(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉄道車両の車体と台車との間に介装されて車体の台車に対する水平横方向の変位を規制するストッパにおいて、シリンダと、上記シリンダ内に出入り自由に挿入されるロッドと、上記ロッドに連結されるとともに上記シリンダ内に摺動自在に挿入されて上記シリンダ内に流体が充填される伸側室と圧側室とを形成するピストンと、上記圧側室と上記伸側室とを連通する圧側通路と、上記伸側室と上記圧側室とを連通するとともに上記伸側室から上記圧側室へ向かう流体の流れのみを許容する伸側通路と、上記圧側通路に上記圧側室から上記伸側室へ向かう流体の流れのみを許容するとともに上記ピストンの上記シリンダに対する伸切位置から上記圧側室を圧縮する方向への変位によって開弁圧を小さくするリリーフ弁を設けたことを特徴とするストッパ。
上記シリンダに出入りする上記ロッドの体積を補償する補償室と、当該補償室を附勢する加圧室と、上記補償室から上記圧側室への流体の流れのみを許容する吸込通路と、上記圧側室と上記補償室とを連通する排出通路と、当該排出通路に設けられて上記圧側室から上記補償室へ向かう流体の流れのみを許容する排出リリーフ弁とを備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のストッパ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一実施の形態におけるストッパSは、
図1から
図3に示すように、鉄道車両の台車Wに固定されるシリンダ1と、シリンダ1内に出入り自由に挿入されるロッド2と、ロッド2に連結されるとともにシリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内に流体が充填される伸側室R1と圧側室R2とを形成するピストン3と、圧側室R2と伸側室R1とを連通する圧側通路4と、伸側室R1と圧側室R2とを連通するとともに伸側室R1から圧側室R2へ向かう流体の流れのみを許容する伸側通路5と、圧側通路4に圧側室R2から伸側室R1へ向かう流体の流れのみを許容するとともにピストン3のシリンダ1に対する伸切位置から上記圧側室R2を圧縮する方向への変位によって開弁圧を小さくするリリーフ弁6とを備えて構成され、車体Bが台車Wに対して著大に水平横方向に振動する際にロッド2を車体Bに衝合させて、車体Bのそれ以上の変位を抑制するとともに車体Bの台車に対する振動を減衰するものである。なお、シリンダ1を車体Bに取り付けてロッド2を台車Wに衝合させるようにすることもできる。
【0013】
以下、詳細に説明すると、シリンダ1は、筒状とされており、シリンダ1の
図1中左端がロッド2を摺動自在に軸支する位置決め部材としての環状のロッドガイド8によって閉塞されるとともに、
図1中右端もボトム部材9によって閉塞されている。
【0014】
そして、シリンダ1内は、ロッド2の一端である
図1中右端に連結されるピストン3によって、伸側室R1と圧側室R2とに区画されている。なお、伸側室R1は、ストッパSが伸長する際に圧縮される室であり、圧側室R2は、ストッパSが収縮する際に圧縮される室である。
【0015】
また、シリンダ1内には、仕切部材10が設けられており、この仕切部材10によって、仕切部材10の
図1中左方に、伸側室R1および圧側室R2が形成されている。また、シリンダ1の仕切部材10より
図1中右方は、内径が仕切部材10の
図1中左方より小径となっており、この小径部1a内に摺動自在に挿入されるフリーピストン11が挿入されており、このシリンダ1内であって仕切部材10とボトム部材9との間の空間が補償室Rと加圧室Pとに区画されている。なお、図示したところでは、シリンダ1の仕切部材10よりも
図1中方を小径として小径部1aを形成しているが、このように小径としなくともよい。
【0016】
そして、補償室Rと圧側室R2とは、吸込通路12と排出通路13によって連通されている。吸込通路12には、逆止弁12aが設けられていて、この吸込通路12を補償室Rから圧側室R2への流体の流れのみを許容するよう設定している。また、排出通路13には、圧側室R2から補償室Rへ向かう流体の流れのみを許容する排出リリーフ弁14が設けられている。
【0017】
