特許第6093526号(P6093526)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093526
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/70 20060101AFI20170227BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20170227BHJP
   E04D 13/03 20060101ALI20170227BHJP
   E04F 17/06 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   E04B1/70 B
   E04B1/76 100C
   E04D13/03 U
   E04F17/06 B
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-198636(P2012-198636)
(22)【出願日】2012年9月10日
(65)【公開番号】特開2014-51855(P2014-51855A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】菅野 普
(72)【発明者】
【氏名】森戸 直美
【審査官】 坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−172333(JP,U)
【文献】 実開昭59−000024(JP,U)
【文献】 特開2008−002708(JP,A)
【文献】 特開2006−291662(JP,A)
【文献】 特開2007−132153(JP,A)
【文献】 特開2000−088305(JP,A)
【文献】 実開昭58−083591(JP,U)
【文献】 特開昭60−188588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/70− 1/90
7/18
E04D 13/03−13/035
13/14−13/143
E04F 17/06
F21S 11/00
F24F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の陸屋根から上方に突出した換気塔と、
前記換気塔に設けられた採光部と、
前記換気塔に設けられた蓄熱部と、
前記採光部から採光された太陽光を前記蓄熱部側に反射させる光反射部と、を有し、
前記蓄熱部は、前記換気塔の天井部に設けられている建物。
【請求項2】
前記採光部は、前記換気塔の側壁に設けられ、
前記光反射部は、前記採光部の内面に沿って上下方向に並べて配置された複数の反射板からなる、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記採光部は、前記換気塔の側壁に設けられ、
前記光反射部は、前記採光部の下部の内面側に配置された反射板からなる、請求項1に記載の建物。
【請求項4】
前記光反射部は、所定の入射角より高い高入射角の太陽光を前記蓄熱部側に反射させ、前記所定の入射角より低い低入射角の太陽光を前記換気塔の下方の居室側に反射させるように構成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の建物。
【請求項5】
前記換気塔には、上昇気流を形成するファンが設けられている、請求項1〜4のいずれかに記載の建物。
【請求項6】
前記光反射部は、前記ファンと同程度の高さに設けられている、請求項5に記載の建物。
【請求項7】
前記ファンは、逆回転して下降気流を形成可能である、請求項5又は6に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気塔を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部などの密集地における建物は、建物の側壁面に窓を設けただけでは風が抜けにくく、建物内部の換気を行うことが難しい。
【0003】
そこで、建物の屋根面に換気用の窓を設けることがある。例えば特許文献1には、建物の屋根面に開放可能な天窓を設け、その天窓の真下に気流を生じさせる電動のファンを設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−146838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなファンを設けた場合、多大な初期コスト及びランニングコストが必要となり、停電時には十分な換気が行われなくなるという課題がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ファンに頼らなくても建物内の換気を促進できる建物を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、建物の陸屋根から上方に突出した換気塔と、前記換気塔に設けられた採光部と、前記換気塔に設けられた蓄熱部と、前記採光部から採光された太陽光を前記蓄熱部側に反射させる光反射部と、を有し、前記蓄熱部は、前記換気塔の天井部に設けられている建物である。
【0008】
