(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
素子領域が前記半導体基板上に素子分離領域により画成されており、前記放熱構造の下端は前記半導体基板の表面のうち、前記素子領域および素子分離領域よりなる領域の外でコンタクトすることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか一項記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態による電子装置10Aの構成を示す断面図である。
【0013】
図示の例では電子装置10Aは携帯電話最終出力段などで使われGHz帯域で動作する大出力回路を構成し、配線基板11と、配線基板11上にフリップチップ実装された半導体チップ21とを含む。
【0014】
図1を参照するに、半導体チップ21は例えばp型シリコン基板よりなり、外側のn型ウェル21NWとともにトリプルウェル構造21TWを形成するp型ウェル21PW中にSTI型の素子分離領域21Iにより画成されたp型シリコンよりなる素子領域21Aを含み、半導体チップ21上には素子領域21Aに、例えばシリコン酸化膜よりなるゲート絶縁膜22を介して例えばn+型のポリシリコンゲート電極23が形成されている。
【0015】
ゲート電極23はその両側にシリコン酸化膜あるいはシリコン窒化膜よりなる側壁絶縁膜23SWを形成されており、また素子領域21Aでは半導体チップ21中、ゲート電極23の両側にn+型のソース領域21aおよびn+型のドレイン領域21bがそれぞれ形成されている。ポリシリコンゲート電極23は、ゲート絶縁膜22およびソース領域21a、ドレイン領域21bとともに、素子領域21Aにおいて活性素子となるMOSトランジスタを構成する。
【0016】
半導体チップ21上には、例えばシリコン酸化膜よりなる層間絶縁膜24がゲート電極23を覆って形成されており、層間絶縁膜24上にはさらに層間絶縁膜25〜28が順次形成されている。層間絶縁膜24〜28はそれぞれ配線層M1〜M5を含み、半導体チップ21上において多層配線構造を形成する。
【0017】
一例ではゲート電極23は全体で10mmのゲート幅と130mのゲート長を有し、ゲート絶縁膜22はシリコン熱酸化膜よりなり、例えば4nmの膜厚に形成されている。この場合、ゲート電極23はゲート絶縁膜22およびソース領域21a、ドレイン領域21bとともに、GHz帯域で1W程度の大電力を出力できる出力トランジスタ11Trとなる。ただし本実施形態においてゲート電極23、ゲート絶縁膜22およびソース領域21a、ドレイン領域21bが形成するトランジスタ11Trは、このような高周波帯域ないしGHz帯域で動作する大電力トランジスタに限定されるものではなく、例えば超高速演算素子を構成するゲート長が45nmを切るような超高速トランジスタであってもよい。この場合には、ゲート絶縁膜22は例えば膜厚が1nm前後のSiON膜より構成され、また多層配線構造を構成する層間絶縁膜24〜28は、いわゆるLow−K膜により構成される。
【0018】
なおトランジスタ11Trが大電力トランジスタである場合、10mmのゲート幅の単一のトランジスタの代わりに半導体チップ21上にゲート幅が5mmのトランジスタを二個隣接して、あるいはゲート幅が2.5mmのトランジスタを4個隣接して形成し、これらのトランジスタを並列接続するように構成してもよい。
【0019】
再び
図1を参照するに、層間絶縁膜24は、ソース領域21aにビアプラグ24sにより電気的に接続されるソース配線パターン24Sおよびドレイン領域21bにビアプラグ24dにより電気的に接続されるドレイン配線パターン24Dを、配線層M1の一部として含む。層間絶縁膜25は、ソース配線パターン24Sにビアプラグ25sにより電気的に接続されるソース配線パターン25Sおよびドレイン配線パターン24Dにビアプラグ25dにより電気的に接続されるドレイン配線パターン25Dを、配線層M2の一部として含む。また層間絶縁膜26は、ソース配線パターン25Sにビアプラグ26sにより電気的に接続されるソース配線パターン26Sおよびドレイン配線パターン25Dにビアプラグ26dにより電気的に接続されるドレイン配線パターン26Dを、配線層M3の一部として含む。層間絶縁膜27は、ソース配線パターン26Sにビアプラグ27sにより電気的に接続されるソース配線パターン27Sおよびドレイン配線パターン26Dにビアプラグ27dにより電気的に接続されるドレイン配線パターン27Dを、配線層M4の一部として含む。さらに層間絶縁膜28は、ソース配線パターン27Sにビアプラグ27sにより電気的に接続されるソース接続パッド28Sおよびドレイン配線パターン27Dにビアプラグ27dにより電気的に接続されるドレイン接続パッド28Dを、配線層M5の一部として含む。
