(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093603
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】リバウンド材回収装置、リバウンド材回収方法、及びリバウンド材再利用方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/36 20060101AFI20170227BHJP
B05B 15/04 20060101ALI20170227BHJP
E21D 11/00 20060101ALI20170227BHJP
E21F 15/00 20060101ALI20170227BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20170227BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20170227BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20170227BHJP
B04C 5/12 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
G21F9/36 541M
B05B15/04 104
E21D11/00 Z
E21F15/00
B05D7/24 302A
B05D3/00 A
B05D1/02 Z
B04C5/12 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-46965(P2013-46965)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-174005(P2014-174005A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 一三
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 剛
(72)【発明者】
【氏名】上本 勝広
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 惣
(72)【発明者】
【氏名】石井 健嗣
【審査官】
藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−095867(JP,A)
【文献】
特開2009−243868(JP,A)
【文献】
特開2010−131513(JP,A)
【文献】
特開2008−237951(JP,A)
【文献】
実開昭61−175894(JP,U)
【文献】
特開2013−023923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/36
G21F 9/34
E21D 11/00
E21D 11/10
E21F 15/00
B05D 1/00−7/26
B05B 15/00−15/12
B04C 1/00−11/00
E04G 21/00−21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性廃棄物の余裕深度処分施設の施工に用いるベントナイト系材料の吹付け工法において吹付け時に発生するリバウンド材を回収するためのリバウンド材回収装置であって、
前記リバウンド材の落下地点から前記リバウンド材を吸引する吸引器と、
前記吸引器で吸引した前記リバウンド材を空気で搬送する空気搬送機と、
前記空気搬送機で搬送された前記リバウンド材が空気と一緒に導入される導入空間を有し、前記導入空間の前記リバウンド材を空気から分離し重力によって排出口から排出する集塵機と、
前記集塵機から排出された前記リバウンド材を受け入れる受入手段と、を備え、
前記集塵機は、
前記導入空間から外部に強制的に空気を排出する排気手段を有し、
前記排気手段が、前記空気搬送機による搬送能力以上の排気能力を有することを特徴とするリバウンド材回収装置。
【請求項2】
前記受入手段は、
前記集塵機の排出口に着脱可能であり前記排出口からの前記リバウンド材を貯留する貯留部を有し、
前記集塵機は、
取り付けられた前記貯留部の下方に位置するキャスターを有することを特徴とする請求項1に記載のリバウンド材回収装置。
【請求項3】
前記受入手段は、
前記ベントナイト系材料の吹付けを行う吹付け機に前記リバウンド材を供給する材料供給機であることを特徴とする請求項1に記載のリバウンド材回収装置。
【請求項4】
放射性廃棄物の余裕深度処分施設の施工に用いるベントナイト系材料の吹付け工法において吹付け時に発生するリバウンド材を回収するためのリバウンド材回収方法であって、