本発明によれば、光反射部で反射させた太陽光の熱を換気塔内の蓄熱部に蓄え、この熱によって換気塔内の空気を局所的に暖めることができる。これにより、換気塔の下方の居室から換気塔内に向かう上昇気流が形成され、換気塔からの換気が促進される。よって、ファンに頼らなくても建物内の換気を促進できる。
【0009】
換気塔の上部付近の空気が暖められるため、上昇気流の形成が促進されるため、換気がさらに促進できる。
【0010】
前記採光部は、前記換気塔の側壁に設けられ、前記光反射部は、前記採光部の内面に沿って上下方向に並べて配置された複数の反射板からなるようにしてもよい。
【0011】
前記採光部は、前記換気塔の側壁に設けられ、前記光反射部は、前記採光部の下部の内面側に配置された反射板からなるようにしてもよい。
【0012】
前記光反射部は、所定の入射角より高い高入射角の太陽光を前記蓄熱部側に反射させ、前記所定の入射角より低い低入射角の太陽光を前記換気塔の下方の居室側に反射させるように構成されていてもよい。かかる場合、太陽光が高入射角となる夏場に換気を促進し、太陽光が低入射角となる冬場に太陽光を居室に入れて、居室を暖めることができる。
【0013】
前記換気塔には、上昇気流を形成するファンが設けられていてもよい。かかる場合、建物の換気をさらに促進できる。
【0014】
前記光反射部は、前記ファンと同程度の高さに設けられていてもよい。かかる場合、ファンの周辺の気流の流路が狭くなるため、換気塔内の気流を強めることができる。これにより、換気をさらに促進できる。
【0015】
前記ファンは、逆回転して下降気流を形成可能であってもよい。かかる場合、冬場に下降気流を形成し、換気塔内の暖められた空気を居室側に送り、居室を暖めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ファンに頼らなくても建物内の換気を促進できるので、その分建物の電気消費量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】換気塔を有する建物の模式図である。
図2】換気塔の構成の概略を示す説明図である。
図3】換気塔の横断面を示す説明図である。
図4】換気塔の上昇気流の流れを示す説明図である。
図5】換気塔の下降気流の流れを示す説明図である。
図6】窓に対し反射板を一つ設ける場合の換気塔を示す説明図である。
図7】屈曲した反射板の例を示す説明図である。
図8】屈曲した反射板の下面の光の反射例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る建物1を示す模式図である。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
建物1は、陸屋根1aから上方に突出した換気塔10と、換気塔10内に太陽光を採光する採光部としての窓11と、換気塔10内で熱を蓄熱する蓄熱部12と、窓11から採光された太陽光を蓄熱部12側に反射させる光反射部としての複数の反射板13と、換気塔10の天井面から垂下されたファン14と、を有している。
【0020】
換気塔10は、略直方体状の外形を有している。換気塔10の内部は、陸屋根1aの下の居室2と連通している。
【0021】
窓11は、換気塔10の四方の側壁面に設けられている。窓11には、ガラスなど、光を透過する透明あるいは半透明の板材が嵌め込まれている。窓11は、例えば上辺を支軸として外側に回動して開閉でき、換気塔10内の空気を建物1の外部に排出する機能、すなわち換気塔10における換気機能を兼ね備えている。
【0022】
蓄熱部12は、換気塔10の天井部10aに設置されている。蓄熱部12は、例えば複数層の石膏ボード、コンクリートパネル、ACLパネル、べニア板などにより構成されている。なお、蓄熱部12は、天井の仕上板と兼用であってもよい。また、蓄熱部12は、蓄熱できるものであれば他の材質のものであってもよい。
【0023】
反射板13は短冊状であり、図2に示すように、その長手方向を水平にして窓11の内側面に沿って上下方向に並べて設けられている。複数の反射板13は、太陽光を蓄熱部12に向けて反射できるような角度、間隔で設置されている。本実施の形態においては、反射板13は短手方向についても水平となるように設置されている。また、複数の反射板13の一部は、ファン14と同程度の高さとなるように設けられており、この反射板13によりファン14の周囲の空気の流路が狭くなっている。
【0024】
反射板13は、図3に示すように換気塔10の内壁面に固定された支持柱20によりその両端が支持されている。反射板13は、換気塔10で対向する2つの窓11に沿って設けられている。なお、反射板13は、他の窓11に対しても設けられていてもよいし、例えば南に面する窓11のみに設けられていてもよい。
【0025】
ファン14は、垂直な回転軸の先端で支持された複数枚の羽根30を備えている。ファン14は、正回転のときに上方に向けて送風し、逆回転のときに下方に向けて送風できる。ファン14は、図示しないモータなどの駆動源により駆動できる。
【0026】
なお、ファン14の回転駆動や窓11の開閉駆動は、人が例えば建物1の居室2に設けられたスイッチによりON、OFFできる。また、居室2の床には吹抜け6が形成され、居室2の壁面には開閉可能な窓5が設けられている。