【0020】
最上層の層間絶縁膜28上にはポリイミド膜やシリコン窒化膜よりなるパッシベーション膜29が形成され、パッシベーション膜29にはソース接続パッド28Sおよびドレイン接続パッド28Dをそれぞれ露出する開口部29A,29Bが形成されている。ソース接続パッド28Sおよびドレイン接続パッド28Dは、開口部29A,29Bに形成されたハンダバンプ30A,30Bを介して、配線基板11上の接地配線パターン11Gおよび信号配線パターン11Sに、それぞれ電気的および機械的に結合される。図示の例ではソース配線パターン24S,25S,26S,27Sおよびソース接続パッド28Sは、それぞれのビアプラグ24s〜28sとともに銅(Cu)より構成され、デュアルダマシン法により形成されている。同様にドレイン配線パターン24D,25D,26D,27Dおよびドレイン接続パッド28Dも、それぞれのビアプラグ24d〜28dとともに銅(Cu)より構成され、デュアルダマシン法により形成されている。このためソース配線パターン24S,25S,26S,27Sおよびソース接続パッド28S、さらにドレイン配線パターン24D,25D,26D,27Dおよびドレイン接続パッド28Dは、それぞれの上面が対応する層間絶縁膜24〜28の上面に実質的に一致するという形状的な特徴を有している。
【0021】
多層配線構造のうち比較的下層の層間絶縁膜、すなわち層間絶縁膜24〜26中に形成された配線パターン24S〜26Sおよび24D〜26D、およびビアプラグ24s〜26sおよび24d〜26dは、より上層の層間絶縁膜、すなわち層間絶縁膜27,28中に形成された配線パターン27S〜28Sおよび27D〜28D、およびビアプラグ27s〜28sおよび27d〜28dに比べてより厳しい設計ルールで形成されている。
【0022】
さらに
図1の電子装置10Aでは層間絶縁膜24〜28中、半導体チップ21のうちトリプルウェル21TWの外側の放熱領域21Bに対応して、Cuよりなる放熱パッド24H,25H,26H,27H,28Hがそれぞれ配線層M1〜M5の一部として形成されており、それぞれのCu放熱パッド24H〜28Hは、下方に延在するCuビアプラグ24h〜28hともども、デュアルダマシン法により形成されている。すなわちCuパッド24Hには下方に延在するCuビアプラグ24hが形成されており、Cuパッド25Hには下方に延在するCuビアプラグ25hが形成されている。Cuパッド26Hには下方に延在するCuビアプラグ26hが形成されており、Cuパッド27Hには下方に延在するCuビアプラグ27hが形成されている。さらにCuパッド28Hには下方に延在するCuビアプラグ28hが形成されている。先にも述べたようにCuパッド24H〜28Hは、下方に延在するCuビアプラグ24h〜28hとともにデュアルダマシン法で形成されるため、Cuパッド24H〜28Hも、それぞれの上面が対応する層間絶縁膜24〜28の上面に実質的に一致するという形状的な特徴を有している。
【0023】
Cuビアプラグ28hはその下のCuパッド27Hの表面にコンタクトし、Cuビアプラグ27hはその下のCuパッド26の表面にコンタクトする。Cuビアプラグ26hはその下のCuパッド25Hの表面にコンタクトし、Cuビアプラグ25hはその下のCuパッド24の表面にコンタクトする。さらにCuビアプラグ24hはその下の半導体チップ21の表面にコンタクトする。このように
図1の構成では放熱領域21Bにおいて半導体チップ21の表面から最上層の層間絶縁膜28まで下から順に、Cuよりなるビアプラグ24h,パッド24H,ビアプラグ25h,パッド25H,ビアプラグ26h,パッド26H,ビアプラグ27h,パッド27H,ビアプラグ28hおよびパッド28Hよりなる放熱構造20Hが、半導体チップ21に直接に接して形成される。
