(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記後退正面壁に突設され、前記第一袖壁に連接する庇、前記後退側壁に突設され、前記第二袖壁に連接する庇、及び、前記後退正面壁から前記後退側壁に亘って突設され、前記第一袖壁と前記第二袖壁とに連接する庇、のうち少なくともいずれかを備える、請求項1に記載の建物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、袖壁を設けた建物においては、袖壁を挟んで隣接する建物からの火炎に対して類焼を抑制できる等の効果を有するが、それ以外の方向からの火炎に対しては袖壁によって火炎を遮ることができないために、防火性能が高いとは言い難い。
【0005】
そこで本発明は、このような従来技術の有する課題を解決するものであり、高い防火性能を有する建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に係る建物は、隅角部を室内側に向けて平面視矩形状に窪ませた形状とすることで、側壁と、一端が側壁の一端に接続されると共に側壁と平面視で所定の角度で傾斜する後退正面壁と、一端が後退正面壁の他端に接続されると共に後退正面壁と平面視で所定の角度で傾斜する後退側壁と、一端が後退側壁の他端に接続されると共に後退側壁と平面視で所定の角度で傾斜する正面壁と、が形成された建物であって、側壁の一端において、平面視で側壁の延在方向に沿って突設された第一袖壁と、正面壁の一端において、平面視で正面壁の延在方向に沿って突設された第二袖壁と、を備える。
【0007】
本発明によれば、第一袖壁と第二袖壁とを設けることで、側壁側及び正面壁側の2方向から後退側壁及び後退正面壁に向かう火炎を遮ることができる。また、第一袖壁を設けることで、側壁側の隣地から後退正面壁までの直線距離を長くすることができる。第二袖壁を設けることで、正面壁側の隣地から後退側壁までの直線距離を長くすることができる。従って、側壁側及び正面壁側からの火炎の影響を、後退側壁及び後退正面壁が受け難くなる。これにより、後退側壁及び後退正面壁に開口部を設けやすくなり、建物の設計の自由度が向上する。また、後退側壁及び後退正面壁に開口部を設けたとしても開口部が火炎の影響を受け難くなるため、高い防火性能を有する建物となる。
【0008】
後退正面壁に突設され、第一袖壁に連接する庇、後退側壁に突設され、第二袖壁に連接する庇、及び、後退正面壁から後退側壁に亘って突設され、第一袖壁と第二袖壁とに連接する庇、のうち少なくともいずれかを備える、ことが好ましい。この場合には、建物の上方から下方に向かう輻射熱を庇によって遮ることができ、後退側壁及び後退正面壁に、より一層開口部を設けやすくなる。
【0009】
庇の突設寸法は、庇と連接する第一袖壁又は第二袖壁の突設寸法よりも小さい、ことが好ましい。この場合には、後退側壁及び後退正面壁に設けた開口部から室内への採光を確保しつつ、防火性能を維持することができる。なお、火炎や対流炎は下方に向かうことが無く、且つ、回り込みもないので、庇では上方から下方に向かって直線的に進む輻射熱のみを遮ればよく、突設寸法を小さくしても、防火性能に問題が生じない。
【0010】
また、上記課題を解決すべく、本発明に係る建物は、隅角部を室内側に向けて平面視矩形状に窪ませた形状とすることで、側壁と、一端が側壁の一端に接続されると共に側壁と平面視で所定の角度で傾斜する後退正面壁と、一端が後退正面壁の他端に接続されると共に後退正面壁と平面視で所定の角度で傾斜する後退側壁と、一端が後退側壁の他端に接続されると共に後退側壁と平面視で所定の角度で傾斜する正面壁と、が形成された建物であって、側壁の一端において、平面視で側壁の延在方向に沿って突設された第一袖壁と、後退正面壁に突設され、第一袖壁に連接する庇と、を備える。
【0011】
本発明によれば、第一袖壁を備えることで、側壁側の隣地から後退正面壁までの直線距離を長くすることができる。従って、側壁側からの火炎の影響を、後退正面壁が受け難くなる。これにより、後退正面壁に開口部を設けやすくなり、建物の設計の自由度が向上する。また、後退正面壁に開口部を設けたとしても開口部が火炎の影響を受け難くなるため、高い防火性能を有する建物となる。また、庇を備えることで、建物の上方から下方に向かう輻射熱を庇によって遮ることができ、後退正面壁に開口部を設けやすくなる。
