスイッチ20が車両後側に配置されている。
【0048】
スライドスイッチ10は、略平板状のスイッチ本体11を備え、このスイッチ本体11の上面中程の位置には、スイッチ本体11よりも一段高く、また、車両前後方向にやや幅広のスイッチノブ12が一体的に設けられ、このスイッチノブ12には選択ボタン13が押圧操作可能に設けられている。そして、選択ボタン13を押圧しながらスイッチノブ12を基準位置からR位置までスライドすることで後進(R)レンジを指定でき、また、選択ボタン13を押圧せずにスイッチノブ12を基準位置からN位置までスライドすることでニュートラル(N)レンジを指定できるようになっている。このように、選択ボタン13が押圧されていることを条件に、スイッチノブ12の基準位置からR位置への変位が許容されるとともに、選択ボタン13が押圧されていないことを条件に、スイッチノブ12の基準位置からN位置への変位が許容される。スライドスイッチ10から手を離すと、選択ボタン13もスイッチノブ12も自動復帰する。尚、選択ボタン13について、モーメンタリ方式に代えて、ステーショナリ方式が採用されてもよい。
【0049】
スライドスイッチ20は、略平板状のスイッチ本体21を備え、このスイッチ本体21の上面中程の位置には、スイッチ本体21よりも一段高く、また、車両前後方向にやや幅広のスイッチノブ22が一体的に設けられ、このスイッチノブ22には選択ボタン23が押圧操作可能に設けられている。そして、選択ボタン23を押圧しながらスイッチノブ22を基準位置からD位置までスライドすることで前進(D)レンジを指定でき、また、選択ボタン23を押圧せずにスイッチノブ22を基準位置からN位置までスライドすることでニュートラル(N)レンジを指定できるようになっている。このように、選択ボタン23が押圧されていることを条件に、スイッチノブ22の基準位置からD位置への変位が許容されるとともに、選択ボタン23が押圧されていないことを条件に、スイッチノブ22の基準位置からN位置への変位が許容される。スライドスイッチ20から手を離すと、選択ボタン23もスイッチノブ22も自動復帰する。尚、選択ボタン23について、ステーショナリ方式が採用されてもよい。
【0050】
スライドスイッチ10、20の操作は、図示しないポジションセンサで検出され、同センサによる検出信号が図示しない制御装置によって電気的に処理されつつ、変速機のレンジが切り換えられる。
【0051】
次に、シフト装置1の作用について説明する。
後進(R)レンジを指定する場合、スライドスイッチ10、20のうちスライドスイッチ10を選択し、選択ボタン13を押圧しながら、スイッチノブ12を摘みつつ基準位置から車両前方にスライドする。これによりR位置に到達すると、このR位置での滞在時間が閾値以上であることを条件に、変速機が後進(R)レンジに切り換えられる。後進(R)レンジの指定後に選択ボタン13及びスイッチノブ12から手を離して操作を解除すると、基準位置に自動復帰する。
【0052】
前進(D)レンジを指定する場合、スライドスイッチ10、20のうちスライドスイッチ20を選択し、選択ボタン23を押圧しながら、スイッチノブ22を摘みつつ基準位置から車両後方にスライドする。これによりD位置に到達すると、このD位置での滞在時間が閾値以上であることを条件に、変速機が前進(D)レンジに切り換えられる。前進(D)レンジの指定後に選択ボタン23及びスイッチノブ22から手を離して操作を解除すると、基準位置に自動復帰する。
【0053】
選択ボタン13を押圧しながらスイッチノブ12を基準位置から車両前方にスライドして後進(R)レンジを指定するところ、誤って選択ボタン23を押圧しながらスイッチノブ22を基準位置から車両前方にスライドしようとする場合を想定する。この場合、誤って操作に供されたスライドスイッチ20は、選択ボタン23が押圧されていると、スイッチノブ22を基準位置から車両前方にスライドできないため、このスライド操作は行えない。言い換えると、選択ボタン23が押圧されていることがD位置への操作許容の条件とされ、また、選択ボタン23が押圧されていないことがN位置への操作許容の条件とされているため、操作に矛盾が生じた際には当該操作は許容されない。よって、この場合、前進(D)レンジへの切り換えが回避されることは勿論、誤操作自体が回避される。
【0054】