前記リバウンド材の落下地点から前記リバウンド材を吸引する吸引器と、
前記吸引器で吸引した前記リバウンド材を空気で搬送する空気搬送機と、
前記空気搬送機で搬送された前記リバウンド材が空気と一緒に導入される導入空間を有し、前記導入空間の前記リバウンド材を空気から分離し重力によって排出口から排出する集塵機と、
前記集塵機から排出された前記リバウンド材を受け入れる受入手段と、を備え、
前記導入空間から外部に強制的に空気を排出する排気手段を前記集塵機が有するリバウンド材回収装置を用いて、前記排気手段の排気能力を、前記空気搬送機による搬送能力よりも大きくなるように調整して前記受入手段に前記リバウンド材を回収することを特徴とするリバウンド材回収方法。
【請求項5】
放射性廃棄物の余裕深度処分施設の施工に用いるベントナイト系材料の吹付け工法において吹付け時に発生するリバウンド材を回収するためのリバウンド材回収方法であって、
前記リバウンド材の落下地点から前記リバウンド材を吸引する吸引器と、
前記吸引器で吸引した前記リバウンド材を空気で搬送する空気搬送機と、
前記空気搬送機で搬送された前記リバウンド材が空気と一緒に導入される導入空間を有し、前記導入空間の前記リバウンド材を空気から分離し重力によって排出口から排出する集塵機と、
前記集塵機から排出された前記リバウンド材を受け入れる受入手段と、を備え、
前記導入空間から外部に強制的に空気を排出する排気手段を前記集塵機が有し、
前記集塵機の排出口に着脱可能であり前記排出口からの前記リバウンド材を貯留する貯留部を前記受入手段が有するリバウンド材回収装置を用いて、前記リバウンド材を前記貯留部に貯留していくリバウンド材貯留工程と、
前記リバウンド材貯留工程において前記貯留部内の圧力が大気圧に略等しくなるように、前記空気搬送機の搬送能力と前記排気手段の排気能力とのバランスを調整するバランス調整工程と、を備えたことを特徴とするリバウンド材回収方法。
【請求項6】
前記リバウンド材回収装置は、前記貯留部内の圧力をモニタする圧力モニタ手段を備えており、
前記バランス調整工程では、
前記圧力モニタ手段によるモニタ結果に基づいて、前記バランスを調整することを特徴とする請求項5に記載のリバウンド材回収方法。
【請求項7】
前記集塵機は、取り付けられた前記貯留部の下方に位置するキャスターを有することを特徴とする、請求項5又は6に記載のリバウンド材回収方法。
【請求項8】
放射性廃棄物の余裕深度処分施設の施工に用いるベントナイト系材料の吹付け工法において吹付け時に発生するリバウンド材を再利用するためのリバウンド材再利用方法であって、
吹付け機の吹付けノズルから前記ベントナイト系材料の吹付けを行う吹付け工程と、
前記吹付け工程で発生する前記リバウンド材のほぼ全量を請求項4〜7の何れか1項に記載のリバウンド材回収方法で回収するリバウンド材回収工程と、
前記吹付け機に前記リバウンド材を供給する材料供給機に、前記リバウンド材回収工程で回収された前記リバウンド材を供給するリバウンド材搬送工程と、
前記吹付け機において、前記材料供給機から供給された前記リバウンド材を含むベントナイト系材料を前記吹付けノズルまで移送する材料移送工程と、を備え、
前記吹付け工程、前記リバウンド材回収工程、前記リバウンド材搬送工程、及び前記材料移送工程を、同時並行で行うことを特徴とするリバウンド材再利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベントナイト系材料の吹付け工法において吹付け時に発生するリバウンドのリバウンド材回収装置、リバウンド材回収方法、及びリバウンド材再利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベントナイト系材料の吹付け時のリバウンド材を回収する技術として、
図8に示すような回収装置301が知られている。なお、このような構成の回収装置301は、一般に作業現場で個別に準備されるものであるので、回収装置301が記載された特許文献等は存在しない。回収装置301は、リバウンド材の導入口305aを有する本体部305と、本体部305の下部に交換可能に取り付けられる袋状のフレキシブルコンテナ307と、本体部305の上部に取り付けられる布製筒状フィルタ309と、で構成されている。
【0003】
