特許第6093600号(P6093600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6093600デマンド制御システム、デマンド制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093600
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】デマンド制御システム、デマンド制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/14 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   H02J3/14
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-45047(P2013-45047)
(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公開番号】特開2014-176150(P2014-176150A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】513056204
【氏名又は名称】株式会社ミナミテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神鳥 雅吉
【審査官】 坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−186658(JP,A)
【文献】 特開平04−183227(JP,A)
【文献】 特開2002−247757(JP,A)
【文献】 特開2007−159251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−5/00
13/00
G05F 1/66
F24F11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デマンド電力の目標値である目標デマンド電力を記憶する目標電力記憶手段と、消費電力を定期的に取得する消費電力取得手段と、前記目標デマンド電力および前記消費電力に基づき設備機器の消費電力を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記消費電力取得手段により取得された消費電力に基づきデマンド電力を予測するデマンド予測部と、前記目標デマンド電力に対する所定割合を設定値として算出する設定値算出部と、設備機器を複数のグループに区分されたエリア情報を記憶するエリア情報記憶部と、予測された前記デマンド電力と前記設定値とを比較するとともに、該デマンド電力が該設定値を超過すると判断されるとき、前記エリア情報記憶部に記憶されるグループから特定のグループを選択しつつ作動を制御する作動制御部と、該作動制御部によって選択されたグループ内の設備機器に対し制御のための制御信号を出力する出力部と、該出力部により出力された制御信号を所定時間維持するタイマと、前記出力部により制御されているグループおよび制御を終了したグループを記憶する制御エリア記憶部とを備え、前記タイマは、前記消費電力取得手段によって取得される定期的な消費電力の取得間隔よりも長い時間を計測し、該タイマによるタイマ情報は、前記出力部に出力され、該タイマの所定時間経過により制御信号を停止するものであり、前記作動制御部は、前記タイマの計測時間についてリセットの可否を判断するものであることを特徴とするデマンド制御システム。
【請求項2】
前記タイマによる計測時間は、前記消費電力取得手段によって取得される定期的な消費電力の取得間隔の3倍とするものである請求項1に記載のデマンド制御システム。
【請求項3】
前記消費電力取得手段によって取得される定期的な消費電力の取得間隔が1秒であり、前記タイマによる計測時間が3秒である請求項2に記載のデマンド制御システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記グループごとの負荷容量を記憶する負荷容量記憶部を備え、前記デマンド予測部は、前記負荷容量記憶部に記憶される制御前のグループの負荷容量に基づき、該グループを制御した後のデマンド予測電力をも算出するものであり、前記作動制御部は、前記デマンド予測電力と前記設定値との比較をも行うものである請求項1ないし3のいずれかに記載のデマンド制御システム。
【請求項5】
前記設備機器が空調設備機器である請求項1ないし4のいずれかに記載のデマンド制御システム。
【請求項6】
入力された目標デマンド電力に対する所定割合を設定値として算出する設定値算出ステップと、消費電力を定期的に取得する電力値取得ステップと、該電力値取得ステップにより取得された電力に基づき予測デマンド電力を算出する予測デマンド電力算出ステップと、前記設定値と前記予測デマンド電力とを比較する比較ステップと、該比較ステップにより前記予測デマンド電力が前記設定値を超過するか否かを判断する判断ステップと、設備機器を複数のグループに区分されたエリア情報に基づき、該グループのうち制御すべきグループを選択する制御エリア選択ステップと、該制御エリア選択ステップにより選択されたグループ内の設備機器に対し制御のための制御信号を出力する制御信号出力ステップとを含み、前記制御信号出力ステップによる制御信号は、前記電力値取得ステップによって取得する定期的な消費電力の所得間隔よりも長い時間を計測するタイマによって維持されるものであり、前記タイマの計測時間中に前記電力値取得ステップ、前記予測デマンド電力算出ステップ、および前記比較ステップに基づき、前記タイマのリセットの可否が判断されるものであることを特徴とするデマンド制御方法。
【請求項7】
さらに、前記制御信号出力ステップにより制御されているグループおよび制御を終了したグループを記憶する制御エリア記憶ステップと、前記エリア情報に含まれる制御前のグループの負荷容量に基づき該グループの制御開始後のデマンド予測電力を算出するデマンド予測電力算出ステップとを含む請求項6に記載のデマンド制御方法。
【請求項8】
前記エリア情報は、予め定めた順位を含むものであり、前記制御エリア選択ステップは、前記エリア情報に基づいて前記順位に従って変更するものである請求項7に記載のデマンド制御方法。
