(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補償量導出部は、前記第1荷重と前記第2荷重との間の荷重である第3荷重が前記ヒステリシス誤差の基準として設定されたときには、前記補償量が、前記基準補償量に対して比例配分を行うことにより得られる演算値よりも小さな値となるように、前記基準補償量に対して演算を行う
請求項3に記載のヒステリシス誤差補償装置。
前記補償量導出部は、前記基準補償量に対して(前記第3荷重−前記第4荷重)/(前記第2荷重−前記第1荷重)を乗算することにより得られた値を用いて前記荷重センサの出力を補償したときの残留ヒステリシス誤差の最大値よりも小さな残留ヒステリシス誤差となる範囲内の値を前記αとして選択する
請求項5または請求項6に記載のヒステリシス誤差補償装置。
前記補償量導出部は、負荷荷重が漸増から漸減に移行する折り返し点が検出されたときに、その折り返し点で得られた荷重信号を用いて導出された折り返し荷重を、ヒステリシス誤差の基準として設定する
請求項3ないし請求項7のいずれか一項に記載のヒステリシス誤差補償装置。
前記補償量導出部は、負荷荷重が漸増から漸減に移行する折り返し点に対応する折り返し荷重の概算値がヒステリシス誤差の新たな基準として予め設定されているときには、負荷荷重が漸増から漸減に移行したときに、前記概算値を、ヒステリシス誤差の基準として設定する
請求項3ないし請求項7のいずれか一項に記載のヒステリシス誤差補償装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本技術を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
(基準補償データ・補償データが荷重センサに設けられる例)
1.1 構成
1.2 補償量の導出
1.3 ヒステリシス誤差の補償
1.4 効果
2.第2の実施の形態
(基準補償データ・補償データが指示計部に設けられる例)
2.1 構成
2.2 補償量の導出
2.3 ヒステリシス誤差の補償
2.4 効果
3.各実施の形態に共通する変形例
3.1 変形例その1 (ユーザによる概算値を用いて基準が変更される例)
3.2 変形例その2 (複数の荷重センサが設けられている例)
3.3 変形例その3 (荷重センサが種々の方式となっている例)
3.4 変形例その4 (補償データが予め用意されている例)
4.第3の実施の形態
4.1 構成
4.2 べき指数αの導出
4.3 効果
5.実施例
【0018】
<1.第1の実施の形態>
[1.1 構成]
図1は、本技術の第1の実施の形態に係る計量装置1の概略構成を表したものである。計量装置1は、荷重を計測する装置である。計量装置1において計測可能な荷重の種類は、特に限定されないが、例えば、圧縮荷重、引張荷重、ねじり荷重、曲げ荷重、または組み合わせ荷重である。組み合わせ荷重とは、例えば、圧縮荷重とねじり荷重が複合的に組み合わされた荷重、引張荷重とねじり荷重が複合的に組み合わされた荷重、または、曲げ荷重とねじり荷重が複合的に組み合わされた荷重などを含む概念である。
【0019】
計量装置1は、例えば、荷重を電気信号(具体的には荷重信号)に変換して出力する荷重センサ10と、荷重センサ10からの出力(例えば荷重信号)に応じた表示などを行う指示計部20とを備えている。荷重センサ10および指示計部20は、例えばケーブルを介して互いに接続されている。荷重センサ10は、例えば、上記ケーブルを介して指示計部20に、荷重信号などを出力するようになっている。
【0020】
荷重センサ10は、いわゆるロードセル(Load Cell)である。ここで、本明細書において、ロードセルとは、力・荷重を電気的に変換して検出するセンサをいう。荷重センサ10の種類は、特に限定されないが、例えば、歪ゲージ式、磁歪式、静電容量式、ジャイロ式、または光ファイバ式である。以下では、荷重センサ10が歪ゲージ式のロードセルであるものとして、種々の説明がなされるが、それは、荷重センサ10がそれ以外の方式のロードセルを採り得ないことを意味するものではない。本実施の形態において、荷重センサ10は、デジタル信号を出力するデジタルロードセルである。荷重センサ10は、例えば、荷重検出部材11、荷重検出回路12、A/D変換部13、演算部14および記憶部15を有しており、演算部14から指示計部20に、デジタル信号として荷重信号などを出力するようになっている。演算部14は、本技術の「補償部」および「補償量導出部」の一具体例に相当する。
【0021】
A/D変換部13、演算部14および記憶部15は、例えば、共通の配線基板上に形成された電子回路16で構成されている。電子回路16は、本技術の「電子回路」および「ヒステリシス誤差補償装置」の一具体例に相当する。電子回路16は、例えば、A/D変換部13の入力端に接続された増幅回路や、荷重検出部材11の温度を計測する温度計測装置などを含んでいてもよい。荷重センサ10は、例えば、さらに、荷重検出部材11、荷重検出回路12、A/D変換部13、演算部14および記憶部15を収容する筐体17を有している。A/D変換部13、演算部14および記憶部15が、共通の配線基板上に形成された電子回路16で構成されている場合、電子回路16が設けられた配線基板は、筐体17内に収容されている。
【0022】
荷重検出部材11は、荷重センサ10に印加された荷重を検出する部材である。荷重検出部材11は、荷重が加わると変形(または歪み)を生じる起歪体であり、例えば、鉄、ステンレス、またはアルミニウムで構成されている。起歪体の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、柱型、コラム型、ロバーバル型、シャー型、リング型、またはダイヤフラム型となっている。起歪体は、構造上の要因からヒステリシス特性を有している。ヒステリシス特性とは、荷重を増加させる(漸増させる)過程と減少させる(漸減させる)過程とで、同一の荷重が載荷されていても起歪体の変形(または歪み)に差が生じる特性を指している。
【0023】
荷重検出回路12は、荷重検出部材11に印加された荷重と対応するアナログの荷重信号Vaを出力する回路である。荷重検出回路12は、例えば、歪みゲージを含むブリッジ回路を含んで構成されている。歪みゲージは、起歪体のうち、荷重が加わると変形(歪み)を生じ易い箇所に貼り付けられており、起歪体の変形(または歪み)に応じて変形(または歪み)を生じるようになっている。歪みゲージは、上記の変形(または歪み)に応じて抵抗値の変化する材料で構成されている。従って、荷重検出回路12は、例えば、ブリッジ回路の一対の入力端に所定の電圧が印加されているときに、ブリッジ回路の一対の出力端に荷重信号Vaを出力するようになっている。荷重検出回路12は、上述のブリッジ回路以外の構成となっていてもよい。
【0024】
起歪体のうち、歪みゲージの接している部分の表面は、起歪体の変形(または歪み)に応じて2次元的に変形するので、歪みゲージも、起歪体の変形(または歪み)に応じて2次元的に変形する(または歪む)。そのため、荷重信号Vaに含まれるヒステリシス誤差は、起歪体の変形(または歪み)に対して線形に変化せず、例えば、1.5乗や2乗のような比例量で変化すると考えられる。また、歪みゲージは、通常、ゲージベースと呼ばれる薄膜樹脂上に形成されており、そのゲージベースを接着剤などで起歪体に接着することにより、起歪体に固定されている。起歪体に生じた変形(歪み)は、接着剤やゲージベースを介して歪みゲージに伝達される。ここで、接着剤やゲージベースは、起歪体に生じた変形(歪み)に対して線形に変形していない(または歪んでいない)と考えられる。そのため、荷重信号Vaに含まれるヒステリシス誤差は、起歪体の変形(または歪み)に対して線形に変化せず、例えば、1.5乗や2乗のような比例量で変化するとも考えられる。本実施の形態では、これらの考察に基づき、荷重信号Vaに含まれるヒステリシス誤差の補償がなされる。補償の具体的な方法については、後に詳述する。
【0025】
A/D変換部13は、荷重検出回路12の出力(具体的には荷重信号Va)をデジタル信号(具体的には荷重信号Vd)に変換する回路である。A/D変換部13は、例えば、上述のブリッジ回路の一対の出力端に直接、または増幅回路などを介して接続されている。
【0026】
