特許第6093532号(P6093532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093532
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】発泡樹脂製の物流容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 21/02 20060101AFI20170227BHJP
   B65G 61/00 20060101ALI20170227BHJP
   B65G 57/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   B65D21/02 210
   B65G61/00 530
   B65G57/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-214524(P2012-214524)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-69803(P2014-69803A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100099128
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(72)【発明者】
【氏名】田中 幹彦
(72)【発明者】
【氏名】栗原 純子
(72)【発明者】
【氏名】太根 将博
【審査官】 小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−323038(JP,A)
【文献】 特開2010−126234(JP,A)
【文献】 特開2004−331185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 21/02
B65G 57/00
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と周側壁とを有し上方のみを開放した箱型の発泡樹脂製の物流容器であって、底板の下面には周側壁の内周面に内嵌合できる形状と寸法の凸部が形成されており、該物流容器を上下に段積みしたときに、下位の物流容器の前記周側壁の内周面と上位の物流容器の前記底板下面の凸部との間に0.1〜10.0mmの隙間Pが形成されるように前記底板下面の凸部の寸法が設定されており、さらに、前記周側壁の内周面であって前記底板下面の凸部が内嵌合する領域には、物流容器を上下に段積みしたときに上位の物流容器の底板によって上方が塞がれることで密閉性を確保できる少なくとも1個の切り欠き溝が形成されていることを特徴とする発泡樹脂製の物流容器。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡樹脂製の物流容器であって、前記隙間Pが0.5〜5.0mmの範囲となるように前記底板下面の凸部の寸法が設定されていることを特徴とする発泡樹脂製の物流容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂製の物流容器に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡樹脂製の物流容器は、軽量であり優れた断熱性を備えることから、保冷を要する食品等の物流容器として広く使用されている。使用にあっては、保冷を要する食品等を適宜の冷媒または蓄冷材と共に物流容器内に収容し、その後、物流容器の上方開口部を適宜の蓋体によって閉鎖することで密閉された状態とし、その状態で配送や保管に供される。
【0003】
この種の物流容器は、保管時や配送先からの回収時などでは、図4に示すように、蓋をしない状態で物流容器10本体のみが、手作業によりあるいは適宜のロボットHを用いて多段に段積みされることが多い。そして、物流容器10へ食品等を収容する際には、ロボットHがそのようにして段積みされた容器群から1個ずつ取り出して搬送用コンベアの上に乗せ、コンベア上を移動する物流容器10に対して、作業者があるいは供給ロボットが食品等を物流容器10内に収容していくことが行われる。
【0004】
物流容器を前記した段積み姿勢としたときに安定した姿勢が得られるようにした物流容器が提案されており、例えば、特許文献1、2に記載されている。これらの文献に記載の物流容器では、容器の上縁に凸条を設け、底板の下面には該凸条が入り込むことのできる凹溝を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−215979号公報