【請求項9】
デマンド制御システムにおいて設備機器の消費電力を制御するためのコントローラに、請求項6ないし8のいずれかに記載のデマンド制御方法の各ステップを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デマンド電力を制御するためのデマンド制御システムと、その制御方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デマンド電力とは、電力需要家が所定時間(デマンド時限といい、通常は30分)において消費する電力を意味するものであって、その消費電力が年間を通じて最大となるデマンド電力に基づいて、電力需要家に対する電力基本料金が計算されるものである。そこで、このようなデマンド電力を低く抑えることにより、基本料金を安価にすることができることから、その監視システムまたは制御システムが種々開発されている。
【0003】
デマンド監視システムとしては、デマンド時限の開始から所定時点までに使用された電力量(実電力量)と、使用電力の増加量からデマンド時限終了時までの間に予測されるデマンド電力を、過去のデマンド時限において電力需要家が使用したデータを参照しつつ算出した予想電力量(理論電力量を補正した補正電力量)とを比較し、実電力量が補正電力量を超えている場合に警報を出力するものがあった(特許文献1参照)。
【0004】
上記デマンド監視システムは、従来の監視システムにおいて一斉警報していたことによりハードウエアの負荷が増大することから、警報の遅延を招来していたことに鑑み、警報の回数を制限すべく電力需要家の過去の使用データを参照し、理論電力量を補正したうえで、警報の出力を判断するものであった。そして、過去のデータとは、曜日に着目した使用データや過去の同月のデータを参照するものであり、需要家ごとに異なる電力使用の状況に応じて対応できるものとなっていた。
【0005】
しかしながら、この種の監視システムでは、デマンド電力の低減のために、電力需要の制御を需要家が自ら行うものであった。そのため、警報を受信した場合の対応を予め需要家が準備しなければならず、その実益を得るためには、電力需要の制御手順を需要家が習得するなど、当該システムの作動に慣れることが要求されていた。また、需要家が長期間にわたりデマンド電力低減のための活動を継続する場合、前年同月日の過去のデータによる消費電力量が、通常の状況下によるものであるか、それとも警報を受けて使用量を低下させたものであるのかが明確ではなく、当該過去のデータを参照したことによって、逆に的確な判断を阻害し、警報出力のタイミングを遅延させる可能性を有していた。
【0006】
他方、デマンド電力制御システムとしては、デマンド電力に関係する設備機器を制御対象とし、使用電力からデマンド電力を算出し、目標値を超えないように当該設備機器に対して、その動作を停止させ、または消費エネルギを低減させるように制御するものが開発されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−5206号公報
【特許文献2】特開2011−193639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前掲の特許文献2に開示される上記デマンド制御システムは、電力消費関連情報を参照しつつデマンド電力を予測する構成であるが、これは、デマンド時限の終了間際に制御を開始した場合の需要家に対する負担が大きいことから、予め関連情報を入手し、デマンド電力を緻密に予測することにより無理のない範囲で設備機器を制御することを目的とするものであった。
【0009】
しかしながら、電力消費関連情報には、気象条件の予想情報のほかに、電力消費量が増大するイベント(電力消費エリアで行われる行事)等の情報が含まれることから、気象条件の予想情報については、その予測と異なる気象条件となった場合、イベント等の情報については、当該情報が入力されなかった場合、これらの電力消費関連情報の参照が、結果的に誤った制御状態を招来することとなり、デマンド時限間際に緊急的な制御を行わざるを得ない事象があり得た。
【0010】
また、上記デマンド制御装置は、上述のように電力消費関連情報を参照するため、制御開始の数時間前または数日前からデマンド予測情報が算出され、その情報が重要家に閲覧可能な状態で通知されるものとされており、その通知に基づいて制御計画に従って設備機器の停止等が実行されるものである。しかし、一般的な事業所においては、複数の通信機器およびOA機器等を設置しており、これらの設備機器は、使用しない状況下における消費電力を抑える省エネモード等の機能が付加されており、作動時と待機時とでは電力消費量が大きく異なるものであって、デマンド時限中に通信機器またはOA機器等が集中した場合には、前記デマンド予測を超過することが予想されるところである。
【0011】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、デマンド電力を逐次予測しつつ、的確なタイミングに設備機器を制御することができる制御システムと、そのための制御方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本願の発明者は鋭意研究した結果、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、デマンド制御システムにかかる本発明は、デマンド電力の目標値である目標デマンド電力を記憶する目標電力記憶手段と、消費電力を定期的に取得する消費電力取得手段と、前記目標デマンド電力および前記消費電力に基づき設備機器の消費電力を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記消費電力取得手段により取得された消費電力に基づきデマンド電力を予測するデマンド予測部と、前記目標デマンド電力に対する所定割合を設定値として算出する設定値算出部と、設備機器を複数のグループに区分されたエリア情報を記憶するエリア情報記憶部と、予測された前記デマンド電力と前記設定値とを比較するとともに、該デマンド電力が該設定値を超過すると判断されるとき、前記エリア情報記憶部に記憶されるグループから特定のグループを選択しつつ作動を制御する作動制御部と、該作動制御部によって選択されたグループ内の設備機器に対し制御のための制御信号を出力する出力部と、該出力部により制御されているグループおよび制御を終了したグループを記憶する制御エリア記憶部とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
