(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した、蓄電池を床下空間に設置するタイプの蓄電池の設置構造と、蓄電池を床上空間に設置するタイプの蓄電池の設置構造とは、いずれも、特に高さ方向の寸法制約が大きく、蓄電池を扁平な形にする必要があり、汎用的な蓄電池を採用することができず、その分、コスト高となっていた。
【0006】
また、蓄電池を床下空間に設置するタイプの蓄電池の設置構造では、蓄電池のメンテナンスをし難いという問題点もあった。
【0007】
一方、蓄電池を床上空間に設置するタイプの蓄電池の設置構造では、重量物である蓄電池を支持するために床の補強が別途必要となるという問題点もあった。
【0008】
そこで、本発明は、高さ方向の寸法制約が緩和され、汎用的な蓄電池を採用することができる蓄電池の設置構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の蓄電池の設置構造は、建物の内部に蓄電池を設置するための蓄電池の設置構造であって、前記建物の床部に開口が設けられ、該開口を通じて床上領域から床下領域に跨って、前記蓄電池が設置されていることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記床部は、前記建物の最下階の床部であり、前記蓄電池は、基礎面又は地盤面に支持されているとよい。
【0011】
また、前記床部の前記開口は、前記建物内のデッドスペースに設けられているとよい。
【0012】
ここで、前記デッドスペースは、収納空間の内部であってもよい。
【0013】
また、前記デッドスペースは、階段の下部であってもよい。
【0014】
さらに、前記蓄電池は、上下複数個に分割可能とされており、前記開口から前記床上領域側に取り出し可能とされていてもよい。
【0015】
また、前記蓄電池の下部には、防水パンが設けられているとよい。
【0016】
さらに、前記床下領域に形成された床下空間内に吹出型の空調装置が設置されており、該空調装置の吹出部から吹き出す空調用空気が、前記蓄電池に吹き付け可能とされていてもよい。
【0017】
また、前記床下領域に形成された床下空間内に換気装置が設置されており、該換気装置の吹出部から吹き出す換気用空気が、前記蓄電池に吹き付け可能とされていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明の蓄電池の設置構造は、建物の内部に蓄電池を設置するための蓄電池の設置構造であって、建物の床部に開口が設けられ、開口を通じて床上領域から床下領域に跨って、蓄電池が設置された構成とされている。
【0019】
上記した構成なので、蓄電池を床上領域から床下領域に跨って設置するため、高さ方向の寸法制約が緩和され、比較的安価な汎用的な蓄電池を採用することができる。
【0020】
ここで、床部は、建物の最下階の床部であり、蓄電池は、基礎面又は地盤面に支持されている場合は、基礎面又は地盤面は支持強度が高いので、別途補強せずに済む。
【0021】
また、床部の開口は、建物内のデッドスペースに設けられている場合は、蓄電池が床上空間の居室等に露出しないので、居住者の生活行動や建物内部の意匠性への悪影響が殆どなくて済む。
【0022】
ここで、デッドスペースは、収納空間の内部である場合は、クローゼット等の収納空間は大抵の建物の居住者が必要とするものであるので、汎用的に採用することができる。
【0023】
また、デッドスペースは、階段の下部である場合は、建物が複数階のときは大抵階段を有するので、汎用的に採用することができる。
【0024】
さらに、蓄電池は、上下複数個に分割可能とされており、開口から床上領域側に取り出し可能とされている場合は、蓄電池の分割単位での重量が小さいので、開口から床上領域側に容易に取り出すことができ、メンテナンスや交換等の作業を容易に行うことができる。
【0025】
また、蓄電池の下部には、防水パンが設けられている場合は、万一、床下領域に形成された床下空間が浸水しても、防水パンにより蓄電池が保護されるので、蓄電池の故障を防止することができる。
【0026】
さらに、床下領域に形成された床下空間内に吹出型の空調装置が設置されており、空調装置の吹出部から吹き出す空調用空気が、蓄電池に吹き付け可能とされている場合は、蓄電池を適切な温度状態に保つために必要な温度に設定された空調用空気を蓄電池に吹き付けることで、蓄電池を常に適切な温度状態に保つことができる。
【0027】
また、床下領域に形成された床下空間内に換気装置が設置されており、換気装置の吹出部から吹き出す換気用空気が、蓄電池に吹き付け可能とされている場合は、蓄電池を適切な温度状態に保つために必要な量の換気用空気を蓄電池に吹き付けることで、蓄電池を常に適切な温度状態に保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に示す実施例1〜5に基づいて説明する。
【実施例1】
【0030】
先ず、実施例1の構成について説明する。
【0031】
図1は、実施例1の蓄電池の設置構造を備えた建物1の概略構成を示している。
【0032】
この建物1は、断熱基礎として構築された基礎底盤コンクリート1bと、その側縁に立設された基礎側壁コンクリート1cと、さらにその上に立設された外壁部1dと、その外壁部1dの上端開口を塞ぐ天井部1eとから主に構成されている。
【0033】
そして、この天井部1eと外壁部1dとに囲まれる空間は、床部1aによって床下領域に形成された床下空間3と居室などに用いられる床上領域に形成された床上空間6とが区切られた構成となっている。