【特許文献2】特開2008−195411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1あるいは2に記載のように、容器の上縁に凸条を設け、底板の下面に該凸条が入り込む凹溝を形成した形状を備えた発泡樹脂製の物流容器は、安定した段積み姿勢が得られる。しかし、構造がやや複雑になると共に、凸条と凹溝との間に高い寸法精度が要求される。また、凸条の横幅と凹溝の溝幅がきわめて近似した寸法であると、凹溝内に凸条を挿入するのが容易でなく、かつ内圧で浮きやすくなることから、段積み作業が困難となると共に、一旦段積みした後に、最上位の容器のみを取り出そうとするときに、凸条と凹溝との間の摩擦力が大きいため、また圧が抜けづらいことから、2個の容器が同時に持ち上げられてしまう恐れがある。
【0007】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、発泡樹脂製の物流容器において、簡単な構成でありながら、安定した段積み姿勢を得ることができ、かつ段積みした状態から個々に分離するときに、確実に一個ずつ分離できるようにした発泡樹脂製の物流容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による物流容器は、底板と周側壁とを有し上方を開放した箱型の発泡樹脂製の物流容器であって、底板の下面には周側壁の内周面に内嵌合できる形状と寸法の凸部が形成されており、該物流容器を上下に段積みしたときに、下位の物流容器の前記周側壁の内周面と上位の物流容器の前記底板下面の凸部との間に0.1〜10.0mmの隙間Pが形成されるように前記底板下面の凸部の寸法が設定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明による物流容器は、段積みしたときに下位に位置する容器の周側壁の内周面に内嵌合する所要寸法の凸部が、容器の底板の下面に形成されていればよく、容器としての構成はきわめて簡単でありながら、段積みしたときには、安定した段積み姿勢を得ることができる。
【0010】
本発明による物流容器において、前記隙間P、すなわち物流容器を上下に段積みしたときに、下位の物流容器の周側壁の内周面と上位の物流容器の底板下面の凸部との間に形成される隙間Pは0.1〜10.0mmの範囲である。隙間Pが0.1mm未満であると、隙間が狭すぎて空気が逃げづらく、浮いた状態となって段積みが困難となるばかりでなく、段積み後に分離しようとすると、周側壁の内周面と凸部表面との間の摩擦と内圧が抜けづらいことから、分離が困難となる。好ましくは、隙間Pは、0.5mm以上である。隙間Pが10.0mmを超えると段積みしたときに上下の容器間で横移動が生じやすくなり、段積み姿勢が不安定となる。好ましくは、隙間Pは、5.0mm以下である。隙間Pが上記の範囲であれば、段積み後に高い密閉性も確保することができ、物流容器が保冷容器である場合に、所要の保冷効果を維持することができる。
【0011】
本発明による発泡樹脂製の物流容器の好ましい態様では、前記周側壁の内周面であって前記底板下面の凸部が内嵌合する領域に、少なくとも1個の切り欠き溝が形成されていることを特徴とする。
【0012】
隙間Pが狭い場合には、前記したように、段積みするときに、下位の容器内の空気が外部に排出しがたくなり、内圧で浮いた状態となることから、上位の容器の底板下面の凸部が下位の容器の周側壁内周面に内嵌合することが困難となる。上記の態様の容器においては、底板下面の凸部が内嵌合する周側壁の内周面に少なくとも1個の切り欠き溝を有しており、該切り欠き溝が空気の逃げ道として作用するので、隙間Pがごく小さい場合であっても、空気が逃げ出しやすくなり、内圧で浮くことはなくなり、内嵌合による段積みが容易となる。また、段積み状態にある物流容器群の最上位から1つの物流容器を持ち上げて分離するときにも、該切り欠き溝から空気が下位の容器内に浸入しやすくなることで、内圧を抜くことができ、分離作業が容易となって確実に1個ずつ物流容器を分離することができる。
【0013】
本発明の発泡樹脂製の物流容器において、段積み状態での横ずれを防止することができ姿勢の安定性が得られることから、前記隙間Pが0.5〜5.0mmであることが望ましい。本発明の発泡樹脂製の物流容器において、前記隙間Pが0.5〜5.0mmであって前記切り欠き溝を備えた態様は、最も好ましい態様となる。
【0014】
なお、本発明による発泡樹脂製の物流容器を単独で使用するときに上方開口部を閉鎖する蓋体、あるいは多段に容器を段積みしたときに最上位に位置する物流容器の上方開口部を閉鎖する蓋体は特に制限はなく、密閉性を確保できることを条件に任意の形状の蓋体であってよい。また、蓋体は、内嵌合形式および外嵌合形式のいずれであってもよい。物流容器および蓋体を構成する発泡樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂の発泡樹脂などを例示することができる。