【0024】
さらに最上層のCuパッド28Hに対応してパッシベーション膜29中に開口部29Hが形成され、開口部29Hにおいてパッド28Hがハンダバンプ30Hを介して、配線基板11上の導体パターン11Hに接続される。ここで導体パターン11および配線基板11はヒートシンクとして機能し、その結果、トランジスタ11Trで発生した熱は、半導体チップ21から放熱構造20Hおよびハンダバンプ30Hを通って配線基板11上の導体パターン11Hへと逃がされる。半導体チップ21は300Kで149W・m
−1・K
−1の優れた熱伝導率を有し、トランジスタ11Trで発生した熱は
図1中に矢印Aで示したように半導体チップ21を通って速やかに放熱構造20Hへと逃がされる。放熱構造20Hを構成するCuの熱伝導率は、300Kでシリコンよりもさらに大きい401W・m
−1・K
−1の値を有している。また、放熱構造を構成するビアプラグは各層間絶縁膜24〜28中に平面視で行列状に高密度で配列されている。このため放熱構造20Hの熱抵抗により放熱が妨げられることはない。一例では各層間絶縁膜24〜28においてビアプラグは全体として、平面視においてそれぞれのパッドの50%〜60%の面積を占有する。ただしパッドとビアプラグの平面視における占有面積の関係は、上記の値に限定されるものではない。
【0025】
さらに
図1の放熱構造ではパッド24H,25H,26H,27H,28Hが半導体チップ21の主面に対し垂直方向に整列して形成され、それぞれのビアプラグも上下のパッドを主面に垂直方向に接続するように形成されていることに注意すべきである。このような構成の結果、放熱構造20Hはトランジスタ11Trで発生した熱を、最短距離で導体パターン11Hへと放熱することが可能となり、放熱構造20Hの熱抵抗がさらに減少している。
【0026】
このように本実施形態の電子装置10によれば、放熱構造20Hを半導体チップ21の表面に接して形成することにより、フリップチップ実装でありながら、効率的な放熱が可能となる。
【0027】
さらに
図1の構成では、配線基板11上の導体パターン11Hは、シリコン基板21の電位が接地電位となるように電気的には接地されているが、隣接して形成された接地パターン11Gとは別に設けられており、別の経路で接地されている。このように放熱経路を構成する導体パターン11Hを信号伝送系の一部を構成する接地パターン11Gと分離させる構成により、シリコン基板11中の雑音の信号伝送系への混入を回避することが可能となる。
【0028】
図2および
図3は、
図1の電子装置10AをGHz帯域の増幅器として使った場合の出力特性および放熱特性を、
図4に示す比較対照例による電子装置110のものと比較して示すグラフである。
図2および
図3中、「実施例」とあるのは
図1の電子装置10Aを、「比較例」とあるのは
図4の電子装置110を示している。
【0029】
まず
図4を参照するに、比較対照例の電子装置110は
図1の電子装置10Aと同様な構成を有するが、
図1における放熱構造20Hが省略されている点で相違している。
図4中、先に説明した部分には対応する参照符号を付し、説明は省略する。
【0030】
図2において縦軸は増幅器の利得を、横軸は得られる出力信号電力を示している。
【0031】
図2を参照するに、本実施形態による電子装置10Aの方が同じ利得で比較した場合、より大きな出力電力を取り出すことができ、また両者の差が、出力信号電力を増大させるほど拡大することがわかる。
【0032】
また
図3において縦軸は電子装置10Aを構成するシリコンチップの温度(IC温度)を、横軸は得られる出力信号電力を示している。
【0033】
図3を参照するに、チップ温度は比較例の場合、出力信号電力が増大するにつれて急速に上昇するのに対し、
図1の電子装置10Aにおいて放熱構造20Hを省略した場合、出力信号電力の増加とともにIC温度が急速に増大するのに対し、これを設けた