【0012】
また、庇の突設寸法は、庇と連接する第一袖壁の突設寸法よりも小さい、ことが好ましい。この場合には、後退正面壁に設けた開口部への採光を確保しつつ、防火性能を維持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い防火性能を有する建物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る建物の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1及び
図2(a)〜
図2(c)に示すように、建物1は、敷地Xに建てられた3階建ての建物である。建物1の各階の外周壁は、それぞれ、平面視で略矩形状に形成されている。建物1の各階の外周壁の外面は、例えば、ALC(軽量気泡コンクリート)等の防火性能を有する部材によって構成される。敷地Xは、道路Rに隣接している。なお、道路R側から建物1を見て、敷地Xの左側に隣地Yが隣接している。隣地Yにも図示しない建物が建てられている。また、建物1において、道路Rに面する側を建物1の正面とする。
【0017】
図1及び
図2(a)に示すように、建物1の1階の1階外周壁10は、隣地Y側且つ道路R側の隅角部が室内側に向けて矩形状に窪んでいる。1階外周壁10は、1階側壁11、1階後退正面壁12、1階後退側壁13、1階正面壁14、1階側壁18、及び、1階背面壁19を含んで構成される。
【0018】
1階側壁11は、隣地Y側に位置している。1階後退正面壁12は、一端が1階側壁11の一端(道路R側の端部)に接続される。1階後退正面壁12は、1階側壁11に対し平面視で90度の角度で傾斜する。1階後退側壁13は、一端が1階後退正面壁12の他端に接続される。1階後退側壁13は、1階後退正面壁12に対し平面視で90度の角度で傾斜する。
【0019】
1階正面壁14は、一端が1階後退側壁13の他端(道路R側の端部)に接続される。1階正面壁14は、1階後退側壁13に対し平面視で90度の角度で傾斜する。1階側壁11、1階後退正面壁12、1階後退側壁13、及び、1階正面壁14により、平面視で略W字状の壁面が形成される。
【0020】
1階側壁18は、1階側壁11と平行に配置され、一端が1階正面壁14の他端に接続される。1階背面壁19は、1階後退正面壁12及び1階正面壁14と平行に配置され、両端が、それぞれ、1階側壁18の他端と、1階側壁11の他端とに接続される。
【0021】
1階側壁11における道路R側の端部には、道路R側に向けて突出する1階第一袖壁11aが設けられる。即ち、1階第一袖壁11aは、平面視で1階側壁11の延在方向に沿って突設され、1階側壁11と1階第一袖壁11aとは、互いに一直線状に設けられる。
【0022】
1階後退正面壁12の全面又は一部には、建物1に出入りするための玄関(開口部)が設けられる。
【0023】
1階の道路Rの上部には、1階後退正面壁12、1階後退側壁13及び1階正面壁14から道路R側に向かって突出する1階庇15が設けられる。1階庇15は、2階の床や、2階ベランダ26の床によって構成される。1階庇15の軒裏は、防火性能を有する板材により軒天井が形成されている。
【0024】
1階庇15は、1階後退正面壁12、1階後退側壁13及び1階正面壁14から、1階第一袖壁11aの道路R側の端部の位置まで突出している。1階庇15の隣地Y側の端部は、1階第一袖壁11aに連接している。
【0025】
図1及び
図2(b)に示すように、建物1の2階の2階外周壁20は、隣地Y側且つ道路R側の隅角部が室内側に向けて矩形状に窪んでいる。2階外周壁20は、2階側壁21、2階後退正面壁22、2階後退側壁23、2階正面壁24、2階側壁28、及び、2階背面壁29を含んで構成される。
【0026】
2階側壁21は、隣地Y側に位置している。2階後退正面壁22は、一端が2階側壁21の一端(道路R側の端部)に接続される。2階後退正面壁22は、2階側壁21に対し平面視で90度の角度で傾斜する。2階後退側壁23は、一端が2階後退正面壁22の他端に接続される。2階後退側壁23は、2階後退正面壁22に対し平面視で90度の角度で傾斜する。
【0027】