上記構成によれば、設定値算出部が、目標電力記憶手段に記憶される目標デマンド電力値に基づいて設定値を算出し、デマンド予測部により予測されたデマンド電力が設定値を超える場合に設備機器に対する制御が開始されることとなる。ここで、設定値は、目標デマンド電力に対する所定割合によって算出され、例えば、目標デマンド電力を100%とした場合、90%以上100%未満の範囲で任意の割合として算出される。また、デマンド予測部によるデマンド電力は、電力需要家による消費電力に基づいてデマンド時限中の積算値によって算出されるものである。そして、消費電力は消費電力取得手段によって定期的に取得されることから、一部のグループが制御されている状態においても、その状況下におけるデマンド電力を予測することとなり、さらに他のグループを制御対象とすることができる。従って、電力需要家が設備機器の使用を継続する状況に応じてデマンド電力の予測値は変化することとなり、また、デマンド電力の予測値と設定値とを比較することから、設定値を超過する時点があるとしても目標デマンド電力を超えない範囲で制御することができる。
【0014】
さらに、制御手段には、設備機器を複数のグループに区分したエリア情報が記憶されており、このエリア情報を形成するグループを単位に設備機器に対する制御が行われることから、グループ内の全ての設備機器を制御対象とすることができ、電力消費量の低減効果を顕著に反映させることができる。そして、既に制御されたグループまたは制御中のグループは、制御エリア記憶部に記憶されることとなり、作動制御部は、同じグループを連続して繰り返し制御エリアとして選択することがなく、また、同じグループを重複して制御対象として選択することがないように制御エリアを調整することができる。従って、特定のグループに対して制御が集中されることを回避し、全てのグループに対してほぼ均等に制御対象とすることができる。このとき、出力部から出力される制御信号を所定時間維持させるタイマ手段を設けることにより、制御対象となったグループの設備機器を所定時間の継続制御が可能となり、当該制御継続時間を計算しつつデマンド電力を予測することができる。また、そのタイマの設定時間を補正可能にすれば、制御時間を延長させることが可能となる。なお、設備機器の制御とは、設備機器を停止する場合のほか、消費エネルギを低減させるような場合があり、空調設備機器を制御するときは、その機能に応じていずれかを選択することができる。
【0015】
また、本発明者は、上記デマンド制御システムを使用するデマンド制御方法を発明した。すなわち、デマンド制御方法は、入力された目標デマンド電力に対する所定割合を設定値として算出する設定値算出ステップと、消費電力を定期的に取得する電力値取得ステップと、該電力値取得ステップにより取得された電力に基づき予測デマンド電力を算出する予測デマンド電力算出ステップと、前記設定値と前記予測デマンド電力とを比較する比較ステップと、該比較ステップにより前記予測デマンド電力が前記設定値を超過するか否かを判断する判断ステップと、設備機器を複数のグループに区分されたエリア情報に基づき、該グループのうち制御すべきグループを選択する制御エリア選択ステップと、該制御エリア選択ステップにより選択されたグループ内の設備機器に対し制御のための制御信号を出力する制御信号出力ステップとを含むことを特徴とするものである。
【0016】
上記構成によれば、設備機器の全体に供給される電力を定期的に取得し、この電力値に基づいて予測デマンド電力が算出されることから、デマンド時限中に変化する電力値に基づいて最適な時期に制御を開始することができる。ここで、定期的とは、時間的な適宜間隔を意味し、任意に設定可能であるが、例えば1分間隔とすることにより供給される電力値の変化をほぼリアルタイムで把握することができる。この電力値の増減値から予測デマンド電力を算出(修正)することも可能であるが、確実に予測デマンド電力を算出するためには、デマンド時限中の消費電力の積算をすることが好ましい。
【0017】
また、制御エリア選択ステップにより、制御すべきグループが選定されるが、このグループは単一の場合に限定されることはなく、複数のグループを選択することがあり得る。すなわち、電力値は定期的に取得され、その都度予測デマンド電力が算出されることから、第一番目のグループを選択して制御を開始させた場合であっても、その制御が継続している期間中も予測デマンド電力が算出され、その値が設定値を超過する場合には、第二番目のグループを、さらに第三番目のグループを選択して制御を開始させるのである。そこで、制御対象となるグループが重複しないように、または連続して同一グループが制御対象とならにように、制御されているグループおよび終了したグループを記憶するステップを含むことが好ましい。この場合、各グループに予め順位が付与されたエリア情報に基づいて制御エリアを選択することにより、複数のグループの全体を均等に制御対象とすることができる。また、制御信号出力ステップでは、タイマによって、予め定められた時間に限って制御信号を出力させることにより、設備機器の過剰な制御(長時間の停止状態など)を回避できる。すなわち、例えば、3分間の継続した制御を所定の時間とすることにより、制御の必要がなくなった場合には自動的に3分後に制御が解除されることとなり、設備機器の利用制限を長時間に及ばないようにすることができる。なお、この所定時間は、継続的な制御を要する場合には、補正することができるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、設備機器に供給される電力を定期的に取得し、その都度、デマンド電力を予測することから、デマンド電力を逐次予測しつつ、的確なタイミングにより設備機器を制御することができる。この場合、予測されたデマンド電力は、目標デマンド電力に対する所定割合の設定値をもって比較対象としていることから、目標デマンド電力に到達する前に消費電力を低減させることができ、予測されるデマンド電力が目標デマンド電力を超過することを回避可能とすることができる。また、設備機器を複数のグループに区分したエリアを単位として制御対象としていることから、制御が開始されることにより、当該エリア内の全ての設備機器が制御対象となり、電力消費量の著しい低減を可能にするものである。さらに、これらのエリア情報を記憶することにより、同一グループが連続して制御対象となることを回避することができ、各グループが順次制御対象とすることにより、全体的にほぼ均等な制御環境を得ることができる。このことは、設備機器として空調設備機器のみを対象とする場合、夏季の酷暑時または冬季の厳寒時において、当該空調設備機器による消費電力の占有率が高くなる状態であっても、順次異なるエリアの空調設備機器が制御対象となるため、制御による極端な温度変化を生じさせない効果をも奏することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】デマンド制御システムにかかる実施形態の概略を示すブロック図である。