補償室Rは、ストッパSが伸長してシリンダ1内からロッド2が退出する際には、吸込通路12を介してロッド2が退出した体積分に見合った流体をシリンダ1内へ供給し、反対に、ストッパSが収縮する場合、圧側室R2内の圧力が排出リリーフ弁14の開弁圧に達すると、上記収縮に伴ってシリンダ1内へ侵入するロッド2の体積分の流体を排出通路13を介してシリンダ1内から吸収することで、シリンダ1内に出入りするロッド2の体積の補償を行うようになっている。加圧室Pは、内部に気体が封入されており、この内部圧力でフリーピストン11を介して補償室Rを押圧して、シリンダ1内を加圧して、ストッパSを常に伸長させるよう附勢している。なお、加圧室Pは、内部に気体を封入しているが、大気開放してフリーピストン11を補償室Rへ向けて附勢するばね等の弾性体を収容するようにしてもよいし、気体と弾性体とでフリーピストン11を附勢するようにしてもよい。加圧室P内の圧力は、ストッパSに外力が作用しない状態では、ピストン3が位置決め部材としてのロッドガイド8に当接する伸切位置へ位置決めることができるよう、少なくとも、大気圧以上に設定されればよく、また、加圧室Pを大気開放して弾性体を設けるのであれば当該弾性体の附勢力でピストン3がロッドガイド8に当接する伸切位置へ位置決めることができるようになっていればよい。さらに、圧側室R2内に、ピストン3をロッドガイド8側へ附勢するばね等の弾性体を収容する場合には、加圧室Pを大気開放することもできる。ただし、加圧室Pに気体を封入する方が、弾性体を設けるよりもストッパSが軽量となる利点がある。
【0018】
また、この場合、伸側室R1と圧側室R2と補償室R内には、流体として作動油等の液体が充満されるが、流体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体を使用することもできるし、気体とする場合には体積変化に富んでいるため、補償室Rおよび加圧室Pを省略することができる。
【0019】
つづいて、ロッド2の
図1中左端には、ゴムや合成樹脂等の弾性体15が固定されており、当該弾性体15は、車体Bが台車Wに対して大きく変位すると、ロッド2に先んじて車体Bに衝合して車体Bと台車Wとの衝突による衝撃を緩和するようになっている。
【0020】
ピストン3には、圧側室R2と伸側室R1とを連通する圧側通路4と伸側通路5とが設けられている。伸側通路5には、逆止弁5aが設けられており、伸側通路5は、伸側室R1から圧側室R2へ向かう流体の流れのみを許容する通路に設定されている。
【0021】
また、圧側通路4の途中には、リリーフ弁6が設けられている。圧側通路4は、ピストン3を当該ピストン3の摺動方向である
図1中左右方向に貫通して伸側室R1と圧側室R2とを連通する貫通孔とされており、この貫通孔内にリリーフ弁6が収容されている。
【0022】
さらに、圧側通路4は、圧側室R2側の端部が小径とされていて小径部4aと大径部4bとが形成され、当該小径部4aと大径部4bの境に段部が設けられており、当該段部でリリーフ弁6における環状の弁座61を形成している。
【0023】
リリーフ弁6は、
図1及び
図2に示すように、上記した環状の弁座61と、貫通孔である圧側通路4内に当該圧側通路4に沿って移動可能に収容されて弁座61に離着座する弁体62と、当該弁体62を弁座61へ向けて附勢する附勢部材としてのコイルばね63と、コイルばね63の反弁座側に当接するとともにピストン3が伸切位置にある状態で位置決め部材としてのロッドガイド8によって押されて上記コイルばね63を押圧するばね受部材64とを備えて構成されている。
【0024】
弁体62は、上記弁座61に離着座するポペット型の弁頭62aと、当該弁頭62aの反弁座側の外周から立ち上がる筒部62bと、弁頭62bの側方から開口して筒部62b内に通じる透孔62cとを備えて構成されている。そして、この弁体62は、弁頭62aを弁座61へ向けて圧側通路4内に収容されると、筒部62bの外周を圧側通路4の内周に摺接させて、圧側通路4に沿う
図2中左右方向へ移動可能とされる。つまり、弁体62は、ピストン3のシリンダ1に対する摺動方向と同一方向に移動可能である。なお、弁頭62aの外周と圧側通路4との間には環状隙間が形成されており、透孔62cが圧側通路4の内周によって閉塞されることが無いようになっている。
【0025】