【0034】
また、基礎側壁コンクリート1cの床下空間3側には、グラスウールなどの断熱材2が取り付けられており、床下空間3内の熱が屋外に極力漏れない断熱構造となっている。
【0035】
さらに、床上空間6には、下部に隙間10aを確保した開閉可能な扉10Aを有する仕切壁10が設けられ、クローゼット等に用いられる収納空間4が形成されている。
【0036】
そして、床部1aには、開口11が設けられ、この開口11を通じて、床上領域に形成された収納空間4から床下領域に形成された床下空間3に跨って、蓄電池5が設置されている。
【0037】
ここで、蓄電池5の上部の側面には、蓄電池用のパワーコンディショナー5aが取り付けられている。
【0038】
また、蓄電池5の下面は、防水パン12を介して、基礎面である基礎底盤コンクリート1bの上面に支持されている。
【0039】
さらに、蓄電池の上部は、その上面が収納空間4の底面を形成する着脱自在のカバー材13で周囲が覆われている。
【0040】
このカバー材13のパワーコンディショナー5a側の側面には、放熱用ガラリ13aが設けられている。
【0041】
これにより、蓄電池5のメンテナンスや交換等の作業を行いたいときは、扉10Aを開き、カバー材13を取り外せばよい。
【0042】
なお、(パワーコンディショナー5aを含む)蓄電池5が適切でない温度状態に近づくと、カバー材13の放熱用ガラリ13aから収納空間4内に熱が排出され、その熱は、扉10A下部の隙間10aから床上空間6内に排出されて、蓄電池5は適切な温度状態に保たれる。
【0043】
次に、実施例1の作用効果について説明する。
【0044】
このような実施例1の蓄電池の設置構造は、建物1の内部に蓄電池5を設置するための蓄電池の設置構造である。
【0045】
そして、建物1の床部1aに開口11が設けられ、開口11を通じて床上領域を形成する収納空間4から床下領域を形成する床下空間3に跨って、蓄電池5が設置された構成とされている。
【0046】
上記した構成なので、蓄電池5を、床上領域を形成する収納空間4から床下領域を形成する床下空間3に跨って設置するため、高さ方向の寸法制約が緩和され、比較的安価な汎用的な蓄電池5を採用することができる。
【0047】
ここで、床部1aは、建物1の最下階の床部であり、蓄電池5は、基礎面である基礎底盤コンクリート1bの上面に支持されている。
【0048】
このため、基礎面である基礎底盤コンクリート1bの上面は支持強度が高いので、別途補強せずに済む。
【0049】
また、床部1aの開口11は、建物1内のデッドスペースである収納空間4の内部に設けられている。
【0050】
このため、蓄電池5が床上空間6の居室等に露出しないので、居住者の生活行動や建物1内部の意匠性への悪影響が殆どなくて済む。
【0051】
そのうえ、クローゼット等の収納空間4は大抵の建物1の居住者が必要とするものであるので、汎用的に採用することができる。
【0052】
さらに、蓄電池5の下部には、防水パン12が設けられている。
【0053】
このため、万一、床下領域に形成された床下空間3が浸水しても、防水パン12により蓄電池5が保護されるので、蓄電池5の故障を防止することができる。
【0054】
なお、この防水パン12は、その高さが床上空間6と床下空間3とを区切る床部1aまで達しており、床下空間3が満水になるような浸水状態になったとしても蓄電池5を保護することができる。
【実施例2】
【0055】
次に、実施例2について説明する。
【0056】
なお、上記実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0057】
図2は、実施例2の蓄電池の設置構造を備えた建物1の概略構成を示している。
【0058】
この実施例2の蓄電池の設置構造では、蓄電池5が3個の分割パーツ5A,5A,5Aから成ることが上記実施例1の蓄電池の設置構造と主に異なる。
【0059】
すなわち、蓄電池5を重量の小さい分割パーツ5A単位で、開口11から床上領域側である床上空間6に取り出し可能とされているので、蓄電池5のメンテナンスや交換等の作業をより容易に行うことができる。
【0060】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0061】
次に、実施例3について説明する。
【0062】
なお、上記実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0063】
図3は、実施例3の蓄電池の設置構造を備えた建物1の概略構成を示している。
【0064】
この実施例3の蓄電池の設置構造では、床上空間6が2階の床部1fにより、1階の床上空間61と2階の床上空間62とに区切られ、これら床上空間61,62間の連絡通路として設けられた階段14の下部の空間40内に、蓄電池5が設置されていることが上記実施例1の蓄電池の設置構造と主に異なる。
【0065】
すなわち、建物1が2階などの複数階のときは、大抵階段14を有するので、この実施例2の蓄電池の設置構造を汎用的に採用することができる。
【0066】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【実施例4】
【0067】
次に、実施例4について説明する。
【0068】
なお、上記実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0069】
図4は、実施例4の蓄電池の設置構造を備えた建物1の概略構成を示している。