図1の実施形態による電子装置10Aの場合、温度の上昇は緩やかであり、両者の差は、出力信号電力が増大するにつれて拡大することがわかる。例えば出力信号電力が26.5dBである場合に比較例だとシリコンチップの温度が200℃に達するのに対し、本実施形態の電子装置ではシリコンチップの温度が110℃に抑制される。
【0034】
このように
図1の電子装置10Aでは、放熱構造20Hをシリコン基板21の表面に直接に接するように形成することにより、トランジスタ11Trで発生した熱を系外、すなわち半導体チップ外へと、効率的に排熱することが可能となる。
【0035】
図5(A)は
図1の放熱構造20Hの平面図、また
図5(B)は放熱構造20Hを構成するCuパッドのうち、最上層のCuパッド28Hを除くCuパッド24H〜27H、例えばCuパッド24H、および当該Cuパッドから下方に延在するビアプラグ24hを示す平面図である。
図5(B)は
図5(A)中、破線で囲んだ部分の拡大図になっている。
【0036】
図5(A)を参照するに、図示の平面図は最上層のCuパッド28Hのみを図示しており、その下のCuパッドは見えていない。これは、
図1の実施形態ではCuパッド28Hの下のCuパッド24H〜27Hも最上層のCuパッド28Hと同一の寸法および形状で、シリコン基板21の主面に垂直方向に整列して形成されている事情に対応している。図示の例では、Cuパッド24H〜28Hは、いずれも一辺が例えば100μmの長さL
PADの正方形形状に形成されている。ただし本実施形態においてCuパッド24H〜28Hは必ずしも同一寸法の正方形形状である必要はなく、熱抵抗が増加せず多層配線構造中の他の配線、例えば信号配線や電源配線などの自由度を妨げない限り、それぞれの層間絶縁膜で寸法やサイズが変化してもかまわない。
【0037】
図5(B)を参照するに、最上層のCuパッド28Hを除いたCuパッド24H〜27Hには一辺の長さがLの正方形断面のビアプラグが、同じ長さLのピッチで行列状に繰り返し形成されているのがわかる。長さおよびピッチLは、下層のCuビアプラグ24h〜26hでは例えば2μmの値に設定され、上層のCuビアプラグ27hおよび28hでは例えばその二倍の4μmやその四倍の8μmなど、より大きな値に設定される。
【0038】
さらに
図5(B)の平面図中、最上層を除くCuパッドの中央部には一辺が例えば12μm程度の大きな開口部OPが形成されており、開口部OPはそれぞれの層間絶縁膜、例えばCuパッド24Hの場合では層間絶縁膜24、を構成する例えばシリコン酸化膜により充填されている。
図5(B)の平面図中、太い破線で囲んだ部分Repは当該Cuパッドの全面にわたり繰り返し形成されており、その結果、例えばCuパッド24Hの場合、開口部OPはCuパッド24Hの全体にわたり繰り返し形成される。Cuパッド25H〜27Hも同様である。
【0039】
このように大きな面積で形成されるCuパッド中にシリコン酸化膜で充填された開口部OPを繰り返し、一様に形成しておくことにより、Cuパッド24H〜27Hおよびビアプラグ24h〜27hをダマシン法やデュアルダマシン法で形成する際に、Cuパッドの化学機械研磨(CMP)工程に伴って発生しやすいディッシングを抑制することができ、それぞれのCuパッド、例えばCuパッド24Hと、その直上のCuパッド、例えばCuパッド25Hから下方に延在するビアプラグ25hとの間に、確実な機械的かつ熱的な結合を実現することができる。このようなディッシングを抑制するに当たり、一のCuパッド中における開口部OPは、大きすぎると放熱構造20Hの熱抵抗の増大を招き小さすぎるとディッシングを生じてやはり熱抵抗の増加を招く。このため、開口部OPの一辺の寸法は、層のレベルで異なるが、下層部では1μm程度、上層部では15μm程度とすることができる。また放熱構造20Hの熱抵抗を最小化するため、熱抵抗となる開口部OPが、放熱構造20H中において半導体チップ21の主面に垂直方向に整列するように、それぞれのCuパッド24H〜27Hを形成するのが望ましい。なお最上層のCuパッド28Hにおいては、全面にビアプラグ28hが形成されている。
【0040】
図6は本実施形態の電子装置10Aの一変形例による電子装置10A
1の構成を示す、
図1と同様な断面図である。図中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0041】