選択ボタン23を押圧しながらスイッチノブ22を基準位置から車両後方にスライドして前進(D)レンジを指定するところ、誤って選択ボタン13を押圧しながらスイッチノブ12を基準位置から車両後方にスライドしようとする場合を想定する。この場合、誤って操作に供されたスライドスイッチ10は、選択ボタン13が押圧されていると、スイッチノブ12を基準位置から車両後方にスライドできないため、このスライド操作は行えない。言い換えると、選択ボタン13が押圧されていることがR位置への操作許容の条件とされ、また、選択ボタン13が押圧されていないことがN位置への操作許容の条件とされているため、操作に矛盾が生じた際には当該操作は許容されない。よって、この場合、後進(R)レンジへの切り換えが回避されることは勿論、誤操作自体が回避される。
【0055】
選択ボタン13を押圧せずにスイッチノブ12を基準位置から車両後方にスライドしてニュートラル(N)レンジを指定するところ、誤ってスイッチノブ22を基準位置から車両後方にスライドしようとする場合を想定する。この場合、誤って操作に供されたスライドスイッチ20は、選択ボタン23が押圧されていないと、スイッチノブ22を基準位置から車両後方にスライドできないため、このスライド操作は行えない。言い換えると、この場合も操作に矛盾が生じるため、当該操作は許容されない。よって、この場合、前進(D)レンジへの切り換えが回避されることは勿論、誤操作自体が回避される。
【0056】
選択ボタン23を押圧せずにスイッチノブ22を基準位置から車両前方にスライドしてニュートラル(N)レンジを指定するところ、誤ってスイッチノブ12を基準位置から車両前方にスライドしようとする場合を想定する。この場合、誤って操作に供されたスライドスイッチ10は、選択ボタン13が押圧されていないと、スイッチノブ12を基準位置から車両前方にスライドできないため、このスライド操作は行えない。言い換えると、この場合も操作に矛盾が生じるため、当該操作は許容されない。よって、この場合、後進(R)レンジへの切り換えが回避されることは勿論、誤操作自体が回避される。
【0057】
以上説明したように、この第2の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態による(1)〜(4)の各効果に準じた効果に加え、以下の効果を奏することができる。
(5)選択ボタン13、23の
押圧操作の有無が操作許容の条件とされているため、操作に矛盾が生じた際には当該操作は許容されない。したがって、誤操作による不本意なレンジへの切り換えを抑制できることは勿論、誤操作自体を生じ難くすることができる。
【0058】
尚、上記第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態の変更例全てに準じるかたちで変更して具体化できるとともに、さらに次のように変更して具体化することも可能である。
・
図12に示すように、選択ボタン13の割愛されたスイッチ10を前側に、また、選択ボタン23の割愛されたスイッチ20を後側に設定しつつ、スイッチ10に対し車幅方向にオフセットされた位置にスイッチ20を設け、R位置又はD位置への操作を2段階にしてもよい。スイッチ20が右側にオフセットされた例では、スイッチ10を基準位置から右方に変位する第1の操作を経た後、同スイッチ10を前方に変位する第2の操作を行うことで、後進(R)レンジを指定する。この場合、第1の操作が予備操作に相当する。また、スイッチ20を基準位置から左方に変位する第1の操作を経た後、同スイッチ20を後方に変位する第2の操作を行うことで、前進(D)レンジを指定する。この場合、第1の操作が予備操作に相当する。同構成によると、第1の操作を予備操作とすることで、予備操作手段に相当する選択ボタン13、23を割愛することができ、部品点数を減らすことができる。
【0059】
尚、スライドスイッチ10、20は車幅方向にオフセットさせなくてもよい。スライドスイッチ10、20を前後方向に並設しつつ、R位置又はD位置への操作を
図12に倣って2段階にしてもよい。また、第1の操作(予備操作)として車幅方向に変位(スライド)させる代わりに、鉛直下方への押し込み操作又は鉛直上方への引き上げ操作を第1の操作としてもよい。
【0060】
・