記憶部15は、基準補償データ15Aを記憶するとともに補償データ15Bを記憶可能となっている。記憶部15は、さらに、補償プログラム15Cを記憶している。補償プログラム15Cについては、ヒステリシス誤差の補償手順について説明する際に併せて説明する。記憶部15は、例えば、基準補償データ15Aおよび補償プログラム15Cを記憶する不揮発性メモリ15−1と、補償データ15Bを記憶可能な揮発性メモリ15−2とを有している。不揮発性メモリ15−1は、例えば、ROM、フラッシュメモリ、FeRAM(強誘電体メモリ)、MRAM(磁気抵抗メモリ)である。揮発性メモリ15−2は、例えば、DRAM、SRAMである。記憶部15がそのような構成となっている場合、不揮発性メモリ15−1に対して新たなデータの書き込みが規格などによって禁止されているときであっても、揮発性メモリ15−2に対して補償データ15Bを記憶させることができる。
【0027】
基準補償データ15Aおよび補償データ15Bには、ヒステリシス誤差を補償する補償量が含まれている。ヒステリシス誤差は、起歪体のヒステリシス特性に起因して生じるものであり、荷重信号Vdに含まれている。荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差は、ヒステリシス実験を行うことによって導出することが可能である。ヒステリシス実験では、最小荷重がかかった起歪体に、最大荷重になるまで荷重が段階的に追加され、荷重が段階的に追加される度に荷重信号Vdが読み取られる。続いて、最大荷重がかかった起歪体から、最小荷重になるまで荷重が段階的に取り除かれていき、荷重が段階的に取り除かれる度に荷重信号Vdが読み取られる。そして、例えば、漸減時の荷重信号Vdから、漸増時の荷重信号Vdが減算され、漸減時の荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差が導出される。なお、漸増時の荷重信号Vdから、漸減時の荷重信号Vdが減算され、漸増時の荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差が導出されてもよい。
【0028】
基準補償データ15Aでは、このようにして導出されたヒステリシス誤差が、ヒステリシス誤差を補償する補償量(後述の基準補償量D1)として設定されている。一方、補償データ15Bでは、基準補償量D1を用いて導出されたデータ、または、ユーザによって設定されたデータが、ヒステリシス誤差を補償する補償量(後述の補償量D2)として設定されている。
【0029】
ところで、ヒステリシス実験では、荷重が最小荷重または最大荷重となっているときに、ヒステリシス誤差が0(ゼロ)となる。これは、荷重が最小荷重となっているときの荷重信号Vaが最小荷重に対応し、荷重が最大荷重となっているときの荷重信号Vaが最大荷重に対応するという定義がなされているからである。つまり、ヒステリシス実験では、最小荷重および最大荷重が、ヒステリシス誤差の基準となっている。
【0030】
最小荷重は、ヒステリシス実験における漸増の開始点(または漸減の終点)に相当する荷重であり、典型的には、荷重信号Vaが0(ゼロ)となる荷重(零点荷重)である。最大荷重は、ヒステリシス実験における漸増の終点(または漸減の開始点)に相当する荷重であり、典型的には、荷重センサ10の定格荷重である。最大荷重は、荷重センサ10の定格荷重よりも小さな荷重(例えば、定格荷重と計量装置1の秤量との間の荷重)であってもよい。つまり、ヒステリシス誤差の基準(つまり、ヒステリシス誤差が0(ゼロ)となる荷重)は、最小荷重および最大荷重を変更することによって変更可能なものである。
【0031】
ヒステリシス実験は、通常、規格や国際勧告などで規定された性能試験の一環として実施される。そのため、ヒステリシス実験は、フックの法則が成立する弾性域の広範囲に渡って行われ、計量装置1の秤量を超える負荷荷重に対しても行われる。その一方で、ユーザは、弾性域のごく一部(具体的には、低荷重側)だけを使用する。それは、計量装置1の秤量が荷重センサ10の定格荷重よりも低く設定されている場合があるからであり、また、ユーザが荷重センサ10の定格荷重近くまで使うことは稀であるからでもある。
【0032】
基準補償量D1は、デフォルト設定された2つの基準を上限および下限とする範囲内の負荷荷重に対応して割り当てられている。補償量D2は、基準補償量D1における基準とは完全には一致していない2つの基準を上限および下限とする範囲内の負荷荷重に対応して割り当てられている。補償量D2は、基準補償量D1を利用して導出されたものである。
【0033】
補償量D2は、基準補償量D1に対して比例配分を行うことにより得られる演算値E1(図示せず)とは異なる値となっている。具体的には、補償量D2は、基準補償量D1に対して比例配分とは異なる演算を行うことにより得られた値となっている。さらに、補償量D2は、基準補償量D1に対応する負荷荷重に対して比例配分を行うことにより特定される負荷荷重に対応して設定されている。ここで、上記において基準補償量D1に対して行われる「比例配分」とは、例えば、基準補償量D1に対して、(ΔX2/ΔX1)を乗算することを指している。また、上記において負荷荷重に対して行われる「比例配分」とは、例えば、補償量D2に対応する負荷荷重に対して、(ΔX1/ΔX2)を乗算することを指している。ΔX1およびΔX2は、以下のように定義されている。
【0034】
ΔX1:基準補償量D1における、ヒステリシス誤差の2つの基準を上限および下限とする負荷荷重の範囲
ΔX2:補償量D2における、ヒステリシス誤差の2つの基準を上限および下限とする負荷荷重の範囲
【0035】
ここで、ΔX2がΔX1よりも小さい場合、補償量D2は、演算値E1よりも小さな値となっている。具体的には、上記の場合に、補償量D2は、基準補償量D1に対して(ΔX2/ΔX1)α(1<α)を乗算することにより得られる値と等しい値となっている。このとき、αは、基準補償量D1に対して(ΔX2/ΔX1)を乗算することにより得られた値を用いて荷重センサ10の出力を補償したときの残留ヒステリシス誤差の最大値よりも小さな残留ヒステリシス誤差となる範囲内の値となっている。
【0036】
次に、基準補償量D1を含む基準補償データ15Aと、補償量D2を含む補償データ15Bについて、より具体的な説明を行う。
【0037】
図2は、基準補償データ15Aの一例を概念的に表したものである。基準補償データ15Aは、ヒステリシス誤差が0(ゼロ)となるデフォルトの2つの基準15aを有している。2つの基準15aは、上述の最小荷重に対応する下側基準A_lowと、上述の最大荷重に対応する上側基準A_highである。
【0038】
基準補償データ15Aでは、荷重センサ10のヒステリシス誤差が下側基準A_lowおよび上側基準A_highを基準とする基準補償量D1で規定されている。基準補償量D1は、例えば、ヒステリシス実験を行うことにより得られたものである。なお、基準補償量D1は、ヒステリシス実験を行うことにより得られたデータに対して何らかの補正のなされたものであってもよい。基準補償量D1は、下側基準A_lowおよび上側基準A_highを荷重センサ10のヒステリシス誤差の基準とするヒステリシス誤差量である。上側基準A_highは、下側基準A_lowよりも大きな値となっている。下側基準A_lowが、本技術の「第1荷重」の一具体例に相当し、上側基準A_highが、本技術の「第2荷重」の一具体例に相当する。
【0039】
本実施の形態において、基準補償量D1は、下側基準A_lowから上側基準A_highの間を複数に分けた区間15bごとに定められている。複数の区間15bは、例えば、下側基準A_lowから上側基準A_highの間を7つに区分けした構成となっている。最下の区間15bは、下側基準A_lowそのものであり、基準補償量D1として、0(ゼロ)が割り当てられている。最上の区間15bは、上側基準A_highそのものであり、基準補償量D1として、0(ゼロ)が割り当てられている。最下の区間15bと最上の区間15bとの間の5つの区間15bには、基準補償量D1として、最下側から順に、c1、c2、c3、c4、c5が割り当てられている。
【0040】
図2には、基準補償量D1が区間15bごとに1つずつ割り当てられている場合が例示されている。このときは、基準補償量D1は、漸増過程で得られる荷重信号Vdを基準としたときに、漸減過程で得られる荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償するために用いられる。なお、基準補償量D1は、漸減過程で得られる荷重信号Vdを基準としたときに、漸増過程で得られる荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償するために用いられてもよい。
【0041】