この回収装置301を用いた回収方法においては、リバウンド材Bの発生場所から空気搬送機(不図示)によってリバウンド材Bが搬送され、空気と一緒に導入口305aから回収装置301に導入される。その後、リバウンド材Bは、矢印Cで示すように、本体部305内に設けられた衝突プレート305bに衝突してフレキシブルコンテナ307内に落下し回収される。回収されたリバウンド材Bは、ベントナイト系材料として再利用することができる。一方、リバウンド材Bと一緒に回収装置301に導入された空気は、布製筒状フィルタ309を通じて外部に排出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の回収装置301では、導入口305aからリバウンド材Bと一緒に導入される空気が、衝突プレート305bに衝突した後、布製筒状フィルタ309を通じて排出される前に、フレキシブルコンテナ307内を流動する。そうすると、フレキシブルコンテナ307内に溜まったリバウンド材Bが、流動する空気に常に曝された状態となるので、リバウンド材Bが乾燥し易く、含水比の低下の原因になる。その結果、リバウンド材Bが、含水比不足により再利用困難なものになってしまう場合もある。
【0005】
この問題に鑑み、本発明は、回収されたリバウンド材の乾燥を抑えることができるリバウンド材回収装置、リバウンド材回収方法、及びリバウンド材再利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のリバウンド材回収装置は、放射性廃棄物の余裕深度処分施設の施工に用いるベントナイト系材料の吹付け工法において吹付け時に発生するリバウンド材を回収するためのリバウンド材回収装置であって、リバウンド材の落下地点からリバウンド材を吸引する吸引器と、吸引器で吸引したリバウンド材を空気で搬送する空気搬送機と、空気搬送機で搬送されたリバウンド材が空気と一緒に導入される導入空間を有し、導入空間のリバウンド材を空気から分離し重力によって排出口から排出する集塵機と、集塵機から排出されたリバウンド材を受け入れる受入手段と、を備え、集塵機は、導入空間から外部に強制的に空気を排出する排気手段を有することを特徴とする。
【0007】
この回収装置によれば、集塵機の導入空間では、リバウンド材が排出口から排出される一方で、リバウンド材と一緒に導入された空気は排気手段によって導入空間から外部に強制的に排出される。従って、導入空間から排出口を通じて受入手段のリバウンド材に向かう空気が少なく抑えられ、その結果、リバウンド材の乾燥を抑えることができる。
【0008】
また、受入手段は、集塵機の排出口に着脱可能であり排出口からのリバウンド材を貯留する貯留部を有し、集塵機は、取り付けられた貯留部の下方に位置するキャスターを有することとしてもよい。この構成によれば、貯留部が取り付けられた状態の集塵機を所望の場所に容易に移動させることができる。
【0009】
また、受入手段は、ベントナイト系材料の吹付けを行う吹付け機にリバウンド材を供給する材料供給機であることとしてもよい。この構成によれば、材料供給機を介してリバウンド材を吹付け機に送り込むことができ、リバウンド材を吹付けに直接再利用することができる。
【0010】
本発明のリバウンド材回収方法は、放射性廃棄物の余裕深度処分施設の施工に用いるベントナイト系材料の吹付け工法において吹付け時に発生するリバウンド材を回収するためのリバウンド材回収方法であって、上記何れかのリバウンド材回収装置を用いて、受入手段にリバウンド材を回収することを特徴とする。このリバウンド材回収方法によれば、上記のリバウンド材回収装置を用いることにより、回収したリバウンド材の乾燥が抑制される。
【0011】
本発明のリバウンド材回収方法は、放射性廃棄物の余裕深度処分施設の施工に用いるベントナイト系材料の吹付け工法において吹付け時に発生するリバウンド材を回収するためのリバウンド材回収方法であって、上記のリバウンド材回収装置を用いて、リバウンド材を貯留部に貯留していくリバウンド材貯留工程と、リバウンド材貯留工程において貯留部内の圧力が大気圧に略等しくなるように、空気搬送機の搬送能力と排気手段の排気能力とのバランスを調整するバランス調整工程と、を備えたことを特徴とする。この構成によれば、集塵機の導入空間に導入された空気が、ほぼ過不足なく排気手段から排出されるので、貯留部と集塵機との間の空気の流動が更に抑えられる。
【0012】
またこの場合、具体的には、リバウンド材回収装置は、貯留部内の圧力をモニタする圧力モニタ手段を備えており、バランス調整工程では、圧力モニタ手段によるモニタ結果に基づいて、バランスを調整することとしてもよい。
【0013】
本発明のリバウンド材再利用方法は、放射性廃棄物の余裕深度処分施設の施工に用いるベントナイト系材料の吹付け工法において吹付け時に発生するリバウンド材を再利用するためのリバウンド材再利用方法であって、吹付け機の吹付けノズルからベントナイト系材料の吹付けを行う吹付け工程と、吹付け工程で発生するリバウンド材のほぼ全量を前述の何れかのリバウンド材回収方法で回収するリバウンド材回収工程と、吹付け機にリバウンド材を供給する材料供給機に、リバウンド材回収工程で回収されたリバウンド材を供給するリバウンド材搬送工程と、吹付け機において、材料供給機から供給されたリバウンド材を含むベントナイト系材料を吹付けノズルまで移送する材料移送工程と、を備え、吹付け工程、リバウンド材回収工程、リバウンド材搬送工程、及び材料移送工程を、同時並行で行うことを特徴とする。