図2】制御方法に係る第1の実施形態を示す処理のフローチャートである。
図3】制御方法に係る第2の実施形態を示す処理のフローチャートである。
図4】制御方法に係る第3の実施形態を示す処理のフローチャートである。
図5】制御方法の実施により制御される設備機器の運転状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[デマンド制御システム]
図1は、デマンド制御システムに係る発明の実施形態の全体的な構成を示す図である。デマンド制御システムに係る発明の実施形態は、この図に示すように、電力計10によって計測される消費電力を入手し、コントローラ20により設備機器30を制御するものである。コントローラ20には、制御手段40が内蔵されており、この制御手段40は、処理手段40aと記憶手段40bとを備えている。処理手段40aは、CPU、RAM、ROMなどを備え、各種の情報を処理し得るものであり、記憶手段40bは、HDDやメモリ等により各種の情報を記憶できる機能を有している。従って、電力計10から入手した消費電力に関する情報に基づいて設備機器30を制御するための処理が行われ、当該設備機器30に対する制御信号を出力させるようになっている。
【0021】
すなわち、コントローラ20には、電力計10によって計測される消費電力を取得する電力値取得手段21が設けられている。具体的には、電力計10に設置されたパルスセンサにより電力計10から発生するパルス信号を受信し、当該パルス信号から消費電力を計算する。また、コントローラ20には、目標電力記憶手段として機能する目標電力記憶部22が設けられ、目標とするデマンド電力値(目標値)が記憶されている。この目標値は入力手段50によって設定可能であり、電力需要家の電力消費動向に応じて任意に設定されるものである。
【0022】
コントローラ20に設けられる制御手段40のうち、処理手段40aには、デマンド予測手段41が設けられ、前記電力値取得手段21により取得した消費電力に基づいて、デマンド電力を予測することができるものである。このデマンド電力の予測は、取得した電力値がデマンド時限(通常30分)の間に継続すると仮定した場合の積算値を算出するものとしている。さらに、処理手段40aには設定値算出部42が備えられており、前記目標電力記憶部22に記憶される目標値から設定値が算出されるようになっている。設定値とは、目標とするデマンド電力に対する所定割合を乗じた値であり、目標デマンド電力を100%とするとき90%以上100%未満の範囲における任意の割合を乗じて得た結果が設定値とされる。設定値を小さくすることにより早期の制御が開始されるが、頻繁に制御状態が繰り返され、または、設備機器の制御状態が長期化するため、経験的に得られる最適な割合(例えば95%)を乗算した値とされる。そして、作動制御部43によって、上記デマンド予測部41による算出結果と、上記設定値とが比較され、その結果に応じて出力部に作動開始の信号が出力されるようになっている。
【0023】
ところで、制御対象となる設備機器30は、複数のグループに観念的に区分されている。このグループ分けは、例えば、一棟の建物全体を管理する場合には、部屋を基準とする場合、階を基準とする場合、または設置場所を基準とする場合などがあり得る。設備機器の設置状況に応じて任意の基準によりグループを区分すればよい。また、グループ内の設備機器としては、特定の機器(例えば、空調設備機器)のみを対象としてもよく、電力需要機器の全部を対象としてもよい。本実施形態では、便宜上5つのグループ(Aグループ30a〜Eグループ30e)に区分したものを例示する。また、各グループ30a〜30eは、複数の設備機器の集合体であり、例えば、Aグループ30aは3つの設備機器31a,32a,33aをまとめて同じグループ内に区分している。なお、図は、各グループ30a〜30eのそれぞれに3つの設備機器を例示しているが、その数は適宜変更可能である。
【0024】
そこで、制御手段40に設けられる記憶手段40bにおいて、上述の設備機器を区分したグループ30a〜30eに関する種々の情報が記憶されるようになっている。すなわち、記憶手段40bには、エリア情報記憶部45、制御エリア記憶部46および負荷容量記憶部47が設けられている。エリア情報記憶部45は、個々のグループ30a〜30eに区分された各設備機器の情報およびその設置場所などを記憶するものであり、制御エリア記憶部46は、出力部44による制御信号によって制御されているグループ、および当該制御が終了したグループなどの情報を記憶するものであり、さらに、負荷容量記憶部47は、各グループに区分された設備機器のグループ単位における負荷容量(消費予想電力)を記憶するものである。なお、エリア情報記憶部45に記憶されるエリア情報には、複数に区分されたグループ30a〜30eについて付された順位を含む場合がある。
【0025】
制御手段40の処理手段40aに設けられている作動制御部43は、上述のように出力部44を管理するものである。具体的には、デマンド予測部41により予測されるデマンド電力と、設定値算出部42により算出された設定値とを比較し、予測されるデマンド電力が設定値を超過するか否かを判定し、予測されるデマンド電力が設定値を超過する場合には、前記グループ30a〜30eの中から制御すべきグループを選択し、出力部44に対して制御信号を出力するように指令するものである。出力部44は、作動制御部43の指令に基づき、選択されたグループに対して制御信号を出力するものである。制御信号としては、例えば、所定期間中の運転を停止させる信号がある。なお、制御すべき設備機器が、当該機器の消費電力を可変制御(インバータ制御)可能とする機能を有する場合には、そのような設備機器に対しては、運転を停止させるのではなく消費電力を低下させるような制御信号を出力させることもあり得る。