図3は、補償データ15Bの一例を概念的に表したものである。補償データ15Bは、ヒステリシス誤差が0(ゼロ)となる2つの基準15cを有している。2つの基準15cは、2つの基準15aとは完全には一致していない基準であり、下側基準B_lowと、上側基準B_highである。つまり、2つの基準15cのうち少なくとも1つの基準15cが2つの基準15aとは異なる値となっている。
【0042】
補償データ15Bでは、荷重センサ10のヒステリシス誤差が下側基準B_lowおよび上側基準B_highを基準とする補償量D2で規定されている。補償量D2は、下側基準B_lowおよび上側基準B_highを荷重センサ10のヒステリシス誤差の基準とするヒステリシス誤差量である。上側基準B_highは、下側基準B_lowよりも大きな値となっている。下側基準B_lowおよび下側基準A_lowは、典型的には、互いに等しくなっているが、互いに異なっていてもよい。補償量D2は、
図3に示したように、区間15dごとに1つずつ割り当てられている。基準補償量D1が漸減過程で得られる荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償するために用いられる場合には、補償量D2も、漸減過程で得られる荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償するために用いられる。基準補償量D1が漸増過程で得られる荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償するために用いられる場合には、補償量D2も、漸増過程で得られる荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償するために用いられる。下側基準B_lowが、本技術の「第4荷重」の一具体例に相当し、上側基準B_highが、本技術の「第3荷重」の一具体例に相当する。補償量D2が、本技術の「補償量」の一具体例に相当する。
【0043】
本実施の形態において、補償量D2は、下側基準B_lowから上側基準B_highの間を複数に分けた区間15dごとに定められている。複数の区間15dは、例えば、下側基準B_lowから上側基準B_highの間を、基準補償量D1における区間15bの数と同じ数(例えば7つ)に区分けした構成となっている。なお、
図4に示したように、複数の区間15dは、例えば、下側基準B_lowから上側基準B_highの間を、基準補償量D1における区間15bの数よりも少ない数(例えば5つ)に区分けした構成となっていてもよい。
【0044】
最下の区間15dは、下側基準B_lowそのものであり、補償量D2として、0(ゼロ)が割り当てられている。最上の区間15dは、上側基準B_highそのものであり、補償量D2として、0(ゼロ)が割り当てられている。最下の区間15dと最上の区間15dとの間の各区間15dには、補償量D2として、基準補償量D1を用いて導出された値が割り当てられている。なお、区間15dや補償量D2については、後に詳述する。
【0045】
補償データ15Bは、例えば、補償プログラム15Cが演算部14で実行されることによって導出されるデータである。従って、例えば、補償プログラム15Cが演算部14で実行される前の段階では、補償データ15Bは、記憶部15には記憶されていない。
図1では、そのことを示唆するために、補償データ15Bの枠が、破線で示されている。
【0046】
補償量D2は、基準補償量D1と所定の相関関係を有している。補償量D2および基準補償量D1は、具体的には、以下の式(1)に示した関係式で表される相関関係を有している。
D2(X) = D1(RX)× Kα …式(1)
K = (B_high −B_low)/(A_high −A_low)…式(2)
1 < α ≦ M …式(3)
R = 1 / K …式(4)
【0047】
Xは、負荷荷重である。D2(X)は、補償量D2が負荷荷重Xの関数になっていることを示している。Kは、補償係数であり、上の式(2)で表される。B_low=A_low=0(ゼロ)の場合、式(2)は、K=B_high/A_highとなる。αは、上の式(3)で表される範囲内の値を採り得る。αは、1よりも大きな数値、例えば、1.5や2などの値となっていることが好ましい。αが、そのような値となるのは、上述したように、荷重信号Vaに含まれるヒステリシス誤差は起歪体の変形(または歪み)に対して線形に変化しないからである。式(3)中のMは、αの上限を規定するものであり、補償量D2が所望の値となる範囲内の上限値である。ここで、「所望の値」とは、基準補償量D1に補償係数Kを乗算することにより得られた値(D1×K)を用いて荷重センサ10の出力を補償したときに残留するヒステリシス誤差(残留ヒステリシス誤差)の最大値よりも小さな残留ヒステリシス誤差となる範囲内の値を指している。D1(RX)は、基準補償量D1が負荷荷重Xおよび区間変換係数Rの積(RX)の関数になっていることを示している。区間変換係数Rは、上の式(4)で表される。区間変換係数Rは、補償量D2が、基準補償量D1に対応する負荷荷重に対して比例配分を行うことにより特定される負荷荷重に対応していることを示している。B_low=A_low=0(ゼロ)の場合、式(4)は、R=1/K=A_high/B_highとなる。
【0048】
例えば、
図3に示したように、最下の区間15dと最上の区間15dとの間の各区間15dでは、補償量D2は、基準補償量D1×Kαという値となっている。最下の区間15dは、下側基準A_lowと等しい値となっている。最上の区間15dは、上側基準A_high×Rとなっている。さらに、最下の区間15dと最上の区間15dとの間の各区間15dは、各区間15bの範囲にRを掛けた範囲となっている。
【0049】
また、例えば、
図4に示したように、最下から2番目の区間15dおよび最上から2番目の区間15dでは、補償量D2は、基準補償量D1×Kαという値となっている。真ん中の区間15dでは、補償量D2は、(最下から3番目、4番目および5番目の区間15dの基準補償量D1の総和/3)×Kαという値となっている。最下の区間15dは、下側基準A_lowと等しい値となっている。最上の区間15dは、上側基準A_high×Rとなっている。さらに、最下から2番目の区間15dおよび最上から2番目の区間15dは、各区間15bの範囲にRを掛けた範囲となっている。真ん中の区間15dは、最下から3番目、4番目および5番目の区間15dを1つの範囲としたときに、その範囲にRを掛けた範囲となっている。
【0050】
次に、演算部14について説明する。演算部14は、記憶部15内の補償プログラム15Cを演算部14にロードすることにより、補償プログラム15Cに記述された手順を実行するものである。具体的には、演算部14は、A/D変換部13から出力された荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償する。演算部14は、漸減時または漸増時に、補償量D2を用いて、荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償する。具体的には、演算部14は、基準補償量D1から補償量D2を導出し、導出した補償量D2を用いて、漸減時または漸増時の荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償する。なお、補償量D2の導出方法や、ヒステリシス誤差の補償方法については、後に詳述する。
【0051】
さらに、演算部14は、補償後の荷重信号Vd’を指示計部20へ出力するようになっている。つまり、荷重センサ10は、荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償する機能が付いたセンサである。なお、演算部14は、補償後の荷重信号Vd’に対して、リニア補正などの種々の補正を行った上で、指示計部20へ出力するようになっていてもよい。リニア補正とは、補正後の荷重信号が荷重の変化に対してリニアに変化するように、荷重信号を補正することを指している。また、補償プログラム15Cに記述された手順の実行が演算部14においてハードウェアで実現されている場合には、演算部14は、そのハードウェアを動作させることにより、補償プログラム15Cに記述された手順と同様の手順を実行するようになっていてもよい。
【0052】
指示計部20は、例えば、