【0014】
再利用方法は、リバウンド材回収工程において、発生したリバウンド材のほぼ全量を回収するので、落下地点に残留するリバウンド材を蓄積させずに、円滑で連続的な再利用が可能になる。リバウンド材回収工程では、前述のリバウンド材回収方法を用いることにより、回収したリバウンド材の乾燥が抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回収されたリバウンド材の乾燥を抑えることができるリバウンド材回収装置、リバウンド材回収方法、及びリバウンド材再利用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のリバウンド材回収装置、リバウンド材回収方法、及びリバウンド材再利用方法が施工時において適用される構造物の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明のリバウンド材回収装置、リバウンド材回収方法、及びリバウンド材再利用方法が適用される吹付け装置の第1実施形態を示す側面図である。
【
図5】第1実施形態のリバウンド材回収装置を示す側面図である。
【
図6】
図5の集塵機及びフレキシブルコンテナを示す断面図である。
【
図7】第2実施形態のリバウンド材回収装置を示す側面図である。
【
図8】従来のリバウンド材回収装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るリバウンド材回収装置、リバウンド材回収方法、及びリバウンド材再利用方法の実施形態について詳細に説明する。なお、各図では、説明の理解を容易にすべく各部を誇張して描写する場合があるため、図面上の寸法比は必ずしも実物とは一致しない。
【0018】
〔第1実施形態〕
まず、
図1及び
図2を参照しながら、本実施形態のリバウンド材回収装置、リバウンド材回収方法、及びリバウンド材再利用方法が施工に用いられる構造物の一例として、放射性廃棄物の余裕深度処分施設101について説明する。
【0019】
図1及び
図2に示す放射性廃棄物の余裕深度処分施設101は、低レベル放射性廃棄物のうち放射能レベルが比較的高い放射性廃棄物の地層処分を行うための施設である。施設101で処理される廃棄体103は、放射性廃棄物が鉄鋼製の容器に封入されて形成されており、トンネル105内に収容される。廃棄体103同士の隙間に充填材107が充填され、更にその周囲を多層に囲むように順に、コンクリートピット109、低拡散層111、緩衝層113が形成されている。緩衝層113とトンネル105の壁面との間の空間には埋め戻し層115が設けられている。
【0020】
以下では、図に示すように、トンネル105の幅方向にX軸、トンネル105の長手方向(
図1の紙面に直交する方向)にY軸、鉛直方向にZ軸を取ったXYZ座標系を設定し、各構成要素の位置関係の説明にX,Y,Zを用いるものとする。また、「前方」、「後方」といったような「前後」の概念をもつ文言を用いる場合には、+Y方向を「前」、−Y方向を「後」とする。
【0021】
上記の施設101の緩衝層113は、ベントナイトで形成され遮水層として機能する。緩衝層113のうちYZ平面に平行な側壁部分である側部緩衝層113aは、吹付け装置1(
図3)を用いた吹付け工法で施工される。例えば、側部緩衝層113aの寸法は、X方向に1m、Y方向に130m、Z方向に8mである。側部緩衝層113aの施工時には、既に、低拡散層111と、埋め戻し層115のうちの側部緩衝層113aにX方向に隣接する部分と、が完成済みである。よって、側部緩衝層113aの施工においては、低拡散層111と埋め戻し層115との間の狭隘な空間での作業を強いられ、重機等を用いることができない。更に、側部緩衝層113aの施工は、ベントナイトを高密度に締固めする必要があるので、ベントナイトの吹付け工法が好適に採用される。以下、側部緩衝層113aとしてベントナイトが充填される予定の上記空間(幅1m、長さ130m、高さ8mの空間)を、「充填予定空間」と称し、符号「R」を付して表すものとする。
【0022】
図3及び