2階正面壁24は、一端が2階後退側壁23の他端(道路R側の端部)に接続される。2階正面壁24は、2階後退側壁23に対し平面視で90度の角度で傾斜する。2階側壁21、2階後退正面壁22、2階後退側壁23、及び、2階正面壁24により、平面視で略W字状の壁面が形成される。
【0028】
2階側壁28は、2階側壁21と平行に配置され、一端が2階正面壁24の他端に接続される。2階背面壁29は、2階後退正面壁22及び2階正面壁24と平行に配置され、両端が、それぞれ、2階側壁28の他端と、2階側壁21の他端とに接続される。
【0029】
2階側壁21における道路R側の端部には、道路R側に向けて突出する2階第一袖壁21aが設けられる。即ち、2階第一袖壁21aは、平面視で2階側壁21の延在方向に沿って突設され、2階側壁21と2階第一袖壁21aとは、互いに一直線状に設けられる。
【0030】
2階正面壁24における隣地Y側の端部には、隣地Y側に向けて突出する2階第二袖壁24aが設けられる。即ち、2階第二袖壁24aは、平面視で2階正面壁24の延在方向に沿って突設され、2階正面壁24と2階第二袖壁24aとは、互いに一直線状に設けられる。
【0031】
2階第一袖壁21a、2階後退正面壁22、2階後退側壁23、及び、2階第二袖壁24aで囲まれる領域には、2階ベランダ26が形成される。2階ベランダ26の床は、1階の天井、及び、1階庇15によって構成される。
【0032】
2階後退正面壁22及び2階後退側壁23の全面又は一部には、2階ベランダ26へ出入りするための扉や、採光のための窓等の開口部が設けられる。2階第一袖壁21aの道路R側の端部と、2階第二袖壁24aとの間には、手すり27が設けられる。
【0033】
2階ベランダ26の上部の一部を覆うように、2階後退正面壁22から道路R側に向かって突出すると共に2階後退側壁23から隣地Y側に向かって突出する2階庇25が設けられる。2階庇25は、2階後退正面壁22から2階後退側壁23に亘って設けられており、平面視でL字状を成している。2階庇25の軒裏は、防火性能を有する板材により軒天井が形成されている。
【0034】
2階庇25は、2階後退側壁23から2階第二袖壁24aの隣地Y側の端部の位置まで突出している。また、2階庇25は、2階後退正面壁22から、2階第一袖壁21aの道路R側への突出寸法の半分程度の位置まで突出している。
【0035】
2階庇25の道路R側の端部は、2階第二袖壁24aに連接している。2階庇25の隣地Y側の端部は、2階第一袖壁21aに連接している。
【0036】
2階第一袖壁21aと1階第一袖壁11aとは、道路R側に向かって同じ位置まで突出している。2階後退正面壁22は、1階後退正面壁12よりも道路Rに対して後退した位置に設けられる。
【0037】
図1及び
図2(c)に示すように、建物1の3階の3階外周壁30は、隣地Y側且つ道路R側の隅角部が室内側に向けて矩形状に窪んでいる。3階外周壁30は、3階側壁31、3階後退正面壁32、3階後退側壁33、3階正面壁34、3階側壁38、及び、3階背面壁39を含んで構成される。
【0038】
3階側壁31は、隣地Y側に位置している。3階後退正面壁32は、一端が3階側壁31の一端(道路R側の端部)に接続される。3階後退正面壁32は、3階側壁31に対し平面視で90度の角度で傾斜する。3階後退側壁33は、一端が3階後退正面壁32の他端に接続される。3階後退側壁33は、3階後退正面壁32に対し平面視で90度の角度で傾斜する。
【0039】
3階正面壁34は、一端が3階後退側壁33の他端(道路R側の端部)に接続される。3階正面壁34は、3階後退側壁33に対し平面視で90度の角度で傾斜する。3階側壁31、3階後退正面壁32、3階後退側壁33、及び、3階正面壁34により、平面視で略W字状の壁面が形成される。
【0040】
3階側壁38は、3階側壁31と平行に配置され、一端が3階正面壁34の他端に接続される。3階背面壁39は、3階後退正面壁32及び3階正面壁34と平行に配置され、両端が、それぞれ、3階側壁38の他端と、3階側壁31の他端とに接続される。
【0041】
3階側壁31における道路R側の端部には、道路R側に向けて突出する3階第一袖壁31aが設けられる。即ち、3階第一袖壁31aは、平面視で3階側壁31の延在方向に沿って突設され、3階側壁31と3階第一袖壁31aとは、互いに一直線状に設けられる。
【0042】