【0015】
本発明による発泡樹脂製の物流容器の平面視での形状に制限はなく任意である。平面視が矩形、円形、楕円形などであってよい。また、いずれであっても、平面視での大きさおよび容器の高さも任意であり、制限はない。好ましくは、平面視が矩形の場合には、長辺は15〜150cmの範囲、短辺は10〜100cmの範囲であり、平面視が円形の場合には、半径は5〜75cmの範囲であり、平面視が楕円形の場合には、長径は15〜150cmの範囲、短径は10〜100cmの範囲である。いずれの場合も、周側壁の厚みは0.3〜15cmの範囲であることが好ましい。
【0016】
なお、本発明において、物流容器を上下に段積みしたときに、下位の物流容器の周側壁の内周面と上位の物流容器の底板下面の凸部との間の隙間Pとは、同じ形態の物流容器をその中心線が一致するようにして段積みしたときに形成される隙間として定義される。また、隙間Pは内嵌合部の全周において同じ値であってもよく、部分的に異なっていてもよい。例えば、平面視で長方形である発泡樹脂製の物流容器の場合に、長辺側と短辺側とで隙間Pが異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発泡樹脂製の物流容器において、簡単な構成でありながら、安定した段積み姿勢を得ることができ、かつ段積みした状態から分離するときも、確実に一個ずつ分離できるようにした発泡樹脂製の物流容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による物流容器の一形態を示す斜視図。
図2図1に示す物流容器の側面図。
図3図1に示す物流容器を2段に段積みした状態を示す断面図。
図4】段積みした物流容器の状態を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明による物流容器の実施の形態を説明する。図1の斜視図に示すように、この例において、物流容器10は、底板11と周側壁12とを有し、上方を開放した箱型容器であり、予備発泡した発泡ポリスチレン粒子を型内発泡成形法により発泡成形して作られた一体成形品である。物流容器10は、平面視では、角部が丸みをおびた長方形をなしている。
【0020】
底板11の内面には、所要深さの凹溝13(図3参照)の適数本が互いに直交するように形成されている。周側壁12は、対向する短辺側側壁14、14と、該短辺側側壁14に直交する長辺側側壁15、15とで構成されている。また、周側壁12の内面上方部には全周にわたって所定高さの第1の切り欠き16が形成されており、該第1の切り欠き16の下端は内側に向いた段差水平面17とされている。なお、限定されないが、図示のものでは、短辺側側壁14、14の外側間の距離は300mm程度であり、長辺側側壁15、15の外側間の距離は380mm程度であり、高さは250mm程度であり、周側壁および底板の厚みは25mm程度である。また、第1の切り欠き16の高さは15mm程度である。
【0021】
長辺側側壁15、15の内面には、上下方向に走る互いに平行な溝部18と突部19が、ほぼ横幅全域にわたって、反覆して形成されている。溝部18と突部19の下端は底板11の内面に達しており、上端は長辺側側壁15、15に形成された前記段差水平面17にまで達している。限定されないが、図1に示す物流容器10においては、前記溝部18と突部19は、全体が角部のない連続した曲面で形成されている。
【0022】
物流容器10において、底板11の内面31に形成した前記凹溝13と、長辺側側壁15、15の内面に形成した溝部18および突部19は、物流容器10内に保冷剤(不図示)を入れ、蓋体(不図示)により上方開放部を密閉した状態で、物流容器内の冷気が対流を起こしやすくするために形成されている。また、周側壁12の内面上方部に全周にわたって形成された第1の切り欠き16は、内嵌合形式の蓋体における内嵌合用突部が嵌入するためのものであるとともに、物流容器10同士を段積みするときに、上位の物流容器10の底板11の下面部分に形成した凸部29が内嵌合する領域としても機能する。
【0023】
必須の構成ではないが、図示の物流容器10は、短辺側側壁14、14における前記段差水平面17から下方に向けて所要深さの第2の切り欠き25が形成されている。この第2の切り欠き25は、適宜の冷媒を収容した保冷容器の両端を係止するための係止段部として機能する。
【0024】
短辺側側壁14、14の外面には第3の切り欠き26が形成されており、第3の切り欠き26の上端面は物流容器10を持ち上げるときの取っ手部として利用される。また、第3の切り欠き26の底面27には、適宜の切り込み溝28が適数(図示のものでは1本)形成されている。第3の切り欠き26の底面27は内容物や配送先を示す適宜のラベルを貼り付けるのにも用いられるが、この切り込み溝28があることで、貼り付けたラベルが剥がし易くなる。そのために、物流容器10をリターナブルで多数回にわたり保冷食品等の搬送や保管に利用するのにきわめて便利になる。