図4を参照し、吹付け装置1について説明する。図に示すように、吹付け装置1は、ホイスト5と、吹付け本体部3と、吹付け材供給部17と、を備えている。吹付け本体部3は、ホイスト5によりワイヤー7を介して充填予定空間R内に吊り下げられる。充填予定空間Rの上方には、Y方向に延在しホイスト5を支持するレール9が設けられており、ホイスト5はレール9に案内されてY方向に移動可能である。更にホイスト5がワイヤー7を巻き上げ/巻き出しすることにより、吹付け本体部3が上下移動する。以上の構成により、吹付け本体部3は、充填予定空間R内においてY,Z方向に平行移動可能である。
【0023】
吹付け材供給部17は、チューブ15を通じてベントナイト(ベントナイト系材料)を吹付け本体部3に供給する部分である。吹付け材供給部17は、通常の吹付け工法で用いられる公知の吹付け機17aと、吹付け機17aに吹付け圧力を供給するコンプレッサ17bと、吹付け機17aにベントナイトを供給する材料供給機17cと、で構成されている。
【0024】
吹付け本体部3は、前方の妻面11に対してベントナイトを噴射する部分である。なお、妻面11は、緩衝層113のうち側部緩衝層113aの前方に設けられたXZ平面に平行な壁の壁面である。妻面11の上にベントナイトを繰り返し吹付け、130mの厚さまで積み重ねていくことにより、最終的には、Y方向に130mの長さをもつ側部緩衝層113aが完成する。
【0025】
吹付け本体部3は、ワイヤー7が掛けられる吊り下げ治具21と、吊り下げ治具21の下面に取り付けられたロボットアーム23と、ロボットアーム23のアーム先端に取り付けられたノズルユニット25と、を備えている。ロボットアーム23の基部側が吊り下げ治具21の下面に固定されており、多関節をもつアームが下方に延びている。ノズルユニット25は、ベントナイトを噴射する吹付けノズル31を備えている。また、吊り下げ治具21の上面には、ロボットアーム23を制御するための制御コンピュータ(ノズル制御部)27が搭載されている。ロボットアーム23は、制御コンピュータ27からの制御信号に基づいて動作し、ノズルユニット25の姿勢及び位置を自在に変更することができる。すなわち、ロボットアーム23は、ノズルユニット25を駆動しノズルユニット25の姿勢及び位置を決めるアクチュエータとして機能する。
【0026】
ロボットアーム23は、制御コンピュータ27に接続された手動コントローラを操作することにより、作業者が手動で操作することもできる。そして、上記の手動操作による一連の動作をプログラムとして制御コンピュータ27に記憶させ、当該プログラムに従う同じ動作を繰り返し再生することができる。
【0027】
吊り下げ治具21には、X方向の両側に張り出すガイドローラ29が取り付けられている。一対のガイドローラ29がそれぞれ両側の壁に押し当てられることで、吹付け圧等に起因する吹付け本体部3の揺動が抑制される。また、吊り下げ治具21の前端面には、前方の画像を撮像するカメラ30が取り付けられている。カメラ30は、撮像した画像を画像信号として制御コンピュータ27に送信する。制御コンピュータ27は、カメラ30で撮像された上記画像をロボットアーム23の動作制御に利用してもよい。
【0028】
以上説明した吹付け装置1では、ロボットアーム23を用いてノズルユニット25の動きを制御するので、常に適切に制御された噴射方向及び噴射距離で噴射を行い、リバウンド材の発生を低減することができる。
【0029】
しかしながら、ある程度のリバウンド材は発生するので、これを回収し吹付け材として再利用することが望まれる。以下、上記の吹付け装置1による吹付け時に発生したリバウンド材の再利用を図るためのリバウンド材回収装置、リバウンド材回収方法、及びリバウンド材再利用方法について説明する。
【0030】
図5は、上述の吹付け装置1にリバウンド材回収装置51を組み合わせた状態を示す図である。
図5に示すように、リバウンド材回収装置51は、吸引器53と、空気搬送機55と、集塵機57と、フレキシブルコンテナ(貯留部)59と、を備えている。吸引器53は、作業者Hが手動で操作する吸引ノズルを含み、吹付け面12の手前の落下位置に落下したリバウンド材Bを吸引するものである。空気搬送機55は、コンプレッサ(不図示)から供給される空気と一緒に、吸引器53からのリバウンド材Bを搬送するものであり、公知の空気搬送機を使用することができる。空気搬送機55により、リバウンド材Bと空気は、搬送ホース56を通じて集塵機57に送り込まれる。集塵機57は、導入されたリバウンド材Bを空気と分離して重力で下方に排出するものである。フレキシブルコンテナ59は、集塵機57から排出されたリバウンド材Bを貯留するものである。
【0031】