3階正面壁34における隣地Y側の端部には、隣地Y側に向けて突出する3階第二袖壁34aが設けられる。即ち、3階第二袖壁34aは、平面視で3階正面壁34の延在方向に沿って突設され、3階正面壁34と3階第二袖壁34aとは、互いに一直線状に設けられる。
【0043】
3階第一袖壁31a、3階後退正面壁32、3階後退側壁33、及び、3階第二袖壁34aで囲まれる領域には、3階ベランダ36が形成される。3階ベランダ36の床は、2階の天井、及び、2階庇25によって構成される。
【0044】
3階後退正面壁32及び3階後退側壁33の全面又は一部には、3階ベランダ36へ出入りするための扉や、採光のための窓等の開口部が設けられる。3階第一袖壁31aの道路R側の端部と、3階第二袖壁34aとの間には、手すり37が設けられる。
【0045】
3階ベランダ36の上部の一部を覆うように、3階後退正面壁32から道路R側に向かって突出すると共に3階後退側壁33から隣地Y側に向かって突出する3階庇35が設けられる。3階庇35は、3階後退正面壁32から3階後退側壁33に亘って設けられており、平面視でL字状を成している。3階庇35の軒裏は、防火性能を有する板材により軒天井が形成されている。
【0046】
3階庇35は、3階後退側壁33から3階第二袖壁34aの隣地Y側の端部の位置まで突出している。また、3階庇35は、3階後退正面壁32から、3階第一袖壁31aの道路R側への突出寸法の半分程度の位置まで突出している。
【0047】
3階庇35の道路R側の端部は、3階第二袖壁34aに連接している。3階庇35の隣地Y側の端部は、3階第一袖壁31aに連接している。また、3階庇35は、3階の屋根(建物1の屋根)に連接している。
【0048】
3階第一袖壁31aは、3階側壁31の道路R側の端部から、2階第一袖壁21aの道路R側の端部よりも道路R側に対して後退した位置まで突出している。3階後退正面壁32は、2階後退正面壁22よりも道路Rに対して後退した位置に設けられる。
【0049】
次に、建物1の3階を例として、3階後退正面壁32及び3階後退側壁33と、隣地Y及び道路Rとの位置関係について説明する。ここで、3階後退正面壁32や3階後退側壁33に開口部を設ける場合には、隣地Yや道路Rからの火炎を避けるため、3階後退正面壁32及び3階後退側壁33と、隣地Y及び道路Rとの直線距離が所定の距離以上離れていることが望ましい。これは、例えば、建築基準法等の法令においても規定されている。
【0050】
本実施形態では、一例として、隣地Yからの直線距離が5m以内の位置に3階後退正面壁32及び3階後退側壁33が存在しないように、及び、道路Rの道路中心線R1からの直線距離が5m以内の位置に3階後退正面壁32及び3階後退側壁33が存在しないように、各部を配置する構成について説明する。
【0051】
図3に示すように、3階後退側壁33を、隣地Yとの距離が5m以上となる位置に設ける。3階後退正面壁32を、道路中心線R1からの距離が5m以上となる位置に設ける。
【0052】
また、隣地Yと敷地Xとの境界線上の各位置から3階後退正面壁32へ向かって5mの直線L1を複数本引いたときに、直線L1が3階後退正面壁32と重なることがないように、3階第一袖壁31aにおける、3階側壁31から道路R側への突出寸法を設定する。直線L1と3階後退正面壁32とが重ならない場合には、3階後退正面壁32と隣地Yとが直線距離で5m以上離間されている。
【0053】
例えば、3階第一袖壁31aが無い場合や短い場合には、隣地Yと敷地Xとの境界線から引いた5mの直線L1が3階後退正面壁32と重なる。直線L1と3階後退正面壁32とが重なる場合には、3階後退正面壁32と隣地Yとが直線距離で5m以上離間していない。
【0054】
同様に、道路中心線R1上の各位置から3階後退側壁33へ向かって5mの直線L2を複数本引いたときに、直線L2が3階後退側壁33と重なることがないように、3階第二袖壁34aにおける、3階正面壁34から隣地Y側への突出寸法を設定する。直線L2と3階後退側壁33とが重ならない場合には、3階後退側壁33と道路中心線R1とが直線距離で5m以上離間されている。
【0055】
例えば、3階第二袖壁34aが無い場合や短い場合には、道路中心線R1から引いた5mの直線L2が3階後退側壁33と重なる。直線L2と3階後退側壁33とが重なる場合には、3階後退側壁33と道路中心線R1とが直線距離で5m以上離間していない。