【0026】
制御すべきグループの選択には、種々の決定方法が採用され得る。例えば、消費電力の小さいものから順次選択する方法、または、消費電力の大きいものから順次選択する方法などがあり得る。いずれの方法により決定してもよいが、そのグループは予めエリア情報として、エリア情報記憶部45に記憶させることとなる。また、エリア情報に各グループの順位を含むものとする場合には、予め各グループについて順位を付しておき、当該順位に従って、順次選択する方法を採用することができる。この場合、制御されているグループおよび制御が終了したグループを制御エリア記憶部46に適宜記憶(記憶情報を修正)させることにより、全てのグループに対して制御(循環制御)させることができる。
【0027】
さらに、本実施形態においては、記憶手段40bに負荷容量記憶部47を備えている。この負荷容量記憶部47には、前述のとおり、各グループに区分された設備機器のグループ単位における負荷容量が記憶されていることから、前記作動制御部43によって選択された制御対象のグループについて、制御による電力削減量を制御開始前に算出することができる。そして、この情報に基づいて、制御開始後におけるデマンド電力を予測したうえで、さらに他のグループに対する制御の要否を作動制御部43に判断させることも可能となる。
【0028】
なお、記憶手段40bには、他の情報を記憶するための他情報記憶部48が設けられており、デマンド予測部41で算出される予測されるデマンド電力などを記憶できるようになっている。この他情報記憶部48に予測されるデマンド電力を記憶させることにより、設定値との比較に利用するとともに、予測されるデマンド電力の推移を統計的に記録することが可能となるものである。また、目標電力記憶部22を制御手段40とは別に設ける構成としているが、当該目標電力記憶部22により記憶される目標値を他情報記憶部48に記憶させるように構成してもよい。
【0029】
さらに、本実施形態では、制御手段40にタイマ49を備えたものを例示している。タイマ49には予め所定の時間を設定することができるものとし、出力部44による制御信号の出力が開始されると、タイマ49が作動し、そのタイマ情報は出力部44に出力され、所定時間経過後に制御信号の出力が停止されるように構成することができるのである。従って、出力部44から制御信号が出力されることにより制御される設備機器は、当該タイマ49の所定時間だけ制御状態が継続し、所定時間の経過により制御を自動的に終了させるように作動するものとなる。そして、このタイマ49は、作動制御部43によってリセット可能に構成してもよく、これにより、制御状態を継続すべき場合には、作動制御部43がタイマ49をリセットし、そのリセット時から所定時間経過時まで制御状態を継続させることも可能となる。なお、タイマ49を設けない場合には、作動制御部43において制御の開始および終了を管理させるように構成してもよい。この場合、作動制御部43は、予測されるデマンド電力に基づいて制御時間をも算出することとなり、制御が複雑となることから、本実施形態では、予め決まった時間をタイマ49によって管理することとし、制御環境を簡素化するものである。
【0030】
本実施形態は、上記のような構成であるから、電力計10から入手した電力値に基づいて、デマンド電力を予測しこのデマンド電力と設定値(目標デマンド電力に対する所定割合相当分)とを比較し、予測されたデマンド電力が設定値を超過する場合に、グループ分けされた複数のグループ30a〜30eの設備機器の運転状態を制御することができるのである。そして、タイマ49により設定された時間中に継続して運転が制御されることから、その時間におけるデマンド電力を低減させることができるものである。また、制御対象となるグループ30a〜30eのうち、制御されているものおよび制御が終了したものは、記憶部45に記憶されることとなり、その記憶データに基づいて、制御対象グループを選択することにより、特定のグループを繰り返し制御対象とすることが回避され、全部のグループをほぼ均等に順次制御対象とすることができる。
【0031】
ここで、電力計10によって計測される電力値は、定期的に取得されるものであるが、当該定期的な入手としては、非常に短い期間(例えば、1分間隔)を予定し、また、タイマ49により制御される時間も比較的短い時間(例えば、3分間)を予定することができる。この場合、電力計10で計測される電力値を1分間隔で入手することにより、設備機器に対する制御開始後の電力値を入手することができることとなり、その状態におけるデマンド電力を予測することにより、さらに他の設備機器に対する制御の可否を判断することが可能となるのである。また、制御時間を3分とすることにより、次のデマンド電力の予測後、2分の間にタイマ49のリセットの可否を判断することが可能となるのである。さらに、制御時間を3分とすることから、一時的な(瞬間的な)電力値が設定値を超過した場合であっても、無駄な(過剰な)設備機器の制御を行う結果を回避できることとなる。すなわち、通信機器やOA機器などが集中して作動したことに伴う瞬間的な需要電力の上昇時において、その一時的な電力消費を低下させることによって、無駄な節電を回避しつつデマンド電力の低減を実現できることとなるのである。
【0032】
なお、制御対象とする設備機器としては、各種のものを挙げることができるが、空調設備機器(空調用室外機)を対象とすることが好ましい。その他の設備機器(例えば、照明機器や事務機器など)を制御対象とする場合、業務に支障を来す可能性があり、その反面、消費電力の低減効果が比較的小さく、デマンド電力を設定値以下に低下させる際の即効性が期待できない。これに対し、空調設備機器を対象とする場合、制御開始による消費電力の低減効果が著しく、さらに、数分間の運転制御によっても業務に支障を来す可能性が極めて低いことによる。特に、複数のグループに区分され、当該グループを単位として運転を制御することにより、一時的に運転が制御されたグループも数分後には運転が再開されることから、空調温度の変化をほとんど感じることなく消費電力を低減させることができるものである。