図6に示すように、集塵機57は、導入空間Dを画成する金属製の本体部61を有している。本体部61の下部には、円錐形状に径が絞られた円錐部61aが形成されており、当該円錐部61aの下端部に排出口63が設けられている。排出口63には、逆止弁63aが取り付けられており、外部から導入空間Dへの空気等の逆流が防止される。また、排出口63には、円錐部61aの下方に配置されるフレキシブルコンテナ59が着脱可能に取り付けられる。円錐部61aのやや上方の位置において本体部61の側面に、搬送ホース56からのリバウンド材を導入する導入口65が設けられている。本体部61の上部側面には、排気口67が設けられており、排気口67の外側にはターボファン(排気手段)69が接続されている。導入空間D内には、導入口65と排気口67との間を仕切るフィルタ75が設置されている。
【0032】
集塵機57は、本体部61を支持するフレーム部71を有している。フレーム部71は、フレキシブルコンテナ59の下方まで延在する複数の脚71aを有しており、脚71aの下端には、それぞれキャスター73が取り付けられている。フレーム部71には、ターボファン69の制御を行う制御盤77も取り付けられている。上記のようなキャスター73の存在により、フレキシブルコンテナ59が取り付けられた状態の集塵機57を所望の場所に容易に移動させることができる。
【0033】
集塵機57の動作は次の通りである。空気搬送機55からのリバウンド材Bは、空気と一緒に導入口65を通じて導入空間D内に導入される。リバウンド材Bは、本体部61の内側面の接線方向に沿って高速で導入され、円錐部61aの内側面に沿って空気と一緒に螺旋状に回転しながら空気と分離され、重力で下方に移動していく。その後、リバウンド材Bは、逆止弁63aを通過し排出口63から下方に排出される。排出口63から排出されたリバウンド材Bは、フレキシブルコンテナ59内に蓄積されていく。その一方、リバウンド材Bと一緒に導入空間Dに送り込まれた空気は、矢印Aで示されるように、ターボファン69の吸引によって上方に移動し、フィルタ75で固体成分が除去された後、排気口67から強制的に外部に排気される。
【0034】
続いて、上述のようなリバウンド材回収装置51を用いたリバウンド材回収方法、及びリバウンド材再利用方法について説明する。本実施形態のリバウンド材再利用方法では、以下に説明する吹付け工程、リバウンド材回収工程、リバウンド材搬送工程、及び材料移送工程を、同時並行で行う。
【0035】
(吹付け工程)
図5に示すように、吹付け装置1を用いて、ロボットアーム23を制御しながら、吹付け面12(妻面11又は妻面11上に積層されたベントナイト層)上にベントナイトを吹付けていく。このとき、ある程度の量のリバウンド材Bが発生し、吹付け面12の手前側の下方に落下する。
【0036】
(リバウンド材回収工程)
図5に示すように、作業者Hが吸引器53の吸引ノズルを操作し、上記の落下地点のリバウンド材Bを吸引していく。なお、ここでは、空気搬送機55の出力を調整することで、リバウンド材Bが発生する速度よりも速い速度で落下地点のリバウンド材Bを処理することが好ましい。この処理によれば、発生したリバウンド材Bの全量を回収可能な能力をもって、リバウンド材Bのほぼ全量が回収されるので、落下地点に残留するリバウンド材Bを蓄積させずに、円滑で連続的な回収が可能になる。
【0037】
吸引されたリバウンド材Bは、空気搬送機55により搬送ホース56内を圧送される。その後、空気と一緒に集塵機57に送り込まれたリバウンド材Bは、集塵機57で空気と分離され排出口63を通じてフレキシブルコンテナ59内に貯留されていく(リバウンド材貯留工程)。一方、集塵機57に送り込まれた空気は、ターボファン69によって強制的に集塵機57の外部に排出される。ここでは、ターボファン69の排気能力を、空気搬送機55による搬送能力よりも大きくなるように調整してもよい。このような調整によれば、集塵機57の排出口63から空気がほとんど排出されなくなる。また、リバウンド材回収工程においては、次に説明するバランス調整工程を実行してもよい。
【0038】
(バランス調整工程)
バランス調整工程では、フレキシブルコンテナ59内の上部に予め圧力計(圧力モニタ手段)59cを設置する。圧力計59cは、フレキシブルコンテナ59の内部の圧力(モニタ結果)を検知する。圧力計59cをモニタしながら、空気搬送機55による搬送能力と、ターボファン69の排気能力とのバランスを調整し、フレキシブルコンテナ59内部の圧力が大気圧に等しくなるようにする。この調整によれば、集塵機57とフレキシブルコンテナ59との間の空気の出入りはほとんど発生しなくなり、集塵機57に導入された空気は、ほぼ過不足なく排気口67経由で排出されることになる。なお、ターボファン69の排気能力の調整は、例えば、制御盤77(
図6)に設けられた操作パネルを操作することで、作業者が手動で行う。
【0039】
(リバウンド材搬送工程)