図1に示したように、演算部21、入力部22および表示部23を有している。指示計部20は、例えば、さらに、演算部21、入力部22および表示部23を収容する筐体24を有している。入力部22は、ユーザからの入力を受け付けるものであり、例えば、キーボードなどで構成されている。表示部23は、荷重センサ10からの出力(例えば荷重信号Vd’)に応じた表示などを行う。演算部21は、入力部22および表示部23を制御するものである。演算部21は、荷重センサ10から入力された荷重信号Vd’を用いて生成した映像信号を表示部23に出力し、その映像信号に応じた表示を表示部23にさせる。
【0053】
[1.2 補償量の導出]
次に、補償量D2の導出手順の一例について説明する。以下では、基準補償量D1が漸減過程で得られる荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償するために用いられるときの、補償量D2の導出手順の一例について説明する。
図5は、補償プログラム15Cが演算部14にロードされたときの演算部14の動作手順の一例を表したものである。まず、ユーザが、例えば、計量装置1の電源を入れる。すると、補償プログラム15Cが演算部14にロードされ、補償プログラム15Cが起動する。演算部14は、ロードされた補償プログラム15Cの命令に従って動作する。まず、演算部14は、荷重センサ10の記憶部15内にある基準補償データ15Aを読み出す(ステップS101)。基準補償データ15Aでは、上述したように、荷重センサ10のヒステリシス誤差が下側基準A_lowおよび上側基準A_highを基準とする基準補償量D1で規定されている。
【0054】
次に、演算部14は、基準補償量D1に対して、比例配分とは異なる演算を行うことにより新たな補償量D2を導出する(ステップS102)。演算部14は、漸減時に(具体的には、負荷荷重が漸増から漸減に移行した後に)、基準補償量D1に対して、比例配分とは異なる演算を行うことにより新たな補償量D2を導出する。演算部14は、補償量D2を、基準補償量D1に対応する負荷荷重に対して比例配分を行うことにより特定される負荷荷重に対応させて、補償データ15Bを導出する(ステップS103)。
【0055】
演算部14は、ヒステリシス誤差の新たな基準が設定されたときに、補償量D2(または補償データ15B)を導出する。演算部14は、例えば、上述の第3荷重がヒステリシス誤差の基準として設定されたときに、補償量D2(または補償データ15B)を導出する。演算部14は、例えば、負荷荷重が漸増から漸減に移行する折り返し点が検出されたときに、その折り返し点で得られた荷重信号を用いて導出された折り返し荷重をヒステリシス誤差の基準として設定する。このとき、折り返し荷重が、下側基準A_lowと上側基準A_highとの間の荷重であるときは、折り返し荷重が上述の第3荷重に相当する。
【0056】
このように、折り返し荷重が上述の第3荷重に相当するとき、演算部14は、補償量D2が演算値E1よりも小さな値となるように、基準補償量D1に対して演算を行う。演算部14は、具体的には、基準補償量D1に対してKαを乗算することにより補償量D2を導出する。演算部14は、基準補償量D1に対してKαを乗算することにより得られた値を用いて荷重信号Vdを補償したときの残留ヒステリシス誤差の最大値よりも小さな残留ヒステリシス誤差となる範囲内の値をαとして選択する。このとき、補償量D2の下端側の基準(下側基準B_low)と、基準補償量D1の下端側の基準(下側基準A_low)とが、互いに等しくなっていることが好ましい。このようにした場合には、演算部14は、基準補償量D1の下端側の基準(下側基準A_low)を、補償量D2の下端側の基準(下側基準B_low)として、そのまま使うことができる。
【0057】
次に、演算部14は、補償量D2を含む補償データ15Bを記憶部15(例えば揮発性メモリ15−2)に記憶させる(ステップS104)。このようにして、補償量D2が導出される。
【0058】
なお、基準補償量D1が漸増過程で得られる荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償するために用いられるときには、演算部14は、漸増時に(具体的には、負荷荷重が漸増過程にあるときに)、補償量D2を導出する。
【0059】
[1.3 ヒステリシス誤差の補償]
次に、ヒステリシス誤差の補償手順について説明する。
図6は、補償プログラム15Cが演算部14にロードされたときの演算部21の動作手順の他の例を表したものである。演算部14は、A/D変換部13からの荷重信号Vdの入力を受け付ける(ステップS201)。次に、演算部14は、荷重信号Vdに対応する区間15dの補償量D2を、補償データ15Bから抽出する(ステップS202)。次に、演算部14は、抽出した補償量D2を用いて荷重信号Vdのヒステリシス誤差を補償する(ステップS203)。具体的には、演算部14は、荷重信号Vdから補償量D2を減算することにより得られた値を、補償後の荷重信号Vd’とする。次に、演算部14は、補償後の荷重信号Vd’を指示計部20へ出力する(ステップS204)。このようにして、荷重信号Vdに対して、ヒステリシス誤差の補償が行われる。
【0060】
なお、基準補償量D1が漸減過程で得られる荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償するために用いられるときには、演算部14は、漸減時に、補償量D2を用いて荷重信号Vdのヒステリシス誤差を補償する。一方、基準補償量D1が漸増過程で得られる荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償するために用いられるときには、演算部14は、漸増時に、補償量D2を用いて荷重信号Vdのヒステリシス誤差を補償する。
【0061】
[1.4 効果]
次に、計量装置1の効果について説明する。
【0062】
一般の荷重センサでは、高精度(例えば1/6000程度)を実現する際に、ヒステリシス誤差が障害となり得る。特に、トラックスケールなどの大容量タイプの荷重センサでは、とりわけ、ヒステリシス誤差が障害となる。現状の荷重センサのアナログ特性では、精度が1/3000もしくは1/4000程度である。精度を1/6000程度にまで高めるためには、荷重センサの材料や構造の改良だけでは十分ではなく、出力値に含まれるヒステリシス誤差を演算によって補償することが必要となる。
【0063】
そこで、例えば、負荷荷重が漸増から漸減に移行する折り返し点に対応する負荷荷重を用いて、ヒステリシス実験で設定された基準補償量を比例配分することにより得られた値を、漸減時のヒステリシス誤差を補償する補償量として用いることが考えられる。しかし、そのようにした場合、ヒステリシス誤差を精度よく補償することができず、漸減時のヒステリシス誤差に対して過補償が生じてしまう。また、上記の場合に、ヒステリシス誤差の基準として荷重センサの定格荷重が設定されており、折り返し点に対応する負荷荷重が、荷重センサの定格荷重の25%程度と、非常に低容量になってしまったときには、漸減曲線がいびつな形になり、計量装置が異常動作をしてしまう。
【0064】
一方、本実施の形態の計量装置1では、荷重センサ10のヒステリシス誤差が基準補償量D1で規定されている場合に、基準補償量D1に対して、比例配分とは異なる演算を行うことによりヒステリシス誤差の補償量D2が導出される。例えば、基準補償量D1に対して、Kαを乗算することにより補償量D2が導出される。これにより、ヒステリシス誤差の新たな基準が設定された場合に、補償量D2が、その新たな基準を用いて導出され、荷重センサ10のヒステリシス誤差として用いられたときには、当初の基準補償量D1に対して比例配分を行うことにより得られた演算値E1が荷重センサ10のヒステリシス誤差の補償量として用いられたときよりも、ヒステリシス誤差の補償量を演算によって高精度に導出することが可能である。その結果、ヒステリシス誤差を演算によって精度良く補償することができる。従って、本実施の形態の計量装置1では、ヒステリシス誤差に対する過補償をなくすことができる。また、本実施の形態の計量装置1では、ヒステリシス誤差の基準として荷重センサ10の定格荷重が設定されていた場合に、ヒステリシス誤差の新たな基準が荷重センサ10の定格荷重の25%程度と、非常に低容量に設定されたときであっても、漸減曲線がいびつな形になることがなく、計量装置1が異常動作をすることもない。
【0065】