また、圧側通路4の伸側室R1側端の内周には、筒状のカラー65が固定されている。このカラー65は、伸側室R1側端の内周に内方へ突出するフランジ65aを備えるとともに、外周に螺子部65bを備えて、圧側通路4の内周に螺着されている。
【0026】
このカラー65の内周には、ばね受部材64が摺動自在に挿入されている。具体的には、ばね受部材64は、筒状の押圧軸64aと、当該押圧軸64aの外周に設けたフランジ状のばね受部64bと、押圧軸64aの後端に設けた複数の切欠64cとを備えており、押圧軸64aを上記したカラー65のフランジ65aの内周に摺接させることで、圧側通路4に沿う軸方向となる
図2中左右方向の移動がぶれることなく案内されるようになっている。
【0027】
なお、ばね受部64bとカラー65の内周との間には環状隙間が形成されており、ばね受部材64のばね受部64bとカラー65との間の空間が完全に閉鎖されないようになっている。ばね受部64bの外周をカラー65の内周に摺接させる場合、ばね受部64bの外周或いはカラー65の内周或いはその両方に上記空間が閉鎖されないように切欠などを設けるようにしてもよい。
【0028】
そして、このばね受部材64のばね受部64bと弁体62の弁頭62aの反弁座側面との間には、コイルばね63が介装され、コイルばね63の一端である
図2中右端が弁体62の筒部62b内に収容される。このようにすることで、コイルばね63が径方向に位置決めされるとともに、圧側通路4の内周へ干渉することが防止され、シリンダ1内でコンタミが発生することを防止できる。
【0029】
なお、このピストン3の伸側室R1側には、ディスク状のプレート20が積層されており、このプレート20は、ばね受部材64の押圧軸64aの挿通を許容するが、カラー65の外径より小径な孔20aと、伸側通路5に対向して伸側通路5と伸側室R1との連通を確保する孔20bを備えており、このプレート20を積層することによって、圧側通路4内に収容されるリリーフ弁6の各部材のピストン3からの脱落を確実に防止することができるが、プレート20を廃止するようにしてもよい。
【0030】
このように構成されたリリーフ弁6は、ストッパSが収縮行程にあって、弁体62が弁座61から離座する開弁動作を行うと、圧側室R2の作動油は、圧側通路4における小径部4a内、弁座61と弁体62との間の環状隙間、透孔62c、押圧軸64a内を介して伸側室R1へ移動することができ、弁座61と弁体62との間の環状隙間で流路を制限することで液体の流れに抵抗を与えるようになっている。
【0031】
また、ばね受部材64における押圧軸64aは、コイルばね63によって附勢されて、ピストン3から
図2中左方であるロッドガイド8側へ向けて突出している。ピストン3が加圧室Pによって加圧されたシリンダ1の圧力で押圧されて、位置決め部材としてのロッドガイド8に当接する状態では、押圧軸64aの
図2中左端がロッドガイド8に衝合し押されて、圧側通路4内で
図2に示す位置へ位置決めされる。この状況では、ばね受部材64のばね受部64bが圧側通路4の内方、つまり、
図2中右方へ押し込まれるので、コイルばね63は弁体62が弁座61に着座している状況下では最圧縮状態となっていて、弁体62を弁座61へ押圧する附勢力が最大となる。なお、ロッドガイド8に押圧軸64aが当接しても、ロッドガイド8との当接端である後端には切欠64cが設けられているので、ばね受部材64によって圧側通路4が閉塞されることはなく、リリーフ弁6の開弁の際には、押圧軸64a内を介して圧側通路4が伸側室R1に連通できるようになっている。
【0032】
これに対して、ピストン3がロッドガイド8から離間した位置にあり、また、押圧軸64aの
図1中左端も当該ロッドガイド8から離間する状態、つまり、
図4に示す状態では、ばね受部材64のばね受部64bがコイルばね63の附勢力によってカラー65のフランジ65aに当接する位置に位置決めされ、コイルばね63は弁体62が弁座61に着座している状況下では最も圧縮量が小さい状態であり、弁体62を弁座61へ押圧する附勢力が最小となる。
【0033】
さらに、ピストン3がロッドガイド8から離間した位置にあるものの、押圧軸64aの
図1中左端が当該ロッドガイド8に当接する状態、つまり、