【0056】
なお、1階及び2階についても、3階の考え方と同様に、離間させたい隣地Yとの距離や道路中心線R1との距離に基づいて、1階後退正面壁12、1階後退側壁13、2階後退正面壁22、及び、2階後退側壁23の配置位置を設定すると共に、1階第一袖壁11a、2階第一袖壁21a、及び、2階第二袖壁24aの突出寸法を設定する。
【0057】
また、1階においても、離間させたい1階後退側壁13と道路中心線R1との距離に応じて、2階の2階第二袖壁24a等と同様に、1階正面壁14の隣地Y側の端部から隣地Y側へ向けて突設された袖壁を設けることができる。
【0058】
本実施形態は以上のように構成され、第一袖壁11a,21a、31aと第二袖壁24a、34aとを設けることで、隣地Y側や道路R側から後退正面壁12、22、32及び後退側壁13、23、33に向かう火炎を遮ることができる。また、第一袖壁11a,21a、31aを設けることで、隣地Yから後退正面壁12、22、32までの直線距離を長くすることができる。また、第二袖壁24a、34aを設けることで、道路R側から後退側壁23,33までの直線距離を長くすることができる。従って、隣地Y側や道路R側からの火炎の影響を、後退側壁13、23、33及び後退正面壁12、22、32が受け難くすることができる。
【0059】
これにより、後退側壁13、23、33及び後退正面壁12、22、32に窓等の開口部を設ける際に、防火性能を有する窓等を選ぶ必要がなくなり、建物の設計の自由度が向上する。また、後退側壁13、23、33及び後退正面壁12、22、32に開口部を設けたとしても開口部が火炎の影響を受け難くなるので、高い防火性能を有する建物1となる。
【0060】
2階庇25及び3階庇35を設けることで、建物1の上方から下方に向かう輻射熱を遮ることができ、後退正面壁22,32及び後退側壁23,33に、より一層開口部を設けやすくなる。
【0061】
2階庇25及び3階庇35の道路R側への突設寸法は、それぞれ、2階第一袖壁21a及び3階第一袖壁31aの道路R側への突設寸法よりも小さい。これにより、後退正面壁22,32及び後退側壁23,33に設けた開口部から室内への採光を確保しつつ、防火性能を維持することができる。なお、火炎や対流炎は下方に向かうことが無く、且つ、回り込みもないので、2階庇25及び3階庇35では上方から下方に向かって直線的に進む輻射熱のみを遮ればよく、突設寸法を小さくしても、防火性能に問題が生じない。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、建物1の1階のように、2階及び3階においても2階第二袖壁24a及び3階第二袖壁34aを設けない構成としてもよい。この場合であっても、2階第一袖壁21a及び3階第一袖壁31aと、2階庇25及び3階庇35とによって、後退正面壁22、32及び後退側壁23、33が、隣地Y側や道路R側からの火炎の影響を受け難くすることができる。このため、後退正面壁22、32及び後退側壁23、33に窓等の開口部を容易に設けることができる。
【0063】
例えば、3階において、3階庇35を3階後退正面壁32から3階後退側壁33に亘って設けるものとしたが、3階後退正面壁32のみから道路R側に向かって3階庇を突設し、この3階庇を3階第一袖壁31aに連接させる構成であってもよい。同様に、3階後退側壁33のみから隣地Y側に向かって3階庇を突設し、この3階庇を3階第二袖壁34aに連接させる構成であってもよい。同様に、2階についても、2階後退正面壁22及び2階後退側壁23の一方のみに突設された構成の2階庇を設けてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、一例として、3階後退正面壁32等の位置を道路中心線R1から5m離し、3階後退側壁33の位置を隣地Yから5m離すものとしたが、これらは一例であり、各種の条件に応じて、離間させる距離を設定することができる。また、例えば、建物1の階層毎に離間させる距離を変えてもよい。
【0065】
また、建物1の構造は、鉄骨造や木造など、適宜の構造を適用することができる。建物1の各階の内部の構造については、適宜の間取りを適用することができる。
【0066】
また、防火性能を有する窓等であれば、建物1の1階側壁11、2階側壁21、及び、3階側壁31等に窓等を設けてもよい。