ところで、αの値は、荷重検出部材11の材料および形状、ならびに荷重の種類に依らず、概ね、2または2近傍の値となっているときに、ヒステリシス誤差の補償を高精度に行うことが可能である。これは、上述したように、荷重信号Vaに含まれるヒステリシス誤差が、起歪体の変形(または歪み)に対して線形に変化せず、例えば、1.5乗や2乗のような比例量で変化するためである。なお、ロードセルの材料や種類によって、αの適切な値が若干異なる。しかし、αが採り得る範囲は、ロードセルの材料や種類に依らず、上述した式(3)となる。
【0066】
<2.第2の実施の形態>
次に、本技術の第2の実施の形態に係る計量装置2について説明する。なお、本実施の形態において、上記実施の形態と共通の構成要素については、同一の符号が付与されている。また、本実施の形態では、上記実施の形態と異なる構成要素についての説明を主に行い、上記実施の形態と共通の構成要素についての説明を適宜、省略するものとする。
【0067】
[2.1 構成]
図7は、本技術の第2の実施の形態に係る計量装置2の概略構成を表したものである。計量装置2は、計量装置1と同様の荷重を計測する装置である。計量装置2は、例えば、荷重を電気信号(具体的には荷重信号)に変換して出力する荷重センサ10と、荷重センサ10からの出力(例えば荷重信号)に応じた表示などを行う指示計部20とを備えている。本実施の形態では、荷重センサ10において、第1の実施の形態に記載されていたA/D変換部13、演算部14および記憶部15が省略されており、荷重検出回路12の出力が、そのまま指示計部20に出力されている。つまり、本実施の形態では、荷重センサ10は、アナログ信号を出力するロードセルとなっている。なお、本実施の形態において、荷重検出回路12の出力をアナログ回路で補正する補正回路が荷重センサ10内に設けられていてもよい。
【0068】
本実施の形態では、指示計部20は、演算部21、入力部22、表示部23および筐体24の他に、さらに、記憶部25を備えている。演算部21は、本技術の「補償部」および「補償量導出部」の一具体例に相当する。演算部21および記憶部25は、例えば、共通の配線基板上に形成された電子回路26で構成されている。電子回路26は、本技術の「電子回路」および「ヒステリシス誤差補償装置」の一具体例に相当する。電子回路26は、例えば、荷重検出回路12からの入力を増幅する増幅回路や、指示計部20の温度を計測する温度計測装置などを含んでいてもよい。演算部21および記憶部25が、共通の配線基板上に形成された電子回路26で構成されている場合、電子回路26が設けられた配線基板は、筐体24内に収容されている。
【0069】
記憶部25は、基準補償データ15Aおよび補償プログラム15Cを記憶するとともに補償データ15Bを記憶可能となっている。記憶部25は、例えば、基準補償データ15Aおよび補償プログラム15Cを記憶する不揮発性メモリ22−1と、補償データ15Bを記憶可能な揮発性メモリ22−2とを有している。不揮発性メモリ22−1は、例えば、ROM、フラッシュメモリ、FeRAM(強誘電体メモリ)、MRAM(磁気抵抗メモリ)である。揮発性メモリ22−2は、例えば、DRAM、SRAMである。記憶部25がそのような構成となっている場合、不揮発性メモリ25−1に対して新たなデータの書き込みが規格などによって禁止されているときであっても、揮発性メモリ25−2に対して補償データ15Bを記憶することができる。
【0070】
演算部21は、記憶部25内の補償プログラム15Cを演算部21にロードすることにより、補償プログラム15Cに記述された手順を実行するものである。具体的には、演算部21は、荷重センサ10から出力された荷重信号Vaをデジタル処理したデジタルの荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償する。演算部21は、漸減時または漸増時に、補償量D2を用いて、荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償する。具体的には、演算部14は、基準補償量D1から補償量D2を導出し、導出した補償量D2を用いて、漸減時または漸増時の荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償する。なお、補償量D2の導出方法や、ヒステリシス誤差の補償方法については、後に詳述する。
【0071】
図8は、基準補償データ15Aの一例を概念的に表したものである。基準補償データ15Aは、漸減時のヒステリシス誤差の補償に用いられる基準補償量D1の関数L1で表される。関数L1は、例えば、2次関数または3次関数で表されている。基準補償データ15Aは、さらに、ヒステリシス誤差が0(ゼロ)となるデフォルトの2つの基準15aを有している。2つの基準15aは、上記実施の形態と同様、下側基準A_lowと、上側基準A_highである。基準補償量D1は、下側基準A_lowおよび上側基準A_highにおいて、0(ゼロ)となっている。
【0072】
図9は、補償データ15Bの一例を概念的に表したものである。補償データ15Bは、例えば、漸減時のヒステリシス誤差の補償に用いられる補償量D2の関数L2を有している。関数L2は、例えば、2次関数または3次関数で表されている。補償データ15Bは、さらに、ヒステリシス誤差が0(ゼロ)となるデフォルトの2つの基準15aを有している。2つの基準15aは、上記実施の形態と同様、下側基準B_lowと、上側基準B_highである。補償量D2は、下側基準B_lowおよび上側基準B_highにおいて、0(ゼロ)となっている。なお、
図9には、関数L1’が記載されている。関数L1’は、上側基準B_highを用いて、関数L1を比例配分したときに得られる関数である。
【0073】
補償データ15Bは、例えば、補償プログラム15Cが演算部21で実行されることによって導出されるデータである。従って、例えば、補償プログラム15Cが演算部21で実行される前の段階では、補償データ15Bは、記憶部25には記憶されていない。
図7では、そのことを示唆するために、補償データ15Bの枠が、破線で示されている。
【0074】
補償量D2は、基準補償量D1と所定の相関関係を有している。例えば、関数L1が式(5)に示したような2次関数で表されるとき、関数L2は、例えば、以下の式(6)に示したようになっている。なお、関数L1’は、例えば、以下の式(7)に示したようになっている。
【0075】
L1:Y=aX
2+bX+c …式(5)
L2:Y={a(RX)
2+bRX+c}×Kα …式(6)
L1’:Y={a(RX)
2+bRX+c}×K …式(7)
【0076】
[2.2 補償量の導出]
次に、補償量D2の導出手順の一例について説明する。以下では、基準補償量D1が漸減過程で得られる荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償するために用いられるときの、補償量D2の導出手順の一例について説明する。まず、ユーザが、例えば、計量装置2の電源を入れる。すると、補償プログラム15Cが演算部21にロードされ、補償プログラム15Cが起動する。演算部21は、ロードされた補償プログラム15Cの命令に従って動作する。まず、演算部21は、記憶部25内にある基準補償データ15Aを読み出す(ステップS101、
図5参照)。基準補償データ15Aでは、上述したように、荷重センサ10のヒステリシス誤差が下側基準A_lowおよび上側基準A_highを基準とする基準補償量D1で規定されている。
【0077】
次に、演算部21は、基準補償量D1に対して、比例配分とは異なる演算を行うことにより新たな補償量D2を導出する(ステップS102、
図5参照)。演算部21は、漸減時に(具体的には、負荷荷重が漸増から漸減に移行した後に)、基準補償量D1に対して、比例配分とは異なる演算を行うことにより新たな補償量D2を導出する。演算部21は、補償量D2を、基準補償量D1に対応する負荷荷重に対して比例配分を行うことにより特定される負荷荷重に対応させて、補償データ15Bを導出する(ステップS103、
図5参照)。
【0078】
演算部21は、ヒステリシス誤差の新たな基準が設定されたときに、補償量D2(または補償データ15B)を導出する。演算部21は、例えば、上述の第3荷重がヒステリシス誤差の基準として設定されたときに、補償量D2(または補償データ15B)を導出する。演算部21は、例えば、負荷荷重が漸増から漸減に移行する折り返し点が検出されたときに、その折り返し点で得られた荷重信号を用いて導出された折り返し荷重をヒステリシス誤差の基準として設定する。このとき、折り返し荷重が、下側基準A_lowと上側基準A_highとの間の荷重であるときは、折り返し荷重が上述の第3荷重に相当する。
【0079】