図3に示す状態では、ばね受部材64のばね受部64bがカラー65のフランジ65aから離間してコイルばね63を圧縮するので、コイルばね63は弁体62が弁座61に着座している状況下では弁体62を弁座61へ押圧する附勢力が最大と最小の中間となり、その附勢力はピストン3とロッドガイド8との離間距離が大きくなると小さくなるようになっている。
【0034】
したがって、リリーフ弁6は、この実施の形態の場合、ピストン3が位置決め部材としてのロッドガイド8に当接してそれ以上のピストン3のシリンダ1から抜け出る方向への移動が規制される伸切位置にある場合、附勢部材としてのコイルばね63が最も押し縮められる状態となるので開弁圧が最大となり、ピストン3が伸切位置から圧側室R2を圧縮する方向へ変位してロッドガイド8から離間するものの押圧軸64aがロッドガイド8に当接している場合、ピストン3がシリンダ1に対して圧側室R2を圧縮する方向へ変位する変位量が大きくなればなるほどコイルばね63の圧縮量が小さくなるために、当該変位量が大きくなればなるほど開弁圧が小さくなり、ピストン3および押圧軸64aともにロッドガイド8から離間するとコイルばね63の圧縮量が最小となってピストン3がそれ以上ロッドガイド8から離間する方向へ変位しても当該圧縮量に変化はなく、開弁圧は最小になる。
【0035】
さて、このように構成されたストッパSは、この実施の形態の場合、シリンダ1を台車Wに固定するようになっており、具体的にはたとえば、台車Wの中心ピン挿通孔の内周側に取付けられる。他方、ロッド2は、具体的にはたとえば、車体Bに延設される車体Bの一部としての中心ピンに所定間隔Lを空けて対向させており、車体Bが台車Wに対して中立位置から所定間隔L以上変位すると、中心ピンがロッド2の先端に取り付けた弾性体15を介してロッド2に衝合するようになっている。なお、ストッパSは、図示したところでは、中心ピンの右側のみに配置されているが、実際には、中心として台車Wにおける中心ピン挿通孔の左側内周にも設置されており、車体Bが中立位置から台車Wに対して左側へ所定間隔L以上変位しても図示しない左側のストッパSによって変位が規制されるようになっている。
【0036】
また、反対に、シリンダ1を車体Bに固定するようにして、ロッド2を台車Wに対向させるようにしてもよい。さらに、車体Bと台車Wの一方にシリンダ1を固定するには、車体B(台車W)に直接に固定する場合のほか車体B(台車W)に一体化される付属物を介して間接的に固定することも含まれ、車体Bと台車Wの他方にロッド2を衝合させるには、同様に、車体B(台車W)に直接にロッド2を衝合させる場合のほか車体B(台車W)に一体化される付属物を介して間接的に衝合させることも含まれる。
【0037】
加えて、ストッパSの設置箇所は、上記の車体Bの一部である中心ピンと台車Wの中心ピン挿通孔との間のほか、車体Bの台車Wの変位を規制可能な部位に設定するようにしてもよい。
【0038】
つづいて、ストッパSの作動について説明する。車体Bに左右振動が作用して台車Wに対して所定間隔L以上変位して、車体Bがロッド2に衝合する際、車体Bとシリンダ1との接近でピストン3をシリンダ1内へ押し込む力により圧縮される圧力室R1内の圧力がリリーフ弁6の開弁圧に達しない状態では、ストッパSは収縮せず弾性体15の圧縮のみで車体Bの振動を減衰させるともに、車体Bと台車Wの衝突の衝撃を緩和する。
【0039】
これに対して、車体Bがロッド2をシリンダ1内へ押し込む力により圧縮される圧側室R2内の圧力がリリーフ弁6の開弁圧に達すると、リリーフ弁6が圧側流路4を開放して圧側室R2内の液体を伸側室R1へ抵抗を与えながら逃がすとともに、排出リリーフ弁14も開弁して排出通路13を通じてロッド2がシリンダ1内に侵入した体積分の液体を圧側室R2から補償室Rへ抵抗を与えながら排出させるので、ピストン3はシリンダ1内に押し込まれ、ストッパSは、車体Bに振動方向とは逆方向の減衰力を作用させる。
【0040】
したがって、ストッパSは、圧縮作動する場合、リリーフ弁6及び排出リリーフ弁14によって減衰力を発揮して、車体Bの台車Wに対する振動を抑制することになる。ここで、リリーフ弁6の開弁圧は、上記したように、ピストン3が位置決め部材であるロッドガイド8によって設定される伸切位置から圧側室R2へ圧縮する方向へ変位すると、変位量に応じて開弁圧が小さくなり、やがて、ピストン3がシリンダ1に対して圧側室R2を圧縮する方向へ変位して押圧軸64aとが当接しない位置にまで達すると最小となる。