図13に示すように、スイッチノブ12が基準位置からR位置まで変位される第1の操作と、スイッチノブ22が基準位置からD位置まで変位される第2の操作とが同時に行われたとき、選択ボタン13、23のうち先に押圧された方の操作を優先するロジックを組んでもよい。或いは、選択ボタン13、23のうち例えば選択ボタン13が先に押圧されたとき、スイッチノブ12の基準位置からR位置への操作を許容しつつ、スイッチノブ22の基準位置からD位置への操作をソレノイド等によりメカ的にロックしてもよい。
【0061】
・
図14に示すように、スイッチノブ12が基準位置からR位置まで変位される第1の操作と、スイッチノブ22が基準位置からN位置まで変位される第2の操作とが同時に行われたとき、選択ボタン13を押圧する操作とスイッチノブ22の操作とのうち先に行われた方の操作を優先するロジックを組んでもよい。或いは、選択ボタン13を押圧する操作とスイッチノブ22の操作とのうち例えば選択ボタン13を押圧する操作が先に行われたとき、スイッチノブ12の基準位置からR位置への操作を許容しつつ、スイッチノブ22の基準位置からN位置への操作をソレノイド等によりメカ的にロックしてもよい。
【0062】
・
図15に示すように、スイッチノブ12が基準位置からN位置まで変位される第1の操作と、スイッチノブ22が基準位置からD位置まで変位される第2の操作とが同時に行われたとき、スイッチノブ12の操作と選択ボタン23を押圧する操作とのうち先に行われた方の操作を優先するロジックを組んでもよい。或いは、スイッチノブ12の操作と選択ボタン23を押圧する操作とのうち例えば選択ボタン23を押圧する操作が先に行われたとき、スイッチノブ22の基準位置からD位置への操作を許容しつつ、スイッチノブ12の基準位置からN位置への操作をソレノイド等によりメカ的にロックしてもよい。
【0063】
・上記第2の実施の形態とは逆に、選択ボタン13が押圧されていることを条件に、スイッチノブ12の基準位置からN位置への変位が許容されるとともに、選択ボタン13が押圧されていないことを条件に、スイッチノブ12の基準位置からR位置への変位が許容される構成であってもよい。この場合、選択ボタン23が押圧されていることを条件に、スイッチノブ22の基準位置からN位置への変位が許容されるとともに、選択ボタン23が押圧されていないことを条件に、スイッチノブ22の基準位置からD位置への変位が許容される。
【0064】
・選択ボタン13、23の形状は上記第2の実施の形態による形状に限定されない。また、選択ボタン13、23の配置も特に限定されない。
次に、上記各実施の形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
【0065】
(イ
)シフト装置において、前記第1の操作部材が当該第1の操作部材の基準位置から前記R位置まで変位される第1の操作と、前記第2の操作部材が当該第2の操作部材の基準位置から前記D位置まで操作される第2の操作とが同時に行われたとき、後進レンジ及び前進レンジのいずれの指定も電気的にキャンセルする制御手段を備えるこ
と。同構成によると、第1の操作と第2の操作とが同時に行われると、後進レンジ及び前進レンジのいずれの指定も制御手段によって電気的にキャンセルされる。したがって、同時操作による後進(R)レンジ又は前進(D)レンジへの切り換えを抑制することができる。
【0066】
(ロ
)シフト装置において、前記第1の操作部材が当該第1の操作部材の基準位置から前記R位置まで変位される第1の操作と、前記第2の操作部材が当該第2の操作部材の基準位置から前記N位置まで変位される第2の操作とが同時に行われたとき、ニュートラルレンジの指定を電気的に優先する制御手段を備えるこ
と。同構成によると、第1の操作と第2の操作とが同時に行われると、ニュートラル(N)レンジの指定が制御手段によって電気的に優先される。したがって、同時操作による後進(R)レンジへの切り換えを抑制することができる。
【0067】
(ハ
)シフト装置において、前記第1の操作部材が当該第1の操作部材の基準位置から前記N位置まで変位される第1の操作と、前記第2の操作部材が当該第2の操作部材の基準位置から前記D位置まで変位される第2の操作とが同時に行われたとき、ニュートラルレンジの指定を電気的に優先する制御手段を備えるこ
と。同構成によると、第1の操作と第2の操作とが同時に行われると、ニュートラル(N)レンジの指定が制御手段によって電気的に優先される。したがって、同時操作による前進(D)レンジへの切り換えを抑制することができる。