【0070】
この実施例4の蓄電池の設置構造では、内部に図示省略のファンが内蔵された換気装置15が床下空間3内に設置されているとともに、防水パン12の縁部が床部1aまで達していないことが上記実施例1の蓄電池の設置構造と主に異なる。
【0071】
すなわち、一点鎖線で示した通気経路Wのように、蓄電池5を適切な温度状態に保つために必要な量の換気用空気を、換気装置15により蓄電池5へ吹き付けることができる。
【0072】
ここで、換気装置15は、吸入口16から吸入した外気を、ダクト181を介して外気吸込部153から内部に吸い込み、図示省略のフィルターにより浄化した後、吹出部151から吹き出し、床部1aに設けた排気口19から排出した内気を、ダクト183を介して内気吸込部152から吸い込み、内気吐出部154からダクト182を介して吐出口17から吐出するとともに、図示省略の熱交換器で給排気による熱損失を極力小さくすることができる熱交換型の換気装置である。
【0073】
また、防水パン12の高さは、床上空間6と床下空間3とを区切る床部1aまで達しておらず、床下空間3の中間の高さ位置までに抑えられているが、その高さ相当までの浸水状態に対しては蓄電池5を保護することができる。
【0074】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【実施例5】
【0075】
次に、実施例5について説明する。
【0076】
なお、上記実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0077】
図5は、実施例5の蓄電池の設置構造を備えた建物1の概略構成を示している。
【0078】
この実施例5の蓄電池の設置構造では、床下空間3内に吹出型の空調装置としてのエアコンディショナーの屋内機8が設置されており、防水パン12の側面に形成した通気孔12aと吹出部81との間がダクト91で接続されていることが上記実施例1の蓄電池の設置構造と主に異なる。
【0079】
ここで、蓄電池5の側面には、蓄電池5周囲の温度を検知するための図示省略の温度センサーが設置されており、適切でない温度に近づくと、制御部は、蓄電池5を適切な温度状態に保つために必要な温度に設定された空調用空気を吹出部81から吹き出し、通気孔12aから防水パン12内へ強制的に送り込み、一点鎖線で示した通気経路Wを通った空調用空気が蓄電池5の表面に接触して、奪った熱を床上空間6に排出するので、蓄電池5は、適切な温度状態に保たれる。
【0080】
また、吹出型の空調装置としてのエアコンディショナーの屋内機8は、ヒートポンプ式であり、熱媒循環管路により、建物1の屋外に設置された屋外機7と接続されている。
【0081】
さらに、吹出型の空調装置としてのエアコンディショナーの屋内機8は、吹出部81に接続されたダクト91は、途中で流路切替弁93によりダクト92に分岐しており、この分岐したダクト92の上端部は、床部1aに設けられた給気口20に接続されている。
【0082】
すなわち、吹出型の空調装置としてのエアコンディショナーの屋内機8は、通常は、給気口20から空調空気(冷気又は暖気)を床上空間6内に吹き出し、床上空間6を空調するためのものであり、必要なときに、制御部が流路切替弁93を制御して流路を切り替え、上記した蓄電池5を、適切な温度状態に保つことを行うものである。
【0083】
なお、吹出型の空調装置としてのエアコンディショナーの屋内機8は、床下用吹出部82も有しており、床下暖房も行えるものである。
【0084】
要するに、この実施例4の蓄電池の設置構造では、蓄電池5を適切な温度状態に保つために必要な温度に設定された空調用空気を通気孔12aから蓄電池5に吹き付けることができる。
【0085】
また、空調装置としてのエアコンディショナーの屋内機8は、床上空間6も空調可能な空調装置であり、床上空間6を空調する機能を主とし、蓄電池5を適切な温度状態に保つ機能を一機能として有している。
【0086】
さらに、空調装置としてのエアコンディショナーの屋内機8の吹出部81と通気孔12aとの間がダクト91で接続されているため、防水パン12内のみをターゲットとすることができ、無駄な熱量を用いずに済む。
【0087】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【0088】
以上、図面を参照して、本発明を実施するための形態を実施例1〜5に基づいて詳述してきたが、具体的な構成は、これら実施例1〜5に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0089】
例えば、上記した実施例1〜5では、建物1を、説明が簡単なように、単純な構造としたが、勿論、これに限定されず、より複雑な構造として実施してもよい。
【0090】
また、上記した実施例1〜5では、蓄電池5を基礎面である基礎底盤コンクリート1bの上面に支持されて実施したが、これに限定されず、例えば、基礎が布基礎等の場合は、地盤面に支持させて実施してもよい。
【0091】
さらに、上記した実施例1〜5では、開口11を床部1aの端部近傍に設けて実施したが、これに限定されず、床部1aの中間部に設けて実施してもよい。
【0092】
また、上記した実施例1〜5では、1階の床部1aに開口11を設けて実施したが、これに限定されず、他の階の床部に設けて実施してもよい。
【0093】
さらに、上記した実施例1〜5では、開口11を収納空間4や階段14の下部の空間40に設けて実施したが、これに限定されず、その他の箇所に設けて実施してもよい。