【0027】
次に、以上のように構成された建物1の換気動作について説明する。例えば図4に示すように換気塔10では、窓11を通じて採光された太陽光が各反射板13で反射し、換気塔10の天井面に照射される。この太陽光の熱が換気塔10の天井部10aの蓄熱部12により蓄熱される。この熱により換気塔10内の上部の空気が暖められ温度が上昇し、下方の居室2から換気塔10内に流れ込む上昇気流が形成される。この状態で、窓11が開けられると、上昇気流に乗って上昇した建物1内の空気が窓11から排出され、建物1内が換気される。また、ファン14が回転されると、さらに強い上昇気流が形成され、建物1内の換気が促進される。
【0028】
この際、複数の反射板13は、窓11の内面に沿って上下方向に並べて配置されているので、窓11から入射する太陽光を蓄熱部12に向けて集中的に反射させることができる。よって、太陽光の熱を効率的に蓄熱部12に蓄熱できる。
【0029】
また、反射板13は、ファン14と同程度の高さに設けられているので、ファン14の周囲の空気の流路が狭くなる。これによって、ファン14を回転させた際に換気塔10内により強い上昇気流が形成されるので、換気をさらに促進できる。
【0030】
一方、冬場などの低温時には、図5に示すように窓11が閉められ、ファン14が逆回転されて換気塔10から下方向に向かう下降気流が形成される。こうすることによって、蓄熱部12により暖められた換気塔10内の空気が居室2に送られ、居室2が暖められる。
【0031】
以上の実施の形態で記載した複数の反射板13は、全て水平に設けられていたが、蓄熱部12方向に適切に反射するように、傾斜させてもよいし、それぞれの角度が異なっていてもよい。
【0032】
また、反射板13は、窓11の内面に沿って複数設けられていたが、図6に示すように、幅広の反射板13を、各窓11の下部の内側にファン14と同じ高さとなるように一つずつ設けるようにしてもよい。かかる場合、。反射板13をファン14により近づけることができるので、ファン14の周囲の気流の流路が更に狭くなり、ファン14を回転させた際に換気塔10内により強い上昇気流を形成できる。よって、建物1内の換気を効果的に行うことができる。
【0033】
また、反射板13は、図7図8に示すように、高入射角の太陽光を蓄熱部12に向けて反射させ、低入射角の太陽光を居室2側に反射させるように構成されていてもよい。より具体的に説明すると、反射板13は、窓11の内面に上下方向に並べて配置され、各反射板13は屈曲した形状を有している。各反射板13は、窓11側が高く換気塔10の中央側が低い第1の反射部13aと、当該第1の反射部13aの換気塔10の中央側の端部に接続され、窓11側が低く換気塔10の中央側が高い第2の反射部13bを有している。第1の反射部13aの傾斜角は、例えば45°〜60°程度に設定され、第2の反射部13bの傾斜角は、例えば15°〜30°程度に設定されている。複数の反射板13は、図7に示すように第1の反射部13aの傾斜角より高い高入射角の太陽光を上面で蓄熱部12側に反射させ、図8に示すように第1の反射部13aの傾斜角より低い低入射角の太陽光を下面で居室2側に反射させるように配置されている。この例において、高入射角の太陽光は、第1の反射部13aの上面で反射し、次に第2の反射部13bの上面で反射して蓄熱部12に照射される。また、低入射角の太陽光は、上下に隣り合う反射板13において、上側の反射板13の第1の反射部13aの下面で反射し、次に下側の反射板13の第2の反射部13bの上面で反射し、再度上側の反射板13の第2の反射部13bの下面で反射して、居室2に照射される。
【0034】
かかる場合、夏場の高入射角の太陽光は、蓄熱部12側に向けて反射し、蓄熱部12で蓄熱されるため、換気塔10に上昇気流を形成し、夏場の換気を促進できる。また、冬場の低入射角の太陽光は、居室2側に向けて反射し、居室2を暖めることができる。
【0035】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0036】
例えば以上の実施の形態では、換気塔10にファン14が設けられていたが、換気塔10にファン14がない場合にも本発明は適用できる。また、採光部である窓11に換気塔10における換気(排気)の機能も備えていたが、換気の機能は他の開閉窓や換気用ガラリなどに持たせてもよい。また、採光部は、換気塔10の側壁面に設けられている必要はなく、天井面など他の位置に設けられていてもよい。蓄熱部12は、換気塔10の天井部10a以外の部分に設けられていてもよい。反射板13の形状、数、傾斜角、設置位置などは、本実施の形態のものに限られず、他のものであってもよい。また、居室2は、リビングなどの部屋であってもよいし、廊下や階段等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、建物内の換気を促進する際に有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 建物
1a 陸屋根
2 居室
10 換気塔
10a 天井部
11 窓
12 蓄熱部
13 反射板
14 ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8