図6を参照するに、本変形例では電子装置10Aにおいて多層配線構造を利用して形成した放熱構造20Hの代わりに、単一の金属ピラーよりなる放熱構造20H
1を、前記半導体チップ21とハンダバンプ30Hとの間に、放熱構造20H
1の下端が半導体チップ21を構成するシリコン基板の表面に直接に接し、また上端がハンダバンプ30Hに直接に接するように形成している。
【0042】
かかる構成によっても
図6中に矢印Aで示した放熱路が確保され、電子装置10と同様な効率的な放熱が可能となる。
【0043】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態による電子装置10Bの構成を示す断面図である。ただし
図7中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0044】
図7を参照するに、本実施形態ではソース配線パターン24Sおよび25Sを放熱構造20Hに接続することにより、
図1の構成において接地されるソースパターン24S〜28Sおよびビアプラグ24s〜28sを、同じく接地される放熱構造20Hと兼用しており、これにより半導体チップの面積を縮小している。またこれに伴って、配線基板11においても、接地パターン11Gと導体パターン11Hとが同一の導体パターン11H/11Gにより構成され、Cuパッド28Hが導体パターン11H/11Gに、ハンダバンプ30Hを介して接続される。これに伴い
図7の構成では、
図1における放熱構造20Hとは独立したソース配線パターン26S〜28Sおよびビアプラグ26s〜28sが省略され、さらにハンダバンプ30Aが省略されている。
【0045】
図7の構成では、多層配線構造を構成するソース配線パターン24Sが層間絶縁膜24中を延在し、同じ配線層M1中のCuパッド24Hに接続されており、またソース配線パターン25Sが層間絶縁膜25中を延在し、同じ配線層M2中のCuパッド25Hに接続されていることに注意すべきである。このような構成により、トランジスタ11Trで発生した熱は、矢印Aで示した半導体チップ21を通る経路の他に、矢印Bで示したビアプラグ24sおよびソースパターン24Sや、さらにビアプラグ25sおよびソースパターン25Sを通って放熱構造20Hに至る経路に沿って逃がされ、やはり放熱構造20Hにより、フリップチップ構成でありながら効率的な放熱が可能となる。
【0046】
本実施形態ではこのように半導体チップ21に直接に接する放熱構造20Hが接地配線パターンを兼用するため、半導体チップ21中の雑音が配線基板11の接地配線パターン11Gに混入する可能性はある。しかしトランジスタ11Trが非常に大出力のものであり、半導体チップ21中の雑音レベルが信号レベルに比べて十分に小さいような場合には、このような構成であっても、実用上の問題は生じない。
【0047】
電気的な観点からは、放熱構造20Hに接続するソース配線パターンは、
図1におけるソース配線パターン24S〜28Sのいずれでもよいが、放熱の観点からは、熱がなるべく速やかに熱抵抗の低い放熱構造20Hに逃がされるように、例えば
図7に示すように最下層あるいはなるべく下層のソース配線パターン24Sあるいは25Sを放熱構造20Hに接続するのが好ましい。
【0048】
本実施形態ではこのように放熱構造20Hが高周波回路を構成する接地配線の一部を構成するが、例えば最下層のCuパッド24Hは半導体チップ21の表面にCuビアプアラグ24hにより直接にかつ周密に接続されているため、Cuパッド24Hとp型半導体チップ21との間に浮遊容量が生じることはなく、かかる浮遊容量による電子装置10の電気特性の劣化を効果的に回避できる。
【0049】
図8は、
図7の電子装置11Bの一変形例による電子装置11Cの構成を示す断面図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0050】
図8を参照するに、本変形例では半導体チップ21の表面のうち領域21Bにn型ウェル20NWが形成され、p型半導体チップ21およびn型ウェル20NWよりなるダブルウェル構造上に先に説明した放熱構造20Hが形成されている。本変形例によれば、ダブルウェル構造に伴う空乏層によりn型ウェル20NWが半導体チップ21から電気的に分離され、半導体チップ21中を伝搬する雑音が放熱構造20Hに混入し、配線基板11上の信号処理系に影響与えるのを回避することが可能となる。