【0033】
また、図1は警報手段60を備える構成を示しており、出力部44が、いずれかのグループ30a〜30eに対して制御を開始するための制御信号を出力するとき、この警報手段60に対しても信号を出力させるように構成することによって、電力需要家が制御中であることを認識することができることとなる。このような警報手段60は必須のものではないが、当該警報手段60による警報によって、その運転が停止され、または電力消費が低減された原因が、設備機器の制御状態であることを容易に感知することが可能となる。
【0034】
[デマンド制御方法]
次に、前記デマンド制御システムを前提とした制御方法について説明する。この制御方法の実現のためには、前記デマンド制御システムのコントローラ20(図1)によって処理されることから、その処理方法に従って制御方法の実施形態を説明することとする。
【0035】
(第1の実施形態)
図2は、タイマを使用しない場合におけるコントローラによる処理方法を示すフローチャートである。この図に示すように、デマンド電力を低減させるためには、まず、目標デマンド電力を設定するが、この目標デマンド電力は、電力需要家が任意に設定でき、これを入力する(S101)。この入力値に対して、所定割合(例えば、95%)を設定値とするために、設定値が算出される(設定値算出ステップ、S103)。なお、目標デマンド電力および設定値は、それぞれ記憶させることができる(S102,S104)。目標デマンド電力の記憶は、電力需要家が入力値を確認する際に表示可能とするためであり、設定値の記憶は、後の処理において参照するためである。ここまでは、デマンド制御の処理開始前の段階である。
【0036】
デマンド制御は、所定時間(例えば1分)の経過ごとに開始される(S201)。処理開始後1分が経過した時から、電力値の入力が開始され(電力値取得ステップ、S202)、所定時間(1分)が経過するごとに電力値の入力を受けることとなる。電力値が入力されると、その電力値に基づき、予測デマンド電力が算出される(予測デマンド電力算出ステップ、S203)。予測デマンド電力は、計測時の消費電力をデマンド時限に換算した数値で算出される。すなわち、デマンド時限が30分である場合には、当該消費電力が30分間継続すると仮定したときの累計を算出するのである。算出された予測デマンド電力と設定値を比較して(比較ステップ、S204)、予測デマンド電力が設定値を超過すると判断された場合(判断ステップ、S205)に設備機器の制御を開始するのである。設備機器に対する制御は、予め区分された複数のグループの中から制御対象とすべきグループを選択し(制御エリア選択ステップ、S206)、当該グループの設備機器に対して制御信号を出力する(制御信号出力ステップ、S207)。
【0037】
制御信号が出力されることにより、制御対象のグループ内における対象設備機器の運転が制御されることとなる。上記処理の開始時間から所定時間を経過することにより(S201)、上記設備機器が制御された状態における電力値が取得され(S202)、予測デマンド電力が算出(S203)される。算出された予測デマンド電力は、再び設定値と比較され(S204)、超過の状態が判断されることとなる(S205)。この場合においても、予測デマンド電力が設定値を超過する場合には、さらに、異なるグループの設備機器に対して制御信号が出力されるのである(S206,S207)。
【0038】
なお、設備機器に対する制御が開始された場合は、所定の条件により制御を停止させる処理を行えばよいものである。例えば、予測デマンド電力と測定値との比較ステップ(S204)および判断ステップ(S205)により、予測デマンド電力が設定値未満と判断された場合には、制御中のグループが存在するか否かが判定され(S301)、制御中のグループが存在する場合には、そのグループの負荷容量(消費電力)を検出(負荷容量記憶部に記憶されている情報を参照)し、または、複数のグループが存在する場合には、その全てのグループの負荷容量を合算し(S302)、当該グループの制御を停止した後のデマンド電力と設定値を比較し(S303)、デマンド電力が設定値未満である場合に、当該グループの制御を停止すればよいのである(S304)。
【0039】
ここで、制御すべきグループの選択(S206)は、設備機器を複数のグループに区分したエリアごとの情報として記憶されており、当該エリア情報には、さらに順位を付与することにより、当該順位に従って規則的にグループを選択することが可能となる。また、制御されているエリアの情報および制御を終了したエリアの情報を記憶させることにより、制御すべきグループの選択に際し、上記順位を参照しつつ次順位のエリアを選択させることができる。そして、各グループ内の設備機器について、グループ全体の負荷容量(消費電力)を予め記憶させておくことにより、制御中のグループについて制御を停止した際の電力量を算出することが容易となる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、タイマを使用する場合の処理方法について説明する。図3は、そのフローチャートである。初期設定は、前述と同様であるため省略している。なお、タイマにより設備機器の制御は所定時間経過後に終了することから、制御信号の出力停止のための処理は含まれていない。すなわち、特定のグループに対する制御についてタイマを作動させることにより制御が開始され、所定時間(例えば3分)が経過することにより制御は終了するのである。
【0041】
以下、図3を参照しつつ詳細に説明する。図示のように、まず、適宜間隔(例えば1分)が経過するごとに(S401)、電力値を取得し(S402)、予測デマンド電力が算出される(S403)。そして、予測デマンド電力と設定値とが比較され(S404)、予測デマンド電力が設定値を超過するか否かが判断される(S405)。この判断ステップによって、予測デマンド電力が設定値未満である場合には、制御の必要がないため、次の経過時間(S401)により電力値が取得され(S402)比較ステップ(S404)および判断ステップ(S405)が繰り返される。また、仮に既に制御中のグループが存在する場合であっても、当該グループの制御により予測デマンド電力が設定値を超えないことから、新たな制御エリアを選択する必要はないものとして、制御中のグループについてのみタイマ設定時間中の制御を継続させるのである。