【0025】
底板11の下面には、前記した周側壁12の内面上方部に形成した第1の切り欠き16に内嵌合できる形状と寸法の凸部29が形成されている。該凸部29は、前記第1の切り欠き16の高さの範囲内の高さである垂直な周壁29aと、該周壁29aの下端に位置する水平な底面29bとで構成されている。そして、周壁29aの外郭形状は、周側壁12の内面上方部に形成した第1の切り欠き16の内周面形状と同じであり、図3に示すように、同じ形状の物流容器10、10を中心線を一致させた姿勢で段積みしたときに、周壁29aの外周面と、周側壁12の内面上方部に形成した第1の切り欠き16の内周面との間に、0.1〜10.0mmの隙間Pが形成されるように、前記凸部29の寸法が設定されている。この凸部29があることで、物流容器10を上下方向に段積みする作業が容易となり、段積み後の姿勢も安定する。なお、図示のものでは、前記凸部29の高さは、前記第1の切り欠き16の高さの1/3〜1/2程度とされているが、両者は同じ高さであってもよく、この場合には、凸部29の底面29bが第1の切り欠き16の前記段差水平面17と当接することで、気密性を向上させることができる。
【0026】
必須ではないが、図示のものにおいて、底面29bの適所には肉盗み部30を設けてある。肉盗み部30を設けることで、底板11の下面の接地面積を小さくすることができ、ごみ等の異物が底面に付着するのを少なくすることができる。このことは、宅配等に物流容器10を使用するときには大きな利点となる。
【0027】
必須ではないが、図示の物流容器10では、周側壁12の内面上方部に形成した第1の切り欠き16における短辺側側壁14、14に形成された部分には、底板11の下面に形成した前記凸部29とほぼ同じ高さの切り欠き溝32が適数形成されている。この切り欠き溝32は、図4に示すように、物流容器10同士を段積みするときに、上位に位置する物流容器10の底板11の下面に形成した凸部29が、下位に位置する物流容器10の第1の切り欠き16内に入り込むときの空気の逃げ道として機能する。また、段積みされた物流容器10を個々に分離するときの空気の入り道としても機能する。
【0028】
図示の例において、前記切り欠き溝32は、ほぼ直方体形状をなしているが、空気が通過できる形状であれば、具体的な形状は任意である。また、切り欠き溝32の個数も、段積み時に所要の空気の移動が達成されることを条件に、任意である。さらに、図示のものでは、切り欠き溝32を短辺側側壁14、14にのみ形成しているが、長辺側側壁15、15のみに形成してもよく、双方に形成してもよい。いずれの場合も、切り欠き溝32の厚み方向の深さは、形成する側壁(短辺側側壁14および長辺側側壁15)の厚みの2〜50%であることが好ましく、より好ましくは、5〜10%である。横幅との関係もあるが、2%未満であると十分な空気の移動が得られない恐れがあり、50%を超えると切り欠き溝32での側壁強度が十分でなくなる恐れがある。
【0029】
本発明者らの実験によれば、上記した物流容器10において、図3に示すように、下位に位置する物流容器10の上に、もう一つの物流容器10をロボットを用いて(あるいは手作業で)段積みするときに、前記隙間Pが0.1〜5.0mm程度と狭い場合でも、下位の物流容器10に形成した前記切り欠き溝32から空気が逃げていくことで、浮き上がり現象を生じることなく、自重でもって、容易に適正に段積みされた状態となることがわかった。また、段積みされた状態から、上位の物流容器10を分離するときにも、切り欠き溝32から空気が流入することで、共づれを生じることなく確実に1個の物流容器10のみを分離することができることがわかった。もちろん、隙間Pが0.1〜5.0mm程度と狭い場合であって、切り欠き溝32が形成されていない場合であっても、わずかに外力を加えることで、安定した段積み状態を得ることができ、下位の物流容器10を押さえておくことで、容易に上位の物流容器10を分離できることもわかった。いずれの場合でも、隙間Pが狭いことで、気密性を向上させることができ、保冷性能が向上することもわかった。
【0030】
なお、隙間Pが6〜10mm程度の場合には、切り欠き溝32を形成しなくても、段積みおよび分離を容易に行うことができるが、切り欠き溝32を形成することで、一層作業性は向上する。隙間Pが10mmを超える場合には、段積みした物流容器10の間で水平方向の移動が生じやすくなり、段積み姿勢が不安定となるのが観察された。従って、隙間Pが10mmを超えるのは好ましくないことがわかった。
【0031】