【0041】
このことから、ストッパSは、ピストン3が伸切位置から圧側室R2を圧縮する方向へ変位すると、ロッド2がシリンダ1内に侵入する圧縮動作を抑制する減衰力が徐々に低下し、コイルばね63がロッドガイド8によって押圧されない状態となると当該減衰力が最小となる。
【0042】
このように、ストッパSの減衰力が小さくなるということは、
図1中でストッパSが車体Bと台車Wとのそれ以上の接近を最低限の減衰力で抑制するが、当該接近を過剰に邪魔することがなくなるということである。つまり、ストッパSは、リリーフ弁6が開弁するまでは圧縮作動しないストッパとして機能するが、ピストン3がロッドガイド8から離間して位置決め部材であるロッドガイド8がばね受部材64を介してコイルばね63を押圧しなくなる位置まで変位すると減衰力を低下させるので、車体Bが台車Wに対してストッパSを圧縮する方向へ変位し易くなるのである。
【0043】
ストッパSが圧縮作動をすると車体Bが台車Wに対して変位し易くなり、ストッパSが最圧縮されると車体Bの上記変位を止めることになるが、それまでは、圧縮作動状態にあるストッパSは収縮しないストッパとしては機能しないため、車体Bの台車Wに対するストローク範囲が拡大されることになり、本願発明のストッパSによれば、地震時に鉄道車両の脱線を効果的に防止することができる。
【0044】
その後、車体Bの台車Wに対する振動方向が逆転して、車体Bがロッド2から離間すると、ピストン3には大気圧の他には圧側室R2を圧縮する方向の外力が作用しない状態となり、加圧室Pによって加圧された吸込通路12に設けた逆止弁12aが開弁して補償室Rから圧側室R2内に液体が供給されて、ピストン3がシリンダ1に対して伸切位置である
図1中左方へと押圧され、さらに、伸側通路5に設けた逆止弁5aが開弁して伸側室R1から圧側室R2へ液体が移動可能となるため、ピストン3は伸切位置であるロッドガイド8へ衝合する位置にまで変位することになる。
【0045】
また、ストッパSが車体Bに押圧されて圧縮作動を呈した後、ピストン3が伸切位置へ戻るまでの間に、ストッパSが再び、車体Bによって押圧されるような場合には、リリーフ弁6だけによる減衰力は小さくなっており、ストッパSは圧縮され易くなっている。つまり、この状況下では、ストッパSを圧縮せしめようとする外力に対して、ストッパSがこの圧縮を抑制するよう出力する減衰力は小さくなっているので、この場合にも、車体Bの台車Wに対するストローク範囲が拡大されることになり、本願発明のストッパSによれば、地震時に鉄道車両の脱線を効果的に防止することができる。
【0046】
なお、ピストン3が伸切位置へ復帰するまでの時間を調節するには、たとえば、伸側通路5に絞りなどを設けるようにすればよい。そうすることで、伸側室R1から圧側室R2へ液体が移動するのに時間がかかり、ストッパSの伸長時においてピストン3が伸切位置まで復帰するまでの時間を長くすることができるとともに、復帰時間をチューニングすることができる。なお、復帰時間のチューニングは、加圧室Pの附勢力の設定よっても行うことができる。
【0047】
さらに、この実施の形態のストッパSの場合、シリンダ1にピストン3に衝合して当該ピストン3のシリンダ1に対する伸切位置を位置決める位置決め部材を設け、圧側通路4がピストン3をピストン3の摺動方向に貫通して伸側室R1と圧側室R2とを連通する貫通孔であり、リリーフ弁6が圧側通路4内に設けた弁座61と、当該圧側通路4内に当該圧側通路4に沿って移動可能に収容されて弁座61に離着座する弁体62と、弁体62を弁座61へ向けて附勢するとともにピストン3が伸切位置にある状態で位置決め部材によって押圧される附勢部材としてのコイルばね63を備えているので、ピストン3のシリンダ1に対する位置によってリリーフ弁6の開弁圧を機械的に変化させることができる。なお、リリーフ弁6の開弁圧を変更するには、上記のような構造の他にも、リリーフ弁6を電磁弁等としてピストン3の位置をストロークセンサ等で監視して、リリーフ弁6の開弁圧を変更することも可能であるが、上記構造を採用することで、低コストで安定してリリーフ弁6の開弁圧を変化させることができる。