【0042】
これに対し、判断ステップ(S405)において、予測デマンド電力が設定値を超過すると判断された場合には、直前(1分前)に制御が開始されたグループの存否が判断される(S406)。直前(1分前)に制御を開始したグループが存在しない場合には、仮に現在制御中のグループが存在したとしても、判断ステップ(S405)において設定値を超過することが明白であるから、次順位のグループを選択して制御を開始する(S407)。
【0043】
また、直前(1分前)に制御が開始されたグループが存在する場合には、次順位のグループを制御した状態における予測デマンド電力と設定値とを比較し、次順位のグループについて制御を開始するかどうかが判断される(S408〜S411)。すなわち、直前(1分前)に制御を開始したグループが存在する場合には、次順位のグループを選択し(S408)、そのグループの負荷容量(消費電力)を算出し、または記憶部から読み取り(S409)、制御中の全てのグループの負荷容量を算出する(デマンド予測電力算出ステップ、S410)。そして、次順位のグループについて制御を開始した後の状態を予測したデマンド電力(デマンド予測電力)が設定値を超過すると判断される場合(S411)には、次順位のグループの制御を開始することとなり(S407)、超過しない場合には、次の電力値の取得時に再度判断される。
【0044】
このような制御方法の場合には、一度制御を開始したグループについては、タイマ設定時間(例えば3分)が経過するまで、制御状態が継続されることとなり、その間に電力値を取得することにより複数のグループを同時に制御状態とすることができる。また、消費電力が上昇傾向にあるときは、大幅に消費電力を低減する必要があるため、既に制御を開始した後に、さらに次順位として選択したグループの負荷容量を前提に次順位のグループに対する制御を開始させることができ、次の電力値取得(S402)および判断ステップ(S405)を待つことなく、先行して次順位のグループを制御させることができる。なお、制御を開始したグループについては、タイマ設定時間経過により順次制御を停止することとなるため、定期的(1分ごと)に電力値を参照しつつ、制御の要否が判断されることとなる。
【0045】
(第3の実施形態)
次に、タイマ設定時間を補正可能とした場合の制御方法について説明する。図4は、そのフローチャートを示している。この図に示すように、所定時間(例えば1分間)の経過ごとに電力値を取得し、予測デマンド電力を算出した後、当該予測デマンド電力値と設定値とを比較し超過の状態を判断する各ステップ(S501〜S505)は第2の実施形態における場合と同様である。
【0046】
そこで、本実施形態では、判断ステップ(S505)において、予測デマンド電力が設定値を超過すると判断された場合、まず、直前(1分前)に制御を開始したグループが存在するか否かを判断する(S506)。ここで、直前(1分前)に制御を開始したグループが存在すると判断された場合、そのような状況とは、すなわち、直前に選択したグループの設備機器を制御してもなお予測デマンド電力が設定値を超過していることを意味する。そこで、この場合には、既に進行しているタイマを初期値に補正し、本来の設定時間(3分)を計測するようにしている。さらに他のグループに対しても制御を開始する必要があることから、次順位のグループを選択し(S508)、当該グループの制御を開始するのである(S509)。
【0047】
また、直前(1分前)に制御を開始したグループの存在を判断(S506)した結果、そのようなグループが存在しないと判断された場合であっても、その状況は、それ以前に制御が開始されたグループは存在するが直前の開始ではない場合と、制御されているグループは全く存在しない場合とがあり得る。いずれの場合においても、判断ステップ(S505)により予測デマンド電力が設定値を超過している状態であることから、特定のグループを選択し、制御を開始しなければならない。そこで、このような場合においても、制御対象のグループを選択し(S508)、そのグループの制御を開始するのである(S509)。
【0048】
本実施形態では、さらに、制御を開始した次順位グループについて負荷容量を算出し、または記憶部の情報を読み取り、次順位グループを制御させた後の全グループの制御による負荷容量を算出し(S511)、当該状態における予測デマンド電力と設定値とを比較し(S512)、制御すべき容量が不足する場合には、次々順位のグループを選択し(S513)、当該グループについても制御を開始させるのである(S514)。上記次順位グループおよび次々順位グループの制御に際し、タイマは初期値とし、つまり本来の設定時間(3分)の制御が開始されるものである。
【0049】
従って、本実施形態では、初めて予測デマンド電力が設定値を超過する場合、第1順位(図では次順位)のグループの制御が開始される(S509)こととなる。この状態において、第2順位(図では次々順位)の制御も必要であれば、当該順位のグループの制御も開始されることとなる(S514)。そして、第1順位および第2順位のグループについて制御を開始した後は、次の電力値取得(S502)によって、再度、予測デマンド電力と設定値とが比較・判断され(S504、S505)、制御グループが不足する場合には、既に制御を開始した第1順位および第2順位のグループについてタイマを初期値に補正するとともに、第3順位(次順位)のグループの制御を開始し(S509)、さらに場合によっては、次々順位(第4順位)のグループについても制御を開始し得る(S514)のである。このような制御方法によれば、予測デマンド電力が大幅に設定値を超過する場合、急激に消費電力を低減させることができる。僅か2分の間に最大で4つのグループに対して同時に制御対象とすることができるのである。これは、急激に電力消費が増加した場合に対応し得るものである。
【0050】
なお、上記制御方法においても、第1順位のグループを制御した状態で予測デマンド電力が設定値未満となる場合は、次の電力値取得(S502)によって得られた電力値に基づく判断(S505)を待つこととなり、当該判断ステップ(S505)において、予測デマンド電力が設定値を超過する場合は、次順位のグループを選択し(S508)、当該グループの制御を開始するが(S509)、上記判断ステップ(S505)において予測デマンド電力が設定値未満である場合には、他のグループに対する制御は行わず、次の電力値取得(S502)を待つこととなるのである。