なお、図示の物流容器10においては、前記したように、周側壁11の内面に形成した冷気の対流促進のための溝部18と突部19は角部を有しない連続した曲面で形成されている。そのために、溝部18の底部などにごみ等が付着し難くなる。また、水を含んだ布などを用いて溝部18および突部19およびその周囲の全面を水拭きする作業が容易となり、かつ、溝部18の底部などにごみ等が付着している場合でも、水拭きによって容易にかつ確実に除去することができる。そのために、物流容器10の特に内面を清浄に保つことが容易となり、宅配などに用いる物流容器としてきわめて有効となる。図示しないが、底板11の内面に形成した凹溝13、および該凹溝13によって形成される矩形状の凸部31についても、角部のない連続した曲面で形成することもできる。その場合には、物流容器10の底面を清浄に保つことも容易となる。
【0032】
以下に、本発明者らが行ったより具体的な実験例を示す。実験には、図1図3に示した平面視で長方形のポリスチレン系樹脂の発泡樹脂製物流容器10を用いた。基準となる物流容器10の具体的な寸法は、短辺側側壁14、14の外側間の距離305mm、長辺側側壁15、15の外側間の距離380mm、高さ250mm、周側壁および底板の厚み25mmであり、第1の切り欠き16の高さは15mmとした。また、底板11の裏面に形成した凸部29の高さは7mmとした。
【0033】
上記基準となる物流容器10を用い、前記凸部29の長辺方向および短辺方向の長さを変えることで前記隙間Pの値が異なる(P=0mmも含む)多種類の物流容器を作った。また、前記切り欠き溝32が有るものと無いものも形成した。それを、表1に、実施例1〜17,および比較例1〜3として示した。
【0034】
なお、切り欠き溝32を有する物流容器の場合、該切り欠き溝32は、短辺側側壁14の第1の切り欠き16にそれぞれ2個形成した。各切り欠き溝32の高さは、凸部29の高さと同じとし、壁厚方向の深さを2.5mm、横幅を15mmとした。
【0035】
また、前記隙間P(単位mm)(すなわち、第1の切り欠き16の内周面と前記凸部29の周壁29aとの隙間P)のうち、長辺側の隙間をP1、短辺側の隙間をP2として示した。切り欠き溝32については、有り、無し、で示した。さらに、表1には、評価として、下記に示す、段積み時の評価、分離時の評価、横ズレの評価、および総合評価を示した。
【0036】
(段積みの評価方法)
物流容器10の1つを水平面上におき、ロボットHを用いて、その上にもう一つの基準となる物流容器10Aを段積みした。そのときの状態を目視で評価した。なお、◎は直ちに正しい段積み姿勢が得られた状態、○は段積み後に少し時間が経過した後、正しい段積み姿勢が得られた状態、×は段積み後に上から押さえ付けないと正しい段積み姿勢が得られなかった状態を示す。
【0037】
(分離の評価方法)
段積み後、ロボットHによって上位の物流容器10Aを上方に揚上した。そのときの状態を目視で評価した。なお、◎は下位の物流容器を引きずることなく分離できた状態、×は下位の物流容器を引きずっており、分離するのに外力を必要とした状態を示す。
【0038】
(横ズレの評価方法)
段積み後に、前後左右に人力で10回振動を与えた。そのときの状態を目視で評価した。なお、◎は段積みされた物流容器において、短辺側と長辺側の双方で横ズレが目視できなかった状態、○は段積みされた物流容器において、短辺側と長辺側の双方でごくわずかな横ズレが目視された状態、△は○よりは大きな横ズレではあるが実用上では支障のない程度の横ズレが目視された状態、×は短辺側と長辺側のいずれかにおいて段積み状態が不安定となるような横ズレが目視された状態を示す。
【0039】
(総合評価)
段積み、分離、横ズレの評価のうち、最も悪い評価を総合評価とした。
【0040】
【表1】
【0041】
以上のことから、本発明による物流容器10において、前記隙間Pが1.0〜10.0mmの範囲となるように底板11の下面に形成した凸部29の寸法が設定されていれば、切り欠き溝32を形成しなくても、段積み作業、分離作業は容易であり、段積み後の姿勢も実用上で支障のない程度に安定していることがわかる。なかでも、隙間Pが1.0〜5.0mmの範囲の場合に、特に優れていることがわかる。また、最大隙間Pが0.1以上、1.0mm未満と小さい場合でも、切り欠き溝32を設けることで、段積み作業、分離作業が容易となることがわかる。比較例3に示すように、隙間Pが0mmの場合には、切り欠き溝32を設けても、段積み作業、分離作業は困難であり、本発明において切り欠き溝32を設けることの優位性が示される。
【符号の説明】
【0042】
10…本発明による物流容器、
11…底板、
12…周側壁、
16…周側壁の内面上方部に形成した第1の切り欠き、
29…底板の裏面に形成した凸部、
32…第1の切り欠きに形成した切り欠き溝、
P…凸部の周壁の外周面と、周側壁の内面上方部に形成した第1の切り欠きの内周面との間の隙間。
図1
図2
図3
図4