このように、折り返し荷重が上述の第3荷重に相当するとき、演算部21は、補償量D2が演算値E1よりも小さな値となるように、基準補償量D1に対して演算を行う。演算部21は、具体的には、基準補償量D1に対してKαを乗算することにより補償量D2を導出する。演算部21は、基準補償量D1に対してKαを乗算することにより得られた値を用いて荷重信号Vdを補償したときの残留ヒステリシス誤差の最大値よりも小さな残留ヒステリシス誤差となる範囲内の値をαとして選択する。このとき、補償量D2の下端側の基準(下側基準B_low)と、基準補償量D1の下端側の基準(下側基準A_low)とが、互いに等しくなっていることが好ましい。このようにした場合には、演算部21は、基準補償量D1の下端側の基準(下側基準A_low)を、補償量D2の下端側の基準(下側基準B_low)として、そのまま使うことができる。
【0080】
次に、演算部21は、補償量D2を含む補償データ15Bを記憶部25(例えば揮発性メモリ25−2)に記憶させる(ステップS104、
図5参照)。このようにして、補償量D2が導出される。
【0081】
なお、基準補償量D1が漸増過程で得られる荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償するために用いられるときには、演算部21は、漸増時に(具体的には、負荷荷重が漸増過程にあるときに)、補償量D2を導出する。
【0082】
[2.3 ヒステリシス誤差の補償]
次に、ヒステリシス誤差の補償手順について説明する。演算部21は、荷重信号Vdの入力を受け付ける(ステップS201、
図6参照)。次に、演算部21は、荷重信号Vdに対応する補償量D2を、補償データ15Bから抽出する(ステップS202、
図6参照)。次に、演算部21は、抽出した補償量D2を用いて荷重信号Vdのヒステリシス誤差を補償する(ステップS203、
図6参照)。具体的には、演算部21は、荷重信号Vdから補償量D2を減算することにより得られた値を、補償後の荷重信号Vd’とする。このようにして、荷重信号Vdに対して、ヒステリシス誤差の補償が行われる。
【0083】
なお、基準補償量D1が漸減過程で得られる荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償するために用いられるときには、演算部21は、漸減時に、補償量D2を用いて荷重信号Vdのヒステリシス誤差を補償する。一方、基準補償量D1が漸増過程で得られる荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を補償するために用いられるときには、演算部21は、漸増時に、補償量D2を用いて荷重信号Vdのヒステリシス誤差を補償する。
【0084】
[2.4 効果]
次に、計量装置2の効果について説明する。本実施の形態の計量装置2では、計量装置1と同様、荷重センサ10のヒステリシス誤差が基準補償量D1で規定されている場合に、基準補償量D1に対して、比例配分とは異なる演算を行うことによりヒステリシス誤差の補償量D2が導出される。例えば、基準補償量D1に対して、Kαを乗算することにより補償量D2が導出される。これにより、ヒステリシス誤差の新たな基準が設定された場合に、補償量D2が、その新たな基準を用いて導出され、荷重センサ10のヒステリシス誤差として用いられたときには、当初の基準補償量D1に対して比例配分を行うことにより得られた演算値E1が荷重センサ10のヒステリシス誤差の補償量として用いられたときよりも、ヒステリシス誤差の補償量を演算によって高精度に導出することが可能である。その結果、ヒステリシス誤差を演算によって精度良く補償することができる。従って、本実施の形態の計量装置2では、ヒステリシス誤差に対する過補償をなくすことができる。また、本実施の形態の計量装置2では、ヒステリシス誤差の基準として荷重センサ10の定格荷重が設定されていた場合に、ヒステリシス誤差の基準を荷重センサ10の定格荷重の25%程度と、非常に低容量に設定したときであっても、漸減曲線がいびつな形になることがなく、計量装置2が異常動作をすることもない。
【0085】
ところで、本実施の形態においても、αの値は、荷重検出部材11の材料および形状、ならびに荷重の種類に依らず、概ね、2または2近傍の値となっているときに、ヒステリシス誤差の補償を高精度に行うことが可能である。これは、上述したように、荷重信号Vaに含まれるヒステリシス誤差が、起歪体の変形(または歪み)に対して線形に変化せず、例えば、1.5乗や2乗のような比例量で変化するためである。なお、ロードセルの材料や種類によって、αの適切な値が若干異なる。しかし、αが採り得る範囲は、ロードセルの材料や種類に依らず、上述した式(3)となる。
【0086】
<3.各実施の形態に共通する変形例>
[3.1 変形例その1]
上記各実施の形態では、折り返し点で得られた荷重信号を用いて導出された折り返し荷重がヒステリシス誤差の新たな基準として設定される場合が例示されていた。しかし、演算部14または演算部21が、折り返し点に対応する折り返し荷重の概算値E2(図示せず)がヒステリシス誤差の新たな基準として予め設定されているときには、負荷荷重が漸増から漸減に移行したときに、概算値E2を、ヒステリシス誤差の基準として設定してもよい。
【0087】
概算値E2は、例えば、ユーザが入力部22を用いて計量装置1または2に予め入力されたものである。計量装置1では、概算値E2は、例えば、記憶部15に記憶されている。記憶部15が不揮発性メモリ15−2を有している場合には、概算値E2は、例えば、不揮発性メモリ15−2に記憶されている。計量装置2では、概算値E2は、例えば、記憶部25に記憶されている。記憶部25が不揮発性メモリ25−2を有している場合には、概算値E2は、例えば、不揮発性メモリ25−2に記憶されている。
【0088】
[3.2 変形例その2]
また、上記各実施の形態では、1つの指示計部20に対して、1つの荷重センサ10が接続されていたが、1つの指示計部20に対して、複数の荷重センサ10が接続されていてもよい。計量装置1では、例えば、
図10に示したように、1つの指示計部20に対して、複数の荷重センサ10が接続されるとともに、各荷重センサ10の出力が別個に指示計部20に入力されるようになっていてもよい。計量装置2では、例えば、
図11に示したように、複数の荷重センサ10が、各荷重センサ10の出力を互いに加算する和算箱30に接続されており、和算箱30の出力(各荷重センサ10の出力の総和)が指示計部20に入力されるようになっていてもよい。
【0089】
[3.3 変形例その3]
また、上記各実施の形態およびその変形例では、荷重センサ10が歪ゲージ式のロードセルであるものとして、種々の説明がなされていた。しかし、上記各実施の形態およびその変形例において、荷重センサ10が、例えば、磁歪式、静電容量式、ジャイロ式、または光ファイバ式のロードセルとなっていてもよい。
【0090】
例えば、荷重センサ10が、磁歪式のロードセルとなっている場合、荷重検出部材11は、荷重が加わると逆磁歪効果により透磁率が変化する部材で構成されている。この場合、荷重センサ10は、荷重検出部材11の周囲に、荷重検出部材11を磁化するコイルを有している。このコイルは、荷重検出部材11に荷重が加えられ、荷重検出部材11の透磁率が変化したときにコイルに生じる誘導起電力(電圧)の変化を検出する検出コイルとしての機能も有している。
【0091】
荷重センサ10は、例えば、コイルに生じる電圧を計測する回路(電圧計測回路)を有している。計量装置1では、荷重センサ10は、電圧計測回路の出力をA/D変換部13でデジタル信号に変換し、ヒステリシス誤差を補償した後の信号を、指示計部20に出力するようになっていてもよい。また、計量装置2では、荷重センサ10は、例えば、電圧計測回路の出力をそのまま、指示計部20に出力し、指示計部20においてヒステリシス誤差を補償するようになっていてもよい。
【0092】
[3.4 変形例その4]
また、上記各実施の形態およびその変形例では、ヒステリシス誤差の新たな基準が設定されたときに、補償量D2が導出されていた。しかし、例えば、ヒステリシス誤差の新たな基準が設定される前の段階で、予め、記憶部15または記憶部22が、上述の補償量D2の導出方法を用いて導出された補償量D2(または補償データ15B)を記憶していてもよい。このとき、不揮発性メモリ15−1または25−1が、補償量D2(または補償データ15B)を記憶していてもよい。
【0093】