フレキシブルコンテナ59を集塵機57から取り外して、蓄積されたリバウンド材Bを材料供給機17cのホッパ17dに投入する。
【0040】
(材料移送工程)
ホッパ17dに投入されたリバウンド材Bは、別ルートでホッパ17dに投入される新しいベントナイトと混合され、吹付け材として材料供給機17cから吹付け機17aに供給される。そして、上記の吹付け材は、コンプレッサ17b(
図3)の圧力によって、吹付け機17aからチューブ15を通じて吹付けノズル31に移送され、吹付けノズル31から吹付け面12に向けて噴射される。
【0041】
続いて、以上説明したリバウンド材回収装置51、リバウンド材回収方法、及びリバウンド材再利用方法による作用効果を説明する。
【0042】
リバウンド材回収装置51、リバウンド材回収方法、及びリバウンド材再利用方法によれば、集塵機57の導入空間Dでは、リバウンド材Bが排出口63から排出される一方で、リバウンド材Bと一緒に導入された空気はターボファン69によって導入空間Dから外部に強制的に排出される。従って、導入空間Dから排出口63を通じてフレキシブルコンテナ59内のリバウンド材Bに向かう空気が少なく抑えられる。その結果、集塵機57からリバウンド材Bに当たる風が少なく抑えられ、リバウンド材Bの乾燥を抑えることができる。そして、乾燥を抑えることにより、リバウンド材Bの含水比を、吹付け材としての再利用に適する程度に確保することができる。
【0043】
特に、前述のバランス調整工程を実行した場合、集塵機57とフレキシブルコンテナ59との間の空気の出入りはほとんど発生しなくなるので、フレキシブルコンテナ59内の空気の流動が抑えられ、リバウンド材Bの乾燥がより低減される。
【0044】
また、リバウンド材回収工程においては、発生したリバウンド材Bのほぼ全量を回収するので、落下地点に残留するリバウンド材を蓄積させずに、円滑に再利用することができる。リバウンド材回収工程では、前述のリバウンド材回収方法を用いることにより、回収したリバウンド材の乾燥が抑制される。
【0045】
また、リバウンド材回収装置51では、空気搬送機55が、吸引器53の吸引力と、搬送ホース56内でリバウンド材Bを搬送するための圧力と、を発生させる。このような空気搬送でリバウンド材Bを充填予定空間Rの上方まで搬送するので、狭隘な充填予定空間Rに複雑な搬送手段を構築する必要がない。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態において、第1実施形態と同一又は同等な構成部分には同一符号を付し重複する説明を省略する。
【0047】
図7に示すように、本実施形態では、材料供給機17cのホッパ17dが、集塵機57から排出されるリバウンド材を受け入れる受入手段として機能している。すなわち、ホッパ17dが集塵機57の排出口63の下方に位置するように材料供給機17cが配置されている。
【0048】
このリバウンド材回収装置51’を用いたリバウンド材回収方法、及びリバウンド材再利用方法においても、前述の吹付け工程、リバウンド材回収工程、リバウンド材搬送工程、及び材料移送工程を、同時並行で行う。但し、第1実施形態と異なる点として、リバウンド材回収装置51’によるリバウンド材搬送工程では、集塵機57からのリバウンド材Bが自動的に材料供給機17cに供給され、更に材料供給機17cを通じて吹付け機17aに自動的に送り込まれる。なお、材料供給機17cには、別ルートで新しいベントナイトも供給され、当該新しいベントナイトと上記リバウンド材Bとが混合されて吹付け機17aに供給される。このような構成により、リバウンド材を吹付けに直接再利用することができ、再利用の連続性が向上する。
【0049】
以上説明した第2実施形態のリバウンド材回収装置51’、リバウンド材回収方法、及びリバウンド材再利用方法によっても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、集塵機57に設けられたターボファン69の存在により、集塵機57からホッパ17d内のリバウンド材Bに当たる風が少なく抑えられ、リバウンド材Bの乾燥を抑えることができる。そして、リバウンド材Bの含水比を、吹付け材としての再利用に適する程度に確保することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…吹付け装置、17a…吹付け機、17c…材料供給機(受入手段)、31…吹付けノズル、51,51’…リバウンド材回収装置、53…吸引器、55…空気搬送機、57…集塵機、59…フレキシブルコンテナ(受入手段,貯留部)、59c…圧力計(圧力モニタ手段)、63…排出口、69…ターボファン(排気手段)、73…キャスター、101…余裕深度処分施設、B…リバウンド材、D…導入空間。