【0051】
図9は
図8の電子装置11Cのさらに別の変形例による電子装置11Dの構成を示す断面図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0052】
図9を参照するに、本変形例ではn型ウェル20NWの内側にp型ウェル20PWが形成され、p型半導体チップ21、n型ウェル20NWおよびp型ウェル20PWよりなるトリプルウェル構造上に先に説明した放熱構造20Hが形成されている。本変形例によれば、ダブルウェル構造に伴う空乏層によりn型ウェル20NWが半導体チップ21から電気的に分離され、半導体チップ21中を伝搬する雑音が放熱構造20Hに混入し、配線基板11上の信号処理系に影響与えるのを回避することが可能となる。
【0053】
図10は
図7の電子装置10Bの別の変形例による電子装置10Eを示す断面図であり、ソース領域21aを延長し、放熱構造20Hをかかるソース領域21aに直接に当接させている。またこれに伴ってn型ウェル21NWおよびp型ウェル21PWが延長され、
図7の構成におけるウェル20NWおよび20PWを兼用している。
【0054】
かかる構成ではソース領域21aから熱が直接に放熱構造20Hを介して放熱されるため、冷却の効率がさらに向上する。
【0055】
[第3の実施形態]
図11(A)〜(C)は、半導体チップ21の表面上に形成された様々な電力増幅器のレイアウトを示す平面図である。
【0056】
図11(A)を参照するに、電力増幅器は例えば全体のゲート幅が10mmとなるポリシリコンゲート電極を、ゲート幅が5mmのブロックBK1とゲート幅が同じく5mmのブロックBK2に2分割し、各々のブロックBK1,BK2に、
図12の平面図にレイアウトを示すような、各々が14個のMOSトランジスタTr1〜Tr14を含むアンプアレイAAを4個ずつ、並べて配列した構成を有する(N=2)。
【0057】
また
図11(B)の例では電力増幅器は、例えば全体のゲート幅が10mmとなるポリシリコンゲート電極を、各々ゲート幅が2.5mmのブロックBK1〜BK4に4分割し、各々のブロックBK1〜BK4に、
図12の平面図にレイアウトを示すような、各々が14個のMOSトランジスタTr1〜Tr14を含むアンプアレイAAを2個ずつ、並べて配列した構成を有する(N=4)。
【0058】
また
図11(C)の例では電力増幅器は、例えば全体のゲート幅が10mmとなるポリシリコンゲート電極を、各々ゲート幅が1.25mmのブロックBK1〜BK8に8分割し、各々のブロックBK1〜BK8に、
図12の平面図にレイアウトを示すような、各々が14個のMOSトランジスタTr1〜Tr14を含むアンプアレイAAを1個ずつ配列した構成を有する(N=8)。
【0059】
図11(A)の構成ではブロックBK1とブロックBK2の間、およびブロックBK1の側面のうちブロックBK2とは反対側の側面、さらにブロックBK2の側面のうちブロックBK1とは反対側の側面に沿って、先に
図7〜
図9で説明した放熱構造20Hが形成されており、各々の放熱構造20Hは、
図12に示すように、対応するMOSトランジスタのソース配線パターン24Dに電気的かつ熱的に接続されている。
【0060】
図12を参照するに、半導体チップ21上にはSTI型の素子分離領域21Iを構成するシリコン酸化膜領域が帯状に形成されており、素子分離領域21I中には各々素子領域21Aに対応する素子領域21A
1および21A
2が平行に形成されている。
【0061】
さらに半導体チップ21上には多数の櫛歯を有する櫛歯状のポリシリコンパターン23Pが形成されており、ポリシリコンパターン23Pのそれぞれの櫛歯がゲート電極23を形成し、多数の櫛歯が素子領域21A
1あるいは21A
2を横切る位置に、MOSトランジスタTr1〜Tr14がそれぞれ形成される。
【0062】
半導体チップ21上にはさらにポリシリコンパターン23Pよりも上の配線層、例えば配線層M1に、素子領域21A
1あるいは21A