本変形例では、演算部14または21は、例えば、[1.2 補償量の導出]および[2.2 補償量の導出]に記載の手順を、ヒステリシス誤差の新たな基準が設定される前の段階で実行しておく。その後、演算部14または21は、例えば、ヒステリシス誤差の新たな基準が設定されたときに、[1.3 ヒステリシス誤差の補償]または[2.3 ヒステリシス誤差の補償]に記載の手順を実行する。このようにした場合であっても、上記各実施の形態およびその変形例と同様の効果を得ることができる。
【0094】
<4.第3の実施の形態>
本技術は、ヒステリシス誤差を演算によって精度良く補償することの可能な計量装置を校正する校正装置を提供することも目的としている。そこで、以下に、本技術の第3の実施の形態に係る校正装置3について説明する。なお、本実施の形態において、上記実施の形態と共通の構成要素については、同一の符号が付与されている。また、本実施の形態では、上記実施の形態と異なる構成要素についての説明を主に行い、上記実施の形態と共通の構成要素についての説明を適宜、省略するものとする。
【0095】
[4.1 構成]
図12は、本技術の第3の実施の形態に係る校正装置3の概略構成を表したものである。校正装置3は、上記各実施の形態およびその変形例に係る計量装置1,2を校正する装置である。校正装置3は、例えば、上記各実施の形態およびその変形例におけるべき指数αを導出する装置である。べき指数αは、基準補償量D1に対して、比例配分とは異なる演算を行うことによりヒステリシス誤差の補償量D2を導出するときに、上記演算(比例配分とは異なる演算)に用いられる設定値(パラメータ)である。
【0096】
校正装置3は、例えば、演算部31、入力部32、表示部33および記憶部34を備えている。入力部32は、ユーザからの入力を受け付けるものであり、例えば、キーボードなどで構成されている。表示部33は、例えば、べき指数αを導出する試験の結果などの表示などを行う。演算部31は、入力部32、表示部33および記憶部34を制御するものである。演算部31は、例えば、べき指数αを導出する試験の結果などに対応する映像信号を表示部33に出力し、その映像信号に応じた表示を表示部33にさせる。
【0097】
記憶部34は、校正プログラム34Aを記憶している。校正プログラム34Aについては、べき指数αの導出手順について説明する際に併せて説明する。記憶部34は、必要に応じて、基準補償データ15Aも記憶している。基準補償データ15Aでは、荷重センサ10のヒステリシス誤差が下側基準A_lowおよび上側基準A_highを基準とする基準補償量D1で規定されている。基準補償量D1は、例えば、ヒステリシス実験を行うことにより得られたものである。なお、基準補償量D1は、ヒステリシス実験を行うことにより得られたデータに対して何らかの補正のなされたものであってもよい。記憶部15は、さらに、校正プログラム34Aの実行によって得られたデータ(例えば、低負荷で行われたヒステリシス実験の結果や、その結果から導出されたべき指数αなど)を記憶可能となっている。
【0098】
[4.2 べき指数αの導出]
次に、べき指数αの導出手順の一例について説明する。
【0099】
図13は、校正プログラム34Aが演算部31にロードされたときの演算部31の動作手順の一例を表したものである。まず、ユーザが、例えば、校正装置3の電源を入れる。すると、校正プログラム34Aが演算部31にロードされ、校正プログラム34Aが起動する。演算部31は、ロードされた校正プログラム34Aの命令に従って動作する。まず、演算部31は、所定位置から基準補償データ15Aを読み出す(ステップS301)。基準補償データ15Aでは、上述したように、荷重センサ10のヒステリシス誤差が下側基準A_lowおよび上側基準A_highを基準とする基準補償量D1(第1ヒステリシス誤差)で規定されている。
【0100】
基準補償データ15Aは、荷重センサ10が第1の実施の形態に係る荷重センサ10である場合、荷重センサ10内の記憶部15または記憶部34に記憶されている。この場合、演算部31は、記憶部15または記憶部34から基準補償データ15Aを読み出す。基準補償データ15Aは、荷重センサ10が第2の実施の形態に係る荷重センサ10である場合、指示計部20内の記憶部25または記憶部34に記憶されている。この場合、演算部31は、記憶部25または記憶部34から基準補償データ15Aを読み出す。
【0101】
次に、演算部31は、ユーザに対して、低負荷でヒステリシス実験を行うことを指示するとともに、荷重センサ10からの荷重信号Vdの入力を受け付ける(ステップS302)。このとき、ユーザは、例えば、負荷荷重4を、荷重センサ10の計量面10A上に、最小荷重(下側基準C_low)の状態から段階的に追加していき、最大荷重(上側基準C_high)になったら、負荷荷重4を段階的に取り除き、最小荷重(下側基準C_low)の状態に戻す。演算部31は、漸増時および漸減時に受け付けた荷重信号Vdを用いて、下側基準C_lowおよび上側基準C_highを荷重センサ10のヒステリシス誤差の基準とするヒステリシス誤差(第2ヒステリシス誤差)を導出する。演算部31は、例えば、漸減時の荷重信号Vdから、漸増時の荷重信号Vdを減算し、漸減時の荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を導出する。なお、演算部31は、漸増時の荷重信号Vdから、漸減時の荷重信号Vdを減算し、漸増時の荷重信号Vdに含まれるヒステリシス誤差を導出するようにしてもよい。
【0102】
次に、演算部31は、基準補償量D1(第1ヒステリシス誤差)と、第2ヒステリシス誤差との対応関係を、所定の誤差範囲内で規定するべき指数αを導出する。演算部31は、第2ヒステリシス誤差を、基準補償量D1に対応する負荷荷重に対して比例配分を行うことにより特定される負荷荷重に対応させた上で、べき指数αを導出する。べき指数αは、式(1)または式(6)中のKのべき指数αであり、1よりも大きな値である。第2ヒステリシス誤差の下側基準B_lowと、基準補償量D1の下側基準A_lowは、互いに等しくなっている。
【0103】
演算部31は、基準補償量D1(第1ヒステリシス誤差)に対して比例配分とは異なる演算を行うことにより得られる値と、第2ヒステリシス誤差との差分が、所定の誤差範囲内となるように、上記演算(比例配分とは異なる演算)に用いるべき指数αを導出する。演算部31は、例えば、以下の式(8)、(9)を満たす、べき指数αを設定する(ステップS303、
図14)。なお、
図14は、べき指数αの設定に用いられる式(8)、(9)を説明するための概念図である。
【0104】
(1/d)αCp−Cp’ ≦ TH …(8)
d = (A_high −A_low)/(C_high −C_low) …式(9)
Cp:負荷荷重がA_high/2のときの基準補償量D1
Cp’:負荷荷重がA_high/2dのときの第2ヒステリシス誤差
TH:許容誤差の閾値
【0105】
演算部31は、例えば、適当な、いくつかの値を式(8)のべき指数αに代入し、残留ヒステリシス誤差((1/d)αCp−Cp’)が閾値TH以下の値になった値の中から適切な値をべき指数αとして選択する。演算部31は、例えば、
図15に示したように、1.5、2、2.5を式(8)のαに代入し、残留ヒステリシス誤差((1/d)αCp−Cp’)が閾値TH以下の値になった値(1.5または2)をべき指数αとして選択する。このようにして、べき指数αが導出される。
図15は、いくつかの値をべき指数αに代入したときの、残留ヒステリシス誤差の一例を表したものである。
【0106】
べき指数αは、上記以外の方法でも導出可能である。
図16は、ステップS303における、べき指数αの導出手順の一例を表したものである。演算部31は、例えば、以下の式(10)を用いてべき指数αを導出する(ステップS401)。
α = −log
d(Cp’/Cp) …(10)
【0107】
式(10)において、べき指数αは、通常、小数点以下の数字を持つ。そのことが、演算速度やメモリ容量などとの関係で特に問題にならない場合には、このようにして導出したべき指数αを、計量装置1,2で用いればよい。逆に、そのことが、演算速度やメモリ容量などとの関係で特に問題になる場合には、演算部31は、べき指数αの桁数を小さくする(ステップS402)。演算部31は、例えば、べき指数αの小数点第1位を四捨五入して、べき指数αを整数にしてもよい。演算部31は、例えば、べき指数αの小数点第2位を四捨五入して、べき指数αを、少数点第1位だけを有する実数にしてもよい。
【0108】