【0051】
(変形例)
次に、第3の実施形態の変形例について説明する。基本的な処理手順は上述した第3の実施形態と同様であることから図4そそのまま参照して説明する。この変形例では、直前(1分前)に制御を開始したグループの存在を判断するステップ(S506)に替えて、制御中であるグループの存在を判断するステップとするものである。このような制御方法とすることにより、制御中のグループについては制御を継続させつつ、さらに別のグループについても制御対象とすることができる。すなわち、既に制御中であるグループのタイマ設定時間(3分)が経過するまでの間に、さらに別のグループを制御すべき状況となった場合には、一度、制御中のグループのタイマを初期値(3分)に補正することとなり(S507)、当該制御中のグループについては制御時間を延長し、加えて他のグループをも制御対象とすることができるのである。
【0052】
上記の変形例によれば、次の電力値取得(S502)された際の比較・判断(S504、S505)によって予測デマンド電力が設定値を超過する場合には、制御中のグループに対する制御が維持されることとなり、極端な場合、全てのグループを制御状態とすることも可能になるのである。しかも、当該状況に到達するまでには時間を要さないことから、急激な電力消費の増加に対して即効性を有するものである。なお、この場合、制御中のグループに属する設備機器は、運転を停止するのではなく、消費電力を低減させるような制御状態とすることにより、設備機器を使用する電力需要家に不便を強いることはないものとなる。
【0053】
(その他の変形例)
上記各制御方法の説明中には、制御されているグループまたは制御を終了したグループを記憶するためのステップ(制御エリア記憶ステップ)を明記していないが、制御信号出力ステップ(S207,S407,S509,S514)において、制御が開始される際に、同時に当該グループを記憶する手順を挿入してもよく、また、制御停止ステップ(S304)の実行により、またはタイマの設定時間経過により、特定グループの制御が停止された際には、同時に当該グループを記憶する手順を挿入してもよい。これらの記憶ステップを経由することによって、グループの制御状態が記憶されることとなり、制御すべきグループ(または次順位グループ)を選択するための制御エリア選択ステップ(S206,S408,S508,S513)において、未だ制御されていないグループまたは早い順位で制御されたグループを順次選択するように処理させることが可能となる。
【0054】
[設備機器の制御状態]
次に、上記に示した制御方法により設備機器を制御した場合の制御状態を説明する。図5は、各グループの制御状態を時間の経過とともに示した図である。図5(a),(b)ともに、横軸を経過時間(分)で示し、各グループに属する設備機器の運転(制御)の状態を棒グラフで示している。従って、各グループに属する設備機器が運転状態である場合は、棒グラフが横向きに伸びており、制御状態(運転の停止状態または消費電力の低減状態)の場合は、グラフが途切れて示されている。なお、グループの選択の順序は、Aグループを第1順位とし、以下、Bグループ、Cグループ、Dグループ、Eグループの順に選択されるものとする。
【0055】
そこで、まず、単一のグループのみが制御されることによって予測デマンド電力が設定値未満となるような場合には、図5(a)に示すように、各グループが順次制御対象となり、定期的に運転が制御状態となるものである。この図では、それぞれ3分の制御時間としているが、この時間はタイマの設定時間または作動制御部による制御終了時間を3分に指定することにより可能である。各グループに区分される設備機器の負荷容量をほぼ均等に配分することにより、上記のような定期的な運転の制御状態は可能である。
【0056】
次に、単一のグループを制御したのでは、予測デマンド電力が設定値を超過するような状況下においては、図5(b)に示すように、同時期に複数のグループが制御状態となる場合がある。例えば、図示のように、3分後にAグループの制御を開始したが、その1分後においても予測デマンド電力が設定値を超過する場合には、Bグループについても制御を開始するのである。その後、さらなるグループの選択は不要と判断されたため、継続してAグループおよびBグループが制御状態となっているが、例えば、タイマによって3分経過により制御が終了したことにより、再び予測デマンド電力が設定値を超過する場合には、次の順位であるCグループから制御が開始されるのである。このとき、大幅な消費電力の削減が必要な場合には、Cグループの次にDグループが、さらにその次にEグループが選択され、制御が開始されることとなるのである。
【0057】
上記に示した制御のいずれの場合においても、デマンド時限(例えば30分)の間に、複数のグループが順次選択されて、それぞれ制御対象となることから、制御される設備機器が特定のグループに偏ることなく、ほぼ均等に循環させつつ各グループを制御対象とすることができる。
【0058】
本発明の実施形態は以上のとおりであるが、これらの実施形態は、発明の一例を示すものであって、これらに限定する趣旨ではない。特に、制御対象となる設備機器のグループ等のように、説明の便宜上簡略化した部分もあるが、適宜変更することは可能である。また、制御方法に係る実施形態として、コントローラによる処理手順を示したが、コントローラは、コンピュータと同様の機能を有するものであり、このコントローラにおける処理は、プログラムの形式でコントローラに記憶されており、当該プログラムをコントローラが読み出して実行することにより、各処理を行うことができるものとなっている。
【符号の説明】
【0059】
10 電力計
20 コントローラ
21 電力値取得手段
22 目標電力記憶部
30 設備機器
30a Aグループ
30b Bグループ
30c Cグループ
30d Dグループ
30e Eグループ
31a,32a,33a Aグループの設備機器
40 制御手段
40a 処理手段
40b 記憶手段
41 デマンド予測部
42 設定値算出部
43 作動制御部
44 出力部
45 エリア情報記憶部
46 制御エリア記憶部
47 負荷容量記憶部
48 他情報記憶部
49 タイマ
50 入力手段
60 警報手段
図1
図2
図3
図4
図5