2を、ゲート電極23を構成するポリシリコン櫛歯パターンの第1の側で横切る多数の櫛歯を有する櫛歯状のドレイン配線パターン24Mが形成され、ドレイン配線パターン24Mの各々の櫛歯は素子領域21A
1あるいは21A
2のドレイン領域にビアプラグ24dを介して接続され、ドレイン配線パターン24Dを構成する。
【0063】
さらに半導体チップ21上にはポリシリコンパターン23Pよりも上の配線層、例えば配線層M1あるいはM2に、素子領域21A
1あるいは21A
2を、ポリシリコンパターン24Pにおいて各々の櫛歯を構成するゲート電極23の第2の側、すなわち当該ゲート電極23に隣接するドレイン配線パターン24Dとは反対の側、において横切るソース配線パターン24Sが形成され、それぞれのソース配線パターン24Sは、対応する放熱構造20Hに接続されている。
【0064】
かかる構成によれば、それぞれのトランジスタTr1〜Tr14で発生した熱は、ソース配線パターン24Sから対応する放熱構造20Hへと逃がされ、半導体チップの過大な昇温が回避される。その際本実施形態では放熱構造20Hが半導体チップ21の表面に直接に接して形成されているため放熱構造20Hの放熱効率が優れており、必ずしも
図11(C)に示すように一つのアンプアレイAA毎に放熱構造20Hを形成する必要はなく、
図11(A)あるいは(B)に示すように複数のアンプアレイAAによりブロックBK1〜BK2あるいはBK1〜BK4を形成し、それぞれのブロックについて放熱構造20Hを形成することで、半導体チップ上における電力増幅器のサイズを縮小することが可能となる。
【0065】
[第4の実施形態]
図13は、
図7〜
図9の実施形態で説明した構成の電子装置により電力増幅器を構成し、かかる電力増幅器を、半導体チップ21よりなる半導体チップ21Chip上に、周辺回路装置とともに集積化した半導体集積回路装置40を示す平面図である。
【0066】
半導体集積回路装置40は例えば
図14に示すブロック図で表される無線装置50を構成するものであり、無線装置50はベースバンド回路50Aとトランシーバ50B、さらに電力増幅器50Cおよびデュプレクサ50Dを有している。無線装置50においては、ベースバンド回路50Aにおいて形成されたベースバンド信号がトランシーバ50BによりGHz帯域の高周波信号に変換され、電力増幅器50Cにて増幅された後、デュプレクサ50Dを通ってアンテナ50Eへと、大電力高周波信号の形で送られる。またアンテナ50Eにて受信された微小な高周波信号はデュプレクサ50Dを通ってトランシーバ50Bに送られ、ベースバンド信号に変換された後、ベースバンド回路50Aへと送られる。
【0067】
図13の平面図を参照するに、半導体チップ21Chip上には
図14のベースバンド回路50A、トランシーバ50Bおよび電力増幅器50Cにそれぞれ対応するベースバンド回路部40A、トランシーバ部40Bおよび電力増幅部40Cが形成されており、電力増幅部40Cの周囲には、先に説明した放熱構造20Hが、電力増幅部40Cを囲むように多数形成されている。
【0068】
かかる構成の半導体集積回路装置40では、電力増幅部40Cで発生した熱は半導体集積回路装置40がフリップチップ実装された配線基板(図示せず)に効率的に逃がされ、半導体チップ21Chipの昇温が抑制される。また
図13の構成では先にも述べたように放熱構造20Hが電力増幅部40Cを囲むように多数形成されているため、電力増幅部40Cとベースバンド回路部40Aやトランシーバ部40Bなどの周辺回路部との間にはかならず放熱構造20Hが介在し、電力増幅器40Cで発生した熱がこれらのより低周波数で動作する周辺回路部に流れ、誤動作などの悪影響を引き起こす問題が回避される。
【0069】
なお以上の各実施形態で説明した放熱構造20Hは、携帯電話などの無線装置に適用が限定されるものではなく、スーパーコンピュータの演算装置(CPU)など、フリップチップ実装される様々な大規模半導体集積回路装置、さらにはこのような大規模半導体集積回路装置を積層して実装したいわゆる三次元実装半導体装置などにも適用が可能である。
【0070】
以上、本発明を好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。