また、リリーフ弁6の開弁圧は、ピストン3が伸切位置にある状態で最大で、その位置から圧側室R2を圧縮する方向へ変位すると徐々に小さくなり、押圧軸64aがロッドガイド8から離間すると最小となるようになっているが、リリーフ弁6を電磁弁等とする場合、たとえば、ピストン3が伸切位置から圧側室R2を圧縮する方向へ所定量変位するまではリリーフ弁6の開弁圧を一定とし、所定量以上変位すると当該開弁圧を最小とするようにする等というように、ピストン3が伸切位置から所定量以上変位するとリリーフ弁6の開弁圧を最小にするようにしてやればよい。つまり、リリーフ弁6の開弁圧を、ピストン3のシリンダ1に対する伸切位置から圧側室R2を圧縮する方向への変位によって小さくする概念には、ピストン3が伸切位置から所定量以上変位するとリリーフ弁6の開弁圧を最小にしたり、伸切位置から所定量以上変位するとリリーフ弁6の開弁圧を徐々に最小にしたりするといった概念が含まれ、ピストン3が伸切位置から所定量変位するまでにはリリーフ弁6の開弁圧を一定するようにすることもできるし、また、鉄道車両に適するのであれば当該開弁圧を一旦大きくすることもでき、このような設定についても上記概念の範疇に含まれる。なお、リリーフ弁6の最小
の開弁圧は、任意に設定することができ、車体Bの重量など諸元に適するように設定すればよい。
【0048】
また、ばね受部材64を廃して、コイルばね63の端部を貫通孔である圧側通路4の端部から位置決め部材としてのロッドガイド8に向けて突出させておき、ピストン3が伸切位置にある際に、ロッドガイド8で直接にコイルばね63を押圧するようにしてもよく、部品点数を削減することができる。この実施の形態のストッパSでは、ばね受部材64を設け、このばね受部材64の圧側通路4から突出する押圧軸64aがロッドガイド8に当接して附勢部材としてのコイルばね63を押圧するようになっているので、コイルばね63をブレなく押圧することができ、コイルばね63の設置が容易となる。なお、位置決め部材は、この場合、ロッドガイド8とされているが、たとえば、シリンダ1内にロッドガイド8とは別にピストン3の伸切位置を規制するようにしてもよい。また、附勢部材にあっても、コイルばね63以外にゴムやコイルばね以外のばね等といった弾性体を使用するようにしてもよい。
【0049】
さらに、この実施の形態のストッパSにあっては、圧側通路4内に筒状であって内周にフランジ65aを備えて上記貫通孔に固定されるカラー65を設け、弁体62が弁座61に離着座するポペット型の弁頭62aと、弁頭62aの反弁座側の外周から立ち上がり圧側通路4内に摺接する筒部62bとを備え、ばね受部材64がカラー65のフランジ65aの内周に摺接する中空な押圧軸64aと、押圧軸64aの外周に設けられてカラー65内に収容されるフランジ状のばね受部64bとを備え、附勢部材としてのコイルばね63がばね受部64bと弁体62の弁頭62aとの間に介装されるようになっているので、コイルばね63がカラー65と弁体62の筒部62bの内周側に配置されて伸縮の際にガイドされるために、弁体62の摺動面である圧側通路4にコイルばね63が接触することがなく当該摺動面が保護されるので、弁体62のスムーズな移動が長期間にわたって保障され、また、押圧軸64aが中空であるから圧側通路4を閉塞することなくフランジ65aの内周に摺接してガイドされるようになっており、コイルばね63が干渉するカラー65の内周面に摺接していないのでばね受部材64の円滑な移動も長期間にわたって保障される。
【0050】
そしてさらに、この実施の形態のストッパSにあっては、補償室Rと、当該補償室Rを附勢する加圧室Pと、補償室Rから圧側室R2への流体の流れのみを許容する吸込通路12と、圧側室R2と補償室Rとを連通する排出通路13と、排出通路13に設けられて圧側室R2から補償室Rへ向かう流体の流れのみを許容する排出リリーフ弁14とを備えているので、加圧室Pの圧力によってシリンダ1内を加圧して、伸側室R1を圧縮する方向へピストン3を附勢でき、ピストン3を伸切位置に復帰させることができ、さらに、ストッパSの圧縮作動時に排出リリーフ弁14によって圧側室R2内の圧力を加圧室Pで附勢される補償室R内の圧力以上に昇圧させることができ、ストッパSが圧縮されずに堪えることができる荷重を大きく設定することでき、ストッパ機能を効果的に発揮できる。
【0051】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。