演算部31は、べき指数αの桁数を小さくした場合、桁数を小さくしたべき指数αが上記の式(8)、(9)を満たすか否か判定する(ステップS403)。演算部31は、桁数を小さくしたべき指数αが上記の式(8)、(9)を満たす場合、そのべき指数αを選択する(ステップS404)。演算部31は、桁数を小さくしたべき指数αが上記の式(8)、(9)を満たさない場合、そのべき指数αに修正を加えて(ステップS405)、上記ステップS403を実行し直す。このようにして、べき指数αが導出される。
【0109】
最後に、演算部31は、上記のようにして導出した、べき指数αを出力する(ステップS304)。荷重センサ10が第1の実施の形態に係る荷重センサ10である場合、演算部31は、べき指数αを荷重センサ10へ出力し、記憶部15に記憶させる。べき指数αは、不揮発性メモリ15−1に記憶されることが好ましい。荷重センサ10が第2の実施の形態に係る荷重センサ10である場合、演算部31は、べき指数αを指示計部20へ出力し、記憶部25に記憶させる。べき指数αは、不揮発性メモリ25−1に記憶されることが好ましい。
【0110】
なお、記憶部15は、べき指数αが記憶される際に、電子回路16に実装されていなくてもよく、例えば、校正装置3内で、演算部31と電気的に接続されていてもよい。同様に、記憶部25は、べき指数αが記憶される際に、電子回路26に実装されていなくてもよく、例えば、校正装置3内で、演算部31と電気的に接続されていてもよい。
【0111】
[4.3 効果]
次に、校正装置3の効果について説明する。校正装置3では、基準補償量D1と、第2ヒステリシス誤差との対応関係を、所定の誤差範囲内で規定する、べき指数αが導出される。具体的には、基準補償量D1に対して比例配分とは異なる演算を行うことにより得られる値と、第2ヒステリシス誤差との差分が、所定の誤差範囲内となるように、上記演算(比例配分とは異なる演算)に用いる、べき指数αが導出される。これにより、計量装置1,2において、ヒステリシス誤差の新たな基準が設定された場合に、当初の基準補償量D1に対して比例配分を行うことにより得られた演算値E1が荷重センサ10のヒステリシス誤差の補償量として用いられたときよりも、ヒステリシス誤差の補償量を演算によって高精度に導出することが可能である。その結果、ヒステリシス誤差を演算によって精度良く補償することができる。従って、計量装置1,2では、ヒステリシス誤差に対する過補償をなくすことができる。また、計量装置1,2では、ヒステリシス誤差の基準として荷重センサ10の定格荷重が設定されていた場合に、ヒステリシス誤差の基準を荷重センサ10の定格荷重の25%程度と、非常に低容量に設定したときであっても、漸減曲線がいびつな形になることがなく、計量装置1,2が異常動作をすることもない。
【0112】
第3の実施の形態に係る校正装置3は、例えば、以下のような構成を取ることができる。
(1)
第1荷重および第2荷重を荷重センサのヒステリシス誤差の基準とする第1ヒステリシス誤差に対して比例配分とは異なる演算を行うことにより得られる値と、第3荷重および第4荷重を荷重センサのヒステリシス誤差の基準としてヒステリシス実験を行うことにより得られた第2ヒステリシス誤差との差分が、所定の誤差範囲内となるように、前記演算に用いる設定値を導出する導出部と、
前記設定値を用いた演算を実行することによって得られる補償量を用いて前記荷重センサのヒステリシス誤差を補償するシステムに、前記設定値を出力する出力部と
を備えた
校正装置。
(2)
前記第1ヒステリシス誤差は、前記第1荷重および前記第2荷重を前記荷重センサのヒステリシス誤差の基準としてヒステリシス実験を行うことにより得られたものである
(1)に記載の校正装置。
(3)
前記導出部は、前記第2ヒステリシス誤差を、前記第1ヒステリシス誤差に対応する負荷荷重に対して比例配分を行うことにより特定される負荷荷重に対応させた上で、前記設定値を導出する
(1)または(2)に記載の校正装置。
(4)
前記設定値は、前記第2荷重が前記第1荷重よりも大きく、前記第3荷重が前記第4荷重よりも大きいとき、((前記第3荷重−前記第4荷重)/(前記第2荷重−前記第1荷重))のべき指数である
(3)に記載の校正装置。
(5)
前記設定値は、1よりも大きな値である
(4)に記載の校正装置。
(6)
前記第1荷重および前記第4荷重は、互いに等しい
(4)または(5)に記載の校正装置。
(7)
第1荷重および第2荷重を荷重センサのヒステリシス誤差の基準とする第1ヒステリシス誤差と、第3荷重および第4荷重を荷重センサのヒステリシス誤差の基準としてヒステリシス実験を行うことにより得られた第2ヒステリシス誤差との対応関係を、所定の誤差範囲内で規定する設定値を導出する導出部を備えた
情報処理装置。
(8)
前記第1ヒステリシス誤差に対して、前記設定値を用いて比例配分とは異なる演算を行うことにより得られる補償量を用いて前記荷重センサのヒステリシス誤差を補償するシステムに、前記設定値を出力する出力部をさらに備えた
(7)に記載の情報処理装置。
(9)
前記第1ヒステリシス誤差は、前記第1荷重および前記第2荷重を前記荷重センサのヒステリシス誤差の基準としてヒステリシス実験を行うことにより得られたものである
(7)または(8)に記載の情報処理装置。
(10)
前記導出部は、前記第2ヒステリシス誤差を、前記第1ヒステリシス誤差に対応する負荷荷重に対して比例配分を行うことにより特定される負荷荷重に対応させた上で、前記設定値を導出する
(7)ないし(9)のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(11)
前記設定値は、前記第2荷重が前記第1荷重よりも大きく、前記第3荷重が前記第4荷重よりも大きいとき、((前記第3荷重−前記第4荷重)/(前記第2荷重−前記第1荷重))のべき指数である
(10)に記載の情報処理装置。
(12)
前記設定値は、1よりも大きな値である
(11)に記載の情報処理装置。
(13)
前記第1荷重および前記第4荷重は、互いに等しい
(11)または(12)に記載の情報処理装置。
【0113】
<5.実施例>
次に、計量装置1の実施例の効果について、比較例と対比して説明する。なお、実施例および比較例では、ともに、荷重の掛け方を曲げ型とし、荷重センサ10の種類を歪みゲージ式とし、起歪体の材料としてSUS304を用いた。
【0114】
図17、
図18は、シミュレーション結果の一例を表す図である。
図17(A)は、下側基準A_lowおよび上側基準A_highを基準とするヒステリシス誤差を漸減について表したものである。
図17(A)において、縦軸は、標準補償量D1である。
【0115】
図17(B)は、比較例に係る計量装置のシミュレーション結果の一例を表したものである。
図17(B)は、α=1、上側基準B_highを上側基準A_highの25%としたとき(比較例1)のシミュレーション結果の一例を表したものである。
図17(C)は、実施例に係る計量装置のシミュレーション結果の一例を表したものである。
図17(C)は、α=2、上側基準B_highを上側基準A_highの25%としたとき(実施例1)のシミュレーション結果の一例を表したものである。
図17(B),
図17(C)において、縦軸は、負荷荷重に対応する荷重信号Vdから(D1×Kα)を減算することにより得られた値(つまり、残留ヒステリシス誤差)である。
図18は、上側基準B_highを上側基準A_highの25%とした上で、無補償、α=1,1.5,2,2.5,3,5としたときのシミュレーション結果の一例を表したものである。
図18において、縦軸は、残留ヒステリシス誤差である。
【0116】
(
図17(A)〜
図17(C)の結果について)
ヒステリシス誤差の上端側の基準(上側基準B_high)を上側基準A_highの25%にまで小さくした場合、実施例の方が比較例よりも、補償後に残留するヒステリシス誤差が小さくなっていることが分かった。また、比較例では、補償後に残留するヒステリシス誤差が、標準補償量D1よりも大きくなっており、過補償および異常動作が生じていることも分かった。一方で、実施例では、上側基準B_highが低容量となっているにも拘わらず、過補償や異常動作が生じておらず、ヒステリシス誤差に対する補償が効果的になされていることがわかった。
【0117】
(
図18の結果について)
ヒステリシス誤差の上端側の基準(上側基準B_high)を上側基準A_highの25%にまで小さくした場合、αの値が1.5または2となるときに、残留ヒステリシス誤差が最も小さくなることがわかった。また、αの値が1より大きく、概ね5以下となるときに、残留ヒステリシス誤差が、αの値が1となるときの残留ヒステリシス誤差よりも小さくなることがわかった。